説明

感覚伝達に関与するGタンパク質共役レセプターをコードする核酸

【課題】感覚伝達Gタンパク質共役型レセプターをコードする単離された核酸を提供することを、本発明の課題とする。
【解決手段】上記課題は、本明細書に記載されるアミノ酸配列を有するレセプターおよびこれらをコードする核酸配列、ならびに、本明細書に記載される核酸配列およびこれらによってコードされるアミノ酸配列を有するレセプターを提供することによって、解決された。本発明はまた、このようなレセプターに対する抗体、このような核酸およびレセプターを検出する方法、ならびに感覚細胞特異的Gタンパク質共役レセプターのモジュレーターのスクリーニング方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、1998年7月28日出願のUSSN60/095,464および1998年12月17日出願のUSSN60/112,747(両方のその全体が本明細書中に参考として援用される)に対して優先権を主張する。
【0002】
(連邦政府助成の研究および開発についての声明)
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of
Health)によって授与された助成金番号5R01DC03160の下、米国政府の支援によってなされた。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、感覚細胞特異的G−タンパク質共役型レセプターの単離された核酸配列およびアミノ酸配列、このようなレセプターに対する抗体、このような核酸およびレセプターを検出する方法、ならびに感覚細胞特異的G−タンパク質共役型レセプターのモジュレーターをスクリーニングする方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
味覚伝達は、動物における化学伝達の最も洗練された形態の1つである(例えば、非特許文献1および2を参照のこと)。味覚シグナル伝達は、単純な後生動物から最も複雑な脊椎動物までの動物界全体に見出され;その主な目的は、不揮発性のリガンドに対する確かなシグナル伝達応答を提供することである。これらの様式の各々は、レセプターまたはチャネルによって媒介される異なるシグナル伝達経路によって媒介され、レセプター細胞の脱分極、レセプター電位または活動電位の発生、および味覚求心性ニューロンシナプスでの神経伝達物質の放出をもたらすと考えられる(例えば、Roper,Ann.Rev.Neurosci.12:329−353(1989)を参照のこと)。
【0005】
哺乳動物は、5つの基本的な味覚様式:甘味、苦味、酸味、辛味および旨味(unami)(グルタミン酸ナトリウムの味)を有すると考えられている(例えば、KawamuraおよびKare,Introduction to Unami:A Basic Taste(1987);KinnamonおよびCummings,Ann.Rev.Physiol.54:715−731(1992);Lindemann,Physiol.Rev.76:718−766(1996);Stewartら、Am.J.Physiol.272:1−26(1997)を参照のこと)。ヒトにおける広範な精神物理学的研究は、舌の異なる領域が、異なる味覚の嗜好性を提示することを報告している(例えば、Hoffmann,Menchen.Arch.Path.Anat.Physiol.62:516−530(1875);Bradleyら、Anatomical Record 212:246−249(1985);MillerおよびReedy,Physiol.Behav.47:1213−1219(1990)を参照のこと)。また、動物における多くの生理学的研究は、味覚レセプター細胞が、異なる味覚物質(tastant)に選択的に応答し得ることを示している(例えば、Akabasら、Science 242:1047−1050(1988);Gilbertsonら、J.Gen.Physiol.100:803−24(1992);Bernhardtら、J.Physiol.490:325−336(1996);Cummingsら、J.Neurophysiol.75:1256−1263(1996)を参照のこと)。
【0006】
哺乳動物において、味覚レセプター細胞は、舌上皮中の異なる乳頭内に分散される味蕾に集結される。有郭乳頭(舌のちょうど背部に見出される)は、100個(マウス)〜1000個(ヒト)の味蕾を含み、そして特に、苦味物質に感受性である。葉状乳頭(舌の後部側縁に局在する)は、何万もの味蕾を含み、そして特に、酸味物質および苦味物質に感受性である。単一または2、3個の味蕾を含む茸状乳頭は、舌の前部に存在し、そして多くの甘味の味覚様式を媒介すると考えられる。
【0007】
各々の味蕾は、種に依存して、50〜150の細胞を含み、これらには、前駆細胞、支持細胞、および味覚レセプター細胞が挙げられる(例えば、Lindemann,Physiol.Rev.76:718−766(1996)を参照のこと)。レセプター細胞は、脳幹および視床におけるシナプスを通って皮質の味覚中枢に情報を伝達する、求心性神経終末によってこれらの基部で神経支配される。味覚細胞のシグナル伝達および情報処理の機構を解明することは、味覚の機能、調節、および「認識」を理解するために重要である。
【0008】
味覚細胞機能の精神物理学および生理学について多くのことが知られているが、これらの感覚シグナル伝達応答を媒介する分子および経路については、ほとんど知られていない(Gilbertson,Current Opn.in Neurobiol.3:532−539(1993)に論評される)。電気生理学的研究は、酸味および辛味の味覚物質が、細胞の先端表面上の特異化された膜チャネルを通るH+イオンおよびNa+イオンの直接的な進入によって、味覚細胞機能を調節することを示唆する。酸味化合物の場合、味覚細胞の脱分極は、K+チャネルのH+ブロック(例えば、Kinnamonら、Proc.Nat’l
Acad.Sci.USA 85:7023−7027(1988)を参照のこと)またはpH感受性チャネルの活性化(例えば、Gilbertsonら、J.Gen.Physiol.100:803−24(1992)を参照のこと)から生じることが仮説され;塩の伝達は、アミロライド感受性Na+チャネルを介するNa+の進入によって、部分的に媒介され得る(例えば、Heckら、Science 223:403−405(1984);Brandら、Brain Res.207−214(1985);Avenetら、Nature 331:351−354(1988)を参照のこと)。
【0009】
甘味、苦味および旨味の伝達は、G−タンパク質共役型レセプター(GPCR)シグナル伝達経路によって媒介されると考えられる(例えば、Striemら、Biochem.J.260:121−126(1989);Chaudhariら、J.Neuros.16:3817−3826(1996);Wongら、Nature 381:796−800(1996)を参照のこと)。紛らわしくも、甘味および苦味の伝達のためのシグナル伝達経路の多くのモデルが存在するのと同様に、GPCRカスケードのための多くのエフェクター酵素(例えば、G−タンパク質サブユニット、cGMPホスホジエステラーゼ、ホスホリパーゼC、アデニル酸シクラーゼ;例えば、KinnamonおよびMargolskee、Curr.Opin.Neurobiol.6:506−513(1996)を参照のこと)が存在する。しかし、味覚伝達に関与する特異的な膜レセプター、または個々の味覚伝達経路によって活性化される多くの個々の細胞内シグナル伝達分子については、ほとんど知られていない。苦味のアンタゴニスト、甘味のアゴニスト、ならびに辛味および酸味の味覚のモジュレーターのための、多くの薬理学的適用および食品産業的適用を考えれば、このような分子の同定は、重要である。
【0010】
味覚レセプター(味覚イオンチャネルを含む)、および味覚シグナル伝達分子(例えば、G−タンパク質サブユニットおよびシグナル伝達に関与する酵素)の同定ならびに単離は、味覚伝達経路の薬理学的および遺伝的調節を可能にする。例えば、レセプターおよびチャネル分子の有効性は、味覚細胞活性の高親和性のアゴニスト、アンタゴニスト、逆アゴニストおよびモジュレーターをスクリーニングすることを可能にする。次いで、このような味覚調節化合物は、製薬産業および食品産業において、食味をカスタマイズするために使用され得る。さらに、このような味覚細胞特異的分子は、舌の味覚細胞と脳の味覚中枢へと導く味覚感覚ニューロンとの間の関係を解明する、味覚の組織分布地図を作製する貴重なツールとして役立ち得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Margolskee,BioEssays 15:645−650(1993)
【非特許文献2】AvenetおよびLindemann,J.Membrane Biol.112:1−8(1989)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
従って、本発明が、初めて、味覚細胞特異的G−タンパク質共役型レセプターをコードする核酸を提供する。これらの核酸およびこれらがコードするポリペプチドは、G−タンパク質共役型レセプター(「GPCR」)B4について「GRCP−B4」と称される。これらの味覚細胞特異的GPCRは、味覚伝達経路の成分である。
【0013】
1つの局面において、本発明は、感覚伝達G−タンパク質共役型レセプターをコードする単離された核酸を提供し、このレセプターは、配列番号1、配列番号2、または配列番号7のアミノ酸配列に対する約70%を超えるアミノ酸同一性を含む。
【0014】
1つの実施態様において、核酸は、配列番号3、配列番号4、または配列番号8のヌクレオチド配列を含む。別の実施態様において、核酸は、以下からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードする縮重プライマーのセットと同じ配列に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、選択的にハイブリダイズするプライマーによって増幅される:SAGGPMCFLM(配列番号5)、およびWMRYHGPYVF(配列番号6)。
【0015】
別の局面において、本発明は、配列番号3、配列番号4、または配列番号8の配列を有する核酸に、高度にストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする、感覚伝達G−タンパク質共役型レセプターをコードする単離された核酸を提供する。
【0016】
別の局面において、本発明は、感覚伝達G−タンパク質共役型レセプターをコードする単離された核酸を提供し、このレセプターは、配列番号1、配列番号2、または配列番号7の配列を有するポリペプチドに対する約70%を超えるアミノ酸同一性を含み、ここで、上記の核酸は、配列番号3、配列番号4、または配列番号8のヌクレオチド配列に、中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で選択的にハイブリダイズする。
【0017】
別の局面において、本発明は、感覚伝達G−タンパク質共役型レセプターの細胞外ドメインをコードする単離された核酸を提供し、この細胞外ドメインは、配列番号1の細胞外ドメインに対する約70%を超えるアミノ酸配列同一性を有する。
【0018】
別の局面において、本発明は、感覚伝達G−タンパク質共役型レセプターの膜貫通ドメインをコードする単離された核酸を提供し、この膜貫通ドメインは、配列番号1の膜貫通ドメインに対する約70%を超えるアミノ酸配列同一性を含む。
【0019】
別の局面において、本発明は、単離された感覚伝達G−タンパク質共役型レセプターを提供し、ここで、このレセプターは、配列番号1、配列番号2、または配列番号7のアミノ酸配列に対する約70%を超えるアミノ酸配同一性を含む。
【0020】
1つの実施態様において、このレセプターは、配列番号1、配列番号2、または配列番号7に対して生成されたポリクローナル抗体に特異的に結合する。別の実施態様において、このレセプターは、G−タンパク質共役型レセプター活性を有する。別の実施態様において、このレセプターは、配列番号1、配列番号2、または配列番号7のアミノ酸配列を有する。別の実施態様において、このレセプターは、ヒト、ラット、またはマウス由来である。
【0021】
1つの局面において、本発明は、感覚伝達G−タンパク質共役型レセプターの細胞外ドメインを含む単離されたポリペプチドを提供し、この細胞外ドメインは、配列番号1の細胞外ドメインに対する約70%を超えるアミノ酸配列同一性を含む。
【0022】
1つの実施態様において、このポリペプチドは、配列番号1の細胞外ドメインをコードする。別の実施態様において、この細胞外ドメインは、異種ポリペプチドに共有結合的に連結されて、キメラポリペプチドを形成する
1つの局面において、本発明は、感覚伝達G−タンパク質共役型レセプターの膜貫通ドメインを含む単離されたポリペプチドを提供し、この膜貫通ドメインは、配列番号1の膜貫通ドメインに対する約70%を超えるアミノ酸配列同一性を含む。
【0023】
1つの実施態様において、このポリペプチドは、配列番号1の膜貫通ドメインをコードする。別の実施態様において、このポリペプチドは、配列番号1の細胞質ドメインに対する約70%を超えるアミノ酸同一性を含む細胞質ドメインをさらに含有する。別の実施態様において、このポリペプチドは、配列番号1の細胞質ドメインをコードする。別の実施態様において、膜貫通ドメインは、異種ポリペプチドに共有結合的に連結されて、キメラポリペプチドを形成する。別の実施態様において、このキメラポリペプチドは、G−タンパク質共役型レセプター活性を有する。
【0024】
1つの局面において、本発明は、配列番号1、配列番号2、または配列番号7のアミノ酸配列に対する約70%を超えるアミノ酸配列同一性を含むレセプターに選択的に結合する抗体を提供する。
【0025】
別の局面において、本発明は、配列番号1、配列番号2、または配列番号7のアミノ酸配列に対する約70%を超えるアミノ酸配列同一性を含むポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターを提供する。
【0026】
別の局面において、本発明は、発現ベクターを用いてトランスフェクトされる宿主細胞を提供する。
【0027】
別の局面において、本発明は、感覚細胞において感覚シグナル伝達を調節する化合物を同定するための方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:(i)化合物を感覚伝達G−タンパク質共役型レセプターの細胞外ドメインを含むポリペプチドに接触させる工程であって、この細胞外ドメインは、配列番号1、配列番号2、または配列番号7の細胞外ドメインに対する約70%を超えるアミノ酸配列同一性を含む、工程;および(ii)この細胞外ドメインに対する化合物の機能的効果を決定する工程。
【0028】
別の局面において、本発明は、感覚細胞において感覚シグナル伝達を調節する化合物を同定するための方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:(i)化合物を感覚伝達G−タンパク質共役型レセプターの細胞外ドメインを含むポリペプチドに接触させる工程であって、この膜貫通ドメインは、配列番号1、配列番号2、または配列番号7の細胞外ドメインに対する約70%を超えるアミノ酸配列同一性を含む、工程;および(ii)この膜貫通ドメインに対する化合物の機能的効果を決定する工程。
【0029】
1つの実施態様において、このポリペプチドは、感覚伝達G−タンパク質共役型レセプターであり、このレセプターは、配列番号1、配列番号2、または配列番号7をコードするポリペプチドに対する約70%を超えるアミノ酸同一性を含む。別の実施態様において、ポリペプチドは、異種ポリペプチドに共有結合的に連結する細胞外ドメインを含み、キメラポリペプチドを形成する。別の実施態様において、このポリペプチドは、G−タンパク質共役型レセプター活性を有する。別の実施態様において、この細胞外ドメインは、共有結合的または非共有結合的のいずれかで、固相に連結される。別の実施態様において、この機能的効果は、細胞内のcAMP、IP3またはCa2+における変化を測定することによって決定される。別の実施態様において、この機能的効果は、化学的効果である。別の実施態様において、この機能的効果は、化学的効果である。別の実施態様において、この機能的効果は、細胞外ドメインに対する化合物の結合を測定することによって決定される。別の実施態様において、このポリペプチドは、組換え体である。別の実施態様において、このポリペプチドは、細胞または細胞膜において発現される。別の実施態様において、この細胞は,真核生物細胞である。
【0030】
1つの実施態様において、このポリペプチドは、異種ポリペプチドに共有結合的に連結される膜貫通ドメインを含み、キメラポリペプチドを形成する。
【0031】
1つの局面において、本発明は、感覚伝達G−タンパク質共役型レセプターを作製する方法を提供し、この方法は、このレセプターを、このレセプターをコードする核酸を含む組換え発現ベクターから発現する工程を包含し、ここで、このレセプターのアミノ酸配列は、配列番号1、配列番号2、または配列番号7の配列を有するポリペプチドに対する約70%を超えるアミノ酸同一性を含む。
【0032】
1つの局面において、本発明は、感覚伝達G−タンパク質共役型レセプターを含む組換え細胞を作製する方法を提供し、この方法は、このレセプターをコードする核酸を含む発現ベクターを用いてこの細胞を形質導入する工程を包含し、ここで、このレセプターのアミノ酸配列は、配列番号1、配列番号2、または配列番号7の配列を有するポリペプチドに対する約70%を超えるアミノ酸同一性を含む。
【0033】
1つの局面において、本発明は、感覚伝達G−タンパク質共役型レセプターをコードする核酸を含む組換え発現ベクターを作製する方法を提供し、この方法は、このレセプターをコードする核酸を発現ベクターに連結する工程を包含し、ここで、このレセプターのアミノ酸配列は、配列番号1、配列番号2、または配列番号7の配列を有するポリペプチドに対する約70%を超えるアミノ酸同一性を含む。
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1) 感覚伝達Gタンパク質共役レセプターをコードする単離された核酸であって、該レセプターが配列番号1、配列番号2、または配列番号7のアミノ酸配列に対する約70%を超えるアミノ酸同一性を含む、単離された核酸。
(項目2) 前記核酸が、配列番号1、配列番号2、または配列番号7に対して生成されたポリクローナル抗体に特異的に結合するレセプターをコードする、項目1に記載の単離された核酸。
(項目3) 前記核酸が、Gタンパク質共役レセプター活性を有するレセプターをコードする、項目1に記載の単離された核酸。
(項目4) 前記核酸が配列番号1、配列番号2、または配列番号7のアミノ酸配列を含むレセプターをコードする、項目1に記載の単離された核酸。
(項目5) 前記核酸が配列番号3、配列番号4、または配列番号8のヌクレオチド配列を含む、項目1に記載の単離された核酸。
(項目6) 前記核酸がヒト、マウスまたはラットに由来する、項目1に記載の単離された核酸。
(項目7) 項目1に記載の単離された核酸であって、該核酸が以下:
SAGGPMCFLM(配列番号5)および
WMRYHGPYVF(配列番号6)、
からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードする縮重プライマーセットと同じ配列に対して、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で選択的にハイブリダイズするプライマーにより増幅される、単離された核酸。
(項目8) 前記核酸が、約92kDa〜約102kDaの分子量を有するレセプターをコードする、項目1に記載の単離された核酸。
(項目9) 配列番号3、配列番号4、または配列番号8の配列を有する核酸に対して、高度にストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする感覚伝達Gタンパク質共役レセプターをコードする、単離された核酸。
(項目10) 感覚伝達Gタンパク質共役レセプターをコードする単離された核酸であって、該レセプターは、配列番号1、配列番号2、または配列番号7の配列を有するポリペプチドに対する約70%を超えるアミノ酸同一性を含み、ここで該核酸が、配列番号3、配列番号4、または配列番号8のヌクレオチド配列に対して、中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で選択的にハイブリダイズする、単離された核酸。
(項目11) 感覚伝達Gタンパク質共役レセプターの細胞外ドメインをコードする単離された核酸であって、該細胞外ドメインは、配列番号1の細胞外ドメインに対して約70%を超えるアミノ酸配列同一性を有する、単離された核酸。
(項目12) 前記核酸が、異種ポリペプチドをコードする核酸に連結されて、キメラポリペプチドを形成する、細胞外ドメインをコードする、項目11に記載の単離された核酸。
(項目13) 前記核酸が、配列番号1の細胞外ドメインをコードする、項目11に記載の単離された核酸。
(項目14) 感覚伝達Gタンパク質共役レセプターの膜貫通ドメインをコードする単離された核酸であって、該膜貫通ドメインは、配列番号1の膜貫通ドメインに対して約70%を超えるアミノ酸配列同一性を含む、単離された核酸。
(項目15) 前記核酸が、異種ポリペプチドをコードする核酸に連結されて、キメラポリペプチドを形成する、膜貫通ドメインをコードする、項目14に記載の単離された核酸。
(項目16) 前記核酸が、配列番号1の膜貫通ドメインをコードする、項目14に記載の単離された核酸。
(項目17) 前記核酸が、配列番号1の細胞質ドメインに対して約70%を超えるアミノ酸配列同一性を含む細胞質ドメインをさらにコードする、項目14に記載の単離された核酸。
(項目18) 前記核酸が、配列番号1の細胞質ドメインをコードする、項目17に記載の単離された核酸。
(項目19) 単離された感覚伝達Gタンパク質共役レセプターであって、該レセプターは、配列番号1、配列番号2、または配列番号7のアミノ酸配列に対して約70%を超えるアミノ酸配列同一性を含む、単離されたレセプター。
(項目20) 前記レセプターが、配列番号1、配列番号2、または配列番号7に対して生成されるポリクローナル抗体に対して特異的に結合する、項目19に記載の単離されたレセプター。
