説明

成形材

【課題】 人体の固定、支持、矯正、保持のための装具を容易に作製できる成形材を提供する。
【解決手段】 湿気硬化型ウレタンプレポリマー2でコーティングした粒状体1の所定量を水透過性材料3で包み、この粒状体1を包んだ水透過性材料3を湿分不透過性材料5で密封し、湿気硬化型ウレタンプレポリマー2と水透過性材料3とは相互に非反応性で低接着性のものを使用する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は人体の一部の型取りを行い、その型材を人体の固定、支持、保護、矯正を目的として使用する医療、福祉、スポーツ等の分野における成形材や人体の固定、支持、保護が必要とされる自動車、航空機、遊技器具分野における成形材に関する。さらに具体的には特に人体をベッド、椅子、検査装置、福祉器具等に人体を違和感なく固定、支持を行うため、また人体を保護するために有用な成形材に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、人体をベッド、椅子、検査装置等に固定、支持を行う方法として、医療、福祉分野では砂嚢、発泡体ブロック、陰圧式固定具(粒状発泡体の入った気密袋で、気密袋内を真空ポンプで陰圧にすると固定性を生ずるもの)、プラスチック性の発泡体、シート状のものが知られている。しかしながら、これらのものは固定性、支持性が少なく、又患者が移動した場合は再度セッティングする必要があり、使用の範囲が限定される。例えば、砂嚢や発泡体はベッドや検査台に人体を一時的に固定又は支持するために簡易な方法として使用されているが、固定性がなく、正確な固定が必要なケースや長期の固定又は再現性を要求する目的には向かないという欠点を有している。陰圧式固定具はベッドや検査台、椅子上に空気が満たされた状態に敷き、その上に体を乗せ真空ポンプで陰圧にすることで人体の形が形成できるもので、一時的に大きい部分を固定又は支持するには便利なものであるが長時間の固定性や再現性がなく、かつ大型の真空ポンプが必要であり、特殊な分野にしか利用できないという欠点を有している。プラスチック発泡体やシート状の固定具は人体の一部に装着し、そのもので人体の一部を固定、支持、保護、矯正するもので、軽量であるが、生体適合性が悪く、又事前に多くの種類を準備しておかねばならないという欠点を有している。さらに、生体適合性を確保するため個々に合せて作製したものは費用及び製作期間に欠点を有する。
【0003】特に支持精度や再現性を要求される例として医療分野における癌の治療がある。その治療方法の一つとして放射線治療がある。放射線単独治療で治癒可能な部位としては、頭頚部癌、子宮頚癌、前立腺癌、悪性リンパ腫、肺癌、食道癌、胆道癌などが挙げられる。それらのいずれも放射線副障害を発生させず腫瘍を局所制御させるには、線量的に非常に狭い範囲で治療しなくてはならない。また腫瘍の制御確率は、線量を増やすことによって飛躍的に高くなる。よって正常組織の障害を発生させず腫瘍を制御するためには正確な照射位置の決定ときわめて工夫した照射方法をとり、いかに腫瘍部分に線量を集中させるかが大切である。そのため2方向以上からの照射が必要となり、患者の体動を減らす固定方法が重要な問題になってくる。そのため従来から、体表面に直接マジックインキ等でマーキングして放射線照射装置と一致させる方法で治療を行っている。この方法では、装置の操作に熟練を要し位置合わせにも時間がかかる。その上照射中に患者の動きによって照射位置がずれてしまう問題がある。そこで患者の体位を固定するために石膏で体を採型し陰性モデルを作製し、そこから陽性モデルをおこしてそれに合わせてPVC樹脂でシェルを作製して患者を固定する方法や、熱可塑性樹脂の板を軟化させ患者から直接固定用のシェルを作製し、これで患者を固定する方法が行われている。これらの方法は全て患者の上部から固定装具をかぶせて固定する方法であって上面からのみの固定になるため不十分であった。又このような陽性モデルの作製には熟練と時間を要する。また高エネルギーX線は表面から深部へと徐々に吸収線量が上昇し数mm〜数十mmの深部で吸収線量がピークになる表面ビルドアップ性があるため放射線の吸収の大きいPVC樹脂や熱可塑性樹脂の使用は体表面線量が上昇し皮膚炎などの放射線副障害の原因となる。従って放射線治療における固定具には放射線吸収の小さい材料を使うことが重要である。また、放射線治療は副作用を押さえるため、一回当たりの照射量は少なく設定されており、数十回に分け照射し、期間は数ヶ月になる。このため固定具の変形、破損、保管のしやすさ、移動時の重さ等の問題が重要となる。PVC樹脂や熱可塑性樹脂で作製した固定具では変形を起こし十分な固定ができない。
