説明

扉の埋め込み取手

【課題】 扉パネルの板厚寸法に関係なく、取り付け孔のカット寸法を変更するだけで、工具無しで、きわめて簡単に取り付け可能な扉用の埋め込み取手を提供する。
【解決手段】扉の埋め込み取手1は、合成樹脂で一体に形成された膨出板部4と、フランジ部5とを具備する本体2と、これを扉パネル31に固定するためのファスナ3とからなる。本体2の膨出板部4は、取り付け孔32に前面側から嵌め込まれて、扉の前面側に開口6を有する受け入れ凹部7と、フランジ部5との間で取り付け孔32の一側縁部32aを保持する膨出部8とを形成する。フランジ部5は、扉パネル31の前面に当接するように膨出板部4の開口6の周囲に広がる。ファスナ3は、フランジ部5との間で扉パネル31を挟んで、本体2を扉パネル31に固定するように、膨出板部4にラチェット式に係合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スチール製ロッカー等の扉用の埋め込み取手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スチール製ロッカー等の扉用の埋め込み取手として、非特許文献1に記載されたものが知られている。図8にその概略を示す。この取手21は、合成樹脂で一体に形成されたもので、扉パネル31の取り付け孔32に嵌め込まれる膨出板部22と、取り付け孔32の周囲のパネル表面に当接するフランジ部23とを具備する。膨出板部22は、扉の前面側に開口する受け入れ凹部24と指掛け部25を備える。膨出板部22は、フランジ部23との間に扉パネル31を受け入れる係合凹部26と、フランジ部23との間に扉パネルを保持する係合突起27とを具備する。
この取手21は、複数種類の厚みの異なる扉パネル31に対応して、係合凹部26と係合突起27の寸法の異なるもの(図8a、b)が複数種類用意される。
【非特許文献1】カタログ「タキゲンNO.19−2」543頁、平成17年11月、タキゲン製造株式会社発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の埋め込み取手は、複数種類の厚みの異なる扉パネルに対応して、寸法の異なる複数種類の製品を用意しなければならず、製作金型の無駄、在庫スペース、在庫管理の無駄が生じている。
したがって、この出願に係る発明は、適用する扉パネルの板厚寸法に関係なく、取り付け孔のカット寸法を変更するだけで、工具無しで、きわめて簡単に取り付け可能な扉用の埋め込み取手を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下添付図面中の参照符号を付して説明するが、この出願に係る発明は、これに限定されるものではない。
上記課題を解決するため、この出願に係る発明においては、合成樹脂で一体に形成された膨出板部4と、フランジ部5とを具備する本体2と、この本体2を扉パネル31に固定するためのファスナ3とからなる扉の埋め込み取手1を提供する。この埋め込み取手1における膨出板部4は、扉パネル31に形成された取り付け孔32に前面側から裏面側へ突出するように嵌め込まれて、扉の前面側に開口6を有する受け入れ凹部7と、フランジ部5の裏面との間で取り付け孔32の一側縁部32aを保持する膨出部8とを形成する。前記フランジ部5は、扉パネル31の前面に当接するように膨出板部4の開口6の周囲に外広がりに形成される。ファスナ3は、フランジ部5との間で扉パネル31を裏面側から挟んで、本体2を扉パネル31に固定するように、膨出板部4にラチェット式に扉パネル31の裏面に向かって一方向へ移動自在に係合する。
【発明の効果】
【0005】
この出願に係る発明によれば、ファスナの締め付けにより、厚さ寸法の異なる扉パネルをフランジ部との間で自在に締め付け固定することができるので、適用する扉パネルの板厚寸法に関係なく、取り付け孔のカット寸法を変更するだけで、工具無しで、きわめて簡単に取り付け可能な扉用の埋め込み取手を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。図1は埋め込み取手の正面図、図2は埋め込み取手の背面図、図3は埋め込み取手の左側面図、図4は埋め込み取手の右側面図、図5は埋め込み取手の平面図、図6は図1におけるVI−VI断面図、 図7は図5におけるVII−VII断面図である。
【0007】
埋め込み取手1は、筐体の扉パネル31に形成された矩形の取り付け孔32に嵌め込んで装着されるもので、本体2とこの本体2を扉パネル31に固定するためのファスナ3とからなる。矩形の取り付け孔32は、平行に相対向する一側縁部32aと他側縁部32bとを具備する。本体2は、合成樹脂で一体に形成された膨出板部4と、フランジ部5とを具備する。
【0008】
膨出板部4は、扉パネル31に形成された取り付け孔32に前面側から裏面側へ突出するように嵌め込まれる。膨出板部4は、内側に受け入れ凹部7を形成する。受け入れ凹部7は、取り付け孔32に対応する矩形の開口6を扉の前面側に有する。フランジ部5は、開口6の全周縁から扉パネル31の前面に沿うように、外側へ四方に広がる。また膨出板部4は、取り付け孔32の一側縁部32aの裏面側へ入り込むように張り出した膨出部8を具備し、この膨出部8の内側に、扉の開閉操作の際に指を掛けるための指掛け部9を形成すると共に、外側に、フランジ部5の一側部5aの裏面との間で取り付け孔の一側縁部32aを保持する挟持空間10を形成する。
【0009】
挟持空間10は、図6a,bに示すように、厚さの異なる複数種類の扉パネル31を挟むことができるように、膨出部8の外側に形成された階段状の複数の当接段部11と当接斜面12とによって、フランジ部5の広がり方向に徐々に拡大している。各当接段部11とフランジ部5の裏面との間隔は、標準的な複数種類の扉パネル31の厚さ寸法T(図6a)に対応するように設定される。当接斜面12は、標準品よりも厚さ寸法の小さい任意の扉パネル31に対応するようになっている。したがって、扉パネル31の取り付け孔32は、各当接段部11に対応させて、パネルの厚さ寸法の大きいものほど両側縁部32a,32b間の幅寸法Wを大きくカットする。
