説明

扉付き開口枠

【課題】開口部(扉)の背面側(屋内側)に何らかの障害物が存在していても、開口部への設置を可能にする。
【解決手段】横枠2と、横枠2に支持された状態で鉛直軸回りに回転しながら開閉する扉5と、扉5の吊元側に位置し、扉5を横枠と共に支持する縦枠3と、縦枠3側の端部において縦枠3と共に、もしくは縦枠3に対して鉛直軸回りに回転自在に縦枠3に支持されると共に、扉5側の端部において扉5に鉛直軸回りに相対的に回転自在に連結されるアーム4から扉5付き開口枠1を構成する。扉5の戸先側の端部を横枠2に、その長さ方向に移動自在、且つ相対的に鉛直軸回りに回転自在に支持させると共に、扉5の幅方向中間部をアーム4に相対的に鉛直軸回りに回転自在に連結する。アーム4の鉛直軸回りの回転に伴い、閉鎖状態にある扉5の吊元側の端部を開口枠1の表面側へ移動させ、戸先側の端部を横枠2の長さ方向に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は扉が鉛直軸回りに回転しながら、スライド等により移動することにより開閉する状態に、扉を開口枠に支持させた扉付き開口枠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉛直軸回りに回転して開閉する扉(開き戸)は図15に示すように開閉時に平面上、扇形の領域を占有することから、この扇形の領域内には扉の開閉を阻害する物体を配置することができないため、例えば扉を収納した開口部からの搬出入を行うための車両等を扉が閉鎖した状態では開口部に接近させることができない制限を受ける。
【0003】
これに対し、開口枠を構成する縦枠回りの回転によって開口枠の前方側(前面側)へ張り出し、鉛直軸の回りに回転するアームの先端に、扉の吊元側の幅方向中間部を支持させると共に、戸先側の幅方向中間部を横枠に沿ってスライド自在で、且つ鉛直軸回りに回転自在に支持させれば、扉開閉時の扉前面側への占有面積を縮小することが可能であるため(特許文献1〜3参照)、上記制限を緩和することが可能である。
【0004】
特許文献1〜3では扉の吊元側と戸先側の中間部位置が横枠(上枠)に沿ってスライド自在、且つ鉛直軸回りに回転自在に横枠内に収納され、それより吊元寄りの端部がアームに鉛直軸回りに回転自在に連結されることで、アームの回転に伴い、アームと扉との連結部分が扉の前面側へ移動する。同時に扉の横枠との連結部分が横枠に沿ってアーム側へ移動することにより扉は回転とスライドを組み合わせた動きをして開閉する。
【0005】
特許文献1〜3では扉の閉鎖状態からは縦枠の鉛直軸回りの回転により扉の吊元側が開口部の前面側へ移動し、戸先側が開口部の背面側へ回り込むことにより開放するため、扉が開き戸式に開閉する場合より、開放時に扉が開口部の前面側に大きく突出しない特徴がある。具体的にはアームと扉との連結部分から、扉の横枠との連結部分までの距離をアームの平面上の長さ以下の大きさに設定することで、アームが鉛直軸回りに90度回転しなくても、閉鎖状態の扉を90度回転させ、全開状態に移行させることが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−50732号公報(請求項1、段落0009〜0013、図1)
【特許文献2】特開2000−248822号公報(請求項1、段落0033〜0051、図1、図6、図11)
【特許文献3】特開2007−138663号公報(請求項1、段落0019〜0041、0054〜0058、図1、図8、図9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜3においてアームを90度回転させなくても、扉を全開状態にすることができる理由は、アームが扉(開口部)の前方側へ回転し、90度回転する以前に、アームの扉との連結部分と横枠との間の距離(横枠の軸に垂直な方向の距離)が、アームと扉との連結部分から、横枠の扉との連結部分までの距離を超えることによる(図7参照)。
【0008】
従って特許文献1〜3には扉が閉鎖状態から開放状態へ、あるいは逆向きに回転するときに、扉の回転角度より小さいアームの回転角度によって扉を全開状態、あるいは閉鎖状態にすることができる利点がある。
【0009】
しかしながら、扉を開放させるときには、扉の戸先側の端部を扉(開口部)の背面側へ回り込ませることになるため(特許文献1の図1、特許文献1の図11等)、開口部(開口枠)の背面側(屋内側)に何らかの障害物が存在している場合には開放しようとする扉が衝突する可能性があり、開口部回りの条件によっては扉を配置することができないこともある。
【0010】
本発明は上記背景より、開口部(扉)の背面側(屋内側)に何らかの障害物が存在していても、開口部への設置を可能にする形態の扉付き開口枠を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明の扉付き開口枠は、開口部に配置される開口枠を構成する横枠と、この横枠に支持された状態で鉛直軸回りに回転しながら開閉する扉と、この扉の吊元側に位置し、前記扉を前記横枠と共に支持する縦枠と、この縦枠側の端部において前記縦枠と共に、もしくは前記縦枠に対して鉛直軸回りに回転自在に前記縦枠に支持されると共に、前記扉側の端部において前記扉に鉛直軸回りに相対的に回転自在に連結されるアームとを備え、
前記扉は戸先側の端部において前記横枠に、その長さ方向に移動自在に、且つ相対的に鉛直軸回りに回転自在に支持されると共に、幅方向中間部において前記アームに相対的に鉛直軸回りに回転自在に連結され、
