説明

扉軸支装置

【課題】軸の差し込み操作性の向上及び軸の抜け止め堅牢化を実現する扉軸支装置の提供。
【解決手段】ポストの裏蓋軸支装置は、ポスト本体1側の第1及び第2の軸取付孔4A,4Bと、裏蓋5側の第1及び第2軸ホルダ7A,7Bを備え、第1及び第2軸ホルダ7A,7Bが保持する第1及び第2の軸部材8A,8Bの一方軸端側Nを第1及び第2の軸取付孔4A,4Bに対応させて差し込んで成り、各軸部材8A,8Bは一方軸端側Nにツマミ部Qを挟んで逆方向へ配向する他方軸端側Mを有し、各扉側軸ホルダ7A,7Bは、他方軸端側Mを傾斜姿勢で差し込み可能な斜向した他方軸端側挿通孔hのある第1軸受突起Pと、他方軸端側挿通孔hよりも対応する軸取付孔4A,4B寄りに位置し一方軸端側Nを通して軸取付孔4A,4B側へ突出させる一方軸端側挿通孔hのある第2軸受突起Pと、ツマミ部Qの旋回動に伴い当該ツマミ部Qを係止する係止部Rを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポストの裏蓋や開き戸などの大小各種の開閉扉に関し、特にその開閉扉に適用可能な扉軸支装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポストの裏蓋の軸支装置としては、ポストの裏面の取り出し口を開閉する裏蓋を配置し、取り出し口の上部の両側に軸取付孔を設けると共に裏蓋の内面側に設けた軸受け台毎に一対の軸挿通孔を設け、軸取付孔と一対の軸挿通孔とに軸ピンを挿通して裏蓋を開閉自在に取り付けて成り、軸ピンの頭部が位置する座部にその頭部を抜け止めする係止突起を突設してあり、軸ピンを一対の軸挿通孔に挿通すると、頭部が係止突起を越えて係止突起で返し係止されて軸ピンが抜け止めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−342773(図13)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の軸支装置においては、軸ピンを一対の軸挿通孔に差し込んでその先端が軸取付孔に入り込む際、同時にその頭部が係止突起を乗り越える状態にあるため、軸ピンの先端がぶれて軸取付孔に差し込み難い。これを緩和するには、軸ピンを長くし、係止突起を低くすればよいが、係止機能の減退を招くことになるため、軸ピンの差し込み操作性の向上と軸ピンの抜け止め耐力は二律背反する。また、軸ピンの頭部が係止突起を乗り越える際には、樹脂製の係止突起では擦り傷等の損傷を受けることから抜け止め耐力の信頼性に欠け、更に、軸ピンを引き抜く場合は係止突起を剥ぎ取る必要があり、裏蓋の取付は一回性であって裏蓋の再取付が不可能である。
【0005】
そこで上記問題点に鑑み、本発明の第1の課題は、軸の差し込み操作性の向上と軸の抜け止め耐力の向上を共に実現できる扉軸支装置を提供することにある。本発明の第2の課題は、装置の一部を損傷することなく扉の取付・取外が何回でも可能な扉軸支装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、固定体側の扉口を挟んだ口縁部同士に対置した第1及び第2の軸取付孔と、扉側の両縁部に対置した第1及び第2の軸ホルダとを備え、第1及び第2の軸ホルダが保持する第1及び第2の軸部材の一方軸端側を第1及び第2の軸取付孔に対応させて差し込んで扉を開閉自在に取付けて成る扉軸支装置において、各軸部材は一方軸端側にツマミ部を挟んで逆方向へ配向する他方軸端側を有し、各扉側軸ホルダは、他方軸端側を傾斜姿勢で差し込み可能な斜向した他方軸端側挿通孔のある第1有孔部と、他方軸端側挿通孔よりも軸取付孔寄りに位置し一方軸端側を通して軸取付孔側へ突出させる一方軸端側挿通孔のある第2有孔部と、この第2有孔部寄りのツマミ部の旋回動に伴い当該ツマミ部自身を係止する係止部とを有することを特徴とする。なお、ここで扉とは、開閉蓋や開き戸など各種の開閉扉を指す。
【0007】
