説明

手振れ補正処理装置および手振れ補正処理方法

【課題】フレームメモリを使用することなく手振れ補正処理を行うことが可能な手振れ補正処理装置を提供する。
【解決手段】手振れ補正処理装置10は、動きベクトル検出部11,補正量算出部12,画像切り出し処理部13を含む。動きベクトル検出部は、画像フレームF(n)の画素データを入力する際の初期期間に入力した第1エリアの画素データと、画像フレームF(n−1)中の第1エリアの特徴点に関する情報とに基づいて、期間T(n)の画像の動きベクトルを検出する。補正量算出部は、動きベクトル検出部により検出された画像の動きベクトルに基づいて画像フレームF(n)についての切り出し位置を算出する。画像切り出し処理部は、補正量算出部により算出された切り出し位置に基づいて、画像信号処理部20から出力された画像フレームF(n)中の部分範囲の画素データを切り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手振れ補正処理装置および手振れ補正処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラを手に持って動画像を撮影する際に手振れに因りカメラが動くと、取得される動画像に手振れの影響が現れる。このような手振れを補償する装置として、動画像における手振れの影響を補正処理する手振れ補正処理装置が知られている(特許文献1,2)。動画像に対する電子式の手振れ補正処理では、動画像を構成する複数の画像フレームのうち時間的に隣接する前後の画像フレームの画素データに基づいて、手振れに因る画像の動きベクトル(方向および量)が検出され、この動きベクトルの検出結果に基づいて画像フレーム中の部分範囲の画素データが切り出されることで手振れ補正処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−151008号公報
【特許文献2】特開2006−246270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような動きベクトル検出による手振れ補正処理では、補正対象の現時点の画像フレームの画素データがフレームメモリに保持される必要があり、また、過去の画像フレームの画素データもフレームメモリに保持される必要がある。一般にフレームメモリとしてSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等の大容量のものが用いられ、また、このSDRAMを制御するための制御回路が必要となる。これらは、手振れ補正処理装置のコスト上昇の要因となり、また、手振れ補正処理装置を搭載するカメラシステムのコスト上昇の要因となる。
【0005】
なお、特許文献2に記載された発明は、補正対象の現時点の画像フレームの画素データを保持するフレームメモリを不要としているものの、過去の画像フレームの画素データを保持するフレームメモリを依然として必要としている。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、フレームメモリを使用することなく手振れ補正処理を行うことが可能な手振れ補正処理装置および手振れ補正処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の手振れ補正処理装置は、複数の画像フレームからなる動画像における手振れの影響を補正処理する装置であって、(1) 複数の画像フレームのうちの第nの画像フレームF(n)の画素データを入力する際の初期の所定期間に入力した画像フレームF(n)中の第1エリアの画素データと、画像フレームF(n)より前の第(n−1)の画像フレームF(n-1)中の第1エリアの特徴点に関する情報とに基づいて、画像フレームF(n-1)から画像フレームF(n)までの期間T(n)の画像の動きベクトルを検出する動きベクトル検出部と、(2) 動きベクトル検出部により検出された画像の動きベクトルに基づいて画像フレームF(n)についての切り出し位置を算出する補正量算出部と、(3) 補正量算出部により算出された切り出し位置に基づいて画像フレームF(n)中の部分範囲の画素データを切り出して、その切り出し後の画素データを出力する画像切り出し処理部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