閉鎖状態にある前記扉は前記アームの鉛直軸回りの回転に伴い、吊元側の端部において前記開口枠の表面側へ移動し、戸先側の端部において前記横枠に沿い、その長さ方向に移動して開放することを構成要件とする。
【0012】
開口枠は開口部の表面側(屋外側)であるか、背面側(屋内側)であるかを問わず、開口部に関して扉が配置される側に配置され、扉は開口部の表面側(屋外側)であるか、背面側(屋内側)であるかを問わず、開口枠に関して扉の開放側に配置される。扉が横枠の長さ方向に移動することの「移動」にはスライド(摺動)と転動が含まれる。
【0013】
縦枠は開口枠を構成する横枠に支持される場合と、開口部の幅方向両側(開口部の脇)に位置する柱部材、壁部材等の構造体(躯体)に支持される場合があり、それぞれの場合に、固定状態で支持される場合と、鉛直軸回りに回転自在に連結された状態で支持される場合がある。すなわち、縦枠は横枠に固定状態で支持される場合と回転自在に連結される場合があり、構造体にも固定状態で支持される場合と回転自在に連結される場合がある。
【0014】
アームは縦枠に対し、縦枠の鉛直軸回りに回転する場合と、縦枠と共に横枠、もしくは開口部脇の構造体(躯体)の鉛直軸回りに回転する場合がある。縦枠が横枠、もしくは構造体に固定状態で支持されている場合には、アームは縦枠に対し、縦枠の鉛直軸回りに回転自在に縦枠に支持される。
【0015】
縦枠が横枠、もしくは構造体に鉛直軸回りに回転自在に支持されている場合には、アームは縦枠に対して、もしくは縦枠と共に、横枠、もしくは構造体の鉛直軸回りに回転自在に縦枠に支持される。アームが縦枠と共に鉛直軸回りに回転自在に横枠、もしくは構造体に支持される場合、縦枠は例えば横枠、もしくは構造体に鉛直軸回りに回転自在に支持され、アームは縦枠に一体的に接続される(請求項2)。
【0016】
アームは縦枠に一体的に接続される場合には、アームと縦枠を一体的に挙動させ、これらの挙動に扉の開閉を完全に連動させることができるため、例えば扉の開放量(開放角度)を制限するような場合には、縦枠、もしくはアームの回転角度に制限を掛ければよいことになり、扉の開放量の制御がし易い利点がある。
【0017】
扉の開放側である開口部の表面側(前面側)には少なくとも上枠を有する横枠と縦枠を含む開口枠が配置され、扉は横枠と、縦枠に支持されたアームに支持される。横枠は上枠のみの場合と、上枠と下枠を有する場合がある。上枠のみでも扉の開閉時の安定性が確保される場合には、下枠は不要である。横枠が上下に対向する上枠と下枠からなる場合には、上下で対になることで、扉を支持した状態での開閉時の安定性が向上する。
【0018】
縦枠は上記のように横枠、もしくは構造体に鉛直軸回りに回転自在に支持(軸支)されるが、横枠に支持される場合には支持状態での安定性の面から、少なくとも上枠に支持される。上枠に支持されることで、縦枠が吊り支持の状態になり、安定し易いことによる。横枠が下枠を有する場合には、上枠と下枠に支持(軸支)される。横枠が下枠を有しない場合には、縦枠は上枠と共に、開口部に面する例えばスラブ、基礎、地盤等の構造体に上下で対になって支持(軸支)されることもある。
【0019】
縦枠の少なくとも上部には、扉の少なくとも上側に位置するアームが一体的に接続されるか(請求項2)、もしくは相対的に鉛直軸回りに回転自在に連結される。「一体的に接続」とは、一体となった状態(固定状態)で接続(接合)される場合と、縦枠とアームとの間に、回転方向に僅かなクリアランス(遊び)を有した状態で連結されることもある趣旨である。縦枠とアーム間にクリアランスを有する場合、アームは縦枠の回転に時間差が付いて回転することになる。アームが縦枠に一体的に接続される場合、アームが開口枠に対して回転するときの回転軸(鉛直軸)は縦枠の回転軸(鉛直軸)と共通する。
【0020】
アームも横枠と同様、少なくとも上枠側にのみ配置されればよいが、開閉時の扉の捩じれ等の変形を抑制し、扉の安定性を確保する上では図1、図12に示すように上下で対になって配置されることが適切である。アームが扉の上側と下側に位置し、縦枠の上下に接続される場合には、扉はアームに上下から挟み込まれる形で保持される。扉5は図6−(a)、(b)に示すようにアーム4の、鉛直軸O1回りの開口部前方側への回転に伴って開口部から前方側へ開放する。閉鎖状態にあるときの扉5の表面は開放時に開口部の内周側を向き、扉の背面は開口部の外周側を向く。
【0021】
図6−(a)はアーム4の長さ、具体的にはアーム4の縦枠3側の鉛直軸O1から、アーム4の扉5側の鉛直軸O2までの距離L1が、アーム4の扉5側の鉛直軸O2から、扉5の横枠2(上枠21)に支持された戸先側の鉛直軸(以下、横枠の鉛直軸)O3までの距離L2と等しい場合(L1=L2)におけるアーム4の鉛直軸O1回りの回転と扉5の開放角度の関係を示す。図6−(a)、(b)中、閉鎖状態にある扉5に対して傾斜した直線は開放途中にある扉5の軌跡を示す。L3は後述する扉5の吊元側の端部の点Eから鉛直軸O2までの距離を指す。扉5の全幅(幅方向の全長)はL3+L2になる。
【0022】
図6−(b)はアーム4の縦枠3側の鉛直軸O1から扉5側の鉛直軸O2までの距離L1が、アーム4の扉5側の鉛直軸O2から横枠2の鉛直軸O3までの距離L2より大きい場合(L1>L2)のアーム4の回転と扉5の開放角度の関係を示している。図6−(a)、(b)では横枠2の鉛直軸O3が扉5の戸先側の端部に位置しているが、鉛直軸O3は扉5の戸先側(戸先寄り)に位置していればよい。
【0023】
