手持式塗装用スプレーガン
【課題】手指の移動のみで操作可能で単純操作で噴霧条件の変更ができ、被塗装物に適合する条件で効率の良い塗装ができるスプレーガンを提供する。
【解決手段】スプレーガンを把持する手によって作動を制御する検出センサーを設けて、その検出センサーの信号によってプレーガンの噴霧を制御する。検出センサーは手指の移動によって光の遮断もしくは透過を変更可能とする光ファイバーセンサーとし、把持する指で遮断もしくは透過を変更できる位置に設ける。検出センサーは複数配置し、それぞれの信号による制御装置からの出力により、それぞれ異なる条件でエアをスプレーガンに供給するよう予め設定し、センサーの作動切替えによって噴霧条件の切替えを可能にする。それぞれの検出センサーのうち、一方の信号による噴霧パターン調整用のエアの圧力及び塗料噴出量は、異なる条件でスプレーガンに供給されるように設定した制御装置と接続する。
【解決手段】スプレーガンを把持する手によって作動を制御する検出センサーを設けて、その検出センサーの信号によってプレーガンの噴霧を制御する。検出センサーは手指の移動によって光の遮断もしくは透過を変更可能とする光ファイバーセンサーとし、把持する指で遮断もしくは透過を変更できる位置に設ける。検出センサーは複数配置し、それぞれの信号による制御装置からの出力により、それぞれ異なる条件でエアをスプレーガンに供給するよう予め設定し、センサーの作動切替えによって噴霧条件の切替えを可能にする。それぞれの検出センサーのうち、一方の信号による噴霧パターン調整用のエアの圧力及び塗料噴出量は、異なる条件でスプレーガンに供給されるように設定した制御装置と接続する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は手動式の塗装用スプレーガンで、特に繰り返し行う吹き付け操作に対する手指の疲労を改善し、作業者の負担を軽減することができる装置として、多くの塗装分野で使用される装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
塗装用スプレーガンは、作業者が手で操作し被塗装物に対して吹き付けを行うハンドスプレーガンと、自動塗装機や塗装ロボットのように機械駆動される装置に搭載され操作者の指令信号等によって作動される自動スプレーガンに大別される。ハンドスプレーガンは多くの場合、引金もしくはボタンを備え、吹き付け開始に当たって指で作動させ、停止時は指を離すことによって操作される。
【０００３】
塗装作業は、被塗装物の塗装面に対してスプレーガンを往復移動させながら被塗装物の手前で吹き付けを開始し、被塗装物を通過した位置で停止する作業を繰り返すため、多い時は１分間に数十回の繰り返し操作が行われ、作業者の手指の負担はきわめて大きい。このため作業内容によっては、腱鞘炎にならないような対策が採られることもよくある。
【０００４】
これまで手指の負担を軽減する手段として、引金の操作を軽くすることによって前記の対策を行ってきており、具体的には使用する空気や塗料の噴出を開始する際に弁を押し開く荷重を軽減するため、引金の支点の位置や弁にかかる背圧の減少、作動用エアピストンの採用等々多くの技術が提案されている。
【０００５】
引金に負担がかかる場合、その作動に要する力を軽減し、軽く操作できることができる方法としては、例えば特公昭５９−３０１３６号公報のようにスプレーガンに供給する塗料と圧縮空気の供給制御装置を設け、スプレーガンに設けた押しボタンを有する信号発生器からの信号によって噴霧を制御する装置が示されている。
【０００６】
これより先、スプレーガンについては実公平３−４０３６５号公報には、スプレーガンに制御弁とこれを作動させる電気スイッチを備えたスプレーガンにより、空気弁や塗料弁の作動に対する負荷を軽減するスプレーガンが提案されている。
【０００７】
これらの技術はいずれも引金の作動に要する力を軽減し、手指の負担を改善する技術として大いに効果が得られるものとして使用されているが、塗装用スプレーガンとして電気的作動スイッチを使用しており、本来の作業環境からは安全性すなわち、塗料や揮発性有機溶剤を使用する塗装現場での使用に問題がある。したがって使用塗料の制約や作業環境の整備等別の問題が発生している。
