説明

懸濁物質分離装置およびその取扱方法

【課題】有極性溶媒中に分散した非強有極性の懸濁物質を効率的に分離できる懸濁物質分離装置を提供する。
【解決手段】この懸濁物質分離装置1は、外部空間から有極性溶媒中に気体を吸引する気体吸引部2を備える。また、有極性溶媒を移送させるポンプ3を備える。また、気体吸引部2の下流に設けられ、懸濁物質を有極性溶媒から分離する分離塔4を備える。また、気体吸引部2、ポンプ3および分離塔4を直列に接続し、内部を有極性溶媒が流れる配管5を備える。そして、気体吸引部2における有極性溶媒の流路の径は、気体吸引部2に直結された配管5の径以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、懸濁物質分離装置およびその取扱方法に関し、特に、有極性溶媒中に分散した懸濁物質を分離する懸濁物質分離装置およびその取扱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体中に分散した固形物、タンパク質など有機物を分離する装置として、従来、種々の装置が知られている。たとえば、懸濁物質が分散した溶媒が貯留された槽内底部で気泡を発生させ、気液界面に懸濁物質を吸着し浮上分離する装置や、凝集剤により有機物の懸濁物質を凝集沈殿分離する装置などが知られている。
【0003】
特に、水に代表される溶媒中に分散した非強有極物質が、疎水性水和により気液界面にあたかも吸着したように集まる現象を利用して、有極性溶媒中で気泡を大量に発生し、その気泡の浮力により、気液界面に吸着した非強有極性の物質を浮上分離する方式は近年排水処理分野や鉱物分野でよく使用される。ここで、極性とは、原子の電気陰性度の差により分子内に生じる電子の分布の偏りをいう。非強有極性とは、溶媒の分子内に存在する電気的な偏りよりも、分子内の電気的な偏りが弱い性質をいう。
【0004】
たとえば、水は酸素原子と水素原子の結合部分で電子が酸素原子側に偏った分極構造を持っている。水中に水より分極度(極性)の弱い物質が存在すると、その物質の周りでは水分子同士が手を繋いだ状態(すなわち水素結合状態)より不安定な状態となり、当該物質が水分子から排除されるような力が作用する。よってこのような物質は、水中での水分子との接触箇所である表面積をできるだけ小さくするため、互いに凝集する、気泡など他の非強有極性部分に集まる、などの傾向を示すようになる。
【0005】
この原理から、水中での気液界面面積を増やすのが非強有極性の物質の水からの分離に効果的であるため、微細な気泡を用いて、水中の固形物や溶解性有機物を分離する浮上分離装置が提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1の微細気泡発生機では、500μm以下の微細気泡を発生して、その微細気泡に被処理液中の懸濁性浮遊物や油分を付着させる。付着した懸濁性浮遊物や油分は、気泡と一緒に浮上し、濃縮される。この微細気泡発生機を使用した浮上分離装置では、凝集散気槽中に、微細気泡を発生させ、懸濁性浮遊物や油分を濃縮し、併設したスカム分離槽中でスカムと沈降フロックとに分離する。
【特許文献1】特開平4−7028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の浮上分離装置では、同一気体体積のとき、微小な気泡は表面積すなわち気液界面面積が大きく取れるが、浮力が小さく水中懸濁物質の分離に時間がかかる。逆に気泡径が大きいと総気液界面面積が小さくなり、また浮上速度が大きすぎすぐに水面に浮上してしまい、懸濁物質の付着効率がよくない。
【0008】
また、従来の浮上分離装置では、凝集散気槽内では気泡の浮力のみによって懸濁物質を浮上分離させており、懸濁物質の分離効率は必ずしも十分とはいえず更なる改良の余地がある。さらに、従来の浮上分離装置では、溶媒循環用のポンプと、気泡発生用のモータとの複数の動力源が必要であった。
【0009】
それゆえに、この発明の主たる目的は、有極性溶媒中に分散した非強有極性の懸濁物質を効率的に分離できる懸濁物質分離装置を提供することである。また、この発明の他の目的は、経済性に優れた低コストな懸濁物質分離装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る懸濁物質分離装置は、有極性溶媒中の非強有極性の懸濁物質を、有極性溶媒から分離するための懸濁物質分離装置であって、外部空間から有極性溶媒中に気体を吸引する気体吸引部を備える。また、有極性溶媒を移送させるポンプを備える。また、気体吸引部の下流に設けられ、懸濁物質を有極性溶媒から分離する分離塔を備える。また、気体吸引部、ポンプおよび分離塔を直列に接続し、内部を有極性溶媒が流れる配管を備える。そして、気体吸引部における有極性溶媒の流路の径は、気体吸引部に直結された配管の径以下である。
【0011】
この場合は、径の小さい気体吸引部における有極性溶媒の流路や、ポンプが分離塔の上流にある場合はポンプ内において、有極性溶媒の流れは乱流となる。乱流中では、有極性溶媒中に気泡として吸引された気体の流線と、有極性溶媒の流線とが交差し、気泡と有極性溶媒中に分散した懸濁物質の接触確率が上がる。そのため、有極性溶媒中の非強有極性の懸濁物質が気泡の周囲に吸着し易くなる。したがって、懸濁物質は分離塔において気泡とともに有極性溶媒から分離されるので、有極性溶媒中に分散した懸濁物質を効率的に分離することができる。なお、分離塔において懸濁物質の一部または大半が分離され、比較的清浄となった有極性溶媒は、分離塔に設けられた流出路としての配管より排出される。
【0012】
気体吸引部は、ポンプ上流側の有極性溶媒の流路に穴を開け、その穴に開閉バルブを設けた気体吸引用の通気管を接続し、気体吸引時には開閉バルブを開けその開度を調整して気体を吸引し、吸引した気体をポンプで粉砕することにより気体を気泡化するものであってもよい。または、ポンプ上流側の有極性溶媒の流路に、気体圧入用のポンプに連接した気体圧入用の通気管を連接もしくは挿入し、気体を圧入して、圧入した気体をポンプにより粉砕し気泡化してもよい。しかし、気体吸引部における有極性溶媒の流路の径を気体吸引部に直結された配管の径以下とすることで、有極性溶媒の流れにより、気体の自吸がし易くなる。また、流路の径が再度拡大した部分での圧力変動などにより、気体が気泡化しやすくなる。なお、気体吸引部における有極性溶媒の流路の径は、気体吸引部に直結された配管の径の1/6以上1/2以下の範囲にあることが好ましい。1/2より大きければ、気体吸引部における有極性溶媒の流速が相対的に小さくなり、気体の吸引効率が低下する原因となる。また1/6より小さければ、有極性溶媒の流路における圧力損失の増加に繋がり、ポンプの動力が無駄に消費されることになる。
【0013】
上記懸濁物質分離装置において好ましくは、分離塔において有極性溶媒に旋回流を形成するための、旋回流形成機構を含む。この場合は、分離塔内の旋回流によって遠心力が発生する。気体と有極性溶媒との比重が異なるために、有極性溶媒中の気泡は分離塔の中心部へ引き寄せられ、有極性溶媒は分離塔の外周部に引き寄せられる。そのため、分離塔内における、気泡と有極性溶媒中の懸濁物質との接触確率が上がる。したがって、有極性溶媒中の非強有極性の懸濁物質が気泡の周囲に吸着し易くなる。懸濁物質分離装置が旋回流形成機構を含むために、分離塔内では、大きな気泡は常に気泡の集合体として旋回流に渦状で捕捉される。分離塔外部から導入された有極性溶媒中の微細気泡および懸濁物質は、渦状の気泡の集合体部により攪拌される。この攪拌により、有極性溶媒中の気泡同士が合体したり、気液界面に付着した懸濁物質同士が合体したりするために、気泡の周りに吸着した懸濁物質自体が大きな集合体となる。このようにして、懸濁物質は、有極性溶媒との比重差により分離塔の中心部において、気泡と共に旋回流に捕捉された状態となる。
【0014】
上記懸濁物質分離装置において好ましくは、分離塔は、円筒形状を有する。分離塔の径方向の断面形状は、多角形でもよいが、円形とする、すなわち分離塔を円筒形状とすることにより、分離塔内に旋回流が発生しやすくなる。
【0015】
また好ましくは、分離塔は、縦型の円筒形状を有する。内部を有極性溶媒が流れる配管は、分離塔の中心軸と交差する方向の断面における外周部において、分離塔の中心軸と交差しない直線に沿って分離塔に直結されている。ここで縦型とは、円筒形状の分離塔の中心軸の長さが円筒の直径より大きいことをいう。分離塔の中心軸が水平になるように分離塔を配置してもよいが、分離塔の中心軸が水平面に対して90°±10°以内の範囲の角度をなすことが好ましい。上記角度は90°±5°以内の範囲であればより好ましく、90°(つまり、分離塔の中心軸が水平面に直交する)であればさらに好ましい。
【0016】
分離塔において有極性溶媒に旋回流を形成するための旋回流形成機構は、たとえば分離塔内にスクリューまたは羽根車を設置し当該スクリューまたは羽根車を回転させる機構であってもよいが、その場合動力源が必要となり、また装置の構成が複雑となる。この発明の構成によれば、有極性溶媒を分離塔に流出入させるための配管を、縦型円筒形状の分離塔の中心軸と交差する方向の断面における外周部において、分離塔の中心軸と交差しない直線に沿って設置することにより、旋回流を容易に発生させることができる。したがって、生産性、経済性および信頼性に優れた懸濁物質分離装置を提供することができる。なお、有極性溶媒の分離塔からの流出路、および、有極性溶媒の分離塔への流入路を形成する配管内の有極性溶媒の流れ方向が、上記流出路および上記流入路が分離塔に直結された位置の近傍における分離塔内の旋回流の流れ方向と対向しない流れ方向であれば(換言すると、上記流出路および上記流入路が分離塔に直結された位置における配管内の流れのベクトルと、当該位置における分離塔内の旋回流の流れのベクトルとのなす角度が±90°未満(すなわち、上記2つのベクトルの内積が正の値)であれば)、有極性溶媒の流れにおける抵抗が小さくなり圧力損失が低減されるので好ましい。
【0017】
なお、分離塔の中心軸と直交する断面がなす円周の配管が設置される点における接線に対して、配管の延びる方向がなす角度が小さいほうが効果的であり、上記角度が±20°以下であれば好ましく、±10°以下であればより好ましく、0°(つまり、上記接線に対して配管が平行に延びている)であればさらに好ましい。
【0018】
また、分離塔の中心軸と直交する断面がなす円の接線のうち、配管の延びる方向と平行な接線が当該円に接する接点と、当該円の中心とを結ぶ、当該円の半径と等しい長さを有する線分を考える。当該線分と、配管をその延在方向に延長した直線(つまり、分離塔に直結した直管である配管内の流路の中心軸を延長した直線)とが直交する交点が、当該線分の中点よりも円周側に近接する(これを、配管が当該円の外周部において接続されているという)ほど好ましい。たとえば、当該線分と配管をその延在方向に延長した直線との交点が、当該円の円周側における当該線分の端部(すなわち上記接点)から、当該線分の長さ(すなわち当該円の半径)の50%以内の範囲にあれば好ましい。上記範囲が20%以内であればより好ましい。上記交点が当該線分の円周側の端部と一致すれば(つまり、分離塔の中心軸と直交する断面がなす円の接線と、配管をその延在方向に延長した直線とが一致すれば)、さらに好ましい。
【0019】
上記懸濁物質分離装置において好ましくは、分離塔は、楕円筒形状を有する。この場合は、分離塔の径方向の断面形状を楕円形とする、すなわち分離塔を楕円筒形状とすることにより、分離塔が円筒形状である場合と同様に、分離塔内に旋回流が発生しやすくなる。また、同一の容積を有する分離塔において、楕円筒形状を有していれば、分離塔の厚みを小さくできるので、より狭隘な設置場所にも分離塔を設置可能となる。
【0020】
また好ましくは、分離塔は、縦型の楕円筒形状を有する。有極性溶媒の分離塔への流入路を形成する配管は、分離塔の中心軸と直交する分離塔の断面における長軸の延びる方向と同じ方向に延びる接線に沿って、分離塔に直結されている。この場合は、楕円断面の長軸の延びる方向と同じ方向に延びる接線に沿って有極性溶媒の流入を行なうことで、エネルギーロスの少ない有極性溶媒の流入が可能となる。流入路が分離塔の中心軸と直交する断面の外周部において、分離塔の中心軸と交差しない直線に沿って分離塔に直結されていれば、分離塔内にスクリューや羽根車を設置しなくても、分離塔内に旋回流を容易に発生させることができるので好ましい。なお、分離塔の中心軸と直交する断面の楕円と、流入路を形成する配管の延びる方向との関係は、上記円筒形状の分離塔の場合と同様に、規定することができる。
