説明

扉用ポップアウト型ロックハンドル装置

【課題】施解錠状態を容易に目視確認できるポップアウト型のロックハンドル装置を提供する。
【解決手段】解錠状態において外部へ露出する固定ケース2のハンドル収納凹部5aの前面又はハンドル3の軸筒部6の外周の少なくとも一部に、目視確認可能な解錠標識15a、16a、17a、18が付されるので、解錠状態を容易に目視確認可能で、施錠忘れを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動販売機などに使用されるポップアウト型の扉用ロックハンドル装置における施錠忘れ防止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動販売機類には、ポップアウト型の扉用ロックハンドル装置が広く使用されている。このロックハンドル装置は、扉に固着される固定ケースと、この固定ケースに組み込まれるハンドルとを有する。ハンドルは、解錠状態において、固定ケースから前方へ突出して回転操作が可能であるが、施錠状態においては、固定ケースの収納凹部に埋没し、開扉操作が不可能となる。解錠状態において、固定ケースから前方へ突出したハンドルをロック位置と非ロック位置の間で回転操作することにより、止め金板を筐体に対して係合、離脱させる(特許文献1参照)。ハンドルの軸筒部内には、施錠状態において軸筒部からその外周側へ突出して固定ケースに係合するデッドボルトと、このデッドボルトをロータの回転により操作する錠前ユニットとが装着される。ハンドルをロック位置で固定ケースへ押し込むと自動的にデッドボルトが突出して施錠される。キー操作により錠前ユニットのロータを回転させることによって、デッドボルトを解錠位置へ持ち来すと解錠され、同時にハンドルが付勢力で前方へ飛び出し、ハンドルによる開扉操作が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−120087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の自動販売機類においては、ロックハンドルを施錠しない状態においても、扉は、閉鎖状態を維持することができる構成になっている。このため、筐体内への商品補給等の所要の作業が終了して扉を閉じた後は、ロックハンドルの突出状態を目視確認することによって施解錠を確認する必要がある。ところが、扉自体が閉鎖状態にあると、ロックハンドルの突出状態、すなわち、解錠状態を確認し忘れる事故が生じがちである。
したがって、この出願に係る発明は、施解錠状態を容易に目視確認できるポップアウト型のロックハンドル装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、この出願に係る発明のロックハンドル装置1は、軸受け筒部4とハンドル収納部5とを有し扉Dに固着される固定ケース2と、固定ケース2の軸受け筒部4内にロック位置と非ロック位置の間を回転可能かつ前後方向に移動不能に挿入される内筒8と、この内筒8内へ相対回転不能かつ軸受け筒部4から前方へ突出した解錠位置とこれへ押し込まれた施錠位置の間を前後方向に相対移動可能に挿入され解錠位置へ付勢される軸筒部6と軸筒部6から半径方向へ延出する握り部7とを有するハンドル3と、内筒8の後端部に固着されロック位置で筐体に係合し非ロック位置で筐体から離脱する止め金板10と、ハンドル3の軸筒部6に組み込まれる錠前ユニット11と、ハンドル3の軸筒部6内に組み込まれるデッドボルト12とを具備する。ハンドル3の軸筒部6は、固定ケース2の軸受け筒部4の前方へ突出した解錠位置と、軸受け筒部4内へ押し込まれた施錠位置との間を前後方向に移動自在で、ばね9で解錠位置へ付勢される。デッドボルト12は、施錠位置において内筒8の開口から半径方向へ突出して固定ケース2の軸受け筒部4に係合するように付勢され、錠前ユニット11のロータ11aの回転に連動して軸筒部6内へ引き込まれ軸受け筒部4から離脱する。固定ケース2のハンドル収納凹部5aの前面又はハンドル3の軸筒部6の外周の少なくとも一部には、解錠状態において目視確認可能な解錠標識15a、16a、17a、18が付される。
【発明の効果】
【0006】
