説明

懸濁液組成物及びその製造方法

懸濁液及びその製造方法が本願明細書に提供されている。該懸濁液は、連続的な水相(a)、該水相中を輸送可能であり、それによって物質のオストワルド熟成を引き起こす物質(b)、及び分散剤(c)を含む。分散剤は少なくとも1種のモノマー(i)と少なくとも1種の追加のモノマー(ii)との反応生成物を含む。少なくとも1種のモノマー(ii)は一般式(I)によって表され、その式中、Rは水素、アルキル基又はアリール基であり、Rは少なくとも2個の炭素原子を有するアルキル基であり、kは2〜4であり、且つnは少なくとも約10である。少なくとも1種の追加のモノマー(ii)は不飽和官能性を有し且つ少なくとも1個のカルボニル基を含有する。分散剤は、懸濁液中の物質(b)のオストワルド熟成を制限するのに十分な量で懸濁液中に存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
当該特許出願は、2009年6月12日に出願された米国特許仮出願第61/186,734号の全ての利益に対して優先権を主張する。この仮特許出願の全てが明確に参照により本願明細書に援用されている。
【0002】
発明の背景
本発明は、概して連続的な水相と、該水相中を輸送可能であり、それによって懸濁液組成物中の物質のオストワルド熟成を引き起こす物質とを含む、懸濁液組成物に関する。更に詳細には、本発明は、懸濁液組成物中の物質のオストワルド熟成を制限することが可能な分散剤を含む懸濁液組成物に関する。
【0003】
関連技術の説明
懸濁液組成物、又は流体に分散された粒子を含む組成物は、多くの用途に有用である。有用な懸濁液組成物の一特定例は、水性の農作物保護用配合物に使用される殺虫剤成分を含む懸濁液濃縮物である。水性の農作物保護用配合物は、典型的には、懸濁液濃縮物を水で希釈することによって製造され、その際、水性の農作物保護用配合物を農作物に適用し、それによって殺虫剤成分を送達する。
【0004】
懸濁液組成物の安定性は、一般的に、特に上記の懸濁液濃縮物にとって懸案事項である。貯蔵及び温度サイクルは概して懸濁液濃縮物の安定性に関する問題を悪化させており、粒子と流体の間の分離を防ぐために懸濁液組成物の貯蔵及び凍結/解凍安定性を改善することが常に求められている。
【0005】
オストワルド熟成は、複数の懸濁液組成物の不安定性を引き起こす現象である。多くの物質はオストワルド熟成を示さないが、懸濁液組成物が、一粒子から別の粒子まで液体中を輸送され得る物質を含有する場合にはオストワルド熟成が起こり、それによって自然粒径成長が引き起こされる。大きな粒子は小さな粒子よりもエネルギー的に有利であるため、オストワルド熟成は一般的に大きな粒子に取り込まれている小さな粒子によって進行する。大きな粒子は一般に懸濁液組成物の沈殿を引き起こしやすいので、オストワルド熟成による粒径成長は、通例、懸濁液組成物の不安定性をもたらす。
【0006】
オストワルド熟成は一般に物質の液体中への溶解によって促進され、これは物質の安定性が低い場合でも起こり得る。しかしながら、物質の高い溶解度はオストワルド熟成の発生率を高め、このために、多くの水性農作物保護用配合物は、水中で約100ppm未満の比較的低い水への溶解度を有する殺虫剤成分を使用している。
【0007】
懸濁液組成物の安定性を高める種々の分散剤を使用することが公知である。かかる分散剤の例としてポロキサマー及び近年開発されたAtlox(登録商標)4913が挙げられ、これは産業のベンチマークであり且つメチルメタクリレート及びメタクリル酸単位の主鎖を含有する構造を有する。Atlox(登録商標)4913は広範に使用されているが、懸濁液組成物の安定化のために、特にオストワルド熟成を抑止するために、機能する及び/又はAtlox(登録商標)4913よりも優れた新規な分散剤を開発する試みが続いている。新規な分散剤によるオストワルド熟成の抑止の改善によって更に水溶性の物質を使用することができる一方、懸濁液組成物の十分な安定性を達成させ続けることができる。
【0008】
本発明の概要及び利点
本発明は懸濁液組成物及び該懸濁液組成物の製造方法を提供する。懸濁液組成物は連続的な水相(a)、該水相中を輸送可能であり、それによって懸濁液組成物中の物質のオストワルド熟成を引き起こす物質(b)、及び分散剤(c)を含む。分散剤は少なくとも1種のモノマー(i)と少なくとも1種の追加のモノマー(ii)との反応生成物を含む。少なくとも1種のモノマー(ii)は一般式(I):
C=CR−O−R−(OC2k (I)
(式中、Rは水素、アルキル基又はアリール基であり;Rは少なくとも2個の炭素原子を有するアルキル基であり;kは2〜4であり;且つnは少なくとも約10である)
によって表される。少なくとも1種の追加のモノマー(ii)は不飽和官能性を有し且つ少なくとも1個のカルボニル基を含有する。分散剤は、懸濁液組成物中の物質(b)のオストワルド熟成を制限するのに十分な量で懸濁液組成物中に存在する。
【0009】
懸濁液組成物の製造方法は、(I)容器中で連続的な水相(a)、物質(b)、分散剤(c)、及び(d)粉砕媒体を合わせて混合物を形成する工程、及び(II)該混合物中の物質(b)のサイズを約1.5〜約2.0マイクロメートルの体積平均粒径に減少させて懸濁液組成物を形成する工程を含む。