【0021】
また好ましくは、分離塔は、縦型の楕円筒形状を有する。有極性溶媒の分離塔からの流出路を形成する配管は、分離塔の中心軸と直交する分離塔の断面における短軸の延びる方向と同じ方向に延びる接線に沿って、分離塔に直結されている。この場合は、分離塔内の遠心力によって、有極性溶媒中の気泡は分離塔の中心部へ引き寄せられ、有極性溶媒は分離塔の外周部に引き寄せられるので、分離塔から流出する有極性溶媒の流路と、分離筒内における気泡および気泡の周囲に吸着した懸濁物質が多く混入した流れとの、分離距離が大きくなる。したがって、より懸濁物質が分離され、より清浄となった有極性溶媒を、分離塔から流出させることができる。なお、分離塔の中心軸と直交する断面の楕円と、流出路を形成する配管の延びる方向との関係は、上記円筒形状の分離塔の場合と同様に、規定することができる。
【0022】
上記懸濁物質分離装置において好ましくは、分離塔は、垂直方向の内寸が、当該垂直方向と直交する方向の内寸よりも大きい。この場合は、気泡は浮力によって分離塔内を移動するので、移動する距離が長ければ、気泡と有極性溶媒中の懸濁物質とが接触し得る時間が長くなる。したがって、気泡と有極性溶媒中の懸濁物質との接触確率が上がり、懸濁物質の吸着効率や、気泡と有極性溶媒との分離効率が向上する。たとえば分離塔が円筒形状や楕円筒形状などの中心軸を有する形状であれば、当該中心軸が垂直方向に対してなす角度が45°よりも小さければよく、上記角度が小さい(すなわち分離塔の中心軸が垂直に近づく)ほど好ましい。なお垂直方向とは、一定方向に重力のある環境で重力場の向かう方向である。上記垂直方向と直交する面が水平面である。
【0023】
上記懸濁物質分離装置において好ましくは、分離塔は、縦型の形状を有する。配管は、分離塔の中心軸と交差しない、分離塔の中心軸と直交する断面と平行な直線に沿って分離塔に直結している。分離塔の中心軸と直交する断面の内寸(換言すると、分離塔の径方向の内寸)の最小値は、分離塔に直結されている配管の内径の2倍以上である。この構成によれば、分離塔での有極性溶媒の流速が低下し、有極性溶媒中に分散した懸濁物質の分離塔における滞留時間を大きくとれるので、気泡と有極性溶媒中の懸濁物質とが接触し得る時間が長くなる。したがって、気泡と有極性溶媒中の懸濁物質との接触確率が上がり、懸濁物質の吸着効率や、気泡と有極性溶媒との分離効率が向上する。なお、分離塔に直結されている配管の内径に対する分離塔の中心軸と直交する断面の内寸の上限は、分離塔に流入する有極性溶媒の流速や、分離塔の垂直方向の内寸などによって変わるものであるが、実験では約10倍以上の場合旋回流が発生しにくくなった。よって、分離塔の中心軸と直交する断面の内寸の最大値は、分離塔に直結されている配管の内径の10倍以下であることが好ましい。
【0024】
上記懸濁物質分離装置において好ましくは、分離塔は、縦型の形状を有する。分離塔内において、気泡は、有極性溶媒に対し相対速度を有する。この場合は、気泡と有極性溶媒との比重が異なるために、分離塔内において気泡に浮力が生じるので、気泡は上昇しようとする。また、分離塔において有極性溶媒に形成される旋回流によって遠心力が発生するが、気泡と有極性溶媒との比重が異なるために、気泡と有極性溶媒とに作用する遠心力が異なり、気泡と有極性溶媒とに作用する加速度が異なる。これらに起因して、分離塔内において気泡は有極性溶媒に対し相対速度を有する。そのため、分離塔内における、気液界面と有極性溶媒中の懸濁物質との接触確率が上がる。従来の分離塔と異なり、気泡の浮力のみでなく、有極性溶媒と気泡との比重差により生ずる旋回流による遠心力差も利用しているので、気液界面と懸濁物質との接触確率をより向上できる。したがって、有極性溶媒中の非強有極性の懸濁物質が気泡の周囲により吸着し易くなり、懸濁物質を有極性溶媒からより効率的に分離することができる。なお、有極性溶媒に対する気泡の相対速度が大きいほど気液界面と有極性溶媒中の懸濁物質との接触確率が向上するため、より好ましい。
【0025】
また好ましくは、分離塔は、縦型の形状を有する。分離塔内において、気泡の流線は有極性溶媒の流線と異なる。この場合は、気泡と有極性溶媒との比重が異なるために、分離塔内において気泡に浮力が生じるので、気泡は上昇しようとする。また、分離塔において有極性溶媒に形成される旋回流によって遠心力が発生するが、気泡と有極性溶媒との比重が異なるために、気泡と有極性溶媒とに作用する遠心力が異なり、気泡と有極性溶媒とに作用する加速度が異なる。これらに起因して、分離塔内において気泡の流線は有極性溶媒の流線と異なる。そのため、分離塔内における、気液界面と有極性溶媒中の懸濁物質との接触確率が上がる。従来の分離塔と異なり、気泡の浮力のみでなく、有極性溶媒と気泡との比重差により生ずる旋回流による遠心力差も利用しているので、気液界面と懸濁物質との接触確率をより向上できる。したがって、有極性溶媒中の非強有極性の懸濁物質が気泡の周囲により吸着し易くなり、懸濁物質を有極性溶媒からより効率的に分離することができる。なお流線とは、ある瞬間の流れの速度ベクトルをたどっていった線をいう。気泡の流線が有極性溶媒の流線と大きく異なる(たとえば、向きや大きさが異なる)ほど気液界面と有極性溶媒中の懸濁物質との接触確率が向上するため、より好ましい。
【0026】
上記懸濁物質分離装置において好ましくは、気体吸引部は、ポンプの上流に配置されている。この場合は、気体吸引部における気体の有極性溶媒中への吸引を、ポンプの吸引側の負圧により行なうことができるので、1基のポンプで有極性溶媒の移送と気体の吸引とを行なうことも可能である。したがって、経済性に優れた低コストな懸濁物質分離装置を提供することができる。
【0027】
上記懸濁物質分離装置において好ましくは、気体吸引部における有極性溶媒の流路は、小管径部を含む。気体吸引部はまた、小管径部において流路へ連通する気体の通気路を含む。そして、小管径部の径は、小管径部上流側の流路の径よりも小さい。この場合は、気体吸引部内の小管径部の径を、その上流側の流路の径に対して細くすることにより、小管径部における有極性溶媒の流速が上昇する。よって、ベルヌィの法則により、負圧が発生するので、通気路を通じて気体を小管径部へ吸引することができる。つまり、1基のポンプで有極性溶媒の移送と気体の吸引とが可能となる。したがって、経済性に優れた低コストな懸濁物質分離装置を提供することができる。またこの構成によれば、ポンプの吸引側に気体吸引部を設ける構成に限られず、ポンプの吐出側に気体吸引部を設けることも可能となる。
【0028】
また好ましくは、気体吸引部における流路は、小管径部の下流側に円錐状流路を含む。円錐状流路は、小管径部の軸方向と母線とがなす角度が3°以上7°以下である円錐状の空間である。この場合は、円錐状流路における流体抵抗を低減できるので、比較的低動力のポンプでも駆動可能となる。また、円錐状流路内で有極性溶媒の圧力の急回復が生じるので、有極性溶媒に吸引された気体の気泡への粉砕や、乱流による気泡と懸濁物質との接触が発生しやすくなる。
【0029】
また好ましくは、ポンプは、気体吸引部の下流、かつ、分離塔の上流に配置されている。この場合は、気体吸引部において有極性溶媒に吸引された気体を、ポンプ内で気泡化することができる。また、ポンプ内で有極性溶媒中の気泡のさらなる粉砕を生じさせることができる。さらには、ポンプ内で気泡と懸濁物質との接触も生じさせることができる。
【0030】
上記懸濁物質分離装置において好ましくは、有極性溶媒の分離塔からの流出路を形成する配管は、分離塔の下部において分離塔に直結されている。また有極性溶媒の分離塔への流入路を形成する配管は、分離塔の上部において分離塔に直結されている。この場合は、気泡に作用する浮力により、気液界面に吸着された懸濁物質は分離塔上部へ分離され、懸濁物質が除去された有極性溶媒は分離塔下部より排出される。したがって、分離塔から排出された有極性溶媒への、懸濁物質の混入を抑制することができる。なお下部とは、分離塔の垂直方向の内寸が、垂直方向と直交する水平方向の内寸よりも大きいか小さいかに関わらず、分離塔の内寸における、一定方向に重力のある環境で重力場の向かう方向側(すなわち、下側)の50%の範囲をいう。流出路は、分離塔の垂直方向の下側20%以内の範囲において分離塔に直結されていればより好ましく、下側10%以内の範囲であればさらに好ましく、流出路が分離塔における最も下側の下端部において分離塔に直結されていれば、分離塔内において懸濁物質が沈降し滞留することを抑制することができるので一層好ましい。また流入路は、分離塔において、流出路が直結されている位置よりも上記下側と反対側(すなわち、上側)の範囲にあればよい。分離塔の垂直方向における流入路と流出路との距離が長いほうが効果的であるため、分離塔の内寸の垂直方向の上側50%以内の範囲に流出路が直結されていればより好ましく、上側30%以内の範囲であれば、さらに好ましい。
【0031】
上記懸濁物質分離装置において好ましくは、有極性溶媒は水である。水は代表的な有極性溶媒でありその極性も大きい。そのため、有極性溶媒と懸濁物質との極性の差を利用する本発明にとって、大きな効果が得られる有極性溶媒である。また、懸濁物質が分離され清浄化された水は、生活用水や工業用水など、利用用途が豊富である。
【0032】
上記懸濁物質分離装置において好ましくは、懸濁物質は疎水性物質である。本発明で有極性溶媒から分離される懸濁物質としては、有極性溶媒に対し低い親和性(ある物質が他の物質と容易に結合する性質や傾向)を有する物質であればより適している。有極性溶媒が水であれば、懸濁物質は、界面活性剤やアミノ酸などの両親媒性物質も可能であるが、水との疎水性相互作用が大きい油などの、分子内に親水基を有していない疎水性物質がより適している。
【0033】
なお、疎水性相互作用とは、疎水性物質が水から分離して互いに集まる性質をいう。たとえば、液体の水の分子は乱雑に激しく動いているが、ここに疎水性分子が入ってくると、その付近の水分子は、疎水性分子と結合を作れないので、隣の水分子と水素結合を作ってしまい、動きがとれなくなる。つまり乱雑さが減少し、熱力学的にはエントロピーが減少し不安定になる。したがって、逆に疎水性分子が水から出て行く、すなわち油は油だけで集まる方が熱力学的に安定になる。このような、疎水性物質が水と分離する作用が、疎水性相互作用である。
【0034】
上記懸濁物質分離装置において好ましくは、分離塔内における有極性溶媒の液面の位置に、疎水性固体物が設置されている。懸濁物質が疎水性物質である場合は、気液界面に懸濁物質が凝集するのと同じ原理(すなわち、疎水性相互作用)により、樹脂などの疎水性固体物の周りに懸濁物質が凝集し、懸濁物質は疎水性固体物に捕捉され、有極性溶媒とともに分離塔から流出されにくくなる。したがって、より懸濁物質が分離され、より清浄となった有極性溶媒の、分離塔からの流出が可能となる。また、有極性溶媒が分離塔において旋回流を形成していれば、気泡に作用する浮力と遠心力(向心力)とにより、気泡の周りに吸着した懸濁物質は有極性溶媒の液面の中心部に凝集する。このとき、有極性溶媒の液面の中心部に疎水性固体物を配置すると、より効率よく懸濁物質を疎水性固体物に捕捉することができる。なお、疎水性固体物は一定間隔で清掃される必要がある。
【0035】
また好ましくは、分離塔内における有極性溶媒の液面の位置に、排出管が設置されている。懸濁物質は、排出管を経由して分離塔から排出される。分離塔内で捕捉するのみでは分離塔外への懸濁物質の流出を防止できない場合は、懸濁物質が集まった分離塔内の位置、たとえば有極性溶媒の液面に対して懸濁物質を吸引する形で、懸濁物質排出用の排出管を設置することができる。これにより、効率的に有極性溶媒から懸濁物質を排除できる。有極性溶媒が分離塔において旋回流を形成していれば、気泡に作用する浮力と遠心力(向心力)とにより、気泡の周りに吸着した懸濁物質は有極性溶媒の液面の中心部に凝集するので、有極性溶媒の液面の中心部に排出管を配置すると、より効率よく懸濁物質を排出することができる。
【0036】