動きベクトル検出部は、(1) 各画像フレーム中の第1エリアにおける複数の特徴点を抽出する第1抽出部と、(2) 第1抽出部により抽出された各特徴点の座標値と該特徴点を含む画素ブロックの画素データとを対応付けて保存する第1保存部と、(3) 第1保存部により保存された画像フレームF(n-1)中の第1エリアの各特徴点の座標値と該特徴点を含む画素ブロックの画素データとを読み出し、画像フレームF(n-1)中の第1エリアの特徴点を含む画素ブロックの画素データと、画像フレームF(n)中の第1エリアにおいて該特徴点の座標値に対応する位置を含む画素ブロックの画素データとに基づいて、期間T(n)の第1エリアの各特徴点の動きベクトルを検出する第1検出部と、(4) 第1検出部により検出された期間T(n)の第1エリアの各特徴点の動きベクトルに基づいて、期間T(n)の画像の動きベクトルを算出する第1算出部と、を含むのが好適である。このとき、補正量算出部が、第1算出部により算出された期間T(n)の画像の動きベクトルに基づいて、画像フレームF(n)についての切り出し位置を算出するのが好適である。
【0009】
動きベクトル検出部は、(1) 各画像フレーム中の第1エリア以外の第2エリアにおける複数の特徴点を抽出する第2抽出部と、(2) 第2抽出部により抽出された各特徴点の座標値と該特徴点を含む画素ブロックの画素データとを対応付けて保存する第2保存部と、(3) 第2保存部により保存された画像フレームF(n-1)中の第2エリアの各特徴点の座標値と該特徴点を含む画素ブロックの画素データとを読み出し、画像フレームF(n-1)中の第2エリアの特徴点を含む画素ブロックの画素データと、画像フレームF(n)中の第2エリアにおいて該特徴点の座標値に対応する位置を含む画素ブロックの画素データとに基づいて、期間T(n)の第2エリアの各特徴点の動きベクトルを検出する第2検出部と、(4) 第2検出部により検出された期間T(n)の第2エリアの各特徴点の動きベクトルに基づいて、期間T(n)の画像の動きベクトルを算出する第2算出部と、を更に含むのも好適である。このとき、補正量算出部が、第1算出部により算出された期間T(n)の画像の動きベクトルと、第2算出部により算出された期間T(n-1)の画像の動きベクトルとに基づいて、画像フレームF(n)についての切り出し位置を算出するのが好適である。
【0010】
第1保存部は、第1抽出部により抽出された各特徴点の特徴量をも保存するのが好適である。このとき、第1算出部は、第1検出部により検出された各特徴点の動きベクトルに対して、第1保存部により保存された各特徴点の特徴量で重み付けを行って、期間T(n)の画像の動きベクトルを算出するのが好適である。
【0011】
第2保存部は、第2抽出部により抽出された各特徴点の特徴量をも保存するのが好適である。このとき、第2算出部は、第2検出部により検出された各特徴点の動きベクトルに対して、第2保存部により保存された各特徴点の特徴量で重み付けを行って、期間T(n)の画像の動きベクトルを算出するのが好適である。
【0012】
補正量算出部は、第1算出部により算出された期間T(n)の画像の動きベクトルと、第2算出部により算出された期間T(n-1)の画像の動きベクトルとに対して、重み付けを行って画像の動きベクトルを求めて、画像フレームF(n)についての切り出し位置を算出するのが好適である。
【0013】
本発明の画像処理システムは、(1) 複数の画像フレームからなる動画像における手振れの影響を補正処理する上記の本発明の手振れ補正処理装置と、(2) 複数の画像フレームそれぞれの画素データについて手振れ補正処理装置による手振れ補正処理とは異なる画像処理を行う画像信号処理部と、を備えることを特徴とする。そして、本発明の画像処理システムは、画像信号処理部による画像処理および手振れ補正処理装置による手振れ補正処理がなされた各画像フレームの画素データを出力することを特徴とする。
【0014】
手振れ補正処理装置の補正量算出部は、画像信号処理部が画像フレームF(n)について画像処理後の画素データを出力するときまでに該画像フレームF(n)についての切り出し位置を算出するのが好適である。このとき、手振れ補正処理装置の画像切り出し処理部は、補正量算出部により算出された切り出し位置に基づいて、画像信号処理部から出力された該画像フレームF(n)中の部分範囲の画素データを切り出して、その切り出し後の画素データを出力するのが好適である。
【0015】
