説明

成分検出器の洗浄装置

【課題】本発明は、汚水中に浸かっているセンサー部を無動力で洗浄でき、保守・管理が容易となるとともに、汚水中の溶存成分をリアルタイムで正確に計測できる成分検出器の洗浄装置を得ることにある。
【解決手段】洗浄装置は、流動する汚水中に浸漬された先端部(8a)を有するセンサーホルダ(8)と、センサーホルダ(8)の先端部(8a)に設けられて汚水中の溶存成分を検出するセンサー部(10)と、を含む成分検出器(7)に適用される。洗浄装置は、センサーホルダ(8)に固定された円筒状の固定部(13)と、汚水に浸かるように固定部(13)の外周面に装着され、汚水の流れを受けて固定部(13)の軸方向に往復移動する可動部(14)と、センサー部(10)を含むセンサーホルダ(8)の先端部(8a)の外周面に摺動可能に接触する洗浄体(15)と、を備えている。洗浄体(15)は、可動部(14)の動きに追従してセンサーホルダ(8)の先端部(8a)の外周面に沿って往復移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば汚水中の溶存酸素を検出する成分検出器に適用される洗浄装置に係り、特に常時汚水に浸かっている成分検出器のセンサー部を無動力で洗浄するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭から排出される下水あるいは工場排水のような汚濁物質を含む汚水は、活性汚泥法を利用した処理装置によって浄水処理されている。活性汚泥法では、微生物が有機物を分解するのに必要な酸素量を適正に保つために、汚水中に溶けている酸素量を計測している。
【0003】
汚水中の溶存酸素を計測するための溶存酸素計は、そのセンサー部が常時汚水に浸かっているため、センサー部に汚水中に含まれる汚濁物質が付着するのを否めない。このため、センサー部が早期のうちに汚れてしまい、正確な酸素量を計測することが困難となる。
【0004】
このセンサー部の汚れを防止するため、従来では、例えば特許文献1に開示されているように、汚水に浸かっているセンサー部に加圧された水や空気を吹き付け、センサー部を強制的に洗浄することが行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭52−132891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水や空気を利用する従来の洗浄方式では、水や空気を加圧するポンプのような専用の動力源を必要とするのは勿論のこと、水や空気を噴射するノズル、ノズルとポンプとの間を接続する配管および圧力調整用の調整弁のような数多くの付属品を必要とする。
【0007】
そのため、センサー部を洗浄するための装置の構成が複雑化するのを避けられず、コスト高を招く要因となるとともに、洗浄性能を維持するための保守・管理に手間を要するといった問題がある。
【0008】
さらに、センサー部に加圧された空気を吹き付ける洗浄方式では、センサー部に空気中に含まれる余分な酸素が供給されるので、汚水中の酸素量を示すDO値が高くなる。この結果、センサー部を洗浄している期間中は、汚水中の酸素量を正確に計測することができないとともに、DO値が本来の汚水中の酸素量を示す正常な値に戻るまで少なくとも30分程度の時間を必要とする。
【0009】
したがって、実際の汚水中の酸素量をリアルタイムで計測することが困難となり、微生物を活性化させる酸素量を適性に保つ上での妨げとなるといった不具合がある。
【0010】
本発明の目的は、汚水中に浸かっているセンサー部を、汚水の流れを利用して無動力で洗浄することができ、保守・管理が容易となるとともに、実際の汚水中の溶存成分をリアルタイムで正確に計測できる成分検出器の洗浄装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の一つの形態に係る洗浄装置は、
流動する汚水中に浸漬された先端部を有するセンサーホルダと、センサーホルダの先端部に設けられて汚水中の溶存成分を検出するセンサー部と、を含む成分検出器に適用される。