上記懸濁物質分離装置において、気体吸引部は、装置起動時には相対的に大きな径の気泡を生成し、所定時間経過後以降は相対的に小さな径の気泡を生成することが望ましい。または、気体吸引部は、相対的に大きな径の気泡と相対的に小さな径の気泡とを混在させて生成することが望ましい。旋回流を使用する場合、分離塔内では、大きな気泡は常に気泡の集合体として旋回流に渦状で捕捉される。分離塔外部から導入された有極性溶媒中の微細気泡および懸濁物質は、渦状の気泡の集合体部により攪拌される。この攪拌により、有極性溶媒中の気泡同士が合体したり、気液界面に付着した懸濁物質同士が合体したりするために、気泡の周りに吸着した懸濁物質自体が大きな集合体となる。このようにして、懸濁物質は、有極性溶媒との比重差により分離塔の中心部において、気泡と共に旋回流に捕捉された状態となる。したがって、懸濁物質分離装置の起動時には相対的に大きい径の気泡を生成し分離塔に導入し、分離塔内で渦状の気泡の集合体部を形成し、次に微細な気泡を生成し分離塔に導入する構成によれば、効率的に分離塔内に懸濁物質を捕捉することができる。また、相対的に大きな径の気泡と相対的に小さな径の気泡とを混在させて生成させる構成によっても、同様に、効率的に分離塔内に懸濁物質を捕捉することができる。
【0037】
上記懸濁物質分離装置において好ましくは、分離塔の下流に設けられ、分離塔から漏出した気泡と、気泡に吸着した懸濁物質とを捕捉するための、バッファ室をさらに備える。分離塔内では、大半の気泡は、気泡の集合体として旋回流に渦状で捕捉される。分離塔外部から導入された有極性溶媒中の、例えば0.3mm以下の微細気泡および懸濁物質は、渦状の気泡の集合体部により攪拌され、気泡の周りに吸着した懸濁物質自体は合体し大きな集合体となる。懸濁物質は、有極性溶媒との比重差により分離塔の中心部において、気泡と共に旋回流に捕捉された状態となる。しかしながら、分離塔内に一定以上に気泡が溜った場合、分離塔内に気泡を捕捉しきれず、分離塔から気泡が漏出することがある。また、分離塔内で気泡が合体しても、マイクロバブルと呼ばれる0.3mm以下の微細な気泡は、有極性溶媒とともに流れ、分離塔から漏出する分も多い。よって、分離塔の下流にバッファ室を設ければ、有極性溶媒の流れから分離し分離塔から漏出した気泡と、気泡に吸着した懸濁物質とを、バッファ室内で捕捉することができる。
【0038】
また好ましくは、有極性溶媒のバッファ室への導入路を形成する配管は、バッファ室の上部においてバッファ室に直結されている。有極性溶媒のバッファ室からの導出路を形成する配管は、バッファ室の下部においてバッファ室に直結されている。この場合は、気泡に作用する浮力により、気液界面に吸着された懸濁物質はバッファ室上部へ分離され、懸濁物質が除去された有極性溶媒はバッファ室下部より排出される。したがって、分離塔から漏出した気泡や懸濁物質を、バッファ室において液面により確実に捕捉することができる。
【0039】
なお下部とは、バッファ室の内寸における、一定方向に重力のある環境で重力場の向かう方向側(すなわち、下側)の50%の範囲をいう。導出路は、バッファ室の垂直方向の下側20%以内の範囲においてバッファ室に直結されていればより好ましく、下側10%以内の範囲であればさらに好ましく、導出路がバッファ室における最も下側の下端部においてバッファ室に直結されていれば、バッファ室内において液面に捕捉されていない懸濁物質が沈降し滞留することを抑制することができるので一層好ましい。また導入路は、バッファ室において、導出路が直結されている位置よりも上記下側と反対側(すなわち、上側)の範囲にあればよい。バッファ室の垂直方向における導入路と導出路との距離が長いほうが効果的であるため、バッファ室の内寸の垂直方向の上側50%以内の範囲に導出路が直結されていればより好ましく、上側30%以内の範囲であれば、さらに好ましい。
【0040】
上記懸濁物質分離装置において好ましくは、バッファ室内において、気泡の浮上速度の平均値は、有極性溶媒の流速の平均値よりも大きい。漏出する気泡の平均浮上速度より、有極性溶媒の平均流速を小さくすることで、分離塔から漏出した気泡および懸濁物質を一層多く補足することができる。そして、懸濁物質が懸濁物質分離装置を再循環することを防止することができる。
【0041】
バッファ室内における個々の気泡の浮上速度は、たとえば、株式会社日本レーザー製の画像解析式粒子,気泡,液滴サイズ/分布測定、観察装置により、計測することができる。気泡の平均浮上速度は、たとえば100個などの、多数個の気泡の浮上速度を計測し、それらの算術平均をとることにより求めることができる。一方、バッファ室内における有極性溶媒の流速は、一分間に流れる流量をX(単位:m/min)とし、バッファ室の流れ方向の断面積をA(単位:m)とした場合、X/(A×60)(単位:m/sec)として求めることができる。
【0042】
バッファ室の目的は、バッファ室内の有極性溶媒の流速を遅くすることであるため、バッファ室の流れ方向の断面積は、少なくとも、バッファ室に直結された導入路および導出路を形成する配管の断面積よりも大きい必要がある。また、バッファ室の流れ方向の寸法は、バッファ室の容積の1/3乗程度が好ましい。したがって、バッファ室の形状は、たとえば容積1L、高さ10cm程度の立方体または円柱とすることができる。導入管は、バッファ室の上部、好ましくは最上部において、また導出管は、バッファ室の下部、好ましくは最下部において、バッファ室に直結するように設置することができる。
【0043】
また好ましくは、分離塔の上部に、気体抜き用弁が設置されている。分離塔内に一定以上に気泡が溜った場合、分離塔内に気泡を捕捉しきれず、分離塔から気泡が漏出することがある。また、分離塔内で気泡が破泡して、気体として分離塔内に溜ってゆき、分離塔内に気体が充満して分離塔内の有極性溶媒の量が少なくなる。その結果、分離塔内で旋回流が維持できない場合がある。そこで対策として、分離塔の上部において、溜った気体流出用の気体抜き用弁を設ける。このようにすれば、分離塔内に気体が充満することを防止し、分離塔内で旋回流を維持するための有極性溶媒量を確保することができる。気泡が破泡して生じた気体は、分離塔の最上部に溜まり始めると考えられるので、気体抜き用弁が分離塔の最上部に設置されていれば効率的に気体を分離塔外部に排出できるので、より好ましい。
【0044】
また好ましくは、分離塔は、管により形成されている。分離塔を形成する管の径は、有極性溶媒の分離塔からの流出路を形成する配管の径および有極性溶媒の分離塔への流入路を形成する配管の径よりも、大きい。この場合は、分離塔を設置するためのコストやスペースの削減が可能となる。また、気体吸引部やポンプなどの懸濁物質分離装置を構成する機器を接続する配管の一部を分離塔に見立てることができる。このとき、分離塔に見立てた当該一部の配管に有極性溶媒を流出入させるための配管は、分離塔に見立てた配管よりも小径とする。好ましくは、分離塔に見立てた配管の内径を、分離塔に有極性溶媒を流出入させるための配管の内径の、2倍以上10倍以下とする。また、有極性溶媒を、分離塔に見立てた配管の中心軸と交差しない直線に沿って(好ましくは、中心軸に直交する断面の円の接線方向に沿って)、分離塔に流出入させる。このようにすれば、分離塔の内径が小さいほど分離塔内で高速の旋回流が発生するので、分離塔に見立てた配管で懸濁物質を効率よく捕捉することが可能である。
【0045】
上記懸濁物質分離装置において好ましくは、分離塔の下部、または、有極性溶媒の分離塔からの流出路を形成する配管、または、バッファ室に設けられた、ドレイン(排液路)をさらに備える。分離塔内の懸濁物質は、分離処理終了後、分離塔内の有極性溶媒とともにドレインへ排出される。分離塔内で分離された懸濁物質の一部または大半が、分離塔内に捕捉される状態で使用する懸濁物質分離装置の場合、無限に懸濁物質は捕捉できるわけではない。懸濁物質の分離処理量は、分離塔内における懸濁物質の捕捉量の限界値以下である必要がある。また、分離処理終了後に懸濁物質を排出する必要がある。その際、分離塔の下部または流出路にドレインを設け、分離処理終了後、有極性溶媒とともに懸濁物質もドレインに排出されるようにすれば、排出用ポンプの設置や分離塔の洗浄など行なわなくても、懸濁物質分離装置の継続的使用が可能となる。
【0046】
好ましくは、分離塔の材質は、親水性の物質である。または、分離塔の内壁は、親水性の物質によってコートされている。分離塔の材質は、成型などで低コストに加工しやすい塩ビやアクリルなどの樹脂でもよいが、疎水性の懸濁物質が付着しにくい材質であるガラスなどの親水性の物質や、他の物質に対して馴染みにくいフッ素樹脂が、メンテナンスの観点からは好ましい。このようにすれば、非強有極性(すなわち疎水性)の懸濁物質の分離塔内壁への付着を防止することができる。または、塩ビやアクリルなどの材料で成型された分離塔の内壁をガラスやSiOなどの親水性の物質、もしくはフッ素樹脂によりコートすることによっても、懸濁物質の分離塔内壁への付着を防止する効果を得ることができる。
【0047】
この発明に係る懸濁物質分離装置の取扱方法は、上記の懸濁物質分離装置の分離処理時、または分離処理終了後のメンテナンス時に、温水を用いて分離塔から懸濁物質を排出する。この場合は、温水を使用することで、懸濁物質の粘度が下がり、一種のローリングアップが発生し、懸濁物質を分離塔外へ確実に排出することができる。そのため、懸濁物質の分離塔内壁への付着や溜りを防止することができる。なお、ローリングアップとは、分離塔内壁に付着した懸濁物質が球形になり、温水が懸濁物質と分離塔内壁との界面に侵入して懸濁物質を巻き上げる作用が働き、懸濁物質が分離塔内壁から剥がれ除去される現象をいう。
【0048】
上記懸濁物質分離装置の取扱方法において好ましくは、温水の温度は、50℃以上である。油が中心の懸濁物質である場合、温水の温度を50℃以上にすることで、分離塔の洗浄効果を顕著に高めることができる。
【発明の効果】
【0049】
この発明の懸濁物質分離装置によれば、有極性溶媒中に分散した非強有極性の懸濁物質を効率的に分離できる。また経済性に優れた低コストな懸濁物質分離装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0051】
(実施の形態1)
図1は、この発明の懸濁物質分離装置の構成を説明する概略図である。図2は、気体吸引部付近を拡大して示す模式図である。図3(a)は、懸濁物質分離装置の中核をなす分離塔について説明する断面図であり、図3(b)は分離塔の底面図である。図4は、懸濁物質分離装置における懸濁物質の分離原理を示す模式図である。図5は、分離塔内に旋回流が形成されている場合の有極性物質と気泡との動きを示す断面模式図である。図6は、微細気泡の気泡径と、気液界面面積との関係を示すグラフである。図6において、縦軸は気液界面面積(単位:m)、横軸は気泡径(単位:mm)を示す。
【0052】
この発明の懸濁物質分離装置1は、図1の2点鎖線で示した部分に該当する。図1に示すように、懸濁物質分離装置1は、外部空間から有極性溶媒中に気体を吸引する気体吸引部2を備える。また、有極性溶媒を移送させるポンプ3を備える。また、気体吸引部の下流に設けられ、有極性溶媒の流れ(流線)と気泡の流れ(流線)との違いによって気泡を有極性溶媒から分離する分離塔4を備える。また、気体吸引部2、ポンプ3および分離塔4を直列に接続し、内部を有極性物質が流れる配管5を備える。実施の形態1では、懸濁物質分離装置1に、洗浄チャンバ6などが接続され、洗浄により洗浄水中に発生した懸濁物質を分離塔4で分離した後、懸濁物質濃度が下がった清浄な有極性溶媒を再度洗浄チャンバ6に排出する。なお、図1では、排出された有極性溶媒は再度洗浄用の有極性溶媒として使用される循環システムとなっているが、懸濁物質濃度が下がった清浄な有極性溶媒を系外へ排出する非循環システムであっても構わない。
【0053】
この懸濁物質分離装置1によって有極性溶媒から分離される対象である非強有極性の懸濁物質とは、たとえば界面活性剤やタンパク質などの両親媒性物質や、食用油や機械油のような疎水性物質など、溶媒の極性よりも弱いものを指す。また、この発明の有極性溶媒とは、水に代表される、溶媒分子が分極しているものを指す。
【0054】
図2に示すように、気体吸引部2は、気体吸引箇所2aと、気体吸引箇所2aに有極性溶媒を流入させる入口管2bと、気体吸引箇所2aから有極性溶媒を流出させる出口管2cと、外部空間から吸引される気体の通気路2dを含む。通気路2dは、気体吸引箇所2aと外部空間とを連通し、気体吸引箇所2aにおいて有極性溶媒中に気体が吸引される構造となっている。気体吸引部2における有極性溶媒の流路である入口管2bと出口管2cとの径は、気体吸引部2へ有極性溶媒を流入させるための気体吸引部2に直結された気体吸引部入口配管5a、および、気体吸引部2から有極性溶媒を流出させるための気体吸引部2に直結されたポンプ入口配管5bの径以下であるように、気体吸引部2と配管5とは形成されている。