(項目21) 前記レセプターが、Gタンパク質共役レセプター活性を有する、項目19に記載の単離されたレセプター。
(項目22) 前記レセプターが、配列番号1、配列番号2、または配列番号7のアミノ酸配列を有する、項目19に記載の単離されたレセプター。
(項目23) 前記レセプターが、ヒト、ラットまたはマウスに由来する、項目19に記載の単離されたレセプター。
(項目24) 感覚伝達Gタンパク質共役レセプターの細胞外ドメインを含む単離されたポリペプチドであって、該細胞外ドメインは、配列番号1の細胞外ドメインに対して約70%を超えるアミノ酸配列同一性を含む、単離されたポリペプチド。
(項目25) 前記ポリペプチドが、配列番号1の細胞外ドメインをコードする、項目24に記載の単離されたポリペプチド。
(項目26) 前記細胞外ドメインが、異種ポリペプチドに共有結合されて、キメラポリペプチドを形成する、項目24に記載の単離されたポリペプチド。
(項目27) 感覚伝達Gタンパク質共役レセプターの膜貫通ドメインを含む単離されたポリペプチドであって、該膜貫通ドメインは、配列番号1の膜貫通ドメインに対して約70%を超えるアミノ酸配列同一性を含む、単離されたポリペプチド。
(項目28) 前記ポリペプチドが、配列番号1の膜貫通ドメインをコードする、項目27に記載の単離されたポリペプチド。
(項目29) 配列番号1の細胞質ドメインに対して約70%を超えるアミノ酸同一性を含む細胞質ドメインをさらに含む、項目27に記載の単離されたポリペプチド。
(項目30) 前記ポリペプチドが、配列番号1の細胞質ドメインをコードする、項目29に記載の単離されたポリペプチド。
(項目31) 前記膜貫通ドメインが、キメラポリペプチドを形成する、異種ポリペプチドに共有結合される、項目27に記載の単離されたポリペプチド。
(項目32) 前記キメラポリペプチドが、Gタンパク質共役レセプター活性を有する項目31に記載の単離されたポリペプチド。
(項目33) 項目19に記載のレセプターに選択的に結合する抗体。
(項目34) 項目1に記載の核酸を含む、発現ベクター。
(項目35) 項目34のベクターでトランスフェクトされる、宿主細胞。
(項目36) 感覚細胞における感覚性シグナル伝達を調節する化合物を同定するための方法であって、該方法は以下の工程:
(i)該化合物を感覚伝達Gタンパク質共役レセプターの細胞外ドメインを含むポリペプチドと接触させる工程であって、該細胞外ドメインは配列番号1、配列番号2、または配列番号7の細胞外ドメインに対する約70%を超えるアミノ酸配列同一性を含む、工程;および
(ii)該細胞外ドメインに対する該化合物の機能的効果を決定する工程、
を包含する、方法。
(項目37) 前記ポリペプチドが、感覚伝達Gタンパク質共役レセプターであって、該レセプターが、配列番号1、配列番号2、または配列番号7をコードするポリペプチドに対する約70%を超えるアミノ酸同一性を含む、項目36に記載の方法。
(項目38) 前記ポリペプチドが、キメラポリペプチドを形成する、異種ポリペプチドに共有結合される細胞外ドメインを含む、項目37に記載の方法。
(項目39) 前記ポリペプチドが、Gタンパク質共役レセプター活性を有する、項目37または項目38に記載の方法。
(項目40) 前記細胞外ドメインが、固相に連結される、項目36に記載の方法。
(項目41) 前記細胞外ドメインが、固相に共有結合される、項目40に記載の方法。
(項目42) 前記機能的効果が細胞内cAMP、IP3またはCa2+の変化を測定することにより決定される、項目37または項目38に記載の方法。
(項目43) 前記機能的効果が化学的効果である、項目36に記載の方法。
(項目44) 前記機能的効果が物理的効果である、項目36に記載の方法。
(項目45) 前記機能的効果が、細胞外ドメインへの前記化合物の結合を測定することによって決定される、項目36に記載の方法。
(項目46) 前記ポリペプチドが、組換え体である、項目36に記載の方法。
(項目47) 前記ポリペプチドが、ラット、マウスまたはヒト由来である、項目36に記載の方法。
(項目48) 前記ポリペプチドが、配列番号1、配列番号2、または配列番号7のアミノ酸配列を含む、項目37に記載の方法。
(項目49) 前記ポリペプチドが、細胞または細胞膜において発現される、項目37または項目38に記載の方法。
(項目50) 前記細胞が真核生物細胞である、項目49に記載の方法。
(項目51) 感覚細胞における感覚性シグナル伝達を調節する化合物を同定するための方法であって、該方法は以下の工程:
(i)該化合物を感覚伝達Gタンパク質共役レセプターの膜貫通ドメインを含むポリペプチドと接触させる工程であって、該膜貫通ドメインは配列番号1、配列番号2、または配列番号7の膜貫通ドメインに対する約70%を超えるアミノ酸配列同一性を含む、工程;および
(ii)該膜貫通ドメインに対する該化合物の機能的効果を決定する工程、
を包含する、方法。
(項目52) 前記ポリペプチドが、キメラポリペプチドを形成する、異種ポリペプチドに共有結合される膜貫通ドメインを含む、項目51に記載の方法。
(項目53) 前記キメラポリペプチドが、
Gタンパク質共役レセプター活性を有する、項目52に記載の方法。
(項目54) 前記機能的効果が、細胞内cAMP、IP3またはCa2+の変化を測定することにより決定される、項目51に記載の方法。
(項目55) 前記機能的効果が化学的効果である、項目51に記載の方法。
(項目56) 前記機能的効果が物理的効果である、項目51に記載の方法。
(項目57) 前記ポリペプチドが、組換え体である、項目51に記載の方法。
(項目58) 前記ポリペプチドが、ラット、マウスまたはヒト由来である、項目51に記載の方法。
(項目59) 前記ポリペプチドが、細胞または細胞膜において発現される、項目51または項目52に記載の方法。
(項目60) 前記細胞が真核生物細胞である、項目59に記載の方法。
(項目61) 感覚伝達Gタンパク質共役レセプターを作製する方法であって、該方法は、該レセプターをコードする核酸を含む組換え発現ベクターから該レセプターを発現する工程を包含し、ここで該レセプターのアミノ酸配列は、配列番号1、配列番号2、または配列番号7の配列を有するポリペプチドに対する約70%を超えるアミノ酸同一性を含む、方法。
(項目62) 感覚伝達Gタンパク質共役レセプターを含む組換え細胞を作製する方法であって、該方法は、該レセプターをコードする核酸を含む発現ベクターで該細胞を形質転換する工程を包含し、ここで該レセプターのアミノ酸配列は、配列番号1、配列番号2、または配列番号7の配列を有するポリペプチドに対する約70%を超えるアミノ酸同一性を含む、方法。
(項目63) 感覚伝達Gタンパク質共役レセプターをコードする核酸を含む組換え発現ベクターを作製する方法であって、該方法は、発現ベクターに該レセプターをコードする核酸を連結する工程を含み、ここで該レセプターのアミノ酸配列は、配列番号1、配列番号2、または配列番号7の配列を有するポリペプチドに対する約70%を超えるアミノ酸同一性を含む、方法。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(発明の詳細な説明)
(I.導入)
本発明は、初めて、味覚細胞特異的G−タンパク質共役型レセプターをコードする核酸を提供する。これらの核酸およびこれらがコードするレセプターは、G−タンパク質共役型レセプターについて「GPCR」と称し、そしてGPCR−B4と命名される。これらの味覚細胞特異的GPCRは、味覚伝達経路の成分である(例えば、実施例IIを参照のこと)。これらの核酸は、味覚細胞において特異的に発現されるために、これらの核酸は、味覚細胞の同定のために役立つプローブを提供する。例えば、GPCRポリペプチドおよびタンパク質に対するプローブは、味覚細胞のサブセット(例えば、葉状細胞および有郭細胞、または特定の味覚レセプター細胞(例えば、甘味、酸味、辛味および苦味))を同定するために使用され得る。これらはまた、舌の味覚細胞と脳の味覚中枢へと導く味覚感覚ニューロンとの間の関係を解明する、味覚の組織分布地図を作製するためのツールとして役立つ。さらに、核酸およびそれらがコードするタンパク質は、味覚誘導される挙動を分析するためのプローブとして使用され得る。
【0035】
本発明はまた、これらの新規な味覚細胞GPCRのモジュレーター(例えば、アクチベーター、インヒビター、刺激因子、エンハンサー、アゴニストおよびアンタゴニスト)をスクリーニングする方法を提供する。味覚伝達のこのようなモジュレーターは、味覚シグナル伝達経路の薬理学的および遺伝的調節に有用である。これらのスクリーニング方法は、味覚細胞活性の高親和性のアゴニストおよびアンタゴニストを同定するために使用され得る。次いで、これらの調節化合物は、食品産業および製薬産業において、食味をカスタマイズするため使用され得る。従って、本発明は、味覚の調節についてのアッセイを提供し、ここで、GPCR−B4は、味覚伝達に対するモジュレーターの効果についての、直接的または間接的なレポーター分子として作用する。GPCRは、例えば、イオン濃度、膜電位、電流、イオンフラックス、転写、シグナル伝達、レセプター−リガンド相互作用、セカンドメッセンジャー濃度における変化を、インビトロ、インビボおよびエキソビボで測定するために、アッセイにおいて使用され得る。1つの実施態様において、GPCR−B4は、第2のレポーター分子(例えば、緑色蛍光タンパク質)への結合を介して、間接的なレポーターとして使用され得る(例えば、MistiliおよびSpector,Nature Biotechnology 15:961−964(1997)を参照のこと)。別の実施態様において、GPCR−B4は、細胞中で組換え発現され、そしてGPCR活性を介する味覚伝達の調節が、Ca2+レベルにおける変化を測定することによってアッセイされる(実施例IIを参照のこと)。
【0036】
味覚伝達のモジュレーターについてアッセイする方法としては、以下が挙げられる:GPCR−B4、それらの部分(例えば、細胞外ドメイン)、またはGPCR−B4の1以上のドメインを含むキメラタンパク質を使用するインビトロリガンド結合アッセイ、卵母細胞GPCR−B4発現;組織培養細胞GPCR−B4発現;GPCR−B4の転写活性化;GPCRのリン酸化および脱リン酸化;GPCRへのG−タンパク質の結合;リガンド結合アッセイ;電位、膜電位および膜コンダクタンスの変化;イオンフラックスアッセイ;細胞内セカンドメッセンジャー(例えば、cAMPおよびイノシトール三リン酸)における変化;細胞内カルシウムレベルにおける変化;および神経伝達物質の放出。
【0037】
最後に、本発明は、GPCR−B4の核酸およびタンパク質発現を検出する方法を提供し、これらは、味覚伝達調節および味覚レセプター細胞の特異的同定の研究を可能にする。GPCR−B4はまた、父系調査および法医学的調査のための有用な核酸プローブを提供する。GPCR−B4は、味覚レセプター細胞の亜集団(例えば、葉状、茸状および有郭の味覚レセプター細胞)を同定するための、核酸プローブとして有用である。GPCR−B4レセプターはまた、味覚レセプター細胞の同定に有用なモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を作製するために使用され得る。味覚レセプター細胞は、以下のような技術を使用して同定され得る:mRNAの逆転写および増幅、全RNAまたはポリA+RNAの単離、ノーザンブロッティング、ドットブロッティング、インサイチュハイブリダイゼーション、RNase保護、S1消化、DNAマイクロチップアレイの走査、ウェスタンブロットなど。
【0038】
機能的に、GPCR−B4は、味覚シグナル伝達を媒介するためにG−タンパク質と相互作用する、味覚伝達に関与する7つの膜貫通G−タンパク質共役型レセプターを提示する(例えば、Fong,Cell Signal 8:217(1996);Baldwin,Curr.Opin.Cell Biol.6:180(1994)を参照のこと)。
【0039】
構造的に、GPCR−B4のヌクレオチド配列(例えば、配列番号3〜4および配列番号8(それぞれ、ラット、マウスおよびヒトから単離された)を参照のこと)は、約842アミノ酸のポリペプチドをコードし、このポリペプチドは、約97kDaの推定分子量および92〜102kDaの推定範囲を有する(例えば、ラット、マウスおよびヒトから単離された配列番号1〜2および配列番号7を参照のこと)。他の種由来の関連するGPCR−B4遺伝子は、少なくとも約25アミノ酸長、必要に応じて、50〜100アミノ酸長のアミノ酸領域にわたって、少なくとも約70%のアミノ酸同一性を共有する。GPCR−B4は、葉状細胞および茸状細胞において特異的に発現され、舌の有郭味覚レセプター細胞においてより低く発現される。GPCR−B4は、オリゴ−dTをプライムした有郭cDNAライブラリー由来の約1/150,000のcDNAにおいて見出される中程度に稀な配列である(実施例1を参照のこと)。
【0040】
本発明はまた、配列番号1に示される以下のGPCR−B4の多型性改変体を提供する:改変体#1、8位のアミノ酸のイソロイシン残基がロイシン酸残基で置換されている;改変体#2、26位のアミノ酸のアスパラギン酸残基がグルタミン酸残基で置換されている;および改変体#3、46位のアミノ酸のグリシン残基がアラニン残基で置換されている。
【0041】
GPCR−B4のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の特定の領域は、GPCR−B4の多型性改変体、種間ホモログおよび対立遺伝子を同定するために使用され得る。この同定は、インビトロで(例えば、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下またはPCR(配列番号5〜6をコードするプライマーを使用する)および配列決定によりなされ得るか、または他のヌクレオチド配列との比較のためにコンピューターシステム中の配列情報を使用することによってなされ得る。代表的に、GPCR−B4の多型性改変体および対立遺伝子の同定は、約25アミノ酸以上(例えば、50〜100アミノ酸)のアミノ酸配列を比較することによってなされる。少なくとも約70%以上、必要に応じて80%または90〜95%以上のアミノ酸同一性は、代表的に、タンパク質が、GPCR−B4の多型性改変体、種間ホモログまたは対立遺伝子であることを実証する。配列比較は、以下に議論される配列比較アルゴリズムのいずれかを使用して実施され得る。GPCR−B4またはその保存領域に特異的に結合する抗体はまた、対立遺伝子、種間ホモログおよび多型性改変体を同定するために使用され得る。
【0042】
GPCR−B4の多型性改変体、種間ホモログおよび対立遺伝子は、推定GPCR−B4ポリペプチドの味覚細胞特異的発現を試験することによって確認される。代表的に、配列番号1〜2または配列番号7のアミノ酸配列を有するGPCR−B4は、GPCR−B4の多型性改変体または対立遺伝子の同定を実施するために、推定GPCR−B4タンパク質との比較におけるポジティブコントロールとして使用される。多型性改変体、対立遺伝子、および種間ホモログは、G−タンパク質共役型レセプターの7つの膜貫通構造を保持することが予想される。
【0043】
GPCR−B4のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の情報はまた、コンピューターシステムにおいて味覚細胞特異的ポリペプチドのモデルを構築するために使用され得る。これらのモデルは、GPCR−B4を活性化または阻害し得る化合物を同定するために、連続的に使用される。GPCR−B4の活性を調節するこのような化合物は、味覚伝達におけるGPCR−B4の役割を研究するために使用され得る。
【0044】
GPCR−B4の単離は、G−タンパク質共役型レセプター味覚伝達のインヒビターおよびアクチベーターについてアッセイするための方法を、初めて提供する。生物学的に活性なGPCR−B4は、例えば、以下を測定するインビボ発現およびインビトロ発現を使用して、味覚伝達物質としてのGPCR−B4のインヒビターおよびアクチベーターを試験するために有用である:GPCR−B4の転写活性化;リガンド結合;リン酸化および脱リン酸化;G−タンパク質への結合;G−タンパク質活性化;調節分子結合;電位、膜電位および膜コンダクタンスの変化;イオンフラックス;細胞内セカンドメッセンジャー(例えば、cAMPおよびイノシトール三リン酸);細胞内カルシウムレベル;および神経伝達物質の放出。GPCR−B4を使用して同定されるこのようなアクチベーターおよびインヒビターは、味覚伝達をさらに研究するため、ならびに特異的な味覚アゴニストおよびアンタゴニストを同定するために使用され得る。このようなアクチベーターおよびインヒビターは、食味をカスタマイズするために薬剤および食品剤として使用される。
【0045】
GPCR−B4核酸およびGPCR−B4の発現を検出する方法はまた、味覚細胞を同定するために、ならびに舌および舌の味覚レセプター細胞の脳の味覚感覚ニューロンに対する関係の組織分布地図を作製するために有用である。ヒトGPCR−B4をコードする遺伝子の染色体位置決定は、GPCR−B4によって引き起こされ、そして関連する疾患、変異および形質を同定するために使用され得る。
【0046】
(II.定義)
本明細書中で使用される場合、以下の用語は、他で特定されない限り、これらに与えられた意味を有する。
【0047】
「味覚レセプター細胞」は、舌の味蕾を形成するためのグループ(例えば、葉状細胞、茸状細胞および有郭細胞)へと組織化される、神経上皮細胞である(例えば、Roperら、Ann.Rev.Neurosci.12:329−353(1989)を参照のこと)。
【0048】
「GPCR−B4」はまた「TR2」とも呼ばれ、葉状細胞、茸状細胞および有郭細胞のような味覚レセプター細胞において、特異的に発現されるG−タンパク質共役型レセプターをいう(例えば、Hoonら、Cell 96:541〜551(1999)(その全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。このような味覚細胞は、特異的分子(例えば、ガストデューシン(味覚細胞特異的G−タンパク質))を発現するので、これらの細胞が同定され得る(McLaughinら、Nature 357:563−569(1992))。味覚レセプター細胞はまた、形態に基づいて同定され得る(例えば、Roper、前出を参照のこと)。GPCR−B4は、実施例IIに記載されるように、味覚伝達のためのレセプターとして作用する能力を有する。
【0049】
GPCR−B4は、「G−タンパク質共役型レセプター活性」を有する7つの膜貫通領域を有するGPCRをコードする。例えば、これらは、細胞外刺激に応答してG−タンパク質に結合し、そして酵素(例えば、ホスホリパーゼCおよびアデニル酸シクラーゼ)の刺激を介してセカンドメッセンジャー(例えば、IP3、cAMP、およびCa2+)の産生を促進する(GPCRの構造および機能の説明については、例えば、Fong(前出)、およびBaldwin(前出)を参照のこと)。
【0050】
従って、用語GPCR−B4は、(1)配列番号1〜2および配列番号7に対して約25アミノ酸、必要に応じて50〜100アミノ酸のウインドウにわたり、約70%のアミノ酸配列同一性、必要に応じて約75%、80%、85%、90%または95%のアミノ酸配列同一性を有するか;(2)配列番号1〜2および配列番号7からなる群より選択されるアミノ酸配列およびその保存的に改変された改変体を含む免疫原に対して惹起される抗体に結合するか;(3)配列番号3〜4および配列番号8からなる群より選択される配列およびその保存的に改変された改変体に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、特異的にハイブリダイズする(少なくとも約500ヌクレオチド、必要に応じて、少なくとも約900ヌクレオチドのサイズで)か;または(4)配列番号5〜6をコードする縮重プライマーセットと同じ配列に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、特異的にハイブリダイズするプライマーによって増幅される、多型性改変体、対立遺伝子変異体および種間ホモログをいう。
【0051】
位相的に、感覚GPCRは、N末端「細胞外ドメイン」、7つの膜貫通領域ならびに対応する細胞質ループおよび細胞外ループを含む「膜貫通ドメイン」、ならびにC末端「細胞質ドメイン」を有する(例えば、Hoonら、Cell 96:541〜551(1999);BuckおよびAxel、Cell 65:175〜187(1991)を参照のこと)。これらのドメインは当業者に公知の方法(例えば、疎水性ドメインおよび親水性ドメインを同定する配列分析プログラム)を使用して構造的に同定され得る(例えば、KyteおよびDoolittle、J.Mol.Biol.157:105〜132(1982)を参照のこと)。このようなドメインは、キメラタンパク質を作製するために、および本発明のインビトロアッセイのために、有用である。
【0052】
従って、「細胞外ドメイン」は、細胞膜から突出し、そして細胞外リガンドに結合するGPCR−B4のドメインをいう。この領域はN末端で始まり、そしてほぼアミノ酸563位の保存されたグルタミン酸プラスまたはマイナス約20アミノ酸で終了する。配列番号1のアミノ酸1〜580に対応する領域(ヌクレオチド1〜1740、ここでヌクレオチド1は、ATG開始メチオニンコドンで開始する)は、膜貫通ドメインへわずかに伸長する細胞外ドメインの1つの実施態様である。この実施態様は、可溶性および固相の両方でのインビトロリガンド結合アッセイに有用である。
【0053】
7つの膜貫通領域ならびに対応する細胞質ループおよび細胞外ループを含む「膜貫通ドメイン」は、ほぼアミノ酸563位の保存されたグルタミン酸残基プラスまたはマイナス約20アミノ酸で始まり、そしてほぼ812位の保存されたチロシンアミノ酸残基プラスまたはマイナス約10アミノ酸で終了するGPCR−B4のドメインをいう。
【0054】
「細胞質ドメイン」は、812位の保存されたチロシンアミノ酸残基プラスまたはマイナス約10アミノ酸で始まり、そしてこのポリペプチドのC末端まで連続するGPCR−B4のドメインをいう。
【0055】
本明細書中に使用される場合、「生物学的サンプル」は、GPCR−B4またはGPCR−B4タンパク質をコードする核酸を含む、生物学的組織または液体のサンプルである。このようなサンプルとしては、ヒト、マウス、およびラット(特に、舌(ton))から単離された組織が挙げられるが、これらに限定されない。生物学的サンプルはまた、組織学的目的のために採取された凍結切片のような、組織の切片を含み得る。生物学的サンプルは、代表的には、昆虫、原生動物、鳥類、魚類、は虫類、および好ましくは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウシ、イヌ、モルモットまたはウサギ)、および最も好ましくは、霊長類(例えば、チンパンジーまたはヒト)のような、真核生物生物体から獲得される。組織としては、舌組織、単離された味蕾、および味覚(testis)組織が挙げられる。