洗浄装置は、センサーホルダに固定された円筒状の固定部と、汚水に浸かるように前記固定部の外周面に装着され、汚水の流れを受けて前記固定部の軸方向に往復移動する可動部と、前記センサー部を含む前記センサーホルダの先端部の外周面に摺動可能に接触する洗浄体と、を備えている。前記洗浄体は、前記可動部の動きに追従して前記センサーホルダの先端部の外周面に沿って往復移動することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、洗浄体が汚水の流れに応じて往復移動することで、センサーホルダの先端部の外周面に付着した汚れを強制的に掻き落とす。このため、ポンプやモータのような専用の動力源が不要となるばかりでなく、水や空気を噴射するノズルおよび配管類も省略することができる。よって、洗浄装置の構成を簡素化してコストを低減できるとともに、洗浄装置の保守・管理が容易となる。
【0013】
さらに、センサー部に空気中の余分な酸素が供給されずに済むので、センサー部の洗浄中であっても汚水中の溶存成分を正確に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る酸素活性汚泥法を適用した汚水浄化処理装置を概略的に示す側面図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る洗浄装置の断面図。
【図3】本発明の第1の実施の形態において、可動部が第1の位置から第2の位置に移動した状態を示す洗浄装置の
【図4】図2のF4-F4線に沿う断面図。
【図5】図2のF5-F5線の方向から見た正面図。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る洗浄装置の断面図。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係る洗浄装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明の第1の実施の形態を図1ないし図5に基づいて説明する。
【0016】
図1は、酸素活性汚泥法を適用した汚水浄化処理装置1の一例を示している。汚水浄化処理装置1は、例えば家庭から排出される下水あるいは工場排水が投入される密閉型の処理槽2を備えている。処理槽2は、本体2aと、この本体2aの開口端を密閉する上蓋2bとを有している。処理槽2内に投入された汚水の液面Aは、上蓋2bよりも下方に位置している。汚水の液面Aと上蓋2bとの間の空間Sは、酸素供給管3を介して酸素発生装置4に接続されている。本実施の形態では、酸素発生装置4は、例えば純度90%の酸素を処理槽2の空間Sに供給している。
【0017】
空間Sに供給された高純度の酸素は、液面Aから汚水中に溶け込む。これにより、処理槽2の中の微生物が活性化されて汚水中の汚濁物質を餌として増殖し、汚水を浄化する。高純度の酸素を利用して微生物を活性化させる酸素活性汚泥法は、標準活性汚泥法に比べて単位時間当たりの汚水の処理量が数倍となり、短時間のうちに効率よく汚水を浄化することができる。さらに、酸素活性汚泥法を採用した汚水浄化処理装置1によると、処理槽2に投入された汚水は、処理槽2の内部を図2の矢印Bで示す方向に流れている。
【0018】
図1に示すように、処理槽2の上蓋2bに保護筒5が取り付けられている。保護筒5は、上蓋2bを貫通して本体2a内に導かれている。保護筒5は、処理槽2に対し垂直に起立しているとともに、その下端開口部が汚水の中に浸かっている。
【0019】
保護筒5の内側に汚水中の溶存酸素を検出するための溶存酸素計7が挿入されている。溶存酸素計7は、汚水に溶け込んだ溶存成分を検出する成分検出器の一例であって、センサーホルダ8とセンサーユニット9とを備えている。
【0020】
センサーホルダ8は、真っ直ぐな円筒状であり、垂直に起立されている。センサーホルダ8の下端に位置する先端部8aは、下向きに開口されて汚水の中に浸かっている。
【0021】
センサーユニット9は、センサーホルダ8の先端部8aの内側に収容されている。センサーユニット9は、汚水中の溶存酸素を計測するセンサー部10を備えている。センサー部10は、センサーホルダ8の先端部8aから処理槽2の内部に露出されて、常時汚水に浸かっている。センサー部10は、計測された酸素濃度に対応するような電気信号を発する。センサー部10の電気信号は、センサー部10に接続された図示しないリード線を通じて処理槽2の外に設けられた指示装置11に送出される。リード線は、センサーホルダ8の内側を通して処理槽2の外に導かれている。