【0055】
図1に示すように、気体吸引部2は、ポンプ3の上流に配置されている。気体吸引部2では、ポンプ3の吸引用の負圧により、図2に示す気体吸引用の通気路2dを経由して、気体が有極性溶媒中に吸引される。気体が吸引される際に、有極性溶媒の流れには乱流が発生し、気体への非強有極性の懸濁物質の吸着が発生する。
【0056】
図4に基づいて、懸濁物質分離装置における懸濁物質の分離原理を説明する。通常、有極性溶媒中では、非強有極性物質である懸濁物質は、その体積や質量が小さいため有極性溶媒と一緒に流動し、外部空間から気体を吸引しても、気体が細分化された気泡の周りに非強有極性物質が引き寄せられるわけではない。つまり、図4(a)に示すように、質量および体積の小さい懸濁物質22の流れ22aは、有極性溶媒の流れ20aと同じ傾向にある。気泡21の流れ21aも有極性溶媒20の流れ20aと同じ流れであれば、懸濁物質22はほとんど気泡21に接触せず、懸濁物質22が気泡21に吸着することは少ない。
【0057】
しかしながら、有極性溶媒20の流れ20aに乱流が発生すると、気泡21の粉砕による流れの変化、遠心力の発生などにより、図4(b)に示すように、気泡21の流れ21aと懸濁物質22の流れ22aとの間に、速度差が発生する(つまり、気泡21が有極性溶媒20に対し相対速度を有する状態となる)。または、気泡21の流線と有極性溶媒20の流線とが異なるため、気泡21の流線と有極性溶媒20の流線とは互いに交差する。そのために、気泡21と有極性溶媒中に分散した懸濁物質22との接触確率が上がる。図4(c)に示すように、懸濁物質22が気泡21に接触すると、有極性溶媒中の非強有極性の懸濁物質22は、気泡21の周囲に吸着する。つまり、有極性溶媒20の流れ20aに乱流が発生すると、懸濁物質22は、気泡21の周囲に吸着する確率が向上する。
【0058】
気体吸引部2における有極性溶媒の流路である入口管2bと出口管2cとの径を、吸引部2に直結された気体吸引部入口配管5aおよびポンプ入口配管5bの径以下であるようにすると、入口管2bおよび出口管2cの内部では、限られた空間内であることにより、懸濁物質22と気泡21とが接触しやすくなる。図示しないが、このような流れの乱れは、インペラなどの駆動によりポンプ3中でも発生する。ポンプ3内でも、限られた空間内であることにより、懸濁物質22と気泡21とが接触しやすくなる。
【0059】
次に、図3を参照して、分離塔4について説明する。図3に示すように、分離塔4は、縦型の円筒形状に成形されている。分離塔4へは、有極性溶媒20の流れ20bとともに、気泡21、懸濁物質22が、分離塔4への有極性溶媒20の流入路である流入用配管5cを経由して流入する。分離塔4内では、気泡の浮力などにより懸濁物質22が有極性溶媒20から分離される。その後、流入用配管5c内と比べて有極性溶媒20中の懸濁物質22の濃度と気泡21の量が低下した状態で、有極性溶媒20の流れ20dに示すように、分離塔4からの有極性溶媒20の流出路である流出用配管5dより排出される。
【0060】
ここで、図3(b)に示すように、流入用配管5cおよび流出用配管5dは、分離塔4の中心軸と直交する断面(図3に示す平面状の底面を有する分離塔4では当該底面と平行な断面である。分離塔4の中心軸が垂直であれば、垂直方向と直交する断面、すなわち水平断面である)の円の外周において、当該円の接線に沿って分離塔4へ接続されている。これにより、分離塔4内で旋回流11が発生するようになっている。つまり、この懸濁物質分離装置1において、流入用配管5cおよび流出用配管5dは、分離塔4内で有極性溶媒に旋回流11を形成するための旋回流形成機構として機能している。旋回流11の発生に関しては、特に上記接線に沿った方向への接続が絶対ではない。分離塔4の中心軸と交差しない直線に沿った方向への、流入用配管5c、流出用配管5dの接続(たとえば縦型円筒形状の分離塔4の中心軸と直交する断面において、分離塔4の中心軸と交差しない直線に沿って、流入用配管5cおよび流出用配管5dを分離塔に直結)でも、場合によっては旋回流11は発生する。しかし、より旋回流11を発生しやすくするためには、有極性溶媒の接線方向での流出入が重要である。また、分離塔4の中心軸と直交する断面の内周部で流入用配管5c、流出用配管5dの接続を行なう(つまり、流入用配管5c、流出用配管5dをその延在方向に延長した直線と、分離塔4の中心軸と直交する断面の円の中心との距離が、当該円の半径の50%以下である)より、外周部で行なう(つまり上記距離が当該円の半径の50%以上の範囲内であって、100%に近いほど好ましいため、より好ましくは上記範囲が80%以上)方が、旋回流11が発生しやすい。
【0061】
分離塔4内で、気泡21に未付着の懸濁物質22は、有極性溶媒とともに流れる。つまり、分離塔4内での気泡21に未付着の懸濁物質22の流れは、有極性溶媒の流れ20c(図5参照)と同様である。分離塔4内で旋回流11が発生すると、気泡21と有極性溶媒20との比重が異なるために、気泡21と有極性溶媒20とに作用する遠心力が異なり、気泡21と有極性溶媒20とに作用する加速度が異なる。気泡21と有極性溶媒20とに働く遠心力差により、図5に示す相対速度が生じる。つまり、分離塔4内において、気泡21は流れ21cの如く円筒形状の分離塔4の中心軸側へ流れ、有極性溶媒20は流れ20cの如く分離塔4の半径方向外周側へ流れる。このようにして、分離塔4内には、図3(a)に示す比較的清浄な有極性溶媒20が流れる領域4aと、気泡21および懸濁物質22が多く混在した領域4bとが発生する。また図5から明らかなように、分離塔4内において、気泡21の流線は有極性溶媒20の流線と異なっている。
【0062】
気泡21が有極性溶媒20に対し相対速度を有し、また、気泡21の流線は有極性溶媒20の流線と異なるために、気泡21と有極性溶媒20中に分散した懸濁物質との接触確率が上がる。つまり、図4(b)、(c)と同様の現象が生じ、気液界面と有極性溶媒中の懸濁物質22との接触確率が上がる。また、気泡21に吸着した懸濁物質22は、今度は気泡21の流れ21cと一緒に流れるため、遠心力により有極性溶媒20の流れ20cと分離され、円筒中心部の領域4bに集まる。中心部に集まった気泡21と懸濁物質22とは、有極性溶媒20に対して表面積を小さくしようとするため、互いに凝集し、中心部に捕捉される。
【0063】
旋回流を使用する場合、分離塔4内では、大きな気泡は常に気泡の集合体として旋回流に渦状で捕捉される。分離塔4外部から導入された有極性溶媒中の微細気泡21および懸濁物質22は、渦状の気泡の集合体部(すなわち、円筒中心部の領域4b)により攪拌される。この攪拌により、有極性溶媒中の気泡21同士が合体したり、気液界面に付着した懸濁物質22同士が合体したりするために、気泡21の周りに吸着した懸濁物質22自体が大きな集合体となる。このようにして、懸濁物質22は、有極性溶媒との比重差により分離塔4の中心部において、気泡21と共に旋回流に捕捉された状態となる。
【0064】
さらに、気泡21の浮力や、懸濁物質22が油で有極性溶媒が水の場合など有極性溶媒20の比重が懸濁物質22の比重より大きいときはさらにその比重差により、懸濁物質22は分離塔4の円筒中心部上部(すなわち有極性溶媒20の中心部10、図3(a)参照)に集まり捕捉される。有極性溶媒20は、分離塔4の中心軸と直交する断面の円の外周方向より流出用配管5dを経て分離塔4から流出されるため、比較的懸濁物質22の分離された有極性溶媒20が分離塔4から排出される。
【0065】
旋回流11の作用をより有効に活用するためには、分離塔4の中心軸と直交する断面における内寸の最小値は、分離塔4に直結されている配管5の内径に対して2倍以上大きくするのがよい。分離塔4に直結された配管5、特に流入用配管5cの内径が、円筒形状の分離塔4の中心軸と直交する断面の内径より大きいと、分離塔4内で一部流れが打ち消しあい、旋回流11が効率よく発生しない。また、分離塔4の中心軸と直交する断面の内寸を分離塔4に直結された配管5の内径に対して2倍以上大きくすると、分離塔4内での旋回流路などの流路、すなわち有極性溶媒20の実質的な流路が長くなる。その結果、有極性溶媒20中に分散された懸濁物質22の分離塔4内における滞留時間が長くなるため、気泡21と懸濁物質22との接触確率が上がり、懸濁物質22の有極性溶媒20からの分離効率が向上する。
【0066】
また、旋回流11を使用しない場合でも、分離塔4の内寸を、配管5の内径より太くすることにより、分離塔4内の有極性溶媒20の流速が小さくなる。そのため気泡21の浮力が有極性溶媒20の流速に対して相対的に大きくなる方向となり、有極性溶媒20中に分散した懸濁物質22に対する気泡21の相対速度が大きくなるため、懸濁物質22の分離効率が向上する点で好ましい。
【0067】
また、分離塔の中心軸と直交する断面の内寸が小さいほど、高速の旋回流が発生する。そこで分離塔は、図21に示すように、気体吸引部2やポンプ3などの懸濁物質分離装置1を構成する機器を接続する、配管5の一部を代用しても構わない。図21は、配管の一部を分離塔に見立てた懸濁物質分離装置の構成を説明する概略図である。分離塔94を管により形成すれば、分離塔94のコストを低減することができる。分離塔94を、流入用配管5c、流出用配管5dの径よりも大径の管で形成してもよい。しかし、図21に示すように、分離塔94として使用する管を、配管5と同じ径の管とし、かつ、分離塔94に直結する流入用配管95c、流出用配管95dの径を、分離塔94として使用する管の径よりも小さくすれば、分離塔94を設置するコストやスペースを一層削減できるので好ましい。
【0068】
さらに、図21に示す分離塔94として使用する管の内径を、流入用配管95cおよび流出用配管95dの内径の、2倍以上10倍以下とすることができる。また、流入用配管95cおよび流出用配管95dは、分離塔94として使用する管の中心軸と交差しない直線に沿った方向、好ましくは分離塔94として使用する管の中心軸と直交する断面が成す円の接線方向において、分離塔94として使用する管に接続することができる。つまり、有極性溶媒を、分離塔94に見立てた管の中心軸と交差しない直線に沿って(好ましくは当該管の中心軸と直交する断面の円の接線方向に沿って)、分離塔94に流出入させることができる。これにより、分離塔94内では旋回流が発生する。分離塔94の内径が小さいほど分離塔94内で高速の旋回流が発生するので、分離塔94で懸濁物質を効率よく捕捉することが可能である。
【0069】
また一方、分離塔4の垂直方向と垂直方向と直交する方向(水平方向)との内寸の比較では、気泡21の浮力を利用した分離の面で、垂直方向の内寸が水平方向の内寸よりも大きいほうが、気泡21の分離塔4内の移動距離が長くなり気泡21と有極性溶媒20との接触時間をより長くとれるため好ましい。分離塔4が縦型の円筒形状であれば、分離塔4の直径と、中心軸方向の長さを比較した場合、中心軸方向の長さを長くしておくのが好ましい。
【0070】
なお、図1に示す懸濁物質分離装置1の構成では、ポンプ3は気体吸引部2の下流かつ分離塔4の上流に配置されている。そのため、ポンプ3では、有極性溶媒20を吸引し吐出すると同時に、ポンプ3の吸引側の負圧による気泡21の吸引や、ポンプ3内での気泡21の細分化(微細気泡化)による気液界面面積の増加、ポンプ3内での気泡21と懸濁物質22との接触などの作用が生ずる。このように、1基のポンプ3が多機能を発揮しており、動力源を複数設置する必要のない、経済性に優れた低コストな懸濁物質分離装置1を提供することができる。
【0071】
次に、図6を参照して、気泡径の最適な範囲について説明する。図6のグラフは、気体吸引部2における気体の吸入量が1L/minで一定のときに、気体を細分化し気泡21とするとき、どれだけ気液界面面積が増加するか見積ったものである。懸濁物質22は気液界面に吸着するわけであるから、単純には気液界面面積が大きいほど懸濁物質22の吸着効果が大きくなる。よって、気泡21を細分化し気液界面面積を大きくするほど、懸濁物質22の吸着効果は大きくなる。
【0072】
ただし、図6に同時に示すように、分離塔4の構成によっては、気泡径が小さすぎると有極性溶媒20と同時に流動するために、懸濁物質22の有極性溶媒20からの分離効率が落ちる場合がある。逆に気泡径が大きすぎると、気泡に作用する浮力が増大するために気泡の浮上速度が増加し、分離塔4内で早く上昇しすぎて、懸濁物質22の気液界面との接触確率が落ちる場合がある。図6に示す気泡径の上限下限の問題は、単純な浮上分離のケースであるが、懸濁物質の濃度や性質に応じて、必要な界面面積、気泡径を選定する必要がある。分離塔4に旋回流11を導入し、気液の接触時間を長くすれば比較的大きい気泡でも接触時間を長く取れる。また、旋回流11の遠心力により、比較的小さい気泡でも溶媒流と分離しやすくなる。
