説明

懸濁粒子装置,懸濁粒子装置を用いた調光装置及びそれらの駆動方法

【課題】懸濁粒子装置の停止時における粒子の応答速度を向上させる。
【解決手段】第一の基板(6)および第二の基板(4)と、前記第一の基板および前記第二の基板の間に配置された第一の電極(7),第二の電極(5)および懸濁液(8)と、を有する懸濁粒子装置(1)であって、前記懸濁液は、粒子(9)および分散媒(10)を含み、前記分散媒中に前記粒子が分散され、前記第一の電極および前記第二の電極の間に印加される交流電圧により前記粒子の配向が制御され、前記懸濁粒子装置の駆動期間における交流電圧の周波数をa(Hz)、前記懸濁粒子装置の停止期間における交流電圧の周波数をb(Hz)としたとき、a>bを満たす懸濁粒子装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸濁粒子装置,懸濁粒子装置を用いた調光装置及びそれらの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来例として、特許文献1には次のような技術が開示されている。懸濁粒子装置(SPD)4は、粒子懸濁10a,10bを収容するための少なくとも1つのコンパートメントと、粒子懸濁10a,10bに第1電界を印加するための手段と、粒子懸濁10a,10bに第2電界を印加するための手段とを有し、第1電界及び第2電界は異なる電界方向を有する。複数の画素は複数のコンパートメントであって、それらのコンパートメントの各々は、不均一な第2電界を印加するための手段が備えられているコンパートメントにおける粒子懸濁10の領域及び/又は個別の粒子懸濁10a,10bを収容する、コンパートメントにより規定される。各々の画素は、透過性状態,反射性状態若しくは中間段階又は“階調値”に調節されることが可能であり、それ故、SPD4はイメージング又はテキストを表示するために用いられることが可能である。SPD4は、1つ又はそれ以上の画素に適切な電界を印加することにより画素を同じ状態にすることによってリセットされることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−506151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
懸濁粒子装置の駆動時の周波数のまま懸濁粒子装置を停止させると、懸濁粒子装置に用いられる粒子の応答速度が遅い、という問題があった。
【0005】
本発明は、懸濁粒子装置および懸濁粒子装置を用いた調光装置の停止時における粒子の応答速度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
(1)第一の基板および第二の基板と、前記第一の基板および前記第二の基板の間に配置された第一の電極,第二の電極および懸濁液と、を有する懸濁粒子装置であって、前記懸濁液は、粒子および分散媒を含み、前記分散媒中に前記粒子が分散され、前記第一の電極および前記第二の電極の間に印加される交流電圧により前記粒子の配向が制御され、前記懸濁粒子装置の駆動期間における交流電圧の周波数をa(Hz)、前記懸濁粒子装置の停止期間における交流電圧の周波数をb(Hz)としたとき、a>bを満たす懸濁粒子装置。
(2)上記(1)において、前記第一の基板および前記第二の基板の間に樹脂が含まれ、前記樹脂中に前記懸濁液が分散されている懸濁粒子装置。
(3)上記(1)において、前記粒子は、光学的異方性を有していることを特徴とする懸濁粒子装置。
(4)上記(1)において、前記粒子は、棒状であり、前記粒子のアスペクト比は、5以上30以下であることを特徴とする懸濁粒子装置。
(5)上記(1)において、前記粒子は、ポリ過ヨウ化物,炭素系材料,金属材料または無機化合物のいずれか一つ以上である懸濁粒子装置。
(6)上記(1)において、前記粒子は、前記懸濁粒子装置の駆動期間の交流電圧により配向分極することを特徴とする懸濁粒子装置。
(7)上記(1)において、aは、16以上1000以下であることを特徴とする懸濁粒子装置。
(8)上記(1)において、bは、0.010以上15以下である懸濁粒子装置。
(9)上記(1)において、前記懸濁粒子装置の停止期間において、前記第一の電極および前記第二の電極の間に第一の交流電圧が印加され、前記第一の交流電圧が印加された後に、前記第一の電極および前記第二の電極の間に第二の交流電圧が印加され、前記第一の交流電圧をV1、前記第二の交流電圧をV2とした時、|V1|>|V2|を満たす懸濁粒子装置。
(10)上記(1)において、前記懸濁粒子装置の停止期間において、前記第一の電極および前記第二の電極の間に第一の鈍波が印加され、前記第一の鈍波が印加されている時の前記第一の電極および前記第二の電極の間の交流電圧をV1、前記第一の鈍波が印加されている時間をt1、としたときdV1/dt1は一定である懸濁粒子装置。
(11)上記(1)において、前記懸濁粒子装置の停止期間において、前記第一の電極および前記第二の電極の間に第一の鈍波が印加された後に、前記第一の電極および前記第二の電極の間に第二の鈍波が印加され、前記第一の鈍波が印加されている時の前記第一の電極および前記第二の電極の間の交流電圧をV1、前記第一の鈍波が印加されている時間をt1、前記第二の鈍波が印加されている時の前記第一の電極および前記第二の電極の間の交流電圧をV2、前記第二の鈍波が印加されている時間をt2、とした時、|dV1/dt1|<|dV2/dt2|を満たす懸濁粒子装置。
(12)上記(1)において、前記懸濁粒子装置の停止期間において、前記第一の電極および前記第二の電極の間に第一の鈍波が印加された後であり、前記第一の鈍波によって前記第一の電極および前記第二の電極の間に印加される交流電圧を0Vとする前に、前記第一の電極および前記第二の電極の間の電圧を0Vにする懸濁粒子装置。
