説明

手動ハンダ供給装置

【課題】 糸ハンダ供給装置を取り付けたハンダごての使用する状況によって、糸ハンダを供給する先端ノズルを一時的にこて先のチップから退避させたり、装置自体をハンダごてと着脱可能な糸ハンダ供給装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 ハンダ供給部30を、支持パイプ14を軸に回転できる機構にすることにより、レバー10を引くことで先端ノズル3を上方へ動かせるようにする。また離すとバネの力で元の糸ハンダを供給する位置へと戻る。そして、装置全体は本体取付部品12で支持し、柄9に固定したベース11と簡易に着脱可能な機構にすることで普通のハンダごてとしても使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に使用されている棒形のハンダごて、鉄砲型のハンダごて等のこて先のチップに糸ハンダを供給する装置の機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハンダごてでのハンダ付け作業においては糸ハンダを手で供給していた。片手で糸ハンダを持ち、もう片手でこてを握るため、ただハンダづけをする作業においては問題ないが、基盤への不安定な部品のハンダ付けや配線の取り付けなどの作業においては特に工夫が必要であった。
【0003】
その場合は、基盤に部品を手で固定したまま、その手でハンダを供給したり、何か道具で部品を固定してハンダ付け作業を行うなど、非常にやりにくい場合や、ハンダ付けに一手間も二手間もかかってしまうことがある。
【0004】
そのために、その不便さを解消するため手動で糸ハンダを供給するハンダごてはいくつも提案されている。(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3 参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−130340
【特許文献2】実公平06−027259
【特許文献3】実開平01−89868
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、今まで考えられている手動で糸ハンダを供給するハンダごては、ハンダを導くガイド、供給ノズル等の位置が、全てこてに対して固定の為、時には供給ノズルやそれから出ている糸ハンダが作業のじゃまになってしまったり、一般のこて台が使用できなかったり(こて先を差し込むこて台の筒にガイドや供給ノズルが入らない為)という問題点がある。
【0007】
また、ハンダ送り装置とハンダごての位置関係が固定である為、長時間手動で糸ハンダを供給する作業が必要ない場合でもハンダ送り装置を取り外すことができず、重量や使い勝手の面で、複数のこて(ハンダ送り装置の付いているものと付いていないもの)を使い分けなければいけない状況が出てくる場合がある。
【0008】
そこで本発明は従来の問題点を除去した手動糸ハンダ供給装置の機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する為、以下のような特徴を有する。
【0010】
請求項1に記載の発明は、ハンダごてに装着された、または装着して使用される糸ハンダ供給装置において、該糸ハンダ供給装置は糸ハンダを送り出す機構と該送り出された糸ハンダをこて先へ導く管状部材と操作子とを具え、前記操作子を操作して、前記管状部材を前記ハンダごてに対し、所定の軸を中心に回転させることにより、糸ハンダをこて先から退避可能に配置したことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1の糸ハンダ供給装置が、前記ハンダごての柄と一体に構成されたベース、または該ハンダごての柄に取り付けられたベース部品に対し着脱自在に装着されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の糸ハンダ供給装置の機構によれば、ハンダによる部品の仮付けや、先端ノズルがこて先のそばにあっても特に作業に支障が無い場合の本付けにおいては、ハンダごてを持つ一方の手で糸ハンダも供給できるので他方の手で部品を支えることができる。
【0013】
また、先端ノズルがこて先のそばにあると他の部品に当たったり邪魔になるような狭いところでのハンダ付け作業や、一般のこて台にハンダごてを差し込む時や、こて先を掃除する場合などには、レバー等の操作子を操作することにより先端ノズルを一時的にこて先のチップから退避でき、それらの作業を問題なく行うことができる。
【0014】
さらに手動による供給が必要ない場合は、糸ハンダ供給装置をハンダごてから取り外すことで一般のハンダごてとして使用できるため、本発明により1本のハンダごてで各作業内容に合わせた使い方ができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ハンダごてを含む糸ハンダ供給装置全体の前方からの斜視図である。
【図2】糸ハンダ供給装置の供給機構の解体図である。
【図3】ハンダごてを含む糸ハンダ供給装置全体の後方からの斜視図である。
【図4】ハンダごてを含む糸ハンダ供給装置全体の側面図である。
【図5】糸ハンダを供給する状態での糸ハンダ供給装置の平面図である。
【図6】図5のA−A断面図である。
【図7】糸ハンダをハンダごてから退避させた状態で、図6と同じ位置で切断した断面図である。