図6−(a)、(b)に示すようにアーム4の縦枠3側の鉛直軸O1から扉5側の鉛直軸O2までの距離L1と、鉛直軸O2から横枠の鉛直軸O3までの距離L2、及び扉5の吊元側の端部Eから鉛直軸O2までの距離L3はそれぞれ常に一定であるため、アーム4が縦枠3側の鉛直軸O1回りに回転し、扉5側の鉛直軸O2が開口部の前方側へ移動したときに、その移動に伴って横枠2の鉛直軸O3が横枠2の長さ方向に沿って縦枠3側(吊元側)へスライド等によって移動する。
【0024】
鉛直軸O2の開口部前方側への移動開始により鉛直軸O2に横枠2の長さ方向縦枠3側(吊元側)を向く力の成分が発生し、この力の成分が扉5を通じて鉛直軸O3に作用するため、この鉛直軸O3を縦枠3側(閉鎖状態にあるときの扉5の吊元側)へ引き寄せる。このとき、扉5、すなわち扉5の吊元側の端部の点Eから鉛直軸O3までの(L3+L2の)区間は直線で示すように常に直角双曲線の接線をなして移動する。
【0025】
アーム4の扉5側の鉛直軸O2は縦枠3側の鉛直軸O1を中心とする円弧上を移動するから、扉5の吊元側の端部の点Eは横枠2の長さ方向に沿って移動する鉛直軸O3と円弧上の鉛直軸O2を結ぶ直線の延長線上の点上を移動する。鉛直軸O2の円弧上の移動と鉛直軸O3の横枠2に沿った移動により扉5が閉鎖状態から開放状態へ移行する。
【0026】
ここで、例えば扉5の吊元側端部の点Eがアーム4の回転中心(縦枠3側の鉛直軸O1)に一致している場合には、アーム4の回転による扉5側の鉛直軸O2の円弧上の移動と、横枠2の鉛直軸O3の横枠2に沿った移動により、点Eが縦枠3側の鉛直軸O1より吊元側へ移動し、縦枠3に衝突する可能性がある。図6ではこの扉5と縦枠3の衝突を回避する上で、点Eを縦枠3側の鉛直軸O1より扉5の戸先側に位置させている。
【0027】
但し、扉5が閉鎖状態から開放し始めるときの点Eの縦枠3側への移動量は僅かであるため、縦枠3と扉5の吊元側の端部Eと縦枠3の少なくともいずれか一方が互いに衝突しない形状に形成されていれば、衝突を回避することができる。従ってその場合には必ずしも点Eを縦枠3側の鉛直軸O1より扉5の戸先側に位置させる必要はない。
【0028】
扉5の開放状態から閉鎖状態への移行時には、アーム4の閉鎖側への回転により鉛直軸O2が開口部側へ移動することによりその鉛直軸O2に横枠2長さ方向戸先側を向く力の成分が発生し、この成分が鉛直軸O3に作用するため、鉛直軸O3が閉鎖状態にあるときの戸先側へ押し出され、鉛直軸O2と鉛直軸O3は開放時と逆の動きを辿る。
【0029】
図6−(a)に示すようにアーム4の長さ、すなわちアーム4の縦枠3側の鉛直軸O1から扉5側の鉛直軸O2までの距離L1が、鉛直軸O2から横枠2の鉛直軸O3までの距離L2と等しい場合には、アーム4が開口部(開口枠)に対して90度、回転したときに、アーム4に、扉5の鉛直軸O2から鉛直軸O3までの区間が重なる。このとき、扉5は90度、開放して全開状態になり、横枠2の鉛直軸O3はアーム4の鉛直軸O1に合致する。扉5の吊元側の端部の点Eは鉛直軸O3と鉛直軸O2を結ぶ直線上に位置するため、扉5の全開状態のときには、扉5の鉛直軸O3(アームの鉛直軸O1)から横枠2の軸線に垂直な直線上に位置する。
【0030】
これに対し、図6−(b)に示すようにアーム4の長さ(鉛直軸O1から鉛直軸O2までの距離)L1が、鉛直軸O2から鉛直軸O3までの距離L2より大きい場合(請求項5)には、アーム4が開口部(開口枠)に対して90度、回転しなくても、横枠2の中心線上の点と、その垂線上の点を結ぶ直線の長さがL2になるため、アーム4が閉鎖状態から90度、回転しなくても扉5が90度、開放した全開状態になることができる。この場合、前記した特許文献1〜3と同様に、扉5の回転角度より小さいアーム4の回転角度によって扉5を全開状態、あるいは閉鎖状態にすることができる利点が得られる。
【0031】
この場合、アームの回転角度に対して扉5の回転(開放)角度を大きく(アーム4の回転角度に対する扉5の回転角度の比率を1より大きく)することができるため、少ないアーム4の回転角度によって扉5の開放量を稼ぐことが可能になる。但し、アーム4が90度、回転しない時点で扉5が全開状態になることで、扉5が吊元側より戸先側で開放することになるため、開口部の前方側の空間を開放させる上では、アーム4の長さL1はアーム4の扉5側の鉛直軸O2から横枠2の鉛直軸O3までの距離L2以下(L1≦L2)である方が有利である。
【0032】
図6−(a)、(b)のいずれの場合も、扉5の戸先側に位置する横枠2の鉛直軸O3が横枠2に支持されながら、横枠2に沿って移動することで、扉5が閉鎖状態から開放状態へ移行するときに、扉5の戸先側の端部が開口部の背面側に回り込むことがないため、扉5の戸先側端部が開口部背面側へ突出する事態が回避される。この結果、開口部(開口枠)の背面側(屋内側)に何らかの障害物が存在していても、開放しようとする扉5と衝突する事態を回避することが可能になり、開口部回りの条件によって扉5を配置することができない事態も回避される。
【0033】
扉5の、横枠2との連結部分である横枠2の鉛直軸O3が扉5の開閉時に横枠2に沿って移動することは、具体的には図9、図10に示すように扉5を支持する支持部材7が扉5の戸先側において少なくとも扉5の上端部に連結されると共に、横枠2の長さ方向に移動自在に横枠2に支持されることによって可能になる(請求項3)。この場合、支持部材7は縦枠3の鉛直軸O1回りの回転、もしくは縦枠3に対するアーム4の鉛直軸O1回りの回転に伴い、横枠2の長さ方向に移動しながら、扉5の戸先側の端部の移動を案内する。
【0034】
「少なくとも扉5の上端部」とは、扉5の上端部に加え、下端部に支持部材7が配置されることもある趣旨であり、「支持部材7が扉5の上端部に連結される」とは、支持部材7が扉5に固定状態に接続される場合と、鉛直軸O3回りに回転自在に連結される場合を含む趣旨である。支持部材7は横枠2にはその長さ方向に移動自在に支持されていればよいため、横枠2に対して鉛直軸O3回りに回転自在な状態にあるか、回転しない状態にあるかは問われない。