このような構成の扉軸支装置においては、例えば次のようにして扉を扉口に取り付けることができる。まず、第1の軸ホルダの第1有孔部の斜向した他方軸端側挿通孔に内側から第1の軸部材の他方軸端側を傾斜姿勢で差し込んで、この嵌め合いを支点として第1の軸部材の一方軸端側を内側から第2有孔部の一方軸端側挿通孔に差し込み、第2有孔部寄りのツマミ部を回してこれを係止部に係止させ、第1の軸部材を一方軸端側挿通孔と他方軸端側挿通とが架設した状態で第1の軸ホルダに設定する。この状態で突出する一方軸端側を第1軸取付孔へ差し込んで、この嵌め合いを支点として第2の軸ホルダの第2有孔部の一方軸端側挿通孔を第2軸取付孔に合わせながら、第1有孔部の斜向した他方軸端側挿通孔に第2の軸部材の他方軸端側を内側から傾斜姿勢で差し込んで、この嵌め合いを支点として第2の軸部材の一方軸端側を内側から第2有孔部の一方軸端側挿通孔と第2軸取付孔とに差し込んだ後、第2有孔部寄りのツマミ部を回して係止部に係止させ、第2の軸部材を第2の軸ホルダに設定することにより、扉が扉口に開閉自在に取付けられる。
【0008】
このように、軸部材を第1有孔部と第2有孔部との中間から順次挿通孔に差し込んで架け渡すことができ、しかもツマミ部を回して係止部に係止させることができるため、軸の差し込み操作方向と軸の抜け止め操作方向が異なるので、軸の差し込み操作性の向上と軸の抜け止め耐力化の両者を実現できる。
【0009】
また、ツマミ部を逆方向に回して軸の抜け止めを解除することで、軸を軸ホルダから容易に外すことができるため、扉の取付・取外が何回でも可能である。
【0010】
ツマミ部は軸体に別体に設けることも可能であるが、軸体の中間部をU字状などに褶曲して形成しても良い。軸部材自身の低コスト化を実現できる。
【0011】
ここで、係止部は、ツマミ部の正逆旋回動過程の特定位置で当該ツマミ部に旋回抵抗力を付与する抵抗部と、この抵抗部の隣接位置でツマミ部の旋回動を阻止する回り止め部と、ツマミ部が抵抗部と回り止め部との挟間に位置するときツマミ部の第1有孔部側への戻りを阻止する軸方向戻り止め部とを有する。このツマミ部を回し、抵抗部からの抵抗力に抗して旋回させて回り止め部に当て、抵抗部及び軸方向戻り止め部の挟間で係止させる。
【0012】
各扉側軸ホルダは、第1有孔部と第2有孔部との間の第1有孔部寄りに他方軸端側を挟んで載せる軸装架部を有することが望ましい。第1有孔部は斜向した他方軸端側挿通孔を有し、他方軸端側をその斜向した他方軸端側挿通孔で支える強度が足りないこともあるが、この軸装架部で他方軸端側を挟んで載せることができる分、他方軸端側挿通孔への荷重を軽減でき、補強効果を発揮する。
【0013】
扉側軸ホルダは扉に取付可能な部品として構成しても構わないが、扉側軸ホルダが扉と一体に形成された樹脂成形品である場合には取付不要とでき、また耐久強度も十分得られる。
【0014】
上記の扉軸支装置において、固定体はポスト本体で扉は扉としての取り出し口を塞ぐ裏蓋とすれば、ポストの裏蓋軸支装置と得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、軸の差し込み操作性の向上と軸の抜け止め耐力化の両者を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(A)は本発明の実施形態に係るポストの裏蓋軸支装置において裏蓋の取付前の状態を示す斜視図、(B)は同裏蓋軸支装置において裏蓋の取付完了後の状態を示す斜視図である。
【図2】(A)〜(I)は同裏蓋軸支装置において裏蓋の取付手順を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。本例のポストの裏蓋軸支装置は、図1に示すように、ポスト本体1側の取り出し口2を挟んだ口縁部3A,3B同士に対置した第1の軸取付孔4A,第2の軸取付孔4Bと、樹脂製の裏蓋5の内面側の両縁部6A,6Bに一体的に対置した第1の軸ホルダ7A,第2の軸ホルダ7Bとを備え、第1及び第2の軸ホルダ7A,7Bにセットして保持する第1及び第2の軸部材8A,8Bの一方軸端側Nを第1及び第2の軸取付孔4A,4Bに対応させて差し込んで裏蓋5の扉を開閉自在に取付けて成る。