【0056】
「GPCR活性」とは、GPCRがシグナルを伝達する能力をいう。このような活性は、GPCR(または、キメラGPCR)をG−タンパク質または乱交雑なG−タンパク質(例えば、Gα15)のいずれか、および酵素(例えば、PLC)に結合させて、そして(OffermanおよびSimon,J.Biol.Chem.270:15175−15180(1995))を使用して、細胞内カルシウムの増加を測定することによって、異種細胞において測定され得る。レセプター活性は、蛍光Ca2+指標色素および蛍光定量的画像を使用して、[Ca2+iにおけるリガンド誘導性の変化を記録することによって、効果的に測定され得る。必要に応じて、本発明のポリペプチドは、感覚伝達、必要に応じて味覚細胞における味覚伝達に関与する。
【0057】
GPCR−B4媒介味覚伝達を調節する化合物を試験するためのアッセイの文脈における、句「機能的効果」には、レセプターの影響下で、間接的もしくは直接的であるいずれかのパラメーター(例えば、機能的、物理的または化学的効果)の決定を含む。これは、リガンド結合を含み、イオンフラックス、膜電位、電流、転写、G−タンパク質共役、GPCRリン酸化もしくはGPCR脱リン酸化、シグナル伝達、レセプター−リガンド相互作用、セカンドメッセンジャー濃度(例えば、cAMP、IP3、または細胞内Ca2+)における、インビトロ、インビボおよびエキソビボでの変化、ならびに神経伝達物質もしくはホルモンの放出の増加または減少のような他の生理学的効果をも含む。
【0058】
「機能的効果を決定すること」とは、GPCR−B4の影響下で、間接的または直接的であるパラメーター(例えば、機能的、物理的および化学的効果)を増加または減少させる化合物についてのアッセイを意味する。そのような機能的効果は、当業者に公知の任意の手段(例えば、分光学的特徴(例えば、蛍光、吸光、屈折率)、流体力学(例えば、形状)、クロマトグラフィーまたは溶解度特性における変化、パッチクランプ、電位感受性色素、細胞全体の電流、放射性同位体流出、誘導性マーカー、卵母細胞GPCR−B4発現;組織培養細胞GPCR−B4発現;GPCR−B4の転写活性化;リガンド結合アッセイ;電圧、膜電位およびコンダクタンスの変化;イオンフラックスアッセイ;cAMPおよびイノシトール三リン酸(IP3)のような細胞内セカンドメッセンジャーにおける変化;細胞内カルシウムレベルにおける変化;神経伝達物質の放出など)により測定され得る。
【0059】
GPCR−B4の「インヒビター」、「アクチベーター」および「モジュレーター」は互換的に使用され、味覚伝達についてのインビトロアッセイおよびインビボアッセイを用いて同定される阻害分子、活性化分子、または調節分子(例えば、リガンド、アゴニスト、アンタゴニストならびにそれらのホモログおよび模倣体)をいう。インヒビターは、例えば、結合して刺激を部分的もしくは全体的にブロックするか、活性化を減少、妨害、遅延するか、味覚伝達を不活化、脱感作、または下方調節する化合物(例えば、アンタゴニスト)である。アクチベーターは、例えば、結合して活性化を刺激、増大、開放、活性化、促進、増強するか、味覚伝達を感作もしくは上方調節する化合物(例えば、アゴニスト)である。モジュレーターは、レセプターと以下のものとの相互作用を変更する化合物を含む:アクチベーターまたはインヒビターに結合する細胞外タンパク質(例えば、エブネリン(ebnerin)、および疎水性キャリアファミリーの他のメンバー);G−タンパク質;キナーゼ(例えば、レセプターの不活性化および脱感作に関与するロドプシンキナーゼおよびβアドレナリン作用性レセプターキナーゼのホモログ);およびアレスチン様タンパク質(これもまた、レセプターを不活性化および脱感作する)。モジュレーターは、GPCR−B4の遺伝的に改変された(例えば、活性化が改変された)バージョン、ならびに天然に存在するリガンドおよび合成リガンド、アンタゴニスト、アゴニスト、低化学分子などを含む。インヒビターおよびアクチベーターについてのそのようなアッセイは、例えば、上記のように、細胞もしくは細胞膜においてGPCR−B4を発現する工程、推定モジュレーター化合物を適用する工程、次いで味覚伝達に対する機能的効果を決定する工程を包含する。潜在的なアクチベーター、インヒビターまたはモジュレーターを用いて処理されるGPCR−B4を含むサンプルまたはアッセイは、インヒビター、アクチベーターまたはモジュレーターを含まないコントロールサンプルと比較されて、阻害の程度を調べる。コントロールサンプル(インヒビターで処理されていない)は、100%の相対的なGPCR−B4活性値に設定される。コントロールに対するGPCR−B4の活性値が約80%、必要に応じて50%または25〜0%である場合、GPCR−B4の阻害は、達成される。コントロールに対するGPCR−B4の活性値が110%、必要に応じて150%、必要に応じて200〜500%、または1000%〜3000%より高い場合、GPCR−B4の活性化は達成される。
【0060】
「生物学的に活性な」GPCR−B4とは、味覚レセプター細胞において味覚伝達に関与する、上記のような、GPCR活性を有するGPCR−B4をいう。
【0061】
用語「単離された」「精製された」または「生物学的に純粋な」とは、その天然の状態で見出されるような、通常それに付随する成分を実質的にまたは本質的に含まない物質をいう。純度および均一性は、代表的には分析化学技術(例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィー)を用いて決定される。調製物に存在する優勢種であるタンパク質は、実質的に精製される。特に、単離されたGPCR−B4の核酸は、GPCR−B4の遺伝子と隣接しかつGPCR−B4以外のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームから分離される。用語「精製された」とは、核酸またはタンパク質が、電気泳動ゲルで本質的に一つのバンドを生じることを示す。詳細には、核酸またはタンパク質は、少なくとも85%純粋、必要に応じて少なくとも95%純粋、および必要に応じて少なくとも99%純粋であることを意味する。
【0062】
「核酸」とは、一本鎖もしくは二本鎖のいずれかの形態である、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびそれらのポリマーをいう。この用語は、公知のヌクレオチドアナログまたは修飾された骨格残基もしくは結合を含む核酸(これらは、合成したもの、天然に存在するもの、および天然に存在しないものであり、参照核酸と類似した結合特性を有し、そして参照ヌクレオチドと類似した様式で代謝される)を含む。そのようなアナログの例としては、ホスホロチオエート、ホスホラミダイト、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
他に示されない限り、特定の核酸配列はまた、保存的に修飾されたそれらの改変体(例えば、縮重コドン置換)および相補配列、ならびに明らかに示される配列を暗に含む。詳細には、縮重コドン置換は、1つ以上の選択された(または全ての)コドンの第3位が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換されている配列を生成することによって達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);Rossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。用語核酸は、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと互換的に使用される。
【0064】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、本明細書中で互換的に使用され、アミノ酸残基のポリマーをいう。この用語は、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工的化学模倣体であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび天然に存在しないアミノ酸ポリマーに対応して適用する。
【0065】
用語「アミノ酸」とは、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸に類似した形式で機能するアミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣物をいう。天然に存在するアミノ酸は、遺伝コードによりコードされるアミノ酸、ならびに後に修飾されるこれらのアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、およびO−ホスホセリン)である。アミノ酸アナログとは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造、すなわち、水素に結合されるα炭素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基を有する化合物(例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム)をいう。そのようなアナログは、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたぺプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。アミノ酸模倣体とは、アミノ酸の一般的な化学構造と異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と類似した様式で機能する化学化合物をいう。
【0066】
アミノ酸は、本明細書中で、それらの一般的に公知の三文字の記号またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される一文字の記号のいずれかで示され得る。同様にヌクレオチドは、それらの一般的に受け入れられている一文字コードにより示され得る。
【0067】
「保存的に修飾された改変体」は、アミノ酸および核酸の両方の配列に適用する。特定の核酸配列に関して、保存的に修飾される改変体とは、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードするか、またはその核酸が本質的に同一な配列に対するアミノ酸配列をコードしない核酸をいう。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的に同一な核酸は、任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUは全て、アミノ酸アラニンをコードする。従って、アラニンがコドンにより特定化されているいずれの位置で、コドンは、コードされるポリペプチドを変更せずに記載された任意の対応コドンに変更され得る。そのような核酸の改変は、「サイレントな改変」であり、これは保存的に修飾された改変の1種である。本明細書中の、ポリペプチドをコードするいずれの核酸配列もまた、核酸の全ての可能なサイレントな改変を記載する。当業者は、核酸における各コドン(AUG(これは、通常メチオニンをコードする唯一のコドン)およびTGG(これは、通常、トリプトファンをコードする唯一のコドン)を除く)は、修飾されて、機能的に同一な分子を生じ得ることを認識する。従って、ポリペプチドをコードする核酸のそれぞれのサイレントな改変は、それぞれ記載される配列において黙認される。
【0068】
アミノ酸配列に関して、当業者は、核酸、ペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質配列に対する、個々の置換、欠失または付加(これらは単一のアミノ酸もしくはコードされる配列中のアミノ酸の小さな割合を改変、付加または欠失する)は、「保存的に修飾された改変体」であり、ここで、この改変は、化学的に類似したアミノ酸とのアミノ酸の置換を生じる。機能的に類似するアミノ酸を提供する保存的置換の表は、当該分野において周知である。そのような保存的に修飾された改変体は、本発明の多型性改変体、種間ホモログ、および対立遺伝子を加え、かつそれらを除外しない。
【0069】
以下の8つの群の各々は、互いについての保存的置換体であるアミノ酸を含む:
1)アラニン(A)、グリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7)セリン(S)、スレオニン(T);および
8)システイン(C)、メチオニン(M)
(例えば、Creighton、Proteins(1984)を参照のこと)。
【0070】
ポリペプチド構造のような高分子構造は、組織化の種々のレベルの点において記載され得る。この組織化の一般的考察について、例えば、Albertsら、Molecular Biology of the Cell(第3版、1994)ならびにCantorおよびSchimmel、Biophysical
Chemistry Part I:The Conformation of Biological Macromolecules(1980)を参照のこと。「一次構造」とは、特定のペプチドのアミノ酸配列をいう。「二次構造」とは局所的に整列されたポリペプチド内の三次元構造をいう。これらの構造は、ドメインとして一般的に公知である。ドメインは、ポリペプチドの緻密なユニットを形成し、かつ代表的には50〜350のアミノ酸長である、ポリペプチドの一部である。典型的なドメインは、β−シートおよびα−ヘリックスのストレッチのようなより小さい組織化の区画からなる。「三次構造」とは、ポリペプチドモノマーの完全な三次元構造をいう。「四次構造」とは、独立した三次ユニットの非共有結合的会合により形成される三次元構造をいう。異方性用語はまた、エネルギー用語として公知である。
【0071】
「標識」または「検出可能な部分」は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、または化学的手段によって検出可能な組成物である。例えば、有用な標識としては、32P、蛍光色素、電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAにおいて一般的に使用されるような)、ビオチン、ジゴキシゲニン、またはハプテン、および上記の7つ(ant or 7)が、例えば、放射性標識をそのペプチドへ組込むことによって検出可能にされ得、そしてそのペプチドと特異的に反応する抗体を検出するために使用されるタンパク質が挙げられる。
【0072】
「標識された核酸プローブまたはオリゴヌクレオチド」は、リンカーもしくは化学結合を介して共有結合的に、またはイオン結合、ファンデルワールス結合、静電結合、もしくは水素結合を介して非共有結合的にかの、いずれかで標識に結合されるものであり、その結果、プローブの存在が、そのプローブへ結合した標識の存在を検出することによって検出され得る。
【0073】
本明細書中で使用される場合、「核酸プローブまたはオリゴヌクレオチド」は、1つ以上の型の化学結合(通常は、相補的塩基対形成(通常は水素結合形成を介する)を介する)を介して、相補配列の標的核酸へ結合し得る核酸として定義される。本明細書中で使用される場合、プローブは、天然の塩基(すなわち、A、G、C、またはT)または修飾塩基(7−デアザグアノシン、イノシン、など)を含み得る。さらに、プローブ中の塩基は、これがハイブリダイゼーションを干渉しない限り、ホスホジエステル結合以外の結合により結合され得る。従って、例えば、プローブは、構成塩基がホスホジエステル結合よりもむしろペプチド結合により結合されているペプチド核酸であり得る。プローブが、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに依存して、そのプローブ配列と完全な相補性を欠く標的配列を結合し得ることが当業者に理解される。このプローブは、必要に応じて、同位体、発色団、発光団、色素原を用いて直接的に標識されるか、またはストレプトアビジン複合体が後に結合し得るようなビオチンを用いて間接的に標識される。プローブの存在または非存在についてのアッセイによって、選択配列もしくは部分配列の存在または非存在を検出し得る。
【0074】
例えば、細胞または核酸、タンパク質、もしくはベクターに対して使用される場合、用語「組換え」は、細胞、核酸、タンパク質またはベクターが、異種の核酸もしくはタンパク質の導入か、または天然の核酸もしくはタンパク質の変更によって改変されていることか、あるいはその細胞が、そのように改変された細胞に由来することを示す。従って、例えば、組換え細胞は、細胞の天然(非組換え)形態内で見出されない遺伝子を発現するか、またはそうでなければ異常に発現されるか、過小発現されるか、もしくは全く発現されない天然の遺伝子を発現する。
【0075】
核酸の一部に対して使用される場合、用語「異種」とは、その核酸が天然で互いに同じ関係で見出されない2つ以上の部分配列を含むことを示す。例えば、核酸は、代表的には組換え的に産生され、新規の機能的核酸を作製するよう整列された非関連の遺伝子からの2つ以上の配列(例えば、1つの供給源由来のプロモーターおよび別の供給源由来のコード領域)を有する。同様に、異種タンパク質は、そのタンパク質が天然では互いに同じ関係で見出されない2つ以上の部分配列を含む(例えば、融合タンパク質)ことを示す。
【0076】
「プロモーター」は、核酸の転写を指向する核酸制御配列のアレイとして規定される。本明細書中で使用される場合、プロモーターは、転写開始部位付近の必要な核酸配列(例えば、ポリメラーゼII型プロモーターの場合、TATAエレメント)を含む。プロモーターはまた、遠位のエンハンサーまたはリプレッサーエレメントを必要に応じて含み、これは、転写開始部位から数千の塩基対程度で配置され得る。「構成的」プロモーターは、ほとんどの環境条件および発生条件下で活性であるプロモーターである。「誘導性」プロモーターは、環境的または発生的調節下で活性であるプロモーターである。用語「作動可能に連結される」とは、核酸発現制御配列(例えば、プロモーター、または転写因子結合部位のアレイ)と第二の核酸配列との間の機能的結合をいい、ここで、この発現制御配列は、第二の配列に対応する核酸の転写を指向する。
【0077】
「発現ベクター」は、核酸構築物であり、宿主細胞中で特定の核酸の転写を許容する一連の特定化された核酸エレメントを用いて組換え的にまたは合成的に作製される。発現ベクターは、プラスミド、ウイルス、または核酸フラグメントの一部であり得る。代表的には、この発現ベクターは、プロモーターに作動可能に連結されて転写される核酸を含む。
【0078】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈において、用語「同一」または「同一性」パーセントとは、比較ウインドウ、または以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いてかもしくは手動のアライメントおよび視覚的検査によって測定されるような設計された領域にわたる最大一致性(maximum correspondence)について比較および整列される場合、同じか、または特定の割合の同じアミノ酸残基もしくはヌクレオチド(すなわち、特定された領域にわたる70%の同一性、必要に応じて、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性)を有する、2つ以上の配列または部分配列をいう。次いで、そのような配列は、「実質的に同一である」といわれる。この定義はまた、試験配列の相補体(compliment)をいう。必要に応じて、同一性は、少なくとも約50アミノ酸長もしくはヌクレオチド長の領域にわたって、またはより好ましくは75〜100アミノ酸長もしくはヌクレオチド長である領域にわたって存在する。
【0079】
配列比較について、代表的には、1つの配列は、試験配列と比較される参照配列として作用する。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験配列および参照配列は、コンピューター中に入力され、部分配列の座標が設計され、必要な場合、そして配列アルゴリズムプログラムのパラメータが設計される。デフォルトプログラムのパラメータが使用され得るか、または代替的パラメータが設計され得る。次いで、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて参照配列に対する試験配列についての配列同一性パーセントを計算する。
【0080】
本明細書中で使用される場合、「比較ウインドウ」は、20〜600、通常には約50〜約200、より通常には約100〜約150からなる群より選択される連続する位置の数のいずれか1つのセグメントに対する言及を含み、ここで、配列は、2つの配列が最適に整列された後、同じ数の連続する位置の参照配列と比較され得る。比較のための配列アライメントの方法は、当該分野において周知である。比較のための最適な配列のアライメントは、例えば、SmithおよびWaterman Adv.Appl.Math.2;482(1981)の局在相同性アルゴリズムによるか、NeedlemanおよびWunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アライメントアルゴリズムによるか、PearsonおよびLipman、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性検索方法によるか、これらのアルゴリズムのコンピューター化されたインプリメンテーション(Winsconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group、575 Science Dr.,Madison WIのGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)によるか、または手動アライメント化および可視的検査により(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、1995、補遺を参照のこと)、行われ得る。
【0081】