【0035】
但し、支持部材7は横枠2に対して扉5を鉛直軸O3回りに回転自在に支持しながら、扉5を横枠2に支持させる役目を持つことから、支持部材7自身が扉5開閉時の、扉5面の横枠2に対する回転に伴い、扉5、もしくは横枠2に対して相対的に鉛直軸O3回りに回転する必要があるため、支持部材7は扉5と横枠2の少なくともいずれか一方に対しては相対的に回転自在に連結される。
【0036】
支持部材7は扉5と横枠2のいずれか一方に対して回転自在に連結されればよいため、扉5と横枠2の双方に回転自在に連結される他、いずれか一方に固定状態に接続され、他方に回転自在に連結されることもある。例えば支持部材7が扉5に固定状態で接続された場合には、横枠2に対して相対的に回転自在に連結される。横枠2に回転しない状態で、移動自在に支持された場合には、扉5に対して相対的に回転自在に連結される。
【0037】
支持部材7はまた、扉5の回転を伴う開閉時に扉5の開閉を案内する働きをするから、扉5が閉鎖状態にあるときから開放状態に至るまでの扉5の動きを誘導できるよう、支持部材7の横枠2への支持部分から扉5との連結部分までの間に一定以上の距離が確保される。平面上、扉5の幅方向(扉5面内の水平方向)の中心線は閉鎖状態では横枠2の中心線上に位置し、両中心線は重なるが、扉5の全開状態では横枠2の中心線に直交する方向等、交差する方向を向く。
【0038】
扉5は閉鎖状態から開放するときと、開放状態から閉鎖するときには、図6−(a)に示すように戸先側の鉛直軸O3回りに回転しながら、吊元側の鉛直軸O2(アーム4と扉5の連結部分)回りに回転することにより開閉する。このとき、戸先側の鉛直軸O3は常に横枠2の中心線上に位置するのに対し、それより吊元側に位置する、扉5の水平断面上のいずれかの点Bはアーム4の回転に伴い、横枠2の中心線上から外れて横枠2(開口部)の前面側へ移動する。
【0039】
ここで言う「戸先側の鉛直軸O3」は上記「支持部材7の横枠2への支持部分」であり、「それより吊元側に位置するいずれかの点B」は「支持部材7の扉5との連結部分」であり、「それより吊元側に位置するいずれかの点B」は扉5が横枠2に対して90度、開放した全開状態では図6−(a)に示すように横枠2の中心線から横枠2の幅方向端部までの距離以上、横枠2の中心線から外れる。このため、「支持部材7の扉5との連結部分」である「吊元側に位置するいずれかの点B」は少なくとも横枠2の中心線から横枠2の幅方向端部までの距離(横枠2の幅の半分)以上、「戸先側の鉛直軸O3」から離れていればよいことになる。
【0040】
従って支持部材7の横枠2への支持部分から扉5との連結部分までの間に、横枠2の幅の半分以上の距離が確保されていれば(請求項4)、支持部材7の誘導によって閉鎖状態の扉5を横枠2の軸(中心線)に対して90度の角度にまで開放させることが可能になる。
【0041】
扉5は戸先側において支持部材7に支持された状態で、支持部材7が横枠2(上枠21)に支持されることにより横枠2(上枠21)に支持されるため(図1、図2−(a))、扉5の面内方向に、あるいは縦断面で見たとき(図2−(a))、支持部材7の横枠2(上枠21)への支持位置(支持点(上記鉛直軸O3))と扉5への支持位置(支持点(上記点B))との間に距離(偏心)があれば、扉5が面外方向に傾斜しようとする。
【0042】
このことから、扉5が支持部材7を介して横枠2(上枠21)に支持されている状態で、開口枠1側へ傾斜しないようにする上では、図2−(a)に示すように扉5の縦断面上、支持部材7の横枠2(上枠21)への支持位置(支持点(鉛直軸O3))と扉5への支持位置(支持点(点B))が同一線上に位置するように設定(調整)される。
【0043】
上記した請求項5に記載の発明は請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の発明において、図6−(a)に示すようにアーム4の縦枠3側の鉛直軸O1から、アーム4の扉5側の鉛直軸O2までの距離L1が、アーム4の扉5側の鉛直軸O2から、扉5の横枠2に支持された鉛直軸O3までの距離L2より大きいことを構成要件としている。
【0044】
図6−(a)と(b)の対比から分かるようにアーム4の縦枠3側の鉛直軸O1から扉5側の鉛直軸O2までの距離L1と、アーム4の扉5側の鉛直軸O2から横枠2の鉛直軸O3までの距離L2の関係を調整、あるいは設定することで、扉5を全開状態にさせるためのアーム4の回転角度を自由に調整することができる。
【0045】
特に図6−(b)に示すようにL1をL2より大きくすれば(L1>L2)、アーム4の回転角度が90度未満でも扉5を全開状態にすることができるため、アーム4の開放側にアーム4と干渉し得る障害物が存在する場合にも、アーム4を障害物に衝突させずに開閉させることが可能になる。またアーム4の開放角度が小さくて済むことで、例えばモータ等の動力を使用してアーム4を回転させる場合の動力を低減することが可能にもなる。
【発明の効果】
【0046】
扉の吊元側で横枠と共に扉を支持する縦枠と、縦枠と共に、もしくは縦枠に対して鉛直軸回りに回転自在に縦枠に支持され、扉に鉛直軸回りに回転自在に連結されるアームとを備えた扉付き開口枠において、扉を戸先側の端部において横枠に長さ方向に移動自在、且つ鉛直軸回りに回転自在に支持させ、幅方向中間部においてアームに鉛直軸回りに回転自在に連結するため、扉が閉鎖状態から開放状態へ移行するときに、扉の戸先側の端部が開口部の背面側に回り込まないようにすることができる。この結果、扉の戸先側端部が開口部背面側へ突出する事態が回避される。
