説明

感熱転写媒体

【課題】尾引き等を生じることがなく印字の鮮明性に優れる上、現状よりもさらに熱感度に優れた感熱転写媒体を提供する。
【解決手段】基材2上に、剥離層3を介して第一着色層6、および第二着色層7をこの順に積層するとともに、前記第二着色層7には、エポキシ樹脂、前記エポキシ樹脂の架橋剤としてのイソシアネート、および粘着付与剤を含有させた感熱転写媒体1である。前記第一着色層6は、第二着色層7に含まれるエポキシ樹脂よりも分子量の小さいエポキシ樹脂を含んでいるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱転写媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
いわゆる感熱方式のプリンタのインクリボンとして、樹脂のフィルム等からなる基材の片面に、加熱によって溶融または軟化する剥離層を介して着色層を積層した感熱転写媒体が広く用いられてきた。
しかし近年、前記感熱転写媒体を用いると、
プラスチックや金属等の、紙以外の種々の被印字体の表面にも印字をすることができる、
印字の耐水性を向上することができる、
任意の厚みを有する印字をすることができる、
等の利点があるため、その用途は、従来の通常の紙等への印字には留まらず、様々な用途に拡がりつつある。
【0003】
例えばバーコード等の管理データを各種生産品の表面に直接に印字したり、前記生産品に添付された耐水性のラベルの表面に印字したりするためにも、前記感熱転写媒体が利用されるようになってきている。
また近時、前記ラベルや、あるいはオフィス、学校等においてラベルやテープ、カード等に簡単に印字をするための事務機器としていわゆるラベルプリンタが普及しつつあり、かかるラベルプリンタ用のインクリボンとしても、前記感熱転写媒体が広く用いられるようになってきている。
【0004】
感熱転写媒体を用いて印字をするためには、前記着色層を被印字体の表面に当接させた状態で、プリンタのサーマルヘッドを用いて、記録する文字等のパターンに合わせて、基材の背面側から感熱転写媒体を選択的に加熱する。そうすると、加熱された領域の剥離層、および着色層が選択的に溶融または軟化することで前記着色層が基材から離型されるとともに被印字体の表面に転写されて、前記被印字体の表面に、前記文字等のパターンが印字される。
【0005】
かかる感熱転写媒体を用いて高速で印字をするためには、当該感熱転写媒体の熱感度を高めることが重要である。つまり印字速度が高くなるほど、感熱転写媒体がサーマルヘッドによって加熱される時間が短くなるため、できるだけ短時間の加熱で剥離層を速やかに溶融または軟化させて着色層を離型、転写させることが求められる。
しかし、熱感度が良すぎると印字の鮮明性が低下する。特に環境温度が高い高温時に、印字の、サーマルヘッドに対する相対移動方向の後方に、尾を引くように着色層が転写されてしまう、いわゆる尾引きを生じやすいという問題がある。
【0006】
高速印字に適した熱感度を有し、しかも尾引きを生じにくい感熱転写媒体が求められている。
特許文献1には、着色層を2層構造にして熱感度を向上することが記載されている。
すなわち着色層が1層である場合、所定の印字濃度を確保するためには、基材上に形成した剥離層上に、前記着色層のもとになる塗剤を厚塗りしなければならない。
【0007】
ところが塗剤を厚塗りすると、前記塗剤中に含まれる多量の溶剤によって剥離層が侵されて、剥離層としての機能が損なわれるおそれがある。そのため、剥離層としての機能を維持するべく前記剥離層をも厚塗りする必要が生じる。
しかし、剥離層の厚みが大きいほど感熱転写媒体の熱感度は低下する。熱感度を向上するためには、剥離層の厚みをできるだけ小さくして、サーマルヘッドからの熱が、基材の裏面側から最表面の着色層までできるだけ効率よく伝えられるようにする必要がある。
【0008】
そこで、前記のように着色層を2層構造にすることが提案されている。すなわち着色層を2層構造にすると、剥離層上に直接に塗布される、1層目の着色層のもとになる塗剤の量を少なくすることができる。そのため、前記塗剤中に含まれる溶剤の量も少なくでき、結果的に、剥離層の厚みを小さくして感熱転写媒体の熱感度を向上することができる。
しかし特許文献1の感熱転写媒体は熱感度が高すぎて、先に説明した尾引きを生じやすく、印字の鮮明性が十分でないという問題がある。
【0009】
特許文献2には、単層構造の熱溶融性層(着色層)中に、エポキシ樹脂と、その潜在性架橋剤としてのアミン系化合物とを配合するか、あるいは熱溶融性層を2層構造として、一方にエポキシ樹脂、他方に潜在性架橋剤を配合することで尾引きを抑制して、印字の鮮明性を向上することが記載されている。
すなわちエポキシ樹脂の一部を、印字の際の熱によってアミン系化合物と架橋反応させると、着色層の過剰な溶融、軟化を抑制して尾引きを防止することができる。
【0010】
しかし、特許文献2において架橋剤として用いているアミン系化合物はエポキシ樹脂との反応性が強すぎるため、印字の際の熱によって架橋反応が進行しすぎて、却って熱感度が低下するという問題がある。
すなわち、架橋反応が過剰に進行してエポキシ樹脂の分子量が大きくなり過ぎると、被印字体に対する着色層の粘着性が大きく低下するため、結果として熱感度が低下してしまう。
