説明

扉自己解錠装置

【課題】電力を使用せずに、地震の一定の震度以上で解錠し、民家が倒壊しないような小さい揺れの地震や振動では解錠しない自己解錠装置の提供。
【解決手段】地震の振動により錘40の揺れが一定の振幅以上に達した場合に、引外しレバー28が振幅調整ネジ43を押動するように、振幅調整ネジを調整することで、一定の揺れ以上で振幅調整ネジ43が押動され、ロックレバー41が摺動桿19の係止を解除する方向に回動し、駆動バネ20によりワイヤー11を牽引して、解錠することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震の一定の震度以上で引分け戸の反錠前側扉ならびに戸当り柱の鍵係合部を開放することで自動解錠する装置である。
【背景技術】
【0002】
民家が倒壊するような大きい地震に際して防災機器や救命救急機器を保管する倉庫等が多く設置されている。それらの扉に装着されている鍵は合い鍵を必要とするため、合い鍵がなければ保管されている機材を倉庫から速やかに取り出すことができない。
【0003】
また、他の建築物に於いても揺れの大きい地震に際して施錠された扉の中から外へ、或いは外から中に人々が移動する場合、解錠の手間が非常に困難である。
本発明は、これら一連の地震対策が必要との考えから簡単に、且つ確実に解錠できる装置が必要であった。
【0004】
尚、地震時の停電や電気系統の故障を考慮して電力は一切使用しない条件とする必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−107596号公報
【特許文献2】登録実用新案第3147785号公報
【特許文献3】登録実用新案第3145311号公報
【特許文献4】登録実用新案第3144509号公報
【特許文献5】登録実用新案第3148810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
地震によって、扉の鍵を解錠する方法を解決しようとする問題点は、現在の技術では地震によって作動する感震器を設置し、その出力接点から電気錠を作動させる方法しかなかった。従って、既設の鍵を取り替えてバッテリーや感震器および電源工事が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、扉に取り付けられた既存の鍵を取り替えることなく、鍵フックの反錠前側扉すなわち受側扉2の鍵係合部18を鍵フック5から開放することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、既存の鍵を取り替える必要がないので、合い鍵を作り変えることもなく既存の鍵で常に施解錠が可能である。
【0009】
また、本発明は鍵の係合部が簡単につき、既建築後においても容易に取り付けができることである。
更に、本発明は電気を一切使わないので停電や電気系統の故障の心配がない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】引分け戸の外面図
【図2】引分け戸の内面図
【図3】片開き引戸の内面図
【図4】鍵係合部詳細図
【図5】感震駆動部の内部正面図
【図6】感震駆動部の内部側面図
【図7】駆動用摺動桿の正面図と側面図
【図8】ロックレバーの詳細図
【図9】下部摺動桿ガイドの詳細図
【図10】施錠時のロック機構詳細図
【図11】解錠時のロック機構詳細図
【図12】連結部正面図
【図13】連結部側面図
【図14】連結部詳細斜視図
【図15】可動板引上げ機構詳細斜視図
【図16】連結引上げ部正面図
【図17】連結引上げ部側面図
【図18】連結引上げ部連結詳細図
【図19】連結棒案内板詳細斜視図
【図20】可動板ガイド詳細斜視図
【図21】可動板と可動板ガイド組合せ正面図
【図22】可動板と可動板ガイド組合せ側面図
【図23】可動板正面図
【図24】可動板側面図
【図25】可動板平面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図24に基づいて説明する。