【０００８】
電気的スイッチに代わる安全性の確保については、無接点のスイッチを使用する例として実開昭６０−１７９３５１号公報に示されているように、光ファイバーを使用し、高電圧の荷電を制御する構成等が知られている。しかしこの例で判るように、スプレーガンの噴霧作動とは別のＯＮ-ＯＦＦ制御を行う場合に使用されたスイッチであって、前述の作動に対する手指の負荷軽減については配慮されていない。
【０００９】
いずれにしても前記手指の負荷軽減として別の作動スイッチを設けたものであっても、スイッチ作動に少なからず負荷がかかり、継続して繰り返し作動を行う場合には十分な解決に至っていない状況がある。
一方引金操作にはその引き加減によって噴霧をコントロールできる機能が通常のスプレーガンにおいても備えられており、最も単純には引金をわずかに引いた時点で噴霧エアが噴出し、更に引くことによって塗料が噴出する機構が備わっている。また特別な機能としては特公平７−１２４５１号公報に見られるように、引金の引き加減により噴霧パターンと噴出量を変更することを可能にした技術も提案されている。しかしこれらは、引金操作として技能者の熟練した使用が要求されることも明らかである。
【特許文献１】特公昭５９−３０１３６号公報
【特許文献２】実公平３−４０３６５号公報
【特許文献３】実開昭６０−１７９３５１号公報
【特許文献４】特公平７−１２４５１号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【００１０】
前述のように、日常スプレー塗装を業務としている作業者にとって繰り返し反復される作業の負担は目に見えない形で蓄積されることになる。スプレーガンの作動操作における引金やボタンスイッチ等の機械的手段は、少なからず操作に労力を有し長期的には疲労の原因となることから、その改善が望まれている。本発明は手指の移動のみで操作可能で手指の疲労やこれに伴う腱鞘炎等の障害を予防することができるスプレーガンを得ることが課題である。
【００１１】
また操作の単純化により、塗装条件を最適に維持するために必要な、噴霧条件の変更等によって制限される塗装の機能性を損なわず、被塗装物に適合する条件で効率の良い塗装ができるスプレーガンを得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【００１２】
スプレーガンを把持する手によって作動を制御する検出センサーを、握る手指の移動範囲内に設けて、その検出センサーの信号によってスプレーガンに供給するエアを制御する制御装置と、電気的に接続して信号を送り、これによってプレーガンの噴霧を制御する。検出センサーは手指の移動によって光の遮断もしくは透過を変更可能とする光ファイバーセンサーとし、把持する手の、親指もしくは人差し指で遮断もしくは透過を変更できる位置に設ける。
【００１３】
また検出センサーは複数配置し、それぞれの信号による制御装置からの出力により、それぞれ異なる条件でエアをスプレーガンに供給するよう予め設定し、センサーの作動切替えによって噴霧条件の切替えを可能にする。それぞれの検出センサーのうち、一方の信号による噴霧パターン調整用のエアの圧力及び塗料噴出量は、異なる条件でスプレーガンに供給されるように設定した制御装置と接続する。
【発明の効果】
【００１４】
上記手段によれば、スプレーガンを把持した時に比較的自由になる親指もしくは人指し指の移動によって、スプレーガンのハンドルに設けた光ファイバーセンサーの検知部に指を置くとこれを検知し、その信号が制御装置に送られ、あらかじめ設定した噴霧供給装置によりスプレーガンに噴霧エア等が送り込まれて塗装を開始することができる。また指を離せばスプレーは停止し塗装を中断できる。
したがって塗装の開始と停止を指の移動だけで行うことができ、作動に要する指の負担が著しく改善できることになる。
【００１５】
