扁平上皮細胞癌および腺癌ならびにその高悪性度の前駆病変の検出用の新たな分子マーカ
本発明は、HPV誘導の、もしくは肺の、扁平上皮細胞癌および/または腺癌ならびにその高悪性度の前駆病変の検出用の、本発明の遺伝子を含む新たなマーカを提供する。検出は、核酸アッセイ、またはこの遺伝子によって産生されるたんぱくのアッセイのいずれかによる、この遺伝子の過剰発現または下方調節の検出によって行うことが可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断の分野、特に癌の診断に関し、より詳細には、扁平上皮細胞癌および腺癌、ならびにそれらの高悪性度の前駆病変の診断に関する。
【背景技術】
【0002】
扁平上皮細胞および腺癌の発症は、一連の前癌病変によって特徴づけられ、これらは、軽度の異形成症、中程度の異形成症、および重度の異形成症/上皮内癌として段階付けられる。扁平上皮細胞および腺癌は、子宮頸部、膣、肛門、頭および首、ならびに肺などの種々の器官の粘膜内層から発症し得る。
【0003】
過去10年にわたって、一部の扁平上皮細胞癌および腺癌が、高リスクヒトパピローマウイルス(hrHPV)の感染によって開始され得ることが充分に確立されてきた。この因果関係は、子宮頸癌に関する疫学的研究および機能的研究から明らかとなっている(
zur Hausen, Nat Rev Cancer 2002年;2:342−350;Bosch et al., J Clin Pathol. 2002年;55:244−265)。頸部扁平上皮細胞癌(SCC)の最大99.7%(Walboomers et al.,J. Pathol. 1999年:189:12−19)、ならびに頸部腺癌および腺扁平上皮癌の少なくとも94%(Zielinski et al.,J Pathol 2003年:201:535−543)において、hrHPV DNAが検出された。p53およびRb腫瘍抑制経路をそれぞれ攪乱する、ウイルス癌遺伝子E6およびE7の発現が、腫瘍形成の発症および悪性表現型の維持の双方に不可欠であると示されてきた。しかし、発癌の多段階プロセスと調和して、hrHPV感染細胞の浸潤癌への進行には、宿主細胞ゲノムにおける付加的変化が必要とされる。
【0004】
HPVに関連しない扁平上皮細胞癌において、これらの経路は、これらの腫瘍の病因の初期の事象として認識されてきた、遺伝子突然変異および/または欠失などの他の手段によって、攪乱される。hrHPV誘導病変の場合のように、攪乱されたp53およびRb経路による病変の、前癌病変および癌への進行には、細胞ゲノムにおける付加的変化も必要とされる。これらの付加的変化は、HPVによって引起される病変と、p53およびRb経路を、たばこの煙中の発癌物質への暴露の結果などの他の手段によって攪乱される病変とにおいて、等しいだろう。腫瘍抑制遺伝子TSLC1/CADM1の不活化の例があり、これは、一部のhrHPV誘導子宮頸癌(Steenbergen et al.,J Natl Cancer
Inst. 2004年:96:294−305)および肺癌(Kuramochi et al.,Nature Genetics 2001年:27:427−430)の双方において役割を果たし、後者は通常hrHPVとは独立して発症する。
【0005】
発癌の根拠をなす多数の事象に合致するのは、hrHPVに感染した患者を含む、p53およびRb経路の攪乱の形跡を示す上皮細胞を有するごく一部の患者だけが前癌病変または癌を発症するという観察である。
【0006】
現在、頸部hrHPV感染した女性などのリスクのある人々の間で、高悪性度の前癌病変、ならびに扁平上皮細胞癌および腺癌を、高い特異性を持って予測するマーカを欠いている。このようなマーカは、費用効果的な初期の検出プログラムにとって最も重要である。しかし、p53およびRb経路が攪乱された細胞の悪性形質転換を駆り立てることのできる事象の不均一性が、単一のマーカでは悪性疾患に対する充分な感度を欠くことを示している。したがって、発明者らは、p53および/またはRb経路が攪乱された細胞から出現し得る、全ての癌およびその高悪性度の前駆段階をカバーする、種々のマーカから成るパネルが必須であると結論した。
【発明の概要】
【0007】
革新的な統計方法と組合わせた、頸部扁平上皮細胞癌、頸部腺癌、およびHPV不死化上皮細胞のin vitroモデルシステムの細胞系の、ゲノムプロファイリングおよび発現プロファイリングによって得られた3つのデータセットを用いることによって、発明者らは今回、多数の遺伝子の過剰発現および/または下方調節が、ヒトの頸部扁平上皮細胞癌および腺癌、ならびにその高悪性度の前駆病変と高度に相関することを発見した。例において示されるように、今まで分析されてきた全ての頸部扁平上皮細胞癌および腺癌を検出するのに、3つの遺伝子のマーカパネルで充分であった。
【0008】
ゆえに、本発明は、表1に列挙された1もしくはそれ以上の遺伝子の過剰発現について、および/または表2の1もしくはそれ以上の遺伝子の下方調節について、臨床サンプルの細胞を評価することによる、扁平上皮細胞癌もしくは腺癌またはその高悪性度の前駆病変の検出方法を含む。好ましくは、この方法は、頸癌または前癌頸部病変の検出を含み、より好ましくは、この扁平上皮細胞癌もしくは腺癌またはその高悪性度の前駆病変は、hrHPV感染浸潤癌またはその高悪性度の前駆病変である。別の実施形態において、本方法は、肺扁平上皮細胞癌またはその高悪性度の前駆病変の検出を含む。
【0009】
過剰発現または下方調節の評価は、好ましくは、核酸アッセイによって、または遺伝子産物の濃度を評価することによって、好ましくは免疫アッセイによって、実行される。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、表1または表2の少なくとも1つの遺伝子、より好ましくは少なくとも2つの遺伝子、より好ましくは少なくとも3つの遺伝子、より好ましくは少なくとも4つの遺伝子、より好ましくは少なくとも5つの遺伝子、より好ましくは少なくとも6つの遺伝子、最も好ましくは少なくとも7つの遺伝子を標的とする、1またはそれ以上の核酸アッセイを含む。好ましくは、このアッセイは、表1および表2に列挙される3〜6の遺伝子を標的とする。表1または表2のより多くの数の遺伝子が、本発明のアッセイにおいて評価されることも可能である。さらに、アッセイは加えてコントロール遺伝子を標的とする。
【0011】
本発明ではまた、扁平上皮細胞癌または腺癌およびその高悪性度の前駆病変の検出用キットを提供し、この検出用キットは、対象者からサンプルを採取する手段、任意で、このサンプルの保存手段、ならびに表1および表2に列挙される1またはそれ以上の遺伝子の過剰発現または下方調節の検出手段を含む。
【0012】
さらに別の実施形態において、本発明は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)によって認識され得る、および/またはCTLを誘導し得る腫瘍関連抗原として機能する、表1に列挙される遺伝子のポリペプチド、ペプチドまたは遺伝子配列に基づく、抗原特異的免疫療法による、扁平上皮細胞癌または腺癌およびその高悪性度の前駆病変の治療方法を含む。(ポリ)ペプチド配列は、特定のアミノ酸配列の1または複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入または付加を受け、さらに免疫誘導活性が付与されている、アミノ酸配列を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】リアルタイムRT−PCRの結果の図である。リアルタイムRT−PCRによる、標準曲線のために使用した細胞系のRNAに対する、コントロール患者(双方とも正常な子宮頸膣部および子宮頸部)、ならびに扁平上皮細胞癌(SSC)および腺癌(AdCA)から採取したサンプルにおけるITGAV遺伝子の発現。Y軸に、腫瘍細胞系のRNAに基づく、標準曲線に対する発現レベル(2log)を与える。
【図1B】リアルタイムRT−PCRの結果の図である。同様に、SYCP2についてである。
【図1C】リアルタイムRT−PCRの結果の図である。同様に、DTX3Lについてである。
【図2A】HPV不死化細胞およびコントロールの、AQP3のリアルタイムRT−PCRの図である。
【図2B】正常頸部上皮および頸癌の、AQP3のリアルタイムRT−PCRの図である。
【図3】マイクロアレイ分析によって判定された、正常頸部上皮と比較した倍率変化(FC)が、マイクロアレイCGHおよび発現分析の統合によって識別された7遺伝子について示される図である。
【図4】表1および表2の遺伝子の配列である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、独特な一連の頸部組織検体およびHPV不死化ケラチン生成細胞系から得られる3つのデータセットが組合わされる、革新的なアプローチに基づいている。
【0015】
第1データセットは、頸部扁平上皮細胞癌、頸部腺癌および正常な上皮コントロールのmRNA発現プロファイリングに基づいており、正常なコントロールと比較して、頸癌において異なった形で発現される遺伝子を含む。第2データセットは、発現プロファイリングに利用されるのと同じ、頸部扁平上皮細胞癌および頸部腺癌のセットの、比較ゲノムハイブリダイゼーションアレイ(CGHアレイ)を用いる、発現プロファイリングおよびゲノムプロファイリングの統合に基づいている(Wilting et al.,J Pathol 2006年:209:220−230)。第3データセットは、HPV不死化ケラチン生成細胞の明確なin vitroモデルシステムのmRNA発現プロファイリングに基づいている(Steenbergen et al.,J Natl Cancer Inst 2001年:93:865−872)。このモデルシステム内の全ての細胞系は、同じ遺伝的背景および非遺伝的背景を有するので、このモデルシステム内で識別される、異なる形で発現される遺伝子はマーカ遺伝子を意味し、これらのマーカ遺伝子は、(非)遺伝的背景の差異の結果であるというよりはむしろ、癌細胞の重要な特徴である不死化に特異的に関連する。
【0016】
これらのデータセットの比較は、DNAのコピー数の変化が、変化した染色体領域に座乗する遺伝子の発現レベルの変化を必ずしも反映していないことを明らかにした。このことは、発現マーカが、単にDNAプロファイルのみから推測され得ないことを示している。逆に、ある染色体領域の遺伝子の発現の変化が、その領域のDNAのコピー数の変化によって常に反映されるとは限らない。これらの発見は、候補マーカ遺伝子の最も包括的なパネルの選抜のために、種々のデータセットを組合わせることの価値を強調している。
【0017】
3つのデータセットを組合わせることによって、64のマーカ遺伝子が識別され、これらは、正常な上皮細胞と比較して、一部の頸癌およびHPV不死化細胞において、異なった形で発現される。表1に列挙されるこれらの内の30の遺伝子が、正常な上皮コントロールと比較して、頸癌/HPV不死化細胞における過剰発現を明らかにした。表2に列挙される他の34遺伝子が、正常な上皮コントロールと比較して、頸癌/HPV不死化細胞において下方調節されることがわかった。
【0018】
表1および表2に列挙される遺伝子およびその遺伝子産物は、価値ある分子マーカ源を提供し、この源から、浸潤性のある、癌およびこの癌の高悪性度の前駆病変を診断するために、マーカパネルを構成することができる。第二に、表1に列挙される遺伝子の(ポリ)ペプチド配列が、癌、およびこの癌の高悪性度の前駆病変の、免疫療法による治療のための、価値ある腫瘍抗原源を提供する。
【0019】
「発現」は、遺伝子の、構造RNA(rRNA、tRNA)またはメッセンジャRNA(mRNA)への転写を、そして該当する場合、以降のたんぱくへの翻訳を表す。
【0020】
用語「浸潤癌」は、周辺組織に浸潤する癌を表す。
用語「HPV誘導浸潤癌」は、周辺組織に浸潤する高リスクHPVによって誘導される癌を表す。用語「浸潤頸癌」は、周辺組織に浸潤する頸癌を表す。
【0021】
用語「浸潤肺癌」は、周辺組織に浸潤する肺癌を表す。用語「高悪性度の前癌病変」および「高悪性度の前駆病変」は、癌に進行する機会がかなり増大した、癌への多段階の細胞進化における局面を表す。従来の形態学では、病理学者は、個々の患者において前癌病変が進行するのか退行するのかを予測することができない。本特許出願は、浸潤癌への進行を予測することができる方法に言及する。