【0004】身体障害者の中には、通常の椅子では座ることが困難なまでに体の部位が変形を受けている場合があり、その為石膏や樹脂を用いて採型を何度も繰り返してその身体障害者の体に適合した支持材を作ることが行われている。この方法では、最終的な支持材を得るまでに数多くの行程と日数を必要とし、熟練した技術が要求され、コストも極めて高くなるという問題がある。
【0005】スポーツ人口の広がりと共に、スポーツによる障害を受ける人口も増大し、特にスポーツのプロ化により競技内容が厳しくなり障害を受けるケースが多く 予防や障害を受けた部位の保護のために、種々の装具が提案されている。 これらの分野の装具は、軽量で耐衝撃性が求められるため特殊素材を用いて装着者の装着部位に真に適合した装具を得る必要性があり、このためには採型と調整という面倒な工程を必要とするからコスト高となる。それを避けるため何種類もの標準品を用意しておき、その中から最も適合したものを選ぶことにすると、コスト的には有利であるが、必ずしも全く適合したものではないため適切な予防や保護の機能を果たし得ない。
【0006】自動車、航空機や遊技器具分野では、特にスピードや機動性を要求する乗り物の座席は、操縦者の体を座席にしっかりと支持するよう座席を作製するため素材、形態、微調整機構と高度の設計技術を要求されコスト高となるという欠点を有する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述のような各種の分野において使用される、人体の固定、支持、矯正、保護等のための各種装具、器具等を容易に作製できる成形材を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するため、本発明においては、湿気硬化型ポリウレタンプレポリマーでコーティングした粒状体の所定量を粒状体の大きさより小さい開口を有する水透過性材料で包み、これを湿分不透過性材料で密封したものである。
【0009】水透過性材料としては湿気硬化型ポリウレタンプレポリマーと非反応性で、湿気硬化型ウレタンプレポリマーでコーティングした粒状体と水透過性材料との間の接着力が低接着性で、その接着力が0、5kg/25mm以下である様な相互関係の素材を選択する。
【0010】水透過性材料としては湿気硬化型ポリウレタンプレポリマーと非反応性で、繊維集合体からなる糸で形成された編み物、織物、もしくは不織布、又はモノフィラメントからなるメッシュ状のものが有効である。
【0011】さらに水透過性材料として変形性に富むよう、少なくとも一つの方向に15%以上伸びを付与することが効果的である。
【0012】湿気硬化型ウレタンプレポリマーはポリイソシアナートとポリオールからなるポリウレタンプレポリマーで硬化時間が2〜30分になる量の触媒を配合すると有利であり、さらに湿気硬化型ウレタンプレポリマーに揺変性付与剤を添加すると有利である。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明においては、湿気硬化型ポリウレタンプレポリマーで表面を被った粒状体を、適用すべき器具又は装具に応じて所定量だけ水透過性の材料よりなる袋体の中に収納し、この袋体を使用時まで湿分不透過性の容器中に封入しておくのが好ましい。