光ファイバーセンサーによる検知信号は電気的な開閉を伴わず、安全に制御信号として出力するため
に塗装環境においても安心して使用が可能である。しかも機械的な可動部がないため作動における摩滅や異物による作動不良等を起こすことがなく、作業者の作動負担も軽減されることになる。
検知信号は制御装置によって必要な供給装置の制御弁を作動させて、必要とされる作動を行わせることができ、スプレーガンの形態によっては、単に作動エアを供給することで噴霧エアと塗料弁作動エアとして供給し、塗装をすることも可能である。
【００１６】
また検知信号によって噴霧エアとパターン調整エアをそれぞれ制御した状態で供給するとともに、塗料弁の作動用エアを供給して、予め設定された噴霧条件によって塗装をすることもが可能となる。すなわち光ファイバーセンサーを複数配置し、予め異なる噴霧条件による設定により、指の移動によって瞬時に切り替えて塗装条件を変更し、被塗装物の塗装部位に応じた適正な塗装を行うことが可能となる。
また親指もしくは人差し指による操作を複合させることによって従来の引金では困難であった複雑な操作や、二重の操作による確実な作動を簡単に素早く操作可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１７】
図1は本発明の実施の概要を示す塗装用スプレーガンと制御装置の関連図を示している。手持ち式のハンドスプレーガン１は一般に先端に設けた霧化装置２とハンドル３を有する本体４で構成されている。本実施例ではハンドル３部に光ファイバーを使用した検知部５が設けられ、その信号を処理する光アンプ６にケーブル７で接続されている。図の例では２箇所に光ファイバーセンサー５１、５２が設けられて、それぞれの検知信号が光アンプ６に入力され、制御装置８で処理された演算結果に基づき、予め設定された制御信号が各制御弁に送り込まれる。
【００１８】
スプレーガン１の作動構成は、ピストンもしくはダイアフラム等のエア作動体２０によって、塗料弁１０を開閉するほか、霧化装置２の噴霧エアとパターン調整エアをそれぞれ別の制御弁より供給され、噴霧するための構成を含んでいる。すなわち多くの従来技術で紹介されているようにパターン調整エアは、噴出量を多くすることで噴霧パターンの大きさを大きく広げる働きがある。
【００１９】
図の例ではスプレーガンの噴霧エア通路１１Ａに接続される通路には制御弁として、流通量を大と小に設定された切替弁１２Ａが設けられ、制御装置８からの信号によりいずれかに切り替え、同じく制御装置８からの信号により作動する電磁弁１３Ａを通してスプレーガン１に供給する構成になっている。同様にパターン調整エア通路１１Ｂにも切替弁１２Ｂと電磁弁１３Ｂが備えられている。但し噴霧における条件によっては必ずしも全てを揃える必要はなく、例えば噴霧エアを一定のまま、パターン調整エアのみを所定の流量に切替えることでも良い。これらは必要とする機能によって選択され、予め制御装置に設定記憶される。
【００２０】
前記塗料弁１０にも予め設定された条件で塗料が供給装置１６より送られ、前記塗料弁１０の開口によって噴霧が開始される。噴出量を制御する場合は一般に流量制御装置１５が用いられ、制御装置からの信号により所定の圧力でエアが送り込まれ、その圧力によって弁開度が調整されて塗料の噴出量が調整される。
図の実施例では電気的出力信号を受けて所定の作動エア圧力を供給する電空バルブ１４から制御エアが送り込まれた流量制御装置１５によって、塗料供給装置１６より供給される塗料の量が設定され、制御装置８からの信号により電磁弁１３が作動するとスプレーガン１の作動体２０が塗料弁１０を開口し、スプレーガンから設定された塗料噴出量で噴霧される構成になっている。
【００２１】
ハンドル３に設けた光ファイバーセンサー５１、５２はそれぞれ作動信号を制御装置８に出力するように構成し、その信号に基づいて塗料弁１０及びそれぞれの噴霧エアを送る条件が予め設定される。たとえばセンサー５１が働いたときにはパターン調整空気が多く、塗料が多く噴出する条件設定をしておき、センサー５２が働いたときにはパターン調整空気を少なく、塗料噴出量をそれに応じて少なくした条件で噴出させるように設定することで、センサー５１を操作した場合には大きいパターンで広い面積を塗装し、狭い範囲の塗装をする場合にはセンサー５２を操作して、小さいパターンで塗装できるようにすることができる。