【0010】
本発明の懸濁液組成物は、特定の分散剤(c)の使用による、優れた安定性、及び制限されたオストワルド熟成を示し、該懸濁液組成物の安定性は、ベンチマークのAtlox(登録商標)4913分散剤を使用する時に達成される安定性に匹敵し、その際、オストワルド熟成の抑制は、ある状況下でAtlox(登録商標)4913で達成される結果よりも優れている。
【0011】
発明の詳細な説明
懸濁液組成物及び該懸濁液組成物の製造方法が提供される。懸濁液組成物とは、液体に分散された固体粒子を含む組成物を意味する。本出願のために、「液体」は連続的な水相(a)であり、「粒子」は、連続的な水相(a)中を輸送可能であり、それによって懸濁液組成物中の物質(b)のオストワルド熟成を引き起こす任意の固相物質(b)であってよい。連続的な水相(a)は水を含む。懸濁液組成物が種々の成分を含み得ることが理解されるべきであるが、「連続的な水相」とは一般に水だけを意味する。更に詳細には、物質(b)は、連続的な水相中に懸濁される場合、「オストワルド熟成」と呼ばれる現象を示す。オストワルド熟成は、液体中に分散された粒子が時とともにサイズを変化させる、熱力学的に駆動される自発的なプロセスである。特に、大きな粒子は小さな粒子よりもエネルギー的に有利である。結果として、小さな粒子から引き離された表面分子は、一般に拡散により液体中を輸送されて、大きな粒子中に取り込まれる。大きな粒子が時間とともに更にサイズを増大させるので、液体を沈降する粒子の発生率が高まる。オストワルド熟成は、所与の懸濁液組成物について経時的な粒子サイズの差を測定することによって容易に観察することができる(以下に更に詳細に記載される)。本出願のために、連続的な水相(a)中を輸送可能であり、それによってオストワルド熟成を引き起こす物質(b)は、懸濁液組成物の摂氏40度の温度で28日間の貯蔵後に又は摂氏−15度〜摂氏+5度の範囲の温度で7日間の懸濁液組成物の凍結−融解サイクル後に、少なくとも0.1マイクロメートルの物質の平均粒径の増加を示す。上昇した温度がオストワルド熟成の発生を増加させ得ることが理解されるべきである。
【0012】
連続的な水相(a)中の輸送を容易にするために、物質(b)はある程度の水溶解度を有する。しかしながら、物質(b)は典型的には連続的な水相(a)への低い溶解度を有する。連続的な水相(a)中の物質(b)の溶解度が高すぎる場合、物質(b)の分子は連続的な水相(a)中を急速に進み過ぎる。その結果、オストワルド熟成は制御できないほど高く、分散剤(c)(以下に更に詳細に記載されている)が懸濁液組成物中に含まれる場合でも、物質(b)は連続的な水相(a)を沈殿し得る。従って、物質(b)は、摂氏−15度〜摂氏54度の温度で、約500ppmまで、典型的には約10〜約100ppmの水溶解度を有し得る。場合によっては、物質(b)の水溶解度は、摂氏−15度〜摂氏54度の温度で、100ppm〜500ppmであり得る。更に以下に詳細に記載される通り、本発明の懸濁液組成物のある特定の利点は、既知の懸濁液組成物と比較して、制限されたオストワルド熟成が経時的に起こる際に、100ppmを超える水溶解度を有する物質(b)を使用できることである。
【0013】
物質(b)は典型的には約1.5〜約3.2マイクロメートル、或いは約1.5〜約2.8マイクロメートルの体積平均粒径を有する固体粒子の形で懸濁液組成物中に存在する。物質(b)は典型的には、凍結/融解サイクル後及び約54℃の昇温の条件下で約28日間の貯蔵後でも前述の範囲内の体積平均粒径を有する(以下に更に詳細に記載されている)。しかしながら、物質(b)は典型的には約1.5〜約2.0マイクロメートルの初期の体積平均粒径まで粉砕される。典型的には、物質(b)は単峰性の体積平均粒径分布を有する。用語「単峰性」とは、粒径分布曲線(Y軸の体積パーセント、X軸の粒径)上の単一の、はっきりと認識できる最高値を有する粒子の集まりを意味する。本願明細書に記載される懸濁液組成物のために、「単一のはっきりと認識できる最大値」は典型的には1.5〜3.2マイクロメートルの粒径分布曲線上にある。付加的に、物質(b)の粒子の約90%は、典型的には3.8マイクロメートルの粒径を下回る。更に、物質(b)には、10マイクロメートルを上回る粒径を有する粒子がない。物質(b)が連続的な水相(a)へのある程度の溶解度を有するという事実のために、少なくとも一部のO.R.物質が懸濁液組成物内に溶解され得ることが理解されるべきである。
【0014】
本発明の懸濁液組成物は特定の種類の物質に限定されないが、物質は典型的には殺虫剤活性成分を含む殺虫剤成分である。この点、懸濁液組成物は、水性の農作物保護用配合物に使用される懸濁液濃縮物であってよい。殺虫剤成分は典型的には殺虫剤活性成分のみを含む。しかしながら、殺虫剤成分はそれほど制限されておらず、当該技術分野で公知の追加の成分を含み得ることが理解されるべきである。更に、2つ以上の殺虫剤活性成分が物質(b)中に存在し得ることが理解されるべきである。本発明のための好適な殺虫剤活性成分の例として、アトラジン、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア(通例、商標Diuron(登録商標)と呼ばれる)、及びカルバリルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