【0022】
図2ないし図5に示すように、溶存酸素計7のセンサーホルダ8に洗浄装置12が取り付けられている。洗浄装置12は、センサー部10を有するセンサーホルダ8の先端部8aを洗浄するためのものであって、固定部13、可動部14および洗浄リング15を備えている。
【0023】
固定部12は、中空の円筒状であり、センサーホルダ8の外周面に同軸状に固定されている。本実施の形態では、センサーホルダ8の先端部8aが固定部13よりも下方に突出されているとともに、固定部12の下端がセンサーホルダ8の先端部8aの上端に固定したストッパリング16によって下から支えられている。さらに、固定部12の上端にスプリング受け17が固定されている。スプリング受け17は、固定部12の外周面よりも径方向外側に張り出している。
【0024】
可動部14は、本体18と複数の羽根19とを備えている。本体18は、中空の円筒状であり、本体18の全長は、固定部12の全長よりも短くなっている。本体18は、固定部13の外周面に同軸状に装着されて、固定部13の周方向に回転可能であるとともに、固定部13の軸方向に移動可能となっている。
【0025】
羽根19は、本体18の外周面に一体に形成されている。羽根19は、本体18の周方向に間隔を存して配列されているとともに、汚水の流れを受け止めるように本体19から放射状に突出されている。そのため、可動部14は、汚水の流れに追従するように汚水中で固定部13の周方向に回転する。
【0026】
図2および図4に示すように、固定部13と可動部14との間に、可動部14の回転運動を固定部13の軸方向に沿う往復直線運動に変換する変換機構21が配置されている。変換機構21は、固定部13の外周面に形成されたガイド溝22と、可動部14の内周面に保持された球体23とを備えている。
【0027】
ガイド溝22は、螺旋部24と直線部25とで構成されている。螺旋部24は、固定部13の外周面を一周しているとともに、始端24aおよび終端24bを有している。始端24aは、固定部13の下端に位置されてセンサーホルダ8の先端部8aと隣り合っている。終端24bは、始端24aから固定部13の軸方向に離れているとともに、始端24aの上方に位置されている。
【0028】
直線部25は、螺旋部24の始端24aと終端24bとの間を結ぶように、固定部13の軸方向に延びている。さらに、直線部25は、可動部14の中心線O1に対し可動部14の回転方向に所定の角度αで傾いており、この角度αは5°程度とすることが望ましい。
【0029】
前記球体23は、可動部14の本体18の内周面に形成した凹部26に回転自在に保持されている。球体23は、本体18の内周面から突出されて、前記ガイド溝22に回転自在に嵌まり込んでいる。
【0030】
このため、可動部14が汚水の流れを受けて回転すると、球体23がガイド溝22の螺旋部24に沿って移動する。これにより、可動部14は、固定部13の周方向に回転しつつ、この固定部13の軸方向に移動する。
【0031】
すなわち、可動部14は、螺旋部24の始端24aに対応する第1の位置と、螺旋部24の終端24bに対応する第2の位置との間で固定部13の軸方向に往復移動が可能となっている。
【0032】
図2は、可動部14が第1の位置に移動された状態を開示している。第1の位置では、球体23が螺旋部24の始端24aに導かれるとともに、可動部14の下端がストッパリング16に突き当たっている。図3は、可動部14が第2の位置に移動された状態を開示している。第2の位置では、球体23が螺旋部24の終端24bに導かれるとともに、可動部14がストッパリング16とスプリング受け17との間に位置されている。
【0033】
本実施の形態によると、固定部13のスプリング受け17と可動部14の上端との間に圧縮コイルスプリング28が架設されている。圧縮コイルスプリング28は、可動部14を常に第1の位置に向けて弾性的に付勢している。
【0034】
これにより、可動部14の回転に伴って可動部14が第1の位置から第2の位置に向けて移動すると、圧縮コイルスプリング28が次第に圧縮される。可動部14が第2の位置に達すると、圧縮コイルスプリング28の圧縮が解除されて、圧縮コイルスプリング28が一気に伸長する。そのため、球体23がガイド溝22の直線部25に沿って移動し、可動部14が第2の位置から第1の位置に向けて勢いよく降下する。
【0035】
