説明

手動ガイド走査型地中探査装置

【課題】部分的または完全にガイド手段を地面から引き離すと、検知測定を確実に停止する手動ガイド走査地中探査装置、及びそのための制御方法を提供する。
【解決手段】操作可能なハウジング内部に検知モジュール及び計算手段を有する手動ガイド走査地中探査装置は、検知モジュールを探知すべき壁面上で一定距離をあけてガイドするように構成されたガイド手段を有し、前記ガイド手段は計算手段に接続された少なくとも1個の経路センサを有し、この経路センサを、制御手段を介して制御可能に検知モジュールと接続する。地中探査装置の制御方法は、経路センサによって測定されたガイド手段の経路を把握する走査ステップと、検知モジュールによって検知測定を実行する検知ステップとを有し、制御手段を用いて、検知ステップを壁面に対するガイド手段の位置変化量に応じて制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特にコンクリートや壁部に埋め込んだ鉄筋や管を検知するための、手動ガイドされ、走査(スキャン)する地中探査装置、及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築業において、埋設された物体の探知には、鉄筋や金属管、電線、プラスチック管を検知するという重要な役割がある。地中探査装置そのものの基礎となる検知方法については、本出願の対象ではないので、ここではこれ以上触れない。一般に、埋設された物体は、それぞれ特許文献1によれば印加され磁性を帯びた近接場のインピーダンスの変化を用いて、特許文献2によれば印加され電気を帯びた近接場のインピーダンスの変化を用いて、特許文献3によれば電磁波によるレーダを用いて検知し、特性を明らかにする。
【特許文献1】米国特許第6541965号明細書
【特許文献2】国際公開第02/063343号パンフレット
【特許文献3】米国特許第5541605号明細書
【0003】
走査方向に沿って走査する地中探査装置の場合、建設業においては一般的な、粗く雑な壁面において位置変化量を確実に把握することが重要である。ここで、本発明の意図するところでは、壁面とは、壁及び天井、地面などの少なくとも区分的に平坦な表面と理解すべきである。
【0004】
特許文献4には、磁界の印加した近接場のための検知モジュールを備え、平面上を走査しながら移動可能な測定ヘッド、測定センサ、並びに測定ヘッドと信号伝達可能に接続された、映像を出力する別体の評価ユニットを有する、埋設された一次元の物体用の上述のような地中探査装置が示されている。この装置では、4個の離間配置された地中探査機のガイド車輪は、それぞれの対ごとに、固定軸を用いて及び軸自体を歯付ベルトを用いてねじれが発生しないように互いに連結し、これによって、つねに測定ヘッドの直線的なガイドが強制される。経路センサによって測定される位置データおよび検知モジュールによって連続的に検知される検知データは、単独の評価ユニットにおいて計算手段を用いて計算処理され、その結果は図形出力ディスプレイに表示される。
【特許文献4】米国特許第5296807号明細書
【0005】
特許文献5によると、操作可能なハウジング内部に検知モジュール及び計算手段を有し、グラフィックな出力手段を有する上述のような地中探査装置は、探知すべき壁面上を一次元で走査しながら往復移動し、このとき走査方向に沿って、相対的な位置変化量が経路センサによって測定され、地中探査装置の計算手段によって加工処理される。この装置では、地中探査装置の4個の離間配置されたガイド車輪は各対ごとそれぞれ固定軸を用いてねじれが発生しないように互いに連結する。誤測定を誘発するガイド車輪の引き上げは経路センサによって把握され、エラー通知が生成され、利用者に送られる。しかしながら、ガイド車輪を地面から部分的にないし完全に引き離した場合の検知測定は、可能である。
【特許文献5】独国特許出願公開第10207477号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、部分的または完全にガイド手段を地面から引き離すと、検知測定を確実に停止する手動ガイド走査地中探査装置、及びそのための制御方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、基本的に独立項に示す特徴によって達成される。従属項において、好適な実施態様を示す。
【0008】
すなわち、操作可能なハウジング内部に検知モジュール及び計算手段を有する手動ガイド走査地中探査装置は、検知モジュールを探知すべき壁面上で一定距離をあけてガイドするように構成されたガイド手段を有し、ガイド手段は計算手段に接続された少なくとも1個の経路センサを有する。そして、制御手段を介して制御可能に、経路センサを検知モジュールと接続する。