【図8】ハンダごてから糸ハンダ供給装置を外した状態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし図では棒形のハンダごてを例にとって説明していくが、この発明のハンダ供給装置は鉄砲型のハンダごてに装着可能に構成することも可能である。
【0017】
図1に示すようにハンダごての柄9にベース11がしっかりと固定されている。そのベース11の溝11aに本体取付部品12のレール12aを上方からスライドさせてはめ込むことにより、本体取付部品12はベース11に取り付けられている。ベース11と本体取付部品12は先端ノズル3の位置が安定するように精度よく、脱着可能な構造とする。本体取付部品12をベース11に装着した後に、本体取付部品12がベース11に対し動かないようにする為に両者をネジ、バネ、等で押さえつけることもできる。
【0018】
本体取付部品12には支持パイプ14が締付けボルト22で固定され、角度調整部品15は支持パイプ14にストッパーボルト20で固定されている。支持パイプ14の中には送りローラー13の回転を歯車6へと伝えるシャフト18(図2参照)が回転自在に通っている。
【0019】
支持パイプ14はハンダ供給部フレーム5に通されている。ハンダ供給部フレーム5はEリング17(図2参照)と角度調整部品15にガタ無く挟まれており、支持パイプ14を軸としてハンダごての柄9に対して回転する構造になっている。すなわち、本体取付部品12、角度調整部品15、支持パイプ14はハンダごてに対し位置が固定であり、ハンダ供給部フレーム5は、角度調整部品15及び支持パイプ14に対して摺動回転して、支持パイプ14を軸としてハンダごてに対して回転自在とされている。
【0020】
糸ハンダ2はハンダ供給部フレーム5の穴を通り、押さえバネ8の力で付勢された押さえバー7に当接して歯車6に押さえつけられている。従って、送りローラー13をハンダごての柄を持った手の人指し指で回すことにより歯車6が回転し、糸ハンダ2を先端ノズル3へ送り出す構造になっている。
【0021】
図2はハンダ供給部30をわかりやすく解体した状態を示す。
【0022】
図3に示すようにベース11が柄9の一部として一体化されていない場合は、ベース11はインシュロック等の締め付け部品19で柄9に固定されている。
【0023】
図4に示すようにハンダごての柄9を持った手の人指し指で、レバー10を柄9の後方(手前)に引くことにより、ハンダ供給部30が支持パイプ14を軸に回転することで先端ノズル3をこて先1から退避させることができる。レバー10を離すともどりバネ16(図6、図7参照)の力で元の糸ハンダをこて先に供給するときの状態に戻る。
【0024】
図5の平面図に、図6と図7で表した断面図の切断位置を示す。
【0025】
図6は糸ハンダを供給する時の状態を示す。ハンダ供給部フレーム5に取り付けられた位置決めボルト21は支持パイプ14に固定された角度調整部品15のストッパーボルト20に、もどりバネ16の力で押さえつけられている。それによりハンダ供給部フレーム5はその位置で安定し、先端ノズル3は糸ハンダ2をこて先1へ供給できる状態になる。
【0026】
図7は先端ノズル3をこて先1から退避させた時の状態を示す。レバー10を指で矢印方向へ引っ張ることにより、ハンダ供給部30の位置決めボルト21はもどりバネ16を押し、ハンダ供給部フレーム5は支持パイプ14を軸に回転する。レバー10を引っ張ることをやめることによりもどりバネ16の力でハンダ供給部フレーム5は図6で表した形態に戻る。
【0027】
図8にはハンダ供給装置をハンダごてから取り外した状態を示す。本体取付部品12をベース11に対して引き上げることにより、溝11aとレール12aのはめ合いが外れて、糸ハンダ供給装置はハンダごてから取り外される。
【0028】
なお前記実施例では、糸ハンダ供給装置をハンダごてに対して取り外し可能とした場合について説明したが、この発明の糸ハンダ供給装置は、ハンダごてに予め固定的に装着されていて取り外し不能に構成することもできる。
【符号の説明】
【0029】
1 こて先 2 糸ハンダ 3 先端ノズル
4 導管 5 ハンダ供給部フレーム 6 歯車
7 押さえバー 8 押さえバネ 9 柄
10 レバー(操作子) 11 ベース 12 本体取付部品
13 送りローラー 14 支持パイプ 15 角度調整部品
16 もどりバネ 17 Eリング 18 シャフト
19 締付け部品 20 ストッパーボルト 21 位置決めボルト
22 締付けボルト 30 糸ハンダ供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンダごてに装着された、または装着して使用される糸ハンダ供給装置において、該糸ハンダ供給装置は糸ハンダを送り出す機構と該送り出された糸ハンダをこて先へ導く管状部材と操作子とを具え、前記操作子を操作して、前記管状部材を前記ハンダごてに対し、所定の軸を中心に回転させることにより、糸ハンダをこて先から退避可能に配置したことを特徴とする糸ハンダ供給装置。
【請求項2】
前記ハンダごての柄と一体に構成されたベース、または該ハンダごての柄に取り付けられたベース部品に対し着脱自在に装着されることを特徴とする請求項1記載の糸ハンダ供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−88208(P2011−88208A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261335(P2009−261335)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【出願人】(598141604)株式会社交洋製作所 (6)