【0047】
従って開口部(開口枠)の背面側(屋内側)に何らかの障害物が存在していても、開放しようとする扉と衝突する事態を回避することができるため、開口部回りの条件によって扉を配置することができない事態が回避される。

【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の扉付き開口枠の構成例を示した立面図である。
【図2】(a)は図1のx−x線断面図、(b)は図1のy−y線断面図である。
【図3】(a)は図2−(a)の一部拡大図、(b)は図2−(b)の一部拡大図である。
【図4】図1に示す扉付き開口枠における両扉の縦枠側に縦枠に跨る防塵シートを配置した様子を示した立面図である。
【図5】図2−(b)に示す扉付き開口枠における扉の開放時の動きを示した平面図である。
【図6】(a)、(b)は本発明の扉付き開口枠における扉の開放時の動きを直線で示した平面図であり、(a)はL1=L2の場合、(b)はL1>L2の場合である。
【図7】従来の扉付き開口枠における扉の開放時の動きを直線で示した平面図である。
【図8】図1、図2に示す支持部材の製作例を示した斜視図である。
【図9】扉が閉鎖した状態の扉付き開口枠の表面側(前面側)の外観を示した斜視図である。
【図10】一方の扉が開放した状態の扉付き開口枠の表面側の外観を示した斜視図である。
【図11】図10における開放している扉の表面を拡大して示した斜視図である。
【図12】図10における開放している扉の背面を拡大して示した斜視図である。
【図13】図10において閉鎖している扉が開放したときの扉の表面を示した斜視図である。
【図14】本発明の扉付き開口枠を倉庫の開口部に設置した場合の、扉と車両との関係を示した平面図である。
【図15】従来の扉付き開口枠を倉庫の開口部に設置した場合の、扉と車両との関係を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0050】
図1は開口部10に配置される開口枠1を構成する横枠2と、横枠2に支持された状態で鉛直軸回りに回転しながら開閉する扉5と、扉5の吊元側に位置し、扉5を横枠2と共に支持する縦枠3と、縦枠3側の端部において縦枠3と共に、もしくは縦枠3に対して鉛直軸回りに回転自在に縦枠3に支持されると共に、扉5側の端部において扉5に鉛直軸回りに相対的に回転自在に連結されるアーム4とを備えた扉付き開口枠の構成例を示す。
【0051】
開口枠1の配置位置は開口部10の表面側(前面側、あるいは前方側)であるか、背面側(後面側、あるいは後方側)であるかを問わない。開口枠1に対する扉5の配置位置も開口部10の表面側(前面側)であるか、背面側(後面側)であるかを問わない。図面は開口枠1を開口部10の表面側(前面側)に配置し、扉5を開口枠1の表面側(前面側)に配置した場合を示している。
【0052】
扉5は戸先側の端部において横枠2に、その長さ方向に移動自在に、且つ相対的に鉛直軸回りに回転自在に支持されると共に、幅方向中間部においてアーム4に相対的に鉛直軸回りに回転自在に連結される。閉鎖状態にある扉5はアーム4の鉛直軸回りの、開口部10前面側(表面側、あるいは前方側)への回転に伴い、吊元側の端部において開口枠1の前面側へ移動し、戸先側の端部において横枠2に沿い、その長さ方向に移動して開放する。扉5、もしくは開口部10の「幅方向」は扉5面内の水平方向を指す。扉5の横枠2に沿った移動には摺動の場合と転動の場合がある。
【0053】
扉5はその吊元側における縦枠3の鉛直軸回りの回転と、戸先側における横枠2に沿った移動によって表面と背面の向きを変えながら移動し、開閉する。扉5が閉鎖状態から開放状態へ移行するとき、あるいは逆に、開放状態から閉鎖状態へ移行するときは図6−(a)、(b)に示すように直角双曲線の接線を描くように移動する。開口枠1内に2枚の扉5を両開き式に開閉自在に配置している図示する例の場合、閉鎖状態にある2枚の扉5の表面は開放に伴い、互いに対向する側(開口部10の内周側)を向き、扉5の背面は反対側(開口部10の外周側)を向く。開口枠1内には1枚の扉5のみが片開き式に配置される場合もある。両開き式、片開き式と言っても、扉5の開閉方式は縦滑り出し窓の形式に近い。
【0054】
扉5は閉鎖時には開口部10の前面側に位置し、扉5の表面と背面が開口部10のなす面と平行な状態にあり、全開時には表面と背面が開口部10に直交する方向等、交差する方向を向いた状態になる。このように扉5は閉鎖時と開放時のいずれの状態のときにも、開口部10の前面側に位置するから、開口枠1は開口部10の前面側に位置する。
【0055】
横枠2は図示するように上枠21のみからなる場合と、上下で対になる上枠21と下枠からなる場合がある。開口部10を構成する構造体(躯体)6、あるいは骨組の剛性が高く、上枠21のみでも扉5を支持した状態で開口枠1が曲げ変形、もしくは捩じれ変形しない程度の安定性を確保できる場合には、図示するように必ずしも下枠を必要としない。但し、開口枠1が変形しない程度の安定性を確保できる場合でも、扉5が設置される開口部10の部位によっては開口部10の下側の構造体6に下枠が配置されることもある。横枠2は開口部10を構成する構造体6に接続、あるいは接合されることにより構造体6に支持される。
【0056】