【0014】粒状体を包装する水透過性材料は、湿気硬化性ウレタンプレポリマーをコーティングされた粒状体の所定量を一つの塊にまとめ、操作の際術者及び被着者がウレタンプレポリマーに直接触れることから隔離し、樹脂による皮膚への影響を防止し、操作を容易にするためのもので、樹脂と非反応性の素材で樹脂が湿気硬化性ウレタンプレポリマーであるため水分含有率の低い素材であることが好ましい。即ちポリウレタンプレポリマーの反応基を活性化する化学構造を有する素材や物質を含まない素材である。サイズ、形態、構造は適用する器具又は装具に合せ選択することが操作性を良くする上で重要である。例えば形態を適用すべき器具、装具に合せた型にし、さらにサイズが大きい場合は、袋体内部を数カ所の個室にすると便利である。
【0015】素材としてはポリエステル(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアクリル、ポリウレタン、スチレン/イソプレン/スチレンコポリマー(SIS)、ポリアミド等の合成繊維、スフ、レーヨン、綿、麻等の再生繊維や天然繊維、ガラス繊維等の無機繊維が使用できるが、湿気硬化性ウレタンプレポリマーと反応性があったり、水分含有率の高いものは使用前に表面を処理しウレタンプレポリマーと非反応性にしたり、乾燥し水分を除去する必要がある。好ましい素材としては前記の処理を必要としないポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、SISが好ましい。特に好ましい繊維としては生産面で熱シール性を有するポリエステルとポリプロピレン、ポリエチレン、SISのいずれかを混紡した繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、SISの単体または混紡繊維が有利である。
【0016】使用する仕上がり状態としては、編布、織布、不織布、ネット状の構造にしたものがある。好ましい仕上がり状態は、適用する器具、装具及び部位の凹凸になじむ柔軟性、伸縮性が容易に得られる編布や不織布である。この柔軟性、伸縮性を得るには少なくとも縦方向あるいは横方向のいずれか一方に15%以上の伸びを有する物が好ましい。これより以下であると採型時モデリングする事が困難となる。
【0017】水透過性材料は、ポリウレタンプレポリマーでコーティングした粒状体との関係より湿気硬化型ポリウレタンプレポリマーとの親和性が小さい物を選択することが必要である。その指標として、湿気硬化型ウレタンプレポリマーでコーティングした粒状体と水透過性材料とは「JIS Z0237・8粘着力」に準じた接着力測定において接着力が0.5kg/25mm以下が必要である。これ以上であると長期間の保管中ポリウレタンプレポリマーと水透過性材料が一体化してしまい使用不可能となる。操作性を加味しより好ましくは0.3kg/25mm以下で、更に好ましくは0.1kg/25mm以下である。
【0018】特に編布、織布等に用いる糸が細い繊維を多数収集したものの場合は湿気硬化型ウレタンプレポリマーが繊維間に浸透しないよう湿気硬化型ウレタンプレポリマーとの親和性を小さくする処理を行うほうが好ましい。これらの処理剤には、フッ素系、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系、アルキルメチルピリジュウムクロリド系、アルキルエチレン尿素系等を使用することができる。処理に使用する量は有効成分が0.1〜6%付着するようにし、処理方法は編物、織物の製作前又は後に処理剤を含浸、塗布又はスプレーしても良い。
【0019】好ましい水透渦性材料は、ポリプロピレン、ポリエステルの単独又は複合の約300デニール糸を用いてメリヤス編みにて、コース方向に22本/1inch、ウェール方向に22本/1inchの密度で厚さを約1mm、目付け量約230g/m2のチューブ状に仕上げたもので伸長率が縦方向が5〜60%、横方向が50〜300%になるもので、例えばホワイトネット(アルケア(株)より製造販売)という商品名で市販されている。これらの水透過性材料に対しフッ素系エマルジョンの処理剤を有効処理量が0、7%処理したものが保存安定性が高く、操作しやすい。