【0012】
本発明においては、図1および図2のごとく一般市販製品の引分け戸の受側扉2の戸当り面2aならびに図3に示す片開き引戸の戸当り柱3の鍵フック穴6につづけて欠切部7を切り取り、長方形の加工穴8を形成する。
【0013】
メーカー出荷時の製品は、前記欠切部7が未施工の状態であるので鍵側扉1を閉じて受側扉2の戸当り面2aに鍵側戸当り面1aが密着した状態で、既存の鍵穴4に合鍵を挿入して回転することにより鍵フック5が戸当り面2aの内側に回動し、フックが係止するため施錠状態となる。
【0014】
また、図3の片開き引戸においても戸当り柱と鍵側扉の関係において、前記引分け戸同様の施錠方法である。
【0015】
本発明の目的を達成するために欠切部7を施すことにより、鍵フック5は係止部分がなくなり扉は開放可能となる。
【0016】
本発明は、前記欠切部7の戸当り面2a内側に上下スライド可能な可動板58を可動板ガイド59で挟着する。
【0017】
従って、上下に移動する可動板58が欠切部7の位置にあるときは鍵フック5が係止され、該可動板が該欠切部から外れた場合は解錠となる。
【0018】
また、図3の片開き引戸の戸当り柱3においても前記同様、欠切部7の内側に可動板58を可動板ガイド59で挟着するものとする。
【0019】
一方、図4は地震感知部と駆動部が一体になった組立図である。錘40が地震の振動により揺れると、該錘に固着された吊下げ軸39が図10のごとく傾斜するため、該吊下げ軸に冠着された円盤35も該円盤に着接した半球突起36が吊下げ板38に設けた釣止穴38a(図9・図10)に内接するため、押上げ板33に接する該円盤の上部外周端と吊下げ板38に接する対角線上の下部外周端によって梃子の原理で、押上げ板33を押し上げる。
【0020】
押上げ板33の中央に固着された押上げ棒32も該押上げ板と同時に、押上げ棒ガイド34に沿って上に直動する。
【0021】
前記押上げ棒ガイドは、ガイド固定金具31によってベース21に固定されているため、押上げ棒32は直動し、引外し可動板29を更に押し上げる。
【0022】
引外し可動板29は、可動板中心軸30に端部を軸支されているため押上げ棒32の押圧により該可動板中心軸を中心に回動する。
【0023】
引外し可動板29の上部には、L形の引外しレバー28が固着されており、引外し可動板29の回動と同時に該引外しレバーの上端部が、図7の振幅調整ネジ43を押動する。
【0024】
ロックレバー41は、回動支軸41bに軸着されており前記引外しレバーの押動により支点穴41aを中心に摺動桿19の係止を解除する方向に回動する。
【0025】
摺動桿19の下端には、図6の凹状欠切部を設けて係止ピン25にベアリング27を嵌挿する。
【0026】
前記係止ピンは、片方が細い段付ピンで摺動桿19の下端穴に前記ベアリングを嵌挿して該下端穴に挿着し、抜止めリング26によって該係止ピンの脱落を防止する。
【0027】
摺動桿19は、中央部分において外径を違えた段を設け、その段にバネ止めワッシャー23を嵌め、その上に圧縮バネを挿入する。
【0028】
また、摺動桿19は上下2ヶ所に設けた摺動桿ガイドによって挿着され、上部修動桿ガイド17は駆動バネ20および緩衝バネ16のバネ受台を兼ねるものとし、ベース21に固定する。
【0029】
下部の摺動桿ガイド22は、図8のごとく摺動桿の案内と摺動桿案内穴の一辺に切欠溝を設け、ロックレバー41が摺動桿19に挿着されたベアリング27に正確に咬合するガイドの役目を兼行するものである。
【0030】
摺動桿19は、常にロックレバー41によって駆動バネ20を圧縮した状態でロックされており、地震の揺れによって錘40が振れ、押上げ棒32が引外し可動板29を押し上げ、それに固着された引外しレバー28が振幅調整ネジ43を押動することによりロックレバー41が回動するため摺動桿19の係止が外れ、駆動バネ20は圧縮から解放されるので摺動桿19に固着された駆動桿15に緊結したワイヤー11を牽引し、可動板58を移動することで本発明を解決する手段とする。