(13)第一の基板および第二の基板と、前記第一の基板および前記第二の基板の間に配置された第一の電極,第二の電極および懸濁液と、を有する懸濁粒子装置の駆動方法であって、前記懸濁液は、粒子および分散媒を含み、前記分散媒中に前記粒子が分散され、前記第一の電極および前記第二の電極の間に印加される交流電圧により前記粒子の配向が制御され、信号処理回路によって前記第一の電極および前記第二の電極の間に印加される交流電圧の周波数が変えられ、前記懸濁粒子装置の駆動期間における前記交流電圧の周波数をa(Hz)、前記懸濁粒子装置の停止期間における前記交流電圧の周波数をb(Hz)としたとき、a>bを満たす懸濁粒子装置の駆動方法。
(14)上記(13)において、前記懸濁粒子装置の停止期間の開始時から前記第一の電極および前記第二の電極の間に印加される交流電圧が0Vになる交流電圧の周期が1/2周期以下であることを特徴とする懸濁粒子装置の駆動方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、懸濁粒子装置および懸濁粒子装置を用いた調光装置の停止時における粒子の応答速度を向上させることができる。上記した以外の課題,構成及び効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一実施形態の懸濁粒子装置の構成を示す断面図である。
【図2】一実施形態の懸濁粒子装置を用いた調光装置の構成を示す説明図である。
【図3】一実施形態の懸濁粒子装置において、調光状態を制御する駆動方法の構成と駆動波形の説明図である。
【図4(a)】図1の懸濁粒子装置において、停止中の光調整粒子の状態を示す図である。
【図4(b)】図1の懸濁粒子装置において、駆動中の光調整粒子の状態を示す図である。
【図5】一実施形態の懸濁粒子装置において、駆動方法と透過率変動による調光動作の応答時間を示すグラフである。
【図6】一実施形態における停止期間の駆動波形の説明図である。
【図7】一実施形態における停止期間の調光動作応答時間の測定結果である。
【図8】一実施形態の懸濁粒子装置の構成を示す断面図である。
【図9】一実施形態の懸濁粒子装置において、駆動方法と透過率変動による調光動作の応答時間を示すグラフである。
【図10】本発明の一実施形態における停止期間の調光動作応答時間の測定結果である。
【図11】一実施形態の懸濁粒子装置を用いた撮像素子の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に具体的な実施例を示して、本願発明の内容を詳細に説明する。以下の実施例は本願発明の内容の具体例を示すものであり、本願発明がこれらの実施例に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、実施例を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【実施例1】
【0010】
(SPD)
本実施例の理解を容易にするために、本発明者らが検討したSPDの基本構造などについて説明する。懸濁粒子装置(SPD)1は、B板2,A板3および懸濁液8を含む。なお、本実施例において対向に配置されてSPDを構成する2つの基板の「A板3」と「B板2」は、基板間の懸濁液内に電界を形成する電極対のX電極7が配設される基板をA板3、Y電極5が配設される基板をB板2としている。図1は本発明者らが検討したSPDの断面構造概略図である。A板3とB板2の間には懸濁液8が挟持されている。
【0011】
まず、導電性基材およびその形成方法について説明する。A板3とB板2は、ガラスから成る透明な支持基材であるA基板6およびB基板4上に、酸化インジウムスズ(ITO)からなる透明電極のX電極7,Y電極5がそれぞれ形成される。つまり、A基板6およびB基板4の間にX電極7,Y電極5および懸濁液8が配置されている。A基板6またはB基板4の一方にのみX電極7およびY電極5が形成されていても良い。
【0012】
透明な支持基材はポリエチレンテレフタレート(PET),ポリカーボネート(PC),シクロオレフィンポリマー(COP)等の樹脂フィルムであっても構わない。X電極7およびY電極5は酸化インジウム亜鉛(IZO),酸化スズ,酸化亜鉛やカーボンナノチューブ,グラフェン等で形成しても構わない。本実施例では透明電極を支持基材上に一面に形成しているが、これに限らず円などの模様や文字型に配設しても構わない。
【0013】
次に、A板3とB板2を対向に配置し、両板端部(図示しない)の対辺にスペーサービーズ等を含む封着剤を塗布して両板を接着する。これにより、両板間の距離が25μmである懸濁液8の懸濁液充填空間が形成される。なお、懸濁液充填空間及び両板間の距離は4μm以上100μm以下であり、また、スペーサービーズをA板3とB板2との間に散布し、懸濁液充填空間を維持しても構わない。スペーサービーズとしては、ガラスやポリマーなどが挙げられ、接着材に対して安定であることが望ましい。また、スペーサービーズをA板3とB板2との間に散布する場合、スペーサービーズの屈折率は分散媒10の屈折率と近い方が好ましい。
【0014】
懸濁液8およびその形成方法について説明する。懸濁液8は光調整粒子9と分散媒10を含む。分散媒10中に光調整粒子9が分散されている。
【0015】
光調整粒子9は、例えば、ポリ過ヨウ化物であり、形状に異方性があり、配向方向に起因して吸光度の異なる光学的異方性を発現し、アスペクト比が1ではない形状をしている。懸濁粒子装置の駆動期間における交流電圧の周波数及びその周波数以下の周波数において、光調整粒子9が配向分極を生じることが望ましい。その場合、光調整粒子9として導電性の低い誘電体材料を用いることが望ましい。導電性の低い誘電体材料としてはポリマー粒子,ポリマーでコートした粒子などが挙げられる。光調整粒子9として、棒状や板状などが考えられる。光調整粒子9を棒状とすることで、電界に対する粒子回転運動の抵抗や透過時のヘイズの上昇を抑制できる。光調整粒子9のアスペクト比は例えば、5以上30以下程度が望ましい。光調整粒子9のアスペクト比を5以上とすることにより、光調整粒子9の形状に起因するような光学的異方性を発現できる。