【００２２】
スプレーガン１に設ける光ファイバーセンサーは、ハンドル３の側面に設けて親指でセンサー部を遮断できる位置に設定することにより、把持する手の親指の移動でいずれかを押え、操作させることが出来、その操作は極めて短時間で切替えることが可能である。センサーを設置する位置は、把持した時に比較的自由になる親指と人指し指が操作できる位置が好ましく、その機能によって設定するなど、幾つかの例が考えられる。
【００２３】
図２は、別のスプレーガンの態様を示しているが、基本的な構成は図１のスプレーガン１と変わらない構成を有することができる。そのため同じ機能の部分は同一の記号をもって表している。この実施態様では、センサー５３とセンサー５４は、人差し指がかかるハンドル３の前部３１と親指が移動できるハンドル３の後部３２に設け、それぞれの指で操作できるようにしている。
【００２４】
この場合、前述の例のごとくセンサー５３とセンサー５４をパターン調整空気が多く、塗料が多く噴出する条件と、パターン調整空気を少なく、塗料噴出量をそれに応じて少なくした条件とに設定し、希望する噴霧パターンによって、いずれかのセンサーを選択操作すれば、その噴霧パターンと適合する塗料噴出量を得ることが出来、塗装中にその条件を変更する場合には別のセンサーを操作することによって、直ちに噴霧条件を切替えることができ、被塗装物の塗装面に応じ適正な噴霧を行うことができる。
【００２５】
また人差し指で操作できるセンサー５３によって噴霧のＯＮ-ＯＦＦが行われるように設定し、その状態でセンサー５４を操作した場合に噴霧のパターンが小さくなり、塗料噴出量が少なくなるように設定することで、塗装中に狭い範囲の塗装面を塗装することになった場合、親指でセンサー５４を押えることによって、直ちに噴霧パターンを小さくし、塗料の無駄なく適正な範囲で塗装することもできる。
【００２６】
以上のように本発明は、機械的作動をともなわない検出センサーによって、スプレーガンのＯＮ-ＯＦＦ及び噴霧を制御することによって、作業者の負担を削減するもので、実施例によらずエアによって噴霧を行う静電塗装スプレーガン等にも採用してその効果を得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【００２７】
【図１】本発明の塗装用スプレーガンと制御装置の関連を説明する構成概要図である。
【図２】スプレーガンのハンドルに光ファイバーセンサーを設けた他の実施態様を示す説明図である。
【符号の説明】
【００２８】
１ スプレーガン
２ 霧化装置
３ ハンドル
４ 本体
５ 検知部
８ 制御装置
１０ 塗料弁
１１Ａ 噴霧エア通路
１１Ｂ パターン調整エア通路
１２Ａ、１２Ｂ、１２Ｃ 切替弁
１３ 電磁弁
１５ 流量制御装置
１６ 塗料供給装置
３１ 前部
３２ 後部
５１、５２、５３、５４ 光ファイバーセンサー
【技術分野】
【０００１】
本発明は手動式の塗装用スプレーガンで、特に繰り返し行う吹き付け操作に対する手指の疲労を改善し、作業者の負担を軽減することができる装置として、多くの塗装分野で使用される装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
塗装用スプレーガンは、作業者が手で操作し被塗装物に対して吹き付けを行うハンドスプレーガンと、自動塗装機や塗装ロボットのように機械駆動される装置に搭載され操作者の指令信号等によって作動される自動スプレーガンに大別される。ハンドスプレーガンは多くの場合、引金もしくはボタンを備え、吹き付け開始に当たって指で作動させ、停止時は指を離すことによって操作される。
【０００３】
塗装作業は、被塗装物の塗装面に対してスプレーガンを往復移動させながら被塗装物の手前で吹き付けを開始し、被塗装物を通過した位置で停止する作業を繰り返すため、多い時は１分間に数十回の繰り返し操作が行われ、作業者の手指の負担はきわめて大きい。このため作業内容によっては、腱鞘炎にならないような対策が採られることもよくある。