【0018】
各軸部材8A,8Bは軸体の中間をU字状に褶曲したツマミ部Qを有し、一方軸端側Nにツマミ部Qを挟んで逆方向へ配向する他方軸端側Mを有しており、他方軸端側Mの方が一方軸端側Nの方に比べて若干長めとなっている。
【0019】
各軸ホルダ7A,7Bは、図2に示す如く、他方軸端側Mを傾斜姿勢で差し込み可能な斜向した他方軸端側挿通孔hを持つ第1軸受突起Pと、他方軸端側挿通孔hよりも対応する軸取付孔4A,4B寄りに位置し一方軸端側Nを通して軸取付孔4A,4B側へ突出させる一方軸端側挿通孔hを持つ第2軸受突起Pと、この第2軸受突起P寄りのツマミ部Qの旋回動に伴い当該ツマミ部Q自身を係止する係止部Rとを有する。
【0020】
各係止部Rは、ツマミ部Qが挿通孔h,h内の軸端側M,Nを旋回中心として旋回する過程においてツマミ部Qの旋回中心からの最遠点が裏蓋5に面する位置で当該ツマミ部Qに乗り越え抵抗力を付与する半球状邪魔突起Rと、この半球状邪魔突起Rの隣接位置でツマミ部Qの旋回動を阻止する回り止め壁Rと、ツマミ部Qが半球状邪魔突起Rと回り止め壁Rとの挟間に位置するときツマミ部Qの第1軸受突起P側への戻りを阻止する軸方向戻り止め壁Rと、ツマミ部Qが半球状邪魔突起Rと回り止め壁Rとの挟間に位置するときツマミ部Qの第2軸受突起P側への進行を阻止する軸方向進み止め壁Rとを備えている。
【0021】
そして、各軸ホルダ7A,7Bは、第1軸受突起Pと第2軸受突起Pとの間の第1軸受突起P寄りに他方軸端側Mを挟んで載せる軸装架部Sを有する。
【0022】
このような構成のポストの裏蓋軸支装置においては、例えば次のようにして裏蓋5をポスト本体1の取り出し口2に簡単に取り付けることができる。
【0023】
まず、第1の軸ホルダ7Aの第1軸受突起Pの斜向した他方軸端側挿通孔hに内側から第1の軸部材8Aの他方軸端側Mを傾斜姿勢で差し込んで、この嵌め合いを支点として第1の軸部材8Aの一方軸端側Nを内側から第2軸受突起Pの一方軸端側挿通孔hに差し込み、第2軸受突起P寄りのツマミ部Qを回してこれを係止部Rに係止させ、第1の軸部材8Aを一方軸端側挿通孔hと他方軸端側挿通hとの架設した状態で第1の軸ホルダ7Aに設定する(図2(A))。
【0024】
この状態で突出する一方軸端側Nを第1軸取付孔4Aへ差し込んで、この嵌め合いを支点として第2の軸ホルダ7Bの第2軸受突起Pの一方軸端側挿通孔hを第2軸取付孔4Bに合わせながら(図2(B))、第1軸受突起Pの斜向した他方軸端側挿通孔hに第2の軸部材8Bの他方軸端側Mを内側から傾斜姿勢で差し込んで(図2(C))、この嵌め合いを支点として第2の軸部材8Bを裏蓋5と平行にし(図2(D),(E))、第2の軸部材8Bの一方軸端側Nを内側から第2軸受突起Pの一方軸端側挿通孔hと第2軸取付孔4Bとに差し込んだ後(図2(F),(G))、第2軸受突起P寄りのツマミ部Qを回して係止部Rに係止させ(図2(H),(I))、第2の軸部材8Bを第2の軸ホルダ7Bに設定することにより、裏蓋5が取り出し口2に開閉自在に取付けられる。
【0025】
ツマミ部Qを回して係止部Rに係止させる過程を説明すると、ツマミ部Qの旋回中心からの最遠点が半球状邪魔突起R擦って乗り越えこの突起Rと回り止め壁Rとの挟間に嵌って係止される。裏蓋5の開閉動作により一方軸端側Nに一方軸端側挿通孔hから摩擦力が加わるため、軸部材8A,8Bを回す偶力となるが、ツマミ部Qの最遠点がその旋回中心からの距離を腕の長さとする逆回りの偶力で対向しているので、ツマミ部Qを指などで作為的に摘んで戻さない限り、係止解除されることはない。
【0026】
このように、軸部材8A,8Bを第1軸受突起Pと第2軸受突起Pとの中間から順次挿通孔h,hに差し込んで架け渡すことができ、しかもツマミ部Qを軸回りに回して係止部Rに係止させることができるため、軸の差し込み操作性の向上と軸の抜け止め耐力化の両者を実現できる。また、ツマミ部Qを逆方向に回して軸部材8A,8Bの抜け止めを解除することで、軸部材8A,8Bを軸ホルダ7A,7Bから容易に外すことができるため、裏扉5の取付・取外が何回でも可能である。