有用なアルゴリズムの1つの例は、PILEUPである。PILEUPは、関連性および配列同一性パーセントを示すために、進行性の一対のアライメントを用いて、関連した配列の群から複数配列のアライメントを作製する。それはまた、そのアライメントを作製するために使用されるクラスター関係を示す系図または系統樹をプロットし得る。PILEUPは、FengおよびDoolittle、J.Mol.Evol.35:351−360(1987)の進行性のアライメント方法の単純化を使用する。使用されるこの方法は、HigginsおよびSharp、CABIOS5:151−153(1989)により記載される方法と類似している。このプログラムは、各々の最大の長さが5,000のヌクレオチドまたはアミノ酸の、300個の配列まで整列させ得る。この複数アライメント手順は、2つの最も類似した配列の対のアライメントで始まり、2つの整列された配列のクラスターを生成する。次いで、このクラスターは、次の最も関連した配列かまたは整列された配列のクラスターに整列される。2つのクラスターの配列は、2つの個々の配列の対のアライメントの単純な伸長によって整列される。最後のアライメントは、一連の進行性の対のアライメントによって達成される。このプログラムは、特定の配列および配列比較の領域についてそれらのアミノ酸座標もしくはヌクレオチド座標を指定することによって、およびプログラムパラメーターを指定することによって実行される。PILEUPを用いて、参照配列は、以下のパラメータを用いて、配列同一性パーセントの関連性を決定するために他の試験配列と比較される:デフォルトギャップ重量(3.00)、デフォルトギャップ長重量(0.10)、および加重終止ギャップ(weighted end gap)。PILEUPは、GCG配列解析ソフトウェアパッケージ(例えば、バージョン7.0(Devereauxら、Nuc.Acids
Res.12:387−395(1984))から入手され得る。
【0082】
配列同一性パーセントおよび配列類似性パーセントを決定するのに適切な別のアルゴリズムの例は、BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムであり、これらは、それぞれAltschulら、Nuc.Acids Res.25:3389−3402(1977)およびAltschulら、J.Mol.Biol.215:403−410(1990)において記載されている。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公に利用可能である。このアルゴリズムは、問い合わせ配列における長さWの短いワード(単語)(word)を同定することによって、高スコア配列対(HSP)を第1に同定することを含み、このHSPは、データベース配列中の同じ長さのワードと整列される場合、いくつかの正の値の閾値Tに一致するかまたはそれを満たすかのいずれかである。Tは、隣接ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschulら、前出)。これらの最初の隣接ワードヒットは、それらを含むより長いHSPを見出すための検索を開始するためのシードとして作用する。このワードヒットを、累積アライメントスコアが増大し得る限り、各配列に沿って両方向に伸長する。累積スコアは、ヌクレオチド配列について、パラメータM(一致した残基対の報酬(reward)スコア;常に0より大きい)およびN(一致しない残基のペナルティースコア;常に0より小さい)を用いて算出される。アミノ酸配列について、スコア付けマトリクスが、累積スコアを算出するために使用される。各方向におけるそのワードヒットの伸長は、以下の場合停止される:累積アライメントスコアが、最大達成値から量Xが減少する場合;1つ以上の負のスコア残基アライメントの蓄積に起因して、累積スコアが、ゼロ以下になる場合;または、いずれかの配列の末端が届いた場合。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXは、アライメントの感度および速さを決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列について)は、デフォルトとして11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=−4および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列についての、BLASTPプログラムは、デフォルトとして3のワード長、および10の期待値(E)、および50のBLOSUM62のスコア付けマトリクス(HenikoffおよびHenikoffProc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)を参照のこと)アライメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=−4、および両鎖の比較を用いる。
【0083】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計分析を行う(例えば、KarlinおよびAltschulProc.Nat’l.Acad.Sci.USA 90:5873−5787(1993)を参照のこと)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の尺度の1つは、最小合計確率(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間の一致が偶然生じる確率の指標を提供する。例えば、核酸は、参照核酸に対する試験核酸の比較における最小合計確率が、約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、および最も好ましくは約0.001未満である場合、参照配列と類似であると考えられる。
【0084】
2つの核酸配列またはポリペプチドが実質的に同一であることの指標は、以下に記載されるように、第1の核酸にコードされるポリペプチドが、第2の核酸によりコードされるポリペプチドに対して惹起された抗体と免疫交差反応性であることである。従って、ポリペプチドは、代表的には、第2のポリペプチドと実質的に同一であり、例えば、ここで、この2つのペプチドは、保存的置換によってのみ異なる。2つの核酸配列が実質的に同一であるという別の指標は、この2つの分子またはそれらの相補体が、以下に記載されるように、ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。2つの核酸配列が実質的に同一であるというなお別の指標は、同じプライマーが、その配列を増幅するために使用され得るということである。
【0085】
句「〜に選択的に(または特異的に)ハイブリダイズする」とは、その配列が複合混合物(例えば、細胞性DNAもしくはRNAまたはライブラリーDNAもしくはRNAの全体)中に存在する場合、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で特定のヌクレオチド配列のみへの分子の結合、二重鎖形成、またはハイブリダイズをいう。
【0086】
句「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、プローブが代表的には核酸の複合混合物中のその標的部分配列にハイブリダイズするが、他の配列にはハイブリダイズしない条件をいう。ストリンジェントな条件は、配列依存性であり、そして異なる状況において異なる。より高い温度であればあるほど、より長い配列が特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに対する広範な手引書は、Tijssen、Techiques in Biochemistry and Molecular Biology−−Hybridization With Nucleic Probes、「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays」(1993)において見出される。一般に、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度pHでの特定の配列を熱融点(Tm)より約5〜10℃低くなるように選択される。Tmは、標的に相補的なプローブの50%が、平衡状態(Tmで標的配列が過剰に存在する場合、プローブの50%が平衡状態で占められる)で標的配列にハイブリダイズする温度(規定のイオン強度、pH、および核酸濃度の下)である。ストリンジェントな条件は、塩濃度が、pH7.0〜8.3にて約1.0M未満のナトリウムイオン濃度、代表的には約0.01〜1.0Mナトリウムイオン濃度(または他の塩)であり、かつ温度が、短いプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)について少なくとも約30℃、および長いプローブ(例えば、50ヌクレオチドより大きい)について少なくとも約60℃である条件である。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドのような不安定化剤の添加により達成され得る。選択的または特異的なハイブリダイゼーションについて、陽性シグナルは、バックグラウンドの少なくとも2倍、必要に応じて10倍のバックグラウンドのハイブリダイゼーションである。例証的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、以下であり得る:50%ホルムアミド、5×SSC、および1%SDSで、42℃でのインキュベーション、または5×SSC、1%SDSで、65℃でのインキュベーション、ならびに0.2×SSCおよび0.1%SDS中で、65℃での洗浄。
【0087】
ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸は、それらがコードするポリペプチドが実質的に同一である場合、なお実質的に同一である。これは、例えば、核酸の複製が遺伝コードにより許容される最大のコード縮重を用いて作製される場合に生じる。そのような場合、核酸は、中程度のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で代表的にハイブリダイズする。例証的な「中程度のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、40%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDSの緩衝液中、37℃でのハイブリダイゼーション、および1×SSC中、45℃での洗浄を含む。陽性ハイブリダイゼーションは、バックグラウンドの少なくとも2倍である。当業者は、代替的なハイブリダイゼーションおよび洗浄条件を利用して類似したストリンジェンシーの条件を提供することを容易に認識する。
【0088】
「抗体」は、抗原に特異的に結合し、そして抗原を認識するイムノグロブリン遺伝子からの読み枠領域を含むポリペプチドまたはそのフラグメントをいう。認識されるイムノグロブリン遺伝子としては、κ、λ、α、γ、δ、ε、およびμの定常領域遺伝子、ならびに無数のイムノグロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。軽鎖は、κまたはλのいずれかとして分類される。重鎖は、γ、μ、α、δ、またはεとして分類され、これらは順に、それぞれイムノグロブリンのクラス、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEと定義される。
【0089】
例示的なイムノグロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含む。各四量体は、ポリペプチド鎖の2つの同一の対から構成され、その各対は、1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のN末端は、抗原の認識に主に寄与する約100〜110アミノ酸以上の可変領域を規定する。用語、可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)はそれぞれ、これらの軽鎖および重鎖をいう。
【0090】
抗体は、例えば、インタクトなイムノグロブリンとして、または種々のペプチダーゼを用いた消化により生成されるよく特徴付けられた多くのフラグメントとして存在する。従って、例えば、ペプシンは、ヒンジ領域におけるジスルフィド結合のもとで抗体を消化し、F(ab)’2を生成する。F(ab)’2は、それ自体がジスルフィド結合によりVH−CH1に結合された軽鎖であるFabの二量体である。このF(ab)’2は、ヒンジ領域におけるジスルフィド結合を破壊するために穏かな条件下で還元され得、それによってF(ab)’2二量体はFab’単量体に転換される。Fab’単量体は、ヒンジ領域の部分を有する本質的なFabである(Fundamental Immunology(Paul編、第3版、1993を参照のこと)。種々の抗体フラグメントがインタクトな抗体の消化の点において規定されるが、当業者は、そのようなフラグメントが化学的もしくは組換えDNA方法論を用いてのいずれかによりデノボ合成され得ることを理解する。従って、本明細書中で使用される場合、用語抗体はまた、抗体全体の改変により生成される抗体フラグメントか、または組換えDNA方法論(例えば、単鎖Fv)を用いてデノボ合成される抗体フラグメントか、またはファージディスプレイライブラリー(例えば、McCaffertyら、Nature 348:552−554(1990)を参照のこと)を用いて同定される抗体フラグメントのいずれかを含む。
【0091】
モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の調製のために、当該分野で公知の任意の技術が使用され得る(例えば、Kohler&Milstein、Nature 256:495〜497(1975);Kozborら、Immunology Today 4:72(1983);Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy(1985)の77〜96頁を参照のこと)。単鎖抗体の産生のための技術(米国特許第4,946,778号)は、本発明のポリペプチドに対する抗体を産生するために適用され得る。また、トランスジェニックマウス、または他の生物(例えば、他の哺乳動物)を使用して、ヒト化抗体を発現し得る。あるいは、ファージディスプレイ技術を使用して、選択された抗原に特異的に結合する抗体、およびヘテロマーのFabフラグメントを同定し得る(例えば、McCaffertyら、Nature 348:552〜554(1990);Marksら、Biotechnology 10:779〜783(1992)を参照のこと)。
【0092】
「キメラ抗体」は、(a)定常領域、またはその一部が、変更、置換または交換され、その結果、抗原結合部位(可変領域)が、異なるまたは変更されたクラス、エフェクター機能および/もしくは種の定常領域、またはキメラ抗体に対する新たな特性を付与する全く異なる分子(例えば、酵素、毒素、ホルモン、増殖因子、薬物など)に連結されるか;あるいは(b)可変領域、またはその一部が、異なるまたは変更された抗原特異性を有する可変領域で変更、置換、または交換される、抗体分子である。
【0093】
「抗GPCR−B4」抗体は、GPCR−B4遺伝子、cDNA、またはその部分配列によってコードされるポリペプチドを特異的に結合する、抗体または抗体フラグメントである。
【0094】
用語「イムノアッセイ」は、抗原を特異的に結合する抗体を使用するアッセイである。イムノアッセイは、抗原を単離、標的、および/または定量するために、特定の抗体の特異的結合特性を使用することによって特徴付けられる。
【0095】
句、抗体に「特異的に(または選択的に)結合する」、または「〜と特異的に(または選択的に)免疫反応性」は、タンパク質またはペプチドに対して言及される場合、タンパク質および他の生物製剤の異種集団においてそのタンパク質の存在を決定する結合反応をいう。従って、指定されたイムノアッセイ条件下では、特定の抗体は、バックグラウンドの少なくとも2倍、特定のタンパク質に結合し、そして実質的に、サンプル中に存在する他のタンパク質に対して有意な量で結合しない。このような条件下での抗体への特異的な結合は、特定のタンパク質に対するその特異性について選択される抗体を必要とし得る。例えば、ラット、マウス、またはヒトのような特定の種由来のGPCR−B4に惹起されるポリクローナル抗体は、GPCR−B4と特異的に免疫反応性でありかつGPCR−B4の多型性改変体および対立遺伝子を除く他のタンパク質と特異的に免疫反応性でない、ポリクローナル抗体のみを得るために選択され得る。この選択は,他の種由来のGPCR−B4と交叉反応する抗体を減じることによって達成され得る。種々のイムノアッセイ形式は、特定のタンパク質と特異的に免疫反応性である抗体を選択するために使用され得る。例えば、固相ELISAイムノアッセイは、タンパク質と特異的に免疫反応性である抗体を選択するために慣用的に使用される(特異的な免疫反応性を決定するために使用され得るイムノアッセイ形式および条件の記載については、例えば、Harlow&Lane、Antibodies、A Laboratory Manual(1988)を参照のこと)。代表的に、特異的または選択的反応は、バックグラウンドのシグナルまたはノイズの少なくとも2倍であり、そしてより代表的には、バックグラウンドの10〜100倍以上である。
【0096】
句「〜と選択的に会合する」は、上記で定義されるように、別のものと「選択的にハイブリダイズする」核酸の能力、または上記で定義されるように、タンパク質に「選択的に(または特異的に)結合する」抗体の能力をいう。
【0097】
「宿主細胞」は、発現ベクターを含み、そして発現ベクターの複製または発現を支持する細胞を意味する。宿主細胞は、原核生物細胞(例えば、E.coli)、または真核生物細胞(例えば、酵母細胞、昆虫細胞、両生類細胞、もしくは哺乳動物細胞(例えば、CHO、HeLaなど))、例えば、培養細胞、外植片、およびインビボ細胞であり得る。
【0098】
(III.GPCR−B4をコードする核酸の単離)
(A.一般的な組換えDNA方法)
本発明は、組換え遺伝学の分野における慣用的な技術に依存する。本発明における使用の一般的方法を開示する基本的なテキストとしては、Sambrookら、Molecular Cloning、A Laboratory Manual(第2版、1989);Kriegler、Gene Transfer
and Expression:A Laboratory Manual(1990);およびCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、1994)が挙げられる。
【0099】
核酸について、サイズは、キロベース(kb)または塩基対(bp)のいずれかで与えられる。これらは、アガロースゲル電気泳動もしくはアクリルアミドゲル電気泳動から、配列決定された核酸から、または公開されたDNA配列から推定される。タンパク質について、サイズは、キロダルトン(kDa)またはアミノ酸残基数で与えられる。タンパク質サイズは、ゲル電気泳動から、配列決定されたタンパク質から、由来されるアミノ酸配列から、または公開されたタンパク質配列から推定される。
【0100】
市販されていないオリゴヌクレオチドは、Van Devanterら、Nucleic Acids Res.12:6159〜6168(1984)に記載されるように、自動合成機を使用して、Beaucage&Caruthers、Tetrahedron Letts.22:1859〜1862(1981)に最初に記載された固相ホスホロアミダイトトリエステル法に従って化学的に合成され得る。オリゴヌクレオチドの精製は、Pearson&Reanier、J.Chrom.255:137〜149(1983)に記載されるように、未変性アクリルアミドゲル電気泳動またはアニオン交換HPLCのいずれかによる。
【0101】
クローン化された遺伝子および合成オリゴヌクレオチドの配列は、例えば、Wallaceら、Gene 16:21〜26(1981)の二重鎖テンプレートを配列決定するための鎖終結法を使用してクローン化した後に確認され得る。
【0102】
(B.GPCR−B4をコードするヌクレオチド配列の単離のためのクローニング方法)
一般に、GPCR−B4をコードする核酸配列および関連する核酸配列ホモログは、プローブとのハイブリダイゼーションによりcDNAライブラリーおよびゲノムDNAライブラリーからクローン化されるか、またはオリゴヌクレオチドプライマーを用いる増幅技術を使用して単離される。例えば、GPCR−B4配列は、代表的に、核酸プローブとのハイブリダイゼーションによって、哺乳動物核酸(ゲノムまたはcDNA)ライブラリーから単離され、この配列は、配列番号3〜4および8に由来し得る。GPCR−B4 RNAおよびcDNAが単離され得る適切な組織は舌組織であり、必要に応じて、味蕾組織または個々の味覚細胞である。
【0103】
プライマーを使用する増幅技術もまた、DNAまたはRNAからGPCR−B4を増幅および単離するために使用され得る。以下のアミノ酸配列をコードする縮重プライマーもまた、GPCR−B4の配列を増幅するために使用され得る:配列番号5〜6(例えば、Dieffenfach&Dveksler、PCR
Primer:A Laboratory Manual(1995)を参照のこと)。これらのプライマーは、例えば、全長配列、または数百のヌクレオチドに対する1つのプローブのいずれかを増幅するために使用され得る。次いで、これは、全長GPCR−B4についての哺乳動物ライブラリーをスクリーニングするために使用される。
【0104】
GPCR−B4をコードする核酸はまた、プローブとして抗体を使用して、発現ライブラリーから単離され得る。このようなポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体は、配列番号1〜2および7の配列を使用して惹起され得る。
【0105】
GPCR−B4と実質的に同一であるGPCR−B4の多型性改変体、対立遺伝子、および種間ホモログは、GPCR−B4核酸プローブ、およびオリゴヌクレオチドを使用して、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でライブラリーをスクリーングすることにより単離され得る。あるいは、発現ライブラリーは、発現されたホモログをGPCR−B4に対して作製された抗血清または精製抗体(これらはまた、GPCR−B4ホモログを認識し、そしてGPCR−B4ホモログに特異的に結合する)を用いて免疫学的に検出することによって、GPCR−B4およびGPCR−B4の多型性改変体、対立遺伝子、および種間ホモログをクローン化するために使用され得る。