【0009】
手動ガイド走査地中探査装置の制御方法では、繰り返し行われる走査ステップにおいて、経路センサによって測定されたガイド手段の経路を把握して、位置データを用いて探知すべき壁面に対する検知モジュールの位置を特定し、検知ステップにおいて、検知モジュールによって検知測定を実行して、計算手段によって検知データ及び位置データから結果データを計算する前に、検知データを用いて地中に埋め込まれた物体を発見可能にする。そして、制御手段を用いて、検知ステップを壁面に対するガイド手段の位置変化量に応じて制御する。
【発明の効果】
【0010】
ガイド手段の壁面に対する相対的な位置変化量に応じて検知モジュールを制御する制御手段は、ガイド手段が部分的ないし全体として地面から引き離されると、検知モジュールの作動を中断可能であり、またはセンサ線を短縮可能であり、これによって、利用者の能動的な操作がなくても、誤測定を確実に回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
制御手段を計算手段とともに共通のマイクロコントローラ内に構成すると好適であり、これによって、必要な部材要素の数を減らすことができるので、本出願の意図するところでは、制御手段をハードウェアまたはソフトウェアのいずれに実装するかを特定する必要がない。
【0012】
制御手段を検知モジュールとともに共通の集積回路内に構成すると好適であり、これによって、必要な部材要素の数を減らすことができるので、本出願の意図するところでは、制御手段をハードウェアまたはソフトウェアのいずれに実装するかを特定する必要がない。
【0013】
トリガ手段を制御手段とすると好適であり、このトリガ手段は、経路センサによって移動イベントが把握されると、短い個別測定タイムスパン(数ms)の間にわたり検知モジュールを作動させまたはセンサ出力を増加させ、これによって、誤った移動イベントが発生した場合には、短い時間で検知モジュールによる更なる検知測定の実行が停止する。
【0014】
ガイド手段を、少なくとも3個の、平面上に離間配置した、例えばネップや毛、ブレードといった、滑走点を有する滑走フレームとして構成すると好適であり、これによって、ガイド手段が傾くことなく直接探知すべき床に沿ってガイド可能である。
【0015】
ガイド手段を、探知すべき壁面に沿って転動可能な少なくとも1個の、例えば、球や車輪、ローラ、チェーンとして構成した転動手段を有するシャシとして構成すると好適であり、これによって、利用者が探知すべき壁面においてガイド手段をガイドするのに、より少ない力のみが必要となる。
【0016】
互いに離間配置し、互いに平行に配置された2個のガイド車輪をシャシに設け、もしくは代わりに、少なくとも1個のガイドチェーンまたはガイドローラをシャシに設けると好適であり、これによって、直線的なガイド方向に沿う場合を例外として、一次元での走査の場合に要求されるスリップのない転動が可能になる。
【0017】
少なくとも2個の、随意に全部の転動手段を、ねじれが発生しないように互いに連結すると好適であり、これによって、直線的なガイド方向に沿う場合を例外として、転動への拘束が強まる。
【0018】
経路センサを、例えば、機械マウスセンサや光学CCD−カメラといった2d−経路センサとして構成すると好適であり、これによって、任意の走査曲線に沿った経路の把握が可能になる。
【0019】
経路センサを、探知すべき壁面の表面性状を感知可能な、例えば、光学CCD−カメラといった光学センサとして構成すると好適であり、これによって、接触なしでの経路の把握が可能になる。
【0020】
代わりに、経路センサを、少なくとも1個の転動手段を感知可能な、例えば、インクリメンタルセンサ(光学的、磁気的)や角度センサ(光学的、磁気的)、回転速度センサ(スペックル、インダクション)として構成すると好適であり、これによって、探知すべき壁面の表面の性状に依存することなく経路が把握される。
【0021】
互いに独立して移動可能なそれぞれ別々の対応する転動手段を感知する、少なくとも2個の経路センサを設置すると好適であり、これによって、例えば、利用者の手と接触するといった転動手段の予期せぬ移動を、探知すべき壁面に沿った走査移動と区別することができる。
【0022】
制御方法において、例えば、測定された個別経路変化量のスカラを互いに掛け合わせることによって、もしくは、論理的な個別トリガイベントの互いの論理積を演算することによって、検知ステップを、制御手段を用いて、少なくとも2個の独立した経路センサが把握する位置変化量に応じて制御すると好適であり、これによって、結果として、検知ステップが確実に、探知すべき壁面に沿った走査移動があった場合にのみ実行される。