物質(b)は典型的には、前記懸濁液組成物の全質量を基準として、約20〜約60質量%、或いは約30〜約55質量%、或いは約40〜約50質量%の量で懸濁液組成物中に存在する。この点、懸濁液組成物は、典型的には、最終使用者の使用を意図した配合物と比較して、比較的多量の物質(b)を含む。例えば、物質(b)が殺虫剤活性成分を含む殺虫剤成分である場合、懸濁液組成物は懸濁液濃縮物であってよく、これは追加の水で希釈されて水性の農作物保護用配合物を形成し、次いで最終使用者によって農作物に適用される。
【0016】
上記のように、懸濁液組成物は更に分散剤(c)を含む。典型的には懸濁液組成物中に含まれる多量の物質(b)のために、及び比較的水不溶性の物質(b)のために、分散剤(c)は懸濁液組成物の連続的な水相(a)内の物質(b)を安定化するために懸濁液組成物中に含まれており、分散剤(c)は同様に作用するだけでなく、以下に詳細に記載される懸濁性試験によって測定されるような産業ベンチマークの分散剤としても作用する。本発明の懸濁液組成物中に含まれる分散剤(c)も、以下に更に詳細に記載される懸濁液組成物内の物質(b)のオストワルド熟成を抑止又は制限し、このようなオストワルド熟成の抑止は、ある状況下では、正に産業ベンチマークの分散剤の作用よりも更に効果的であることが判明した。
【0017】
分散剤(c)は
(i)一般式(I):
C=CR−O−R−(OC2k−OH (I)
(式中、Rは水素、アルキル基又はアリール基であり;Rは少なくとも2個の炭素原子を有するアルキル基であり;kは2〜4であり;且つnは少なくとも約10である)
によって表される少なくとも1種のモノマーと、
(ii)不飽和の官能性を有し且つ少なくとも1個のカルボニル基を含有する少なくとも1種の追加のモノマーと、
の反応生成物を含む。(i)と(ii)との反応生成物は、少なくとも1種のモノマー(i)と少なくとも1種の追加のモノマー(ii)との間のフリーラジカル重合の結果として生成されるコポリマーである。かかるコポリマーは通例、その構造のために「櫛」ポリマーと呼ばれ、該構造は少なくとも1種のモノマー(i)及び少なくとも1種の追加のモノマー(ii)のビニル基のフリーラジカル重合から得られる主鎖を含み、更にアルキレンオキシド鎖などの主鎖から伸びる側基又は少なくとも1種のモノマー(i)からの類似の構造及び少なくとも1種の追加のモノマー(ii)からのカルボニル基を含む。
【0018】
少なくとも1種のモノマー(i)は一般にアルコキシル化ビニルエーテルと呼ばれ、これは当該技術分野で公知の方法、例えば、式OC2k(式中、kは上記で定義されたのと同じである)を有するアルキレンオキシドとアルコキシビニルエーテルとのアルコキシル化によって製造できるが、これに限定されない。少なくとも1種のモノマー(i)はアルキレンオキシド鎖又は類似の構造を反応生成物中に導入するために使用される。
【0019】
式(I)において、少なくとも1種のモノマー(i)について、nの値はアルキレンオキシド鎖の長さを決定し且つ少なくとも1種のモノマー(i)の数平均分子量を実質的に制御する。いかなる特定の理論に拘束されることなく、アルキレンオキシド鎖によって、そこから形成される得られる櫛ポリマーが、連続的な水相中に溶解され且つそうでなければオストワルド熟成を受ける分子及び/又は小さい粒子の物質(b)を包むことができ、それによって得られる櫛ポリマーがオストワルド熟成を抑止することが考えられる。当該出願のために、nの値は上述したように少なくとも10である。あるいは、nは約20〜約150、或いは約60〜約130である。ある状況下では、分散剤(c)が一般式(I)によって表される2種以上のモノマー(i)の反応生成物を含み得ることが理解されるべきである。一実施態様において、少なくとも1種のモノマー(i)は、それぞれ式(I)によって表される少なくとも2種の異なるモノマーとして更に定義されており、その式中、nは式(I)によって表される少なくとも1種のモノマーにおいて約20〜約80であり、且つnは式(I)によって表される少なくとも1種の他のモノマーにおいて80を上回る。
【0020】
上述したように、式(I)中のRは少なくとも2個の炭素原子を有するアルキル基であり、典型的には2〜10個の炭素原子を有する。本発明のために適した式(I)によって表されるモノマー(i)の例として、約1000〜10,000g/モル、或いは約1000〜約6000g/モルの分子量を有するポリエチレングリコールモノビニルエーテルが挙げられる。
【0021】
少なくとも1種の追加のモノマー(ii)は、米国特許第7,482,405号に記載されたもののいずれかなどの1種以上の不飽和モノカルボン酸誘導体を含んでよく、不飽和モノカルボン酸誘導体を記載するその一部が参照により本願明細書に援用されている。更に、少なくとも1種の追加のモノマー(ii)は、米国特許第7,482,405号に記載されたもののいずれかなどの1種以上の不飽和ジカルボン酸のジエステルを含んでよく、不飽和ジカルボン酸のジエステルを記載するその一部が参照により本願明細書に援用されている。典型的には、少なくとも1種の追加のモノマー(ii)は、式(II)によって表される構造、又はその無水物:
【化1】