前記洗浄リング15は、洗浄体の一例であり、例えば前記センサーホルダ8よりも柔軟な合成樹脂材料で形成されている。洗浄リング15は、センサーホルダ8の先端部8aを周方向に連続して取り囲んでいるとともに、先端部8aの外周面に摺動可能に接している。
【0036】
洗浄リング15は、その径方向に対向し合う二箇所が支持ステー29a,29bを介して可動部14の本体18の下端に連結されている。このため、洗浄リング15は、可動部14の動きに追従してセンサーホルダ8の先端部8aの外周面の上で回転しつつ、先端部8aの軸方向に往復移動するようになっている。
【0037】
具体的には、可動部14が第1の位置に達した状態では、洗浄リング15はセンサーホルダ8の先端部8aの外周面の下端に移動されて、センサー部10の周囲に位置されている。さらに、可動部14が第2の位置に達した状態では、洗浄リング15はセンサーホルダ8の先端部8aの外周面の上端に位置されている。
【0038】
次に、洗浄装置12の動作について説明する。
【0039】
図1に示すように、洗浄装置12は、処理槽2内を矢印B方向に流動する汚水に浸かっている。洗浄装置12の可動部14は、汚水の流れを受ける羽根19を有するので、可動部14が汚水に浸かった状態で回転する。この可動部14の回転により、球体23がガイド溝22の螺旋部24に沿って移動する。
【0040】
この結果、可動部14が圧縮コイルスプリング28の付勢力に抗して第1の位置から第2の位置に向けて固定部13の軸方向に移動する。それとともに、可動部14に連結された洗浄リング15がセンサーホルダ8の先端部8aの外周面の下端から回転を伴いながら上昇する。
【0041】
可動部14の球体23が螺旋部24の終端24bに達した時点で圧縮コイルスプリング28の圧縮量が最大となる。このため、可動部14の回転に伴い球体23が螺旋部24の終端24bから直線部25に乗り移ると、圧縮コイルスプリング28の付勢力により可動部14が第2の位置から第1の位置に向けて強制的に押し下げられる。それとともに、可動部14に連結された洗浄リング15がセンサーホルダ8の先端部8aの外周面の上端から下端に向けて勢いよく降下する。
【0042】
このような洗浄装置12によれば、洗浄リング15は、センサーホルダ8の先端部8aの周方向に回転しながら先端部8aの軸方向に往復移動し、この移動によりセンサーホルダ8の先端部8aに付着した汚れを強制的に掻き落とす。センサーホルダ8の先端部8aの汚れが剥離されると、この事がきっかけとなって、先端部8aからセンサー部10に亘って付着した汚れが次々と剥離される。
【0043】
加えて、洗浄リング15の往復移動は、汚水の流れが継続している限り繰り返し実行される。これにより、センサーホルダ8の先端部8aの外周面やセンサー部10に汚れが付着し難くなるとともに、汚れの成長が確実に阻止される。
【0044】
したがって、センサー部10の洗浄効果が高まり、微生物を活性化させるために必要な汚水中の溶存酸素を正確に計測することができる。特に、センサーホルダ8の先端部8aの汚れを洗浄リング15で強制的に剥離させる構成は、単位時間当たりの汚水の処理量が多くて溶存酸素計7のセンサー部10が汚れ易い環境にある酸素活性汚泥法を適用した汚水浄化処理装置1に好適する。
【0045】
さらに、洗浄リング15は、汚水の流れを受けて動く可動部14によって駆動されるので、ポンプやモータのような専用の動力源が不要となるのは勿論のこと、水や空気を噴射するノズルおよび配管類も省略することができる。よって、洗浄装置12の構成を簡素化して安価に提供できるとともに、洗浄装置12の保守・管理を容易に行なうことができる。
【0046】
加えて、センサー部10に空気中の余分な酸素が供給されずに済むので、センサー部10を洗浄している最中であっても、汚水中の溶存酸素をセンサー部10で正確に計測することができる。この結果、汚水中の実際の溶存酸素をリアルタイムで計測することが可能となり、微生物を活性化させる酸素量を適性に保つ上で有利となる。
【0047】
それとともに、第1の実施の形態では、ガイド溝22の直線部25を可動部14の回転方向に5°程度傾けている。そのため、ガイド溝22の螺旋部24に沿って移動してきた球体23が螺旋部24の終端24bから直線部25に乗り移った時に、球体23は、直線部25に引っ掛かることなく直線部25をスムースに通過する。