【0011】
また、感熱転写媒体を保管している間の熱履歴によって架橋反応が過剰に進行して、熱感度が経時劣化するおそれもある。
特許文献3には、基材上に、剥離層、中間層を介して着色層を積層するとともに、前記着色層に着色剤、樹脂、前記樹脂の硬化剤(架橋剤)、および前記樹脂と架橋剤との架橋反応を阻害する樹脂を配合することが記載されている。
【0012】
また特許文献3には、前記樹脂としてエポキシ樹脂、架橋剤として、前記エポキシ樹脂に対する反応性がアミン系化合物ほど強くないイソシアネートを組み合わせて用いることも記載されている。
かかるエポキシ樹脂とイソシアネートとを組み合わせれば、架橋反応を阻害する樹脂を加えることとも相まって、印字の際の熱によって架橋反応が進行しすぎて熱感度が低下するのを抑制することができる。
【0013】
また、感熱転写媒体を保管している間の熱履歴によって架橋反応が進行して熱感度が経時劣化するのを抑制することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平7−137470号公報
【特許文献2】特開平5−16533号公報
【特許文献3】特開平10−211769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところが発明者の検討によると、前記特許文献3記載の発明の感熱転写媒体は、特に高速印字をする際の熱感度が未だ十分でないという問題がある。
本発明の目的は、尾引き等を生じることがなく印字の鮮明性に優れる上、現状よりもさらに熱感度に優れた感熱転写媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、基材上に、剥離層、および着色層をこの順に積層した感熱転写媒体であって、前記着色層は、剥離層側の第一着色層、および前記第一着色層上に積層した第二着色層を備え、前記第二着色層は、エポキシ樹脂、前記エポキシ樹脂の架橋剤としてのイソシアネート、および粘着付与剤を含むことを特徴とするものである。
本発明によれば、(1) 前記のように着色層を、第一および第二着色層の2層構造とすることにより、先に説明したように剥離層の厚みを小さくすることができる。
【0017】
また(2) 第二着色層を形成するエポキシ樹脂の架橋剤として、前記エポキシ樹脂に対する反応性があまり強くないイソシアネートを用いることにより、印字の際の熱によって前記エポキシ樹脂の架橋反応が過剰に進行するのを抑制することもできる。
その上(3) 第二着色層に含まれる粘着付与剤は、印字の際の熱によって溶融または軟化した前記第二着色層に粘着性を付与して転写を助ける働きをする。
【0018】
そのため本発明によれば、前記(1)〜(3)の相乗効果によって、現状よりもさらに熱感度に優れた感熱転写媒体を提供することができる。
また本発明によれば、前記のように第二着色層を構成するエポキシ樹脂の一部を、印字の際の熱によってイソシアネートと架橋反応させることにより、前記第二着色層の過剰な溶融、軟化を抑制して尾引きを防止することができる。
【0019】
さらに本発明によれば、前記のようにエポキシ樹脂の架橋剤としてイソシアネートを用いることにより、感熱転写媒体を保管している間の熱履歴によって架橋反応が進行して熱感度が経時劣化するのを抑制することもできる。
前記第二着色層に含まれるエポキシ樹脂は、エポキシ当量が1500以上、2500以下のエポキシ樹脂であるのが好ましい。
【0020】
エポキシ当量が1500未満であるエポキシ樹脂は架橋反応の反応性が強いため、たとえ反応性があまり強くないイソシアネートと組み合わせても、印字の際の熱によって架橋反応が進行しすぎて熱感度が低下するおそれがある。また、感熱転写媒体を保管している間の熱履歴によって架橋反応が進行して、熱感度が経時劣化するおそれもある。
一方、エポキシ当量が2500を超えるエポキシ樹脂は架橋反応の反応性が弱いため、印字の際の熱によってイソシアネートと十分に架橋反応させることができず、前記印字の際の熱による過剰な溶融、軟化を抑制して尾引きを防止する効果が十分に得られないおそれがある。
【0021】
前記第二着色層と離型層との間に介在させる第一着色層は、前記第二着色層に含まれるエポキシ樹脂よりも分子量の小さいエポキシ樹脂を含んでいるのが好ましい。
まず、第一着色層に第二着色層と同系であるエポキシ樹脂を含有させることで、先に形成した第一着色層に対する、第二着色層のもとになる塗剤の親和性、相溶性を向上するとともに、前記両着色層間の密着性を向上することができる。
【0022】
また、第一着色層に含有させるエポキシ樹脂の分子量を、第二着色層に含有させるエポキシ樹脂の分子量よりも小さくすることで、熱感度と尾引き防止の効果の良好なバランスをとることができる。
すなわち、第二着色層に含有させるエポキシ樹脂の分子量を、第一着色層に含有させるエポキシ樹脂の分子量よりも大きくすることで、印字の際の熱による過剰な溶融、軟化を抑制して尾引きを防止することができる。
【0023】
また、前記第一着色層に含有させるエポキシ樹脂の分子量を、第二着色層に含有させるエポキシ樹脂の分子量よりも小さくすることで、前記第一着色層を、サーマルヘッドからの熱によって速やかに溶融または軟化させることができ、感熱転写媒体の熱感度をさらに向上することもできる。