(式中、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、及びカルボニル基の群から選択され、且つRは水素原子及びヒドロキシアルキル基の群から選択される)
を有する。例えば、一実施態様において、Rは水素原子であり且つ少なくとも1種の追加のモノマーはアクリル酸であってよい。或いは、Rはヒドロキシアルキル基であり且つ少なくとも1種のモノマーはヒドロキシアルキルアクリレート又はメタクリレートであってよい。一実施態様において、少なくとも1種の追加のモノマー(ii)は、それぞれ式(II)によって表される、少なくとも2種の異なる追加のモノマー(ii)として更に定義されており、且つ少なくとも2種の異なる追加のモノマー(ii)は、少なくとも1種の追加のモノマー(ii)に適したものとして本願明細書に記載された前述の化合物のいずれかから選択してよい。いかなる特定の理論に拘束されることなく、ある状況下では、少なくとも2種の異なる追加のモノマー(ii)の反応生成物を含む分散剤(c)が、特に懸濁液組成物が昇温の条件下で凍結/融解サイクル及び/又は貯蔵に付される時に、向上した懸濁性を有する懸濁液組成物を提供することが考えられる。
【0022】
少なくとも1種のモノマー(i)と少なくとも1種の追加のモノマー(ii)との反応生成物を含む櫛ポリマーの場合、第1のモノマー(i)は、全モノマーの全量を基準として、典型的には約15〜約50モルパーセントで反応し、更に典型的には約25〜約40モルパーセントで反応して分散剤を形成する。
【0023】
典型的には、分散剤は、上記の通り、少なくとも1種のモノマー(i)と少なくとも1種の追加のモノマー(ii)との反応生成物のみを含む。しかしながら、分散剤はそれほど制限されておらず、ある状況下では、分散剤は追加成分を含み得ることが理解されるべきである。
【0024】
分散剤は、前記懸濁液組成物中の物質(b)のオストワルド熟成を制限するのに十分な量で懸濁液組成物中に存在する。典型的には、分散剤は、懸濁液組成物中に存在する全ての成分の総質量を基準として、約1〜約5質量%の量で存在し、これは前記懸濁液組成物中の物質(b)のオストワルド熟成を制限するのに十分な量である。或いは、分散剤は、懸濁液組成物中に存在する全ての成分の総質量を基準として、約1.5〜約3質量パーセントの量で懸濁液組成物中に存在する。
【0025】
懸濁液組成物は、連続的な水相(a)、物質(b)、及び分散剤(c)の他に更なる成分を含んでよい。例えば、懸濁液組成物は典型的には湿潤剤(f)を更に含む。湿潤剤は当該技術分野で公知である。懸濁液組成物中に含まれてよい更なる追加の成分として、懸濁液組成物の凍結/融解安定性を改善するための不凍剤、消泡剤、及び沈降防止剤、例えば、キサンタンガムが挙げられる。しかしながら、本願明細書に記載された分散剤(c)が、十分に許容される懸濁性を懸濁液組成物に付与し、且つ十分にオストワルド熟成を防ぐので、追加の沈降防止剤が多くの場合に要求されていないことが理解されるべきである。しかしながら、懸濁液組成物中に含まれる特定の物質(b)に応じて、沈降防止剤が、懸濁液組成物を更に安定化するために懸濁液組成物中に含まれてよい。
【0026】
上記のように、本発明の懸濁液組成物中に特定の分散剤(c)を含むことによって、他の分散剤が使用される時と比較して、経時的に低減されたオストワルド熟成が懸濁液組成物中の物質(b)によって起こり、オストワルド熟成を抑止することに関するかかる性能によって、現在許容されている以上の高い水溶解度を有する物質(b)を使用することができる。特に、物質(b)の平均粒径の変化は、約54℃の温度で約28日間の懸濁液組成物の貯蔵後に、典型的には約0.8マイクロメートル未満である。しかしながら、懸濁液組成物中に含まれる特定の物質(b)に基づいて、平均粒径の値が大きく変化するという事実のために、本発明が平均粒径の特定の変化に限定されていないことが理解されるべきである。
【0027】
本発明による懸濁液組成物の一製造方法は、連続的な水相(a)、物質(b)、及び分散剤(c)を混合して、(d)粉砕媒体と一緒に容器中で混合物を形成する工程を含む。粉砕媒体は当該技術分野で公知である。湿潤剤(f)もまた典型的には混合物を形成するために容器に含まれる。容器は典型的にはアイガーミルのビーズチャンバである;しかしながら、容器は代替的に、Union Process Attritor systemなどの磨砕機の混合容器であってよい。本方法は更に混合物中の物質(b)のサイズを、約1.5〜約2.0マイクロメートルの体積平均粒径まで減少させて懸濁液組成物を形成する工程を含む。物質(b)のサイズを減少させる工程は、典型的には、物質(b)が粉砕中に分解又は溶解することを防ぐために混合物を冷却している間に起こる。
【0028】
懸濁液組成物は約54℃の温度で約28日間貯蔵してよく、その条件下で、物質(b)の平均粒径の変化が、ある条件下での懸濁液組成物の貯蔵後に約0.8マイクロメートル未満であってよく、これはベンチマークの分散剤の性能と比較して、懸濁液組成物中に存在する物質(b)のオストワルド熟成に関して優れた性能を表す。
【0029】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図しており、決して本発明の範囲を限定するものとして見るべきではない。
【0030】
実施例
懸濁液組成物の製造
以下の表1に記載された成分を含む懸濁液濃縮物を製造し、全ての量はそれぞれの懸濁液組成物の全質量を基準として質量パーセントとして列記されている。
【表1】