【0016】
光調整粒子9の大きさは1μm以下であることが好ましく、0.1μm以上1μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上0.5μm以下であることがさらに好ましい。光調整粒子9の大きさが1μmを超える場合には、光散乱が生じたり、電界が印加された場合に分散媒10中での配向運動が低下したりするなど、透明性が低下する問題が発生することがある。なお、光調整粒子9の大きさは、電子顕微鏡観察等により計測される。
【0017】
光調整粒子9としては、カーボンブラックなどの炭素系材料、銅,ニッケル,鉄,コバルト,クロム,チタン,アルミニウムなどの金属材料、窒化ケイ素,窒化チタン,酸化アルミニウムなどの無機化合物からなる粒子であっても構わない。また、これらの材料にポリマーでコートした粒子であっても構わない。光調整粒子9として、上記の材料が一種類のみ含まれていても良く、上記の材料が二種類以上含まれていても構わない。
【0018】
分散媒10は、アクリル酸エステルオリゴマーからなる液状共重合体である。分散媒10として、他にポリシロキサン(シリコーンオイル)などが挙げられる。なお、分散媒10としては、光調整粒子9が浮遊可能な粘度であり、高抵抗で、A基板6,B基板4及びX電極7,Y電極5とは親和性がなく、A基板6およびB基板4と屈折率が近く、光調整粒子9と誘電率が異なる液状共重合体を使用することが好ましい。具体的には、298Kにおいて、分散媒の抵抗率が1012Ωm以上1015Ωm以下であることが望ましい。分散媒10と光調整粒子9に誘電率差があると、後に記す光調整粒子9の配向動作において交流電界下における駆動力として作用させることができる。本実施例では、分散媒10の比誘電率は3.5以上5.0以下としている。
【0019】
懸濁液充填空間には、封着剤で接着していない両板端部から毛細管現象により懸濁液8が充填される。A板3とB板2との間に懸濁液8を充填後、接着していない両板端部を封着剤で接着して封止する。これにより、懸濁液8は外気から隔離される。
【0020】
(調光装置)
図2は、SPD1を備えた調光装置11の構成を示す説明図である。調光装置11は、SPD1と駆動装置15を備えている。駆動装置15は、SPD1をX電極7とY電極5で駆動するための駆動制御回路12および駆動電源13、調光領域や調光状態を制御する入力信号の処理を行う信号処理回路14を備えている。信号処理回路14によって開始期間,サステイン期間,停止期間における交流電圧および交流電圧の周波数を変えている。なお、調光装置11が入射光や温度などに関する外部環境情報信号を信号処理回路へ入力する外部信号入力装置も備えていても構わない。
【0021】
本実施例の調光装置11は、例えば、室内外の仕切り(パーティッション),建築物用の窓硝子/天窓,電子産業および映像機器に使用される各種平面表示素子,各種計器板と既存の液晶表示素子の代替品,光シャッター,各種室内外広告および案内標示板,航空機/鉄道車両/船舶用の窓硝子,自動車用の窓硝子/バックミラー/サンルーフ,眼鏡,サングラス,サンバイザー,撮像素子等の用途に好適に使用することができる。適用法としては、本実施例の調光装置11を直接使用することも可能であるが、用途によっては、例えば、本実施例の調光装置11を2枚の基材に挟持させて使用したり、基材の片面に貼り付けて使用したりしてもよい。前記基材としては、上記A基板6およびB基板4と同様に、例えば、ガラス,高分子フィルム等を使用することができる。
【0022】
(SPD駆動方法)
次に、駆動方法について説明する。図3は本実施例で検討した駆動方法の説明図である。図3の(I)は本実施例で検討した駆動方法の構成図であり、図3の(II)は本実施例で検討した駆動方法の駆動波形であり、開始期間,サステイン期間,停止期間で構成される。また、図4は各駆動条件におけるSPD内の光調整粒子の状態である。本実施例では、開始期間およびサステイン期間をSPDの駆動期間とするが、懸濁粒子装置の駆動周波数を変える前を駆動期間としてもよい。図4(a)がSPDの停止時(遮光)、図4(b)がSPDの駆動時(駆動中,透過)を示す。
【0023】
開始期間は、調光開始期間、即ち、本実施例では透過動作にあたる。開始期間において、Y電極5またはX電極7に電圧(以下、単に電圧とも記す)VONの交流波形を印加し、X電極7とY電極5の電極間に交流電界を形成する。この交流電界に対し、懸濁液8中の光調整粒子9は、ブラウン運動により配向状態が無秩序状態(ランダム)であったものが、誘電分極等により電界方向に沿うように印加電圧VONに応じて配向する。入射光20は配向した光調整粒子9により変調される。入射光20と電界及び粒子配向方向が同じであれば、入射光20は懸濁液8を透過することができSPDの透過率Tが上昇する。SPDの透過率が上昇する状態を開の状態であるとしている。なお、開始期間の周波数fONは、光調整粒子9が分散媒10内で凝集等せずに一様に配向動作可能な条件であり、光調整粒子9の濃度,誘電率,形状,分散媒10との親和性等、分散媒10の粘度等で決定され、好ましくは1000Hz以下である。開始期間の周波数fONは16Hz以上が望ましいが、これに限られない。また、交流電界を形成する駆動波形は、正弦波、もしくは矩形波(方形波)や三角波からなる交流波形であっても構わない。更に、1/2周期で極性の異なる交流波形をX電極7とY電極5の各々に同時に印加しても構わない。1/2周期で極性の異なる交流波形をX電極7とY電極5の各々に同時に印加することにより、耐圧性の低い回路素子を使用できる。図3ではfONが一定になっているが、fONを変調しても良い。