【0073】
懸濁物質を気液界面に吸着させ捕捉するために必要な気液界面面積は、懸濁物質の濃度や性質によってそれぞれ異なるものであるが、有極性溶媒中の懸濁物質のモル濃度により換算することができる。たとえば、洗濯時の皮脂(オレイン酸など脂肪酸由来成分;見かけ分子量644.44、単分子吸着したときの占有面積4.3×10−21)の汚れ量が156mgである場合、かつ分子状で単分子状着で気液界面に吸着すると仮定した場合、気液界面1m当りの皮脂の吸着質量は2.5×10−3gであるので、必要な表面積は62.4mである。よって、処理時間を10分とすると、1分あたりの必要気液界面は6.2mとなる。これより、図6のグラフを用いて、気泡径の使用可能な範囲を求めることができる。
【0074】
なお、分離塔4に旋回流11が導入されているので、分離塔4内では、大きな気泡21は常に気泡の集合体として旋回流11に渦状で捕捉される。分離塔4外部から流入する有極性溶媒中の微細気泡22および懸濁物質21は、渦状の気泡の集合体部(すなわち円筒中心部の領域4b、図3(a)参照)により攪拌される。この攪拌により、有極性溶媒中の微細な気泡21同士が合体したり、気液界面に付着した懸濁物質22同士が合体したりするために、気泡21の周りに吸着した懸濁物質22自体が大きな集合体となる。このようにして、懸濁物質22は、有極性溶媒との比重差により分離塔4の中心部において、気泡21と共に旋回流11に捕捉された状態となる。そこで、懸濁物質分離装置の起動時には、遠心力により有極性溶媒から分離しやすい相対的に大きな径(たとえば数mm径)の気泡を生成し分離塔に導入し、分離塔4内で渦状の気泡の集合体部を形成し、気泡の集合体部を形成して以降瞬時に懸濁物質吸着効率の高い相対的に小さな径(たとえば数μm径)の気泡を生成し分離塔に導入することができる。または、相対的に大きな径の気泡と相対的に小さな径の気泡とを混在させて生成し分離塔に導入することができる。このような構成によって、大きな径の気泡をまず気泡の集合体として旋回流に渦状で捕捉し、次に微細な気泡を気泡の集合体部で攪拌して、懸濁物質22を捕捉することができるので、効率的に分離塔4内に懸濁物質22を捕捉することができる。
【0075】
なお、後述する実施の形態4における微細気泡発生装置において、例えば気体吸引部での有極性溶媒の流速を10m/sec以上に速くしたり、通気管に設けられた弁などを調整し気体の吸引量を0.5L/min以下にするなど少なくした場合は、相対的に小さな気泡が発生しやすい。一方、気体吸引部での有極性溶媒の流速を8m/sec以下に遅くしたり、通気管に設けられた弁などを調整し気体の吸引量を1L/min以上にするなど多くした場合は、相対的に大きな気泡が発生しやすい。また、一方、気体吸引部での有極性溶媒の流速を8m/sec以下に遅くしたり気体の吸引量を1L/min以上にして相対的に大きな気泡を発生させ、さらに下流側のポンプ3のインペラの回転などの調整により、上記相対的に大きな気泡の一部を微細気泡化し相対的に小さな径の気泡を生成すれば、有極性溶媒中に相対的に大きな径の気泡と相対的に小さな径の気泡とを混在させて生成することが可能である。また、通気管に設けられた弁などを間欠的に開閉したりすることでも、相対的に大きな径の気泡と相対的に小さな径の気泡とを混在させて生成することが可能である。
【0076】
次に、実施の形態1の懸濁物質分離装置1の動作について説明する。図1に示すように、懸濁物質分離装置1の動力源はポンプ3のみであって、ポンプ3の起動停止が懸濁物質分離装置1の起動停止ということになる。ポンプ3を起動させると、ポンプ3は配管5内部の有極性溶媒20を、ポンプ入口配管5b側から吸引し、流入用配管5c側へ排出する。その結果、有極性溶媒20は、洗浄チャンバ6から排出され、気体吸引部入口配管5a、気体吸引部2、ポンプ入口配管5b、ポンプ3、流入用配管5cを経由して分離塔4へ流入する。その後有極性溶媒20は、分離塔4から排出され、流出用配管5dを経由して洗浄チャンバ6へ循環する。
【0077】
気体吸引部2がポンプ3の上流に配置されているので、ポンプ3の吸引側の負圧によって、気体は気体吸引部2において外部空間から通気路2d(図2参照)を経由して有極性溶媒20中へ吸引される。気体が吸引される際に、有極性溶媒20の流れには乱流が発生し、有極性溶媒20中の非強有極性の懸濁物質22が気泡21へ接触して、懸濁物質22の気泡21への吸着が発生する。懸濁物質22の気泡21への吸着は、出口管2c(図2参照)の内部、および、ポンプ3の内部においても発生する。ポンプ3の内部においてはまた、気泡21の微細気泡化が行なわれ、気液界面面積が増大するため懸濁物質22の気泡21への吸着効率が向上する。
【0078】
分離塔4へ有極性溶媒20を流出入させるための流入用配管5cおよび流出用配管5dは、分離塔4の中心軸と直交する断面の円の外周において、当該円の接線に沿って分離塔4へ接続されている。これにより、分離塔4内で旋回流11が発生するようになっている。また、分離塔4内では、気泡21は有極性溶媒20よりも比重が小さいために、気泡に浮力が作用して気泡は分離塔4内を上昇するように移動する。したがって、分離塔4内では、気泡21が有極性溶媒20に対し相対速度を有し、また、気泡21の流線は有極性溶媒20の流線と異なるために、懸濁物質22は気泡21へ接触して吸着される。気泡21に吸着した懸濁物質22は、気泡21の浮力および遠心力により有極性溶媒20から分離され、分離塔4内の有極性溶媒20の中心部10に集まる。中心部10に集まった気泡21と懸濁物質22は有極性物質に対して表面積を小さくしようとするため、互いに凝集し、中心部に捕捉される。
【0079】
このようにして懸濁物質22は有極性溶媒20から分離される。懸濁物質22の分離された清浄な有極性溶媒20は、分離塔4から排出され、洗浄チャンバ6へ循環する。
【0080】
以上説明したように、この実施の形態の懸濁物質分離装置1においては、気体吸引部2、ポンプ3、分離塔4の順に直列に接続されていること、気体吸引部2における有極性溶媒20の流路である入口管2b、出口管2cの径が気体吸引部2に直結された気体吸引部入口配管5a、ポンプ入口配管5bの径以下であること、分離塔4が縦型の円筒形状を有しており、分離塔4において有極性溶媒20は旋回流11を形成することなどが作用して、気泡21と有極性溶媒20中に分散した懸濁物質22との接触確率が上がる。そのため、有極性溶媒20中の非強有極性の懸濁物質22が気泡21の周囲に吸着し易くなる。したがって、懸濁物質22は分離塔4において気泡とともに有極性溶媒20から分離されるので、有極性溶媒20中に分散した懸濁物質22を効率的に分離することができる。また、懸濁物質分離装置1の動力源はポンプ3のみであるので、経済性に優れているのみならず、生産性、信頼性およびメンテナンス性にも優れた懸濁物質分離装置1を提供することができる。
【0081】
(実施の形態2)
図7は、実施の形態2の懸濁物質分離装置の構成を説明する概略図である。実施の形態2の懸濁物質分離装置1と、上述した実施の形態1の懸濁物質分離装置1とは、基本的に同様の構成を備えている。しかし、実施の形態2では、ポンプ3の位置が図7に示すような構成となっている点で実施の形態1とは異なっている。具体的には、ポンプ3は、分離塔4の下流に配置されている。この構成によっても、有極性溶媒20中に分散した懸濁物質22を効率的に分離できる懸濁物質分離装置1を提供することができる。ただし、この場合、気泡21と懸濁物質22との接触を気体吸引部2および分離塔4において行なう必要がある。
【0082】
(実施の形態3)
図8は、実施の形態3の懸濁物質分離装置の構成を説明する概略図である。実施の形態2と同様に、実施の形態3では、ポンプ3の位置が図8に示すような構成となっている点で実施の形態1とは異なっている。具体的には、ポンプ3は、気体吸引部2の上流に配置されている。この構成によっても、有極性溶媒20中に分散した懸濁物質22を効率的に分離できる懸濁物質分離装置1を提供することができる。ただし、この場合、気体吸引部2にはポンプ3の吐出圧力が印加されるため、気体吸引にポンプ3の負圧は使用できない。したがって、後述する微細気泡発生装置40を使用して、外部空間から有極性溶媒20中に気体を吸引する必要がある。
【0083】
このように、懸濁物質分離装置1において、気体吸引部2、ポンプ3および分離塔4は、分離塔4が気体吸引部2の下流に配置されるように直列に接続されていれば、どのように配置されていても構わない。しかし、実施の形態1で説明したポンプ3を気体吸引部2と分離塔4との間に設ける構成によると、ポンプ3の負圧によって気体を吸引することができ、さらに気体吸引部2で吸引された気体がポンプ3の内部で細分化(微細気泡化)されるので気液界面面積増加の効果も期待できる。よって懸濁物質分離装置1は、図7や図8に示す構成であってもよいが、図1に示すポンプ3を気体吸引部2と分離塔4との間に設ける構成であれば、より好ましい。
【0084】
(実施の形態4)
実施の形態4では、気体吸引箇所2a(図2参照)として好適に用いられる、微細気泡発生装置について説明する。図9は、微細気泡発生装置の構成の概略を示す断面模式図である。図9にはまた、微細気泡発生装置内部の壁面における液体の圧力を示すグラフを示す。当該グラフの横軸は、微細気泡発生装置40の軸方向に沿った方向の位置を示し、また縦軸は、微細気泡発生装置40内を流れる液体の圧力を示す。図9に示すように、微細気泡発生装置40はその内部に、有極性溶媒20などの液体が流れる流路41を有している。微細気泡発生装置40には、流路41内へ気体を導くように通気管45が設けられている。また、微細気泡発生装置40には、流路41内へ液体を導くように液体導入口42が設けられている。さらに、微細気泡発生装置40には、流路41から外部へ液体と気体との混合体を吐出する吐出口43が設けられている。気体導入口44には、通気管45が接続されている。
【0085】
流路41は、エゼクタ構造を有している。エゼクタ構造は、いわゆるベンチュリ管によって構成されている。ベンチュリ管は、図9のように、縮流部47、小管径部としてのスロート部46、および拡散部48を含んでいる。縮流部47は、スロート部46の上流に設けられ、上流側から下流側へ、すなわち液体導入口42側から吐出口43側へ、徐々に流路の断面積が小さくなる円錐状の空間である。また、拡散部48は、スロート部46の下流に設けられ、上流側から下流側へ徐々に流路の断面積が大きくなる円錐状の空間である。さらに、スロート部46の上流側の端部である一方端は、縮流部47において最も下流側の、最も断面積が小さい端部に接続されている。つまり、スロート部46の径は、縮流部47の流路の径よりも小さい。また、スロート部46の下流側の端部である他方端は、拡散部48において最も上流側の、最も断面積が小さい端部に接続されている。つまり、スロート部46の径は、拡散部48の流路の径よりも小さい。スロート部46は円柱状の空間である。なお、縮流部47および拡散部48がなす円錐形状は、当該円錐の頂点と底面の円の中心とを結ぶ直線が底面に垂直な、直円錐であればより好ましい。
【0086】
微細気泡発生装置40が気体吸引箇所2aとして使用されるときには、液体導入口42が入口管2bに接続され、吐出口43が出口管2cに接続される(図2参照)。図1に示すように、有極性溶媒などの液体が、流れ20aのように液体導入口42から微細気泡発生装置40の内部へ流れこむように、ポンプ3が用いられる。
【0087】
微細気泡発生装置40が駆動されるときには、有極性溶媒などの液体が液体導入口42から縮流部47へ、有極性溶媒の流れ20aに示すように、導入される。縮流部47の流路の断面積が徐々に小さくなるため、液体の流速は徐々に大きくなる。それにより、液体の流速は、スロート部46において最も大きくなる。そのため、スロート部46においては、液体の動圧が最も大きくなる。したがって、ベルヌィの定理にしたがって、液体の静圧は縮流部47を通過するときに急激に減少し(図9のグラフ横軸座標A〜B参照)、スロート部46において静圧が最も小さくなる(図9のグラフ横軸座標C参照)。その結果、スロート部46の圧力は、大気圧を基準として、負圧になる。スロート部46が負圧になると、外部から通気管45および気体導入口44を経由してスロート部46へ気体が吸引される。つまり、内部を気体が通気する通気管45は、外部空間と有極性溶媒などの液体の流路とをスロート部46において連通し、スロート部46において外部空間から有極性溶媒などの液体中に空気などの気体を吸引する。