【0048】
このため、可動部14の動きがぎくしゃくすることもなく、洗浄リング15の動作が安定するといった利点がある。
【0049】
本発明は、前記第1の実施の形態に特定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施可能である。
【0050】
例えば、前記第1の実施の形態では、可動部の内側面にガイド溝に回転自在に嵌まり合う球体を設けているが、この球体の代わりにガイド溝に摺動可能に嵌合する凸部を設けてもよい。
【0051】
さらに、洗浄体にしても合成樹脂製の洗浄リングに限らない。例えば、可動部に追従して動くリング状のフレームでセンサーホルダの先端を取り囲むとともに、フレームの内周面にクリーンブラシを取り付け、このクリーンブラシの先端でセンサーホルダの先端部の外周面に付着した汚れを掻き落とすようにしてもよい。
【0052】
図6は、本発明の第2の実施の形態を開示している。
第2の実施の形態は、固定部のガイド溝を汚水から隔離するようにした点が前記第1の実施の形態と相違している。これ以外の洗浄装置の構成は前記第1の実施の形態と同様である。そのため、第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0053】
第2の実施の形態では、固定部13の軸方向に沿う長さが前記第1の実施の形態の固定部13よりも長く設定されている。固定部13のガイド溝22は、固定部13の軸方向に沿う中間部に形成されている。
【0054】
固定部13を同軸状に取り囲む可動部14は、第1の端部30aと第2の端部30bとを有している。第1の端部30aは、可動部14の軸方向に沿う一端に位置している。第2の端部30bは、第1の端部30aに対し可動部14の軸方向に沿う反対側の他端に位置している。
【0055】
可動部14の第1の端部30aの内周面に第1の溝31が形成されている。第1の溝31は、可動部14の周方向に連続している。Oリングのような第1のシール材32が第1の溝31に装着されている。第1のシール材32は、固定部13の外周面に摺動可能に接することで、可動部14の第1の端部30aと固定部13との間を液密に密封している。
【0056】
同様に、可動部14の第2の端部30bの内周面に第2の溝33が形成されている。第2の溝33は、可動部14の周方向に連続している。Oリングのような第2のシール材34が第2の溝33に装着されている。第2のシール材34は、固定部13の外周面に摺動可能に接することで、可動部14の第2の端部30bと固定部13との間を液密に密封している。
【0057】
本実施の形態では、固定部13の外周面に開口するガイド溝22は、可動部14が第1の位置および第2の位置のいずれに移動された状態でも、第1のシール材32と第2のシール材34との間に位置されている。そのため、ガイド溝22は、汚水中に露出することなく常に可動部14によって液密にシールされている。
【0058】
このような第2の実施の形態によると、洗浄装置12が常に汚水に浸かっているにも拘らず、汚水がガイド溝22に侵入するのを防止できる。このため、例えば汚水中に含まれる固形状の汚濁物質がガイド溝22の内面に付着したり、ガイド溝22を閉ざすことはなく、可動部14の回転時に球体23がガイド溝22に沿って滑らかに移動する。
【0059】
よって、可動部14および洗浄リング15を汚水中で確実に動作させることができるといった利点がある。
【0060】
図7は、本発明の第3の実施の形態を開示している。
【0061】
第3の実施の形態は、固定部のガイド溝の構成が前記第1の実施の形態と相違しており、洗浄装置の基本的な構成は第1の実施の形態と同様である。
【0062】
図7に示すように、固定部13の外周面に形成されたガイド溝41は、第1の溝部42と第2の溝部43とを備えている。第1の溝部42は、固定部13の外周面を半周するように、ストッパリング16の近傍から上向きの滑らかな円弧を描いて固定部13の上方に延びている。そのため、第1の溝部42の始端42aは、固定部13の下端に位置し、第1の溝部42の終端42bは、始端42aよりも上方に位置されている。
【0063】