【0023】
好適な実施態様に関して、図面を参照して本発明を詳述する。
【実施例】
【0024】
図1において、直線的な走査方向Sに沿って手動ガイドされ走査する地中探査装置1は、操作可能なハウジング5内部に検知モジュール2、計算手段3及び図形出力ディスプレイ4を有する。さらに、地中探査装置1は、検知モジュール2を物体Oが埋め込まれた探知すべき壁面6上一定距離Aでガイドするように構成されシャシとして形成されたガイド手段7を備える。ガイド手段7には、計算手段3と接続され、かつ制御手段9を介して制御可能に検知モジュール2と接続された、2個の一次元の経路センサ8を設ける。この例では、計算手段3とともに共通のマイクロコントローラμC内部に構成した制御手段9を、インクリメンタル位置センサとして構成した経路センサ8によってそのつど個別に遷移操作され、内部で論理積を演算するトリガとして、時定数10msでソフトウェア実行される単安定トリガ回路の形で構成する。制御手段9の出力端子は、検知モジュール2と制御可能に接続し、上記を用いてトリガされた移動イベントの際に個々の検知測定を行う。経路センサ8それぞれは、感知のためそれぞれのガイド車輪11に割り当て、このガイド車輪11は、互いに離間配置され、互いに平行に配置され、互いに独立に回転可能にガイド手段7に装着される。
【0025】
図2において、任意の曲線状の走査方向Sに沿って手動ガイドされ走査する地中探査装置1は、操作可能なハウジング5内部に、検知モジュール2、計算手段3及びグラフィックな出力ディスプレイ4を有する。さらに、地中探査装置1は、物体Oが埋め込まれた探知すべき壁面6上一定距離Aで検知モジュール2をガイドするように構成しシャシとして形成したガイド手段7を備える。滑走毛12を有する滑走フレームとして形成したガイド手段7には、ハウジングにおける開口を通じて感知可能に、壁面6に向けたCCD−カメラとして構成した光学二次元経路センサ8を設け、このCCD−カメラは、計算手段3と接続され、かつ制御手段9を介して制御可能に検知モジュール2と接続される。この例では、検知モジュール2とともに共通の集積回路IS内に構成した制御手段9は、トリガとして時定数10msでハードウェア実行される単安定マルチバイブレータの形で構成し、制御手段9の入力端子は直接経路センサ8と接続し、出力端子は検知モジュール2と制御可能に接続し、上記を用いてトリガされた移動イベントの際に個々の検知測定を行う。
【0026】
図3では、シャシとして構成した別のガイド手段7は、互いに離間配置し、互いに平行に配置した4個のガイド車輪11を有し、これらのガイド車輪はすべて固定軸13を用いて連結し、固定軸13は歯付ベルト14を用いてねじれが発生しないように互いに連結する。磁気によるインクリメンタルセンサとして軸13において形成した経路センサ8は、この軸13を用いてねじれが発生しないよう、ガイド車輪11に感知可能に配置する。
【0027】
図4では、シャシとして構成した別のガイド手段7は、互いに離間配置し、互いに平行に配置した2本のガイドチェーン15を有し、このガイドチェーン15の向き合ったチェーン車輪16は、ペアごとに固定軸13を用いてねじれが発生しないように互いに連結する。磁気によるインクリメンタルセンサとして軸13において形成した経路センサ8は、この軸13を用いてねじれが発生しないよう、ガイドチェーン15に感知可能に配置する。
【0028】
図5によると、トリガとして構成した制御手段の時系列的な個別ステップ17から21を用いる、上記に対応する時間トリガされる制御方法において、走査ステップ17では、インクリメンタルな経路センサによって測定されたガイド手段の位置変化量Δxそれぞれを把握し、この位置変化量Δxは、移動という条件18の下では、遷移操作されたトリガへの論理的な入力信号を意味する。この入力信号と同期する10msであるタイムスパンTの論理的な出力信号は、このタイムスパンTの間、検知ステップ20において検知モジュールを作動19させ、個々の検知測定を可能にする。従って、タイムスパンT経過後、検知モジュールは再度停止21する。インクリメンタルな位置変化量Δxが次に把握されると、上記プロセスが繰り返される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】地中探査装置の模式的な側面図である。
【図2】改良型の地中探査装置の模式的な側面図である。
【図3】改良型のシャシの模式的な概観図である。
【図4】更なる改良型のシャシの模式的な概観図である。
【図5】フロースキームの説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 地中探査装置
2 検知モジュール
3 計算手段
4 出力ディスプレイ
