説明

成形品の製造方法

【課題】安価に製造できる成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】一形態に係る成形品の製造方法は、不織体に所定の融点を有する融解物質が含まれた繊維体1を成形型11、12に配置する工程と、成形型11、12内に熱可塑性樹脂を充填する工程と、を備える。このとき、成形型11、12内に熱可塑性樹脂を充填する工程は、熱可塑性樹脂の熱によって融解物質を溶かして不織体の隣接する繊維を結合させる工程を含むこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品の製造方法に関し、特に不織体を含む成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車の内装材等の成形品は、特許文献1に開示されているように、ファブリック表皮を成形型に配置し、合成樹脂と共に一体成形して製造されている。
【0003】
ここで、一般的なファブリック表皮は、繊維を編み、織り加工により耐摩耗性が高められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−94845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ファブリック表皮は、繊維を編み、織り加工して製造されるため製造コストが嵩む。その結果、ファブリック表皮を含む成形品は高価なものとなる。
【0006】
本発明の目的は、このような問題を解決するためになされたものであり、安価に製造できる成形品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る成形品の製造方法は、不織体に所定の融点を有する融解物質が含まれた繊維体を成形型に配置する工程と、前記成形型内に熱可塑性樹脂を充填する工程と、を備える。
【0008】
上記成形品の製造方法において、前記成形型内に熱可塑性樹脂を充填する工程は、前記熱可塑性樹脂の熱によって前記融解物質を溶かして前記不織体の隣接する繊維を結合させる工程を含むこと、が好ましい。
【0009】
上記成形品の製造方法において、前記融解物質は熱可塑性材料から成ること、が好ましい。
【0010】
上記成形品の製造方法において、前記成形型における前記繊維体が押し当てられる面に前記成形品の取付冶具を成形するための凹部が形成されていること、が好ましい。
【0011】
上記成形品の製造方法において、前記繊維体における前記凹部に対応する位置に切り込みが形成されていること、が好ましい。
【0012】
上記成形品の製造方法において、前記成形型における前記繊維体が押し当てられる面に、前記繊維体における前記凹部に対応する位置に切り込みを形成するための切り込み手段を備えること、が好ましい。
【発明の効果】
【0013】
以上、説明したように、本発明によると、安価に製造できる成形品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る成形品の製造方法において、キャビティ側の成形型のキャビティ面に繊維体を配置した状態を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る成形品の製造方法に用いる繊維体を拡大して示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る成形品の製造方法において、コア側の成形型をキャビティ側の成形型側に移動し、熱可塑性樹脂を射出した状態を示す図である。
【図4】融解物質が溶けて不織体の隣接する繊維が結合した状態を示す図である。
【図5】繊維体と熱可塑性樹脂とが一体化された成形品を概略的に示す断面図である。
【図6】繊維体と熱可塑性樹脂とが一体化された成形品を概略的に示す側面図である。
【図7】繊維体と熱可塑性樹脂とが一体化された成形品を概略的に示す斜視図である。
【図8】成形品に設けられる取付冶具を拡大して示す断面図である。
【図9】取付冶具を成形するために、キャビティ側の成形型のキャビティ面に形成された凹部を概略的に示す斜視図である。
【図10】取付冶具を成形するために、予め切り込みを形成した繊維体を概略的に示す図である。
【図11】繊維体に切り込みを形成するために、キャビティ側の成形型に設けられた切り込み手段を概略的に示す図である。
【図12】本発明の異なる実施の形態に係る成形品の製造方法において、キャビティ側の成形型のキャビティ面に繊維体を配置し、コア側の成形型をキャビティ側の成形型側に移動させた後に、熱可塑性樹脂を射出した状態を示す図である。
【図13】本発明の異なる実施の形態に係る成形品の製造方法において、コア側の成形型をキャビティ側の成形型側に更に移動させ、熱可塑性樹脂を圧縮した状態を示す図である。