【0022】
用語「浸潤潜在力」は、周辺組織に浸潤し、最終的に腫瘍になる潜在力を表す。
用語「高悪性度の前癌頸部病変」または「高悪性度の頸部前駆病変」は、頸部癌に進行する機会がかなり増大した、頸部癌への多段階の細胞進化における局面を表す。従来の形態学では、病理学者は、個々の患者において頸部前癌病変が進行するのか退行するのかを予測することができない。
【0023】
用語「に特異的にハイブリダイズすることができる」は、相補的核酸配列と特異的に塩基対合することができ、かつ結合して核酸二量体を形成することができる核酸配列を表す。
【0024】
「相補体」または「相補的配列」は、ワトソン−クリックの塩基対合則に従って、別のヌクレオチド配列と水素結合二量体を形成するヌクレオチド配列である。たとえば、5’−AAGGCT−3’の相補的塩基配列は、3’−TTCCGA−5’である。
【0025】
用語「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、たとえば温度、塩濃度、pH、ホルムアミド濃度などといった、ハイブリッドの安定性に影響を及ぼすハイブリダイゼーション条件を表す。これらの条件は、特異的結合を最大にし、かつプライマまたはプローブの標的核酸配列との非特異的結合を最小にするように、経験的に最適化される。使用される用語は、プローブまたはプライマが標的配列にハイブリダイズして、検出の程度が他の配列よりも大きくなる(たとえば、バックグラウンドに対して少なくとも2倍)条件への言及を含む。ストリンジェントな条件は、配列依存的であり、異なる状況において違ってくる。より大きな配列ほど、より高い温度にて特異的にハイブリダイズする。概して、ストリンジェントな条件は、規定されたイオン強度およびpHにて、特異的な配列の溶解温度(Tm)よりも約5℃低くなるように選択される。Tmは、(規定されたイオン強度およびpHで)相補的標的配列の50%が、完全に一致するプローブまたはプライマにハイブリダイズする温度である。通常、ストリンジェントな条件は、塩濃度が、約1.0M Naイオン未満であり、通常、pH7.0〜8.3にて約0.01〜1.0M Naイオン濃度(または他の塩)であり、温度が、短いプローブまたはプライマ(たとえば10〜50ヌクレオチド)で少なくとも約30℃であり、長いプローブまたはプライマ(たとえば50ヌクレオチド超)で少なくとも約60℃である条件である。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドなどの不安定剤の付加によって達成されてもよい。典型的な低ストリンジェント条件または「ストリンジェンシを下げた条件」は、37℃での30% ホルムアミド、1M NaCl、1% SDSのバッファ溶液によるハイブリダイゼーションおよび40℃での2×SSC中での洗浄を含む。典型的な高ストリンジェンシ条件は、37℃での50% ホルムアミド、1M NaCl、1% SDSにおけるハイブリダイゼーションおよび60℃での0.1×SSC中での洗浄を含む。ハイブリダイゼーション手順は、当該技術においてよく知られており、たとえば、Ausubel et al,(Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons Inc.,1994年)に記載されている。
【0026】
用語「オリゴヌクレオチド」は、リン酸結合(たとえば、ホスホジエステル、アルキルおよびアリルリン酸エステル、ホスホロチオエート)または非リン結合(たとえばペプチド、スルファメートなど)によって結合されるヌクレオチドモノマの短い配列(通常6〜100ヌクレオチド)を表す。オリゴヌクレオチドは、修飾塩基(たとえば5−メチルシトシン)および修飾糖類(たとえば2’−O−メチルリボシル、2’−O−メトキシエチルリボシル、2’−フルオロリボシル、2’−アミノリボシルなど)を有する修飾ヌクレオチドを含んでよい。オリゴヌクレオチドは、環状、分枝状または線状の、二本鎖および一本鎖DNAならびに二本鎖および一本鎖RNAの、天然由来の分子または合成分子であってよく、任意で安定二次構造を形成することもできるドメインを含んでよい(たとえば、ステムおよびループ構造ならびにループ−ステム−ループ構造)。
【0027】
ここで使用される用語「プライマ」は、核酸鎖に相補的なプライマの伸長産物の合成が誘導される条件下、すなわち、ヌクレオチド、およびDNAポリメラーゼなどの重合剤が存在し、かつ適切な温度およびpHの条件下にある場合、増幅標的にアニールし、DNAポリメラーゼが付着してDNA合成の開始点として機能することを可能とするオリゴヌクレオチドを表す。(増幅)プライマは好ましくは、増幅の最大効率のために一本鎖である。好ましくは、プライマはオリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマは、重合剤の存在下で伸長産物の合成を促すほど充分に長くなければならない。プライマの正確な長さは、温度およびプライマ源を含む多くの要因に依拠する。ここで使用される「二方向プライマ対」は、PCR増幅などにおけるDNA増幅の技術において共通して使用される1つのフォワードプライマおよび1つのリバースプライマを表す。
【0028】
用語「プローブ」は、標的核酸配列検体における相補的配列またはそのcDNA派生物を認識し、それとの水素結合二量体を形成する一本鎖オリゴヌクレオチド配列を表す。
【0029】
「発現」は、遺伝子の、構造RNA(rRNA、tRNA)またはメッセンジャRNA(mRNA)への転写を、そして該当する場合、以降のたんぱくへの翻訳を表す。
【0030】
ポリヌクレオチドは、同じ生物において同時に自然発生していない場合、互いに「非相同」である。ポリヌクレオチドは、生物においてその特定の形態および配置で自然発生していない場合、その生物と非相同である。
【0031】
ポリヌクレオチドは、2つの配列におけるヌクレオチドの配列が、ここに記載されるような最大一致でアライメントされるときに同じである場合、「相同」配列を有する。2またはそれ以上のポリヌクレオチド間の配列比較は、通常、局所領域の配列類似性を識別および比較するための比較ウィンドウ全体にわたる2つの配列の部分を比較することによって、実行される。比較ウィンドウは概して約20〜200の連続ヌクレオチドに及ぶ。50,60,70,80,90,95,98,99または100パーセントの配列ホモロジなどの、ポリヌクレオチドの「配列相同性のパーセンテージ」が、比較ウィンドウにわたって最適にアライメントされた2つの配列を比較することによって判定され得、比較ウィンドウにおけるポリヌクレオチド配列の部分は、2つの配列の最適アライメントの参照配列(付加または欠失を含まない)と比較すると、付加または欠失(すなわちギャップ)を含み得る。パーセンテージは:(a)双方の配列において、同一の核酸塩基が生じる位置の数を判定して、一致する位置の数を求め;(b)一致する位置の数を、比較ウィンドウにおける位置の総数によって除し;および(c)結果に100を乗じて、配列ホモロジのパーセンテージを求める;ことによって計算される。比較のための配列の最適なアライメントは、周知のアルゴリズムのコンピュータ実行によって、または検査によって行われてよい。容易に入手可能な配列比較および多配列アライメントアルゴリズムは、それぞれ、Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschul, S.F. et al. 1990年.J. Mol. Biol. 215:403;Altschul, S.F. et al. 1997年.Nucleic Acid Res. 25:3389−3402)およびClustalWプログラムであり、双方ともインターネット上で入手可能である。他の適切なプログラムは、Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group(GCG)、米国ウィスコンシン州マディソン)のGAP、
BESTFITおよびFASTAを含む。
【0032】
ここでは、「実質的に相補的」は、2つの核酸配列が少なくとも約65%、好ましくは約70%、より好ましくは80%、さらにより好ましくは90%、および最も好ましくは約98%の配列相補性を互いに有することを意味する。このことは、プライマおよびプローブが、テンプレートおよび標的核酸に対してそれぞれ、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするほど充分な相補性を示さなければならないことを意味する。したがって、本明細書に開示されるプライマ配列はテンプレートの結合領域の正確な配列を反映する必要がなく、縮重プライマを使用することができる。実質的に相補的なプライマ配列は、増幅テンプレートに対して、プライマ結合および第二鎖合成をもたらすのに充分な配列相補性を有する配列である。
【0033】
用語「ハイブリッド」は、相補的ヌクレオチド間の水素結合によって形成される、二本鎖核酸分子または二量体を表す。用語「ハイブリダイズする」または「アニールする」は、核酸配列の一本鎖同士が相補的ヌクレオチド間の水素結合を介して二重らせんのセグメントを形成するプロセスを表す。
【0034】
特定の細胞またはサンプルにおける遺伝子の「過剰発現」または「上方調節」は、mRNAが、コントロール細胞またはコントロールサンプルよりも特定の細胞またはサンプルの遺伝子から多く転写されることを意味する。代わりに、発現のこの増大は、細胞における遺伝子産物(たんぱく)の濃度から測定することができる。発現の増大は、コントロールにおける発現の少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍以上にならなければならない。発現のこの増大は、コントロールサンプルにおける遺伝子の発現に対して、または同じサンプル内でのコントロール遺伝子の発現に対して、測定することができる。
【0035】
特定の細胞またはサンプルにおける遺伝子の「不足発現」または「下方調節」は、mRNAが、コントロール細胞またはコントロールサンプルよりも特定の細胞またはサンプルの遺伝子から少なく転写されることを意味する。代わりに、発現のこの低下は、細胞における遺伝子産物(たんぱく)の濃度から測定することができる。発現の低下は、コントロールにおける発現の少なくとも0.5倍、好ましくは少なくとも0.25倍、より好ましくは少なくとも0.1倍以下にならなければならない。発現のこの低下は、コントロールサンプルにおける遺伝子の発現に対して、または同じサンプル内でのコントロール遺伝子の発現に対して、測定することができる。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
表1および表2の遺伝子の発現は、遺伝子転写物を測定することによって検出されてよい。このため、これらの遺伝子におけるたんぱくのコード領域は、遺伝子の転写物の検出のためのマーカ配列を与える。さらに別の代替において、遺伝子の発現は、遺伝子によって産生されるたんぱくを測定することによって直接的に検出されてもよい。
【0039】
したがって、アッセイに用いられる細胞成分は、RNA、好ましくはmRNAなどの核酸、またはたんぱくであり得る。細胞成分がたんぱくである場合、試薬は概して、遺伝子によって産生されるたんぱくに対する抗体である。成分が核酸である場合、試薬は概して、核酸(DNAまたはRNA)プローブまたは(PCR)プライマである。このようなプローブまたはプライマを用いることによって、mRNAなどの遺伝子発現産物がたとえば検出されてよい。
【0040】
試験細胞成分は、直接in situで検出されてもよく、または試薬と接触させる前に当該技術の当業者に周知の共通の方法によって、他の細胞成分から単離されてもよい(たとえば、「Current Protocols in Molecular Biology」,Ausubel et al. 1995年.第4版,John Wiley and Sons;「A Laboratory Guide to RNA: Isolation, analysis, and synthesis」,Krieg(編),1996年,Wiley-Liss;「Molecular Cloning: A laboratory manual」,J. Sambrook, E.F. Fritsch.1989年.3巻,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press参照)。
【0041】