本発明の手振れ補正処理方法は、複数の画像フレームからなる動画像における手振れの影響を補正処理する方法であって、(1) 複数の画像フレームのうちの第nの画像フレームF(n)の画素データを入力する際の初期の所定期間に入力した画像フレームF(n)中の第1エリアの画素データと、画像フレームF(n)より前の第(n−1)の画像フレームF(n-1)中の第1エリアの特徴点に関する情報とに基づいて、画像フレームF(n-1)から画像フレームF(n)までの期間T(n)の画像の動きベクトルを検出する動きベクトル検出ステップと、(2) 動きベクトル検出ステップで検出された画像の動きベクトルに基づいて画像フレームF(n)についての切り出し位置を算出する補正量算出ステップと、(3) 補正量算出ステップで算出された切り出し位置に基づいて画像フレームF(n)中の部分範囲の画素データを切り出して、その切り出し後の画素データを出力する画像切り出し処理ステップと、を備えることを特徴とする。
【0016】
動きベクトル検出ステップは、(1) 各画像フレーム中の第1エリアにおける複数の特徴点を抽出する第1抽出ステップと、(2) 第1抽出ステップで抽出された各特徴点の座標値と該特徴点を含む画素ブロックの画素データとを対応付けて保存する第1保存ステップと、(3) 第1保存ステップで保存された画像フレームF(n-1)中の第1エリアの各特徴点の座標値と該特徴点を含む画素ブロックの画素データとを読み出し、画像フレームF(n-1)中の第1エリアの特徴点を含む画素ブロックの画素データと、画像フレームF(n)中の第1エリアにおいて該特徴点の座標値に対応する位置を含む画素ブロックの画素データとに基づいて、期間T(n)の第1エリアの各特徴点の動きベクトルを検出する第1検出ステップと、(4) 第1検出ステップで検出された期間T(n)の第1エリアの各特徴点の動きベクトルに基づいて、期間T(n)の画像の動きベクトルを算出する第1算出ステップと、を含むのが好適である。このとき、補正量算出ステップでは、第1算出ステップで算出された期間T(n)の画像の動きベクトルに基づいて、画像フレームF(n)についての切り出し位置を算出するのが好適である。
【0017】
動きベクトル検出ステップは、(1) 各画像フレーム中の第1エリア以外の第2エリアにおける複数の特徴点を抽出する第2抽出ステップと、(2) 第2抽出ステップで抽出された各特徴点の座標値と該特徴点を含む画素ブロックの画素データとを対応付けて保存する第2保存ステップと、(3) 第2保存ステップで保存された画像フレームF(n-1)中の第2エリアの各特徴点の座標値と該特徴点を含む画素ブロックの画素データとを読み出し、画像フレームF(n-1)中の第2エリアの特徴点を含む画素ブロックの画素データと、画像フレームF(n)中の第2エリアにおいて該特徴点の座標値に対応する位置を含む画素ブロックの画素データとに基づいて、期間T(n)の第2エリアの各特徴点の動きベクトルを検出する第2検出ステップと、(4) 第2検出ステップで検出された期間T(n)の第2エリアの各特徴点の動きベクトルに基づいて、期間T(n)の画像の動きベクトルを算出する第2算出ステップと、を更に含むのが好適である。このとき、補正量算出ステップでは、第1算出ステップで算出された期間T(n)の画像の動きベクトルと、第2算出ステップで算出された期間T(n-1)の画像の動きベクトルとに基づいて、画像フレームF(n)についての切り出し位置を算出するのが好適である。
【0018】
第1保存ステップでは、第1抽出ステップで抽出された各特徴点の特徴量をも保存するのが好適である。このとき、第1算出ステップでは、第1検出ステップで検出された各特徴点の動きベクトルに対して、第1保存ステップで保存された各特徴点の特徴量で重み付けを行って、期間T(n)の画像の動きベクトルを算出するのが好適である。
【0019】
第2保存ステップでは、第2抽出ステップで抽出された各特徴点の特徴量をも保存するのが好適である。このとき、第2算出ステップでは、第2検出ステップで検出された各特徴点の動きベクトルに対して、第2保存ステップで保存された各特徴点の特徴量で重み付けを行って、期間T(n)の画像の動きベクトルを算出するのが好適である。
【0020】
補正量算出ステップでは、第1算出ステップで算出された期間T(n)の画像の動きベクトルと、第2算出ステップで算出された期間T(n-1)の画像の動きベクトルとに対して、重み付けを行って画像の動きベクトルを求めて、画像フレームF(n)についての切り出し位置を算出するのが好適である。
【0021】
本発明の画像処理方法は、(1) 複数の画像フレームからなる動画像における手振れの影響を補正処理する上記の本発明の手振れ補正処理方法と、(2) 複数の画像フレームそれぞれの画素データについて手振れ補正処理方法による手振れ補正処理とは異なる画像処理を行う画像信号処理ステップと、を備えることを特徴とする。さらに、本発明の画像処理方法は、画像信号処理ステップによる画像処理および手振れ補正処理方法による手振れ補正処理がなされた各画像フレームの画素データを出力することを特徴とする。