【0027】
ツマミ部Qは軸体の中間部をU字状などに褶曲して形成したものであるから、軸部材A,8Bの低コスト化を実現できる。
【0028】
第1軸受突起Pは斜向した他方軸端側挿通孔hを有し、他方軸端側Mをその斜向した他方軸端側挿通孔hで支える強度が足りないこともあるが、各軸ホルダ7A,7Bは軸装架部Sを有し、この軸装架部Sで他方軸端側Mを架け載せることができる分、他方軸端側挿通孔hへの荷重を軽減でき、補強効果を発揮する。
【0029】
本例の裏蓋5は樹脂製で、軸ホルダ7A,7Bが裏蓋5と一体に形成されている。軸ホルダ7A,7Bが取付不要で、また耐久強度も十分得られる。
【符号の説明】
【0030】
1…ポスト
2…取り出し口
3A,3B…口縁部
4A…第1の軸取付孔
4B…第2の軸取付孔
5…裏蓋
6A,6B…両縁部
7A…第1の軸ホルダ
7B…第2の軸ホルダ
8A…第1の軸部材
8B…第2の軸部材
…他方軸端側挿通孔
…一方軸端側挿通孔
Q…ツマミ部
M…他方軸端側
N…一方軸端側
…第1軸受突起
…第2軸受突起
R…係止部
…半球状邪魔突起
…回り止め壁
…軸方向戻り止め壁
…軸方向進み止め壁
S…軸装架部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定体側の扉口を挟んだ口縁部同士に対置した第1及び第2の軸取付孔と、扉側の両縁部に対置した第1及び第2の軸ホルダとを備え、前記第1及び第2の軸ホルダが保持する第1及び第2の軸部材の一方軸端側を前記第1及び第2の軸取付孔に対応させて差し込んで扉を開閉自在に取付けて成る扉軸支装置において、
前記各軸部材は前記一方軸端側にツマミ部を挟んで逆方向へ配向する他方軸端側を有し、前記各扉側軸ホルダは、前記他方軸端側を傾斜姿勢で差し込み可能な斜向した他方軸端側挿通孔のある第1有孔部と、前記他方軸端側挿通孔よりも前記軸取付孔寄りに位置し前記一方軸端側を通して前記軸取付孔側へ突出させる一方軸端側挿通孔のある第2有孔部と、この第2有孔部寄りの前記ツマミ部の旋回動に伴い当該ツマミ部自身を係止する係止部とを有することを特徴とする扉軸支装置。
【請求項2】
請求項1に記載の扉軸支装置において、前記ツマミ部は軸体の中間部を褶曲して成ることを特徴とする扉軸支装置。
【請求項3】
請求項1に記載の扉軸支装置において、前記係止部は、前記ツマミ部の正逆旋回動過程の特定位置で当該ツマミ部に旋回抵抗力を付与する抵抗部と、この抵抗部の隣接位置で前記ツマミ部の前記旋回動を阻止する回り止め部と、前記ツマミ部が前記抵抗部と前記回り止め部との挟間に位置するとき前記ツマミ部の前記第1有孔部側への戻りを阻止する軸方向戻り止め部とを有することを特徴とする扉軸支装置。
【請求項4】
請求項1に記載の扉軸支装置において、前記各扉側軸ホルダは、前記第1有孔部と前記第2有孔部との間の前記第1有孔部寄りに前記他方軸端側を挟んで載せる軸装架部を有することを特徴とする扉軸支装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の扉軸支装置において、前記各扉側軸ホルダは前記扉と一体に形成された樹脂成形品であることを特徴とする扉軸支装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に規定する扉軸支装置において、前記固定体はポスト本体で、前記扉は扉口としての取り出し口を塞ぐ裏蓋であることを特徴とするポストの裏蓋軸支装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−246956(P2011−246956A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120813(P2010−120813)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(592069274)株式会社ヤマトインテック (1)
【Fターム(参考)】