【0024】
サステイン期間は、調光期間、即ち、本実施例では所定の透過状態維持にあたる。サステイン期間において、Y電極5にサステイン期間の周波数fSを16Hz以上1000Hz以下、望ましくは50Hz以上1000Hz以下で電圧VSの交流波形を印加し、X電極7とY電極5の電極間に交流電界を形成する。開始期間で上昇していたSPDの透過率がほぼ一定になった時がサステイン期間の開始時となる。サステイン期間では所定の電圧VSにおけるSPDの透過率が最大となる。交流電界の周波数fSは、光調整粒子9が電極間の電界方向に配向した状態で維持される周波数以上で駆動する必要があり、臨界融合周波数(CFF;Critical Flicker Frequency)以上であることが望ましく、好ましくは15Hz以上である。図3ではサステイン期間の周波数fSは開始期間の周波数fONと同じにしているが、fSおよびfONを異なる値にしても良い。
【0025】
また、本実施例ではサステイン期間の電圧VSは開始期間の電圧VONと同じとしたが、異なる電圧値としても構わない。サステイン期間での交流波形は、開始期間と同様に、正弦波、もしくは矩形波や三角波であっても構わない。更に、1/2周期で極性の異なる交流波形をX電極7とY電極5の各々に同時に印加しても構わない。
【0026】
停止期間は、調光停止期間、即ち本実施例では遮光動作にあたる。停止期間において、Y電極5およびX電極7へ印加する電圧VOFFを0Vとして、X電極7とY電極5の電極間の交流電圧を0V、即ち等電位とする。これにより、懸濁液8中の光調整粒子9は、電圧VSにより電界方向への所定の配向状態から、ブラウン運動により無秩序状態となり、懸濁液8に入射した光は吸収,散乱されるため、入射光20は透過することができず遮光される。懸濁粒子装置の駆動周波数を変えた時が停止期間の開始時となる。図3では、交流波形の1周期が終了する時を停止期間の開始時としているが、交流波形の1周期以外、例えば、交流波形の1/3周期が終了する時を停止期間の開始時としてもよい。この場合、電圧が印加された状態の電圧でサステイン期間から停止期間に移行するため、停止(透過率低下)動作に早く移行できる。
【0027】
(駆動波形と調光動作応答時間)
図5は、駆動波形の電圧VONとVSを100V、VOFFを0Vとし、fONとfSを50HzとしたときのSPDの駆動方法と電界方向の基板への入射光の透過率Tの関係、即ち調光動作の応答時間を示すグラフである。fOFFは停止期間の周波数を表す。なお、本実施例のSPDにおいて、電圧VONとVSを100Vでは、光調整粒子が電界方向に十分に配向している状態であり、そのためSPDの透過率Tはほぼ最大となっている。
【0028】
図5における駆動波形では、透過率の変動に要する時間は開始期間よりも停止期間の方が長い。一般にこれは、停止期間のブラウン運動による無秩序状態への動作時間が、開始期間において交流電界による光調整粒子の配向動作時間よりも非常に長いためである。
【0029】
そこで、本実施例では、図6(A)のように停止期間のサステイン期間終了直後にVOFFを0Vとせず、図6(B)のように周波数fOFFの交流波形をX電極7とY電極5間に印加する。図6(B)では、停止期間の開始時からfOFFの1/2周期が経過するまでの間VSを印加した後にVOFFを0Vにしている。つまり、懸濁粒子装置の駆動周波数をfOFFに変えた後でVOFFを0Vとしている。これにより、交流信号に追随して透過/遮光動作(明暗変化)する様子の視認を抑えられる。停止期間の周波数fOFFはサステイン期間の周波数fSに対して、fOFF<fSの関係を満たす。
【0030】
図7は、駆動波形の交流波形を矩形波、fSを100Hzとして、停止期間の調光動作応答時間の測定結果であり、縦軸を開始期間前の遮光状態からサステイン期間までの透過率変化を100%とした時の透過率変動率ΔT、横軸を応答時間としている。図7(A)はサステイン期間終了直後にVOFFを0Vとしたとき、図7(B)は本実施例の測定結果を示している。なお、本実施例では、停止期間に図6で示されるVOFFをVSと同値としてfOFFを0.25Hzの交流波形を1/2周期印加している。交流波形が矩形波の場合、停止期間の開始時から前記第一の電極および前記第二の電極の間に印加される交流電圧が0Vになる交流波形の印加を1/2周期以下とすることが望ましい。
【0031】
また、fOFFの上限はCFFであり、下限はVOFFの印加中にSPD構成材料が電気分解等で破壊されず再度駆動させた際にも同等な調光動作を実現できる周波数である。従って、fOFFの範囲はVOFFにもよるが、好ましくは0.010Hz以上15Hz以下、更に好ましくは0.10Hz以上15Hz以下である。
【0032】
図7(B)から、本実施例の駆動波形は、図7(A)と比較して停止期間における透過率低下に要する時間、即ち遮光動作の応答時間が極めて短い。従って、SPDの基本構造を変更することなく、停止期間においてサステイン期間の周波数fSよりも短い停止期間の周波数fOFFの交流波形を印加することにより、停止期間の調光動作が高速であるSPD及び調光装置を得ることができる。
【実施例2】
【0033】
本発明の一実施例について詳細に説明する。本実施例でのSPD構造は実施例1のSPDの構造と同様であり、駆動方法についても停止期間を除いて実施例1と同様である。
【0034】