この出願に係る発明のロックハンドル装置1によれば、解錠状態において外部へ露出する固定ケースのハンドル収納凹部5aの前面又はハンドル3の軸筒部6の外周の少なくとも一部に、目視確認可能な解錠標識15a、16a、17a、18が付されるので、解錠状態を容易に目視確認可能で、施錠忘れを防止するのに顕著な効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係るロックハンドル装置の断面図である。
【図2】図1におけるII−II断面図である。
【図3】図1のロックハンドル装置の正面図である。
【図4】図1のロックハンドル装置の解錠状態の側面図である。
【図5】図1のロックハンドル装置の背面図である。
【図6】図1のロックハンドル装置の固定ケースの斜視図である。
【図7】図1のロックハンドル装置の抜け止め金具の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。
ロックハンドル装置1は、扉Dに固着される固定ケース2と、これに収納・突出自在に組み込まれるハンドル3とを具備する。
【0009】
固定ケース2は、軸受け筒部4とハンドル収納部5とを有する。ハンドル3は、固定ケース2の軸受け筒部4内へ挿入される軸筒部6と、この軸筒部6の前端から軸線直交方向に延出する握り部7とを具備する。固定ケース2のハンドル収納部5の前面側には、ハンドル3の握り部7を受け入れる凹部5aが形成される。図1に示すように、ハンドル3は、この凹部5a内に、その前面が固定ケース2の前面と面一となるように収容される。
【0010】
軸受け筒部4内には、内筒8が挿入され、その内側にハンドルの軸筒部6が挿入される。内筒8は、ロック位置と非ロック位置の間をほぼ90°の範囲で回転可能であり、前後方向には移動不能である。
【0011】
ハンドルの軸筒部6は、内筒8に対して、相対回転不能であり、したがって、軸筒部6は、軸受け筒部4内を内筒8と一体にロック位置(図1)と非ロック位置(図3の仮想線)の間を回転する。また、軸筒部6は、軸受け筒部4から前方へ突出した解錠位置(図1の仮想線)と、軸受け筒部4へ押し込まれた施錠位置(図1の実線)の間を前後方向に相対移動可能であり、かつばね9で解錠位置、すなわち突出方向へ付勢される。
【0012】
内筒8の後端部は、軸受け筒部4から後方へ突出し、これに止め金板10が固着される。止め金板10は、図1に示すロック位置で図示しない筐体の係合部に係合し、非ロック位置(図3の仮想線)で筐体から離脱し、開扉を可能とする。
【0013】
ハンドル3の軸筒部6には、錠前ユニット11とデッドボルト12が組み込まれる。デッドボルト12は、図1に示すように、軸筒部6が軸受け筒部4内に押し込まれた施錠位置において、内筒8の開口(図示せず)から半径方向(紙面前後方向)へ突出して軸受け筒部4の係合凹部(図示せず)に係合するように、ばね13で付勢される。また、デッドボルト12は、錠前ユニット11のロータ11aの回転に連動して軸筒部6内へ引き込まれ、軸受け筒部4の係合部から離脱する。したがって、デッドボルト12は、軸筒部6が軸受け筒部4内に押し込まれると、自動的に突出してハンドル3を施錠し、その操作を不可能とする。
【0014】
ハンドルの軸筒部6には、錠前ユニット11を抜け止めするための抜け止め金具14が半径方向に貫通するように差し込み固定される。抜け止め金具14は、軸筒部6にねじ止めされる頭部15と、頭部から二股に分かれて錠前ユニット11のケースの外周に沿う肩部16と、ケースの外周対向部に係合する一対の脚部17とを具備する。抜け止め金具14の差し込み方向の両端面である頭部表面15a、肩部表面16a及び脚部端面17aが、ハンドルの軸筒部6の外周に露出する。
【0015】
図1に示すように、固定ケース2のハンドル収納凹部5aの前面には、解錠状態を容易に視認できる蛍光塗料等で着色が施された標識シール18が貼着される。標識シール18に代えて、ハンドル収納凹部5aの前面自体を着色して標識とすることができる。
【0016】
図1,4に示すように、抜け止め金具14の差し込み方向の両端面である頭部表面15a、肩部表面16a及び脚部端面17aには、解錠状態、すなわち軸筒部6が軸受け筒部4から突出していることを容易に視認できる解錠標識としての着色部(以下各端面と同一符号15a、16a、17aで参照する。)が設けられる。解錠標識としての着色部は、軸筒部6の外周面に直接塗料を塗布することによって形成してもよいが、加工工程上は、抜け止め金具14の両端面15a、16a、17aに塗布するのが容易である。この方法によっても、あらゆる角度から着色部15a、16a、17aを視認することができる。抜け止め金具14の着色による解錠標識は、ハンドル収納凹部5aの前面に設けられる解錠標識18と選択的に採用することも、併用することもできる。