【0020】粒状体は、ポリウレタン樹脂と反応しない素材で、湿気硬化型樹脂で被われるため水分含有率の低いことが必要である。使用し得る材料としては有機系材料と無機系材料とがあり、有機系材料には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリスチレン、ポリウレタン、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルホルマール、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂などの単独重合物又は共重合物、酢酸セルロース、セルロース、ゴム等の高分子化合物、無機系材料には、焼成パーライト、シラスバルーン、多孔質ガラス、中空ガラス、鉱さい、軽石等の多孔質ないし発泡質のものがあり、これらは表面の穴を塞ぐために表面をコーティングしたものでもよい。上述の材料は、有機系、無機系を問わず、1種単独又は2種以上の組合せとして使用することができる。
【0021】使用する粒状体の比重は、比重が大きいと放射線治療に使用する場合粒状体の放射線吸収のため粒状体を透過した部分と透過しない部分とで人体への照射量に差を生じ、又比重が大きいとそれだけ重さが増すから取扱い上不便となる。従って、粒状体の見かけ比重は1.50以下が好ましく実用上0.0125〜1.00がより好ましい。また、粒状体の大きさは大きすぎると表面の平たん性や採型性等が得られにくく、小さすぎると粒状体が密になり水切れ性、通気性、軽量性等が得られにくく、径としては、0.05〜10mm、好ましくは0.5〜5mmである。
【0022】粒状体の構造は中実、中空又は発泡体のいずれでもよく、形状はどんなものでも可能であるが球形で中空又は発泡体が好ましい。球形は他の形状に比べ粒状体が整然と並び、均一な印象性が得られ、通気性も均一となり、水切れが良く、接触点が整然となり強度が均一となる利点がある。更に仕上がり品はクッション性が得られる。
【0023】粒状体にコーティングされる湿気硬化型ポリウレタンプレポリマーは、ポリオールとポリイソシアネートとを反応して得られる末端にイソシアネート基を有するものを使用することができる。ポリオールとしては、低分子ポリオール類(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなど)、またはポリフェノール類に、アルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、ピロピレンオキサイドなど)を付加して得られるポリエーテルポリオール:低分子ポリオール類とジカルボン酸(例えば、アジピン酸、フタル酸など)との脱水縮合反応により得られるポリエステルポリオール:ラクトン類(例えばγ−ブチルラクトン、ε−カプロラクトンなど)の開環重合によるポリラクトンポリオール:テトラヒドロフランの開環重合によるポリテトラメチレングリコール:ヒマシ油またはそのアルキレンオキサイド付加物:ブタジエン、イソプレンなどのジエン化合物の重合物であって末端にヒドロキシル基を有するポリジエンポリオールまたはその水添物などが挙げられ、これらは1種単独または2種以上の組合せとして使用することができる。
【0024】ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートなどの芳香剤ポリイソシアネート:ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート:3−イソシアナートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソスアネートなどの脂環式ポリイソシアネート:キシリレンジイソシアネートなどのアリール脂肪族ポリイソシアネート:およびこれらのカルボジイミドイミド変性またはイソシアヌレート変性ポリイソシアネートなどがあげられ、これは1種単独または2種以上の組合せとして使用することができる。これらのなかで好ましいのは4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネートおよびこれらのカルボジイミド変性ポリイソシアネートである。