本実施例では、図6(C)で示されるようにVS(−VS)から0Vとするまでに、一定電圧VOFF,nをX電極7とY電極5間に複数段階(n回ステップ)で印加する。図6(C)では2回ステップで印加しているが、2回以上のステップで印加してもよい。また、本実施例では、時間tに対する透過率低下(|dΔT/dt|)が小さくなった時に電圧を下げている。この場合、VOFF,1の期間をt(VOFF,1)、VOFF,2の期間をt(VOFF,2)とすると、t(VOFF,1)≧t(VOFF,2)となる。このように、透過率低下の変化速度に対応してVOFF,1からVOFF,2に変化させると、停止期間を短縮、つまり、繰返し駆動時における次サイクルへの間隔を短縮できる。
【0035】
図7(C)は本実施例での停止期間の調光動作応答時間の測定結果であり、駆動波形の交流波形を矩形波、サステイン期間にfSを100Hzとして1/2周期で極性の異なる交流波形をX電極7とY電極5の各々に同時に印加し、停止期間ではG.N.Dに対して対称な波形をX電極7とY電極5に印加している。なお、本実施例では、図6(C)において、VOFF,1は√2/2VS、VOFF,2は√2/4VSであり、|VOFF,n|>|VOFF,n+1|の関係にある。
【0036】
図7(C)から、本実施例の駆動波形は、図7(A)と比較して停止期間における透過率低下に要する時間、即ち遮光動作の応答時間が実施例1と同様に極めて短い。従って、SPDの基本構造を変更することなく、停止期間においてサステイン期間に印加している電圧VSから0Vとするまでに複数段階で一定電圧を印加することにより、停止期間の調光動作が高速であるSPD及び調光装置を得ることができる。また、本実施例のように印加電圧のステップ数を増加させることにより、実施例1よりもVOFFを印加する時間が短くなり、SPDを構成する材料の破壊を抑制できる。
【実施例3】
【0037】
本発明の一実施例について詳細に説明する。本実施例でのSPD構造は実施例1のSPDの構造と同様であり、駆動方法についても停止期間を除いて実施例1と同様である。
【0038】
本実施例では、図6(D)で示されるように、VS(−VS)から0Vとなるように鈍波(ランプ波)をX電極7とY電極5間に印加する。鈍波とは、時間に対して印加電圧が徐々に変化する波形をいう。本実施例では、鈍波が印加されている時のX電極7とY電極5の間の電圧をV1、鈍波が印加されている時間をt1、とすると、dV1/dt1はほぼ一定になっている。
【0039】
駆動波形の交流波形を矩形波、fSを100Hzとしたとき、図7(D)は本実施例での停止期間の調光動作応答時間の測定結果を示している。なお、本実施例では、図6(D)において、VSから0Vとする鈍波の傾き(|dV1/dt1|)が20V/sまたは8.0×105V/m・sである。鈍波の傾きの範囲は10V/s以上30V/s以下、または、1.0×105V/m・s以上6.0×106V/m・s以下である。鈍波の傾きの範囲を1.0×105V/m・s以上とすることにより、実施例1と同様に鈍波波形を印加中にSPDを構成する材料が電気分解等で破壊されず、再度駆動させた際にも同等な調光動作を実現できる。
【0040】
図7(D)から、本実施例の駆動波形は、従来駆動と比較して停止期間におけるSPDの透過率低下に要する時間、即ち遮光動作の応答時間が実施例1と同様に極めて短い。従って、SPDの基本構造を変更することなく、停止期間においてサステイン期間に印加している電圧VSを鈍波にて0Vとすることにより、停止期間の調光動作が高速であるSPD及び調光装置を得ることができる。また、実施例2よりもVOFFを印加する時間が短くなり、SPDを構成する材料の破壊を抑制できる。
【実施例4】
【0041】
本発明の実施例について詳細に説明する。本実施例でのSPD構造は前記実施の基本形態1のSPDの構造と同様であり、駆動方法についても停止期間を除いて前記実施の基本形態1と同様である。
【0042】
本実施例では、図6(E)で示されるように停止期間に実施例2と同様に鈍波をX電極7とY電極5間に印加するが、鈍波の傾きがVS(−VS)からVOFF,1と(第一の鈍波)VOFF,1から0V(第二の鈍波)とで異なる。また、傾きの大きさは、VS(−VS)からVOFF,1よりもVOFF,1から0Vの方が大きい。つまり、第一の鈍波が印加されている時のX電極7とY電極5の間の電圧をV1、第一の鈍波が印加されている時間をt1、第二の鈍波が印加されている時のX電極7とY電極5の間の電圧をV2、第二の鈍波が印加されている時間をt2、とした時、|dV1/dt1|<|dV2/dt2|を満たす。図6(E)では鈍波の傾きを一回だけ変えているが、複数回変えても良い。傾きを変える回数を増やすことにより停止期間を短縮できる。
【0043】
本実施例では、透過率低下(|dΔT/dt|)が小さくなった時に電圧を下げている。この場合、VS(−VS)からVOFF,1までの期間をt(VS→VOFF,1)、VOFF,1から0Vまでの期間をt(VOFF,1→0V)とすると、t(VS→VOFF,1)≧t(VOFF,1→0V)となる。これにより、SPD構成材料の電気分解を抑制し、停止期間を短縮できる。
【0044】
図7(E)は本実施例での停止期間の調光動作応答時間の測定結果であり、駆動波形の交流波形を矩形波、サステイン期間にfSを100Hzとして1/2周期で極性の異なる交流波形をX電極7とY電極5の各々に同時に印加し、停止期間ではG.N.Dに対して対称な波形をX電極とY電極に印加している。なお、本実施例では、鈍波の傾きがVSからVOFF,1では20V/sまたは8.0×105V/m・s、VOFF,1から0Vでは100V/sまたは4.0×106V/m・sであり、VOFF,1は1/2VSである。
【0045】