前記基材は、前記剥離層を積層する側の面に、導電層が一体に設けられているのが好ましい。
【0024】
被印字体がポリエステル等の樹脂のフィルムである場合、印字して基材を剥離させる際に前記基材が帯電し易い傾向がある。特に高速で印字をする際に帯電を生じやすい。
基材が帯電すると、感熱転写媒体の表裏両面にいずれも埃が付着し易くなる。
そして前記感熱転写媒体の表面、すなわち第二着色層の表面に埃が付着すると、前記埃が、前記第二着色層と被印字体との間に介在して直接的に印字を妨げるおそれがある。
【0025】
また感熱転写媒体の裏面、すなわち基材の背面に埃が付着すると、前記埃が、印字を繰り返すうちにサーマルヘッドに徐々に蓄積されて、前記サーマルヘッドから感熱転写媒体への熱伝達を妨げるおそれがある。
そのため、このいずれの場合にも印字の鮮明性、解像度が低下するおそれがある。
これに対し、前記のように基材の、剥離層を積層する側の面に導電層を一体に設けた場合には、前記導電層を通して静電気を逃がして基材の帯電を抑制することができ、帯電に伴う前記種々の問題が生じるのを防止することができる。
【0026】
前記導電層に含まれる導電材料は、一般に、例えば導電性カーボンブラック、導電性金属粉末等のような濃色の材料であることが多い。そのため、前記導電層が着色層とともに被印字体の表面に転写されると、特に黒色以外のカラーリボンの場合に、印字の所期の色味を再現できなくなる。
これに対し、前記のように導電層を基材と一体に、すなわち基材から剥離不能に設けると、前記導電層が印字の色味に影響を及ぼすのを防止することもできる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、尾引き等を生じることがなく印字の鮮明性に優れる上、現状よりもさらに熱感度に優れた感熱転写媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の感熱転写媒体の、実施の形態の一例の層構成を示す拡大断面図である。
【図2】本発明の感熱転写媒体の、実施の形態の他の例の層構成を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明の感熱転写媒体の、実施の形態の一例の層構成を示す拡大断面図である。図1を参照して、この例の感熱転写媒体1は、基材2、前記基材2の表面(図では上側の面)に積層された剥離層3、および着色層4、ならびに前記基材2の背面(図では下側の面)に積層された背面層5を備えている。また着色層4は、剥離層3側の第一着色層6、および前記第一着色層6上に積層した第二着色層7の2層構造とされている。
【0030】
〈基材2〉
基材2としては、従来同様に、例えばポリスルホン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエステル、トリアセテート等の樹脂のフィルム、コンデンサー紙、グラシン紙等の薄葉紙、あるいはセロファン等が挙げられる。
【0031】
中でもポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルのフィルムが、価格、機械的強度、寸法安定性、耐熱性等の見地から好ましい。
基材2の強度(引張強度等)を確保しながら、サーマルヘッドから剥離層3にできるだけ効率よく熱伝達することを考慮すると、前記基材2の厚みは1μm以上、特に2μm以上であるのが好ましく、30μm以下、特に15μm以下であるのが好ましい。
【0032】
〈剥離層3〉
剥離層3としては、従来同様に、感熱転写媒体1を印字に使用するまでの間、着色層4を基材2の表面に固定し、サーマルヘッドによる基材2の背面側からの加熱によって溶融または軟化して前記着色層4を剥離させて被印字体の表面に転写させる機能を有する種々の材料からなる層が挙げられる。
【0033】
前記剥離層3を形成する材料としては、従来同様に、例えばポリエチレンワックス、カルナバワックス、マイクロクリスタリンワックス等のワックスや、あるいはポリエチレン系共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、塩化ビニル系(共)重合体、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂などの1種または2種以上が挙げられる。
特にワックスが好ましい。またワックスには、印字前の着色層4が基材2から剥離するいわゆるコボレを防止するため、エチレン酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂をバインダとして添加してもよい。
【0034】
剥離層3は、感熱転写媒体1を印字に使用するまでの間、着色層4を基材2の表面に確実に固定し続けることができ、しかもサーマルヘッドによる基材2の背面側からの加熱によって速やかに溶融または軟化して着色層4を剥離させることを考慮すると、その融点または軟化点が50℃以上、特に60℃以上であるのが好ましく、150℃以下、特に120℃以下であるのが好ましい。
【0035】
融点または軟化点が前記範囲内にある剥離層3を形成するためには、前記例示のワックスや熱可塑性樹脂のうち、融点または軟化点が前記範囲内にあるものを選択して使用したり、2種以上を併用して融点または軟化点が前記範囲内に入るように調整したりすればよい。
