説明

成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物

【課題】 洗浄性能が良い成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物の提供。
【解決手段】 アクリロニトリルの含有量が28質量%以下であるAS樹脂100質量部に対して、脂肪族系界面活性剤と芳香族系界面活性剤から選ばれる1又は2以上の界面活性剤0.5〜10質量部を含有している、成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機、射出成形機器等の成形加工機用の内部を洗浄するために用いる洗浄用樹脂組成物に関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂の成形加工機用の洗浄剤として、ベース樹脂と界面活性剤を組み合わせたものが知られている。特許文献1の実施例では、AS樹脂に対して、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム又はα−オレフィンスルホン酸ナトリウムを配合したものが記載されている。
【特許文献1】特開2000−119464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願発明は、より洗浄力が向上された、熱可塑性樹脂の成形加工機用の洗浄剤として使用する熱可塑性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願発明は、課題の解決手段として、アクリロニトリルの含有量が28質量%以下であるAS樹脂100質量部に対して、脂肪族系界面活性剤と芳香族系界面活性剤から選ばれる1又は2以上の界面活性剤0.5〜10質量部を含有している、成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0005】
本発明の成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物は、特定のベース樹脂と脂肪族系界面活性剤や芳香族系界面活性剤又はそれらの混合物の組み合わせにより、高い洗浄性能を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
<AS樹脂>
本発明で用いるAS樹脂は、アクリロニトリルの含有量が28質量%以下のものであり、好ましくはアクリロニトリルの含有量が20〜28質量%であり、より好ましくはアクリロニトリル含有量が23〜27質量%である。前記アクリロニトリルの含有量は、実施例に記載の測定法による分析値である。
【0007】
<界面活性剤>
本発明で用いる界面活性剤は、脂肪族系界面活性剤と芳香族系界面活性剤から選ばれる1又は2以上の界面活性剤であり、好ましくは脂肪族系界面活性剤の1以上と芳香族系界面活性剤1以上の混合物である。
【0008】
脂肪族系界面活性剤としては、アルカンスルホン酸ナトリウム塩、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム塩が好ましく、芳香族系界面活性剤としてはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩が好ましい。
【0009】
本発明の組成物中の界面活性剤又は界面活性剤混合物の含有量は、AS樹脂100質量部に対して0.5〜10質量部が好ましく、0.5〜6質量部がより好ましく、1〜3質量部が更に好ましい。
【0010】
脂肪族系界面活性剤と芳香族系界面活性剤の混合物を用いるときの配合比(質量比)は、前記配合比(脂肪族系界面活性剤/芳香族系界面活性剤)は1/10〜10/1の範囲が好ましく、1/6〜6/1の範囲がより好ましく、1/3〜3/1の範囲が更に好ましい。
【0011】
<その他の成分>
本発明の組成物は、更にガラスファイバー、ロックウール等の公知の無機フィラーを配合することができる。無機フィラーの含有量は、AS樹脂100質量部に対して0.5〜150重量部が好ましく、20〜140質量部がより好ましく、40〜120質量部が更に好ましい。
【0012】
本発明の組成物には、本発明の課題を解決できる範囲内で、公知の各種添加剤を含有することができる。公知の添加剤としては、例えば、上記の特許文献1の段落12、13に記載のアルキレングリコール脂肪酸エステルの他、多価アルコールや金属石鹸、また特開2002−1734に記載のリン酸エステル系化合物を用いることができる。
【0013】
本発明の組成物は、各成分をヘンシェルミキサー、タンブラーブレンダー、ニーダー等の混合機で予備混合した後、押出機で溶融混練したり、加熱ロール、バンバリーミキサーで溶融混練したりする方法を適用して得ることができる。
【実施例】
【0014】
実施例1〜7、比較例1〜6
表1に示す組成の各成分をタンブラーブレンダーで混合後、押出機にて溶融混練し、ペレット状の洗浄用樹脂組成物を得た。これらの組成物を使用し、下記の方法で洗浄試験を行った。結果を表1に示す。
【0015】
射出成形機(三菱重工業製「三菱射出成形機265/100MSII」;シリンダー温度250℃)に、先行使用樹脂としてABS樹脂(ダイセルポリマー製セビアンV550SF)の黒着色品(ドライカラー;カーボンブラック濃度2%)1kgを流した。その後、表1の組成の各洗浄用樹脂組成物を流して黒色が消えるまでの組成物の使用量による評価と、続いてAS樹脂(ダイセルポリマー製セビアンN 050SF)を流して射出成形し、成形品に黒色が残っているかどうかを確認した。
【0016】
(AS樹脂中のAN含有割合の測定方法)
窒素分析装置(住化分析センター(株)製)を使用して窒素量から測定。この窒素分析装置は、スミグラフNC-90A(住化分析センター(株)製)、GC-8A(株式会社島津製作所製)、C-R6A(株式会社島津製作所製)から構成されている。
【0017】
AS−1:AS樹脂(AN量24.3質量%)
AS−2:AS樹脂(AN量27.0質量%)
AS−3:AS樹脂(ダイセルポリマー株式会社製 セビアンN 080 AN量29.5質量%)
界面活性剤1:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
界面活性剤2:α−オレフィンスルホン酸ナトリウム
GF;ガラス繊維(日本電気硝子(株)製「ECS03T351/P”」(繊維径13μm、繊維長3.2mmで、アミノシラン系のシランカップリング剤で表面処理され、アクリル樹脂系集束剤により集束処理されたもの)。
【0018】
【表1】

【0019】
実施例と比較例の対比から明らかなとおり、AS樹脂としてAN量が28質量%以下のものを用いることにより、洗浄性能が高められた。また、界面活性剤として、脂肪族系と芳香族系の混合物を用いた例(実施例1〜5)は、界面活性剤単独の例(実施例6、7)と比べて洗浄性能が高かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリロニトリルの含有量が28質量%以下であるAS樹脂100質量部に対して、脂肪族系界面活性剤と芳香族系界面活性剤から選ばれる1又は2以上の界面活性剤0.5〜10質量部を含有している、成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記AS樹脂中のアクリロニトリルの含有量が20〜28質量%である、請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記界面活性剤が、脂肪族系界面活性剤と芳香族系界面活性剤から選ばれる混合物である、請求項1又は2記載の成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記配合比(脂肪族系界面活性剤/芳香族系界面活性剤)が1/10〜10/1の範囲である、請求項3記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
更にAS樹脂100質量部に対して無機フィラーを0.5〜150重量部含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−95624(P2010−95624A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267454(P2008−267454)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(501041528)ダイセルポリマー株式会社 (144)
【Fターム(参考)】