【０００４】
これまで手指の負担を軽減する手段として、引金の操作を軽くすることによって前記の対策を行ってきており、具体的には使用する空気や塗料の噴出を開始する際に弁を押し開く荷重を軽減するため、引金の支点の位置や弁にかかる背圧の減少、作動用エアピストンの採用等々多くの技術が提案されている。
【０００５】
引金に負担がかかる場合、その作動に要する力を軽減し、軽く操作できることができる方法としては、例えば特公昭５９−３０１３６号公報のようにスプレーガンに供給する塗料と圧縮空気の供給制御装置を設け、スプレーガンに設けた押しボタンを有する信号発生器からの信号によって噴霧を制御する装置が示されている。
【０００６】
これより先、スプレーガンについては実公平３−４０３６５号公報には、スプレーガンに制御弁とこれを作動させる電気スイッチを備えたスプレーガンにより、空気弁や塗料弁の作動に対する負荷を軽減するスプレーガンが提案されている。
【０００７】
これらの技術はいずれも引金の作動に要する力を軽減し、手指の負担を改善する技術として大いに効果が得られるものとして使用されているが、塗装用スプレーガンとして電気的作動スイッチを使用しており、本来の作業環境からは安全性すなわち、塗料や揮発性有機溶剤を使用する塗装現場での使用に問題がある。したがって使用塗料の制約や作業環境の整備等別の問題が発生している。
【０００８】
電気的スイッチに代わる安全性の確保については、無接点のスイッチを使用する例として実開昭６０−１７９３５１号公報に示されているように、光ファイバーを使用し、高電圧の荷電を制御する構成等が知られている。しかしこの例で判るように、スプレーガンの噴霧作動とは別のＯＮ-ＯＦＦ制御を行う場合に使用されたスイッチであって、前述の作動に対する手指の負荷軽減については配慮されていない。
【０００９】
いずれにしても前記手指の負荷軽減として別の作動スイッチを設けたものであっても、スイッチ作動に少なからず負荷がかかり、継続して繰り返し作動を行う場合には十分な解決に至っていない状況がある。
一方引金操作にはその引き加減によって噴霧をコントロールできる機能が通常のスプレーガンにおいても備えられており、最も単純には引金をわずかに引いた時点で噴霧エアが噴出し、更に引くことによって塗料が噴出する機構が備わっている。また特別な機能としては特公平７−１２４５１号公報に見られるように、引金の引き加減により噴霧パターンと噴出量を変更することを可能にした技術も提案されている。しかしこれらは、引金操作として技能者の熟練した使用が要求されることも明らかである。
【特許文献１】特公昭５９−３０１３６号公報
【特許文献２】実公平３−４０３６５号公報
【特許文献３】実開昭６０−１７９３５１号公報
【特許文献４】特公平７−１２４５１号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【００１０】
前述のように、日常スプレー塗装を業務としている作業者にとって繰り返し反復される作業の負担は目に見えない形で蓄積されることになる。スプレーガンの作動操作における引金やボタンスイッチ等の機械的手段は、少なからず操作に労力を有し長期的には疲労の原因となることから、その改善が望まれている。本発明は手指の移動のみで操作可能で手指の疲労やこれに伴う腱鞘炎等の障害を予防することができるスプレーガンを得ることが課題である。
【００１１】
また操作の単純化により、塗装条件を最適に維持するために必要な、噴霧条件の変更等によって制限される塗装の機能性を損なわず、被塗装物に適合する条件で効率の良い塗装ができるスプレーガンを得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【００１２】