【表2】

【0031】
湿潤剤AはPluriol(登録商標)WSB125である。
【0032】
湿潤剤BはMorwet(登録商標)D425である。
【0033】
分散剤Aは無水マレイン酸と約1100g/モルの数平均分子量を有するアルコキシル化ビニルエーテルとの反応生成物であり、BASF社より商業的に入手可能である。
【0034】
分散剤Bは、アクリル酸、不飽和ヒドロキシアルキルエステル、及びそれぞれ約1100〜5800g/モルの数平均分子量を有する2種の異なるアルコキシル化ビニルエーテルの反応生成物であり、それぞれ2種の異なるビニルエーテルは約9:1のモル比で反応し、BASF社より商業的に入手可能である。
【0035】
分散剤Cはアクリル酸、無水マレイン酸、及び約1100g/モルの数平均分子量を有するアルコキシル化ビニルエーテルの反応生成物であり、BASF社より商業的に入手可能である。
【0036】
分散剤Dは無水マレイン酸、不飽和ヒドロキシアルキルエステル、並びに約1100及び5800g/モルの数平均分子量をそれぞれ有する2種の異なるアルコキシル化ビニルエーテルの反応生成物であり、BASF社より商業的に入手可能である。
【0037】
分散剤Eはアクリル酸と約3000g/モルの数平均分子量を有するアルコキシル化ビニルエーテルとの反応生成物であり、BASF社より商業的に入手可能である。
【0038】
分散剤Fは、アクリル酸、不飽和ヒドロキシアルキルエステル、並びに約1100及び5800g/モルの数平均分子量をそれぞれ有する2種の異なるアルコキシル化ビニルエーテルの反応生成物であり、この2種の異なるビニルエーテルはそれぞれ約1:4のモル比で反応し、BASF社より商業的に入手可能である。
【0039】
分散剤Gはアクリル酸、無水マレイン酸、及び約5800g/モルの数平均分子量を有するアルコキシル化ビニルエーテルの反応生成物であり、BASF社より商業的に入手可能である。
【0040】
分散剤HはAtlox(登録商標)4913である。
【0041】
分散剤Jは、第1級のヒドロキシル基で終端する二官能性のブロックコポリマー界面活性剤であり、BASF社より商業的に入手可能である。
【0042】
物質1はアトラジンである。
【0043】
物質2は3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレアである。
【0044】
追加の成分Aはプロピレングリコールである。
【0045】
追加の成分Bは消泡剤である。
【0046】
追加の成分Cはキサンタンガムである。
【0047】
懸濁液組成物は、該懸濁液組成物を製造するために使用されるべき適量の水を最初に計量し、この水を容器に加えることによって製造される。次に、適量の分散剤及び湿潤剤を、表1に記載される値に従って測定して容器に加える。その後、分散剤及び湿潤剤が水に分散されるまで容器の内容物を混合する。
【0048】
次に、物質を容器に加えた後、容器の内容物が均一に見えるまで混合する。追加成分を次いで容器に加え、この容器を覆って、容器の内容物を約1時間混合する。
【0049】
次に、ビーズチャンバを備えるEiger Mini 50ビーズミルを使用して容器の内容物を粉砕し、懸濁液組成物を形成する。ビーズチャンバを、50/50容量部の水/プロピレングリコール混合物を含む冷却材を有する冷却系を用いて冷却する。容器の内容物を粉砕するために、約0.8〜約1.0mmの平均直径を有するジルコニウム粉砕媒体は約80mLの量でビーズチャンバ中に含まれている。次に、冷却系を使用してビーズチャンバを約5〜10℃の温度に冷却する。ビーズミルの切換バルブを次いで再循環に設定する。次に、容器の内容物をビーズチャンバに加えて、粉砕をビーズミルにより再循環モードで開始し、その際、ビーズチャンバの内容物の温度が40℃を超えないように注意する。試料をビーズミルから定期的に取出して、試料の体積平均粒径が約1.7〜約2.0マイクロメートルになるまで粒径を測定するが、10マイクロメートルよりも大きい粒子は存在しない。所望の粒径の達成は、懸濁液組成物の達成を示し、ビーズチャンバの内容物(ビーズを除く)を試験のために回収する。
【0050】
試験のために、本発明の懸濁液組成物を、次のような高温の条件下で凍結/融解サイクル及び貯蔵に供する。
【0051】
凍結/融解サイクル
懸濁液組成物の凍結−融解サイクルは、−15℃〜+5℃の懸濁液組成物の試験試料の繰り返される温度サイクルによって実行される。各凍結−融解サイクルは1週間の期間であり、−15℃での3.5日の貯蔵の後、+5℃での3.5日の貯蔵を含む。最低6回の凍結/融解サイクルを完了させた後、懸濁液組成物の有用な取り扱い及び最終用途特性に悪影響を与え得る作用を決定するために、試料の物理的性質を測定して、初期測定と比較する。
【0052】
高温条件下での貯蔵
高温の条件下での貯蔵は、懸濁液組成物の試料を、54℃の周囲空気の温度に保持されたオーブン中に約28日間置くことによって行われ、その後、懸濁液組成物の有用な取り扱い及び最終用途特性に悪影響を与え得る作用を決定するために、試料の物理的性質を測定して、初期測定と比較する。
【0053】
懸濁液組成物の物理的性質を、次の手順に従って測定するが、その際、最初に懸濁液組成物の製造後に、凍結/融解サイクル後に、及び上記の高温の条件下での貯蔵後に、物理的性質を測定する。
【0054】
懸濁液組成物における粒径の測定
懸濁液組成物の試料を脱イオン水中に分散させて、Malvern Instruments, Southborough, MAから市販されているMalvern Mastersizer 2000粒径分析器を使用して粒径を分析する。試料を小容積の再循環器を用いて分散させて、操作は、屈折率、混合速度、分析時間、測定数などの試料パラメータを特に含むように作られた標準操作手順書(SOP)を用いて行う。分析は球状の前提条件に基づいており、結果は体積平均直径(即ち、体積平均粒径)に関して報告されている。結果は0.02〜2000μmの取得範囲及び2回の運転の平均に基づく。
【0055】
上記の実施例及び比較例のそれぞれについて初期粒径を以下の表2に記載する。
【表3】