【0106】
cDNAライブラリーを作製するために、GPCR−B4 mRNAにおいて富化である供給源(例えば、舌組織、または単離された味蕾)を選択すべきである。次いで、mRNAは、逆転写酵素を使用してcDNAになり、組換えベクターへ連結され、そして増幅、スクリーニングおよびクローニングのために組換え宿主へ移動される。cDNAライブラリーを作製およびスクリーニングする方法は、周知である(例えば、Gubler&Hoffman、Gene 25:263〜269(1983);Sambrookら、前出;Ausubelら、前出を参照のこと)。
【0107】
ゲノムライブラリーについて、DNAは、組織から抽出され、そして約12〜20kbのフラグメントを生じるように、機械的に剪断されるかまたは酵素的に消化されるかのいずれかである。次いで、フラグメントは、勾配遠心分離によって所望されないサイズと分離され、そしてバクテリオファージλベクター中に構築される。これらのベクターおよびファージは、インビトロでパッケージされる。組換えファージは、Benton&Davis、Science 196:180〜182(1977)に記載されるように、プラークハイブリダイゼーションによって分析される。コロニーハイブリダイゼーションは、一般に、Grunsteinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、72:3961〜3965(1975)に記載されるように実施される。
【0108】
GPCR−B4核酸およびそのホモログを単離する代替方法は、合成オリゴヌクレオチドプライマーの使用およびRNAまたはDNAテンプレートの増幅を組み合わせる(米国特許第4,683,195号および同第4,683,202号;PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Innisら編、1990)を参照のこと)。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびリガーゼ連鎖反応(LCR)のような方法は、mRNAから、cDNAから、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーから直接的にGPCR−B4の核酸配列を増幅するために使用され得る。縮重オリゴヌクレオチドは、本明細書で提供される配列を使用してGPCR−B4ホモログを増幅するために設計され得る。制限エンドヌクレアーゼ部位は、プライマーへ組み込まれ得る。ポリメラーゼ連鎖反応または他のインビトロ増幅方法もまた、例えば、発現されるべきタンパク質をコードする核酸配列をクローン化するために、生理学的サンプル中のmRNAをコードするGPCR−B4の存在を検出するためのプローブとして使用するための核酸を作製するために、核酸の配列決定のために、または他の目的のために、有用であり得る。PCR反応によって増幅された遺伝子は、アガロースゲルから精製され得、そして適切なベクターへクローン化され得る。
【0109】
GPCR−B4の遺伝子発現はまた、当該分野で公知の技術(例えば、mRNAの逆転写および増幅、総RNAまたはポリA+RNAの単離、ノーザンブロッティング、ドットブロッティング、インサイチュハイブリダイゼーション、RNase保護、プロービング(probing)DNAマイクロチップアレイなど)によって分析され得る。1つの実施態様において、高密度オリゴヌクレオチド分析技術(例えば、GeneChipTM)は、本発明のGPCRのホモログおよび多型性改変体を同定するために使用される。同定されるホモログが既知の疾患に関連している場合、それらは、生物学的サンプル中で疾患を検出する際の診断手段としてGeneChipTMとともに使用され得る(例えば、Gunthandら、AIDS Res.Hum.Retroviruses 14:869〜876(1998);Kozalら、Nat.Med.2:753〜759(1996);Matsonら、Anal.Biochem.224:110〜106(1995);Lockhartら、Nat.Biotechnol.14:1675〜1680(1996);Gingerasら、Genome Res.8:435〜448(1998);Haciaら、Nucleic Acids Res.26:3865〜3866(1998)を参照のこと)。
【0110】
合成オリゴヌクレオチドは、プローブとしての使用のため、またはタンパク質の発現のために組換えGPCR−B4遺伝子を構築するために使用され得る。この方法は、遺伝子のセンス鎖および非センス鎖の両方を示す、通常40〜120bp長の一連の重複オリゴヌクレオチドを使用して実施される。次いで、これらのDNAフラグメントは、アニールされ、連結され、そしてクローン化される。あるいは、増幅技術は、GPCR−B4核酸の特定の部分配列を増幅するために、正確なプライマーを用いて使用され得る。次いで、特定の部分配列は、発現ベクターへ連結される。
【0111】
GPCR−B4をコードする核酸は、代表的に、複製および/または発現のための原核生物細胞もしくは真核生物細胞への形質転換の前に、中間体ベクターへクローン化される。これらの中間体ベクターは、代表的に、原核生物ベクター(例えば、プラスミドベクターまたはシャトルベクター)である。
【0112】
必要に応じて、GPCR−B4またはそのドメインを含むキメラタンパク質をコードする核酸は、標準的な技術に従って作製され得る。例えば、ドメイン(例えば、リガンド結合ドメイン、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン(例えば、7つの膜貫通領域ならびに対応する細胞外ループおよびサイトゾルループを包含するもの)、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメイン)、活性部位、サブユニット会合領域などは、異種タンパク質に共有結合的に連結され得る。例えば、細胞外ドメインは異種GPCR膜貫通ドメインに連結され得るか、または異種GPCR細胞外ドメインは膜貫通ドメインに連結され得る。他の選り抜きの異種タンパク質としては、例えば、緑色蛍光タンパク質、β−gal、グルタミン酸レセプター、およびロドプシンプレ配列(rhodopsin presequence)が挙げられる。
【0113】
(C.原核生物および真核生物における発現)
クローン化された遺伝子または核酸(例えば、GPCR−B4をコードするcDNA)の高レベルの発現を得るために、代表的には、GPCR−B4を、転写を指向する強力なプロモーター、転写/翻訳ターミネーター、およびタンパク質をコードする核酸に対する場合には、翻訳開始のためのリボソーム結合部位を含む発現ベクターへサブクローン化する。適切な細菌性プロモーターは、当該分野で周知であり、そして例えば、SambrookらおよびAusubelらに記載されている。GPCR−B4タンパク質を発現するための細菌性発現系は、例えば、E.coli、Bacillus sp.およびSalmonellaにおいて利用可能である(Palvaら、Gene 22:229〜235(1983);Mosbachら、Nature 302:543〜545(1983)。このような発現系のためのキットは市販されている。哺乳動物細胞、酵母、および昆虫細胞のための真核生物発現系は、当該分野で周知であり、そしてまた、市販されている。1つの実施態様において、真核生物発現ベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ベクター、またはレトロウイルスベクターである。
【0114】
異種核酸の発現を指向するために使用されるプロモーターは、特定の適用に依存する。プロモーターは、必要に応じて、異種転写開始部位からの距離が、その天然の設定における転写開始部位からの距離ととほぼ同じ距離に配置される。しかし、当該分野で公知であるように、この距離におけるいくらかの改変は、プロモーター機能を欠失することなく適応され得る。
【0115】
プロモーターに加えて、発現ベクターは、代表的に、宿主細胞においてGPCR−B4をコードする核酸の発現について必要とされるさらなるエレメントを全て含む転写ユニットまたは発現カセットを含む。従って、代表的な発現カセットは、GPCR−B4をコードする核酸配列に作動可能に連結されるプロモーター、ならびに転写物の効率的なポリアデニル化に必要とされるシグナル、リボソーム結合部位、および翻訳終結を含む。GPCR−B4をコードする核酸配列は、代表的に、形質転換された細胞によって、コードされたタンパク質の分泌を促進するために、切断可能なシグナルペプチド配列に連結され得る。このようなシグナルペプチドは、とりわけ、組織プラスミノーゲンアクチベーター、インスリン、および神経成長因子、ならびにHeliothis virescensの若年性ホルモンエステラーゼ由来のシグナルペプチドを含む。カセットのさらなるエレメントとしては、エンハンサー、そしてゲノムDNAが構造遺伝子として使用される場合には、機能的スプライスドナー部位およびアクセプター部位を有するイントロンが挙げられ得る。
【0116】
プロモーター配列に加えて、発現カセットはまた、効率的な終結を提供するために構造遺伝子の下流に転写終結領域を含むべきである。終結領域は、プロモーター配列と同じ遺伝子から得られてもよいし、または異なる遺伝子から得られてもよい。
【0117】
遺伝情報を細胞へ輸送するために使用される特定の発現ベクターは、特に重要ではない。真核生物細胞または原核生物細胞における発現のために使用される任意の従来のベクターが、使用され得る。標準的な細菌性発現ベクターとしては、プラスミド(例えば、pBR322ベースのプラスミド、pSKF、pET23D)、および融合発現系(例えば、GSTおよびLacZ)が挙げられる。エピトープタグもまた、簡便な単離方法を提供するために組換えタンパク質に付加され得る(例えば、c−myc)。
【0118】
真核生物ウイルス由来の調節エレメントを含む発現ベクターは、代表的に、真核生物発現ベクター(例えば、SV40ベクター、パピローマウイルスベクター、およびエプスタイン−バーウイルス由来のベクター)において使用される。他の例示的な真核生物ベクターとしては、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo−5、バキュロウイルスpDSVE、およびSV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳癌ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリへドリン(polyhedrin)プロモーター、または真核生物細胞における発現に有効であると示される他のベクターの指向下でタンパク質の発現を可能にする任意の他のベクターが挙げられる。
【0119】
いくつかの発現系は、遺伝子増幅を提供するマーカー(例えば、チミジンキナーゼ、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ、およびジヒドロ葉酸レダクターゼ)を有する。あるいは、昆虫細胞におけるバキュロウイルスベクター(ポリへドリンプロモーターまたは他の強力なバキュロウイルスプロモーターの指向下でGPCR−B4をコードする配列を有する)の使用のような、遺伝子増幅に関与しない高収率発現系もまた適切である。
【0120】
代表的に発現ベクターに含まれるエレメントはまた、E.coli中で機能するレプリコン、組換えプラスミドを保有する細菌の選択を許容するために抗生物質耐性をコードする遺伝子、および真核生物の配列の挿入を可能にするためのプラスミドの非必須領域中の固有の制限部位を含む。選択される特定の抗生物質耐性遺伝子は重要ではなく、当該分野で公知の多くの任意の耐性遺伝子が適切である。原核生物の配列は、必要に応じて選択され、その結果、それらは、必要であれば、真核生物細胞中のDNAの複製を妨害しない。
【0121】
標準的なトランスフェクション方法は、大量のGPCR−B4タンパク質を発現する細菌細胞株、哺乳動物細胞株、酵母細胞株または昆虫細胞株を生成するために使用され、次いで、このタンパク質は、標準的な技術を使用して精製される(例えば、Colleyら、J.Biol.Chem.264:17619〜17622(1989);Guide to Protein Purification、Methods in Enzymology、第182巻(Deutscher編、1990)を参照のこと)。真核生物細胞および原核生物細胞の形質転換は、標準的な技術に従って実施される(例えば、Morrison、J.Bact.132:349〜351(1977);Clark−Curtiss&Curtiss、Methods in Enzymology 101:347〜362(Wuら編、1983)を参照のこと)。
【0122】
外来ヌクレオチド配列を宿主細胞へ導入するための任意の周知の手順が、使用され得る。これらとしては、リン酸カルシウムトランスフェクション、ポリブレン、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソーム、マイクロインジェクション、血漿ベクター、ウイルスベクター、およびクローン化されたゲノムDNA、cDNA、合成DNAまたは他の外来遺伝物質を宿主細胞へ導入するための任意の他の周知の方法(例えば、Sambrookら、前出を参照のこと)の使用が挙げられる。使用される特定の遺伝子操作手順は、少なくとも1つの遺伝子を、GPCR−B4を発現し得る宿主細胞へ首尾よく導入し得ることが必要であるのみである。
【0123】
発現ベクターが細胞へ導入された後、トランスフェクトされた細胞は、GPCR−B4の発現を支持する条件下で培養され、このGPCR−B4は、以下で同定される標準的な技術を使用して培養物から回収される。
【0124】
(IV.GPCR−B4の精製)
天然に存在するGPCR−B4または組換えGPCR−B4のいずれかは、機能的アッセイにおける使用のために精製され得る。必要に応じて、組換えGPCR−B4が精製される。天然に存在するGPCR−B4は、例えば、哺乳動物組織(例えば、舌組織)、およびGPCR−B4ホモログの任意の他の供給源から精製される。組換えGPCR−B4は、任意の適切な細菌発現系および真核生物発現系(例えば、CHO細胞または昆虫細胞)から精製される。
【0125】
GPCR−B4は、標準的な技術(硫酸アンモニウムのような物質を用いる選択的沈殿;カラムクロマトグラフィー、免疫精製(immunopurification)法などを含む)によって実質的に純粋まで精製され得る(例えば、Scopes、Protein Purification:Principles and Practice(1982);米国特許第4,673,641号;Ausubelら、前出;およびSambrookら、前出を参照のこと)。
【0126】
多くの手順は、組換えGPCR−B4が精製されている場合に利用され得る。例えば、確立された分子接着特性を有するタンパク質は、可逆的にGPCR−B4に融合され得る。適切なリガンドを用いて、GPCR−B4は、選択的に精製カラムに吸着され得、次いで、比較的純粋な形態でカラムから遊離され得る。次いで、融合されたタンパク質は、酵素活性によって除去される。最終的に、GPCR−B4は、イムノアフィニティーカラムを使用して精製され得る。
【0127】
(A.組換え細胞からのGPCR−B4の精製)
組換えタンパク質は、代表的にはプロモーター誘導後に、形質転換された細菌細胞または真核生物細胞(例えば、CHO細胞もしくは昆虫細胞)によって大量に発現されるが;しかし、発現は構成的であり得る。IPTGを用いるプロモーター誘導は、誘導性プロモーター系の一例である。細胞は、当該分野で標準的な手順に従って増殖される。新鮮細胞または凍結細胞は、タンパク質の単離のために使用される。
【0128】
細菌において発現されるタンパク質は、不溶性の凝集物(「封入体」)を形成し得る。いくつかのプロトコルは、GPCR−B4封入体の精製のために適切である。例えば、封入体の精製は、代表的に、細菌細胞の破壊による(例えば、50mM TRIS/HCL pH7.5、50mM NaCl、5mM MgCl2、1mM DTT、0.1mM ATP、および1mM PMSFの緩衝液中でのインキュベーションによる)封入体の抽出、分離および/または精製を包含する。細胞懸濁液は、French Pressに2〜3回通過させて溶解され得るか、Polytron(Brinkman Instruments)を使用してホモジナイズされ得るか、または氷上で音波破砕され得る。細菌を溶解する代替方法は、当業者に明らかである(例えば、Sambrookら、前出;Ausubelら、前出を参照のこと)。
【0129】
必要であれば、封入体は可溶化され、そして溶解された細胞懸濁液は、代表的に、望ましくない不溶性物質を除去するために遠心分離される。封入体を形成したタンパク質は、適合する緩衝液を用いて希釈または透析することによって再生され得る。適切な溶媒としては、尿素(約4M〜約8M)、ホルムアミド(少なくとも約80%、容量/容量基準)、およびグアニジン塩酸塩(約4M〜約8M)が挙げられるが、これらに限定されない。凝集物形成タンパク質を可溶化し得るいくつかの溶媒(例えば、SDS(ドデシル流酸ナトリウム)、70%ギ酸)は、免疫原性および/または活性の欠失を付随する、タンパク質の不可逆変性の可能性に起因して、この手順での使用に不適切である。グアニジン塩酸塩および類似の薬剤は変性剤であるが、この変性は不可逆的ではなく、そして、変性剤の除去(例えば、透析による)または希釈によって、再生が生じ、免疫学的および/または生物学的に活性なタンパク質の再形成を可能にする。他の適切な緩衝液は、当業者に公知である。GPCR−B4は、標準的な分離技術(例えば、Ni−NTAアガロース樹脂を用いる)によって、他の細菌性タンパク質から分離される。
【0130】
あるいは、細菌ペリプラズムからのGPCR−B4の精製が、可能である。細菌の溶解後、GPCR−B4が細菌のペリプラズムへ輸出される(export)場合、この細菌のペリプラズムの画分は、当業者に公知の他の方法に加えて、低温浸透圧ショックによって単離され得る。ペリプラズムから組換えタンパク質を単離するために、細菌細胞を遠心分離してペレットを形成させる。このペレットは、20%スクロースを含有する緩衝液中に再懸濁される。細胞を溶解するために、細菌を遠心分離し、そしてペレットを氷冷の5mM MgSO4中に再懸濁し、そして約10分間氷浴中に保存する。この細胞懸濁液を遠心分離し、そして上清をデカントし、そして保管する。この上清中に存在する組換えタンパク質は、当業者に周知の標準的な分離技術によって宿主タンパク質から分離され得る。
【0131】
(B.GPCR−B4を精製するための標準的なタンパク質分離技術)
(溶解度分画)
しばしば最初の工程として、特に、タンパク質混合物が複合体である場合、最初の塩分画は、目的の組換えタンパク質から、望ましくない宿主細胞タンパク質(または細胞培養培地由来のタンパク質)の多くを分離し得る。好ましい塩は、硫酸アンモニウムである。硫酸アンモニウムは、タンパク質混合物中の水分量を効率的に減少させることによってタンパク質を沈殿させる。次いで、タンパク質は、これらの溶解度に基づいて沈殿される。タンパク質が疎水性になるにつれ、このタンパク質はより低い硫酸アンモニウム濃度でより沈殿するようである。代表的なプロトコルとしては、結果として生じる硫酸アンモニウム濃度が、20〜30%の間であるように、タンパク質溶液に対して飽和硫酸アンモニウムを添加することが挙げられる。この濃度は、最も疎水性のタンパク質を沈殿させる。次いで、沈殿物が廃棄され(目的のタンパク質が疎水性である場合を除く)、そして目的のタンパク質を沈殿させることが既知な濃度まで、硫酸アンモニウムがこの上清に添加される。次いで、沈殿物は、緩衝液中に可溶化され、そして、必要であれば、透析またはダイアフィルトレーションのいずれかによって、過剰な塩が除去される。タンパク質の溶解度に依存する他の方法(例えば、冷エタノール沈殿)は当業者に周知であり、そして複合体タンパク質混合物を分別するために使用され得る。
【0132】
(サイズ差(size differential)濾過)
GPCR−B4の分子量は、異なる孔サイズの膜(例えば、Amiconの膜またはMilliporeの膜)を通す限外濾過を使用して、GPCR−B4を、より大きなサイズおよびより小さなサイズのタンパク質から単離するために利用され得る。第1工程として、タンパク質混合物は、目的のタンパク質の分子量よりも低分子量のカットオフを有する孔サイズを有する膜を通して限外濾過される。次いで、限外濾過の残留物(retentate)は、目的のタンパク質の分子量よりも大きな分子カットオフを有する膜に対して限外濾過される。組換えタンパク質は、その膜を通過して濾液となる。次いで、濾液は、以下で記載されるようにクロマトグラフィーされ得る。
【0133】
(カラムクロマトグラフィー)
GPCR−B4はまた、そのサイズ、正味の表面電荷、疎水性、およびリガンドに対する親和性に基づいて他のタンパク質から分離され得る。さらに、タンパク質に対して惹起される抗体は、カラムマトリクスに結合体化され得、そしてタンパク質が免疫精製(immunopurify)される。これらの方法の全ては、当該分野で周知である。クロマトグラフィー技術が任意のスケールで実施され得、そして多くの異なる製造業者(例えば、Pharmacia Biotech)からの装置を使用し得ることは、当業者に明らかである。
【0134】
(V.GPCR−B4の免疫学的検出)
GPCR−B4遺伝子の検出、および核酸ハイブリダイゼーション技術を使用する遺伝子発現に加えて、GPCR−B4を検出するために、例えば、味覚レセプター細胞およびGPCR−B4の改変体を同定するために、イムノアッセイもまた使用され得る。イムノアッセイは、GPCR−B4を定性的または定量的に分析するために使用され得る。適用可能な技術の一般的な概要は、Harlow&Lane、Antibodies:A Laboratory Manual(1988)に見出され得る。
【0135】
(A.GPCR−B4に対する抗体)
GPCR−B4と特異的に反応するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を産生する方法は、当業者に公知である(例えば、Coligan、Current Protocols in Immunology(1991);Harlow&Lane、前出;Goding、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice(第2版、1986);ならびにKohler&Milstein、Nature 256:495〜497(1975)を参照のこと)。このような技術としては、ファージまたは類似のベクターにおける組換え抗体のライブラリーからの抗体の選択による抗体の調製、ならびにウサギまたはマウスを免疫化することによるポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の調製が挙げられる(例えば、Huseら、Science 246:1275〜1281(1989);Wardら、Nature 341:544〜546(1989)を参照のこと)。