【0088】
このとき液体の流速が一定値以上になると、スロート部46における液体の圧力は、液体の飽和蒸気圧以下になる。液体の圧力が飽和蒸気圧以下になると、すなわち、液体は、その内部に含まれている微小な気泡またはごみを核として沸騰する。沸騰現象によって液体が気化し、液体と同一組成の気体で満たされた気泡が液体中に発生する。この現象をキャビテーションといい、発生する気泡をキャビテーション気泡という。スロート部46において液体の低圧が維持されるために、キャビテーションにより発生した気泡(キャビテーション気泡)は膨張する。
【0089】
拡散部48の流路の断面積は、スロート部46の流路の断面積よりも大きい。そのため、液体がスロート部46から拡散部48へ流れると、液体の流速は低下する。それにより、拡散部48の液体においては、動圧が低下し、静圧が増加する(図9のグラフ横軸座標C〜D参照)。キャビテーション気泡は、この急激な圧力上昇によって崩壊する。つまり、液体の急激な圧力上昇および乱流によって、キャビテーション気泡に外力が加えられ、外力がキャビテーション気泡の内圧を上回ると、キャビテーション気泡は崩壊する。このとき、外部空間から液体中に吸引された気体がキャビテーション気泡に取り込まれていれば、液体中に吸引された気体はキャビテーション気泡とともに拡散部48において粉砕される。または、液体中に外部空間から吸引された気体の気泡の近傍における、キャビテーション気泡の崩壊により発生するマイクロジェットの衝撃波によって,気体の気泡に外力が加えられ、外力が気体の気泡の内圧を上回ると、気体の気泡は崩壊する。その結果、気体の気泡は細分化(微細気泡化)され、微細化された気泡は液体中に混合分散される。そして、気泡と液体との混合体が、吐出口43から外部へ吐出される。
【0090】
微細気泡発生装置40は、スロート部46の下流側の端部から徐々に断面積が大きくなる円錐状の流路である、拡散部48を有している。そのため、流路41がスロート部46から急拡大する場合に比較して、圧力損失を低減することができる。圧力損失が小さいということは、液体が流れ易い、すなわち、液体の流速が大きいことを意味する。つまり、ベルヌィの定理を考慮すると、この微細気泡発生装置40は、液体の静圧が下がり易い構造を有している。よって、一定のポンプ圧力であれば、より大きい液体の流速の確保が可能となる。つまり、より低動力で気体の液体中への吸引が可能となる。
【0091】
このとき、スロート部46における液体の流速が最大となるような拡散部48の形状を選択することができる。図10は、拡散部48がなす形状が直円錐形状である場合に、スロート部46における液体の流速と、スロート部46の軸方向と母線49とがなす角度θとの関係を示すグラフである。図7に示すようなポンプ3が気体吸引部2の上流に配置されている構成において、スロート部46の径4mm、ポンプの吐出圧0.05MPaの場合の例である。図10において、縦軸は、小管径部としてのスロート部46における液体の流速を示す。また横軸は、図9に示す角度θ、すなわち、拡散部48における母線49と、スロート部46の中心軸とのなす角度を示す。ここで母線とは、直円錐形状の円錐面の一部により形成される拡散部48の、直円錐の底面の円の中心を含み底面の円に垂直な断面における、拡散部48の壁面(すなわち、直円錐の円錐面)を示す線である。
【0092】
図10に示すように、スロート部46における液体の流速は、角度θが約4°であるときに最大値を示す。角度θが3°以上7°以下の範囲であれば、液体の流速が最も大きい範囲にあるといえる。すなわち、円錐状流路としての拡散部48は、中心軸と母線49とがなす角度θが3°以上7°以下である円錐状の空間であれば、スロート部46における液体の静圧が最も下がりやすい。その結果、最も小さな動力で負圧部を形成してキャビテーションを発生させることが可能である。その結果、キャビテーション気泡の発生効率を向上させ、外部空間から吸引された気体の微細気泡化の処理能力を向上させることができる。
【0093】
なお、スロート部46において発生する負圧が気体を吸引する力となり、気体は外部空間から通気管45を経てスロート部46へ導かれる。よって、図8に示す懸濁物質分離装置1の構成のように、気体吸引部2にポンプ3の吐出圧力が印加される構成において、微細気泡発生装置40を適用すれば、ポンプ3の他に動力源を設置することなく、外部空間から有極性溶媒中に気体を吸引することができる。微細気泡発生装置40は、図1に示す懸濁物質分離装置1の構成のように、気体吸引部2がポンプ3の負圧側に配置される場合にも使用することができることは勿論である。
【0094】
懸濁物質分離装置1の気体吸引箇所2aとして微細気泡発生装置40を用いれば、外部空間から有極性溶媒20中に気体を効率的に吸引することができる。また、キャビテーション気泡の崩壊によって気泡21を微細気泡化できるので、気液界面面積が増加し、気泡21と有極性溶媒20中に分散した懸濁物質22との接触確率が上がる。そのため、有極性溶媒20中の非強有極性の懸濁物質22が気泡21の周囲に吸着し易くなる。したがって、懸濁物質22は分離塔4において気泡とともに有極性溶媒20から分離されるので、有極性溶媒20中に分散した懸濁物質22を効率的に分離することができる。
【0095】
微細気泡発生装置40の通気管45には、弁を設置することができる。通気管45に弁を設置すれば、弁の開度調整や、間欠的な弁の開閉によって、液体中に混合分散される微細気泡の気泡径を制御することができる。たとえば、通気管45に設けられた弁を調整し、気体の吸引量を相対的に少なくした場合は相対的に小さな気泡が発生しやすい。一方、通気管45に設けられた弁を調整し、気体の吸引量を相対的に多くした場合は相対的に大きな気泡が発生しやすい。また、一方、気体の吸引量を相対的に多くし、相対的に大きな気泡を発生させ、さらに下流側のポンプ3のインペラの回転などの調整により、上記相対的に大きな気泡の一部を微細気泡化し相対的に小さな径の気泡を生成すれば、有極性溶媒中に相対的に大きな径の気泡と相対的に小さな径の気泡とを混在させて生成することが可能である。また、通気管45に設けられた弁などを間欠的に開閉したりすることでも、相対的に大きな径の気泡と相対的に小さな径の気泡とを混在させて生成することが可能である。このような構成によって、図6で説明した通り、懸濁物質22の濃度や性質に応じて最適となるように選定した気液界面面積が得られるように、気泡径を制御することができる。
【0096】
次に、微細気泡発生装置の変形例について説明する。図17は、微細気泡発生装置の変形例の構成の概略を示す断面模式図である。図18は、図17におけるXVIII−XVIII線による断面図である。図17に示すように、微細気泡発生装置50はその内部に、気体と液体とが混合された混合体を生成する、旋回流59が生じ得る形状からなる空間51を有している。図17および図18に示すように、空間51の形状は円柱状であるが、旋回流59が生じ得る形状であれば、多角柱状などの他の形状であってもよい。
【0097】
空間51の側面には液体導入口54が設けられている。液体導入口54は、空間51内において旋回流59を生じさせるように空間51へ、液体の流れ56に示すように、液体を導く液体導入用配管に接続されている。また、空間51の一方の底面には、気体導入口52が設けられている。また、気体導入口52には気体導入管55が接続されている。外部から気体導入管55を経由して、気体の流れ57に示すように、空間51へ気体が導かれる。また、空間51の他方の底面には、吐出口53が設けられている。気体と液体とが混合された混合体は、吐出口53を中心として旋回するように、吐出口53から外部へ、混合体の流れ58に示すように、吐出される。
【0098】
空間51は、断面が円形である円柱形状をなしている。液体導入口54は、図17および図18に示されるように、空間51の側面に設けられており、一方の底面に平行な円形断面の接線方向に沿って延びる液体導入用配管に接続されている。このように、円柱状の空間51の側面の接線方向に沿って延びる液体導入用配管に接続された液体導入口54が設けられているため、空間51内において旋回流59を高い効率で発生させることができる。なお、液体導入口54は、図18において旋回流59が時計回り旋回するように設けられているが、旋回流59が反時計回りに旋回するように設けられていてもよい。
【0099】
気体導入口54は、一方の底面のほぼ中心位置に設けられている。一方の底面の中心位置においては、旋回流59に起因して、圧力が最も小さくなる。そのため、気体導入口54が円形の底面の中心位置に設けられていれば、気体は円柱状の空間51内へ効率的に吸引される。
【0100】
微細気泡発生装置50が気体吸引箇所2aとして使用されるときには、液体導入口54は入口管2bに接続され、吐出口53は出口管2cに接続される(図2参照)。このとき、液体導入口54から空間51へ液体が押圧力によって導入される。それにより、空間51内において旋回流59が生成される。そのため、空間51の中心軸およびその近傍に負圧部が形成される。この負圧部によって気体導入口52から空間51へ気体が吸引される。その結果、圧力が最も低い空間51の中心軸およびその近傍を気体が通過する。このとき、空間51の中心軸に沿う細い紐状の気体通過部が形成される。
【0101】
この空間51では、気体導入口52から吐出口53までの間において紐状の気体通過部が形成される。それにより、微細気泡分散装置50の下流側に接続された配管の内部における液体の流れと、微細気泡発生装置50内の旋回流59の流れとの差に起因して、気体通過部が剪断される。その結果、気体は粉砕されて細分化(微細気泡化)され、微細気泡が液体中に効率的に混合分散される。
【0102】
なお、空間51の中心軸およびその近傍に形成される負圧部の負圧が気体を吸引する力となり、気体は外部空間から気体導入管55を経て空間51へ導かれる。よって、図8に示す懸濁物質分離装置1の構成のように、気体吸引部2にポンプ3の吐出圧力が印加される構成において、微細気泡発生装置50を適用すれば、ポンプ3の他に動力源を設置することなく、外部空間から有極性溶媒中に気体を吸引することができる。微細気泡発生装置50は、図1に示す懸濁物質分離装置1の構成のように、気体吸引部2がポンプ3の負圧側に配置される場合にも使用することができることは勿論である。
【0103】
懸濁物質分離装置1の気体吸引箇所2aとして微細気泡発生装置50を用いれば、外部空間から有極性溶媒20中に気体を効率的に吸引することができる。また、旋回流59の中心部に形成される負圧部において、空間51内の急激な圧力変化または空間51内の激しい乱流流れ場を利用して効率的に微細気泡を発生させることができるので、気液界面面積が増加し、気泡21と有極性溶媒20中に分散した懸濁物質22との接触確率が上がる。そのため、有極性溶媒20中の非強有極性の懸濁物質22が気泡21の周囲に吸着し易くなる。したがって、懸濁物質22は分離塔4において気泡とともに有極性溶媒20から分離されるので、有極性溶媒20中に分散した懸濁物質22を効率的に分離することができる。
【0104】
微細気泡発生装置50では、液体導入用配管から液体導入口54を経て空間51へ導入される液体の流速を調整できるように、たとえば液体導入用配管に制御弁を設置することができる。液体導入用配管に制御弁を設置すれば、制御弁の開度調整によって空間51に導入される液体の流速を調整し、液体中に混合分散される微細気泡の気泡径を制御することができる。このような構成によって、図6で説明した通り、懸濁物質22の濃度や性質に応じて最適となるように選定した気液界面面積が得られるように、気泡径を制御することができる。
【0105】
(実施の形態5)
図11は、実施の形態5の分離塔の上面図である。実施の形態5の懸濁物質分離装置と、上述した実施の形態1の懸濁物質分離装置1とは、基本的に同様の構成を備えている。しかし、実施の形態5では、分離塔4の構成が図11に示すような構成となっている点で実施の形態1とは異なっている。具体的には、分離塔4は縦型の楕円筒形状を有する。有極性溶媒20の分離塔4への流入路を形成する流入用配管5cは、分離塔4の中心軸と直交する断面の楕円形の、長軸4cの延びる方向と同じ方向に延びる接線に沿って、分離塔4に直結されている。有極性溶媒20の分離塔4からの流出路を形成する流出用配管5dは、分離塔4の中心軸と直交する断面の楕円形の、短軸4dの延びる方向と同じ方向に延びる接線に沿って、分離塔4に直結されている。