【0010】
膨出板部4の外側には、ラチェット歯列13が一体に形成される。ラチェット歯列13は、フランジ部5の他側部5bに対して接近・離間する方向、すなわち取り付け孔の他側縁部32bの裏面に接近・離間する方向に伸びる。
ファスナ3は、合成樹脂製で、本体2のラチェット歯列13に、ラチェット式に係合する。すなわち、ファスナ3は、ラチェット歯列13のガイド溝13aに沿って移動自在に係合する枠体14と、ラチェット歯列13に係合するように枠体12に弾性的に支持されたラチェット爪15と、枠体12からその移動方向に突出する弾性脚16とを具備する。
【0011】
したがって、ファスナ3は、取り付け孔の他側縁部32bの裏面に向かって一方向へ移動自在で、フランジ部の他側部5bの裏面との間で取り付け孔32の他側縁部32bを裏面側から挟み、本体2を扉パネル31に固定することができる。その際、弾性脚16が、取り付け孔の他側縁部32bの裏面に弾性的に当接することにより、扉パネル31の厚さ寸法とラチェット歯列13のピッチとの誤差を吸収して、ファスナ3が扉パネル31を確実に締め付けることができる。
【0012】
この埋め込み取手1を筐体の扉パネル31に装着する場合には、予め扉パネル31の厚さ寸法に対応して選択された当接段部11の位置に対応させて、両側縁部32a,32b間の幅寸法Wを設定して、扉パネル31に矩形の取り付け孔32を形成する。埋め込み取手1は、扉パネル31の前面側から、膨出部8を先に取り付け孔32に挿入し、側縁部32aを挟持空間10内に嵌合させ、フランジ部5を扉パネル31の前面に密着させる。次いで、扉パネル31の裏側から、ファスナ3を本体2のラチェット歯列13に沿って移動させ、それの弾性脚を取り付け孔の側縁部32bに当接させて締め付ける。これで埋め込み取手1の装着作業は完了する。扉パネル31の厚さ寸法が、初段の当接段部11の位置より小さい場合には、取り付け孔の側縁部32aを当接斜面12に当接させて挟持空間10内に保持する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る埋め込み取手の正面図である。
【図2】本発明に係る埋め込み取手の背面図である。
【図3】本発明に係る埋め込み取手の左側面図である。
【図4】本発明に係る埋め込み取手の右側面図である。
【図5】本発明に係る埋め込み取手の平面図である。
【図6】図1におけるVI−VI断面図である。
【図7】図5におけるVII−VII断面図である。
【図8】従来の埋め込み取手の断面図である。
【符号の説明】
【0014】
1 埋め込み取手
2 本体
3 ファスナ
4 膨出板部
5 フランジ部
5a 一側部
5b 他側部
6 開口
7 受け入れ凹部
8 膨出部
9 指掛け部
10 挟持空間
11 当接段部
12 当接斜面
13 ラチェット歯列
13a ガイド溝
14 枠体
15 ラチェット爪
16 弾性脚
31 扉パネル
32 取り付け孔
32a 一側縁部
32b 他側縁部
T 扉パネルの厚さ寸法
W 取り付け孔の幅寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉パネルに形成され、相対向する一側縁部と他側縁部とを有する取り付け孔に嵌合固定される埋め込み取手であって;合成樹脂で一体に形成された膨出板部と、フランジ部とを具備する本体と、この本体を前記扉パネルに固定するためのファスナとからなり;前記膨出板部は、前記扉パネルの取り付け孔に前面側から裏面側へ突出するように嵌め込まれ、扉の前面側に開口する受け入れ凹部と、前記フランジ部の裏面との間で前記取り付け孔の一側縁部を保持する膨出部とを形成し;前記フランジ部は、前記扉パネルの前面に当接するように前記膨出板部の開口の周囲に外広がりに形成され;前記ファスナは、前記フランジ部との間で前記取り付け孔の他側縁部を扉パネルの裏面側から挟んで、前記本体を扉パネルに固定するように、前記膨出板部にラチェット式に扉パネルの裏面に向かって一方向へ移動自在に係合することを特徴とする扉の埋め込み取手。
【請求項2】
前記本体の膨出板部は、裏面側に、前記取り付け孔の他側縁部の裏面に対して接近・離間する方向に伸びるラチェット歯列を具備し;前記ファスナは、前記ラチェット歯列に相対移動自在に係合する係合部と、ファスナの前記一方向への相対移動のみを許容するラチェット爪とを具備することを特徴とする請求項1に記載の扉の埋め込み取手。
【請求項3】
前記ファスナは、前記取り付け孔の他側縁部の裏面に弾性的に当接する弾性脚を具備することを特徴とする請求項1又は2に記載の扉の埋め込み取手。
【請求項4】
前記本体の膨出部は、前記フランジ部の裏面との間に厚さの異なる複数種類の前記扉パネルを挟むための、フランジ部の裏面との距離が、フランジ部の広がり方向に階段状に大きくなる複数の当接段部を具備することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の扉の埋め込み取手。
【請求項5】
前記本体の膨出部には、前記フランジ部との間に厚さの異なる複数種類の前記扉パネルを挟むことを可能とするために、フランジ部の裏面との距離が、フランジ部の広がり方向に徐々に大きくなる当接斜面を具備することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の扉の埋め込み取手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−190294(P2008−190294A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−28718(P2007−28718)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(000108708)タキゲン製造株式会社 (256)