【0136】
免疫原を含む多くのGPCR−B4は、GPCR−B4と特異的に反応する抗体を産生するために使用され得る。例えば、組換えGPCR−B4またはその抗原性フラグメントは、本明細書で記載されるように単離される。組換えタンパク質は、上記のように真核生物細胞または原核生物細胞において発現され得、そして一般に上記のように精製され得る。組換えタンパク質は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の産生のために好ましい免疫原である。あるいは、本明細書に開示される配列に由来し、そしてキャリアタンパク質に結合体化される合成ペプチドは、免疫原として使用され得る。天然に存在するタンパク質はまた、純粋な形態または不純な形態のいずれかにおいて使用され得る。次いで、この生成物は、抗体を産生し得る動物へ注射される。モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体のいずれかが、タンパク質を測定するためのイムノアッセイにおける引き続く使用のために、産生され得る。
【0137】
ポリクローナル抗体を産生する方法は、当業者に公知である。マウスの近交系系統(例えば、BALB/Cマウス)またはウサギの近交系系統を、標準的なアジュバント(例えば、フロイントアジュバント)および標準的な免疫プロトコールを使用して、タンパク質で免疫する。免疫原性調製物に対する動物の免疫応答を、試験採血を行うことおよびGPCR−B4に対する反応性の力価を測定することによってモニターする。この免疫原に対する適切な高力価の抗体が得られた場合、この動物から血液を採集し、そして抗血清を調製する。所望される場合には、タンパク質に対して反応性の抗体を富化させるための抗血清のさらなる分画が実施され得る(HarlowおよびLane、前出を参照のこと)。
【0138】
モノクローナル抗体は、当業者に周知の種々の技術によって獲得され得る。簡潔には、所望される抗原で免疫された動物由来の脾臓細胞を、一般的には骨髄腫細胞との融合によって不死化させる(KohlerおよびMilstein、Eur.J.Immunol.6:511−519(1976)を参照のこと)。不死化の代替の方法としては、エプスタイン−バーウイルス、オンコジーン、もしくはレトロウイルスでの形質転換、または当該分野において周知の他の方法が挙げられる。単一の不死化細胞から生じたコロニーを、所望の特異性の抗体の産生および抗原に対する親和性についてスクリーニングする。そしてこのような細胞によって産生されるモノクローナル抗体の収率は、種々の技術(脊椎動物宿主の腹膜腔内への注射を含む)によって増大され得る。あるいは、モノクローナル抗体またはその結合フラグメントをコードするDNA配列を、Huseら、Science 246:1275−1281(1989)によって概説された一般的プロトコールに従って、ヒトB細胞由来のDNAライブラリーをスクリーニングすることによって単離し得る。
【0139】
モノクローナル抗体およびポリクローナル血清は収集され、そしてイムノアッセイ(例えば、固体支持体に固定された免疫原を用いる固相イムノアッセイ)において、免疫原タンパク質に対して滴定する。代表的には、104以上の力価を有するポリクローナル抗血清が選択され、そして競合的結合イムノアッセイを使用して、非GPCR−B4タンパク質に対するそれらの交叉反応性、または他の生物由来の他の関連タンパク質に対する交叉反応性までも試験した。特異的なポリクローナル抗血清およびモノクローナル抗体は、通常は、少なくとも約0.1mM、より通常には少なくとも約1μM、必要に応じて少なくとも約0.1μM以下、そして必要に応じて0.01μM以下のKdで結合する。
【0140】
一旦、GPCR−B4特異的抗体が利用可能になると、GPCR−B4は、種々のイムノアッセイ方法によって検出され得る。免疫学的手順およびイムノアッセイ手順の概説については、Basic and Clinical Immunology(StitesおよびTerr編、第7版、1991)を参照のこと。さらに、本発明のイムノアッセイは、いくつかの立体配置のいずれでも実施され得る。この立体配置は、Enzyme Immunoassay(Maggio編、1980);およびHarlow&Lane(前出)に広範に概説される。
【0141】
(B.免疫学的結合アッセイ)
GPCR−B4は、十分に容認された多くの免疫学的結合アッセイ(例えば、米国特許第4,366,241号;同第4,376,110号;同第4,517,288号;および同第4,837,168号を参照のこと)のいずれかを使用して、検出および/または定量化され得る。一般的なイムノアッセイの概説については、Methods in Cell Biology:Antibodies in Cell Biology、第37巻(Asai編、1993);Basic and Clinical Immunology(StitesおよびTerr編、第7版、1991)もまた参照のこと。免疫学的結合アッセイ(すなわち、イムノアッセイ)は、代表的に、選択されたタンパク質または抗原(この場合、GPCR−B4またはその抗原性部分配列)に特異的に結合する抗体を使用する。抗体(例えば、抗GPCR−B4)は、当業者に周知でありそして上記のような多くの手順のいずれかによって産生され得る。
【0142】
イムノアッセイはまた、抗体および抗原によって形成される複合体に特異的に結合し、そしてそれを標識する標識化剤をしばしば使用する。標識化剤は、それ自体、抗体/抗原複合体を含む1つの部分であり得る。従って、標識化剤は、標識されたGPCR−B4ポリペプチドまたは標識された抗GPCR−B4抗体であり得る。あるいは、標識化剤は、抗体/GPCR−B4複合体に特異的に結合する二次抗体のような第3の部分であり得る(二次抗体は、代表的に、一次抗体が由来する種の抗体に特異的である)。免疫グロブリンの定常領域に特異的に結合し得る他のタンパク質(例えば、プロテインAまたはプロテインG)もまた、標識化剤として使用され得る。これらのタンパク質は、種々の種由来の免疫グロブリン定常領域との強力な非免疫原性反応性を示す(例えば、Kronvalら、J.Immunol.111:1401−1406(1973);Akerstromら、J.Immunol.135:2589−2542(1985)を参照のこと)。標識化剤は、別の分子(例えば、ストレプトアビジン)が特異的に結合し得る検出可能部分(例えば、ビオチン)で改変され得る。種々の検出可能部分が当業者に周知である。
【0143】
アッセイ全体を通して、試薬の各配合の後に、インキュベーション工程および/または洗浄工程が必要とされ得る。インキュベーション工程は、約5秒間から数時間まで、必要に応じて、約5分間から約24時間まで変動し得る。しかし、インキュベーション時間は、アッセイの様式、抗原、溶液の容量、濃度などに依存する。通常、アッセイは、周辺温度にて実施されるが、これは、一定範囲の温度(例えば、10℃〜40℃)にわたって実施され得る。
【0144】
(非競合的アッセイ様式)
サンプル中のGPCR−B4を検出するためのイムノアッセイは、競合的または非競合的のいずれかであり得る。非競合的イムノアッセイとは、抗原の量が直接的に測定されるアッセイである。1つの好ましい「サンドウィッチ」アッセイにおいて、例えば、抗GPCR−B4抗体は、固体基材に直接結合され得、この固体基材上に抗体が固定される。次いで、これらの固定化抗体は、試験サンプル中に存在するGPCR−B4を捕捉する。次いで、このように固定されたGPCR−B4を、標識化剤(例えば、標識を保有するGPCR−B4二次抗体)に結合させる。あるいは、二次抗体は標識を欠いてもよいが、これは、次いで、二次抗体が由来する種の抗体に対して特異的な標識化三次抗体に結合され得る。二次抗体または三次抗体は、代表的には、別の分子(例えば、ストレプトアビジン)が特異的に結合する検出可能部分(例えば、ビオチン)で改変されて、検出可能部分を提供する。
【0145】
(競合的アッセイ様式)
競合的アッセイにおいては、サンプル中に存在するGPCR−B4の量は、サンプル中に存在する未知のGPCR−B4によって、抗GPCR−B4抗体から置換される(競合により取り除かれる(competed away))既知の添加された(外因性)GPCR−B4の量を測定することによって、間接的に測定される。1つの競合的アッセイにおいて、既知の量のGPCR−B4がサンプルに添加され、次いでこのサンプルを、GPCR−B4に特異的に結合する抗体と接触させる。この抗体に結合する外因性のGPCR−B4の量は、サンプル中に存在するGPCR−B4の濃度に反比例する。特定の好ましい実施態様において、抗体は固体基材に固定される。抗体に結合するGPCR−B4の量は、GPCR−B4/抗体複合体中に存在するGPCR−B4の量を測定することによって、あるいは残存している非複合体化タンパク質の量を測定することによってのいずれかで決定され得る。GPCR−B4の量は、標識されたGPCR−B4分子を提供することによって検出され得る。
【0146】
ハプテン阻害アッセイは、別の好ましい競合的アッセイである。このアッセイにおいては、既知のGPCR−B4が固体基材上に固定される。既知の量の抗GPCR−B4抗体がサンプルに添加され、次いでこのサンプルを、固定されたGPCR−B4と接触させる。既知の固定されたGPCR−B4に結合した抗GPCR−B4抗体の量は、サンプル中に存在するGPCR−B4の量と反比例する。再度、固定された抗体の量は、抗体の固定された画分または溶液中に残存する抗体の画分のいずれかを検出することによって検出され得る。検出は、直接的であり得るか(ここで、抗体は標識されている)、または上記のように抗体に特異的に結合する標識化部分の引き続く添加によって間接的であり得る。
【0147】
(交叉反応性の測定)
競合的結合様式におけるイムノアッセイはまた、交叉反応性の測定のために使用され得る。例えば、配列番号1〜2、および7によって少なくとも部分的にコードされるタンパク質が、固体支持体上に固定され得る。タンパク質(例えば、GPCR−B4のタンパク質およびホモログ)は、この固定された抗原への抗血清の結合について競合するアッセイに添加される。添加されたタンパク質が、固定化タンパク質への抗血清の結合について競合する能力は、配列番号1〜2、または7によってコードされるGPCR−B4がそれ自身と競合する能力と比較される。上記のタンパク質についての交叉反応性の百分率は、標準的な計算を使用して算出される。上記に列挙される添加されたタンパク質の各々と10%未満の交叉反応性を有する抗血清を選択し、そしてプールする。必要に応じて、交叉反応性抗体は、添加される考慮されたタンパク質(例えば、遠縁のホモログ)での免疫吸収によって、プールされた抗血清から取り除かれる。
【0148】
次いで、免疫吸着されそしてプールされた抗血清を、上記のような競合的結合イムノアッセイに用いて、免疫原タンパク質(すなわち、配列番号1〜2、または7のGPCR−B4)に対して、おそらくGPCR−B4の対立遺伝子改変体または多型改変体と考えられる第2のタンパク質を比較する。この比較をなすために、2つのタンパク質は各々、広範な濃度でアッセイされ、そして固定化タンパク質への抗血清の結合の50%を阻害するのに必要とされる各タンパク質の量が決定される。結合の50%を阻害するために必要とされる第2のタンパク質の量が、結合の50%を阻害するために必要とされる配列番号1〜2、または7によってコードされるタンパク質の量の10倍未満である場合、この第2のタンパク質はGPCR−B4免疫原に対して生成されたポリクローナル抗体に特異的に結合するといわれる。
【0149】
(他のアッセイ様式)
ウェスタンブロット(イムノブロット)分析が、サンプル中のGPCR−B4の存在を検出および定量化するために使用される。この技術は一般に、以下の工程を包含する:分子量に基づいて、ゲル電気泳動によってサンプルのタンパク質を分離させる工程、分離されたタンパク質を適切な固体支持体(例えば、ニトロセルロースフィルター、ナイロンフィルター、または誘導体化されたナイロンフィルター)に転写する工程、およびGPCR−B4を特異的に結合する抗体と共にサンプルをインキュベートする工程。抗GPCR−B4抗体は、固体支持体上のGPCR−B4に特異的に結合する。これらの抗体は、直接標識され得るか、あるいは抗GPCR−B4抗体に特異的に結合する標識化抗体(例えば、標識されたヒツジ抗マウス抗体)を用いて、引き続き検出され得る。
【0150】
他のアッセイ様式としては、リポソームイムノアッセイ(LIA)が挙げられ、これは特定の分子(例えば、抗体)に結合して、カプセル化された試薬またはマーカーを放出するように設計されたリポソームを使用する。次いで、この放出された化学薬品が、標準的技術に従って検出される(Monroeら、Amer.Clin.Prod.Rev.5:34−41(1986)を参照のこと)。
【0151】
(非特異的結合の削減)
当業者は、イムノアッセイにおいて非特異的結合を最小化することがしばしば所望されることを理解する。特に、アッセイが固体基材に固定された抗原または抗体を含む場合、この基材への非特異的結合の量を最小化することが所望され得る。このような非特異的結合を削減する手段は、当業者に周知である。代表的には、この技術は、基板を蛋白様組成物でコーティングすることを含む。特に、ウシ血清アルブミン(BSA)、脱脂粉乳、およびゼラチンのようなタンパク質組成物が広範に用いられ、そして粉乳が最も好ましい。
【0152】
(標識)
このアッセイで使用される特定の標識または検出可能な基は、それがこのアッセイにおいて使用される抗体の特異的結合を有意に阻害しない限り、本発明の重要な局面ではない。検出可能な基は、検出可能な物理的特性または化学的特性を有する任意の物質であり得る。このような検出可能な標識は、イムノアッセイの分野において十分に開発されており、そして一般的に、このような方法において有用な大半の任意の標識が、本発明に適用され得る。従って、標識は、分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、電気的手段、光学的手段、または化学的手段によって検出され得る任意の組成物である。本発明において有用な標識としては、以下が挙げられる;磁気ビーズ(例えば、DYNABEADSTM)、蛍光色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミンなど)、放射性標識(例えば、3H、125I、35S、14C、または32P)、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、およびELISAにおいて一般的に使用される他の酵素)、および比色標識(例えば、金コロイド、または着色ガラスビーズもしくは着色プラスチックビーズ(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)。
【0153】
標識は、当該分野において周知の方法に従って、アッセイの所望の成分に対して、直接的または間接的に結合され得る。上記のように、広範な種々の標識が使用され得、ここで標識の選択は、必要とされる感度、化合物との結合の容易さ、安定性の要求度、利用可能な装置、および廃棄設備に依存する。
【0154】
非放射能性標識は、しばしば間接的手段によって結合される。一般的に、リガンド分子(例えば、ビオチン)が、この分子に共有結合される。次いで、このリガンドは、別の分子(例えば、ストレプトアビジン)に結合される。この別の分子は、固有に検出可能であるか、またはシグナル系(例えば、検出可能な酵素、蛍光化合物、または化学発光化合物)に共有結合されるかのいずれかである。リガンドおよびそれらの標的は、GPCR−B4を認識する抗体、または抗GPCR−B4を認識する二次抗体との任意の適切な組み合わせにおいて使用され得る。
【0155】
この分子はまた、シグナルを生成する化合物に直接的に結合体化され得る(例えば、酵素または発蛍光団と結合体化することによって)。標的としての目的の酵素は主に、加水分解酵素、特にホスファターゼ、エステラーゼ、およびグリコシダーゼ、またはオキシドレダクターゼ(oxidotase)、特にぺルオキシダーゼである。蛍光化合物としては、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロンなどが挙げられる。化学発光化合物としては、ルシフェリン、および2,3−ジヒドロフタラジンジオン、例えば、ルミノールが挙げられる。使用され得る種々の標識系またはシグナル生成系の概説としては、米国特許第4,391,904号を参照のこと。
【0156】
標識を検出する手段は、当業者に周知である。従って、例えば、標識が放射性標識である場合、検出のための手段は、オートラジオグラフィーにおける場合のようなシンチレーションカウンターまたは写真フィルムを含む。標識が蛍光標識である場合、これは適切な波長の光で蛍光色素を励起すること、および生じた蛍光を検出することによって検出され得る。蛍光は、写真フィルムを利用して、電荷結合素子(CCD)または光電子増倍管などのような電子検出器の使用によって、可視的に検出され得る。同様に、酵素標識は、その酵素に適切な基質を提供することおよび生じた反応産物を検出することによって検出され得る。最後に、単純な比色標識は、標識に関連する色を観察することによって単純に検出され得る。従って、種々のディップスティックアッセイ(dipstick assay)において、結合体化された金はしばしばピンクのように見え、一方で種々の結合体化されたビーズはそのビーズの色に見える。
【0157】
いくつかのアッセイ様式は、標識された成分の使用を必要としない。例えば、凝集体化アッセイは、標的抗体の存在を検出するために使用され得る。この場合、抗原をコーティングされた粒子が、標的抗体を含有するサンプルによって凝集体化される。この様式においては、いかなる成分も標識される必要がなく、そして標的抗体の存在は、単純な可視的検査によって検出される。
【0158】
(VI.GPCR−B4のモジュレーターについてのアッセイ)
(A.GPCR−B4活性についてのアッセイ)
GPCR−B4ならびにその対立遺伝子改変体および多型改変体は、味覚伝達に関与するGタンパク質共役レセプターである。GPCR−B4ポリペプチドの活性は、機能的効果、化学的効果、および物理的効果を測定するための種々のインビトロアッセイおよびインビボアッセイ(例えば、リガンド結合(例えば、放射性リガンド結合)、第二メッセンジャー(例えば、cAMP、cGMP、IP3、DAG、またはCa2+)、イオン流出、リン酸化レベル、転写レベル、神経伝達物質レベルなどを測定すること)を使用して、アッセイされ得る。さらに、このようなアッセイは、GPCR−B4のインヒビターおよびアクチベーターを試験するために使用され得る。モジュレーターはまた、GPCR−B4の遺伝的に改変されたバージョンであり得る。味覚伝達活性のこのようなモジュレーターは、味覚をカスタマイズするために有用である。
【0159】
アッセイのGPCR−B4は、配列番号1〜2、または7の配列を有するポリペプチドまたはその保存的に改変された改変体から選択される。あるいは、アッセイのGPCR−B4は真核生物に由来し、そしてこれは配列番号1〜2、または7にアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸部分配列を含む。一般的に、アミノ酸配列同一性は、少なくとも70%、必要に応じて、少なくとも85%、必要に応じて少なくとも90〜95%である。必要に応じて、アッセイのポリペプチドは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞質ドメイン、リガンド結合ドメイン、サブユニット関連ドメイン、活性部位などのようなGPCR−B4のドメインを含む。GPCR−B4またはそのドメインのいずれかは、異種タンパク質に共有結合されて、本明細書中に記載のアッセイにおいて使用されるキメラタンパク質を作製し得る。
【0160】
GPCR−B4活性のモジュレーターは、上記のように、組換えによって生じるかまたは天然に存在するかのいずれかであるGPCR−B4ポリペプチドを使用して試験される。組換えによって生じるかまたは天然に存在するかのいずれかである、タンパク質は単離され得、細胞において発現され得、細胞由来の膜において発現され得、組織または動物中で発現され得る。例えば、舌の切片、舌から解離された細胞、形質転換された細胞、または膜が使用され得る。調節は、本明細書中に記載のインビトロアッセイまたはインビボアッセイのうちの1つを使用して試験される。味覚伝達はまた、異種のシグナル伝達ドメインに共有結合されたレセプターの細胞外ドメイン、またはレセプターの膜貫通ドメインおよび/または細胞質ドメインに共有結合された異種の細胞外ドメインのようなキメラ分子を用いて、可溶性反応または固体反応でインビトロにおいて試験され得る。さらに、目的のタンパク質のリガンド結合ドメインを、可溶性反応または固体反応においてインビトロで使用して、リガンド結合についてアッセイし得る。
【0161】
GPCR−B4、ドメイン、キメラタンパク質へのリガンド結合は、溶液において、二重層膜において、固相に付着されて、脂質単層において、またはビヒクルにおいて試験され得る。モジュレーターの結合は、例えば、分光学的特徴(例えば、蛍光、吸着、屈折率)、流体力学特性(例えば、形状)、クロマトグラフィーの特性、または可溶性特性おける変化を使用して試験され得る。
【0162】
レセプター−Gタンパク質の相互作用もまた試験され得る。例えば、レセプターへのGタンパク質の結合、またはレセプターからのGタンパク質の放出を試験し得る。例えば、GTPの非存在下において、アクチベーターは、Gタンパク質(3つすべてのサブユニット)とレセプターとの堅固な複合体の形成を導く。この複合体は、上記に述べたような種々の方法において検出され得る。このようなアッセイは、インヒビターを検索するために改変され得る。GTPの非存在下でレセプターおよびGタンパク質にアクチベーターを添加し、堅固な複合体を形成し、次いでレセプター−Gタンパク質複合体の解離を観察することによってインヒビターをスクリーニングする。GTPの存在下では、他の2つのGタンパク質サブユニットからのGタンパク質のαサブユニットの放出を、活性化の判断基準として使用する。