【0022】
手振れ補正処理方法の補正量算出ステップでは、画像信号処理ステップで画像フレームF(n)について画像処理後の画素データを出力するときまでに該画像フレームF(n)についての切り出し位置を算出するのが好適である。このとき、手振れ補正処理方法の画像切り出し処理ステップでは、補正量算出ステップで算出された切り出し位置に基づいて、画像信号処理ステップから出力された該画像フレームF(n)中の部分範囲の画素データを切り出して、その切り出し後の画素データを出力するのが好適である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、フレームメモリを使用することなく手振れ補正処理を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態の手振れ補正処理装置10を備えるカメラシステム1の構成を示す図である。
【図2】動画像を構成する画像フレームF(n-2),F(n-1),F(n),F(n+1) ,…の時間的順序を説明する図である。
【図3】画像フレームF(n)中の第1エリアおよび第2エリアを説明する図である。
【図4】画像信号処理部20における画像フレームF(n)の入力タイミングおよび出力タイミングを示す図である。
【図5】本実施形態における特徴点抽出方法について説明する図である。
【図6】本実施形態の手振れ補正処理装置10の動きベクトル検出部11の構成を示すブロック図である。
【図7】本実施形態の手振れ補正処理方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0026】
図1は、本実施形態の手振れ補正処理装置10を備えるカメラシステム1の構成を示す図である。カメラシステム1は、画像処理システム2,撮像部30および表示部40を備える。画像処理システム2は、手振れ補正処理装置10および画像信号処理部20を備える。また、手振れ補正処理装置10は、動きベクトル検出部11,補正量算出部12,画像切り出し処理部13,特徴点データメモリ14およびサーチデータメモリ15を含む。
【0027】
撮像部30は、被写体の光学像を電気信号に変換して出力するものであって、動画像を構成する複数の画像フレームそれぞれの画素データを手振れ補正処理装置10および画像信号処理部20へ出力する。撮像部30として例えばCMOSイメージセンサやCCDイメージセンサを含むカメラが用いられる。
【0028】
画像信号処理部20は、撮像部30から出力された各画像フレームの画素データを入力し、各画像フレームの画素データについて手振れ補正処理とは異なる各種の画像処理(例えば、白バランス調整、ノイズ除去、ガンマ補正、色空間変換など)を行って、その処理後の画像フレームの画素データを出力する。
【0029】
手振れ補正処理装置10は、複数の画像フレームからなる動画像における手振れの影響を補正処理する。具体的には、手振れ補正処理装置10は、撮像部30から出力された各画像フレームの画素データを入力して、これに基づいて画像の動きベクトル(方向および量)を検出し、この検出した動きベクトルに基づいて画像フレームについての切り出し位置を算出する。そして、手振れ補正処理装置10は、この算出された切り出し位置に基づいて、画像信号処理部20から出力された画像フレームの画素データのうち部分範囲の画素データを切り出して、その切り出し後の画素データを表示部40へ出力する。
【0030】
表示部40は、画像信号処理部20による各種画像処理および手振れ補正処理装置10による手振れ補正処理がなされた各画像フレームの画素データを入力して、動画像を表示する。
【0031】
手振れ補正処理装置10の詳細は以下のとおりである。なお、以下では、図2に示されるように、動画像を構成する複数の画像フレームのうち第nの画像フレームをF(n)と表し、画像フレームF(n-1)から画像フレームF(n)までの期間をT(n)と表す。画像フレームF(n-2),F(n-1),F(n),F(n+1),…の順に一定時間間隔で撮像部30から画素データが出力される。また、以下では、第nの画像フレームF(n)の画素データについて手振れ補正処理をする場合について説明する。
【0032】
動きベクトル検出部11は、画像フレームF(n)の画素データを入力する際の初期の所定期間に入力した画像フレームF(n)中の第1エリアの画素データと、画像フレームF(n-1)中の第1エリアの特徴点に関する情報とに基づいて、期間T(n)の画像の動きベクトルを検出する。