【図14】本発明の異なる実施の形態に係る成形品の製造方法において、キャビティ側の成形型とコア側の成形型との間に繊維体を配置し、キャビティ側の成形型のキャビティ面に熱可塑性樹脂を射出した状態を示す図である。
【図15】本発明の異なる実施の形態に係る成形品の製造方法において、コア側の成形型をキャビティ側の成形型側に移動させ、熱可塑性樹脂を圧縮した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。但し、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0016】
<実施の形態1>
本実施の形態の成形品の製造方法(以下、単に製造方法と云う場合がある。)は、例えば自動車の内装材を製造する際に好適に実施される。ちなみに、本実施の形態の成形方法は、射出成形法で成形品を成形する。
【0017】
先ず、図1に示すように、キャビティ側の成形型11とコア側の成形型12とを用意し、例えばキャビティ側の成形型11のキャビティ面11aに沿わせるように、繊維体1を配置する。詳細には、後に熱可塑性樹脂から成る基材の表面を覆うことができるように、繊維体1は予め裁断された状態で、キャビティ側の成形型11のキャビティ面11aに配置する。
【0018】
繊維体1は、不織体に融解物質を含んでいる。詳細には、繊維体1は、図2に示すように、不織体2の一部の繊維2aが融解物質3を含んでいる。本実施の形態では、不織体2の一部の繊維2aの外周が融解物質3で覆われている。
【0019】
不織体2としては、例えば目付けが50〜500g/m程度のポリエステル、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性材料から成る、一般的な不織体を用いることができる。但し、不織体2は、後に繊維体1を熱可塑性樹脂と一体成形した際に、熱可塑性樹脂が繊維体1の表面に漏れ出ない目付けに設定されていれば良い。
【0020】
融解物質3は、後に繊維体1を熱可塑性樹脂と一体成形する際に当該熱可塑性樹脂の熱によって溶けて、不織体2における隣接する繊維2aを結合する。融解物質3は、例えば90〜150°程度の範囲内で融点を有する熱可塑性材料であることが好ましい。但し、融解物質3は、繊維体1を熱可塑性樹脂と一体成形する際に当該熱可塑性樹脂の熱によって溶ける融点に設定されていれば良い。
【0021】
この融解物質3は、不織体2の重さに対して5〜30%程度の割合で不織体2に含められることが好ましい。但し、融解物質3は、後に繊維体1の熱可塑性樹脂と一体成形する際に当該熱可塑性樹脂の熱によって溶けて、不織体2における隣接する繊維2aを良好に結合できる割合で不織体2に含められれば良い。
【0022】
次に、図3に示すように、キャビティ側の成形型11側にコア側の成形型12を移動させて、成形型11と12とで空間13を形成し、当該空間13内に熱可塑性樹脂4を射出する。このとき、図4に示すように、熱可塑性樹脂4の熱によって融解物質3が溶けて不織体2における隣接する繊維2aが結合する。これにより、不織体2における隣接する繊維2aが結合されて、繊維2aが解れることがないので、耐摩耗性が高まる。
【0023】
それと共に、図5に示すように、繊維体1の裏面に熱可塑性樹脂4が浸みこんで当該繊維体1と熱可塑性樹脂4とが一体となって同時に賦形される。
【0024】
その後、冷却後、脱型すると、図6及び7に示すように、繊維体1と熱可塑性樹脂4から成る基台41とが一体となった成形品5を取り出すことができる。最後に、取り出した成形品5の不要部分をトリミングすると完成する。
【0025】
このように不織体2に融解物質3を含んだ繊維体1を熱可塑性樹脂4と一体成形して、溶けた融解物質3で不織体2における隣接する繊維2aを結合するので、不織体2における隣接する繊維2aが解れることがなく、耐摩耗性を向上させることができる。そのため、従来のように例えば自動車の内装材等を製造する際に、高価なファブリック繊維を用いる必要がなく、安価に自動車の内装材等を製造することができる。しかも、繊維体1を熱可塑性樹脂4と一体成形するので、簡単に繊維体1と熱可塑性樹脂4とを賦形することができ、製造が簡単である。
【0026】
ちなみに、図8に示すように、例えば自動車の外装材に上述のように製造した成形品を取り付けるためのクリップ6の取付冶具41aが、熱可塑性樹脂4から成る基台41に設けられる場合がある。このような場合には、図1、図2及び9等に示すように、キャビティ側の成形型11のキャビティ面11aに当該取付冶具41aを成形するための凹部11bが形成されていることが好ましい。これにより、熱可塑性樹脂4を射出した際に、図3に示すように、熱可塑性樹脂4が不織体2の繊維2aの相互間から漏れ出して凹部11b内に充填される。その結果、図6及び7に示すように、熱可塑性樹脂4から成る基台41に取付冶具41aが成形される。このように、繊維体1と熱可塑性樹脂4とを一体成形する際に、併せて取付冶具41aも成形することができるので、成形品をより簡単に製造することができる。