【0017】
このロックハンドル装置1は、扉Dを閉じて、ハンドル5を図1に示すロック位置に回転させ、固定ケース2内に押し込むと、握り部7が収納凹部7a内にはまり、同時にデッドボルト12が半径方向外側へ突出して軸受け筒部4に係合する。これにより、扉Dがロック状態で錠止されることになる。扉Dを開くには、図示しないキーにより錠前ユニット11を解錠操作してロータ11aを回転させ、デッドボルト12を引き込むと、ばね9によりハンドル3の軸筒部6が前方へ押し出される。ハンドル3を90°回転させて非ロック位置へ持ち来せば、止め金板10が筐体から外れ、開扉が可能となる。ロックハンドル装置1が解錠状態にあるときは、ハンドル3は固定ケース2から突出しており、この状態においては、ハンドル収納凹部5aの解錠標識18又は抜け止め金具14の解錠標識15a、16a、17aが露出する。したがって、作業者が、あらゆる角度から解錠標識15a、16a、17a、18を視認でき、解錠状態を容易に認識できる。このため、施錠忘れが生じにくい。
【符号の説明】
【0018】
1 ロックハンドル装置
2 固定ケース
3 ハンドル
4 軸受け筒部
5 ハンドル収納部
5a ハンドル収納凹部
6 軸筒部
7 握り部
8 内筒
9 ばね
10 止め金板
11 錠前ユニット
11a ロータ
12 デッドボルト
13 ばね
14 抜け止め金具
15 頭部
15a 頭部表面(解錠標識)
16 肩部
16a 肩部表面(解錠標識)
17 脚部
17a 脚部端面(解錠標識)
18 解錠標識シール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受け筒部と、ハンドル収納部とを有し、扉に固着される固定ケースと;この固定ケースの軸受け筒部内にロック位置と非ロック位置との間を回転可能かつ前後方向には移動不能に挿入される内筒と;この内筒内へ相対回転不能かつ軸受け筒部から突出した解錠位置と軸受け筒部内へ押し込まれた施錠位置の間を前後方向に相対移動可能に挿入さればねで解錠位置へ付勢される軸筒部と、軸筒部から半径方向へ延出する握り部とを有するハンドルと;前記内筒の後端部に固着され、ロック位置において筐体に係合し非ロック位置において筐体から離脱する止め金板と、ハンドルの軸筒部に組み込まれる錠前ユニットと;ハンドルの軸筒部内に組み込まれ、施錠位置において前記軸筒部及び内筒の開口から半径方向へ突出して前記固定ケースの軸受け筒部に係合するように付勢され、前記錠前ユニットのロータの回転に連動して軸筒部内へ引き込まれるデッドボルトと;を具備し、
前記固定ケースのハンドル収納部の前面又は前記ハンドルの軸筒部外周の少なくとも一部に、解錠状態において目視確認可能な解錠標識が付されていることを特徴とするポップアウト型扉用ロックハンドル装置。
【請求項2】
前記固定ケースのハンドル収納部は、前記ハンドルの握り部を受け入れる収納凹部を前面側に具備し、この収納凹部の前面に、前記解錠標識としての着色シールが貼着されることを特徴とする請求項1に記載のポップアウト型扉用ロックハンドル装置。
【請求項3】
前記ハンドルの軸筒部には、前記錠前ユニットを抜け止めするための抜け止め金具が半径方向に貫通するように差し込み固定され、
この抜け止め金具の差し込み方向の両端面は、ハンドルの軸筒部外周に露出し、この両端面に、前記解錠標識としての着色部が設けられることを特徴とする請求項1に記載のポップアウト型扉用ロックハンドル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−91965(P2013−91965A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234140(P2011−234140)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000108708)タキゲン製造株式会社 (256)