【0033】
特徴点データメモリ14は、動きベクトル検出部11が画像の動きベクトルを検出する際に抽出した画像フレームF(n)中の特徴点に関するデータを保存する。サーチデータメモリ15は、動きベクトル検出部11が画像の動きベクトルを検出する際に用いる画像フレームF(n)中の第1エリアの特徴点を含む画素ブロックの画素データを保存する。
【0034】
動きベクトル検出部11は、特徴点データメモリ14に保存された画像フレームF(n-1)中の特徴点に関するデータと、サーチデータメモリ15に保存された画像フレームF(n)中の第1エリアの画素データとに基づいて、期間T(n)の画像の動きベクトルを検出する。
【0035】
なお、動きベクトル検出部11は、各画像フレームF(n)の画素データを入力する際の初期の所定期間に入力した画像フレームF(n)中の第1エリアの特徴点に加えて、第1エリア以外の第2エリアの特徴点をも利用して、画像の動きベクトルを検出してもよい。
【0036】
補正量算出部12は、動きベクトル検出部11により検出された画像の動きベクトルに基づいて画像フレームF(n)についての切り出し位置を算出する。そして、画像切り出し処理部13は、補正量算出部12により算出された切り出し位置に基づいて、画像信号処理部20から出力された画像フレームF(n)中の部分範囲の画素データを切り出して、その切り出し後の画素データを出力する。
【0037】
図3は、画像フレームF(n)中の第1エリアおよび第2エリアを説明する図である。撮像部30から各画像フレームF(n)の画素データがラスタスキャン順で出力されて、該画像フレームF(n)の画素データが手振れ補正処理装置10に入力されるものとする。すなわち、同図において、画像フレームF(n)の上から順に各行の画素データが手振れ補正処理装置10に入力され、各行においては左から順に画素データが手振れ補正処理装置10に入力されるものとする。このとき、画像フレームF(n)中の上部エリアを第1エリアF1(n)とすることができ、また、画像フレームF(n)中の中央部エリアを第2エリアF2(n)とすることができる。
【0038】
図4は、画像信号処理部20における画像フレームF(n)の入力タイミングおよび出力タイミングを示す図である。画像信号処理部20が行う画像処理は、ノイズ除去処理に代表されるようなフィルタ処理を含み、画像フレームF(n)中の数行分の画素データを内部に保持することにより行われる。したがって、画像信号処理部20からの画像フレームF(n)の出力タイミングは、画像信号処理部20への該画像フレームF(n)の入力タイミングに対し数行分の遅延を有する。
【0039】
そこで、補正量算出部12は、画像信号処理部20が画像フレームF(n)について画像処理後の画素データを出力するときまでに該画像フレームF(n)についての切り出し位置を算出するのが好適である。そして、画像切り出し処理部13は、補正量算出部12により算出された切り出し位置に基づいて、画像信号処理部から出力された該画像フレームF(n)中の部分範囲の画素データを切り出して、その切り出し後の画素データを出力するのが好適である。
【0040】
次に、本実施形態における特徴点抽出方法について説明する。画像フレームF(n-1)から画像フレームF(n)までの期間T(n)の画像の動きベクトルを検出するために、画像の特徴点を用いることができる。画像の特徴点を用いることにより、動きベクトルを求める際の計算量を低減することができ、必要なメモリ容量をも低減することができ、また、画像の動きベクトルを高精度に検出することができる。
【0041】
画像中の例えばエッジ部やコーナー部を特徴点として抽出する。画像中の隣接画素間の画素データの微分やHarrisオペレータによる評価により、特徴点を抽出することができる。また、その微分値やHarrisオペレータ評価値を該特徴点の特徴量とすることができる。なお、Harrisオペレータは、画像中の各画素データの間の相関性に基づいて特徴点を抽出する手法であって、画像中のエッジやコーナー等の特徴点において相関出力値が大きくなることを利用して特徴点を抽出することができる。
【0042】
本実施形態では、画像フレームF(n)中の第1エリアF1(n)において複数個の特徴点を抽出することを基本とする。画像フレームF(n)中の第2エリアF2(n)においても複数個の特徴点を抽出してもよい。画像フレームF(n)中の第1エリアF1(n)の大きさ及び特徴点の抽出個数は、図4に示された画像信号処理部20における画像フレームF(n)の入力タイミングから出力タイミングまでの遅延時間に対応することができるように設定されるのが好ましい。画像フレームF(n)中の第1エリアF1(n)の大きさは例えば10行分とすることができる。