【0025】末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得るための、上記ポリオールとポリイソシアネートとの配合比率は、通常ポリオール1当量当りポリイソシアネート1.2〜10当量、好ましくは1.5〜5当量である。また、この反応は通常30〜120℃で加熱攪拌することで達成される。得られたウレタンプレポリマーの粘度は通常20℃での測定値で10〜2000P、好ましくは50〜1000Pである。このウレタンプレポリマーの粒状体に対するコーティング量は、粒状体の2〜30容量%、好ましくは10〜30容量%であり、コーティング量が2容量%未満では粒状体を十分な強度に硬化させることができず、また30容量%を超えると各粒状体間の隙間が十分に確保できず、ウレタンプレポリマーが湿分で硬化する際に生ずる炭酸ガスの逃げ道がなく、型取り材が膨張して正確な型取りができなくなるおそれがある。又、保存中湿気硬化性ウレタンプレポリマーが粒状体より流れ下層に移行し、均一な成形物が得られない。
【0026】湿気硬化型ポリウレタンプレポリマーに添加される揺変性付与剤は、製造、保管時における樹脂の片寄りと、樹脂の包装材への浸透を防ぐためのもので、無機系のシリカ、酸化チタン、酸化亜鉛や有機系の揺変性付与剤で、例えばポリアルキレングリコールの末端水酸基を水酸基処理剤で処理したポリアルキレン変性化合物で一般にポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはこれらの共重合体を塩化メチル、脂肪酸等で処理した有機系揺変性付与剤や芳香族カルボン酸エステル類、例えばnーブチルベンゾエート、n−ステアリルベンゾエート、メチルn−ブチルフタレート、メチルn−ステアリルフタレート、エチルイソデシルフタレート、エチルn−ステアリルフタレート、2ーエチルヘキシルn−ステアリルフタレート、1、2ジーn−ブチルn−ステアリルトリメリテート、n−ブチル−n−ステアリルイソフタレート、1、2ジ−n−ブチルnーステアリルヘミメリテート、1、3ジ−n−ブチルn−ステアリルトリメセート、n−ブチルn−ステアリルフタレート、n−アミルラウリルフタレート、2ーエチルヘキシルラウリルフタレートやDーソルビトールと芳香族アルデヒドとのアセタール化反応により合成されたベンジリデンソルビトール、ジトリリデンソルビトール等の有機系揺変性付与剤があげられる。特にD−ソルビトールと芳香族アルデヒドとのアセタール化反応により合成された化合物は有利である。これらの使用量は、湿気硬化型ウレタンプレポリマーの組成、触媒、安定剤等配合や無機系の揺変性付与剤の種類や量によって異なるが、添加量はポリウレタンプレポリマーに対し0.01〜6.00重量%で、好ましくは0.05〜3.0重量%の範囲である。
【0027】湿気硬化型ポリウレタンプレポリマーには、更に適当な触媒、安定剤、消泡剤、酸化防止剤、着色剤、充填剤等を添加することができる。触媒としては、例えばエチルエーテル系触媒があり、貯蔵安定性の点からエチルエーテル系のアミン触媒が好ましく、例えばビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(モルホリノエチル)エーテル、ビス(ジメチルモルホリノエチル)エーテルなどがあり、1種単独又は2種以上の組合せとして使用することができる。触媒の使用量は触媒の種類によって異なるが、ポリウレタンプレポリマーの0.01〜5重量%とするのが好ましく、型取り材の硬化が2〜30分になるように調節することが望ましい。
【0028】安定剤としては、有機酸、有機酸クロライド、酸性燐酸エステル等の酸性物質、キレート化剤(ジケトン化合物、ヒドロキシカルボン酸)等があり、これらの好ましいものはウレタンプレポリマー、触媒等との関連で決まるが、有機酸であるメタンスルホン酸が好ましい。安定剤の量は、0.01〜2%が好ましい。
【0029】消泡剤としては、シリコン系消泡剤、ワックス系消泡剤があるが、シリコン系消泡剤が好ましい。量は、0.01〜1%が好ましい。