図7(E)から、本実施例の駆動波形は、図7(A)と比較して停止期間における透過率低下に要する時間、即ち遮光動作の応答時間が実施例1から3と同様に極めて短い。従って、SPDの基本構造を変更することなく、停止期間においてサステイン期間に印加している電圧VSを鈍波にて0Vとすることにより、停止期間の調光動作が高速であるSPD及び調光装置を得ることができる。また、実施例3よりも停止期間が短くなる。
【実施例5】
【0046】
本発明の一実施例について詳細に説明する。本実施例でのSPD構造は実施例1のSPDの構造と同様であり、駆動方法についても停止期間を除いて実施例1と同様である。
【0047】
本実施例では、図6(F)で示されるように停止期間に実施例3と同様に鈍波をX電極7とY電極5間に印加するが、鈍波の印加時間はVS(−VS)からVOFF,1となるまでであり、VOFF,1到達後、つまりの鈍波によってX電極7とY電極5間に印加される交流電圧を0Vとする前に0Vとする。図6(F)では、透過率停止速度が遅くなった時にX電極7およびY電極5の電圧を0Vとしている。
【0048】
駆動波形の交流波形を矩形波、fSを100Hzとしたとき、図7(F)は本実施例での停止期間の調光動作応答時間の測定結果を示している。なお、本実施例では、VSからVOFF,1とする鈍波の傾きが20V/sまたは8.0×105V/m・sであり、VOFF,1は70Vである。なお、傾きの範囲は、10V/s以上30V/s以下または1.0×105V/m・s以上6.0×106V/m・s以下であり、下限は実施例1と同様に鈍波波形を印加中にSPD構成材料が電気分解等で破壊されず再度駆動させた際にも同等な調光動作を実現できる傾きである。
【0049】
図7(F)から、本実施例の駆動波形は、従来駆動と比較して停止期間における透過率低下、即ち遮光動作の応答時間が実施例1と同様に極めて短い。従って、鈍波の印加時間は実施例3よりも短いことから、例えば調光動作を再び行う場合に、すぐに開始期間の電圧Vfを印加することができる。また、実施例4よりも停止期間が短くなる。
【実施例6】
【0050】
本実施例のSPDの構成は、基本的に実施例1に記載のSPDの構成と同様である。実施例1と異なる点は、B板2およびA板3の間に調光層17が挟持されている点である。
【0051】
(SPD)
図8に本発明の実施の基本形態のSPDの基本構造を示す。懸濁粒子装置(SPD)1は、B板2,A板3および調光層17を有する。B板2はB基板4およびY電極5を含む。A板3はA基板6およびX電極7を含む。
【0052】
調光層17は懸濁液8と樹脂マトリックス16とを含む。調光層17の厚みは、5μm以上1,000μm以下が好ましく、20μm以上100μm以下がより好ましい。
【0053】
懸濁液8は光調整粒子9および分散媒10を含む。樹脂マトリックス16中に懸濁液8が分散されている。樹脂マトリックス16中に分散されている懸濁液8の大きさ(平均液滴径)は、通常0.5μm以上100μm以下、好ましくは0.5μm以上20μm以下、より好ましくは1μm以上5μm以下である。
【0054】
懸濁液8は、光調整粒子9が1重量%以上70重量%以下及び分散媒10が重量%以上99重量%以下からなることが好ましく、光調整粒子9が4重量%以上50重量%以下及び分散媒10が50重量%以上96重量%以下からなることがより好ましい。
【0055】
樹脂マトリックス16は、加熱や感光により硬化する高分子であり、フィルム化におけるA基板6,B基板4および懸濁液8を保持し、X電極7およびY電極5の間を絶縁する。硬化する高分子媒体としては、例えば、重合開始剤及び硬化する高分子化合物を含む高分子組成物が挙げられる。本実施例では光重合開始剤及び高分子化合物シリコーン樹脂を含む液状の高分子組成物を用いている。シリコーン樹脂は、例えば、両末端シラノールポリジメチルシロキサン,両末端シラノールポリジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー,両末端シラノールポリジメチルジフェニルシロキサン等の両末端シラノールシロキサンポリマー,トリメチルエトキシシラン等のトリアルキルアルコキシシラン,(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン等のエチレン性不飽和結合含有シラン化合物などを、2−エチルヘキサン錫等の有機錫系触媒の存在下で、脱水素縮合反応及び脱アルコール反応させて合成される。シリコーン樹脂の形態としては、無溶剤型が好ましく用いられる。すなわち、シリコーン樹脂の合成に溶剤を用いた場合には、合成反応後に溶剤を除去することが好ましい。
【0056】
樹脂マトリックス16の屈折率と分散媒10の屈折率は近い方が好ましい。具体的には、樹脂マトリックス16の屈折率と分散媒10の屈折率との差が0.002以下であることが望ましい。これにより、調光層17内での樹脂マトリックス16と分散媒10の散乱を抑制できる。分散媒10としては、電気導電性がなく、樹脂マトリックス16とは親和性がない液状共重合体を使用することが好ましい。具体的には、フルオロ基及び/又は水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーが好ましく、フルオロ基及び水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーがより好ましい。このような共重合体を使用すると、フルオロ基,水酸基のどちらか1つのモノマー単位は光調整粒子9に向き、残りのモノマー単位は樹脂マトリックス16中で懸濁液8が安定に維持するために働くことから、懸濁液8内に光調整粒子9が非常に均質に分散され、相分離の際に光調整粒子9が相分離される懸濁液8内に誘導される。
【0057】
次に、調光層17の形成方法について説明する。まず、懸濁液8と高分子化合物を混合し、高分子化合物中に懸濁液8が液滴状態で分散した混合液を作製する。この混合液をA基板6またはB基板4の一方の基板の電極上に一定の厚さで塗布し、必要に応じて混合液中に含まれる溶剤を乾燥除去する。その後、もう一方の基板にある電極が塗布した混合液に接するように、もう一方の基板を一方の基板に重ねて密着させる。
