説明

手持式電動工具装置

【課題】ハンドルに配設可能な、振動に強い非接触型電気手動スイッチを有する手持式電動工具装置を得る。
【解決手段】横方向に突出し、振動絶縁してハンドル旋回点Gの周りに旋回可能な少なくとも1個のハンドル3と、このハンドル3に配設した操作手段5を有する手動スイッチ4とを備える手持式電動工具装置において、操作手段5を、スイッチ手段6を有する変位可能な切替えロッド7を介して、構造ユニット2内のハンドル旋回点G近傍に配設した少なくとも1個のセンサスイッチ8に切替え可能に接続し、切替えロッド7は、ハンドル3内においてスイッチ旋回点Sに旋回可能に取り付け、このスイッチ旋回点Sは、振動軸線Aから離れるようにハンドル旋回点Gから離間して設ける。好適には、スイッチ旋回点Sを、ハンドル旋回点Gと操作手段5との間における距離の1/3の位置に配設し、センサスイッチ8をホール素子として、スイッチ手段を永久磁石として構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも部分的に打撃モードで作動する、特にチゼルハンマまたは組合せハンマなどの手持式工具装置であって、ハンドルに非接触型手動スイッチを備えた手持式工具装置に関するものである。
【0002】
用途に応じて過酷な粉塵負荷および強い振動にさらされる手持式電動工具装置において、接触型の機械的なスイッチは著しく磨耗する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1(米国特許第5014793号明細書)の記載する手持式電動工具装置は、手動スイッチによって操作し、その操作手段によって圧電センサを操作することで電源スイッチを制御できる。このとき圧電センサは、必然的に操作手段と機械的に接触するので、結果として操作手段に振動が伝達される。
【0004】
特許文献2(独国特許出願公開第19942156号)に記載の組合せハンマは、非接触型回転スイッチを備え、この回転スイッチには、永久磁石を有する移動可能なスイッチロッドを介して、ホール素子を制御可能に取り付ける。このようにホール素子および回転操作手段を単一のハウジングと連結しているため、スイッチングを阻害する可能性のある相対的な振動は生じない。
【0005】
特許文献3(独国特許出願公開第10259569号)に記載の、振動軸線に沿って振動する構造ユニットを有する手持式電動工具装置は、振動絶縁したメインハンドル内の操作手段と、センサスイッチとを有する非接触型電気手動スイッチを備え、このセンサスイッチは、永久磁石を有し、振動軸線に直交する方向に旋回可能なスイッチ支持体に振動絶縁して接続し、このスイッチ支持体は、操作手段から、振動軸線に沿って限定的に軸線方向に変位する旋回伝達手段を介して手動制御可能とする。この解決法は、横方向に突出する振動絶縁したハンドルには適用できない。
【0006】
特許文献4(特開2002−79477号)には、振動軸線に沿って振動する構造ユニットを有する手持式電動工具装置が記載されており、横方向に突出する、振動絶縁して、ハンドル旋回点の周りに旋回可能な2個のハンドルを備え、このハンドルには、軸線方向に動作可能な操作手段を有する手動スイッチが取り付けられている。
【特許文献1】米国特許第5014793号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第19942156号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10259569号明細書
【特許文献4】特開2002−79477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、ハンドルに配設可能な、振動に強い非接触型電気手動スイッチを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、振動軸線に沿って振動する構造ユニット、および少なくとも1個の、横方向に突出し、振動絶縁してハンドル旋回点の回りに旋回可能なハンドルを有する手持式電動工具装置に、ハンドルに配設した操作手段を有する非接触型電気手動スイッチを設け、この操作手段は、スイッチ手段を備える変位可能な切替えロッドを介して、構造ユニット内のハンドル旋回点近傍に配設した少なくとも1個のセンサスイッチに切替え可能に接続し、この切替えロッドはハンドル内において、スイッチ旋回点に旋回可能に取り付け、このスイッチ旋回点は、振動軸線から離れるようにハンドル旋回点から離間して設ける。
【発明の効果】
【0009】
スイッチ旋回点を用いて旋回可能なハンドルとして構成したレバーメカニズムによって、スイッチ手段は、操作手段の軸線方向の動作によってのみ、センサスイッチに関してスイッチングするのに十分な距離を移動することになる。これに対し、ハンドル全体の軸線方向への旋回は影響を与えない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
好適には、スイッチ旋回点を、ハンドル旋回点と操作手段との間における距離の1/3の位置に取り付ける。この構成により、操作手段の変位量が、スイッチ手段の変位量にほぼ相応する。
【0011】
好適には、センサスイッチをホール素子として構成し、また、スイッチ手段を永久磁石として構成する。この構成により、丈夫で粉塵に強い非接触型の電気手動スイッチが実現できる。
【0012】
好適には、スイッチ手段に2個のセンサスイッチを設け、これらのセンサスイッチは、スイッチ手段の両側に、スイッチング方向に直交する方向に離間させて設ける。この構成により、対応するスイッチロジックに関連して冗長スイッチシステムが実現される。
【実施例】
【0013】
図1に示すように、振動軸線Aに沿って振動する構造ユニット2を有する手持式電動工具装置1は、横方向に突出し、振動絶縁して、それぞれハンドル旋回点Gの周りに旋回可能なハンドル3を備え、これらハンドル3の一方には、図2に示す非接触型電気手動スイッチ4の、軸線方向に手動操作可能な操作手段5を備える。
【0014】
図2に示すように、手動スイッチ4において、ハンドル3に設けた操作手段5は、スイッチ手段6を備える変位可能な切替えロッド7を介して、構造ユニット2内のハンドル旋回点G付近に設けたセンサスイッチ8に切替え可能に接続する。切替えロッド7はハンドル3内でスイッチ旋回点Sの周りに旋回可能に配置する。このスイッチ旋回点Sは、振動軸線Aに交差する方向において、ハンドル旋回点Gと操作手段5との間の1/3に配設する。
【0015】
図3に示すように、センサスイッチ8は、内蔵型ホール素子として、また、スイッチ手段6は、切替えロッド7にはめ込んだ永久磁石として構成する。スイッチ手段6には、2個のセンサスイッチ8を取り付け、これらは、スイッチ手段6の両側に、スイッチロッド7の旋回動作に直交する方向に離間させる。
【0016】
図6に示すように、スイッチ手段6(制限範囲内の異なる変位状態を示す)を有するスイッチロッド7(単に1箇所の位置のみを示す)を、スイッチング領域Eを有するセンサスイッチ8に対して旋回動作をする際に、操作手段5を軸線方向に手動操作する動作B(図2参照)だけが切替えに十分な移動を引き起こし、単にハンドル3の軸線方向の旋回V(図4および図5参照)だけでは、スイッチ手段6を、スイッチオフ状態(図2参照)に送るのに十分な距離をスイッチング領域Eから移動させることはできない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】チゼルハンマの形態とした本発明手持式工具装置の正面図である。
【図2】本発明手持式工具装置の、スイッチ非操作時における上側旋回位置の縦断面図である。
【図3】本発明手持式工具装置の、センサスイッチの横断面図である。
【図4】本発明手持式工具装置の、スイッチ操作時における上側旋回位置の縦断面図である。
【図5】本発明手持式工具装置の、スイッチ操作時における下側旋回位置の縦断面図である。
【図6】本発明手持式工具装置の、変位平面における変位軌跡を示す線図的説明図である。
【符号の説明】
【0018】
2 構造ユニット
3 ハンドル
4 手動スイッチ
5 操作手段
6 スイッチ手段
7 スイッチロッド
8 センサスイッチ
A 振動軸線
B 操作動作
E スイッチング領域
G ハンドル旋回点
S スイッチ旋回点
V 旋回