【0030】酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール類、燐系化合物、ヒンダドアミン、硫黄系化合物がある。好ましくはテトラキス「メチレン−3´−(3´、5´ジ−第三−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート」メタンである。0.01〜1%が好ましい。
【0031】着色剤としては、皮膚炎の危険の少ない法定色素が利用できる。また充填剤としては、無機系、有機系の粉末状のものが利用できる。例えばシリカ、酸化メタン、亜鉛華等が使用される。
【0032】
【実施例】以下本発明の具体的態様を実施例により説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0033】(湿気硬化型ウレタンプレポリマー配合物の製造)4ツ口フラスコにポリオール成分としてPPG−2000(山洋化成工業社製、商品名、ポリプロピレンエーテルグリコール、ヒドロキシル価56mg−KOH/g)を657gとり、加熱下にて減圧脱水後、60℃でポリイソシアナート成分としてISONATE 125M(三菱化成ダウ社製、商品名、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート)を321gを加えて攪拌した。さらに3時間反応させた後、50℃で触媒としてビス(ジメチルモルホリノエチル)エーテル20gと、安定剤のメタンスルホン酸0.6gを加えてさらに1時間攪拌・混合し湿気硬化型ウレタンプレポリマー配合物Aを得た。この配合物の粘度は20℃で60Pで硬化時間は8分であった。同様な方法で表1に示す様に配合の異なる湿気硬化型ウレタンプレポリマー配合物B、C、Dを合成した。また比較例として、表2に示す様に湿気硬化型ウレタンプレポリマー配合物E、Fの2種類を同様に合成した。
【表1】


【表2】


【0034】(湿気硬化型ウレタンプレポリマーの粒状体への塗布)エスレンビーズHE(積成化成社製、商品名)を発泡して直径約1.6mmの粒状とした比重0.03のポリスチレンビーズ(粒状体1)2.26リットルをニーダーに入れ窒素雰囲気下に攪拌しながら、湿気硬化型ウレタンプレポリマー配合物A、B、C、Dのそれぞれ142.8gを万遍なく付着させた。同様に異なる粒状体として、エスレンビーズHN(積水化成社製、商品名)の発泡体で直径約0.8mm、比重0.14のポリスチレンビーズ(粒状体2)と、直径約0.2mm、比重1.4のポリ塩化ビニル製ビーズ(粒状体3)の2種類を作成し、前記と同様に粒状体2.26リットルをニーダーに入れ、窒素雰囲気下に攪拌しながら湿気硬化型ウレタンプレポリマー配合物Bのそれぞれ142.8gを万遍なく付着させた。
【0035】(湿気硬化型ウレタンプレポリマーを塗布した粒状体の水透過性材料への適用)次に表3に示す各種水透過性材料をそれぞれ20×30(cm)サイズの袋に作製し、これに、上記の各種湿気硬化型ウレタンプレポリマー配合物を付着させた粒状体をそれぞれ詰め、袋の開口部をシールして本発明の成形材本体を得た。これを湿気不透過性材料としてのポリエチレン/アルミニウム/ポリエチレンの3層からなるアルミラミネートポリ袋に入れ、ヒートシールして保存用サンプルを表4の通り作成し、硬化、湿気硬化型ウレタンプレポリマー配合物の水透過性材料への浸透、水透過性材料からの流出等を評価した。その結果は表4に示されている。
【表3】


【表4】


【0036】図1は成形材の断面を示すもので、1は粒状体で湿気硬化型ウレタンプレポリマー2でコーティングされ、袋状の水透過性材料3内に収納され、成形材本体4を形成する。この成形材本体4はさらに袋状の湿分不透過性材料5内に封入され、成形材6を構成する。
【0037】評価対象の内、湿気硬化型ウレタンプレポリマーと水透過性材料との間の接着力は次のようにして測定された。