【0058】
塗布する際は、必要に応じて、適当な溶剤で希釈してもよい。溶剤を用いた場合には、A基板6またはB基板4の上に塗布した後に乾燥を要する。溶剤としては、テトラヒドロフラン,トルエン,ヘプタン,シクロヘキサン,エチルアセテート,エタノール,メタノール,酢酸イソアミル,酢酸ヘキシル等を用いることができる。液状の懸濁液8が、樹脂マトリックス16中に微細な液滴形態で分散されている調光フィルムを形成するためには、本実施例の調光材料をホモジナイザー,超音波ホモジナイザー等で混合して樹脂マトリックス16中に懸濁液8を微細に分散させる方法,樹脂マトリックス16中のシリコーン樹脂成分の重合による相分離法,溶媒揮発による相分離法、又は温度による相分離法等を利用することができる。
【0059】
この状態でエネルギー線を照射して高分子組成物を硬化させることで、樹脂マトリックス16中に液滴状態で懸濁液8が分散した調光層17を有するフィルム状のSPDが得られる。
【0060】
(駆動波形と調光動作応答時間)
図3で示される駆動方法を用いて、駆動波形の電圧VONとVSを100V、VOFFを0Vとし、fONとfSを50HzとしたときのSPDの駆動方法と電界方向の基板への入射光の透過率の関係、即ち調光動作の応答時間を図9に示す。なお、本実施例のSPDは、電圧VSを100Vとした時にサステイン期間中の透過率がほぼ最大となっている。
【0061】
図9における駆動方法では、透過率の変動に要する時間が図5と同様に開始期間よりも停止期間の方が長い。そこで、本実施例では、実施例1と同様の駆動方法を用いる。
【0062】
図10(i)は、駆動波形の交流波形を矩形波、fSを100Hzとして、停止期間の調光動作応答時間の測定結果である。また、図10(ii)は本実施例での停止期間の調光動作応答時間の測定結果であり、駆動波形の交流波形を矩形波、サステイン期間にfSを100Hzとして1/2周期で極性の異なる交流波形をX電極7とY電極5の各々に同時に印加し、停止期間ではG.N.Dに対して対称な波形をX電極7とY電極5に印加している。図10(i)および図10(ii)において、(a)はサステイン期間終了直後にVOFFを0Vとしたとき、(b)は本実施例の測定結果を示している。
【0063】
なお、本実施例では、停止期間に図6で示されるVOFFをVSとしてfOFFを0.25Hzの交流波形を1/2周期印加している。また、fOFFの上限はCFFであり、下限はVOFFの印加中にSPD構成材料が電気分解等で破壊されず再度駆動させた際にも同等な調光動作を実現できる周波数である。従って、fOFFの範囲はVOFFにもよるが、好ましくは0.010Hz以上15Hz以下、更に好ましくは0.10Hz以上15Hz以下である。
【0064】
図10(i)から、本実施例の駆動波形は、従来の駆動方法と比較して停止期間における透過率低下に要する時間、即ち遮光動作の応答時間が極めて短い。従って、SPDの基本構造を変更することなく、停止期間においてサステイン期間の周波数fSよりも短い周波数fOFFの交流波形を印加することにより、停止期間の調光動作が高速であるフィルム状のSPD及び調光装置を得ることができる。
【実施例7】
【0065】
本発明の実施例について詳細に説明する。本実施例でのSPD構造は実施例6と同様であり、停止期間における駆動方法は実施例3と同様である。また、停止期間を除く各期間の駆動方法は実施例6と同様である。
【0066】
図10(i)および図10(ii)における(c)は、本実施例での停止期間の調光動作応答時間の測定結果を示している。なお、本実施例では、VSから0Vとする鈍波の傾きが20V/sまたは8.0×105V/m・sである。なお、傾きの範囲は、10V/s以上30V/s以下または1.0×105V/m・s以上6.0×106V/m・s以下であり、下限は実施例1と同様に鈍波波形を印加中にSPD構成材料が電気分解等で破壊されず再度駆動させた際にも同等な調光動作を実現できる傾きである。
【0067】
図10(i)および図10(ii)から、本実施例の駆動波形は、図10(i)および図10(ii)における(a)と比較して停止期間における透過率低下に要する時間、即ち遮光動作の応答時間が実施例6と同様に極めて短い。従って、SPDの基本構造を変更することなく、停止期間においてサステイン期間に印加している電圧Vsを鈍波にて0Vとすることにより、停止期間の調光動作が高速であるフィルム状のSPD及び調光装置を得ることができる。
【実施例8】
【0068】
図11は、一実施形態の懸濁粒子装置を用いた撮像素子の説明図である。図11において、101は撮像素子、102は駆動回路、103は同期信号生成部、104は加算器、105はアナログインターフェース、106は電源インターフェースである。撮像素子101に本発明のSPD及び調光装置が含まれている。
【0069】
駆動回路102で駆動される撮像素子101の出力信号は加算器104に供給される。
また、駆動回路102の出力信号をもとにして生成された同期信号生成部103の出力信号も加算器104に供給される。加算器104の出力信号はアナログインターフェース105に供給される。電源インターフェース106は外部より本カメラに電源を供給する。
【0070】
次に、その動作について説明する。駆動回路102で生成されたパルス信号を基準にして、外部と本カメラで水平方向,垂直方向の同期を取るための同期信号と、撮像素子101の画素周期を表す同期信号を、同期信号生成部103で生成する。同期信号生成部103で生成された同期信号と撮像素子101の画素周期を表す信号は、加算器104によって、ブランキング期間中など映像に直接関係ない部分で、撮像素子101の出力信号に重畳される。加算器104の出力信号はアナログインターフェース105を介して外部に出力される。