5 ハウジング
6 壁面
7 ガイド手段
8 経路センサ
9 制御手段
11 ガイド車輪
12 滑走毛
13 軸
14 歯付ベルト
15 ガイドチェーン
16 チェーン車輪
17 走査ステップ
18 条件
19 検知モジュール作動
20 検知ステップ
21 検知モジュール停止
A 距離
S 走査方向
IS 集積回路
T タイムスパン
O 物体
μC マイクロコントローラ
Δx 位置変化量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
探知すべき壁面(6)上で一定距離をあけて検知モジュール(2)をガイドするように構成されたガイド手段(7)を有する操作可能なハウジング(5)内部に、検知モジュール(2)及び計算手段(3)を有し、
前記ガイド手段(7)は、計算手段(3)に接続された少なくとも1個の経路センサ(8)を有する手動ガイド走査型地中探査装置において、
前記経路センサ(8)を制御手段(9)を介して制御可能に前記検知モジュール(2)と接続したことを特徴とする地中探査装置。
【請求項2】
前記制御手段(9)を前記計算手段(3)とともに共通のマイクロコントローラ(μC)内に構成したことを特徴とする請求項1に記載の地中探査装置。
【請求項3】
前記制御手段(9)を前記検知モジュール(2)とともに共通の集積回路(IS)内に構成したことを特徴とする請求項1に記載の地中探査装置。
【請求項4】
前記制御手段(9)がトリガ手段であることを特徴とする請求項1から3いずれか一項に記載の地中探査装置。
【請求項5】
前記ガイド手段(7)を、少なくとも3個の、平面上に離間配置した滑走点を有する滑走フレームとして構成したことを特徴とする請求項1から4いずれか一項に記載の地中探査装置。
【請求項6】
前記ガイド手段(7)を、探知すべき壁面(6)に沿って転動可能な少なくとも1個の転動手段を有するシャシとして構成したことを特徴とする請求項1から4いずれか一項に記載の地中探査装置。
【請求項7】
互いに離間配置され、互いに平行に配置された2個のガイド車輪(11)を前記シャシに設け、もしくは代わりに、少なくとも1個のガイドチェーン(15)またはガイドローラを前記シャシに設けたことを特徴とする請求項6に記載の地中探査装置。
【請求項8】
少なくとも2個の、随意に全部の転動手段を、ねじれが発生しないように互いに連結したことを特徴とする請求項6または7に記載の地中探査装置。
【請求項9】
前記経路センサ(8)を、2d−経路センサとして構成したことを特徴とする請求項1から8いずれか一項に記載の地中探査装置。
【請求項10】
前記経路センサ(8)を、探知すべき壁面(6)の表面性状を感知可能な光学センサとして構成したことを特徴とする請求項1から9いずれか一項に記載の地中探査装置。
【請求項11】
前記経路センサ(8)を、少なくとも1個の転動手段を感知するように構成したことを特徴とする請求項1から9いずれか一項に記載の地中探査装置。
【請求項12】
互いに独立して移動可能なそれぞれ別々の対応する転動手段を感知する、少なくとも2個の経路センサ(8)を設置したことを特徴とする請求項6から11いずれか一項に記載の地中探査装置。
【請求項13】
繰り返し行われる走査ステップ(17)において、経路センサ(8)によって測定されたガイド手段(7)の経路を把握して、位置データを用いて探知すべき壁面(6)に対する検知モジュール(2)の位置を特定し、
検知ステップ(20)において、検知モジュール(2)によって検知測定を実行して、計算手段(3)によって検知データ及び位置データから結果データを計算する前に、検知データを用いて地中に埋め込まれた物体(O)を発見可能にする手動ガイド走査型地中探査装置の制御方法において、
制御手段(9)を用いて、前記検知ステップ(20)を壁面(6)に対する前記ガイド手段(7)の位置変化量(Δx)に応じて制御することを特徴とする制御方法。
【請求項14】
前記検知ステップ(20)を、前記制御手段(9)を用いて、少なくとも2個の独立した経路センサ(8)が測定した位置変化量(Δx)に応じて制御することを特徴とする請求項13に記載の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−317445(P2006−317445A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−130383(P2006−130383)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(591010170)ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト (339)
【Fターム(参考)】