検出方法は、ノザンブロット分析、RNaseプロテクション、免疫アッセイ、in situハイブリダイゼーション、PCR(Mullis 1987年、US4,683,195号、US4,683,202号、およびUS4,800,159号)、LCR(Barany 1991年,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:189−193;EP320,308号)、3SR(Guatelli et al.,1990年,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874−1878)、SDA(US5,270,184号およびUS5,455,166号)、TAS(Kwoh et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173−1177)、Q−Betaレプリカーゼ(Lizardi et al.,1988年,Bio/Technology 6:1197)、ローリングサークル増幅(RCA)または他のcDNA/DNA増幅方法などの分析を含む。代替の方法において、RNAは、NASBA(L. Malek et al.,1994年,Meth. Molec. Biol. 28,36章,Isaac PG編,Humana Press, Inc.,ニュージャージ州トトワ)またはTMAなどの方法によって検出されてもよい。これらは、限られた量の入力材料を用いて1つのサンプルにおける多重標的の同時検出を可能とする、マイクロ流体アレイプラットホーム上のPCR分析を含む。核酸プローブ、プライマおよび抗体は、たとえば、放射性同位体、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤、酵素、またはビオチンもしくはジゴキシゲニンなどの生体関連結合構造体で、検出可能に標識され得る。当該技術の当業者は、試薬に結合するのに適した他の標識について知り、またはルーチン実験をしてこれを確定することができる。
【0042】
他の検出方法は、核酸アレイによって実行され得るような分析を含む(とりわけChee
et al.,1996年,Science 274(5287):610−614参照)。このようなアレイは、核酸細胞成分にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる配列を有するオリゴヌクレオチドを含み、本発明の方法において核酸細胞成分のレベルを検出することが可能である。
【0043】
本発明は、扁平上皮細胞癌および腺癌の検出のための核酸アッセイまたは免疫アッセイを提供し、表1または表2の少なくとも1つの遺伝子、より好ましくは2つの遺伝子、より好ましくは3つの遺伝子、より好ましくは4つの遺伝子、より好ましくは5つの遺伝子、より好ましくは6つの遺伝子、最も好ましくは少なくとも7つの遺伝子を標的とする。
【0044】
本発明の別の実施形態は、扁平上皮細胞癌および腺癌の発現の存在もしくはリスク、または高悪性度の前癌病変の発現もしくはリスクを予測する方法であり:
a.患者からたとえば頸部標本もしくは肺検体といった組織サンプルを採取し;
b.サンプルから核酸および/もしくはたんぱくを単離し;
c1.この核酸の遺伝子発現プロファイルを、本発明に従う核酸アッセイでアッセイすることによって、分析する;または
c2.このたんぱくの溶解物の遺伝子発現を、本発明に従う免疫アッセイでアッセイすることによって、分析し;
d.表1および表2に列挙される1もしくはそれ以上の遺伝子の発現を識別し;
e.ステップdに見られる発現に基づいて、リスクを評価することを含む。好ましくは、上記の方法のサンプルは採取したてのサンプルである。
【0045】
遺伝子発現分析は好ましくは、核酸アッセイまたは免疫アッセイを用いてなされる。
遺伝子発現を調査するために、アッセイは、臨床的に関連する源に由来するポリヌクレオチド分子またはたんぱくを、この場合、たとえば、扁平上皮細胞もしくは腺癌またはその高悪性度の前駆病変が疑われる患者由来のサンプルを、標的とするべきである。したがって、好ましくは、採取したての(サンプリングから2日以内)サンプル、またはRNAおよび/もしくはたんぱくの保存を保証する保存液に収集されたサンプルが、利用可能である必要がある。この標的ポリヌクレオチド分子は、発現されたRNAまたはそれに由来する核酸(たとえばcDNA、またはRNAポリメラーゼプロモータを組込むcDNA由来の増幅RNA)でなければならない。標的分子がRNAから成る場合、これは、全細胞RNA、ポリ(A)+メッセンジャRNA(mRNA)もしくはその一部分、細胞質mRNA、またはcDNAから転写されたRNA(cRNA)であり得る。全RNAおよびポリ(A)+メッセンジャRNAの調製方法が、当該技術において周知であり、たとえばSambrook et al.(1989年.Molecular Cloning- A Laboratory Manual (第2版)1〜3巻,Cold Spring Harbor,ニューヨーク)に記載されている。1つの実施形態において、RNAは、グアニジニウムチオシアネート溶解後のCsCl遠心分離を利用して、細胞から抽出される(Chrigwin et al.,(1979年)Biochem.18:5294−5299)。別の実施形態において、全RNAは、シリカゲルベースのカラムを用いて抽出され、このカラムの市販の例は、RNeasy(Qiagen,米国カリフォルニア州バレンシア)およびStrataPrep(Stratagene,米国カリフォルニア州ラホーヤ)を含む。別の実施形態において、全RNAは、市販のRNA単離試薬を用いて抽出され、試薬の例は、Trizol(Life Technologies,オランダ、ブレダ)およびRNAbee(Tel-Test Inc.,米国テキサス州フレンズウッド)を含む。別の実施形態において、全RNAは、自動核酸抽出プラットフォームを用いて抽出され、プラットフォームの例は、Nuclisens EasyMAG(BioMerieux,米国ノースカロライナ州ダラム)である。ポリ(A)+メッセンジャRNAは、たとえば、oligo-dTセルロースによる選択によって、または代替として、oligo-dTもしくはヘキサマのプライマによる(primed)、全細胞RNAの逆転写によって、選択することが可能である。別の実施形態において、本発明によって分析されるポリヌクレオチド分子は、cDNA、または増幅RNAもしくはcDNAのPCR産物を含む。
【0046】
対象者における扁平上皮細胞癌または腺癌の存在を予測または判定したい場合、実行者は、対象者からサンプルを採取するべきであり、RNAの単離後、表1または表2の少なくとも1、好ましくは3〜6の遺伝子の発現が判定されるべきである。これらの発現データを標準化するために、評価される対象者の発現プロファイルを判定するのに使用されている核酸アッセイに存在する、腫瘍状態によって影響を受けないコントロール遺伝子または要素(ハウスキーピング遺伝子など)の発現データを活用して、変異に関するデータを補正することが可能である。1つのコントロール遺伝子の代わりに、コントロール遺伝子プールの平均値をとることもできる。この補正は、たとえば、試験された各遺伝子の発現レベルを、コントロール遺伝子/要素の発現レベルで除することによって、なされ得る。
【0047】
本発明の目的のために、表1または表2由来の遺伝子産物に特異的な抗体が、生体液または組織サンプル中の遺伝子によって産生されるポリペプチドの存在を検出および定量化するのに使用されてもよい。
【0048】
本発明の目的のために、表1または表2由来の遺伝子のポリヌクレオチドに特異的なプローブが、生体液または組織サンプル中の遺伝子のポリヌクレオチドを検出および定量化するのに使用されてもよい。
【0049】
表1および表2の遺伝子の、検出可能な量のポリヌクレオチドまたはコードされるポリペプチドを含むあらゆる検体を、使用することができる。核酸を、当該技術の当業者に知られる、in situハイブリダイゼーションなどのRNA in situ方法によって分析することもできる。本発明の方法に従って試験するのに好ましいサンプルは、(頸部)標本および/または(頸部)生検材料などの検体を含む。好ましくは、細胞(頸部)掻取り(scrape)、自己サンプリング頸/膣検体、痰および/または頸部生検材料が、試験用サンプルとして使用される。対象者はどのような哺乳類でも可能であるが、好ましくは対象者はヒトである。
【0050】
本発明の方法は、表1および表2に列挙される遺伝子によってコードされるポリペプチドと免疫反応性を示す抗体を利用することができ、ポリペプチドの予測されるアミノ酸配列は、これらの表に列挙されるGenBankの系統番号から入手可能であり、または抗体の免疫反応性フラグメントを利用することができる。異なるエピトープ特異性を有するプールされたモノクローナル抗体から本質的に成る抗体調製物、および独特なモノクローナル抗体調製物を使用することが可能である。モノクローナル抗体は、当該技術の当業者に周知の方法によって、たんぱくのフラグメントを含む抗原に対して製造される(Kohler, et
al.,Nature,256:495,1975年)。
【0051】
本発明において使用される用語抗体は、表1(および表2)に列挙される遺伝子のエピトープ決定基と結合することができる、無傷分子ならびにFabおよびF(ab’)2などのそのフラグメントを含むことを意図されている。ここで使用される抗体はまた、ミニ抗体、ペプチド模倣薬、アンチカリンなどの、抗原結合特異性を有する他のたんぱくまたは非たんぱく分子を表す。
【0052】
モノクローナル抗体は、本発明の診断方法においては、たとえば、モノクローナル抗体が液相で利用可能である、または固相キャリアに結合することが可能である免疫アッセイにおいて使用することが可能であ。加えて、これらの免疫アッセイにおけるモノクローナル抗体は、種々の方法で検出可能に標識することができる。本発明のモノクローナル抗体を利用することができる免疫アッセイタイプの例は、直接フォーマットまたは間接フォーマットのいずれかにおける競合免疫アッセイおよび非競合免疫アッセイである。このような免疫アッセイの例は、放射免疫アッセイ(RIA)およびサンドイッチ(免疫メトリック)アッセイである。本発明のモノクローナル抗体を用いる抗原の検出は、フォワードモード、リバースモード、または同時モードのいずれかで走らせる免疫アッセイを利用して行うことができ、生理学的サンプルの免疫組織化学アッセイまたは免疫細胞化学アッセイを含む。当該技術の当業者は、過度の実験をせずに、他の免疫アッセイフォーマットを知るか、これを容易に識別することができる。
【0053】
モノクローナル抗体は、表1および表2の遺伝子の遺伝子産物の存在を検出するのに使用される多くの異なるキャリアに結合することが可能である。周知のキャリアの例は、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然セルロースおよび変性セルロース、ポリアクリルアミド、アガロースならびにマグネタイトを含む。キャリアの特質は、本発明の目的のためには可溶性であっても不溶性であってもよい。当該技術の当業者は、モノクローナル抗体の結合に適した他のキャリアについて知り、またはルーチン実験をしてこれを確定することができる。
【0054】
アッセイを行う際、ある「ブロッカ」を培養培地に含めることが所望される(通常、可溶性の標識抗体とともに付加される)。「ブロッカ」は、実験サンプルに存在する免疫グロブリンに対する、非特異的たんぱく、プロテアーゼ、または抗異好性免疫グロブリンが、固体相支持体上の抗体、または放射標識指示抗体にクロスリンクして、またはその抗体を破壊して、擬陽性または擬陰性の結果をもたらさないことを保証するために、付加される。したがって、ブロッカの選択は、本発明に記載されるアッセイの特異性を実質的に増大させることが可能である。アッセイに使用されるのと同じクラスまたはサブクラス(アイソタイプ)の、関係のない(すなわち非特異的な)多くの抗体(たとえばIgGl、IgG2a、IgMなど)を、「ブロッカ」として使用することができる。検体において相互に生じるクロス反応性たんぱくによるあらゆる不所望の干渉をさらに阻害するのに適切な感度を維持するために、「ブロッカ」の濃度(通常1〜100μg/μL)が重要である。
【0055】