スプレーガンを把持する手によって作動を制御する検出センサーを、握る手指の移動範囲内に設けて、その検出センサーの信号によってスプレーガンに供給するエアを制御する制御装置と、電気的に接続して信号を送り、これによってプレーガンの噴霧を制御する。検出センサーは手指の移動によって光の遮断もしくは透過を変更可能とする光ファイバーセンサーとし、把持する手の、親指もしくは人差し指で遮断もしくは透過を変更できる位置に設ける。
【００１３】
また検出センサーは複数配置し、それぞれの信号による制御装置からの出力により、それぞれ異なる条件でエアをスプレーガンに供給するよう予め設定し、センサーの作動切替えによって噴霧条件の切替えを可能にする。それぞれの検出センサーのうち、一方の信号による噴霧パターン調整用のエアの圧力及び塗料噴出量は、異なる条件でスプレーガンに供給されるように設定した制御装置と接続する。
【発明の効果】
【００１４】
上記手段によれば、スプレーガンを把持した時に比較的自由になる親指もしくは人指し指の移動によって、スプレーガンのハンドルに設けた光ファイバーセンサーの検知部に指を置くとこれを検知し、その信号が制御装置に送られ、あらかじめ設定した噴霧供給装置によりスプレーガンに噴霧エア等が送り込まれて塗装を開始することができる。また指を離せばスプレーは停止し塗装を中断できる。
したがって塗装の開始と停止を指の移動だけで行うことができ、作動に要する指の負担が著しく改善できることになる。
【００１５】
光ファイバーセンサーによる検知信号は電気的な開閉を伴わず、安全に制御信号として出力するため
に塗装環境においても安心して使用が可能である。しかも機械的な可動部がないため作動における摩滅や異物による作動不良等を起こすことがなく、作業者の作動負担も軽減されることになる。
検知信号は制御装置によって必要な供給装置の制御弁を作動させて、必要とされる作動を行わせることができ、スプレーガンの形態によっては、単に作動エアを供給することで噴霧エアと塗料弁作動エアとして供給し、塗装をすることも可能である。
【００１６】
また検知信号によって噴霧エアとパターン調整エアをそれぞれ制御した状態で供給するとともに、塗料弁の作動用エアを供給して、予め設定された噴霧条件によって塗装をすることもが可能となる。すなわち光ファイバーセンサーを複数配置し、予め異なる噴霧条件による設定により、指の移動によって瞬時に切り替えて塗装条件を変更し、被塗装物の塗装部位に応じた適正な塗装を行うことが可能となる。
また親指もしくは人差し指による操作を複合させることによって従来の引金では困難であった複雑な操作や、二重の操作による確実な作動を簡単に素早く操作可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１７】
図1は本発明の実施の概要を示す塗装用スプレーガンと制御装置の関連図を示している。手持ち式のハンドスプレーガン１は一般に先端に設けた霧化装置２とハンドル３を有する本体４で構成されている。本実施例ではハンドル３部に光ファイバーを使用した検知部５が設けられ、その信号を処理する光アンプ６にケーブル７で接続されている。図の例では２箇所に光ファイバーセンサー５１、５２が設けられて、それぞれの検知信号が光アンプ６に入力され、制御装置８で処理された演算結果に基づき、予め設定された制御信号が各制御弁に送り込まれる。
【００１８】
スプレーガン１の作動構成は、ピストンもしくはダイアフラム等のエア作動体２０によって、塗料弁１０を開閉するほか、霧化装置２の噴霧エアとパターン調整エアをそれぞれ別の制御弁より供給され、噴霧するための構成を含んでいる。すなわち多くの従来技術で紹介されているようにパターン調整エアは、噴出量を多くすることで噴霧パターンの大きさを大きく広げる働きがある。
【００１９】
図の例ではスプレーガンの噴霧エア通路１１Ａに接続される通路には制御弁として、流通量を大と小に設定された切替弁１２Ａが設けられ、制御装置８からの信号によりいずれかに切り替え、同じく制御装置８からの信号により作動する電磁弁１３Ａを通してスプレーガン１に供給する構成になっている。同様にパターン調整エア通路１１Ｂにも切替弁１２Ｂと電磁弁１３Ｂが備えられている。但し噴霧における条件によっては必ずしも全てを揃える必要はなく、例えば噴霧エアを一定のまま、パターン調整エアのみを所定の流量に切替えることでも良い。これらは必要とする機能によって選択され、予め制御装置に設定記憶される。