【0031】
ワイヤー11の動力を可動板58に伝達する方法としては、フレキシブルな外装のワイヤーガイド10に該ワイヤーを通し、該ワイヤーガイドの両端を建造物の柱や梁に固定することにより、該ワイヤーの動力を解錠最終目的の可動板58に確実に伝達することが可能である。
【0032】
しかし、引分け戸扉においては可動板58が装着される受側扉2が扉開閉操作時に移動するため、フレキシブルな外装のワイヤーガイド10であってもその動きに追従することは困難であり、また開閉頻度が激しい場合は、該ワイヤーガイドおよび前記ワイヤーに疲労劣化が生ずることになる。
【0033】
従って、本発明の引分け戸扉においては、図11〜図17に示す連結金具12および連結板52を用いて扉を閉鎖したときのみ動力を伝達する方法とした。そのため、ワイヤーガイド10の片端は、連結部46の連結支持金具51に固定し、伸縮を防止することでワイヤー11をガイドするものとする。
【0034】
また、片開き戸扉においては、可動板58取付け部が建造物に固定された戸当り柱であるため連結部を必要としない。
【0035】
図11・図12・図13の連結金具12は、コの字形で上下2辺を貫くガイド穴12aを設けその穴に連結支持金具51に吊着した連結金具ガイド棒48を貫通し、上下にスライドするものとする。該連結金具ガイド棒はガイド棒連結片49によって橋架補強する。
【0036】
前記連結金具は、ワイヤー11によって吊着され該ワイヤーの復動により追動するものである。
【0037】
このコの字形の連結金具12の下辺には、図13のごとく嵌込口47が開口しており、受側扉2を閉めると連結板52が開口部に噛み込むため、ワイヤー11によって該連結金具が引き上げられると、該連結板に固着された連結棒53および連結桿55が案内板54にガイドされて上方に移動する。
【0038】
連結桿55は、連結ヘッド60に螺嵌されており、該連結ヘッドには可動板58と連結する引上げ棒57が挿着される。
【0039】
前記連結ヘッドに挿着された前記引上げ棒は、前記可動板が正確に欠切部7の位置に合致するように該連結ヘッドに引上げ棒57を貫通させて、該可動板の位置を決めて引上げ棒固定ネジ61で固定する。
【0040】
案内板54を扉に取付ける方法としては、工作機械等のない建築現場での取り付け等を考慮し、できる限り簡単に加工できる方法として連結板52を直動するに必要な連結桿55をガイドする穴加工困難な長方形のガイド穴56を扉折返板2bには開けずに、穿孔済部品として案内板54を取り付けるものとする。
従って、扉の該折返板には該案内板の取付ネジ穴だけを穿孔するものとする。
【0041】
引き上げ棒57に吊着された可動板58は、可動板ガイド59によって上下にスライド可能な程度に扉折返板2bと案内板54の間に僅かな隙間をもたせて鋏着を行う。
【0042】
前記可動板ガイドは、扉折返板2bに可動板ガイド取付穴63の位置にネジ穴を開けてネジで固定する。
【0043】
片開き戸扉の前記可動板ガイドの取り付けは、戸当り柱3の柱折曲げ板3aに引分け戸同様取り付けるものとする。
【実施例】
【0044】
先ず、引分け戸に実施する場合は図1の受側戸当り面2aに欠切部7を加工する。
【0045】
続いて、図14・図15・図16の連結ヘッド60および引上げ棒57および案内板54と連結桿55ならびに連結棒53と連結板52を組み立てて受側扉2に取り付ける。
【0046】
続いて図2・図11・図12・図13の連結部を取り付ける。
【0047】
更に、図2の感震駆動部9を建物内部の柱または壁に取り付ける。
【0048】
最後に、図2の連結部46と感震駆動部9をワイヤー11およびワイヤーガイド10で接続する。
【0049】
本発明を、図3の片開き戸に実施する場合の鍵係合部18の取り付け場所は、戸当り柱3とする。
【0050】