図面では開口部10が図1、図2−(a)、(b)に示すように下側のスラブ61、もしくは基礎と、上側の梁部材62、及び幅方向両側の柱部材(支柱)63から構成されている場合を示しているが、開口部10を構成する構造体6や骨組の形態、構造種別は一切問われない。開口部10の部位、用途も問われず、出入り用の他、通気・換気・採光用の窓の場合もあり、窓の場合、扉5は障子として使用される。図2−(a)は図1のx−x線の断面を、(b)はy−y線の断面を示している。
【0057】
図1、図2は開口部10がその下側の構造体6であるスラブ61、もしくは基礎と、スラブ61等の上に立設された両側の構造体6、6である柱部材63、63と、両柱部材63、63の頭部間に架設された上側の構造体6である梁部材62からなり、開口枠1が上枠21とその両側に立設された縦枠3、3からなる場合の例を示しているが、開口部10が如何なる構造体6から構成されるか、及び開口枠1を構成する横枠2と縦枠3の組み合わせ方は任意である。
【0058】
図1、図2の場合、開口枠1と扉5は開口部10の前面側に位置するから、図2−(a)に示すように開口部10を構成する柱部材63の前方側に扉5を吊り支持する上枠21と扉5が配置され、(b)に示すように上枠21と扉5を含む面内に縦枠3、3が配置される。上枠21は図2−(a)に示すように梁部材62の表面側から前方側へ張り出した状態で、梁部材62、またはその周辺の構造体6に固定され、支持される。
【0059】
縦枠3は図1に示すように長さ方向(軸方向)両端部において例えば上枠21とスラブ61に鉛直軸回りに回転自在に連結されるか、あるいは固定状態で接合される。図示するように縦枠3の軸方向両端部が上枠21とスラブ61に回転自在に連結される場合、扉5の開閉を案内するアーム4は縦枠3に一体的に接続(接合)されるか、回転自在に連結される。縦枠3の軸方向両端部が固定状態で接合される場合には、アーム4は縦枠3に対して鉛直軸回りに回転自在に連結される。
【0060】
図面では上枠21の長さ方向両端部位置と、その位置と対になるスラブ61の表面に縦枠3を軸支する軸部21a(鉛直軸O1)、61a(鉛直軸O1)を形成、もしくは接続し、縦枠3の軸を鉛直に向けた状態で両軸部21a、61aに縦枠3を軸支させている。図面ではまた、扉5を安定させながら、開閉させるために、縦枠3の軸方向両端位置にアーム4、4を接続し、2本のアーム4、4によって扉5の上端面と下端面を上下から挟み込み、保持している。
【0061】
図面では縦枠3を上枠21とスラブ61に鉛直軸回りに回転自在に連結したことに伴い、アーム4の縦枠3側の端部を縦枠3に一体的に接続し、実質的にアーム4が縦枠3の回転と同時に回転するように接合している。アーム4の縦枠3側の端部が縦枠3と同時に回転するための両者の接合方法は任意であり、互いに重なった状態でボルトや溶接等によって接合される場合と、一方が他方を貫通した状態でボルト等によって接合される等により互いに一体化される。
【0062】
アーム4の先端側である扉5の戸先側の端部には扉5を鉛直軸回りに回転自在に支持するための鉛直軸となる軸部4a(鉛直軸O2)が接続、あるいは形成され、この軸部4aに扉5が軸支される。上側のアーム4の軸部4aには扉5の上端部が軸支され、下側のアーム4の軸部4aには扉5の下端部が軸支される。
【0063】
軸部4aと扉5の連結手段は問われず、軸部4aが扉5との連結位置を変えることなく、扉5に対して回転自在な状態に連結されていればよい。上側のアーム4の軸部4aは例えば扉5の上端面から扉5本体の内部に、あるいは上框の内部に貫入する状態で扉5に連結され、下側のアーム4の各軸部4aは同様に扉5の下端面から扉5本体の内部に、あるいは下框の内部に貫入する状態で扉5に連結される。
【0064】
扉5の荷重(質量)はアーム4と後述の支持部材によって上枠21、あるいは横枠2に支持される。図示するようにアーム4、4が上下で対になる場合には、扉5の開閉時に扉5とアーム4に捩じれを与えないよう、両アーム4、4の軸部4a、4aは同一鉛直線上に位置する。
【0065】
扉5の戸先側の上端部には扉5を横枠2に支持させるための支持部材7が下端部等、一端部(一部)において連結され、上端部等、他端部(他の一部)において横枠2の長さ方向に移動自在に横枠2に支持される。図面では横枠2が上枠21のみからなる関係で、支持部材7を上枠21と扉5の上端部とに跨るように配置しているが、横枠2が上枠21と下枠を有する場合には、支持部材7は下枠と扉5の下端部とに跨るようにも配置される。
【0066】
支持部材7は扉5の開閉時に扉5に対して鉛直軸回りに回転しながら、横枠2に沿って長さ方向に移動することにより、あるいは扉5と共に、横枠2に対して鉛直軸回りに回転しながら、横枠2に沿って長さ方向に移動することにより扉5の開閉を案内するため、少なくとも横枠2に沿って長さ方向に移動自在に支持される。
【0067】
支持部材7は横枠2には鉛直軸回りに回転自在に支持される場合と鉛直軸回りに回転自在に連結される場合がある。扉5には鉛直軸回りに回転自在に連結される場合と、固定状態に接続される場合がある。図面では支持部材7を扉5と共に横枠2に対して回転させる目的から、扉5に固定状態に接続し、横枠2(上枠21)には単純に移動自在に支持させて(載置して)いる。
【0068】
具体的には横枠2(上枠21)の上面に支持部材7が移動するための溝部21b、あるいはレールを形成し、支持部材7に接続される軸部(ピン)7a(鉛直軸O3)が溝部21b等内で軸回りに回転しながら溝部21bの長さ方向に移動自在、すなわち摺動自在、もしくは転動自在に、この溝部21b等内に軸部7aを配置している。図3−(a)に示すように軸部7aの先端の溝部21bへの接触部分に例えば球体7bが支持されていれば、軸部7aは球体7bにおいて溝部21bに沿って転動する。
【0069】