【0027】
なお、繊維体1が厚みを有する等の理由で熱可塑性樹脂4が凹部11b内に充填され難い場合は、図10に示すように、繊維体1における当該凹部11b近傍に配置される部分に予め切り込み1aを形成しておくことが好ましい。これにより、熱可塑性樹脂4を確実に凹部11b内に充填することができる。
【0028】
または、図11に示すように、凹部11b近傍に刃物等の切り込み手段7を設けておくことが好ましい。これにより、キャビティ側の成形型11のキャビティ面11aに繊維体1を配置した際に、切り込み手段7によって繊維体1における当該凹部11b近傍に配置される部分に切り込みを形成することができる。そのため、熱可塑性樹脂4を確実に凹部11b内に充填することができる。
【0029】
<他の実施の形態>
上記実施の形態の製造方法は、射出成形法で成形品を成形したが、この限りでない。射出圧縮成形法で成形品を成形しても良い。つまり、図12に示すように、先ずキャビティ側の成形型14のキャビティ面14aに繊維体1を配置して、コア側の成形型15をキャビティ側の成形型14側に移動させる。そして、キャビティ側の成形型14とコア側の成形型15とが少し開いた状態で熱可塑性樹脂4を射出する。
【0030】
その後、図13に示すように、コア側の成形型15をキャビティ側の成形型14側にさらに移動させて熱可塑性樹脂4を圧縮して、繊維体1と熱可塑性樹脂4とを一体成形する。最後に、冷却、脱型後にトリミングを施すと、実施の形態1と同様に繊維体1と熱可塑性樹脂4とが一体となった成形品を得ることができる。
【0031】
または、射出プレス成形法で成形品を成形しても良い。つまり、図14に示すように、コア側の成形型16とキャビティ側の成形型17との間に繊維体1を配置し、キャビティ側の成形型17のキャビティ面17aに熱可塑性樹脂4を射出する。
【0032】
その後、図15に示すように、コア側の成形型16をキャビティ側の成形型17側に移動させて熱可塑性樹脂4を圧縮して、繊維体1と熱可塑性樹脂4とを一体成形する。最後に、冷却、脱型後にトリミングを施すと、実施の形態1と同様に繊維体1と熱可塑性樹脂4とが一体となった成形品を得ることができる。
【0033】
以上、本発明に係る成形品の製造方法の実施の形態を説明したが、上記に限らず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 繊維体、1a 切り込み
2 不織体、2a 繊維
3 融解物質
4 熱可塑性樹脂
5 成形品
6 クリップ
7 切り込み手段
11 キャビティ側の成形型、11a キャビティ面、11b 凹部
12 コア側の成形型
13 空間
14 キャビティ側の成形型、14a キャビティ面
15 コア側の成形型
16 コア側の成形型
17 キャビティ側の成形型、17a キャビティ面
41 基台、41a 取付冶具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織体に所定の融点を有する融解物質が含まれた繊維体を成形型に配置する工程と、
前記成形型内に熱可塑性樹脂を充填する工程と、
を備える成形品の製造方法。
【請求項2】
前記成形型内に熱可塑性樹脂を充填する工程は、前記熱可塑性樹脂の熱によって前記融解物質を溶かして前記不織体の隣接する繊維を結合させる工程を含む請求項1に記載の成形品の製造方法。
【請求項3】
前記融解物質は熱可塑性材料から成る請求項1又は2に記載の成形品の製造方法。
【請求項4】
前記成形型における前記繊維体が押し当てられる面に前記成形品の取付冶具を成形するための凹部が形成されている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
【請求項5】
前記繊維体における前記凹部に対応する位置に切り込みが形成されている請求項4に記載の成形品の製造方法。
【請求項6】
前記成形型における前記繊維体が押し当てられる面に、前記繊維体における前記凹部に対応する位置に切り込みを形成するための切り込み手段を備える請求項4に記載の成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−107357(P2013−107357A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256002(P2011−256002)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】