【００２０】
前記塗料弁１０にも予め設定された条件で塗料が供給装置１６より送られ、前記塗料弁１０の開口によって噴霧が開始される。噴出量を制御する場合は一般に流量制御装置１５が用いられ、制御装置からの信号により所定の圧力でエアが送り込まれ、その圧力によって弁開度が調整されて塗料の噴出量が調整される。
図の実施例では電気的出力信号を受けて所定の作動エア圧力を供給する電空バルブ１４から制御エアが送り込まれた流量制御装置１５によって、塗料供給装置１６より供給される塗料の量が設定され、制御装置８からの信号により電磁弁１３が作動するとスプレーガン１の作動体２０が塗料弁１０を開口し、スプレーガンから設定された塗料噴出量で噴霧される構成になっている。
【００２１】
ハンドル３に設けた光ファイバーセンサー５１、５２はそれぞれ作動信号を制御装置８に出力するように構成し、その信号に基づいて塗料弁１０及びそれぞれの噴霧エアを送る条件が予め設定される。たとえばセンサー５１が働いたときにはパターン調整空気が多く、塗料が多く噴出する条件設定をしておき、センサー５２が働いたときにはパターン調整空気を少なく、塗料噴出量をそれに応じて少なくした条件で噴出させるように設定することで、センサー５１を操作した場合には大きいパターンで広い面積を塗装し、狭い範囲の塗装をする場合にはセンサー５２を操作して、小さいパターンで塗装できるようにすることができる。
【００２２】
スプレーガン１に設ける光ファイバーセンサーは、ハンドル３の側面に設けて親指でセンサー部を遮断できる位置に設定することにより、把持する手の親指の移動でいずれかを押え、操作させることが出来、その操作は極めて短時間で切替えることが可能である。センサーを設置する位置は、把持した時に比較的自由になる親指と人指し指が操作できる位置が好ましく、その機能によって設定するなど、幾つかの例が考えられる。
【００２３】
図２は、別のスプレーガンの態様を示しているが、基本的な構成は図１のスプレーガン１と変わらない構成を有することができる。そのため同じ機能の部分は同一の記号をもって表している。この実施態様では、センサー５３とセンサー５４は、人差し指がかかるハンドル３の前部３１と親指が移動できるハンドル３の後部３２に設け、それぞれの指で操作できるようにしている。
【００２４】
この場合、前述の例のごとくセンサー５３とセンサー５４をパターン調整空気が多く、塗料が多く噴出する条件と、パターン調整空気を少なく、塗料噴出量をそれに応じて少なくした条件とに設定し、希望する噴霧パターンによって、いずれかのセンサーを選択操作すれば、その噴霧パターンと適合する塗料噴出量を得ることが出来、塗装中にその条件を変更する場合には別のセンサーを操作することによって、直ちに噴霧条件を切替えることができ、被塗装物の塗装面に応じ適正な噴霧を行うことができる。
【００２５】
また人差し指で操作できるセンサー５３によって噴霧のＯＮ-ＯＦＦが行われるように設定し、その状態でセンサー５４を操作した場合に噴霧のパターンが小さくなり、塗料噴出量が少なくなるように設定することで、塗装中に狭い範囲の塗装面を塗装することになった場合、親指でセンサー５４を押えることによって、直ちに噴霧パターンを小さくし、塗料の無駄なく適正な範囲で塗装することもできる。
【００２６】
以上のように本発明は、機械的作動をともなわない検出センサーによって、スプレーガンのＯＮ-ＯＦＦ及び噴霧を制御することによって、作業者の負担を削減するもので、実施例によらずエアによって噴霧を行う静電塗装スプレーガン等にも採用してその効果を得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【００２７】
【図１】本発明の塗装用スプレーガンと制御装置の関連を説明する構成概要図である。
【図２】スプレーガンのハンドルに光ファイバーセンサーを設けた他の実施態様を示す説明図である。