剥離層3には、前記ワックスや熱可塑性樹脂に加えて、さらに他の成分を配合してもよい。かかる他の成分としては、例えば有機また無機の充てん剤、熱硬化性樹脂、高級脂肪酸、高級アルコール、高級脂肪酸エステル、アミド類、高級アミン、オイル、界面活性剤等の1種または2種以上が挙げられる。
【0036】
このうち界面活性剤は、剥離層3の剥離性を調整するために配合されるもので、かかる界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレン鎖含有化合物等が挙げられる。
剥離層3は、そのもとになるワックス等の固形分を溶剤に溶解または分散した塗剤を基材2の表面に塗布したのち乾燥させて形成したり、前記固形分を加熱して溶融させた状態で前記基材2の表面に塗布したのち、冷却して固化させるいわゆるホットメルト塗工によって形成したりすることができる。
【0037】
剥離層3の厚みは、単位面積あたりの固形分量で表して0.1g/m以上、特に0.3g/m以上であるのが好ましく、1.0g/m以下、特に0.8g/m以下であるのが好ましい。
厚みが前記範囲未満では、基材2の表面に、剥離層3として良好に機能する連続した層を形成できないおそれがある。一方、厚みが前記範囲を超える厚みの大きい剥離層3では、先に説明したようにサーマルヘッドからの熱を、基材2の裏面側から着色層4まで効率よく伝えることができず、感熱転写媒体1の熱感度が低下するおそれがある。
【0038】
〈着色層4〉
着色層4は、前記のように剥離層3側の第一着色層6、および前記第一着色層6上に積層した第二着色層7の2層構造とされる。これにより、先に説明したように着色層4の全体としての厚みと所定の印字濃度とを確保しながら、剥離層3上に塗布する、第一着色層6のもとになる塗剤の量を少なくすることができる。そのため、前記塗剤中に含まれる溶剤の量をも少なくでき、結果的に、剥離層3の厚みを小さくして感熱転写媒体1の熱感度を向上することができる。
【0039】
(第二着色層7)
第二着色層7は、エポキシ樹脂、前記エポキシ樹脂の架橋剤としてのイソシアネート、および粘着付与剤を含んでいる。
前記のうちエポキシ樹脂としては、種々のエポキシ樹脂がいずれも使用可能である。
かかるエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;水添ビスフェノールAD型エポキシ樹脂;プロピレングリコールグリコキシエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等の脂肪族系エポキシ樹脂;脂肪族もしくは芳香族アミンとエピクロルヒドリンとから得られるエポキシ樹脂;脂肪族もしくは芳香族カルボン酸とエピクロルヒドリンとから得られるエポキシ樹脂;複素環エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂;エポキシ変性樹脂;ブロム化エポキシ樹脂等の1種または2種以上が挙げられる。
【0040】
第二着色層7に含有させるエポキシ樹脂は、次に説明する第一着色層6にもエポキシ樹脂を含有させる場合、前記第一着色層6のエポキシ樹脂よりも分子量が大きいことが好ましい。これにより、印字の際の熱による過剰な溶融、軟化を抑制して尾引きを防止することができる。
前記エポキシ樹脂の分子量は、第二着色層7の過剰な溶融、軟化を抑制して尾引きを防止しながら、感熱転写媒体1の熱感度をできるだけ向上することを考慮すると1650以上、特に2000以上であるのが好ましく、5500以下、特に4000以下であるのが好ましい。
【0041】
また第二着色層7に含有させるエポキシ樹脂は、エポキシ当量が1500以上、特に1750以上であるのが好ましく、2500以下、特に2200以下であるのが好ましい。
エポキシ当量が前記範囲未満であるエポキシ樹脂は架橋反応の反応性が強いため、たとえ反応性があまり強くないイソシアネートと組み合わせても、印字の際の熱によって架橋反応が進行しすぎて熱感度が低下するおそれがある。また、感熱転写媒体を保管している間の熱履歴によって架橋反応が進行して、熱感度が経時劣化するおそれもある。
【0042】
一方、エポキシ当量が前記範囲を超えるエポキシ樹脂は架橋反応の反応性が弱いため、印字の際の熱によってイソシアネートと十分に架橋反応させることができず、前記印字の際の熱による過剰な溶融、軟化を抑制して尾引きを防止する効果が十分に得られないおそれがある。
イソシアネートとしては、前記エポキシ樹脂の架橋剤として機能しうる種々のイソシアネートがいずれも使用可能である。
【0043】