また、片開き戸には連結部は使用しないものとする。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、一般市販製品の物置や倉庫等、防災用機器等の保管庫として使用中のものや、新規に設置するものに装着可能であるので、利用価値は非常に高い。
【0052】
また、本発明の自己解錠装置は、建築物の非常口や非常階段の扉に取り付ければ、地震や竜巻等で建築物が激しく揺れて倒壊する恐れのある場合は、自己解錠により避難が容易である。
【符号の説明】
【0053】
1鍵側扉
1a鍵側戸当り面
2受側扉
2a戸当り面
2b扉折返板
3戸当り柱
3a柱折曲げ板
4鍵穴
5鍵フック
6鍵フック穴
7欠切部
8加工穴
9感震駆動部
10ワイヤーガイド
11ワイヤー
12連結金具
12aガイド穴
13引外し板
14リセット環
15駆動桿
16緩衝バネ
16a緩衝バネ受
17上部摺動桿ガイド
18鍵係合部
19摺動桿
20駆動バネ
21ベース
22下部摺動桿ガイド
23バネ止めワッシャー
24回転防止溝
25係止ピン
26抜止めリング
27ベアリング
28引外しレバー
29引外し可動板
30可動板中心軸
31ガイド固定金具
32押上げ棒
33押上げ板
34押上げ棒ガイド
35円盤
36半球突起
37円錐バネ
38吊下げ板
38a釣止穴
39吊下げ軸
40錘
41ロックレバー
41a支点穴
41b回動支軸
42ロックバネ
43振幅調整ネジ
44調整ネジ取付片
45係合摺働面
46連結部
47嵌込口
48連結金具ガイド棒
49ガイド棒連結片
50たるみ防止バネ
51連結支持金具
52連結板
53連結棒
54案内板
55連結桿
56ガイド穴
57引上げ棒
58可動板
59可動板ガイド
60連結ヘッド
61引上げ棒固定ネジ
62開口部
63可動板ガイド取付穴
64案内棒穴
65摺動溝
66ワイヤー止穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物本体内部への出入り口を遮断して設けられたスライドにより、両側に引き分けまたは片側に開閉される引き戸式扉を建築物が一定の大きさ以上に揺れる地震または強風時において前記扉の鍵を、電気を一切使用せずに全て機械的に自己解錠を行う装置として、地震によって錘40が揺れると吊下げ軸39に冠着された円盤35が傾き該円盤の外周が押上げ板33を上方に押し上げるため該押上げ板中央に固着された押上げ棒32が引外し可動板29を回動させ、更に該引外し可動板に固着した引外しレバー28によりロックレバー41に縲着した振幅調整ネジ43を押動するため、該ロックレバーは回動支軸41bを中心に回動するため摺働桿19の係止を解除すると同時にバネが開放されて該摺働桿の上端部に固着された駆動桿15に繋結されたワイヤー11で動力を伝達して反鍵側扉、即ち受側扉2または戸当たり柱3に装着した可動板58をスライドさせることで鍵フック5の係合を解除する自己解錠装置。
【請求項2】
左右両方向へのスライドにより両側に引き分け開閉される引き戸式扉に本発明の解錠装置を装着する場合は、上下に移動する連結金具12に開口した嵌込口47を設け、受側扉2を閉めると連結板52が開口部に噛み込むため、感震駆動部9の動力をワイヤー11によって伝達し、可動板58をスライドさせることで鍵フック5の係合を解除する自己解錠装置。
【請求項3】
両側に引き分け開閉される引き戸式扉の建築物建造時に、扉に装着された錠前を交換することなく、または該錠前を加工や改良することなく、前記の建築物が一定の振動以上に達したときに鍵フック5が係止される受け側扉2または戸当たり柱3の係止部分を開放することで解錠する自己解錠装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−1788(P2011−1788A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147226(P2009−147226)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(503443142)三愛物産株式会社 (4)