【0163】
活性化されたGタンパク質または阻害されたGタンパク質は、また、標的酵素、チャネル、および他のエフェクタータンパク質の特性を改変する。伝統的な例は、視覚系におけるトランスデューシンによるcGMPホスホジエステラーゼの活性化、刺激Gタンパク質によるアデニル酸シクラーゼの活性化、Gqおよび他の同属Gタンパク質によるホスホリパーゼCの活性化、ならびにGiタンパク質および他のGタンパク質による多岐チャネルの調節である。下流の結果(例えば、ホスホリパーゼCによるジアシルグリセロールおよびIP3の生成、次いでIP3によるカルシウム流動化)もまた試験され得る。
【0164】
活性化されたGPCRレセプターは、レセプターのC末端のC末端尾部(tail)(そしておそらく、他の部位でも同様)をリン酸化するキナーゼの基質となる。従って、アクチベーターは、γ標識されたGTPからレセプターへの32Pの転移を促進し、これは、シンチレーションカウンターでアッセイされ得る。C末端尾部のリン酸化は、アレスチン様のタンパク質の結合を促進し、そしてGタンパク質の結合を阻害する。キナーゼ/アレスチン経路は、多くのGPCRレセプターの脱感受性において重要な役割を果たす。例えば、味覚レセプターが活性にとどまる持続期間を調節する化合物は、所望される味覚を延長するか、または不快な味覚を断つ手段として有用である。GPCRシグナル伝達およびシグナル伝達をアッセイする方法の一般的概説については、例えば、Methods in Enzymology、第237巻および第238巻(1994)および第96巻(1983);Bourneら、Nature 10:349:117−27(1991);Bourneら、Nature 348:125−32(1990);Pitcherら、Annu.Rev.Biochem.67:653−92(1998)を参照のこと。
【0165】
有望なGPCR−B4のインヒビターまたはアクチベーターで処理されるサンプルまたはアッセイは、調節の程度を調べるために、試験化合物を伴わないコントロールサンプルと比較される。コントロールサンプル(アクチベーターまたはインヒビターで処置されていない)は、相対的GPCR−B4活性値100を割り当てられる。GPCR−B4の阻害は、コントロールと相対的なGPCR−B4活性値が約90%、必要に応じて50%、必要に応じて25〜0%である場合に達成される。GPCR−B4の活性化は、コントロールと相対的なGPCR−B4活性値が110%、必要に応じて150%、200〜500%、または1000〜2000%である場合に達成される。
【0166】
イオン流における変化は、GPCR−B4を発現する細胞または膜の分極(すなわち、電位)における変化を測定することによって評価され得る。細胞の分極における変化を測定するための手段の1つは、電圧固定およびパッチクランプ技術(例えば、「細胞接着」様式、「裏返し(inside−out)」様式、および「全細胞」様式(例えば、Ackermanら、New Engl.J.Med.336:1575−1595(1997)を参照のこと)を用いて、電流の変化を測定する(それによって分極における変化を測定する)ことによるものである。全細胞の電流は、標準的技術(例えば、Hamilら、PFlugers.Archiv.391:85(1981)を参照のこと)を用いて、簡便に測定される。他の公知のアッセイとしては、以下が挙げられる:放射性標識イオン流アッセイおよび電圧感受性色素を用いる蛍光アッセイ(例えば、Vestergarrd−Bogindら、J.Membrane Biol.88:67−75(1988);GonzalesおよびTsien、Chem.Biol.4:269−277(1997);Danielら、J.Pharmacol.Meth.25:185−193(1991);Holevinskyら、J.Membrane Biology 137:59−70(1994)を参照のこと)。一般的に、試験される化合物は、1pM〜100mMの範囲で存在する。
【0167】
ポリペプチドの機能に対する試験化合物の効果は、上記のパラメーターのいずれかを試験することによって測定され得る。GPCR活性に作用する任意の適切な生理学的変化を使用して、本発明のポリペプチドに対する試験化合物の影響を評価し得る。機能的な結果がインタクトな細胞または動物を用いて測定される場合、伝達物質放出、ホルモン放出、既知の遺伝的マーカーおよび特徴付けられていない遺伝的マーカーの両方に対する転写の変化(例えば、ノーザンブロット)、細胞増殖またはpH変化のような細胞代謝における変化、および細胞内第二メッセンジャー(例えば、Ca2+、IP3、またはcAMP)における変化のような種々の効果もまた測定され得る。
【0168】
Gタンパク質共役レセプターについての好ましいアッセイは、レセプター活性をレポートするためのイオンまたは電圧感受性色素を載せた細胞を含む。このようなレセプターの活性を決定するためのアッセイはまた、試験される化合物の活性を評価するために、陰性コントロールまたは陽性コントロールとして、他のGタンパク質共役レセプターに対する公知のアゴニストおよびアンタゴニストを使用し得る。調節化合物(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト)を同定するためのアッセイにおいて、細胞質におけるイオンのレベルまたは膜電圧における変化は、それぞれ、イオン感受性、または膜電圧蛍光インジケーターを用いてモニターされる。イオン感受性インジケーターおよび電圧プローブの中で用いられ得るのは、Molecular Probes 1997カタログに開示されるものである。Gタンパク質共役レセプターについて、不規則な(promiscuous)Gタンパク質(例えば、Gα15およびGα16)は、選り抜きのアッセイに用いられ得る(Wilkieら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 88:10049−10053(1991))。このような不規則なGタンパク質は、広範囲のレセプターのカップリングを可能にする。
【0169】
レセプターの活性化は、代表的には、引き続く細胞内事象を開始する(例えば、カルシウムイオンの細胞内貯蔵物を放出する、IP3のような第二メッセンジャーを増加させる)。いくつかのGタンパク質共役レセプターの活性化は、ホスファチジルイノシトールのホスホリパーゼC媒介加水分解を通じてイノシトール三リン酸(IP3)の形成を刺激する(BerridgeおよびIrvine,Nature 312:315−21(1984))。次いで、IP3は、細胞内カルシウムイオン貯蔵物の放出を刺激する。従って、細胞質カルシウムイオンレベルにおける変化、または第二メッセンジャー(例えばIP3)レベルにおける変化は、Gタンパク質共役レセプター機能を評価するために用いられ得る。このようなGタンパク質共役レセプターを発現する細胞は、細胞内貯蔵物およびイオンチャネルの活性化経由の両方による寄与の結果として、増加した細胞質カルシウムレベルを示し得る。この場合、内部貯蔵物からのカルシウム放出から生じる蛍光応答を識別するために、必要に応じて、キレート剤(例えば、EGTA)を補充した無カルシウム緩衝液においてこのようなアッセイを行うことは、必須ではないが、所望され得る。
【0170】
他のアッセイは、活性化された場合に、アデニル酸シクラーゼのような酵素を活性化するかまたは阻害することによって、細胞内環状ヌクレオチド(例えば、cAMP、またはcGMP)のレベルの変化を生じるレセプターの活性を決定することに関与し得る。環状ヌクレオチド型イオンチャネル(例えば、杆状体光受容細胞チャネル)およびcAMPまたはcGMPの結合による活性化の際に、カチオンに透過性である嗅覚ニューロンチャネルが存在する(例えば、Altenhofenら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.88:9868−9872(1991)およびDhallanら、Nature 347:184−187(1990)を参照のこと)。環状ヌクレオチドレベルの減少を生じるレセプターの活性化の場合、アッセイにおいて細胞にレセプター活性化化合物を加える前に、細胞内環状ヌクレオチドレベルを増加させる薬剤(例えば、フォルスコリン)に、細胞を曝露することが好適であり得る。この型のアッセイのための細胞は、環状ヌクレオチド型イオンチャネルをコードするDNA、GPCRホスファターゼ、およびレセプター(例えば、特定のグルタミン酸レセプター、ムスカリン性アセチルコリンレセプター、ドーパミンレセプター、セロトニンレセプターなど)(これは、活性化された場合に、細胞質中の環状ヌクレオチドのレベルに変化をもたらす)をコードするDNAを用いた、宿主細胞の同時トランスフェクトによって作製され得る。
【0171】
好ましい実施態様において、GPCR−B4活性は、このレセプターをホスホリパーゼCシグナル伝達経路に結び付ける不規則なGタンパク質(OffermannsおよびSimon,J.Biol.Chem.270:15175−15180(1995)を参照のこと;実施例IIもまた参照のこと)を有する異種細胞においてGPCR−B4を発現させることによって測定される。必要に応じて、この細胞株は、HEK−293(これはGPCR−B4を天然で発現しない)であり、および不規則なGタンパク質は、Gα15(OffermannsおよびSimon、前出)である。味覚伝達の調節は、細胞内Ca2+レベルの変化を測定することによってアッセイされる。これはGPCR−B4と会合する分子の投与を介したGPCR−B4シグナル伝達の調節に応じて変化する。Ca2+レベルにおける変化は、必要に応じて蛍光Ca2+インジケーター色素および蛍光比色画像化を用いて測定される。
【0172】
1つの実施態様において、細胞内cAMPまたはcGMPにおける変化は、イムノアッセイを用いて測定され得る。OffermannsおよびSimon,J.Biol.Chem.270:15175−15180(1995)に記載される方法は、cAMPのレベルを決定するために用いられ得る。Felley−Boscoら、Am.J.Resp.Cell and Mol.Biol.11:159−164(1994)に記載される方法もまた、cGMPのレベルを決定するために用いられ得る。さらに、cAMPおよび/またはcGMPを測定するためのアッセイキットは、米国特許第4,115,538号(本明細書中で参考として援用される)に記載される。
【0173】
別の実施態様において、ホスファチジルイノシトール(PI)加水分解は、米国特許第5,436,128号(本明細書中で参考として援用される)に従って分析され得る。簡潔には、このアッセイは、48時間以上の3H−ミオイノシトールでの細胞の標識に関与する。この標識細胞は、1時間、試験化合物を用いて処理される。処理された細胞は、溶解され、そしてクロロホルム−メタノール−水において抽出され、その後、イノシトールリン酸は、イオン交換クロマトグラフィーによって分離され、そしてシンチレーション計数によって定量された。折りたたみ刺激(fold stimulation)は、緩衝液コントロールの存在下でのcpmに対して、アゴニストの存在下でのcpmの比を計算することによって決定される。同様に、折りたたみ阻害は、緩衝液コントロール(これは、アゴニストを含んでもよいし、含まなくてもよい)の存在下でのcpmに対して、アンタゴニストの存在下でのcpmの比を計算することによって決定される。
【0174】
別の実施態様態様において、転写レベルは、シグナル伝達に対する試験化合物の効果を評価するために測定され得る。目的のタンパク質を含む宿主細胞は、任意の相互作用をもたらすのに十分な時間、試験化合物と接触され、次いで遺伝子発現のレベルが測定される。このような相互作用をもたらすための時間は、例えば、時間経過を進むことによって、および時間の関数として転写のレベルを測定することによって、経験的に決定され得る。この転写の量は、当業者に公知の適切である任意の方法を用いることによって、測定され得る。例えば、目的のタンパク質のmRNA発現は、ノーザンブロットを用いて検出され得るか、またはこれらのポリペプチド産物は、免疫アッセイを用いて同定され得る。あるいは、レポーター遺伝子を用いるアッセイに基づく転写は、本明細書中で参考として援用される米国特許第5,436,128号に記載されるように用いられ得る。このレポーター遺伝子は、例えば、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、細菌ルシフェラーゼ、βガラクトシダーゼおよびアルカリホスファターゼであり得る。さらに、目的のタンパク質は、グリーン蛍光タンパク質のような第2のレポーターへの付着を介して間接的レポーターとして用いられ得る(例えば、MistiliおよびSpector,Nature Biotechnology 15:961−964(1997)を参照のこと)。
【0175】
次いで、この転写の量は、試験化合物の非存在下で同じ細胞における転写の量か、または目的のタンパク質を欠く実質的に同一の細胞における転写の量のいずれかと比較され得る。実質的に同一の細胞は、組換え細胞が調製されたが、異種DNAの導入によって改変されていなかった同じ細胞に由来し得る。転写の量におけるいずれの差異も、試験化合物が、目的のタンパク質の活性を変化させる、ある様式を有することを示す。
【0176】
(B.モジュレーター)
GPCR−B4のモジュレーターとして試験される化合物は、任意の低分子化学物質か、または生物学的実体(例えば、タンパク質、糖、核酸または脂質)であり得る。あるいは、モジュレーターは、GPCR−B4の遺伝子操作されたバージョンであり得る。代表的には、試験化合物は、低分子化学物質およびペプチドである。本質的に任意の化学物質が、本発明のアッセイにおいて潜在的モジュレーターまたはリガンドとして使用され得るが、最も頻繁には、水溶液または有機(特にDMSO−ベース)溶液中に溶解され得る化合物が用いられる。このアッセイは、アッセイ工程を自動化することによって大きな化学ライブラリーをスクリーニングするために設計され、そしてアッセイに対する任意の都合の良い供給源から化合物を提供する。これは、代表的には、並行して(例えば、ロボットアッセイにおいてマイクロタイタープレート上のマイクロタイター形式において)実行される。Sigma(St.Louis,MO)、Aldrich(St.Louis,MO)、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)、Fluka Chemika−Biochemica Analytika(Buchs Switzerland)などを含む多くの化学物質の供給業者が存在することは明らかである。
【0177】
1つの好ましい実施態様において、高処理能スクリーニング法は、多数の潜在的な治療用化合物(潜在的モジュレーターまたはリガンド化合物)を含むコンビナトリアル化学ライブラリーまたはコンビナトリアルペプチドライブラリーを提供することに関する。次いで、このような「コンビナトリアル化学ライブラリー」または「リガンドライブラリー」は、本明細書中に記載されるような、1つ以上のアッセイにおいてスクリーニングされて、所望の特徴的な活性を提示するこれらのライブラリーのメンバー(特定の化学種またはサブクラス)を同定する。従って、同定された化合物は、従来の「リード化合物」として役割を果たし得るか、またはそれ自身が潜在的もしくは実質的な治療剤として用いられ得る。
【0178】
コンビナトリアル化学ライブラリーは、化学合成かまたは生合成のいずれかにより、多数の化学的「ビルディングブロック」(例えば、試薬)を組み合わせることによって生成される多様な化学物質の収集物である。例えば、一次コンビナトリアル化学ライブラリー(例えば、ポリペプチドライブラリー)は、所定の化合物長(すなわち、ポリペプチド化合物におけるアミノ酸の数)について可能なあらゆる方法において、一組の化学的ビルディングブロック(アミノ酸)を組み合せることによって形成される。何百万もの化学物質は、化学的ビルディングブロックのこのようなコンビナトリアル混合によって合成され得る。
【0179】
コンビナトリアル化学ライブラリーの調製およびスクリーニングは、当業者に周知である。このようなコンビナトリアル化学ライブラリーとしては、ペプチドライブラリー(例えば、米国特許第5,010,175号、Furuka,Int.J.Pept.Prot.Res.37:487−493(1991)およびHoughtonら、Nature 354:84−88(1991)を参照のこと)が挙げられるがこれに限定されない。化学的に多様なライブラリーを作製するための他の化学もまた、用いられ得る。このような化学としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ペプトイド(例えば、PCT公開公報番号
WO91/19735)、コード化ペプチド(例えば、PCT公開公報番号 WO93/20242)、ランダムバイオオリゴマー(例えば、PCT公開公報番号 WO92/00091)、ベンゾジアゼピン(例えば、米国特許第5,288,514号)、ダイバーソマー(diversomer)(例えば、ヒダントイン、ベンゾジアゼピンおよびジペプチド(Hobbsら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 90:6909−6913(1993))、ビニローグ(vinylogous)ポリペプチド(Hagiharaら、J.Amer.Chem.Soc.114:6568(1992))、グルコース骨格を有する非ペプチド性のペプチド模倣物(Hirschmannら、J.Amer.Chem.Soc.114:9217−9218(1992))、低分子化合物ライブラリーのアナログ有機合成(Chenら、J.Amer.Chem.Soc.116:2661(1994))、オリゴカルバメート(Choら、Science 261:1303(1993))、および/またはペプチジルホスホネート(Campbellら、J.Org.Chem.59:658(1994))、核酸ライブラリー(Ausubel,BergerおよびSambrook、全て前出、を参照のこと)、ペプチド核酸ライブラリー(例えば、米国特許第5,539,083号を参照のこと)、抗体ライブラリー(例えば、Vaughnら、Nature Biotechnology,14(3):309−314(1996)およびPCT/US96/10287を参照のこと)、糖質ライブラリー(例えば、Liangら、Science,274:1520−1522(1996)および米国特許第5,593,853号を参照のこと)、有機低分子ライブラリー(例えば、ベンゾジアゼピン、Baum C&EN,1月18日、33頁(1993));イソプレノイド、米国特許第5,569,588号;チアゾリジノンおよびメタチアザノン、米国特許第5,549,974号;ピロリジン、米国特許第5,525,735号および同第5,519,134号;モルホリノ化合物、米国特許第5,506,337号;ベンゾジアゼピン、米国特許第5,288,514号などを参照のこと。
【0180】
コンビナトリアルライブラリーの調製のための装置は、市販されている(例えば、357 MPS、390 MPS、Advanced Chem Tech,Louisville KY,Symphony,Rainin,Woburn,MA、433A Applied Biosystems,Foster City,CA,9050およびMillipore,Bedford,MAを参照のこと)。さらに、多数のコンビナトリアルライブラリーは、それ自身が市販されている(例えば、ComGenex,Princeton,N.J.,Tripos,Inc.,St.Louis,MO,3D Pharmaceuticals,Exton,PA,Martek Biosciences,Columbia,MDなどを参照のこと)。
【0181】
(C.固体高処理能アッセイおよび可溶性高処理能アッセイ)
1つの実施態様では、本発明は、分子(例えば、リガンド結合ドメイン、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン(例えば、あるものは、7つの膜貫通領域およびサイトゾルループを含む)、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメイン、活性部位、サブユニット会合領域などのようなドメイン;キメラ分子を生成するために異種タンパク質に共有結合されるドメイン;あるいはGPCR−B4;天然に存在するかまたは組換えのいずれかのGPCR−B4を発現する細胞もしくは組織)を用いる可溶性アッセイを提供する。別の実施態様では、本発明は、ドメイン、キメラ分子、GPCR−B4、またはGPCR−B4を発現する細胞もしくは組織が、固相基材に付着される場合、本発明は、固相に基いたインビトロアッセイを高処理能形式で提供する。
【0182】
本発明の高処理能アッセイでは、一日で数千までの異なるモジュレーターまたはリガンドをスクリーニングすることが可能である。詳細には、マイクロタイタープレートの各ウェルを用いて、選択される潜在的モジュレーターに対して別々のアッセイを実行し得るか、または濃度もしくはインキュベーション時間の効果が観察されるべきである場合には、5〜10ウェルごとに単一モジュレーターを試験し得る。従って、単一の標準的なマイクロタイタープレートは、約100(例えば、96)モジュレーターをアッセイし得る。1536ウェルプレートが用いられる場合、単一のプレートは、約100〜約1500の異なる化合物を容易にアッセイし得る。一日当たり数枚の異なるプレートをアッセイすることが可能であり;約6,000〜20,000までの異なる化合物についてのアッセイスクリーニングは、本発明の統合システムを用いて可能である。最近では、試薬操作に対するマイクロフルイデック(maicrofluidic)アプローチが、例えば、Caliper Technologies(Palo Alto,CA)によって開発されている。
【0183】
目的の分子は、固体成分に、直接的にかまたは間接的に、共有結合もしくは非共有結合を介して(例えば、タグを介して)結合され得る。このタグは、種々の成分のいずれかであり得る。一般に、タグを結合する分子(タグバインダー)は、固体支持体に固定され、そして目的のタグ化分子(例えば、目的の味覚伝達分子)は、タグおよびタグバインダーの相互作用によって固体支持体に付着される。
【0184】
多数のタグおよびタグバインダーが、文献に十分に記載される公知の分子相互作用に基づいて用いられ得る。例えば、タグが天然のバインダー(例えば、ビオチン、プロテインA、またはプロテインG)を有する場合、それは、適切なタグバインダー(アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラビジン(neutravidin)、免疫グロブリンのFc領域など)との結合において用いられ得る。ビオチンのような天然のバインダーを有する分子に対する抗体はまた、広く入手可能でかつ適切なタグバインダーである;SIGMA Immunochemicals 1998カタログ(SIGMA,St.Louis MO)を参照のこと。