前記イソシアネートとしては、例えばトリレンジイソシアネート(2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート等、TDI)、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート(MDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジメチレントリフェニトリイソシアネート、キシレンジイソシアネート(XDI)、3,3′−ジメチル−4,4−ジフェニレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;水素化TDI、水素化MDI、水素化XDI、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の、芳香族イソシアネートの水素化物;ジメチルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンイソシアネートメチルエステル、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)等の脂肪族イソシアネート;前記各種のイソシアネートを多量化させて得られるポリイソシアネートなどの1種または2種以上が挙げられる。
【0044】
特にTDIをベースにした、イソシアヌレート環を有するポリイソシアネートが好ましい。
イソシアネートの配合量は、第二着色層7に含有させるエポキシ樹脂の全量を、最終的に架橋反応させることができる化学量論量以上に設定するのが好ましい。これにより反応性に乏しいエポキシ樹脂とイソシアネートとの反応を確実に進行させて、尾引きを防止することができる。
【0045】
粘着付与剤としては、第二着色層7に粘着性を付与して被印字体の表面への転写を助ける働きをする種々の粘着付与剤がいずれも使用可能である。
前記粘着付与剤としては、例えばテルペン樹脂、芳香族変性テルペン重合体、テルペンフェノール共重合体等のテルペン系粘着付与剤;ロジン、水添ロジン、水添ロジンエステル等のロジン系粘着付与剤;合成石油樹脂(C)系粘着付与剤;合成石油樹脂(C)系粘着付与剤;フェノール樹脂系粘着付与剤;キシレン樹脂系粘着付与剤;脂環族系水添石油樹脂等の1種または2種以上が挙げられる。
【0046】
中でもテルペン系粘着付与剤、特にテルペンフェノール共重合体は、第二着色層7に粘着性を付与する効果に優れる上、前記第二着色層7の凝集力を高める効果にも優れるため、粘着付与剤として好適に使用される。
前記粘着付与剤の配合量は、第二着色層7に含有させるエポキシ樹脂100質量部あたり5質量部以上、特に15質量部以上であるのが好ましく、30質量部以下、特に20質量部以下であるのが好ましい。
【0047】
粘着付与剤の配合量が前記範囲未満では、当該粘着付与剤を含有させることによる、第二着色層7に粘着性を付与して被印字体の表面への転写を助ける効果が十分に得られないおそれがある。
一方、粘着付与剤の配合量が前記範囲を超える場合には、相対的に硬化されたエポキシ樹脂の量が減って、尾引きを生じるおそれがある。またブロッキングを生じるおそれもある。
【0048】
第二着色層7には、着色層4の色味に応じた1種または2種以上の、顔料等の着色剤を含有させる。着色剤の配合量は、着色層4の色濃度等に応じて適宜設定できる。
第二着色層7は、前記各成分を溶剤に溶解または分散した塗剤を第一着色層6上に塗布したのち乾燥させて形成することができる。
第二着色層7の厚みは、単位面積あたりの固形分量で表して0.2g/m以上、特に
0.4g/m以上であるのが好ましく、1.2g/m以下、特に1.0g/m以下であるのが好ましい。
【0049】
厚みが前記範囲未満では、尾引きを生じるおそれがある。一方、厚みが前記範囲を超える場合には、感度不足を生じるおそれがある。
(第一着色層6)
第一着色層6は、基本的に種々の材料によって形成できる。ただし、先に形成した第一着色層6上に塗布する、第二着色層7のもとになる塗剤の親和性、相溶性を向上するとともに、前記両着色層6、7間の密着性を向上すること等を考慮すると、前記第一着色層6は、樹脂としてエポキシ樹脂を含んでいるのが好ましい。
【0050】
また第一着色層6に含有させるエポキシ樹脂は、第二着色層7に含有させるエポキシ樹脂よりも分子量が小さいことが好ましい。これにより、前記第一着色層6をサーマルヘッドからの熱によって速やかに溶融または軟化させることができ、感熱転写媒体1の熱感度をさらに向上することができる。
前記エポキシ樹脂の分子量は、第一着色層6の過剰な溶融、軟化を抑制して尾引きを防止しながら、前記熱感度をできるだけ向上することを考慮すると700以上、特に900以上であるのが好ましく、2000以下、特に1700以下であるのが好ましい。
【0051】
第一着色層6には、着色層4の色味に応じた1種または2種以上の、顔料等の着色剤を含有させる。着色剤の配合量は、着色層4の色濃度等に応じて適宜設定できる。
第一着色層6には、粘着付与剤を含有させても良い。第一着色層6に含有させる粘着付与剤としては、先の第二着色層7において例示した各種の粘着付与剤がいずれも使用可能である。
【0052】
ただし、前記第二着色層7に、粘着付与剤としてテルペン系粘着付与剤を含有させる場合は、第一着色層6にも同系のテルペン系粘着付与剤を含有させるのが好ましい。特に、第二着色層7に含有させるものよりも分子量が小さく、かつ軟化点が低いテルペン系粘着付与剤を第一着色層6に含有させるのが好ましい。
これにより、両着色層6、7間の密着性を向上させたり、感熱転写媒体1の熱感度を向上させたりすることができる。
【0053】
粘着付与剤の配合量は、第一着色層6に含有させるエポキシ樹脂100質量部あたり70質量部以上、特に90質量部以上であるのが好ましく、130質量部以下、特に110質量部以下であるのが好ましい。