【0106】
分離塔4への懸濁物質22や気泡21を含む有極性溶媒20の流入に関して、分離塔4に流入後急に流路方向が変わるよりは、徐々に変わるほうが流体エネルギーのロスが少ない。よって、分離塔4を楕円筒形状とし、分離塔の中心軸と直交する断面の楕円形の長軸4cの延びる方向と同じ方向に延びる接線に沿って配置された、流入用配管5cを経由して有極性溶媒20を流入するのが好ましい。
【0107】
一方、有極性溶媒20の流出側は、有極性溶媒20の流れと、気泡21および懸濁物質22の流れとをできるだけ分離したい。よって、有極性溶媒20の流れと、気泡21および懸濁物質22の流れとの分離巾の差y1、y2を考慮して、短軸4dの延びる方向と同じ方向に延びる接線に沿って配置された、流出用配管5dより流出することができる。このようにすれば、気泡21および懸濁物質22が存在する領域4bからより離れた位置において、有極性溶媒20を分離塔4から流出させることができ、より清浄な有極性溶媒20を流出させることができるので好ましい。なお、実施の形態5のその他の構成については、実施の形態1において説明した通りであるので、その説明は繰り返さない。
【0108】
(実施の形態6)
図12は、実施の形態6の分離塔の断面図である。実施の形態6の懸濁物質分離装置と、上述した実施の形態1の懸濁物質分離装置1とは、基本的に同様の構成を備えている。しかし、実施の形態6では、分離塔4の構成が図12に示すような構成となっている点で実施の形態1とは異なっている。具体的には、有極性溶媒20の分離塔4への流入路を形成する流入用配管5cは、分離塔4の上部において、分離塔4に直結されている。有極性溶媒20の分離塔4からの流出路を形成する流出用配管5dは、分離塔4の下部において、分離塔4に直結されている。
【0109】
実施の形態1〜3の説明においては、分離塔4への懸濁物質22や気泡21を含む有極性溶媒20の流入に関して、分離塔4下部より流入し、懸濁物質22が分離されその濃度が比較的低くなった有極性溶媒20を分離塔4の上部より流出していた。これに対し、有極性溶媒20を分離塔4上部より流入し、懸濁物質22が分離されその濃度が比較的低くなった有極性溶媒20を分離塔4の下部より流出した場合、気泡21の浮力により、気液界面に吸着された懸濁物質22は分離塔4上部へ分離される。また、懸濁物質22が除去された有極性溶媒20は、ポンプ3によって流入用配管5cへ押し込まれ流出用配管5dから吸引される流れに加えて、有極性溶媒20に作用する重力により分離塔4下部の流出用配管5dへ向かう流れが生じる。つまり、懸濁物質22の有極性溶媒20からの分離に、有極性溶媒20と気泡21との比重差に起因する気泡21の浮力の効果を、より有効に活用できる。なお、分離塔4の垂直方向の内寸が、垂直方向と直交する水平方向の内寸よりも大きいか小さいかに関わらず、垂直方向上側を上部、垂直下側を下部とする。実施の形態6のその他の構成については、実施の形態1において説明した通りであるので、その説明は繰り返さない。
【0110】
(実施の形態7)
図13は、実施の形態7の分離塔の断面図である。実施の形態7の懸濁物質分離装置と、上述した実施の形態6の懸濁物質分離装置とは、基本的に同様の構成を備えている。しかし、実施の形態7では、分離塔4の構成が図13に示すような構成となっている点で実施の形態6とは異なっている。具体的には、分離塔4内における有極性溶媒20の液面の中心部の位置に、疎水性固体物31が設置されている。この構成によって、有極性溶媒20から分離された懸濁物質22をより効率的に捕捉することができる。
【0111】
実施の形態6で説明した懸濁物質分離装置において、有極性溶媒20から分離され気泡の周りに吸着した懸濁物質22は、旋回流11のため気泡に作用する遠心力(向心力)と、浮力とにより、分離槽4の液面の中心部10に集まって捕捉されているが、無限に捕捉できるわけではない。たとえば、有極性溶媒20が水で懸濁物質22が疎水性物質である場合は、気液界面に懸濁物質22が凝集するのと同じ原理(すなわち、疎水性相互作用)により、樹脂などの疎水性固体物31の周りに懸濁物質22が凝集し、懸濁物質22は疎水性固体物31に捕捉され、有極性溶媒20とともに分離塔4から流出しにくくなる。したがって、より懸濁物質が分離され、より清浄となった有極性溶媒の、分離塔からの流出が可能となる。なお、疎水性固体物31は一定間隔で清掃される必要がある。実施の形態7のその他の構成については、実施の形態1および6において説明した通りであるので、その説明は繰り返さない。
【0112】
(実施の形態8)
図14は、実施の形態8の分離塔の断面図である。図15は、図14の領域A付近を拡大して示す模式図である。実施の形態8の懸濁物質分離装置と、上述した実施の形態6の懸濁物質分離装置とは、基本的に同様の構成を備えている。しかし、実施の形態8では、分離塔4の構成が図14に示すような構成となっている点で実施の形態6とは異なっている。具体的には、分離塔4内における有極性溶媒20の液面の中心部の位置に、排出管30が設置されている。懸濁物質22は、排出管30を経由して分離塔4から排出される。この構成によって、有極性溶媒20から分離された懸濁物質22をより効率的に除去することができる。
【0113】
実施の形態6で説明した懸濁物質分離装置において、有極性溶媒20から分離され気泡の周りに吸着した懸濁物質22は、旋回流11のため気泡に作用する遠心力(向心力)と、浮力とにより、分離槽4の液面の中心部10に集まって捕捉されているが、無限に捕捉しておけるわけではない。分離塔4内で捕捉するのみでは分離塔4外への懸濁物質22の流出を防止できない場合は、懸濁物質22が集まった分離塔4内の位置、つまり有極性溶媒20の液面の中心部10に対して懸濁物質22を吸引する形で、懸濁物質22排出用の排出管30を設置することができる。気泡21の周りに吸着した懸濁物質22は有極性溶媒20の液面の中心部10に凝集するので、効率よく懸濁物質22を分離塔4内から排出することができる。
【0114】
このとき、排出管30を、少なくとも分離塔4内では可動可能な形態とすることができる。たとえば、排出管30と分離塔4の外部とを連通する懸濁物質22の経路を、フレキシブルチューブなどの可撓性のある部材によって作成することができる。このようにすれば、有極性溶媒20の液面が上下動しても、排出管30の吸込み口35を常に液面付近に留めることが可能であり、分離された懸濁物質22を吸込み易くできる。なお、排出管30の可動時に、排出管30の吸込み口35を常に液面付近に維持するには、有極性溶媒20の比重に応じて、排出管30の材質および形状を調整するのが良い。吸込み口35の面積のうち50%以上100%未満が有極性溶媒20中に没するように形成されていると、懸濁物質22を排出管30へより効率的に吸引することができる。吸込み口35の面積のうち99%が有極性溶媒20に没するように排出管30が形成されていれば、より好ましい。
【0115】
また、排出管30の材質については、少なくとも吸込み口35の材質を、懸濁物質22と親和性の高い(つまり親和基を有する)非強有極性の物質とすれば、有極性溶媒20の液面で懸濁物質が吸込み口35の近傍に凝集するためより好ましい。なお、実施の形態8のその他の構成については、実施の形態1および6において説明した通りであるので、その説明は繰り返さない。
【0116】
(実施の形態9)
図16は、実施の形態9の分離塔の断面図である。実施の形態9の懸濁物質分離装置と、上述した実施の形態6の懸濁物質分離装置とは、基本的に同様の構成を備えている。しかし、実施の形態9では、分離塔4の構成が図16に示すような構成となっている点で実施の形態6とは異なっている。具体的には、実施の形態9の懸濁物質分離装置は、分離塔4の下部に設けられた、ドレイン(排液路)33を備えている。この構成によって、有極性溶媒20から分離された懸濁物質22をより効率的に除去することができる。
【0117】
分離塔4内で分離された懸濁物質22が、分離処理中その一部または大半が、分離塔4内に捕捉される状態で使用する分離装置の場合、無限に懸濁物質22は捕捉できるわけではない。懸濁物質22の分離処理量は、分離塔4内における懸濁物質22の捕捉量の限界値以下である必要がある。また、分離処理終了後に懸濁物質22を排出する必要がある。そこで、分離塔4の下部にドレイン33を設け、分離処理終了後、分離塔4内の懸濁物質22を有極性溶媒20とともにドレイン33に排出されるようにすれば、排出用ポンプの設置や分離塔4の洗浄など行なわなくても、懸濁物質分離装置の継続的使用が可能となる。ドレイン(排液路)33に電磁弁や制御弁を設ければ、懸濁物質22の分離塔4からの排出を弁の開閉によって容易に制御できることは勿論である。
【0118】
懸濁物質22は非強有極性(すなわち疎水性)の油などのケースが多い。そこで、懸濁物質22の分離処理時、または、分離処理終了後のメンテナンス時には、温水を使用して懸濁物質22を排出することができる。温水を使用することで、懸濁物質22の粘度が低下し、一種のローリングアップによる洗浄状態となる。そのため、懸濁物質22の分離塔4外への排出が確実となり、分離塔4内壁への付着や詰りを防止できる。なお、特に懸濁物質が油の場合、温水温度を50℃以上にすれば洗浄効果が高いことが、実験などで判明している。
【0119】
また同様に、懸濁物質22の分離塔4の内壁への付着防止の意味で、分離塔4の内壁へ親水性のSiO膜をコートしたり、分離塔4の材質自体をガラスなどの親水性の物質にしたりすることで、非強有極性の懸濁物質22は、分離塔4の内壁に付着しにくくなる。
【0120】
なお、ドレイン33は、有極性溶媒40の分離塔4からの流出路を形成する流出用配管5dに設けられてもよい。実施の形態9のその他の構成については、実施の形態1および6において説明した通りであるので、その説明は繰り返さない。
【0121】
(実施の形態10)
図19は、実施の形態10の懸濁物質分離装置の構成を説明する概略図である。実施の形態10の懸濁物質分離装置1と、上述した実施の形態1の懸濁物質分離装置1とは、基本的に同様の構成を備えている。しかし、実施の形態10では、図19に示すバッファ室60をさらに備える構成となっている点で、実施の形態1とは異なっている。
【0122】
分離塔4内では、大半の気泡は、気泡の集合体として旋回流に渦状で捕捉される。しかし、気泡の量が多くなりすぎた場合、分離塔4内に捕捉しきれず、数ミリサイズ以上の大きな気泡として外部に漏出してしまう。また、気泡径が0.3mm以下のマイクロバブルと呼ばれる微細な気泡は、0.5mm以上(0.3〜0.5mmは過渡領域)の比較的大きな気泡に比べて溶媒粘度の影響を受けやすい。そのため、溶媒との相対速度に差が出ず、有極性溶媒の流れとともに分離塔4から比較的漏出し易い。気泡の漏出と同時に、気泡の周りに吸着した懸濁物質22の一部も漏出する。
【0123】
そこで、分離塔4の下流に、漏出した気泡の捕捉用のバッファ室60を設ける。バッファ室60へは上部より有極性溶媒20を導入し、下部より導出する構成とする。つまり、有極性溶媒20のバッファ室60への導入路を形成する配管5dは、バッファ室60の上部においてバッファ室60に直結されている。一方、有極性溶媒20のバッファ室60からの導出路を形成する配管5eは、バッファ室60の下部においてバッファ室60に直結されている。この構成によれば、気泡に作用する浮力により、気液界面に吸着された懸濁物質はバッファ室60上部へ分離され、懸濁物質が除去された有極性溶媒20はバッファ室60下部より排出される。したがって、分離塔から漏出してきた気泡や懸濁物質が液面に捕捉されやすくなる。
【0124】
また、分離塔4下流のバッファ室60では、漏出してきた気泡の浮上速度より有極性溶媒20の平均流速を遅くすることができる。つまり、バッファ室60の流れ方向の断面積を大きくして、有極性溶媒の流れから、分離塔4から流出した数mm径以上の気泡と、気泡に吸着した懸濁物質22を分離し捕捉することができる。気泡の浮上速度より有極性溶媒の平均流速を遅くすることで、バッファ室内で有極性溶媒と懸濁物質の一種の浮上分離が可能となる。そして、懸濁物質22が再循環するのを防止できる。なお、図16に示すドレイン33をバッファ室60の下部に設けてもよい。
【0125】
(実施の形態11)