【0185】
同様に、任意のハプテン化合物または抗原性化合物は、タグ/タグバインダー対を形成するために適切な抗体と組み合わせて用いられ得る。数千の特異的抗体が市販されており、そして多くのさらなる抗体が文献に記載される。例えば、1つの共通の立体配置では、このタグは、一次抗体であり、そしてタグバインダーは、一次抗体を認識する二次抗体である。抗体−抗原相互作用に加えて、レセプター−リガンド相互作用もまた、タグおよびタグバインダー対として適切である。例えば、細胞膜レセプターのアゴニストおよびアンタゴニスト(例えば、トランスフェリン、c−kit、ウイルスレセプターリガンド、サイトカインレセプター、ケモカインレセプター、インターロイキンレセプター、免疫グロブリンレセプターおよび抗体、カドヘリンファミリー、インテグリンファミリー、セレクチンファミリーなどのような細胞レセプター−リガンド相互作用;例えば、PigottおよびPower,The Adhesion Molecule Facts Book I(1993)を参照のこと)。同様に、毒素および毒液、ウイルスエピトープ、ホルモン(例えば、アヘン剤、ステロイドなど)、細胞内レセプター(例えば、これは、ステロイド、甲状腺ホルモン、レチノイドおよびビタミンDを含む、種々の小リガンドの効果を媒介する;ペプチド)、薬物、レクチン、糖、核酸(直鎖立体配置および環状ポリマー立体配置の両方)、オリゴサッカリド、タンパク質、リン脂質および抗体は、種々の細胞レセプターと全て相互作用し得る。
【0186】
合成ポリマー(例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレア、ポリアミド、ポリエチレンイミン、ポリアリーレンスルフィド、ポリシロキサン、ポリイミド、およびポリアセテート)はまた、適切なタグまたはタグバインダーを形成し得る。多くの他のタグ/タグバインダー対はまた、この開示のレビューの際に当業者に明らかであるように、本明細書中に記載されるアッセイシステムにおいて有用である。
【0187】
共通のリンカー(例えば、ペプチド、ポリエーテルなど)はまた、タグとしての役割を果たし得、そしてポリペプチド配列(例えば、約5〜200アミノ酸のポリgly配列)を含む。このような可撓性リンカーは、当業者に公知である。例えば、ポリ(エチレン(ethelyne)グリコール)リンカーは、Shearwater Polymers,Inc.Huntsville,Alabamaから入手可能である。これらのリンカーは、必要に応じて、アミド結合、スルフヒドリル結合、またはヘテロ官能基結合を有する。
【0188】
タグバインダーは、現在利用可能な種々の方法のいずれかを用いて固体基材に固定される。固体基材は、タグバインダーの一部と反応性である表面に化学基を固定する化学薬品へ基材の全部または一部を曝露することによって、一般に誘導体化もしくは官能化される。例えば、より長い鎖の部分に付着するのに適している基としては、アミン基、ヒドロキシル基、チオール基、およびカルボキシル基が挙げられる。アミノアルキルシランおよびヒドロキシアルキルシランは、種々の表面(例えば、ガラス表面)を官能化するために用いられ得る。このような固相バイオポリマーアレイの構築は、文献に十分に記載される。例えば、Merrifield,J.Am.Chem.Soc.85:2149−2154(1963)(例えば、ペプチド、の固相合成を記載する);(Geysenら、J.Immun.Meth.102:259−274(1987)(ピン上での固相成分の合成を記載する);FrankおよびDoring,Tetrahedron 44:60316040(1988)(セルロースディスク上での種々のペプチド配列の合成を記載する);Fodorら、Science,251:767−777(1991);Sheldonら、Clinical Chemistry 39(4):718−719(1993);およびKozalら、Nature Medicine 2(7):753759(1996)(全てが、固体基材に固定されるバイオポリマーのアレイを記載する)を参照のこと。基材にタグバインダーを固定するための非化学的アプローチとしては、他の一般的方法(例えば、熱、UV照射による架橋など)が挙げられる。
【0189】
(D.コンピューターに基づくアッセイ)
GPCR−B4活性を調節する化合物についてのなお別のアッセイは、コンピューターを使った薬物設計に関する。これは、コンピュータシステムを用いて、アミノ酸配列によってコードされる構造情報に基づいてGPCR−B4の三次元構造を作製する。入力アミノ酸配列は、タンパク質の二次、三次、および四次構造のモデルを得るために、コンピュータープログラム中の予め確立されたアルゴリズムを用いて直接かつ能動的に相互作用する。次いで、タンパク質構造のモデルは、例えば、リガンド、に結合する能力を有する構造の領域を同定するために試験される。次いで、これらの領域は、タンパク質に結合するリガンドを同定するために用いられる。
【0190】
このタンパク質の三次元構造モデルは、コンピューターシステムへの少なくとも10アミノ酸残基のタンパク質アミノ酸配列を入力することによってか、またはGPCR−B4ポリペプチドをコードする核酸配列に対応させることによって作製される。ポリペプチドのアミノ酸配列またはポリペプチドをコードする核酸配列は、配列番号1〜2もしくは7、または配列番号3〜4もしくは8およびそれらの保存的改変型からなる群から選択される。このアミノ酸配列は、タンパク質の一次配列または部分配列を表し、これは、タンパク質の構造情報をコードする。少なくとも10残基のアミノ酸配列(または10アミノ酸をコードするヌクレオチド配列)が、コンピューターキーボード、コンピューターで読み取り可能な基体(これは、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、磁気テープ、磁気カートリッジ、および磁気チップ)、光学媒体(例えば、CD ROM)、インターネットサイトによって配布される情報、およびRAMによって配布される情報を含むが、これらに限定されない)から、コンピューターシステム中に入力される。次いで、タンパク質の三次元構造モデルは、当業者に公知のソフトウェアを用いて、アミノ酸配列とコンピューターシステムとの相互作用によって作製される。
【0191】
アミノ酸配列は、目的のタンパク質の二次、三次、および四次構造を形成するために必要な情報をコードする一次構造を表す。このソフトウェアは、構造モデルを作製するための一次配列によってコードされる特定のパラメーターを調べる。これらのパラメーターは、「エネルギー条件(energy term)」といわれ、そしてこれらとしては、静電的ポテンシャル、疎水的ポテンシャル、溶媒に到達可能な表面、および水素結合が主に挙げられる。第二のエネルギー条件としては、ファンデルワールスポテンシャルが挙げられる。生物学的分子は、累積的な様式においてエネルギー条件を最小にする構造を形成する。従って、このコンピュータープログラムは、二次構造モデルを作製するための一次構造またはアミノ酸配列によってコードされるこれらの条件を用いるものである。
【0192】
次いで、二次構造によってコードされるタンパク質の三次構造は、二次構造のエネルギー条件に基づき形成される。この時点で使用者は、さらなる変数(例えば、タンパク質が膜に結合されるかまたは可溶性か否か、体内でのその位置、およびその細胞内配置(例えば、細胞質、表面、もしくは核))を入力し得る。二次構造のエネルギー条件と共にこれらの変数は、三次構造のモデルを形成するために用いられる。三次構造のモデリングにおいて、コンピュータープログラムは、二次構造の疎水性表面と同様のものとを一致させ、そして二次構造の親水性表面と同様のものとを一致させる。
【0193】
一旦、この構造が作製されたら、潜在的リガンド結合領域が、コンピューターシステムによって同定される。潜在的リガンドについての三次元構造は、上記のようにアミノ酸またはヌクレオチド配列または化合物の化学組成を入力することによって作製される。次いで、潜在的リガンドの三次元構造は、GPCR−B4に結合するリガンドを同定するためにGPCR−B4タンパク質の三次元構造と比較される。タンパク質とリガンドとの間の結合親和性は、どのリガンドが、タンパク質に結合する増大された可能性を有するかを決定するためにエネルギー条件を使用して決定される。
【0194】
コンピューターシステムはまた、GPCR−B4遺伝子の変異、多型性改変体、対立遺伝子および種間ホモログをスクリーニングするために用いられる。このような変異は、疾患状態または遺伝形質に関連し得る。上記のように、GeneChipTMおよび関連した技術もまた、変異、多型性改変体、対立遺伝子および種間ホモログをスクリーニングするために用いられ得る。一旦改変体が同定されると、診断アッセイは、このような改変型遺伝子を有する患者を同定するために用いられ得る。改変型GPCR−B4遺伝子の同定は、配列番号1〜2、および7、配列番号3〜4、および8、ならびにそれらの保存的改変型からなる群から選択される、GPCR−B4をコードする第一の核酸配列またはアミノ酸配列の入力を受けることを伴う。この配列は、上記のようにコンピューターシステムに入力される。次いで、第一の核酸配列またはアミノ酸配列は、第一の配列と実質的な同一性を有する第二の核酸配列またはアミノ酸配列と比較される。この第二の配列は、上記の様式でコンピューターシステムへと入力される。一旦、第一および第二の配列が比較されると、配列間のヌクレオチドまたはアミノ酸の差異が同定される。このような配列は、GPCR−B4遺伝子、ならびに疾患状態および遺伝形質に関連する変異における対立遺伝子の差異を表し得る。
【0195】
(VIII.キット)
GPCR−B4およびそのホモログは、味覚レセプター細胞を同定するための、法医学的判定および父子判定のための、および味覚伝達を試験するための有用なツールである。GPCR−B4核酸に特異的にハイブリダイズするGPCR−B4に特異的な試薬(例えば、GPCR−B4プローブおよびプライマー)、ならびにGPCR−B4タンパク質に特異的に結合するGPCR−B4に特異的な試薬(例えば、GPCR−B4抗体)は、味覚細胞発現および味覚伝達調節を試験するために用いられる。
【0196】
サンプル中のGPCR−B4 DNAおよびRNAの存在についての核酸アッセイとしては、当業者に公知である多くの技術(例えば、サザン分析、ノーザン分析、ドットブロット、RNase 保護、S1分析、PCRおよびLCRのような増幅技術、およびインサイチュハイブリダイゼーション)が挙げられる。インサイチュハイブリダイゼーションでは、例えば、標的核酸は、引き続く解釈および分析のために細胞形態を保存する間に、細胞内でのハイブリダーゼーションに利用可能であるようにその細胞周囲から遊離される(実施例1を参照のこと)。以下の論文は、インサイチュハイブリダイゼーションの分野の概要を提供する:Singerら、Biotechniques 4:230−250(1986);Haaseら、Methods in Virology,第VII巻、189−226(1984);およびNucleic Acid Hybridization:A Practical Approach(Hamesら、編、1987)。さらにGPCR−B4タンパク質は、上記の種々の免疫アッセイ技術を用いて検出され得る。この試験サンプルは、代表的には陽性コントロール(例えば、組換えGPCR−B4を発現するサンプル)および陰性コントロールの両方と比較される。
【0197】
本発明はまた、GPCR−B4のモジュレーターをスクリーニングするためのキットを提供する。このようなキットは、容易に入手可能な材料および試薬から調製され得る。例えば、このようなキットは、1つ以上の以下の材料のいずれかを含み得る:GPCR−B4、反応チューブ、およびGPCR−B4活性を試験するための取り扱い説明書。必要に応じて、このキットは、生物学的に活性なGPCR−B4を含む。広範な種々のキットおよび成分が、本発明に従って調製され得、これらはキットの対象とする使用者および使用者の特定の必要性に依存する。
【0198】
(IX.投与および薬学的組成物)
味覚モジュレーターは、インビボでの味覚の調節(詳細には、苦味の調節)のために哺乳動物非験体に直接投与され得る。投与は、処置されるべき組織(必要に応じて舌または口)との最終的な接触へとモジュレーター化合物を導入するために通常用いられる任意の経路による。味覚モジュレーターは、必要に応じて薬学的に受容可能なキャリアと共に、任意の適切な様式で投与される。このようなモジュレーターを投与する適切な方法は、利用可能かつ当業者に周知であり、そして1を超える経路が特定の組成物を投与するために用いられ得るが、特定の経路は、別の経路よりも迅速かつ効果的な反応をしばしば提供し得る。
【0199】
薬学的に受容可能なキャリアは、投与される特定の組成物によって、およびこの組成物を投与するために用いられる特定の方法によって一部決定される。従って、本発明の薬学的組成物の広範な種々の適切な処方が存在する(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第17版、1985を参照のこと)。
【0200】
味覚モジュレーター(単独または適切な他の成分との組み合わせ)は、吸入を介して投与されるエーロゾル処方物(すなわち、これらは「霧状」にされ得る)にされ得る。エーロゾル処方物は、加圧された受容可能な噴霧剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素など)中に配置され得る。
【0201】
投与に適切な処方物としては、水溶液および非水溶液、滅菌等張液が挙げられる。これらは、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、および処方物に等張性を与える溶質、ならびに滅菌水性懸濁液および滅菌非水性懸濁液(懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、および防腐剤を含み得る)を含み得る。本発明の実施において、組成物は、例えば、経口的、局所的、静脈内、腹腔内、膀胱内または髄腔内に投与され得る。必要に応じて、この組成物は、経口投与または鼻腔内投与される。化合物の処方は、単位投与または複数投与密閉容器(例えば、アンプルおよびバイアル)中で提示され得る。溶液および懸濁液は、以前に記載の種類の滅菌粉末、顆粒、および錠剤から調製され得る。モジュレーターはまた、調製される食物または薬物の一部として投与され得る。
【0202】
本発明の状況において、患者に投与される用量は、経時的に、被検体において有利な応答をもたらすのに十分であるべきである。この用量は、用いられる特定の味覚モジュレーターの効果および被験体の条件、ならびに体重または処置されるべき領域の表面積によって決定される。用量のサイズはまた、特定の被験体における特定の化合物またはベクターの投与に伴ういずれかの有害な副作用の存在、性質、および程度によって決定される。
【0203】
医師によって投与されるべきモジュレーターの有効量を決定することにおいて、モジュレーターの循環血漿レベル、モジュレーター毒性、および抗モジュレーター抗体の産性を評価し得る。一般に、モジュレーターの用量等価物は、代表的な被験体について約1ng/kg〜10mg/kgである。
【0204】
投与について、本発明の味覚モジュレーターは、被験体の質量および全体的な健康に適用されるように、モジュレーターのLD−50、および種々の濃度でのインヒビターの副作用によって決定される割合で投与され得る。投与は、単回用量または分割用量によって達成され得る。
【0205】
本明細書中で引用される全ての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願がそれぞれ参考として援用されるべきであると具体的にかつ個々に指示されるかのように、本明細書中で参考として援用される。
【0206】
前述の発明は、明確な理解を目的として、説明および実施例によって、いくぶん詳細に記載されているが、添付の特許請求の範囲の精神または範囲を逸脱することなく、特定の変更および改変がそれらに対してなされ得ることは、本発明の教示を考慮して当業者に容易に理解される。
【実施例】
【0207】
(実施例)
以下の実施態様例は、制限を目的としてではなく、例示のみを目的として提供される。当業者は、本質的に類似する結果を得るために変更または改変され得る種々の重大でないパラメーターを容易に認識する。
【0208】
(実施例I:GPCR−B4のクローニングおよび発現)
ラットの有郭および茸状の単一細胞から作製したcDNAライブラリーを、用いて、本発明のGPCR核酸を単離した。
【0209】
単一の葉状乳頭および茸状乳頭をラットの舌から単離(それぞれ10乳頭)し、そして単一細胞ライブラリー構築方法を用いてそれぞれの乳頭から、第1鎖cDNAを調製した(例えば、Bernhardtら、J.Physiol.490:325〜336(1996);Dulac&Axel,Cell 83:195〜206(1995)を参照のこと)。20の異なるcDNA集団を、味覚レセプターマーカーについて陽性なものについてアッセイし(TCP#1、クローン27〜59としても既知;1998年7月28日出願、特許出願代理人登録番号02307E−084200を参照のこと)、味覚レセプター細胞由来のcDNAを確認した。このcDNAをまた、Gタンパク質共役レセプタークローンであるGPCR−B3(1998年7月28日出願、USSN60/094,465)を用いてスクリーニングした。VR/mGluR/CaST/GPCR−B3レセプターの間で高度に保存されたモチーフをコードするように設計された縮重プライマーを用いて、3つの陽性の乳頭を同定し、そしてPCR増幅のためのcDNAの供給源として用いた。膜貫通ドメイン6と7との間の領域から好ましいプライマーを得た:[Y/N]FNEAK(配列番号9)およびPKCY[I/V]I(配列番号10)。縮重PCR産物をHindIIIフラグメントとしてBluescriptベクターにサブクローニングし、そして52のPCR産物を配列決定した。これらの産物のうち20がGPCR−B3に対応した。産物のうち8つが新規なGPCR−B4配列をコードした。
【0210】
ゲノムライブラリーおよびcDNAらについてプローブとしてラットGPCR−B4クローンを用い、GPCR−B4のマウス種間相同体を、単離した。GPCR−B4のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号1〜2および7、ならびに配列番号3〜4および8に提供する。
【0211】
舌の組織切片へのインサイチュハイブリダイゼーションのためのプローブとしてクローンを用いて、GPCR−B4の味覚細胞特異的発現を確認する。全てのクローンは、味蕾において特異的発現かまたは優先的発現を示す。
【0212】
(実施例II:GPCRは、味覚伝達レセプターである)
GPCR−B4の特有の組織分布および苦味伝達の行動的表現は、B4の発現の部位(有郭乳頭だが、茸状乳頭または味線条(geschmackstreifen)ではない)と苦味感受性との間の相関を示唆する。GPCR−B4のリガンド選択性を決定するために、異種の細胞における発現を用いた。異種細胞におけるGPCR発現のための1つの問題は、GPCRがGタンパク質および適切なシグナル伝達経路に結合する方法を決定することである。この例では、Gタンパク質サブユニットであるGα15を用いた。これは、ホスホリパーゼC媒介シグナル伝達経路へ広範なGPCRを無差別に結合させる(OffermansおよびSimons,J.Biol.Chem.270:15175〜15180(1995))。結果として、蛍光Ca2+指示色素および蛍光画像化を用いて、[Ca2+iのリガンド誘導性変化を記録することによりレポーター活性を効果的に測定し得る。
【0213】
原形質膜におけるGPCR−B4の発現を保証するため、種々の細胞株および発現ベクターを試験した。これらの研究のためのコントロールとして、細胞を哺乳動物のγオピオイドレセプターでトランスフェクトした;このレセプターは通常はPLCに結合しない。そのため[Ca2+iの全てのアゴニスト誘導性変化は、Gα15を通じた結合を反映する。SV40 T抗原を発現するHEK293株を、TK−Gα15、CMV−γ−オピオイドおよびpEAK−10エピソームベクター(Edge Biosystems)(EF1a−[B4−GPCR]構築物を含む)で同時トランスフェクトした。CMV−GFP構築物を用いてトランスフェクション効率を決定した。γ−オピオイド/Gα15を発現するコントロール細胞は、DAMGO(γオピオイドのアンタゴニスト)に強く反応するが、甘味または苦味の味覚物質、あるいは無関係なアゴニストには反応しない(データ示さず)。これらの反応は、Gα15に依存し、そして、刺激の適用後迅速な発現時間である、適切な経時的分解を有する。とりわけ、B4/Gα15またはB4/Gα15/γ−オピオイドを発現する細胞は、十分に特徴付けられた苦味味覚物質フェニルチオカルバミド(PTC)に反応したが、多数の天然の甘味料または人工の甘味料にはいずれも反応しなかった。この活性は、全くB4レセプター依存性であり、そして、PTCの生理学的な濃度(300μM〜5mM)で生じる。
【0214】
これらの結果は、GPCR−B4が、苦味の味覚物質変換に関与することを示唆し、そして将来の実験のための実験的に扱いやすい系を提供する。これには、味覚物質の特異性および選択性の研究、天然の苦味シグナル伝達経路の定義、およびおそらく「味のわかる人(taster)」と「味のわからない人(non−taster)」との間のPTCの味覚の劇的な差異を実証するヒトの精神物理的研究の分子的基礎を理解することが挙げられる。

(配列表)







【特許請求の範囲】
【請求項1】
感覚伝達Gタンパク質共役型レセプターをコードする単離された核酸。

【公開番号】特開2009−201525(P2009−201525A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144772(P2009−144772)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【分割の表示】特願2000−562390(P2000−562390)の分割
【原出願日】平成11年7月27日(1999.7.27)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】