表1および表2に列挙される遺伝子の遺伝子産物の産生または遺伝子発現の検出のための他の診断方法は、頸部または他の組織由来の細胞調製物を含む試験サンプルが与えられる方法を含む。好ましくはこのようなサンプルは、(頸部)掻取り、自己サンプリング頸/膣検体、または痰として与えられる。効率的な試験計画を提供するために、hrHPV陽性検体が頸部の試験サンプルとして使用される。
【0056】
ヒトから得られる細胞または組織サンプルは、このサンプルに含まれる試験細胞の標識細胞成分を、表1および表2に列挙される1またはそれ以上の遺伝子の遺伝子産物を検出する試薬と接触させ、比較可能な正常細胞と比較して増大または低下を検出することを可能とするように、適切に前処理される。サンプルは、個々の細胞の観察を可能とするのに適した支持体に乗せられてよい。周知の支持材の例は、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリウレタンを含み、サンプルの細胞粘着および固定化を改良するための、ポリ−L−リジンまたはシランなどの層が任意で与えられる。頸部標本または生検材料は、たとえば、パパニコロ(Pap)試験、または当業者によって知られるようなこの試験の適切なあらゆる改良のために、調製されてよく、標的成分への試薬の適切なアクセスを可能とする手順によって固定されてよい。本発明のある実施形態において、細胞学的検体は、従来の標本サンプル、頸部細胞の薄層調製物、自己サンプリング頸/膣検体、または他のあらゆる種類の、当該技術の当業者に知られる調製物として、与えられる。保存が求められる場合、ルーチン手順は、固定用緩衝ホルマリンを用いてその後パラフィン包埋し、よく保存された組織基盤を提供する。免疫組織化学染色または免疫細胞化学染色を可能とするために、サンプル材料の抗原性が、回復すなわち脱マスキングされなければならない。ホルムアルデヒドクロスリンクたんぱくの抗原性を回復する1つの方法は、サンプルのたんぱく分解酵素での処理を含む。この方法は、材料の(部分)消化をもたらし、もとのたんぱくの単なるフラグメントが抗体によってアクセスされ得る。
【0057】
ホルムアルデヒドクロスリンク抗原の免疫反応性を回復する別の方法は、サンプルの熱処理または高エネルギ処理を用いる熱プロセスを含む。このような方法は、たとえばUS5,244,787号に記載されている。さらに別の、ホルムアルデヒド固定組織からの抗原回復方法は、たとえばNorton(1994年.J. Pathol. 173(4):371−9)およびTaylor et al.(1996年.Biotech Histochem 71(5):263−70)などに記載されるような、マイクロ波と組合せた、またはオートクレイブの形式のいずれかの、圧力釜(たとえば2100-Retriever)の使用である。
【0058】
エタノール、メタノール、メタカンもしくはグリオキサール、クエン酸アセトンなどの、ホルムアルデヒドの種々の代替を使用してもよく、または固定剤を組合わせて使用してもよい。代わりに、サンプルは、さらなるプロセス前に風乾されてもよい。
【0059】
核酸プローブによる検出を可能とするために、サンプル材料は、ホルマリン固定およびパラフィン包埋された材料の場合、回復すなわち脱マスキングされなければならない。1つの方法は、たんぱく分解酵素での処理およびパラホルムアルデヒドでの後固定を含む。たんぱく分解消化に先立って、HCl中の変性行程があってよい。この方法は、プローブの標的への侵入(entry)を可能とする材料の(部分)消化をもたらす。たとえば凍結材料といった非ホルマリン固定材料の場合、特異的脱マスキング手順は必要とされない。ハイブリダイゼーションに先立ち、サンプルを、トリエタノールアミン緩衝液での処理によってアセチル化することができる。
【0060】
本発明はまた、対象者の試験細胞において、扁平上皮細胞癌および腺癌、ならびにその高悪性度の前駆病変を検出する方法における使用のための部品のキットを提供する。このようなキットは、たとえば頸部掻取りまたは肺ブラシといった、疑われる粘膜組織を掻取るためのブラシまたはへら、ならびに試験細胞を収集するための収集培地で満たされた容器などの、サンプルの採取手段および保存手段を適切に含んでよい。代わりに、頸部−膣洗浄によって頸部細胞を収集するために、洗浄シリンジ、使い捨ての女性用尿カテーテル、および洗浄液の入った容器から成るサンプリング装置が含まれる。
【0061】
本発明に従うキットは、表1および表2に列挙される遺伝子のmRNA発現の検出のためのプライマおよびプローブを有してよい。別の実施形態において、本発明に従うキットは、頸部掻取りまたは他の組織検体における、表1および表2の遺伝子によって発現されるたんぱくのたんぱく発現の検出のための抗体および試薬を含んでよい。
【0062】
本発明は、以下の非限定の例によって説明される。
実施例
1.組織および細胞系において差次的に発現される遺伝子
表1および表2に列挙される遺伝子の差次的発現を確認するために、以下の遺伝子:ITGAV, SYCP2, DTX3L, SEMP1, DEK, ATP2C1, SLC25A36およびPIK3R4のmRNAの発現をリアルタイムRT−PCR分析によって測定した。この目的のために、RNAを、22の頸部扁平上皮細胞癌、8の頸部腺癌、15の高悪性度の頸部上皮内癌(CIN)病変および24の正常上皮コントロール(正常子宮頸膣部n=13および正常子宮頸部n=11)から抽出した。ITGAV, SYCP2, DTX3L SEMP1, DEK, ATP2C1, PIK3R4およびSLC25A36は、正常子宮頸膣部と比較して、扁平上皮細胞癌において有意な過剰発現を示した(図1の例参照)。加えて、DTX3Lは、正常子宮頸部と比較して、腺癌において有意な過剰発現を示した(図1)。レーザキャプチャマイクロダイセクションによって異型細胞についてエンリッチした、15の高悪性度のCIN病変から単離したRNAの分析によって、症例の60%(9/15)でITGAVの、症例の40%(6/15)でATP2C1の、症例の80%(12/15)でDEKの、症例の73%(11/15)でSLC25A36の、および症例の67%(7/15)でPIK3R4の、発現の増大を実証した。
【0063】
別の遺伝子について、コントロール細胞(n=4)と比較したHPV不死化細胞(n=8)、および正常頸部上皮細胞(n=1)と比較した頸癌(n=8)の双方におけるAQP3の発現の低下を、リアルタイムRT−PCRによって確認した(図2)。
【0064】
マイクロアレイ分析によって検出された2倍を超える過剰発現に基づいて、3つの遺伝子のマーカパネル(すなわち、DTX3L、FLJ21291およびCCDC14またはITGAVの組合わせ)によって、100%の頸部扁平上皮細胞癌および100%の頸部腺癌の検出が可能であった(図3)。
【0065】
加えて、ITGAV, DTX3L, DEK, ATP2C1, SLC25A36およびPIK3R4のmRNAの発現に関するリアルタイムRT−PCR分析を、20の肺扁平上皮細胞癌および20の正常肺サンプル(癌に隣接)で行った。ITGAV, DTX3L, ATP2C1, SLC25A36およびPIK3R4のmRNAの発現は、正常なコントロールサンプルと比較して、癌において有意に増大した。
RT−PCRに使用したプライマを表3に要約した。
【0066】
【表3】
【0067】
25の高悪性度のCIN病変および8の頸部扁平上皮細胞癌のPIK3R4およびDTX3Lの免疫組織化学分析によって、双方のたんぱくの発現の増大を確認した。頸部扁平上皮細胞癌の100%(PIK3R4)および85%(DTX3L)ならびに高悪性度のCIN病変の65%(
PIK3R4)および41%(DTX3L)が、たんぱくの過剰発現を明らかにした。
【0068】
2の肺扁平上皮細胞癌のパイロット実験によっても、これらの腫瘍におけるPIK3R4たんぱく発現の増大を明らかにした。
【0069】
2.頸部掻取りのマーカ遺伝子分析
POBASCAMトライアルに参加している女性のネスティドケースコントロールデザインを用いて、追跡の18カ月内で≧CIN 2(1の癌を含む)が診断された50人のhrHPV陽性症例の女性、対、18カ月の追跡期間内でCIN 1かそれよりも良好な100人のhrHPV陽性コントロールの女性の、頸部掻取りを研究した。これらの女性のベースライン時の頸部掻取りを、汎用収集培地に収集し、リアルタイムPCRによるDTX3LおよびPIK3R4のmRNAの発現分析にかけた。後者について、追跡の5年間に疾患の兆候のなかったhrHPV陰性の女性の頸部掻取りのプールを、標準の参照として役立てた。サンプルは、繰返し実験の平均比[症例サンプルのDTX3LまたはPIK3R4遺伝子のmRNAコピー:ハウスキーピング遺伝子のmRNAコピー]/[標準参照サンプルのDTX3LまたはPIK3R4遺伝子のmRNAコピー:ハウスキーピング遺伝子のmRNAコピー]が≧1.5である症例で、差次的発現が陽性であると記録した。何もなかったコントロールに対して、ハウスキーピング遺伝子に対するDTX3LおよびPIK3R4の発現比の増大が、21および28の症例でそれぞれ見られた。これらの遺伝子の1またはそれ以上について、総計36の症例が、比率の増大を明らかにした。
【図1】
【図2】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断の分野、特に癌の診断に関し、より詳細には、扁平上皮細胞癌および腺癌、ならびにそれらの高悪性度の前駆病変の診断に関する。
【背景技術】
【0002】
扁平上皮細胞および腺癌の発症は、一連の前癌病変によって特徴づけられ、これらは、軽度の異形成症、中程度の異形成症、および重度の異形成症/上皮内癌として段階付けられる。扁平上皮細胞および腺癌は、子宮頸部、膣、肛門、頭および首、ならびに肺などの種々の器官の粘膜内層から発症し得る。
【0003】
過去10年にわたって、一部の扁平上皮細胞癌および腺癌が、高リスクヒトパピローマウイルス(hrHPV)の感染によって開始され得ることが充分に確立されてきた。この因果関係は、子宮頸癌に関する疫学的研究および機能的研究から明らかとなっている(
zur Hausen, Nat Rev Cancer 2002年;2:342−350;Bosch et al., J Clin Pathol. 2002年;55:244−265)。頸部扁平上皮細胞癌(SCC)の最大99.7%(Walboomers et al.,J. Pathol. 1999年:189:12−19)、ならびに頸部腺癌および腺扁平上皮癌の少なくとも94%(Zielinski et al.,J Pathol 2003年:201:535−543)において、hrHPV DNAが検出された。p53およびRb腫瘍抑制経路をそれぞれ攪乱する、ウイルス癌遺伝子E6およびE7の発現が、腫瘍形成の発症および悪性表現型の維持の双方に不可欠であると示されてきた。しかし、発癌の多段階プロセスと調和して、hrHPV感染細胞の浸潤癌への進行には、宿主細胞ゲノムにおける付加的変化が必要とされる。
【0004】
HPVに関連しない扁平上皮細胞癌において、これらの経路は、これらの腫瘍の病因の初期の事象として認識されてきた、遺伝子突然変異および/または欠失などの他の手段によって、攪乱される。hrHPV誘導病変の場合のように、攪乱されたp53およびRb経路による病変の、前癌病変および癌への進行には、細胞ゲノムにおける付加的変化も必要とされる。これらの付加的変化は、HPVによって引起される病変と、p53およびRb経路を、たばこの煙中の発癌物質への暴露の結果などの他の手段によって攪乱される病変とにおいて、等しいだろう。腫瘍抑制遺伝子TSLC1/CADM1の不活化の例があり、これは、一部のhrHPV誘導子宮頸癌(Steenbergen et al.,J Natl Cancer
Inst. 2004年:96:294−305)および肺癌(Kuramochi et al.,Nature Genetics 2001年:27:427−430)の双方において役割を果たし、後者は通常hrHPVとは独立して発症する。
【0005】
発癌の根拠をなす多数の事象に合致するのは、hrHPVに感染した患者を含む、p53およびRb経路の攪乱の形跡を示す上皮細胞を有するごく一部の患者だけが前癌病変または癌を発症するという観察である。
【0006】
現在、頸部hrHPV感染した女性などのリスクのある人々の間で、高悪性度の前癌病変、ならびに扁平上皮細胞癌および腺癌を、高い特異性を持って予測するマーカを欠いている。このようなマーカは、費用効果的な初期の検出プログラムにとって最も重要である。しかし、p53およびRb経路が攪乱された細胞の悪性形質転換を駆り立てることのできる事象の不均一性が、単一のマーカでは悪性疾患に対する充分な感度を欠くことを示している。したがって、発明者らは、p53および/またはRb経路が攪乱された細胞から出現し得る、全ての癌およびその高悪性度の前駆段階をカバーする、種々のマーカから成るパネルが必須であると結論した。