支持部材7とアーム4は少なくとも扉5の上側に配置されるため、扉5を吊り支持した状態で扉5の荷重を分担することと、支持部材7は横枠2(上枠21)に支持されることから、支持部材7は図1に示すように扉5の上端部と横枠2(上枠21)に跨る高さを有する。
【0070】
また支持部材7の下部が扉5の上端部に接続され、上部が横枠2(上枠21)上に載置される場合、支持部材7は扉5の開閉に伴い、扉5と共に横枠2に沿って移動しながら、横枠2に対して回転し、回転によって扉5を横枠2に平行な状態から垂直等、交差した状態に至るまで誘導するから、支持部材7は横枠2の長さ方向には閉鎖状態にある扉5の開放を案内できるだけの長さを有する。
【0071】
扉5が支持部材7に支持され、支持部材7を介して横枠2(上枠21)に支持された状態のときには、扉5は図1に示すように支持部材7への接続部分と支持部材7の軸部7aの2点(2箇所)において横枠2(上枠21)に支持される。このとき、扉5は縦断面上、図2−(a)に示すように支持部材7に支持された上で、支持部材7が横枠2(上枠21)に支持されるため、扉5が支持部材7を介して横枠2(上枠21)に支持された状態での扉5の面外方向の安定性を確保するために、扉5の支持部材7への接続部分と支持部材7の軸部7aは同一線上に位置するように調整される。
【0072】
図6−(a)、(b)に示すように扉5が閉鎖状態にあるとき、扉5の平面上の中心線は横枠2(上枠21)の中心線上に重なっているため、扉5と支持部材7との連結点(接続点)と、支持部材7の横枠2(上枠21)への支持点も横枠2の中心線上に位置している。ここで言う扉5と支持部材7との連結点は支持部材7の扉5との接続部分であり、支持部材7と横枠2との連結点は支持部材7の横枠2への支持点を指す。支持部材7が図1に示すように複数箇所で扉5に接続(連結)される場合、扉5と支持部材7との連結点は複数の接続部分の中心を指す。
【0073】
扉5の閉鎖状態からは扉5が開放するとき、支持部材7と横枠2との連結点は常に横枠2の中心線上を移動するが、扉5は平面上、横枠2(開口枠1)に対して起き上がるから、扉5と支持部材7との連結点は横枠2の中心線上から開口枠1の前方側へ移動し、最終的には(全開時には)、支持部材7と横枠2との連結点から扉5と支持部材7との連結点までの距離に相当する距離だけ、横枠2の中心線上から外れる。
【0074】
扉5と支持部材7との連結点は扉5の全開時に横枠2の中心線上から外れ、横枠2の幅方向外側にまで移動するため、支持部材7と横枠2との干渉(衝突)を回避する上で、支持部材7と横枠2との連結点から扉5と支持部材7との連結点までの距離は少なくとも横枠2(上枠21)の幅の半分以上、確保されていればよいことになる。
【0075】
図8に図1、図2に示す支持部材7を示すが、ここに示すように支持部材7は扉5の上端部のいずれかの部分に接続される接続部71と、横枠2(上枠21)に支持される支持部72と、接続部71と支持部72を連続させる中間部73の3部分を有する。
【0076】
図面では接続部71における扉5との接続状態での安定性(一体性)を確保するために、接続部71を扉5の上端面に重なる部分と扉5の背面に重なる部分からL形の形状に形成し、支持部72は横枠2に対して長さ方向に相対移動しながら、鉛直軸である軸部7aの軸の回りに回転することから、横枠2に接触(干渉)しないよう、支持部72を横枠2の中心線と平行な面をなす形状に形成している。
【0077】
但し、扉5を支持部材7に接続し、支持させる上では接続部71は少なくとも扉5の上端面に重なる、支持部72と平行な面をなす部分のみで足りる。この支持部72と平行な面をなす部分における扉5への接続部分が支持部72の軸部7aと縦断面上、同一線上に位置していれば扉5が横枠2(上枠21)に支持されたときの傾斜が防止され、扉5を安定させることができる。
【0078】
接続部71にはこれを扉5に接続するためのねじ7dやボルトが挿通する挿通孔7cが形成される。支持部72には上記した軸部7aが接続され、下端が横枠2(上枠21)側へ突出し、横枠2(上枠21)の溝部21b等内に納まる。軸部7aは溝部21b等内では横枠2の幅方向にほとんどクリアランスがない状態になり、横枠2内では幅方向の移動(ぶれ)を拘束された状態で長さ方向に摺動、もしくは転動する。
【0079】
図3−(a)、(b)はそれぞれ図2−(a)と(b)の一部拡大図を示す。図3−(a)に示すように上枠21は開口部10を構成する梁部材62の表面側にボルト8等により接合されることにより支持される。支持部材7の軸部7aは図示するように鉛直方向を向いた場合に横枠2の溝部21b内での納まりがよいが、溝部21bの長さ方向に移動する上では必ずしも鉛直方向を向いている必要がなく、水平方向を向いてもよいため、溝部21bは上方、もしくは下方を向く他、側方を向くこともある。
【0080】
梁部材62と柱部材63の前面側と開口部10側には開口部10回りの見栄えをよくするための額縁等の補助材64が接合され、この補助材64は部位に応じて横枠2(上枠21)を補助的に支持する機能、あるいは扉5の背面と開口枠1との間の気密性を確保する気密材9を接続する機能を有する。図3−(a)に示すように梁部材62の表面側に接合される補助材64は横枠2(上枠21)の下面側に位置することで、横枠2を支持する役目を持ち、また梁部材62と柱部材63の表面側に接合される補助材64は気密材9を取り付けるための受け材としての役目を持つ。補助材64には断熱材も含まれる。
【0081】
図4−(a)〜(c)は図1、図2に示す開口枠1の扉5の吊元側に、閉鎖状態にある扉5と縦枠3との間における空隙からの塵芥等の進入を防止するための防塵シート11を接続した場合の取付状態を示す。防塵シート11は扉5の吊元側の上端部に取り付けられたブラケット12に接続されることにより懸垂した状態で、扉5と縦枠3との間の空隙を閉塞する。