【0038】(1)試験品の調整測定用成形材、試験品作製用容器及びその他必要な鋏、スケール等を窒素ガス置換したグローボックス内で操作して成形材を開封し、湿気硬化型ウレタンプレポリマーでコーティングされた粒状体を200×400×20(mm)の試験品作製用容器が一杯になるように写し、平板で押しながら表面を平にならす。次にこの表面を平らにした上に幅25×長さ300(mm)に切断した水透過性材料片を置き、この材料片の上から幅35×長さ125×厚さ2(mm)のステンレス板を乗せ、さらに分銅を加え165gの荷重にし、グローボックス内より取り出す。次に噴霧器で20℃の精製水を十分に与え(余分な試験品作製用容器の下側より逃げるようになっている)、成形材を硬化させる。その後、室温20℃〜25℃、相対湿度40〜65%の室内で2時間報知し分銅とステンレス板を除き、試験品を作製する。
【0039】(2)測定装置と測定及び結果温度23±2℃、相対湿度65±5%の環境室にて、オートグラフ(島津製作所製AG−500D)を用い、JISZ02378.3.1に準拠した180度引きはがし法によって、試験品を引っ張り速度300mm/分で3検体測定し、各測定データは引っ張り開始後の15%から85%の部分の間を4等分した点の値の平均値を求め、さらに3検体の平均値を接着力とする。その結果は表4に示されている。
【0040】保存安定性の測定は次のように行われた。即ち成形材を温度40±2℃に1ケ月間保存した後、温度20±2℃、相対湿度65±5%の室内にて湿分不透過性材料より成形材本体(粒状体を内包する水透過性材料)を取り出し、目視とラテックス製ゴム手袋を付けた手で水透過性材料に触れ、粒状体にコーティングした湿気硬化型ウレタンプレポリマーが水透過性材料に移行があるか否かの浸透状況を調べ、全く浸透なしを◎、やや浸透を○、浸透を×とした。又成形材本体を20℃の水に10秒間浸し、引き上げ、余分な水を除き、30分間放置後の硬化状態を調べ、十分な硬化強度が得られたものを○、硬化強度が得られなかったものを×とした。これらの結果は表4に示されている。
【0041】即ち、実施例1は湿気硬化型ウレタンプレポリマーの粘度の低い方の限界であるが保存安定性において水透過性材料への浸透はあったが漏れまでには至らず使用可能であった。実施例2は湿気硬化型ウレタンプレポリマーの粘度の最適値で、保存安定性に問題なく使用可能であった。実施例3は湿気硬化型ウレタンプレポリマーの粘度の高い限界であるが、保存安定性に問題はなく使用可能であった。実施例4は湿気硬化型ウレタンプレポリマーに揺変性付与剤を添加したもので、保存安定性は極めて良好で使用に適していた。実施例5は水透過性材料の開口径が粒状体よりも小さく外への流出はなく、伸縮性のよい水透過性材料のため採形性はよく使用可能であった。実施例6は水透過性材料の伸縮率が15%以上であり、採形性がよく使用可能であった。これに対し、比較例1は湿気硬化型ウレタンプレポリマーの粘度が低い限界以下で、保存安定性において湿気硬化型ウレタンプレポリマーの水透過性材料への滲み込み漏れがあり使用不可能であった。比較例2は湿気硬化型ウレタンプレポリマーの粘度が高く、最終的な成形材の製造が不可能であった。比較例3は粒状体と湿気硬化型ウレタンプレポリマーとが反応するため使用不可能であった。比較例4は粒状体の大きさが水透過性材料の開口より小さいため外部に流出し使用不可能であった。比較例5は水透過性材料と湿気硬化型ウレタンプレポリマーとが反応するため使用不可能であった。
【0042】次に本発明の成形材を使用して放射線治療用頭頚部固定具を製作する側を説明する。頭頚部用サイズの成形材(表4の実施例4に記載した組合わせのもので、水透過性材料サイズ200×300(mm)に湿気硬化型ウレタンプレポリマーをコートした粒状体を約2.5リットル封入し、湿分不透過性材料にて包装された成形材)、水槽、バスタオルを用意し、先ず湿分不透過性材料包材を開封し、成形材本体を15〜25℃の水の入った水槽に5〜10秒間浸し、水槽より引き上げ余分の水を切り、図2に示すようにバスタオル21を敷いた上に成形材本体22を設置し、その上に患者の頭頚部23がくるよう寝かせ、頭頚部23の外側に出ている成形材本体の部分24を手で頭頚部23に寄せ、5〜10分後患者を起こし、乾燥させると、頭頚部に完全に合致した窪みを有する形状に硬化した頭頚部固定具が得られる。この頭頚部固定具は軽量で通気性を有し、適度のクッション性を有し、この頭頚部固定具で患者を横臥させることにより、頭頚部は常に一定の位置に固定され、適切な放射線治療をすることができる。