【発明の概要】
【0007】
革新的な統計方法と組合わせた、頸部扁平上皮細胞癌、頸部腺癌、およびHPV不死化上皮細胞のin vitroモデルシステムの細胞系の、ゲノムプロファイリングおよび発現プロファイリングによって得られた3つのデータセットを用いることによって、発明者らは今回、多数の遺伝子の過剰発現および/または下方調節が、ヒトの頸部扁平上皮細胞癌および腺癌、ならびにその高悪性度の前駆病変と高度に相関することを発見した。例において示されるように、今まで分析されてきた全ての頸部扁平上皮細胞癌および腺癌を検出するのに、3つの遺伝子のマーカパネルで充分であった。
【0008】
ゆえに、本発明は、表1に列挙された1もしくはそれ以上の遺伝子の過剰発現について、および/または表2の1もしくはそれ以上の遺伝子の下方調節について、臨床サンプルの細胞を評価することによる、扁平上皮細胞癌もしくは腺癌またはその高悪性度の前駆病変の検出方法を含む。好ましくは、この方法は、頸癌または前癌頸部病変の検出を含み、より好ましくは、この扁平上皮細胞癌もしくは腺癌またはその高悪性度の前駆病変は、hrHPV感染浸潤癌またはその高悪性度の前駆病変である。別の実施形態において、本方法は、肺扁平上皮細胞癌またはその高悪性度の前駆病変の検出を含む。
【0009】
過剰発現または下方調節の評価は、好ましくは、核酸アッセイによって、または遺伝子産物の濃度を評価することによって、好ましくは免疫アッセイによって、実行される。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、表1または表2の少なくとも1つの遺伝子、より好ましくは少なくとも2つの遺伝子、より好ましくは少なくとも3つの遺伝子、より好ましくは少なくとも4つの遺伝子、より好ましくは少なくとも5つの遺伝子、より好ましくは少なくとも6つの遺伝子、最も好ましくは少なくとも7つの遺伝子を標的とする、1またはそれ以上の核酸アッセイを含む。好ましくは、このアッセイは、表1および表2に列挙される3〜6の遺伝子を標的とする。表1または表2のより多くの数の遺伝子が、本発明のアッセイにおいて評価されることも可能である。さらに、アッセイは加えてコントロール遺伝子を標的とする。
【0011】
本発明ではまた、扁平上皮細胞癌または腺癌およびその高悪性度の前駆病変の検出用キットを提供し、この検出用キットは、対象者からサンプルを採取する手段、任意で、このサンプルの保存手段、ならびに表1および表2に列挙される1またはそれ以上の遺伝子の過剰発現または下方調節の検出手段を含む。
【0012】
さらに別の実施形態において、本発明は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)によって認識され得る、および/またはCTLを誘導し得る腫瘍関連抗原として機能する、表1に列挙される遺伝子のポリペプチド、ペプチドまたは遺伝子配列に基づく、抗原特異的免疫療法による、扁平上皮細胞癌または腺癌およびその高悪性度の前駆病変の治療方法を含む。(ポリ)ペプチド配列は、特定のアミノ酸配列の1または複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入または付加を受け、さらに免疫誘導活性が付与されている、アミノ酸配列を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】リアルタイムRT−PCRの結果の図である。リアルタイムRT−PCRによる、標準曲線のために使用した細胞系のRNAに対する、コントロール患者(双方とも正常な子宮頸膣部および子宮頸部)、ならびに扁平上皮細胞癌(SSC)および腺癌(AdCA)から採取したサンプルにおけるITGAV遺伝子の発現。Y軸に、腫瘍細胞系のRNAに基づく、標準曲線に対する発現レベル(2log)を与える。
【図1B】リアルタイムRT−PCRの結果の図である。同様に、SYCP2についてである。
【図1C】リアルタイムRT−PCRの結果の図である。同様に、DTX3Lについてである。
【図2A】HPV不死化細胞およびコントロールの、AQP3のリアルタイムRT−PCRの図である。
【図2B】正常頸部上皮および頸癌の、AQP3のリアルタイムRT−PCRの図である。
【図3】マイクロアレイ分析によって判定された、正常頸部上皮と比較した倍率変化(FC)が、マイクロアレイCGHおよび発現分析の統合によって識別された7遺伝子について示される図である。
【図4】表1および表2の遺伝子の配列である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、独特な一連の頸部組織検体およびHPV不死化ケラチン生成細胞系から得られる3つのデータセットが組合わされる、革新的なアプローチに基づいている。
【0015】
第1データセットは、頸部扁平上皮細胞癌、頸部腺癌および正常な上皮コントロールのmRNA発現プロファイリングに基づいており、正常なコントロールと比較して、頸癌において異なった形で発現される遺伝子を含む。第2データセットは、発現プロファイリングに利用されるのと同じ、頸部扁平上皮細胞癌および頸部腺癌のセットの、比較ゲノムハイブリダイゼーションアレイ(CGHアレイ)を用いる、発現プロファイリングおよびゲノムプロファイリングの統合に基づいている(Wilting et al.,J Pathol 2006年:209:220−230)。第3データセットは、HPV不死化ケラチン生成細胞の明確なin vitroモデルシステムのmRNA発現プロファイリングに基づいている(Steenbergen et al.,J Natl Cancer Inst 2001年:93:865−872)。このモデルシステム内の全ての細胞系は、同じ遺伝的背景および非遺伝的背景を有するので、このモデルシステム内で識別される、異なる形で発現される遺伝子はマーカ遺伝子を意味し、これらのマーカ遺伝子は、(非)遺伝的背景の差異の結果であるというよりはむしろ、癌細胞の重要な特徴である不死化に特異的に関連する。
【0016】
これらのデータセットの比較は、DNAのコピー数の変化が、変化した染色体領域に座乗する遺伝子の発現レベルの変化を必ずしも反映していないことを明らかにした。このことは、発現マーカが、単にDNAプロファイルのみから推測され得ないことを示している。逆に、ある染色体領域の遺伝子の発現の変化が、その領域のDNAのコピー数の変化によって常に反映されるとは限らない。これらの発見は、候補マーカ遺伝子の最も包括的なパネルの選抜のために、種々のデータセットを組合わせることの価値を強調している。
【0017】
3つのデータセットを組合わせることによって、64のマーカ遺伝子が識別され、これらは、正常な上皮細胞と比較して、一部の頸癌およびHPV不死化細胞において、異なった形で発現される。表1に列挙されるこれらの内の30の遺伝子が、正常な上皮コントロールと比較して、頸癌/HPV不死化細胞における過剰発現を明らかにした。表2に列挙される他の34遺伝子が、正常な上皮コントロールと比較して、頸癌/HPV不死化細胞において下方調節されることがわかった。
【0018】
表1および表2に列挙される遺伝子およびその遺伝子産物は、価値ある分子マーカ源を提供し、この源から、浸潤性のある、癌およびこの癌の高悪性度の前駆病変を診断するために、マーカパネルを構成することができる。第二に、表1に列挙される遺伝子の(ポリ)ペプチド配列が、癌、およびこの癌の高悪性度の前駆病変の、免疫療法による治療のための、価値ある腫瘍抗原源を提供する。
【0019】
「発現」は、遺伝子の、構造RNA(rRNA、tRNA)またはメッセンジャRNA(mRNA)への転写を、そして該当する場合、以降のたんぱくへの翻訳を表す。
【0020】
用語「浸潤癌」は、周辺組織に浸潤する癌を表す。
用語「HPV誘導浸潤癌」は、周辺組織に浸潤する高リスクHPVによって誘導される癌を表す。用語「浸潤頸癌」は、周辺組織に浸潤する頸癌を表す。
【0021】
用語「浸潤肺癌」は、周辺組織に浸潤する肺癌を表す。用語「高悪性度の前癌病変」および「高悪性度の前駆病変」は、癌に進行する機会がかなり増大した、癌への多段階の細胞進化における局面を表す。従来の形態学では、病理学者は、個々の患者において前癌病変が進行するのか退行するのかを予測することができない。本特許出願は、浸潤癌への進行を予測することができる方法に言及する。
【0022】
用語「浸潤潜在力」は、周辺組織に浸潤し、最終的に腫瘍になる潜在力を表す。
用語「高悪性度の前癌頸部病変」または「高悪性度の頸部前駆病変」は、頸部癌に進行する機会がかなり増大した、頸部癌への多段階の細胞進化における局面を表す。従来の形態学では、病理学者は、個々の患者において頸部前癌病変が進行するのか退行するのかを予測することができない。
【0023】
用語「に特異的にハイブリダイズすることができる」は、相補的核酸配列と特異的に塩基対合することができ、かつ結合して核酸二量体を形成することができる核酸配列を表す。
【0024】
「相補体」または「相補的配列」は、ワトソン−クリックの塩基対合則に従って、別のヌクレオチド配列と水素結合二量体を形成するヌクレオチド配列である。たとえば、5’−AAGGCT−3’の相補的塩基配列は、3’−TTCCGA−5’である。
【0025】
用語「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、たとえば温度、塩濃度、pH、ホルムアミド濃度などといった、ハイブリッドの安定性に影響を及ぼすハイブリダイゼーション条件を表す。これらの条件は、特異的結合を最大にし、かつプライマまたはプローブの標的核酸配列との非特異的結合を最小にするように、経験的に最適化される。使用される用語は、プローブまたはプライマが標的配列にハイブリダイズして、検出の程度が他の配列よりも大きくなる(たとえば、バックグラウンドに対して少なくとも2倍)条件への言及を含む。ストリンジェントな条件は、配列依存的であり、異なる状況において違ってくる。より大きな配列ほど、より高い温度にて特異的にハイブリダイズする。概して、ストリンジェントな条件は、規定されたイオン強度およびpHにて、特異的な配列の溶解温度(Tm)よりも約5℃低くなるように選択される。Tmは、(規定されたイオン強度およびpHで)相補的標的配列の50%が、完全に一致するプローブまたはプライマにハイブリダイズする温度である。通常、ストリンジェントな条件は、塩濃度が、約1.0M Naイオン未満であり、通常、pH7.0〜8.3にて約0.01〜1.0M Naイオン濃度(または他の塩)であり、温度が、短いプローブまたはプライマ(たとえば10〜50ヌクレオチド)で少なくとも約30℃であり、長いプローブまたはプライマ(たとえば50ヌクレオチド超)で少なくとも約60℃である条件である。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドなどの不安定剤の付加によって達成されてもよい。典型的な低ストリンジェント条件または「ストリンジェンシを下げた条件」は、37℃での30% ホルムアミド、1M NaCl、1% SDSのバッファ溶液によるハイブリダイゼーションおよび40℃での2×SSC中での洗浄を含む。典型的な高ストリンジェンシ条件は、37℃での50% ホルムアミド、1M NaCl、1% SDSにおけるハイブリダイゼーションおよび60℃での0.1×SSC中での洗浄を含む。ハイブリダイゼーション手順は、当該技術においてよく知られており、たとえば、Ausubel et al,(Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons Inc.,1994年)に記載されている。
【0026】
用語「オリゴヌクレオチド」は、リン酸結合(たとえば、ホスホジエステル、アルキルおよびアリルリン酸エステル、ホスホロチオエート)または非リン結合(たとえばペプチド、スルファメートなど)によって結合されるヌクレオチドモノマの短い配列(通常6〜100ヌクレオチド)を表す。オリゴヌクレオチドは、修飾塩基(たとえば5−メチルシトシン)および修飾糖類(たとえば2’−O−メチルリボシル、2’−O−メトキシエチルリボシル、2’−フルオロリボシル、2’−アミノリボシルなど)を有する修飾ヌクレオチドを含んでよい。オリゴヌクレオチドは、環状、分枝状または線状の、二本鎖および一本鎖DNAならびに二本鎖および一本鎖RNAの、天然由来の分子または合成分子であってよく、任意で安定二次構造を形成することもできるドメインを含んでよい(たとえば、ステムおよびループ構造ならびにループ−ステム−ループ構造)。