【0056】
上記の実施例及び比較例のそれぞれの粒径は、実施例及び比較例を上記の凍結/融解サイクルにかけた後に以下の表3に記載する。凍結/融解サイクル後の粒径の変化は、それぞれの懸濁液組成物内に生じるオストワルド熟成を示す。
【表4】

【0057】
凍結/融解サイクル後の粒径の増加に関する統計的分析はJMP 8ソフトウェアを用いて行う。統計的分析の結果は、実施例と比較例との間の体積平均粒径の差が統計的に有意ではないことを示し、従って実施例で使用される分散剤が比較例で使用される分散剤と同じくらい効果的であることを示す。
【0058】
上記の実施例及び比較例のそれぞれの粒径は、実施例及び比較例を上記の高温条件下での貯蔵に付した後に以下の表4に記載する。高温条件下での貯蔵後の粒径の変化も、それぞれの懸濁液組成物内に生じるオストワルド熟成を示す。
【表5】

【0059】
高温条件下での貯蔵後の粒径の増加に関する統計的分析もJMP 8ソフトウェアを用いて行う。統計的分析の結果は、実施例1〜10と比較例1〜5との間の体積平均粒径の差が統計的に有意ではないことを示し、従ってこれらの実施例で使用される分散剤がそれぞれの比較例で使用される分散剤と同じくらい効果的であることを示す。しかしながら、実施例12及び12と比較例6との間の体積平均粒径の差(ここで使用される物質は3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレアであり、これはアトラジンよりも水溶解度が高い)は、実施例の分散剤が比較例の分散剤の代わりに使用される時に、オストワルド熟成の統計的に有意な最小化が達成されることを示す。
【0060】
懸濁性試験
懸濁液組成物の懸濁性を試験するために、150mlの標準硬水(マグネシウム及びカルシウムなどの硬水イオンを約342ppmの量で含有し、その際、カルシウムイオン対マグネシウムイオンのモル比は約2:1である)を250mlのビーカーに測定する。磁気撹拌機をビーカーに置き、ビーカーを撹拌プレートに置く。撹拌プレートの速度を、渦が攪拌棒に届かないように設定する。
【0061】
次に5.00±0.10グラムの懸濁液組成物を重量ボート(weight-boat)で計量し、これをビーカー内に置く。タイマーを直ちに開始させて2分に設定し、確実に良好な混合を行うために、懸濁液組成物の試料をビーカーに加えた後に撹拌速度を調整する。
【0062】
2分間の混合後、ビーカーを撹拌プレートから取り出す。磁気撹拌機を取出して、これを標準硬水で満たした洗浄びんを用いて濯ぐ。次にビーカーの内容物を250mlの目盛り付きシリンダーに注ぎ込み、このビーカーを、250mlの目盛り付きシリンダーに加えられた洗浄液で濯ぐ。シリンダーの容量は、標準硬水を用いて250mlにする。ビーカーを空にして濯ぐ工程を1分以内に行う。
【0063】
次に250mlの目盛り付きシリンダーを密封して1サイクル当たり2〜3秒で15サイクル反転し、その後、周囲温度で30分間静置する。
【0064】
次に225mlの懸濁液を、ピペットを用いて10〜25秒以内に250mlの目盛り付きシリンダーから取出し、このピペット先端が常に250mlの目盛り付きシリンダー中の液体の表面よりも数mmだけ下回るように維持し、その際、シリンダー全体の乱れが最小限になるように注意する。ピペットを用いて取出した液体を廃棄する。
【0065】
乾燥した蒸発皿を0.05グラム近くまで計量する。250mlの目盛り付きシリンダー中の残りの25mlを渦を巻いてそこに存在する粒子を懸濁させ、250mlの目盛り付きシリンダーの内容物を蒸発皿に注ぎ込む。250mlの目盛り付きシリンダーを、蒸発皿に加えられた洗浄液で濯ぐ。
【0066】
蒸発皿を次いで乾燥オーブン内に置いて一晩乾燥させる。蒸発皿の内容物が乾燥した時に、蒸発皿をオーブンから取出して、約21℃の室温で5分間放置する。蒸発皿を次いで計量する。
【0067】
次に、懸濁性を、懸濁液組成物の初期試料中の固体の質量から蒸発皿中の残留物の質量を引き、次いでこの結果を蒸発皿中の残留物の質量で割る(及びパーセンテージを得るために100をかける)ことによって決定する。懸濁性は、最初に、54℃で28日間の貯蔵、及び凍結/融解サイクルの両方の後に決定し、この結果を以下の表5に示す。
【表6】