【符号の説明】
【0071】
1 懸濁粒子装置(SPD)
2 B板
3 A板
4 B基板
5 Y電極
6 A基板
7 X電極
8 懸濁液
9 光調整粒子
10 分散媒
11 調光装置
12 駆動制御回路
13 駆動電源
14 信号処理回路
15 駆動装置
16 樹脂マトリックス
17 調光層
20 入射光
101 撮像素子
102 駆動回路
103 同期信号生成部
104 加算器
105 アナログインターフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の基板および第二の基板と、
前記第一の基板および前記第二の基板の間に配置された第一の電極,第二の電極および懸濁液と、を有する懸濁粒子装置であって、
前記懸濁液は、粒子および分散媒を含み、
前記分散媒中に前記粒子が分散され、
前記第一の電極および前記第二の電極の間に印加される交流電圧により前記粒子の配向が制御され、
前記懸濁粒子装置の駆動期間における交流電圧の周波数をa(Hz)、前記懸濁粒子装置の停止期間における交流電圧の周波数をb(Hz)としたとき、a>bを満たす懸濁粒子装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第一の基板および前記第二の基板の間に樹脂が含まれ、
前記樹脂中に前記懸濁液が分散されている懸濁粒子装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記粒子は、光学的異方性を有していることを特徴とする懸濁粒子装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記粒子は、棒状であり、
前記粒子のアスペクト比は、5以上30以下であることを特徴とする懸濁粒子装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記粒子は、ポリ過ヨウ化物,炭素系材料,金属材料または無機化合物のいずれか一つ以上である懸濁粒子装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記粒子は、前記懸濁粒子装置の駆動期間における交流電圧により配向分極することを特徴とする懸濁粒子装置。
【請求項7】
請求項1において、
aは、16以上1000以下であることを特徴とする懸濁粒子装置。
【請求項8】
請求項1において、
bは、0.010以上15以下である懸濁粒子装置。
【請求項9】
請求項1において、
前記懸濁粒子装置の停止期間において、前記第一の電極および前記第二の電極の間に第一の交流電圧が印加され、
前記第一の交流電圧が印加された後に、前記第一の電極および前記第二の電極の間に第二の交流電圧が印加され、
前記第一の交流電圧をV1、前記第二の交流電圧をV2とした時、|V1|>|V2|を満たす懸濁粒子装置。
【請求項10】
請求項1において、
前記懸濁粒子装置の停止期間において、前記第一の電極および前記第二の電極の間に第一の鈍波が印加され、
前記第一の鈍波が印加されている時の前記第一の電極および前記第二の電極の間の交流電圧をV1、前記第一の鈍波が印加されている時間をt1、としたとき
|dV1/dt1|は一定である懸濁粒子装置。
【請求項11】
請求項1において、
前記懸濁粒子装置の停止期間において、前記第一の電極および前記第二の電極の間に第一の鈍波が印加された後に、前記第一の電極および前記第二の電極の間に第二の鈍波が印加され、
前記第一の鈍波が印加されている時の前記第一の電極および前記第二の電極の間の交流電圧をV1、前記第一の鈍波が印加されている時間をt1
前記第二の鈍波が印加されている時の前記第一の電極および前記第二の電極の間の交流電圧をV2、前記第二の鈍波が印加されている時間をt2、とした時、
|dV1/dt1|<|dV2/dt2|を満たす懸濁粒子装置。
【請求項12】
請求項1において、
前記懸濁粒子装置の停止期間において、前記第一の電極および前記第二の電極の間に第一の鈍波が印加された後であり、前記第一の鈍波によって前記第一の電極および前記第二の電極の間に印加される交流電圧を0Vとする前に、前記第一の電極および前記第二の電極の間の電圧を0Vにする懸濁粒子装置。
【請求項13】
第一の基板および第二の基板と、
前記第一の基板および前記第二の基板の間に配置された第一の電極,第二の電極および懸濁液と、を有する懸濁粒子装置の駆動方法であって、
前記懸濁液は、粒子および分散媒を含み、
前記分散媒中に前記粒子が分散され、
前記第一の電極および前記第二の電極の間に印加される交流電圧により前記粒子の配向が制御され、
信号処理回路によって前記第一の電極および前記第二の電極の間に印加される交流電圧および交流電圧の周波数が変えられ、
前記懸濁粒子装置の駆動期間における前記交流電圧の周波数をa(Hz)、前記懸濁粒子装置の停止期間における前記交流電圧の周波数をb(Hz)としたとき、a>bを満たす懸濁粒子装置の駆動方法。
【請求項14】
請求項13において、
前記懸濁粒子装置の停止期間の開始時から前記第一の電極および前記第二の電極の間に印加される交流電圧が0Vになる交流電圧の周期が1/2周期以下であることを特徴とする懸濁粒子装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−137575(P2012−137575A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289089(P2010−289089)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】