【0043】次に本発明の成形材により座席用固定具の作成例を説明する。座席用サイズの成形材(表4の実施例4に記載した組み合わせのもので、水透過性材料サイズ:400×800(mm)に湿気硬化型ウレタンプレポリマーをコートした粒状体を約12リットル封入し、湿分不透過性材料にて包装したもの)を開封し、成形材本体を取り出し15〜20℃の水に5〜10秒間浸した後引き上げ、余分な水を十分切り予め適用する椅子にバスタオルを敷いた上にほぼ均等の厚みになるよう設置し、患者又は採形者を座らせ、体の両側に出ている部分を体側に寄せ、5〜10分後変形しなくなった後採形者を立たせ、乾燥させると、採形者の体形に合致した曲面を有する形状に硬化した座席用固定具が得られる。この座席用固定具は長期間使用しても疲れず、褥創も発生せず、かつ通気性もあるため快適な座り心地が得られる。
【0044】
【発明の効果】本発明によれば、各対象となる人体のそれぞれ異なる体形に正確に合致した曲面形状を有する各種の装具、器具を極めて容易に、かつ短時間に得ることができ、しかも本発明の成形材は長期間保存してあってもなんら変質することなく使用することができる。また本発明の成形材により作られた装具、器具は軽量で通気性よく、適度のクッション性があるから、装具、器具を快適に使用することができ、取扱いも容易で耐久性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の断面図である。
【図2】本発明の成形材を使用して頭頚部固定具を製作する方法の説明図である。
【符号の説明】
1 粒状体
2 湿気硬化型ウレタンプレポリマー
3 水透過性材料
4 成形材本体
5 湿分不透過性材料
6 成形材
22 成形材本体
23 頭頚部
24 成形材本体の部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】 湿気硬化型ウレタンプレポリマーでコーティングした粒状体の所定量を粒状体の大きさより小さい開口を有する水透過性材料で包み、この粒状体を包んだ水透過性材料を湿分不透過性材料で密封し、湿気硬化型ウレタンプレポリマーと水透過性材料とは相互に非反応性で低接着性であることを特徴とする成形材。
【請求項2】 湿気硬化型ウレタンプレポリマーでコーティングした粒状体との間の接着力が0.5kg/25mm以下であることを特徴とする請求項1記載の成形材。
【請求項3】 水透過性材料が湿気硬化型ウレタンプレポリマーと非反応性で、繊維集合体から成る糸で形成された編み物、織物もしくは不織布、又はモノフィラメントからなるメッシュであることを特徴とする請求項1記載の成形材。
【請求項4】 水透過性材料が湿気硬化型ウレタンプレポリマーと非反応性で、少なくとも一つの方向に15%以上の伸びを有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の成形材。
【請求項5】 湿気硬化型ウレタンプレポリマーがポリイソシアナートとポリオールからなるポリウレタンプレポリマーで、硬化時間が2分から30分になる量の触媒を含む一液型であることを特徴とする請求項1記載の成形材
【請求項6】 湿気硬化型ウレタンプレポリマーが揺変性付与剤を含むことを特徴とする請求項1記載の成形材。
【請求項7】 湿気硬化型ウレタンプレポリマーが揺変性付与剤を含み、粘度が10〜2000P(20℃)であることを特徴とする請求項6記載の成形材。
【請求項8】 湿気硬化型ウレタンプレポリマーに含まれる揺変性付与剤がD−ソルビトールと芳香族アルデヒドとのアセタール化反応により合成される化合物であることを特徴とする請求項6記載の成形材。
【請求項9】 粒状体が湿気硬化型ウレタンプレポリマーと非反応性の表面を有する素材から成り、見掛け比重が1、5以下であることを特徴とする請求項1記載の成形材。

【図1】
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【図2】
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