【0068】
凍結/融解サイクル及び高温条件下での貯蔵の両方の後の、上記の実施例及び比較例それぞれに関する懸濁性試験の結果は、実施例1〜4及び6〜10と比較例1〜5との間の体積平均粒径の差が統計的に有意ではないことを示す。しかしながら、実施例5に関して、懸濁性試験の結果は、高温条件下での貯蔵後に統計的に有意ではなかったが、凍結/融解サイクル後には残りの実施例及び比較例の懸濁性よりも統計的に低かった。
【0069】
湿式ふるい分析
湿式ふるい分析は、CIPAC handbook under Wet Sieving MT 59.3に記載された手順に従って行う。初期試験をEiger Mini 50ミル内で懸濁液組成物を製造した後できるだけ早く行う。初期試験が十分であれば、試料を6週間の凍結/融解サイクルにかけて試験する。
【0070】
湿式ふるい分析を実施するために、50、100及び325メッシュの3インチの篩いを使用して、試験のための製造においてオーブン内で50℃で一晩乾燥させる。篩いを個別に計量する。
【0071】
25mgの懸濁液組成物を600mLのビーカーに加え、このビーカーを印の付いた400mLまで水道水で満たす。600mLのビーカーの内容物を次いで磁気撹拌機を用いて最小の渦で5分間撹拌する。
【0072】
重ねた篩いを水道水で湿らせ、次いで懸濁液組成物を篩いに注ぐ。重ねる一方、篩いを水道水で濯いで、篩いを通過できる懸濁液組成物の全てが確実に通過できるようにする。次に篩いを50℃のオーブン中で一晩乾燥させ、篩いを再計量する。
【0073】
各篩いに残留した懸濁液組成物のパーセンテージは次の通りに計算される:
篩いプラス残留物の質量−篩いの質量=残留物の質量
残留物%=残留物の質量/25100
【0074】
各篩いに残留した懸濁液組成物のパーセンテージは、以下の表6(初期結果について)、表7(54℃の高温条件下で28日間の貯蔵後の結果について)、及び表8(凍結/融解サイクル後の結果について)に記載されている。
【表7】

【表8】

【表9】

【0075】
ほとんどの湿式ふるい試験では、実施される実施例の懸濁液組成物並びに比較例1〜5の懸濁液組成物は、ごくわずかな量の懸濁液組成物が残留する。
【0076】
かなりの量の懸濁液組成物が実施例2で残留した。しかしながら、この結果は、より大きな粒子が検出されていないMalvern粒径分析と矛盾する。実施例2の懸濁液組成物を製造し、2度目に試験した時(実施例8によって表される)、残留は湿式ふるい試験では観察されなかった。懸濁液組成物の反復される良好な性能及びMalvern粒径データに見られる大きな粒子の欠如を考慮すると、実施例2の不良な湿式ふるいの結果は、試料の汚染の結果又は試料の瓶が長時間、蓋を取られたままである場合に起こり得る水相の蒸発の結果のいずれかであると考えられる。
【0077】
明らかに、上記の教示を踏まえて、本発明の多くの改変及び変更が可能であり、且つ本発明は添付の特許請求の範囲の範囲内に特に記載されたもの以外も実施してよい。添付の特許請求の範囲は、表現及び詳細な説明に記載された特定の化合物、組成物又は方法に限定されず、これらは添付の特許請求の範囲の範囲内に入る特定の実施態様の間で変わり得ることが理解されるべきである。本願明細書に依存するマーカッシュ群に関して、種々の実施態様の特定の特徴又は態様を記載するために、異なる、特別な、及び/又は予想外の結果が、他の全てのマーカッシュの構成要素から独立した各マーカッシュ群の各構成要素から得られることが理解されるべきである。マーカッシュ群の各構成要素は、個々に又は組み合わせに依存し且つ添付の特許請求の範囲の範囲内の特定の実施態様に対して適切な根拠を提供する。
【0078】
本発明の種々の実施態様の記載に依存する任意の範囲及び部分範囲が独立して及び一括して添付の特許請求の範囲の範囲内に入ることも理解されるべきであり、且つかかる値が本願明細書に明確に記載されていない場合でも、本願明細書で全部の及び/又は部分の値を含む全ての範囲を記載且つ考察することが理解されるべきである。当業者は、計数範囲及び部分範囲が本発明の可能な種々の実施態様を十分に記載し且つ可能にし、かかる範囲及び部分範囲は更に適切に2分の1、3分の1、4分の1、5分の1など更に正確に記載されてよいことを容易に認識している。たった1つの例として、「0.1〜0.9」の範囲は、下方三分の一、即ち、0.1〜0.3、中央三分の一、即ち、0.4〜0.6、及び上方三分の一、即ち、0.7〜0.9に更に詳細に記載されてよく、これは個々に且つ一括して添付の特許請求の範囲の範囲内であり、且つ個々に及び/又は一括して依存し且つ添付の特許請求の範囲の範囲内の特定の実施態様に対して適切な根拠を提供し得る。更に、「少なくとも」、「を上回る」、「よりも少ない」、「わずか」などの範囲を規定又は変更する用語に関して、かかる用語が部分範囲及び/又は上限又は下限を含むことが理解されるべきである。別の例として、「少なくとも10」の範囲は、少なくとも10〜35の部分範囲、少なくとも10〜25の部分範囲、25〜35の部分範囲などの部分範囲を固有に含み、それぞれの部分範囲は個々に及び/又は一括して依存され且つ添付の特許請求の範囲の範囲内の特定の実施態様に対して適切な根拠を提供し得る。最終的に、開示された範囲内の個々の数に依存し、且つこれらは添付の特許請求の範囲の範囲内の特定の実施態様に対して適切な根拠を提供する。例えば、「1〜9」の範囲は、様々な個々の整数、例えば、3並びに小数点(又は端数)を含む個々の数、例えば、4.1を含み、これらの数は添付の特許請求の範囲の範囲内の特定の実施態様に依存し且つこれに適切な根拠を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸濁液組成物において、
a)連続的な水相、
b)該水相中を輸送可能であり、それによって前記懸濁液組成物中の物質のオストワルド熟成を引き起こす物質、及び
c)分散剤であって、
(i)一般式(I):
C=CR−O−R−(OC2k−OH (I)
(式中、Rは水素、アルキル基又はアリール基であり、Rは少なくとも2個の炭素原子を有するアルキル基であり、kは2〜4であり、nは少なくとも約10である)
によって表される少なくとも1種のモノマーと、
(ii)不飽和官能性を有し且つ少なくとも1つのカルボニル基を含有する少なくとも1種の追加のモノマーと、
の反応生成物を含む分散剤
を含み、
前記分散剤が前記懸濁液組成物中の前記物質(b)のオストワルド熟成を制限するのに十分な量で存在する、
前記懸濁液組成物。
【請求項2】
nが約20〜約150である、請求項1に記載の懸濁液組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種のモノマー(i)が、それぞれ式(I)によって表される少なくとも2種の異なるモノマーとして更に定義され、その式中、nが式(I)によって表される少なくとも1種のモノマーにおいて約20〜約80であり、且つnが式(I)によって表される少なくとも1種の他のモノマーにおいて80を上回る、請求項1に記載の懸濁液組成物。
【請求項4】
少なくとも1種の追加のモノマー(ii)が、式(II)によって表される構造、又はその無水物:
【化1】