【0027】
ここで使用される用語「プライマ」は、核酸鎖に相補的なプライマの伸長産物の合成が誘導される条件下、すなわち、ヌクレオチド、およびDNAポリメラーゼなどの重合剤が存在し、かつ適切な温度およびpHの条件下にある場合、増幅標的にアニールし、DNAポリメラーゼが付着してDNA合成の開始点として機能することを可能とするオリゴヌクレオチドを表す。(増幅)プライマは好ましくは、増幅の最大効率のために一本鎖である。好ましくは、プライマはオリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマは、重合剤の存在下で伸長産物の合成を促すほど充分に長くなければならない。プライマの正確な長さは、温度およびプライマ源を含む多くの要因に依拠する。ここで使用される「二方向プライマ対」は、PCR増幅などにおけるDNA増幅の技術において共通して使用される1つのフォワードプライマおよび1つのリバースプライマを表す。
【0028】
用語「プローブ」は、標的核酸配列検体における相補的配列またはそのcDNA派生物を認識し、それとの水素結合二量体を形成する一本鎖オリゴヌクレオチド配列を表す。
【0029】
「発現」は、遺伝子の、構造RNA(rRNA、tRNA)またはメッセンジャRNA(mRNA)への転写を、そして該当する場合、以降のたんぱくへの翻訳を表す。
【0030】
ポリヌクレオチドは、同じ生物において同時に自然発生していない場合、互いに「非相同」である。ポリヌクレオチドは、生物においてその特定の形態および配置で自然発生していない場合、その生物と非相同である。
【0031】
ポリヌクレオチドは、2つの配列におけるヌクレオチドの配列が、ここに記載されるような最大一致でアライメントされるときに同じである場合、「相同」配列を有する。2またはそれ以上のポリヌクレオチド間の配列比較は、通常、局所領域の配列類似性を識別および比較するための比較ウィンドウ全体にわたる2つの配列の部分を比較することによって、実行される。比較ウィンドウは概して約20〜200の連続ヌクレオチドに及ぶ。50,60,70,80,90,95,98,99または100パーセントの配列ホモロジなどの、ポリヌクレオチドの「配列相同性のパーセンテージ」が、比較ウィンドウにわたって最適にアライメントされた2つの配列を比較することによって判定され得、比較ウィンドウにおけるポリヌクレオチド配列の部分は、2つの配列の最適アライメントの参照配列(付加または欠失を含まない)と比較すると、付加または欠失(すなわちギャップ)を含み得る。パーセンテージは:(a)双方の配列において、同一の核酸塩基が生じる位置の数を判定して、一致する位置の数を求め;(b)一致する位置の数を、比較ウィンドウにおける位置の総数によって除し;および(c)結果に100を乗じて、配列ホモロジのパーセンテージを求める;ことによって計算される。比較のための配列の最適なアライメントは、周知のアルゴリズムのコンピュータ実行によって、または検査によって行われてよい。容易に入手可能な配列比較および多配列アライメントアルゴリズムは、それぞれ、Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschul, S.F. et al. 1990年.J. Mol. Biol. 215:403;Altschul, S.F. et al. 1997年.Nucleic Acid Res. 25:3389−3402)およびClustalWプログラムであり、双方ともインターネット上で入手可能である。他の適切なプログラムは、Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group(GCG)、米国ウィスコンシン州マディソン)のGAP、
BESTFITおよびFASTAを含む。
【0032】
ここでは、「実質的に相補的」は、2つの核酸配列が少なくとも約65%、好ましくは約70%、より好ましくは80%、さらにより好ましくは90%、および最も好ましくは約98%の配列相補性を互いに有することを意味する。このことは、プライマおよびプローブが、テンプレートおよび標的核酸に対してそれぞれ、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするほど充分な相補性を示さなければならないことを意味する。したがって、本明細書に開示されるプライマ配列はテンプレートの結合領域の正確な配列を反映する必要がなく、縮重プライマを使用することができる。実質的に相補的なプライマ配列は、増幅テンプレートに対して、プライマ結合および第二鎖合成をもたらすのに充分な配列相補性を有する配列である。
【0033】
用語「ハイブリッド」は、相補的ヌクレオチド間の水素結合によって形成される、二本鎖核酸分子または二量体を表す。用語「ハイブリダイズする」または「アニールする」は、核酸配列の一本鎖同士が相補的ヌクレオチド間の水素結合を介して二重らせんのセグメントを形成するプロセスを表す。
【0034】
特定の細胞またはサンプルにおける遺伝子の「過剰発現」または「上方調節」は、mRNAが、コントロール細胞またはコントロールサンプルよりも特定の細胞またはサンプルの遺伝子から多く転写されることを意味する。代わりに、発現のこの増大は、細胞における遺伝子産物(たんぱく)の濃度から測定することができる。発現の増大は、コントロールにおける発現の少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍以上にならなければならない。発現のこの増大は、コントロールサンプルにおける遺伝子の発現に対して、または同じサンプル内でのコントロール遺伝子の発現に対して、測定することができる。
【0035】
特定の細胞またはサンプルにおける遺伝子の「不足発現」または「下方調節」は、mRNAが、コントロール細胞またはコントロールサンプルよりも特定の細胞またはサンプルの遺伝子から少なく転写されることを意味する。代わりに、発現のこの低下は、細胞における遺伝子産物(たんぱく)の濃度から測定することができる。発現の低下は、コントロールにおける発現の少なくとも0.5倍、好ましくは少なくとも0.25倍、より好ましくは少なくとも0.1倍以下にならなければならない。発現のこの低下は、コントロールサンプルにおける遺伝子の発現に対して、または同じサンプル内でのコントロール遺伝子の発現に対して、測定することができる。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
表1および表2の遺伝子の発現は、遺伝子転写物を測定することによって検出されてよい。このため、これらの遺伝子におけるたんぱくのコード領域は、遺伝子の転写物の検出のためのマーカ配列を与える。さらに別の代替において、遺伝子の発現は、遺伝子によって産生されるたんぱくを測定することによって直接的に検出されてもよい。
【0039】
したがって、アッセイに用いられる細胞成分は、RNA、好ましくはmRNAなどの核酸、またはたんぱくであり得る。細胞成分がたんぱくである場合、試薬は概して、遺伝子によって産生されるたんぱくに対する抗体である。成分が核酸である場合、試薬は概して、核酸(DNAまたはRNA)プローブまたは(PCR)プライマである。このようなプローブまたはプライマを用いることによって、mRNAなどの遺伝子発現産物がたとえば検出されてよい。
【0040】
試験細胞成分は、直接in situで検出されてもよく、または試薬と接触させる前に当該技術の当業者に周知の共通の方法によって、他の細胞成分から単離されてもよい(たとえば、「Current Protocols in Molecular Biology」,Ausubel et al. 1995年.第4版,John Wiley and Sons;「A Laboratory Guide to RNA: Isolation, analysis, and synthesis」,Krieg(編),1996年,Wiley-Liss;「Molecular Cloning: A laboratory manual」,J. Sambrook, E.F. Fritsch.1989年.3巻,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press参照)。
【0041】
検出方法は、ノザンブロット分析、RNaseプロテクション、免疫アッセイ、in situハイブリダイゼーション、PCR(Mullis 1987年、US4,683,195号、US4,683,202号、およびUS4,800,159号)、LCR(Barany 1991年,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:189−193;EP320,308号)、3SR(Guatelli et al.,1990年,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874−1878)、SDA(US5,270,184号およびUS5,455,166号)、TAS(Kwoh et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173−1177)、Q−Betaレプリカーゼ(Lizardi et al.,1988年,Bio/Technology 6:1197)、ローリングサークル増幅(RCA)または他のcDNA/DNA増幅方法などの分析を含む。代替の方法において、RNAは、NASBA(L. Malek et al.,1994年,Meth. Molec. Biol. 28,36章,Isaac PG編,Humana Press, Inc.,ニュージャージ州トトワ)またはTMAなどの方法によって検出されてもよい。これらは、限られた量の入力材料を用いて1つのサンプルにおける多重標的の同時検出を可能とする、マイクロ流体アレイプラットホーム上のPCR分析を含む。核酸プローブ、プライマおよび抗体は、たとえば、放射性同位体、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤、酵素、またはビオチンもしくはジゴキシゲニンなどの生体関連結合構造体で、検出可能に標識され得る。当該技術の当業者は、試薬に結合するのに適した他の標識について知り、またはルーチン実験をしてこれを確定することができる。
【0042】
他の検出方法は、核酸アレイによって実行され得るような分析を含む(とりわけChee
et al.,1996年,Science 274(5287):610−614参照)。このようなアレイは、核酸細胞成分にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる配列を有するオリゴヌクレオチドを含み、本発明の方法において核酸細胞成分のレベルを検出することが可能である。
【0043】
本発明は、扁平上皮細胞癌および腺癌の検出のための核酸アッセイまたは免疫アッセイを提供し、表1または表2の少なくとも1つの遺伝子、より好ましくは2つの遺伝子、より好ましくは3つの遺伝子、より好ましくは4つの遺伝子、より好ましくは5つの遺伝子、より好ましくは6つの遺伝子、最も好ましくは少なくとも7つの遺伝子を標的とする。
【0044】
本発明の別の実施形態は、扁平上皮細胞癌および腺癌の発現の存在もしくはリスク、または高悪性度の前癌病変の発現もしくはリスクを予測する方法であり:
a.患者からたとえば頸部標本もしくは肺検体といった組織サンプルを採取し;
b.サンプルから核酸および/もしくはたんぱくを単離し;
c1.この核酸の遺伝子発現プロファイルを、本発明に従う核酸アッセイでアッセイすることによって、分析する;または
c2.このたんぱくの溶解物の遺伝子発現を、本発明に従う免疫アッセイでアッセイすることによって、分析し;
d.表1および表2に列挙される1もしくはそれ以上の遺伝子の発現を識別し;
e.ステップdに見られる発現に基づいて、リスクを評価することを含む。好ましくは、上記の方法のサンプルは採取したてのサンプルである。
【0045】
遺伝子発現分析は好ましくは、核酸アッセイまたは免疫アッセイを用いてなされる。