【符号の説明】
【００２８】
１ スプレーガン
２ 霧化装置
３ ハンドル
４ 本体
５ 検知部
８ 制御装置
１０ 塗料弁
１１Ａ 噴霧エア通路
１１Ｂ パターン調整エア通路
１２Ａ、１２Ｂ、１２Ｃ 切替弁
１３ 電磁弁
１５ 流量制御装置
１６ 塗料供給装置
３１ 前部
３２ 後部
５１、５２、５３、５４ 光ファイバーセンサー
【特許請求の範囲】
【請求項１】
エアの供給によって作動する作動体によって塗料弁を開口し、該エアと共通若しくは別途設けた噴霧エアによって前記塗料弁より噴出する塗料を霧化して噴霧塗装するエアスプレーガンにおいて、スプレーガンを把持する手によって作動を制御する検出センサーを、握る手指の移動範囲内に設け、該検出センサーの信号を、スプレーガンの外部に設けて前記検出センサーからの信号によってスプレーガンに供給するエアを制御する制御装置と、電気的に接続してなる手持式塗装用スプレーガン。
【請求項２】
検出センサーは手指の移動によって光の遮断もしくは透過を変更可能とする光ファイバーセンサーとし、把持する手の、親指もしくは人差し指で遮断もしくは透過を変更できる位置に設けた請求項１の手持式塗装用スプレーガン。
【請求項３】
検出センサーを複数配置し、それぞれの信号による制御装置からの出力により、それぞれ異なる条件でエアをスプレーガンに供給するよう構成し、前記センサーの作動切替えによって噴霧条件の切替えを可能にした請求項１の手持式塗装用スプレーガン。
【請求項４】
それぞれの検出センサーのうち、少なくとも一方の信号による噴霧パターン調整用のエアの圧力若しくは流量及び塗料噴出量が、異なる条件でスプレーガンに供給されるように設定された制御装置と接続されてなる請求項３の手持式塗装用スプレーガン。
【請求項１】
エアの供給によって作動する作動体によって塗料弁を開口し、該エアと共通若しくは別途設けた噴霧エアによって前記塗料弁より噴出する塗料を霧化して噴霧塗装するエアスプレーガンにおいて、スプレーガンを把持する手によって作動を制御する検出センサーを、握る手指の移動範囲内に設け、該検出センサーの信号を、スプレーガンの外部に設けて前記検出センサーからの信号によってスプレーガンに供給するエアを制御する制御装置と、電気的に接続してなる手持式塗装用スプレーガン。
【請求項２】
検出センサーは手指の移動によって光の遮断もしくは透過を変更可能とする光ファイバーセンサーとし、把持する手の、親指もしくは人差し指で遮断もしくは透過を変更できる位置に設けた請求項１の手持式塗装用スプレーガン。
【請求項３】
検出センサーを複数配置し、それぞれの信号による制御装置からの出力により、それぞれ異なる条件でエアをスプレーガンに供給するよう構成し、前記センサーの作動切替えによって噴霧条件の切替えを可能にした請求項１の手持式塗装用スプレーガン。
【請求項４】
それぞれの検出センサーのうち、少なくとも一方の信号による噴霧パターン調整用のエアの圧力若しくは流量及び塗料噴出量が、異なる条件でスプレーガンに供給されるように設定された制御装置と接続されてなる請求項３の手持式塗装用スプレーガン。
【図１】
【図２】
【図２】
【公開番号】特開２００８−５５２６５（Ｐ２００８−５５２６５Ａ）
【公開日】平成２０年３月１３日（２００８．３．１３）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００６−２３２６１８（Ｐ２００６−２３２６１８）
【出願日】平成１８年８月２９日（２００６．８．２９）
【出願人】（３９００２８４９５）アネスト岩田株式会社 (224)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２０年３月１３日（２００８．３．１３）
【国際特許分類】
【出願日】平成１８年８月２９日（２００６．８．２９）
【出願人】（３９００２８４９５）アネスト岩田株式会社 (224)
【Ｆターム（参考）】
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