粘着付与剤の配合量が前記範囲未満では、当該粘着付与剤を含有させることによる前記の効果が十分に得られないおそれがある。
【0054】
一方、粘着付与剤の配合量が前記範囲を超える場合には、尾引きを生じるおそれがある。
第一着色層6には、エチレン酢酸ビニル共重合体を含有させても良い。前記エチレン酢酸ビニル共重合体を第一着色層6に含有させると、印字のキレを向上することができる。すなわち着色層4のうち、サーマルヘッドを用いて選択的に加熱して被印字体の表面に転写させる領域と、それ以外の領域との境界線を明りょうにすることができる。
【0055】
エチレン酢酸ビニル共重合体の配合量は、第一着色層6に含有させるエポキシ樹脂100質量部あたり70質量部以上、特に90質量部以上であるのが好ましく、130質量部以下、特に110質量部以下であるのが好ましい。
エチレン酢酸ビニル共重合体の配合量が前記範囲未満では、当該エチレン酢酸ビニル共重合体を含有させることによる前記の効果が十分に得られないおそれがある。
【0056】
一方、エチレン酢酸ビニル共重合体の配合量が前記範囲を超える場合には、尾引きを生じるおそれがある。
第一着色層6は、前記各成分を溶剤に溶解または分散した塗剤を剥離層3上に塗布したのち乾燥させて形成することができる。
第一着色層6の厚みは、単位面積あたりの固形分量で表して0.4g/m以上、特に
0.6g/m以上であるのが好ましく、1.2g/m以下、特に1.0g/m以下であるのが好ましい。
【0057】
厚みが前記範囲未満では、印字濃度が不足するおそれがある。一方、厚みが前記範囲を超える場合には、感度不足や尾引きを生じるおそれがある。
〈背面層5〉
背面層5は、サーマルヘッドと接触する基材2の背面の耐熱性、滑り性、耐擦過性等を向上するための層である。
【0058】
前記背面層5は、従来同様に形成できる。
すなわち背面層5は、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン・フッ素共重合樹脂、ニトロセルロース樹脂、シリコーン変性ウレタン樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂等によって形成することができる。
また背面層5には、必要に応じて滑剤を含有させても良い。
【0059】
背面層5は、前記各成分を溶剤に溶解または分散した塗剤を基材2の背面に塗布したのち乾燥させて形成することができる。
背面層5の厚みは、単位面積あたりの固形分量で表して0.05g/m以上、特に0.1g/m以上であるのが好ましく、0.5g/m以下、特に0.4g/m以下であるのが好ましい。
【0060】
厚みが前記範囲未満では、当該背面層5を設けることによる前記の効果が十分に得られないおそれがある。一方、厚みが前記範囲を超える場合には、サーマルヘッドからの熱伝達の効率が低下して、感熱転写媒体1の熱感度が低下するおそれがある。
前記各層を備えたこの例の感熱転写媒体1によれば、着色層4を二層構造としたことにより剥離層3の厚みを小さくできること、着色層4のうち第二着色層7を形成するエポキシ樹脂の架橋剤としてイソシアネートを選択的に用いることにより、前記エポキシ樹脂の架橋反応が過剰に進行するのを抑制できること、さらには第二着色層7に含まれる粘着付与剤が前記第二着色層7に粘着性を付与して転写を助ける働きをすることが相まって、現状よりもさらにその熱感度を向上することが可能となる。
【0061】
また前記例の感熱転写媒体1によれば、第二着色層7を構成するエポキシ樹脂の一部を、印字の際の熱によってイソシアネートと架橋反応させることにより、前記第二着色層7の過剰な溶融、軟化を抑制して尾引きを防止することもできる。
図2は、本発明の感熱転写媒体の、実施の形態の他の例の層構成を示す拡大断面図である。図2を参照して、この例の感熱転写媒体1は、基材2と剥離層3との間に導電層8を介在させた点が、先の図1の例とは相違している。その他の構成は図1の例と同様であるので、同一箇所に同一符号を付して説明を省略する。
【0062】
〈導電層8〉
導電層8は、基材2の、剥離層3を積層する側の面に一体に、すなわち基材2とは剥離不能に形成される。
前記導電層8は、例えばバインダ樹脂中に導電材料を分散させる等して、導電性を付与することで形成される。
【0063】
例えば基材2がPET等のポリエステルのフィルムである場合、当該基材2との密着性に優れ、剥離不能の導電層8を形成するために、前記バインダ樹脂としてはポリエステルが好ましい。
また導電材料としては、例えば導電性カーボンブラック;チタン酸ランタン、酸化スズ、酸化亜鉛、インジウム・亜鉛酸化物、アンチモン・スズ酸化物、酸化インジウム、インジウム・スズ酸化物、亜鉛・スズ・インジウム酸化物、アルミニウム・亜鉛酸化物、ガリウム・亜鉛酸化物等の金属酸化物の粉末;金、銀、銅等の金属の粉末などの1種または2種以上が挙げられる。
【0064】
前記剥離不能の導電層8を設けることにより、当該導電層8が印字の色味に影響を及ぼすのを防止しながら、前記導電層8を通して静電気を逃がして基材2の帯電を抑制することができ、帯電に伴う種々の問題が生じるのを防止することができる。