遺伝子発現を調査するために、アッセイは、臨床的に関連する源に由来するポリヌクレオチド分子またはたんぱくを、この場合、たとえば、扁平上皮細胞もしくは腺癌またはその高悪性度の前駆病変が疑われる患者由来のサンプルを、標的とするべきである。したがって、好ましくは、採取したての(サンプリングから2日以内)サンプル、またはRNAおよび/もしくはたんぱくの保存を保証する保存液に収集されたサンプルが、利用可能である必要がある。この標的ポリヌクレオチド分子は、発現されたRNAまたはそれに由来する核酸(たとえばcDNA、またはRNAポリメラーゼプロモータを組込むcDNA由来の増幅RNA)でなければならない。標的分子がRNAから成る場合、これは、全細胞RNA、ポリ(A)+メッセンジャRNA(mRNA)もしくはその一部分、細胞質mRNA、またはcDNAから転写されたRNA(cRNA)であり得る。全RNAおよびポリ(A)+メッセンジャRNAの調製方法が、当該技術において周知であり、たとえばSambrook et al.(1989年.Molecular Cloning- A Laboratory Manual (第2版)1〜3巻,Cold Spring Harbor,ニューヨーク)に記載されている。1つの実施形態において、RNAは、グアニジニウムチオシアネート溶解後のCsCl遠心分離を利用して、細胞から抽出される(Chrigwin et al.,(1979年)Biochem.18:5294−5299)。別の実施形態において、全RNAは、シリカゲルベースのカラムを用いて抽出され、このカラムの市販の例は、RNeasy(Qiagen,米国カリフォルニア州バレンシア)およびStrataPrep(Stratagene,米国カリフォルニア州ラホーヤ)を含む。別の実施形態において、全RNAは、市販のRNA単離試薬を用いて抽出され、試薬の例は、Trizol(Life Technologies,オランダ、ブレダ)およびRNAbee(Tel-Test Inc.,米国テキサス州フレンズウッド)を含む。別の実施形態において、全RNAは、自動核酸抽出プラットフォームを用いて抽出され、プラットフォームの例は、Nuclisens EasyMAG(BioMerieux,米国ノースカロライナ州ダラム)である。ポリ(A)+メッセンジャRNAは、たとえば、oligo-dTセルロースによる選択によって、または代替として、oligo-dTもしくはヘキサマのプライマによる(primed)、全細胞RNAの逆転写によって、選択することが可能である。別の実施形態において、本発明によって分析されるポリヌクレオチド分子は、cDNA、または増幅RNAもしくはcDNAのPCR産物を含む。
【0046】
対象者における扁平上皮細胞癌または腺癌の存在を予測または判定したい場合、実行者は、対象者からサンプルを採取するべきであり、RNAの単離後、表1または表2の少なくとも1、好ましくは3〜6の遺伝子の発現が判定されるべきである。これらの発現データを標準化するために、評価される対象者の発現プロファイルを判定するのに使用されている核酸アッセイに存在する、腫瘍状態によって影響を受けないコントロール遺伝子または要素(ハウスキーピング遺伝子など)の発現データを活用して、変異に関するデータを補正することが可能である。1つのコントロール遺伝子の代わりに、コントロール遺伝子プールの平均値をとることもできる。この補正は、たとえば、試験された各遺伝子の発現レベルを、コントロール遺伝子/要素の発現レベルで除することによって、なされ得る。
【0047】
本発明の目的のために、表1または表2由来の遺伝子産物に特異的な抗体が、生体液または組織サンプル中の遺伝子によって産生されるポリペプチドの存在を検出および定量化するのに使用されてもよい。
【0048】
本発明の目的のために、表1または表2由来の遺伝子のポリヌクレオチドに特異的なプローブが、生体液または組織サンプル中の遺伝子のポリヌクレオチドを検出および定量化するのに使用されてもよい。
【0049】
表1および表2の遺伝子の、検出可能な量のポリヌクレオチドまたはコードされるポリペプチドを含むあらゆる検体を、使用することができる。核酸を、当該技術の当業者に知られる、in situハイブリダイゼーションなどのRNA in situ方法によって分析することもできる。本発明の方法に従って試験するのに好ましいサンプルは、(頸部)標本および/または(頸部)生検材料などの検体を含む。好ましくは、細胞(頸部)掻取り(scrape)、自己サンプリング頸/膣検体、痰および/または頸部生検材料が、試験用サンプルとして使用される。対象者はどのような哺乳類でも可能であるが、好ましくは対象者はヒトである。
【0050】
本発明の方法は、表1および表2に列挙される遺伝子によってコードされるポリペプチドと免疫反応性を示す抗体を利用することができ、ポリペプチドの予測されるアミノ酸配列は、これらの表に列挙されるGenBankの系統番号から入手可能であり、または抗体の免疫反応性フラグメントを利用することができる。異なるエピトープ特異性を有するプールされたモノクローナル抗体から本質的に成る抗体調製物、および独特なモノクローナル抗体調製物を使用することが可能である。モノクローナル抗体は、当該技術の当業者に周知の方法によって、たんぱくのフラグメントを含む抗原に対して製造される(Kohler, et
al.,Nature,256:495,1975年)。
【0051】
本発明において使用される用語抗体は、表1(および表2)に列挙される遺伝子のエピトープ決定基と結合することができる、無傷分子ならびにFabおよびF(ab’)2などのそのフラグメントを含むことを意図されている。ここで使用される抗体はまた、ミニ抗体、ペプチド模倣薬、アンチカリンなどの、抗原結合特異性を有する他のたんぱくまたは非たんぱく分子を表す。
【0052】
モノクローナル抗体は、本発明の診断方法においては、たとえば、モノクローナル抗体が液相で利用可能である、または固相キャリアに結合することが可能である免疫アッセイにおいて使用することが可能であ。加えて、これらの免疫アッセイにおけるモノクローナル抗体は、種々の方法で検出可能に標識することができる。本発明のモノクローナル抗体を利用することができる免疫アッセイタイプの例は、直接フォーマットまたは間接フォーマットのいずれかにおける競合免疫アッセイおよび非競合免疫アッセイである。このような免疫アッセイの例は、放射免疫アッセイ(RIA)およびサンドイッチ(免疫メトリック)アッセイである。本発明のモノクローナル抗体を用いる抗原の検出は、フォワードモード、リバースモード、または同時モードのいずれかで走らせる免疫アッセイを利用して行うことができ、生理学的サンプルの免疫組織化学アッセイまたは免疫細胞化学アッセイを含む。当該技術の当業者は、過度の実験をせずに、他の免疫アッセイフォーマットを知るか、これを容易に識別することができる。
【0053】
モノクローナル抗体は、表1および表2の遺伝子の遺伝子産物の存在を検出するのに使用される多くの異なるキャリアに結合することが可能である。周知のキャリアの例は、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然セルロースおよび変性セルロース、ポリアクリルアミド、アガロースならびにマグネタイトを含む。キャリアの特質は、本発明の目的のためには可溶性であっても不溶性であってもよい。当該技術の当業者は、モノクローナル抗体の結合に適した他のキャリアについて知り、またはルーチン実験をしてこれを確定することができる。
【0054】
アッセイを行う際、ある「ブロッカ」を培養培地に含めることが所望される(通常、可溶性の標識抗体とともに付加される)。「ブロッカ」は、実験サンプルに存在する免疫グロブリンに対する、非特異的たんぱく、プロテアーゼ、または抗異好性免疫グロブリンが、固体相支持体上の抗体、または放射標識指示抗体にクロスリンクして、またはその抗体を破壊して、擬陽性または擬陰性の結果をもたらさないことを保証するために、付加される。したがって、ブロッカの選択は、本発明に記載されるアッセイの特異性を実質的に増大させることが可能である。アッセイに使用されるのと同じクラスまたはサブクラス(アイソタイプ)の、関係のない(すなわち非特異的な)多くの抗体(たとえばIgGl、IgG2a、IgMなど)を、「ブロッカ」として使用することができる。検体において相互に生じるクロス反応性たんぱくによるあらゆる不所望の干渉をさらに阻害するのに適切な感度を維持するために、「ブロッカ」の濃度(通常1〜100μg/μL)が重要である。
【0055】
表1および表2に列挙される遺伝子の遺伝子産物の産生または遺伝子発現の検出のための他の診断方法は、頸部または他の組織由来の細胞調製物を含む試験サンプルが与えられる方法を含む。好ましくはこのようなサンプルは、(頸部)掻取り、自己サンプリング頸/膣検体、または痰として与えられる。効率的な試験計画を提供するために、hrHPV陽性検体が頸部の試験サンプルとして使用される。
【0056】
ヒトから得られる細胞または組織サンプルは、このサンプルに含まれる試験細胞の標識細胞成分を、表1および表2に列挙される1またはそれ以上の遺伝子の遺伝子産物を検出する試薬と接触させ、比較可能な正常細胞と比較して増大または低下を検出することを可能とするように、適切に前処理される。サンプルは、個々の細胞の観察を可能とするのに適した支持体に乗せられてよい。周知の支持材の例は、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリウレタンを含み、サンプルの細胞粘着および固定化を改良するための、ポリ−L−リジンまたはシランなどの層が任意で与えられる。頸部標本または生検材料は、たとえば、パパニコロ(Pap)試験、または当業者によって知られるようなこの試験の適切なあらゆる改良のために、調製されてよく、標的成分への試薬の適切なアクセスを可能とする手順によって固定されてよい。本発明のある実施形態において、細胞学的検体は、従来の標本サンプル、頸部細胞の薄層調製物、自己サンプリング頸/膣検体、または他のあらゆる種類の、当該技術の当業者に知られる調製物として、与えられる。保存が求められる場合、ルーチン手順は、固定用緩衝ホルマリンを用いてその後パラフィン包埋し、よく保存された組織基盤を提供する。免疫組織化学染色または免疫細胞化学染色を可能とするために、サンプル材料の抗原性が、回復すなわち脱マスキングされなければならない。ホルムアルデヒドクロスリンクたんぱくの抗原性を回復する1つの方法は、サンプルのたんぱく分解酵素での処理を含む。この方法は、材料の(部分)消化をもたらし、もとのたんぱくの単なるフラグメントが抗体によってアクセスされ得る。
【0057】
ホルムアルデヒドクロスリンク抗原の免疫反応性を回復する別の方法は、サンプルの熱処理または高エネルギ処理を用いる熱プロセスを含む。このような方法は、たとえばUS5,244,787号に記載されている。さらに別の、ホルムアルデヒド固定組織からの抗原回復方法は、たとえばNorton(1994年.J. Pathol. 173(4):371−9)およびTaylor et al.(1996年.Biotech Histochem 71(5):263−70)などに記載されるような、マイクロ波と組合せた、またはオートクレイブの形式のいずれかの、圧力釜(たとえば2100-Retriever)の使用である。
【0058】
エタノール、メタノール、メタカンもしくはグリオキサール、クエン酸アセトンなどの、ホルムアルデヒドの種々の代替を使用してもよく、または固定剤を組合わせて使用してもよい。代わりに、サンプルは、さらなるプロセス前に風乾されてもよい。
【0059】
核酸プローブによる検出を可能とするために、サンプル材料は、ホルマリン固定およびパラフィン包埋された材料の場合、回復すなわち脱マスキングされなければならない。1つの方法は、たんぱく分解酵素での処理およびパラホルムアルデヒドでの後固定を含む。たんぱく分解消化に先立って、HCl中の変性行程があってよい。この方法は、プローブの標的への侵入(entry)を可能とする材料の(部分)消化をもたらす。たとえば凍結材料といった非ホルマリン固定材料の場合、特異的脱マスキング手順は必要とされない。ハイブリダイゼーションに先立ち、サンプルを、トリエタノールアミン緩衝液での処理によってアセチル化することができる。
【0060】