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動軸線(A)に沿って振動する構造ユニット(2)を有する手持式電動工具装置であって、
横方向に突出し、振動絶縁してハンドル旋回点(G)の周りに旋回可能な少なくとも1個のハンドル(3)と、このハンドル(3)に設けた操作手段(5)を有する手動スイッチ(4)とを備える該手持式電動工具装置において、
前記操作手段(5)を、スイッチ手段(6)を有する変位可能な切替えロッド(7)を介して、前記構造ユニット(2)内の前記ハンドル旋回点(G)近傍に配設した少なくとも1個のセンサスイッチ(8)に切替え可能に接続し、前記切替えロッド(7)は、前記ハンドル(3)内においてスイッチ旋回点(S)に旋回可能に取り付け、このスイッチ旋回点(S)は、前記振動軸線(A)から離れるように前記ハンドル旋回点(G)から離間して設けたことを特徴とする手持式電動工具装置。
【請求項2】
請求項1に記載する手持式電動工具装置において、前記スイッチ旋回点(S)を、前記ハンドル旋回点(G)と前記操作手段(5)との間における距離の1/3の位置に配設した手持式電動工具装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載する手持式電動工具装置において、前記センサスイッチ(8)をホール素子として構成し、また、前記スイッチ手段(6)を永久磁石として構成した手持式電動工具装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか一項に記載する手持式電動工具装置において、前記スイッチ手段(6)に2個のセンサスイッチ(8)を設け、これらセンサスイッチ(8)を前記スイッチ手段(6)の両側にスイッチング方向に直交する方向に離間させた手持式電動工具装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−119593(P2009−119593A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210034(P2008−210034)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【出願人】(591010170)ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト (339)
【Fターム(参考)】