図20は、実施の形態11の懸濁物質分離装置の構成を説明する概略図である。実施の形態11の懸濁物質分離装置1と、上述した実施の形態1の懸濁物質分離装置1とは、基本的に同様の構成を備えている。しかし、実施の形態11では、図20に示すように、分離塔4の最上部に気体抜き用のバルブ80が設置されている構成となっている点で、実施の形態1とは異なっている。
【0126】
分離塔4内に一定以上に気泡が溜った場合、分離塔4内で気泡が破泡して、気体として分離塔4内に溜ってゆき、分離塔4内に気体が充満して、分離塔4内に有極性溶媒自体が存在できなくなる。そのため、分離塔4内の有極性溶媒の量が少なくなり、分離塔4内での旋回流の形成に支障が出るなどの弊害が発生する場合がある。
【0127】
そこで、本実施例では、分離塔4の気体が溜る位置である最上部に、溜った気体(空気)抜き用のバルブ80を設け、分離塔4内の水量が一定に保たれるよう、適宜バルブ80の開閉や漏出気体流量の調節を行なう。分離塔4内はポンプ3による吐出圧のため、常に大気より高い圧力が印加されており、分離塔4内に溜まりすぎた気体は、バルブ80を通して外部へ放出される。このようにすれば、分離塔4内に気体が充満することを防止し、分離塔4内で旋回流を維持するための有極性溶媒量を確保することができる。なお、本実施例では、分離塔内に気体抜きを適用したが、前記実施例10のバッファ室に適用することも可能である。
【0128】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0129】
この発明の懸濁物質分離装置は、食器洗浄機の洗浄後の油や、洗濯水中の疎水性汚れを、水から分離する用途などに、特に有利に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】この発明の懸濁物質分離装置の構成を説明する概略図である。
【図2】気体吸引部付近を拡大して示す模式図である。
【図3】分離塔を示す模式図である。
【図4】懸濁物質分離装置における懸濁物質の分離原理を示す模式図である。
【図5】分離塔内に旋回流が形成されている場合の有極性物質と気泡との動きを示す断面模式図である。
【図6】微細気泡の気泡径と、気液界面面積との関係を示すグラフである。
【図7】実施の形態2の懸濁物質分離装置の構成を説明する概略図である。
【図8】実施の形態3の懸濁物質分離装置の構成を説明する概略図である。
【図9】微細気泡発生装置の構成の概略を示す断面模式図および微細気泡発生装置内部の壁面における液体の圧力を示すグラフである。
【図10】スロート部における液体の流速と角度θとの関係を示すグラフである。
【図11】実施の形態5の分離塔の上面図である。
【図12】実施の形態6の分離塔の断面図である。
【図13】実施の形態7の分離塔の断面図である。
【図14】実施の形態8の分離塔の断面図である。
【図15】図14の領域A付近を拡大して示す模式図である。
【図16】実施の形態9の分離塔の断面図である。
【図17】微細気泡発生装置の変形例の構成の概略を示す断面模式図である。
【図18】図17におけるXVIII−XVIII線による断面図である。
【図19】実施の形態10の懸濁物質分離装置の構成を説明する概略図である。
【図20】実施の形態11の懸濁物質分離装置の構成を説明する概略図である。
【図21】配管の一部を分離塔に見立てた懸濁物質分離装置の構成を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0131】
1 懸濁物質分離装置、2 気体吸引部、2a 気体吸引箇所、2b 入口管、2c 出口管、2d 通気路、3 ポンプ、4 分離塔、4a,4b 領域、4c 長軸、4d 短軸、5 配管、5a 気体吸引部入口配管、5b ポンプ入口配管、5c 流入用配管、5d 流出用配管、6 洗浄チャンバ、10 中心部、11 旋回流、20 有極性溶媒、20a,20b,20c,20d 有極性溶媒の流れ、21 気泡、21a,21c 気泡の流れ、22 懸濁物質、22a 懸濁物質の流れ、30 排出管、31 疎水性固体物、33 ドレイン、35 吸込み口、40 微細気泡発生装置、41 流路、42 液体導入口、43 吐出口、44 気体導入口、45 通気管、46 スロート部、47 縮流部、48 拡散部、49 母線、50 微細気泡発生装置、51 空間、52 気体導入口、53 吐出口、54 液体導入口、55 気体導入管、56 液体の流れ、57 気体の流れ、58 混合体の流れ、59 旋回流、60 バッファ室、80 バルブ、94 分離塔、95c 流入用配管、95d 流出用配管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有極性溶媒中の非強有極性の懸濁物質を、前記有極性溶媒から分離するための懸濁物質分離装置であって、
外部空間から前記有極性溶媒中に気体を吸引する気体吸引部と、
前記有極性溶媒を移送させるポンプと、
前記気体吸引部の下流に設けられ、前記懸濁物質を前記有極性溶媒から分離する分離塔と、
前記気体吸引部、前記ポンプおよび前記分離塔を直列に接続し、内部を前記有極性溶媒が流れる配管とを備え、
前記気体吸引部における前記有極性溶媒の流路の径は、前記気体吸引部に直結された前記配管の径以下である、懸濁物質分離装置。
【請求項2】
前記分離塔において前記有極性溶媒に旋回流を形成するための、旋回流形成機構を含む、請求項1に記載の懸濁物質分離装置。
【請求項3】
前記分離塔は、円筒形状を有する、請求項2に記載の懸濁物質分離装置。
【請求項4】
前記分離塔は、縦型の形状を有し、
前記配管は、前記分離塔の中心軸と交差する方向の断面における外周部において、前記中心軸と交差しない直線に沿って前記分離塔に直結されている、請求項3に記載の懸濁物質分離装置。
【請求項5】
前記分離塔は、楕円筒形状を有する、請求項2に記載の懸濁物質分離装置。
【請求項6】
前記分離塔は、縦型の形状を有し、
前記有極性溶媒の前記分離塔への流入路を形成する前記配管は、前記分離塔の中心軸と直交する前記分離塔の断面における長軸の延びる方向と同じ方向に延びる接線に沿って、前記分離塔に直結されている、請求項5に記載の懸濁物質分離装置。
【請求項7】
前記分離塔は、縦型の形状を有し、
前記有極性溶媒の前記分離塔からの流出路を形成する前記配管は、前記分離塔の中心軸と直交する前記分離塔の断面における断面の短軸の延びる方向と同じ方向に延びる接線に沿って、前記分離塔に直結されている、請求項5に記載の懸濁物質分離装置。
【請求項8】
前記分離塔は、垂直方向の内寸が、前記垂直方向と直交する方向の内寸よりも大きい、請求項1に記載の懸濁物質分離装置。
【請求項9】
前記分離塔は、縦型の形状を有し、
前記配管は、前記分離塔の中心軸と交差しない、前記中心軸と直交する前記分離塔の断面と平行な直線に沿って前記分離塔に直結しており、
前記分離塔の前記断面における内寸の最小値は、前記分離塔に直結されている前記配管の内径の2倍以上である、請求項2に記載の懸濁物質分離装置。
【請求項10】
前記分離塔は、縦型の形状を有し、
前記分離塔内において、前記気体は前記有極性溶媒に対し相対速度を有する、請求項2に記載の懸濁物質分離装置。
【請求項11】
前記分離塔は、縦型の形状を有し、
前記分離塔内において、前記気体の流線は前記有極性溶媒の流線と異なる、請求項2に記載の懸濁物質分離装置。
【請求項12】
前記気体吸引部は、前記ポンプの上流に配置されている、請求項1に記載の懸濁物質分離装置。
【請求項13】
前記気体吸引部における前記流路は、小管径部を含み、
前記気体吸引部は、前記小管径部において前記流路へ連通する前記気体の通気路を含み、
前記小管径部の径は、前記小管径部上流側の前記流路の径よりも小さい、請求項1に記載の懸濁物質分離装置。
【請求項14】
前記気体吸引部における前記流路は、前記小管径部の下流側に円錐状流路を含み、
前記円錐状流路は、前記小管径部の軸方向と母線とがなす角度が3°以上7°以下である円錐状の空間である、請求項13に記載の懸濁物質分離装置。
【請求項15】
前記ポンプは、前記気体吸引部の下流、かつ、前記分離塔の上流に配置されている、請求項12から請求項14のいずれかに記載の懸濁物質分離装置。
【請求項16】
前記有極性溶媒の前記分離塔からの流出路を形成する前記配管は、前記分離塔の下部において前記分離塔に直結されており、
前記有極性溶媒の前記分離塔への流入路を形成する前記配管は、前記分離塔の上部において前記分離塔に直結されている、請求項1に記載の懸濁物質分離装置。
【請求項17】
前記有極性溶媒は水である、請求項1に記載の懸濁物質分離装置。
【請求項18】
前記懸濁物質は疎水性物質である、請求項17に記載の懸濁物質分離装置。
【請求項19】
前記分離塔内における前記有極性溶媒の液面の位置に、疎水性固体物が設置されている、請求項17または請求項18に記載の懸濁物質分離装置。
【請求項20】
前記分離塔内における前記有極性溶媒の液面の位置に、排出管が設置されており、
前記懸濁物質は、前記排出管を経由して前記分離塔から排出される、請求項17または請求項18に記載の懸濁物質分離装置。
【請求項21】
前記気体吸引部は、装置起動時には相対的に大きな径の気泡を生成し、所定時間経過後以降は相対的に小さな径の気泡を生成する、請求項2から請求項19のいずれかに記載の懸濁物質分離装置。
【請求項22】
前記気体吸引部は、相対的に大きな径の気泡と相対的に小さな径の気泡とを混在させて生成する、請求項2から請求項19のいずれかに記載の懸濁物質分離装置。
【請求項23】
前記分離塔の下流に設けられ、前記分離塔から漏出した気泡と、前記気泡に吸着した前記懸濁物質とを捕捉するための、バッファ室をさらに備える、請求項1から請求項18のいずれか、請求項21または請求項22に記載の懸濁物質分離装置。
【請求項24】
前記有極性溶媒の前記バッファ室への導入路を形成する前記配管は、前記バッファ室の上部において前記バッファ室に直結されており、
前記有極性溶媒の前記バッファ室からの導出路を形成する前記配管は、前記バッファ室の下部において前記バッファ室に直結されている、請求項23に記載の懸濁物質分離装置。
【請求項25】
前記バッファ室内において、前記気泡の浮上速度の平均値は、前記有極性溶媒の流速の平均値よりも大きい、請求項24に記載の懸濁物質分離装置。
【請求項26】
前記分離塔の上部に、気体抜き用弁が設置されている、請求項1から請求項22のいずれかに記載の懸濁物質分離装置。
【請求項27】
前記分離塔は、管により形成されており、
前記分離塔を形成する前記管の径は、前記有極性溶媒の前記分離塔からの流出路を形成する前記配管の径および前記有極性溶媒の前記分離塔への流入路を形成する前記配管の径よりも大きい、請求項4に記載の懸濁物質分離装置。
【請求項28】
前記分離塔の下部、または、前記有極性溶媒の前記分離塔からの流出路を形成する前記配管に設けられた、ドレインをさらに備え、
前記分離塔内の前記懸濁物質は、分離処理終了後、前記分離塔内の前記有極性溶媒とともに前記ドレインへ排出される、請求項1から請求項22のいずれか、請求項26または請求項27に記載の懸濁物質分離装置。
【請求項29】
前記分離塔の下部、または、前記有極性溶媒の前記分離塔からの流出路を形成する前記配管、または、前記バッファ室に設けられた、ドレインをさらに備え、
前記分離塔内の前記懸濁物質は、分離処理終了後、前記分離塔内の前記有極性溶媒とともに前記ドレインへ排出される、請求項23から請求項25のいずれかに記載の懸濁物質分離装置。
【請求項30】
前記分離塔の材質は、親水性の物質である、請求項28または請求項29に記載の懸濁物質分離装置。
【請求項31】
前記分離塔の内壁は、親水性の物質によってコートされている、請求項28または請求項29に記載の懸濁物質分離装置。
【請求項32】
請求項28から請求項31のいずれかに記載の懸濁物質分離装置の取扱方法であって、
前記分離処理時または前記分離処理終了後のメンテナンス時に、温水を用いて前記分離塔から前記懸濁物質を排出する、懸濁物質分離装置の取扱方法。
【請求項33】
前記温水の温度は、50℃以上である、請求項32に記載の懸濁物質分離装置の取扱方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2008−246466(P2008−246466A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−165093(P2007−165093)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】