本発明はまた、対象者の試験細胞において、扁平上皮細胞癌および腺癌、ならびにその高悪性度の前駆病変を検出する方法における使用のための部品のキットを提供する。このようなキットは、たとえば頸部掻取りまたは肺ブラシといった、疑われる粘膜組織を掻取るためのブラシまたはへら、ならびに試験細胞を収集するための収集培地で満たされた容器などの、サンプルの採取手段および保存手段を適切に含んでよい。代わりに、頸部−膣洗浄によって頸部細胞を収集するために、洗浄シリンジ、使い捨ての女性用尿カテーテル、および洗浄液の入った容器から成るサンプリング装置が含まれる。
【0061】
本発明に従うキットは、表1および表2に列挙される遺伝子のmRNA発現の検出のためのプライマおよびプローブを有してよい。別の実施形態において、本発明に従うキットは、頸部掻取りまたは他の組織検体における、表1および表2の遺伝子によって発現されるたんぱくのたんぱく発現の検出のための抗体および試薬を含んでよい。
【0062】
本発明は、以下の非限定の例によって説明される。
実施例
1.組織および細胞系において差次的に発現される遺伝子
表1および表2に列挙される遺伝子の差次的発現を確認するために、以下の遺伝子:ITGAV, SYCP2, DTX3L, SEMP1, DEK, ATP2C1, SLC25A36およびPIK3R4のmRNAの発現をリアルタイムRT−PCR分析によって測定した。この目的のために、RNAを、22の頸部扁平上皮細胞癌、8の頸部腺癌、15の高悪性度の頸部上皮内癌(CIN)病変および24の正常上皮コントロール(正常子宮頸膣部n=13および正常子宮頸部n=11)から抽出した。ITGAV, SYCP2, DTX3L SEMP1, DEK, ATP2C1, PIK3R4およびSLC25A36は、正常子宮頸膣部と比較して、扁平上皮細胞癌において有意な過剰発現を示した(図1の例参照)。加えて、DTX3Lは、正常子宮頸部と比較して、腺癌において有意な過剰発現を示した(図1)。レーザキャプチャマイクロダイセクションによって異型細胞についてエンリッチした、15の高悪性度のCIN病変から単離したRNAの分析によって、症例の60%(9/15)でITGAVの、症例の40%(6/15)でATP2C1の、症例の80%(12/15)でDEKの、症例の73%(11/15)でSLC25A36の、および症例の67%(7/15)でPIK3R4の、発現の増大を実証した。
【0063】
別の遺伝子について、コントロール細胞(n=4)と比較したHPV不死化細胞(n=8)、および正常頸部上皮細胞(n=1)と比較した頸癌(n=8)の双方におけるAQP3の発現の低下を、リアルタイムRT−PCRによって確認した(図2)。
【0064】
マイクロアレイ分析によって検出された2倍を超える過剰発現に基づいて、3つの遺伝子のマーカパネル(すなわち、DTX3L、FLJ21291およびCCDC14またはITGAVの組合わせ)によって、100%の頸部扁平上皮細胞癌および100%の頸部腺癌の検出が可能であった(図3)。
【0065】
加えて、ITGAV, DTX3L, DEK, ATP2C1, SLC25A36およびPIK3R4のmRNAの発現に関するリアルタイムRT−PCR分析を、20の肺扁平上皮細胞癌および20の正常肺サンプル(癌に隣接)で行った。ITGAV, DTX3L, ATP2C1, SLC25A36およびPIK3R4のmRNAの発現は、正常なコントロールサンプルと比較して、癌において有意に増大した。
RT−PCRに使用したプライマを表3に要約した。
【0066】
【表3】
【0067】
25の高悪性度のCIN病変および8の頸部扁平上皮細胞癌のPIK3R4およびDTX3Lの免疫組織化学分析によって、双方のたんぱくの発現の増大を確認した。頸部扁平上皮細胞癌の100%(PIK3R4)および85%(DTX3L)ならびに高悪性度のCIN病変の65%(
PIK3R4)および41%(DTX3L)が、たんぱくの過剰発現を明らかにした。
【0068】
2の肺扁平上皮細胞癌のパイロット実験によっても、これらの腫瘍におけるPIK3R4たんぱく発現の増大を明らかにした。
【0069】
2.頸部掻取りのマーカ遺伝子分析
POBASCAMトライアルに参加している女性のネスティドケースコントロールデザインを用いて、追跡の18カ月内で≧CIN 2(1の癌を含む)が診断された50人のhrHPV陽性症例の女性、対、18カ月の追跡期間内でCIN 1かそれよりも良好な100人のhrHPV陽性コントロールの女性の、頸部掻取りを研究した。これらの女性のベースライン時の頸部掻取りを、汎用収集培地に収集し、リアルタイムPCRによるDTX3LおよびPIK3R4のmRNAの発現分析にかけた。後者について、追跡の5年間に疾患の兆候のなかったhrHPV陰性の女性の頸部掻取りのプールを、標準の参照として役立てた。サンプルは、繰返し実験の平均比[症例サンプルのDTX3LまたはPIK3R4遺伝子のmRNAコピー:ハウスキーピング遺伝子のmRNAコピー]/[標準参照サンプルのDTX3LまたはPIK3R4遺伝子のmRNAコピー:ハウスキーピング遺伝子のmRNAコピー]が≧1.5である症例で、差次的発現が陽性であると記録した。何もなかったコントロールに対して、ハウスキーピング遺伝子に対するDTX3LおよびPIK3R4の発現比の増大が、21および28の症例でそれぞれ見られた。これらの遺伝子の1またはそれ以上について、総計36の症例が、比率の増大を明らかにした。
【図1】
【図2】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表1に列挙された1もしくはそれ以上の遺伝子の過剰発現について、および/または表2の1もしくはそれ以上の遺伝子の下方調節について、組織サンプルの細胞を評価することによって扁平上皮細胞癌もしくは腺癌またはその高悪性度の前駆病変を検出する方法。
【請求項2】
前記扁平上皮細胞癌もしくは腺癌またはその高悪性度の前駆病変が、頸癌または前癌頸部病変であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記扁平上皮細胞癌もしくは腺癌またはその高悪性度の前駆病変が、非頸部起源のhrHPV感染浸潤癌またはその高悪性度の前駆病変であることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記扁平上皮細胞癌もしくは腺癌またはその高悪性度の前駆病変が、肺癌またはその高悪性度の前駆病変であることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
過剰発現および/または下方調節の評価が、核酸アッセイによって実行されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
過剰発現および/または下方調節の評価が、遺伝子産物の濃度を評価することによって、好ましくは免疫アッセイによって実行されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記過剰発現および/または前記下方調節が、表1または表2に列挙される少なくとも2つの遺伝子、好ましくは少なくとも3つの遺伝子、より好ましくは少なくとも4つの遺伝子、より好ましくは少なくとも5つの遺伝子、より好ましくは少なくとも6つの遺伝子、最も好ましくは少なくとも7つの遺伝子についてアッセイされることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記組織サンプルが、頸部標本、頸部(または肺)ブラシ、自己サンプリング頸/膣検体、痰、洗浄および/または頸部生検材料であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
扁平上皮細胞癌もしくは腺癌またはその高悪性度の前駆病変の検出用キットであって、対象者からサンプルを採取する手段、任意で、前記サンプルの保存手段、ならびに表1および表2に列挙される1またはそれ以上の遺伝子の過剰発現または下方調節の検出手段を含むことを特徴とするキット。
【請求項10】
表1に列挙される遺伝子から選択される(修飾/コドン最適化された)アミノ酸配列のペプチドまたはポリペプチドを用いる、扁平上皮細胞癌もしくは腺癌またはその高悪性度の前駆病変の(免疫療法の)治療方法であって、ペプチドは、細胞傷害性Tリンパ球によって認識される、および/または細胞傷害性Tリンパ球を誘導することを特徴とする方法。
【請求項1】
表1に列挙された1もしくはそれ以上の遺伝子の過剰発現について、および/または表2の1もしくはそれ以上の遺伝子の下方調節について、組織サンプルの細胞を評価することによって扁平上皮細胞癌もしくは腺癌またはその高悪性度の前駆病変を検出する方法。
【請求項2】
前記扁平上皮細胞癌もしくは腺癌またはその高悪性度の前駆病変が、頸癌または前癌頸部病変であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記扁平上皮細胞癌もしくは腺癌またはその高悪性度の前駆病変が、非頸部起源のhrHPV感染浸潤癌またはその高悪性度の前駆病変であることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記扁平上皮細胞癌もしくは腺癌またはその高悪性度の前駆病変が、肺癌またはその高悪性度の前駆病変であることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
過剰発現および/または下方調節の評価が、核酸アッセイによって実行されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
過剰発現および/または下方調節の評価が、遺伝子産物の濃度を評価することによって、好ましくは免疫アッセイによって実行されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記過剰発現および/または前記下方調節が、表1または表2に列挙される少なくとも2つの遺伝子、好ましくは少なくとも3つの遺伝子、より好ましくは少なくとも4つの遺伝子、より好ましくは少なくとも5つの遺伝子、より好ましくは少なくとも6つの遺伝子、最も好ましくは少なくとも7つの遺伝子についてアッセイされることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記組織サンプルが、頸部標本、頸部(または肺)ブラシ、自己サンプリング頸/膣検体、痰、洗浄および/または頸部生検材料であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
扁平上皮細胞癌もしくは腺癌またはその高悪性度の前駆病変の検出用キットであって、対象者からサンプルを採取する手段、任意で、前記サンプルの保存手段、ならびに表1および表2に列挙される1またはそれ以上の遺伝子の過剰発現または下方調節の検出手段を含むことを特徴とするキット。
【請求項10】
表1に列挙される遺伝子から選択される(修飾/コドン最適化された)アミノ酸配列のペプチドまたはポリペプチドを用いる、扁平上皮細胞癌もしくは腺癌またはその高悪性度の前駆病変の(免疫療法の)治療方法であって、ペプチドは、細胞傷害性Tリンパ球によって認識される、および/または細胞傷害性Tリンパ球を誘導することを特徴とする方法。
【図3】
【図4】
【図4】
【公表番号】特表2010−537191(P2010−537191A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521803(P2010−521803)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【国際出願番号】PCT/NL2008/050556
【国際公開番号】WO2009/025551
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(510048602)
【住所又は居所原語表記】De Boelelaan 1105,Amsterdam The Netherlands
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【国際出願番号】PCT/NL2008/050556
【国際公開番号】WO2009/025551
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(510048602)
【住所又は居所原語表記】De Boelelaan 1105,Amsterdam The Netherlands
【Fターム(参考)】
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