前記導電層8は、剥離層3を形成する前の基材2の表面に、前記バインダ樹脂や導電材料等を溶剤に溶解または分散した塗剤を塗布したのち乾燥させて形成したり、前記各成分の混合物をフィルム状に成形するとともに基材2の表面側に積層するいわゆるラミネート法によって形成したりすることができる。
【0065】
導電層8の厚みは、単位面積あたりの固形分量で表して0.1g/m以上、特に0.2g/m以上であるのが好ましく、0.8g/m以下、特に0.6g/m以下であるのが好ましい。
厚みが前記範囲未満では、当該導電層8を設けることによる前記の効果が十分に得られないおそれがある。一方、厚みが前記範囲を超える場合には、サーマルヘッドからの熱伝達の効率が低下して、感熱転写媒体1の熱感度が低下するおそれがある。
【実施例】
【0066】
〈実施例1〉
(基材2、および背面層5)
基材2としては、厚み5μmのPETフィルムを用いた。前記基材2の背面には、シリコーン・フッ素共重合樹脂〔大日精化工業(株)製の商品名ダイアロマーSP712〕20質量部をメチルエチルケトン(MEK)80質量部に溶解して調製した塗剤を塗布したのち乾燥させて、単位面積あたりの固形分量が0.2g/mである背面層5を形成した。
【0067】
(剥離層3)
カルナバワックス(融点:80〜86℃)5質量部、およびポリエチレンワックス(融点:100〜105)5質量部をトルエン90質量部に溶解して、剥離層3用の塗剤を調製した。
次いで前記塗剤を、先の基材2の表面に塗布したのち乾燥させて、単位面積あたりの固形分量が0.5g/mである剥離層3を形成した。
【0068】
(第一着色層6)
下記の各成分を配合して、第一着色層6用の塗剤を調製した。
【0069】
【表1】

【0070】
前記表1中の各成分は下記のとおりとした。
カーボンブラック:三菱化学(株)製のMA8
エポキシ樹脂:エポキシ当量:600〜700、分子量:約1200
エチレン酢酸ビニル共重合体:酢酸ビニル含有量:28%、融点:71℃、ガラス転移温度:−28℃
粘着付与剤:芳香族変性テルペン重合体、軟化点:105±5℃
次いで前記塗剤を、先に形成した剥離層3上に塗布したのち乾燥させて、単位面積あたりの固形分量が0.6g/mである第一着色層6を形成した。
【0071】
(第二着色層7)
下記の各成分を配合して、第二着色層7用の塗剤を調製した。なおイソシアネートは、塗工直前に投入した。
【0072】
【表2】

【0073】
前記表2中のカーボンブラックとしては、第一着色層6で使用したのと同じものを用いた。また、その他の成分は下記のとおりとした。
エポキシ樹脂:エポキシ当量:1750〜2200、分子量:約2900
イソシアネート:TDIをベースにした、イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート、NCO含量:7〜8%、不揮発分:50±1%
粘着付与剤:テルペンフェノール共重合体、軟化点:125±5℃
次いで前記塗剤を、先に形成した第一着色層6上に塗布したのち乾燥させて、単位面積あたりの固形分量が0.5g/mである第二着色層7を形成して、図1に示す層構成を有する感熱転写媒体1を製造した。
【0074】
〈実施例2〉
第二着色層7のもとになる塗剤に、エポキシ樹脂として、前記のものに代えて、同量の、エポキシ当量が875〜975、分子量が約1650であるものを配合したこと以外は実施例1と同様にして、図1に示す層構成を有する感熱転写媒体1を製造した。
〈実施例3〉
第二着色層7のもとになる塗剤に、エポキシ樹脂として、前記のものに代えて、同量の、エポキシ当量が3000〜5000、分子量が約5500であるものを配合したこと以外は実施例1と同様にして、図1に示す層構成を有する感熱転写媒体1を製造した。
【0075】
〈実施例4〉
第一着色層6のもとになる塗剤に、エポキシ樹脂として、前記のものに代えて、同量の、第二着色層7に配合したのと同じエポキシ当量が1750〜2200、分子量:約2900であるものを配合したこと以外は実施例1と同様にして、図1に示す層構成を有する感熱転写媒体1を製造した。
【0076】
〈実施例5〉
両着色層6、7のもとになる塗剤に、それぞれ着色剤として、カーボンブラックに代えて、同量のフタロシアニンブルーを配合したこと以外は実施例1と同様にして、図1に示す層構成を有する感熱転写媒体1を製造した。
〈実施例6〉
基材2の、剥離層3を形成する前の表面に、下記の各成分からなる塗剤を塗布したのち乾燥させて、単位面積あたりの固形分量が0.3g/mである導電層を設けたこと以外は実施例5と同様にして、図2に示す層構成を有する感熱転写媒体1を製造した。
【0077】
【表3】

【0078】
表3中の各成分は下記のとおりとした。
導電性カーボンブラック:キャボット(CABOT)社製のVULCAN(登録商標)XC−72R
ポリエステル樹脂:東洋紡績(株)製のバイロン(登録商標)200
〈比較例1〉
第二着色層7のもとになる塗剤に、架橋剤としてのイソシアネートを配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして、図1に示す層構成を有する感熱転写媒体1を製造した。
【0079】
〈比較例2〉
第二着色層7のもとになる塗剤に、架橋剤として、イソシアネートに代えて、同量の、アミン系化合物であるヘキサメチレンジアミンを配合したこと以外は実施例1と同様にして、図1に示す層構成を有する感熱転写媒体1を製造した。