【0082】
扉5の屋内側(背面側)には閉鎖状態にある扉5を閉鎖状態に維持するための施錠装置13が取り付けられる。図面では開口枠1内に2枚の扉5を両開き式に開閉自在に配置していることから、いずれか一方の扉5に施錠装置を構成するハンドル14を回転自在に接続し、他方の扉5に施錠状態のときのハンドル14を受ける受け材15を接続しているが、開口枠1内に収納される扉5が1枚の場合には、扉5と縦枠3、あるいは横枠2との間に跨るように施錠装置13が設置される。
【0083】
図面では扉5が閉鎖状態にあるときのハンドル14の回転に伴って解錠され、扉5が開放状態から閉鎖状態に復帰し、ハンドル14が元の状態に戻ったときに施錠される形式の施錠装置13を使用しているが、施錠装置13の形態は一切問われない。
【0084】
図9は開口枠1に2枚の扉5、5が両開き式に収納され、扉5、5が閉鎖しているときの扉付き開口枠の表面側(前面側)の外観を示す。この状態から、例えば扉5が背面側(後面側)から押されたとき、扉5は図5、図6に示す軌跡を描いて図10に示すように開放する。図11は図10に示す開放した扉5の表面を拡大した様子を示し、図12はその図10に示す開放した扉5の背面を拡大した様子を示す。図13は図10において開放した扉5と対になる他方側の扉5が開放したときの、扉5の表面を拡大した様子を示す。
【0085】
図14は本発明の扉付き開口枠1を倉庫等における屋内と車両進入領域の境界の開口部10に配置したときの、扉5の開放状態と車両の位置関係を示している。同じ条件下にある開口部に従来の扉付き開口枠を配置した場合の扉と車両の関係を示す図15との対比から、従来の場合には扉を全開状態にしない限り、車両を開口部に接近させることができないのに対し、本発明の扉付き開口枠1を設置した場合には、車両を開口部に接近させた状態でも閉鎖状態にある扉5を開放させることができる利点があることが分かる。
【符号の説明】
【0086】
1……開口枠、
2……横枠、21……上枠、21a……軸部(鉛直軸O1)、21b……溝部、
3……縦枠、4……アーム、4a……軸部(鉛直軸O2)、5……扉、
6……構造体、
61……スラブ、61a……軸部(鉛直軸O1)、
62……梁部材、63……柱部材、64……補助材、
7……支持部材、71……接続部、72……支持部、73……中間部、
7a……軸部(鉛直軸O3)、7b……球体、7c……挿通孔、7d……ねじ、
8……ボルト、9……気密材、
10……開口部、11……防塵シート、12……ブラケット、
13……施錠装置、14……ハンドル、15……受け材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部に配置される開口枠を構成する横枠と、この横枠に支持された状態で鉛直軸回りに回転しながら開閉する扉と、この扉の吊元側に位置し、前記扉を前記横枠と共に支持する縦枠と、この縦枠側の端部において前記縦枠と共に、もしくは前記縦枠に対して鉛直軸回りに回転自在に前記縦枠に支持されると共に、前記扉側の端部において前記扉に鉛直軸回りに相対的に回転自在に連結されるアームとを備え、
前記扉は戸先側の端部において前記横枠に、その長さ方向に移動自在に、且つ相対的に鉛直軸回りに回転自在に支持されると共に、幅方向中間部において前記アームに相対的に鉛直軸回りに回転自在に連結され、
閉鎖状態にある前記扉は前記アームの鉛直軸回りの回転に伴い、吊元側の端部において前記開口枠の表面側へ移動し、戸先側の端部において前記横枠に沿い、その長さ方向に移動して開放することを特徴とする扉付き開口枠。
【請求項2】
前記縦枠は前記横枠、もしくは前記開口部脇の構造体に鉛直軸回りに回転自在に支持され、前記アームは前記縦枠に一体的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の扉付き開口枠。
【請求項3】
前記扉を支持する支持部材が前記扉の戸先側において少なくとも前記扉の上端部に連結されると共に、前記横枠の長さ方向に移動自在に前記横枠に支持され、
この支持部材は前記縦枠の鉛直軸回りの回転、もしくは前記縦枠に対する前記アームの鉛直軸回りの回転に伴い、前記横枠の長さ方向に移動しながら、前記扉の戸先側の端部の移動を案内することを特徴とする請求項1、もしくは請求項2に記載の扉付き開口枠。
【請求項4】
前記支持部材の前記横枠への支持部分から前記扉との連結部分までの間に、前記横枠の幅の半分以上の距離が確保されていることを特徴とする請求項3に記載の扉付き開口枠。
【請求項5】
前記アームの前記縦枠側の鉛直軸から、前記アームの前記扉側の鉛直軸までの距離は、前記アームの前記扉側の鉛直軸から、前記扉の前記横枠に支持された鉛直軸までの距離より大きいことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の扉付き開口枠。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−80261(P2011−80261A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233626(P2009−233626)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(509279974)株式会社メディセオ (1)
【出願人】(509279985)株式会社彩総合研究所 (1)
【出願人】(000149594)株式会社大本組 (40)