第2の溝部43は、第1の溝部42に対し固定部13を間に挟んだ反対側に位置されている。第2の溝部43は、固定部13の外周面を半周するように、第1の溝部42の始端42aと終端42bとの間を結んでいる。すなわち、第2の溝部43は、第1の溝部42の終端42bから下向きの滑らかな円弧を描いて第1の溝部42の始端42aにまで達している。
【0064】
このような第3の実施の形態によると、可動部14の球体23は、可動部14の回転に追従してガイド溝41の第1の溝部42に沿って上昇する。球体23が第1の溝部42の終端42bから第2の溝部43に乗り移ると、球体23はガイド溝41の第2の溝部43に沿って降下する。
【0065】
したがって、可動部14は、第1および第2の溝部42,43の形に応じた往復運動を実行することになり、この可動部14の動きに追従して洗浄リング15がセンサーホルダ8の先端部8aの外周面の周方向および軸方向に移動する。
【0066】
よって、第1の実施の形態と同様に、センサーホルダ8の先端部8aの外周面およびセンサー部10に付着した汚れを洗浄リング15で強制的に掻き落とすことができ、汚水中の溶存酸素を常に正確に計測することができる。
【符号の説明】
【0067】
7…成分検出器(溶存酸素計)、8…センサーホルダ、8a…先端部、10…センサー部、12…洗浄装置、13…固定部、14…可動部、15…洗浄体(洗浄リング)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動する汚水中に浸漬された先端部を有するセンサーホルダと、
前記センサーホルダの先端部に設けられ、前記汚水中の溶存成分を検出するセンサー部と、を含む成分検出器に用いる洗浄装置であって、
前記センサーホルダに固定された円筒状の固定部と、
前記汚水に浸かるように前記固定部の外周面に装着され、前記汚水の流れを受けて前記固定部の軸方向に往復移動する可動部と、
前記センサー部を含む前記センサーホルダの先端部の外周面に摺動可能に接触するとともに、前記可動部の動きに追従して前記センサーホルダの先端部の外周面に沿って往復移動する洗浄体と、を具備したことを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記汚水の流れを受けて回転する前記可動部の回転運動を前記固定部の軸方向の動きに変換する変換機構をさらに備えており、前記洗浄体は前記可動部に連結されていることを特徴とする洗浄装置。
【請求項3】
請求項2の記載において、前記変換機構は、前記固定部の外周面に螺旋状に形成されたガイド溝と、前記可動部に支持されて前記ガイド溝に回転自在に入り込んだ球体と、を備えていることを特徴とする洗浄装置。
【請求項4】
請求項3の記載において、前記ガイド溝は、前記固定部の外周面を一周する螺旋部と、前記螺旋部の始端と終端との間を接続して前記固定部の軸方向に延びる直線部と、を有することを特徴とする洗浄装置。
【請求項5】
請求項4の記載において、前記可動部は、前記螺旋部の始端に対応する第1の位置と、前記螺旋部の終端に対応するように前記第1の位置から前記固定部の軸方向に離れた第2の位置との間で往復移動が可能であるとともに、常に弾性体により前記第1の位置に向けて付勢されていることを特徴とする洗浄装置。
【請求項6】
請求項5の記載において、前記可動部は、第1の端部と、この第1の端部の反対側に位置された第2の端部と、を有し、これら第1の端部および第2の端部に夫々前記固定部と前記可動部との間を密封するリング状のシール材が取り付けられているとともに、
前記固定部の前記ガイド溝は、前記可動部が前記第1の位置および前記第2の位置のいずれに移動された状態でも、前記第1の端部の前記シール材と前記第2の端部の前記シール材との間に位置されていることを特徴とする洗浄装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項の記載において、前記可動部は、前記汚水の流れを受ける複数の羽根を有し、前記羽根は、前記可動部の回転方向に間隔を存して配列されていることを特徴とする洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−191200(P2011−191200A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58132(P2010−58132)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)