〈比較例3〉
第二着色層7のもとになる塗剤に、粘着付与剤としてのテルペンフェノール共重合体に代えて、同量の、粘着付与剤として機能しないポリエステル樹脂〔ユニチカ(株)製のUE−3380〕を配合したこと以外は実施例1と同様にして、図1に示す層構成を有する感熱転写媒体1を製造した。
【0080】
〈熱感度評価〉
前記各実施例、比較例で製造した感熱転写媒体1をバーコードプリンタ〔東芝テック(株)製のB−474−TS15〕に使用して、印字速度200mm/秒、サーマルヘッドの移動方向をバーコードのバーの長さ方向と平行方向としたパラレル仕様で、バーコードを印字した。被印字体としては合成紙ラベルを用いた。
【0081】
そして印字を観察して、下記の基準で、各感熱転写媒体1の熱感度を評価した。
○:細線のカスレなし。熱感度良好。
△:細線が若干カスレ気味であったが、実用可能なレベルであった。熱感度普通。
×:細線にカスレが見られた。熱感度不良。
〈尾引き評価〉
前記各実施例、比較例で製造した感熱転写媒体1をバーコードプリンタ〔東芝テック(株)製のB−474−TS15〕に使用して、印字速度200mm/秒、サーマルヘッドの移動方向をバーコードのバーの長さ方向と直交方向としたシリアル仕様でバーコードを印字した。被印字体としては合成紙ラベルを用いた。
【0082】
そして印字を観察して、下記の基準で、各感熱転写媒体1の尾引きの有無を評価した。
○:尾引きなし。
△:若干尾引き気味であったが、実用可能なレベルであった。
×:尾引きあり。
以上の結果を表4に示す。なお表中、架橋剤の欄の符号は下記のとおり。
【0083】
I:イソシアネート
A:アミン系化合物
また着色剤の欄の符号は下記のとおり。
CB:カーボンブラック
FB:フタロシアニンブルー
【0084】
【表4】

【0085】
表3の比較例1の結果より、第二着色層7に、エポキシ樹脂の架橋剤としてのイソシアネートを配合しない場合には、尾引きを生じることが判った。また比較例2の結果より、前記第二着色層7に、エポキシ樹脂の架橋剤として、イソシアネートに代えてアミン系化合物を配合した場合には、熱感度が低下することが判った。さらに比較例3の結果より、前記第二着色層7に粘着付与剤を配合しない場合には、熱感度が低下することが判った。
【0086】
これに対し、実施例1〜6の結果より、第二着色層7に、エポキシ樹脂の架橋剤としてのイソシアネートと粘着付与剤とを配合することで、尾引きが生じるのを防止しながら熱感度を向上できることが判った。
また実施例1〜3の結果より、第二着色層7に配合するエポキシ樹脂は、エポキシ当量が1500以上、2500以下であるのが好ましいことが判った。
【0087】
また実施例1、4の結果より、第一着色層6にもエポキシ樹脂を配合する場合、当該エポキシ樹脂は、第二着色層7に配合するエポキシ樹脂よりも分子量が小さいのが好ましいことが判った。
さらに実施例1、5、6の結果より、本発明の構成は、黒色以外のカラーリボンにも適用可能であることが判った。
【0088】
なお実施例5、6について、被印字体をフィルムラベルに変更して印字した後の、前記フィルムラベルと基材との剥離帯電を、静電気測定器〔シムコジャパン(株)製のFMX−003〕を用いて測定したところ、実施例5は10ボルト前後であったのに対し、実施例6は1ボルト以下であった。かかる結果から、特にカラーリボンの場合は、基材の剥離層を積層する側の面に、導電層を一体に設けるのが、基材の帯電を抑制して、前記帯電に伴う種々の問題が生じるのを防止する上で好ましいことが判った。
【符号の説明】
【0089】
1 感熱転写媒体
2 基材
3 剥離層
4 着色層
5 背面層
6 第一着色層
7 第二着色層
8 導電層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、剥離層、および着色層をこの順に積層した感熱転写媒体であって、前記着色層は、剥離層側の第一着色層、および前記第一着色層上に積層した第二着色層を備え、前記第二着色層は、エポキシ樹脂、前記エポキシ樹脂の架橋剤としてのイソシアネート、および粘着付与剤を含むことを特徴とする感熱転写媒体。
【請求項2】
前記第二着色層に含まれるエポキシ樹脂は、エポキシ当量が1500以上、2500以下のエポキシ樹脂である請求項1に記載の感熱転写媒体。
【請求項3】
前記第一着色層は、前記第二着色層に含まれるエポキシ樹脂よりも分子量の小さいエポキシ樹脂を含んでいる請求項1または2に記載の感熱転写媒体。
【請求項4】
前記基材は、前記剥離層を積層する側の面に、導電層が一体に設けられている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の感熱転写媒体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−14052(P2013−14052A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147595(P2011−147595)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(306029349)ゼネラル株式会社 (19)
【Fターム(参考)】