(式中、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、及びカルボニル基の群から選択され、且つRは水素原子及びヒドロキシアルキル基の群から選択される)
を有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の懸濁液組成物。
【請求項5】
が水素原子である、請求項4に記載の懸濁液組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種の追加のモノマー(ii)がそれぞれ式(II)によって表される少なくとも2種の異なる追加のモノマーとして更に定義される、請求項4又は5に記載の懸濁液組成物。
【請求項7】
前記第一のモノマー(i)が、分散剤を形成するために反応される全てのモノマーの全量を基準として約15〜約50のモルパーセントで反応する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の懸濁液組成物。
【請求項8】
前記物質(b)の水溶解度が摂氏−15度〜摂氏54度の温度で約500ppmまでである、請求項1から7までのいずれか1項に記載の懸濁液組成物。
【請求項9】
前記物質が殺虫剤活性成分を含む殺虫剤成分として更に定義される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の懸濁液組成物。
【請求項10】
前記殺虫剤活性成分がアトラジンとして更に定義される、請求項9に記載の懸濁液組成物。
【請求項11】
前記殺虫剤活性成分が3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレアとして更に定義される、請求項9に記載の懸濁液組成物。
【請求項12】
前記物質(b)が、前記懸濁液組成物の全質量を基準として約20〜約60質量パーセントの量で存在する、請求項1から11までのいずれか1項に記載の懸濁液組成物。
【請求項13】
前記物質(b)が、1.5〜3.2マイクロメートルの体積平均粒径を有する粒子の形で存在する、請求項1から12までのいずれか1項に記載の懸濁液組成物。
【請求項14】
前記物質(b)の平均粒径の変化が、約54℃の温度で約28日間の懸濁液組成物の貯蔵後に、約0.8マイクロメートル未満である、請求項13に記載の懸濁液組成物。
【請求項15】
湿潤剤を更に含む、請求項1から14までのいずれか1項に記載の懸濁液組成物。
【請求項16】
懸濁液組成物の製造方法において、以下の工程:
(I)以下の成分:
(a)連続的な水相;
(b)該水相中を輸送可能であり、それによって該水相中の物質のオストワルド熟成を引き起こす物質;
(c)分散剤であって、
(i)一般式(I):
C=CR−O−R−(OC2k−OH
(式中、Rは水素、アルキル基又はアリール基であり、Rは少なくとも2個の炭素原子を有するアルキル基であり、kは2〜4であり、nは少なくとも約10である)
によって表される少なくとも1種のモノマーと、
(ii)不飽和官能性を有し且つカルボン酸基、ヒドロキシアルキル基、及びその組み合わせの群から選択される少なくとも1つの官能基を含有する少なくとも1種の追加のモノマーと、
の反応生成物を含む分散剤、及び
(d)粉砕媒体;
を合わせて容器中に混合物を形成する工程
(II)前記混合物中の物質(b)のサイズを、約1.5〜約2.0マイクロメートルの体積平均粒径まで減少させて懸濁液組成物を形成する工程
を含む、前記懸濁液組成物の製造方法。
【請求項17】
工程(I)が湿潤剤(f)を容器中で合わせて混合物を形成することを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1種の追加のモノマー(ii)が、式(II)によって表される構造又はその無水物:
【化2】

(式中、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、及びカルボニル基の群から選択され、且つRは水素原子及びヒドロキシアルキル基の群から選択される)
を有する、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1種の追加のモノマー(ii)がそれぞれ式(II)によって表される少なくとも2種の異なる追加のモノマーとして更に定義される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記物質(b)の水溶解度が摂氏−15度〜摂氏54度の温度で約500ppmまでである、請求項16から19までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記物質が殺虫剤活性成分を含む殺虫剤成分として更に定義される、請求項16から20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記殺虫剤活性成分がアトラジンとして更に定義される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記殺虫剤活性成分が3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレアとして更に定義される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記物質(b)が、工程(I)において合わされた全ての成分の全質量を基準として約20〜約60質量パーセントの量で合わされる、請求項16から23までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記懸濁液組成物を約54℃の温度で約28日間貯蔵する工程を更に含む、請求項16から24までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記懸濁液組成物の貯蔵後の前記物質(b)の平均粒径の変化が約0.8マイクロメートル未満である、請求項25に記載の方法。

【公表番号】特表2012−530065(P2012−530065A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515183(P2012−515183)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/038329
【国際公開番号】WO2010/144812
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】