【0043】
特徴点の抽出個数が少なすぎると、特徴点の動きベクトルに基づいて算出される画像の動きベクトルの精度が低下する。一方、特徴点の抽出個数が多すぎると、特徴点データメモリ14およびサーチデータメモリ15それぞれの必要容量が大きくなる。これらの観点から特徴点の抽出個数は適当な数に設定される。例えば、第1エリアF1(n)における特徴点の抽出個数を10とし、第2エリアF2(n)における特徴点の抽出個数を50とする。特徴量が大きいものを選んで特徴点を抽出する。また、第1エリアF1(n)および第2エリアF2(n)それぞれにおいて、選択される特徴点が局所領域に偏らないようにするのが好ましく、その為に各エリアをさらに細区分して、区分された各領域内で1つの特徴点を選択するのが好ましい。
【0044】
図5は、本実施形態における特徴点抽出方法について説明する図である。同図には、第1エリアF1(n)および第2エリアF2(n)を含む画像フレームF(n)に加えて、画像フレームF(n-1)中の特徴点Pを含む画素ブロックBp(n-1)、および、画像フレームF(n)中の該特徴点Pの座標値に対応する位置を含む画素ブロックBs(n) も示されている。画素ブロックBp(n-1)は特徴点Pを中心とする例えば5×5画素のブロックであって、画素ブロックBp(n-1)の画素データは特徴点データメモリ14により保持される。画素ブロックBs(n)は特徴点Pの対応位置を中心とする例えば横13画素×縦9画素のブロックであって、画素ブロックBs(n)の画素データはサーチデータメモリ15により保持される。
【0045】
動きベクトル検出部11は、画像フレームF(n-1)中の特徴点Pを含む画素ブロックBp(n-1)の画素データと、画像フレームF(n)中の該特徴点Pの対応位置を含む画素ブロックBs(n)の画素データとに基づいて、特徴点Pの動きベクトルを検出する。具体的には、動きベクトル検出部11は、一般に知られている画像間の類似性を評価する手法であるブロックマッチング法を用いる。すなわち、動きベクトル検出部11は、画素ブロックBp(n-1)をベクトル(Vx,Vy)だけ移動させたものと画素ブロックBs(n)とから、互いに対応する位置にある各画素データの差分の絶対値和SAD(Sum of Absolute Difference)を両者間の類似度の評価値として求める。そして、動きベクトル検出部11は、Vx,Vyを画素単位で様々な値に設定して絶対値和SADを求めて、その絶対値和SADが最小となるときのベクトル(Vx,Vy)を特徴点Pの動きベクトルとする。
【0046】
図6は、本実施形態の手振れ補正処理装置10の動きベクトル検出部11の構成を示すブロック図である。動きベクトル検出部11は、第1抽出部51,第1保存部52,第1検出部53および第1算出部54を含み、これらにより第1エリアF1(n)の画素データの処理を行う。好適には、動きベクトル検出部11は、第2抽出部61,第2保存部62,第2検出部63および第2算出部64を更に含み、これらにより第2エリアF2(n)の画素データの処理を行う。
【0047】
なお、図6はベクトル検出部11の機能ブロックを示している。各画像フレームF(n)の第1エリアF1(n)の画素データの処理の後に第2エリアF2(n)の画素データの処理が行われるので、第1抽出部51と第2抽出部61とは共通の回路により実現されてもよく、第1検出部53と第2検出部63とは共通の回路により実現されてもよく、また、第1算出部54と第2算出部64とは共通の回路により実現されてもよい。
【0048】
第1抽出部51は、各画像フレームF(n)中の第1エリアF1(n)における複数の特徴点を抽出する。第1保存部52は、第1抽出部51により抽出された各特徴点の座標値と該特徴点を含む画素ブロックの画素データとを対応付けて特徴点データメモリ14に保存する。好適には、第1保存部52は、第1抽出部52により抽出された各特徴点の特徴量をも特徴点データメモリ14に保存する。
【0049】
第1検出部53は、第1保存部52により特徴点データメモリ14に保存された画像フレームF(n-1)中の第1エリアF1(n-1)の各特徴点の座標値と該特徴点を含む画素ブロックの画素データとを読み出し、画像フレームF(n-1)中の第1エリアF1(n-1)の特徴点を含む画素ブロックBp(n-1)の画素データと、画像フレームF(n)中の第1エリアF1(n)において該特徴点の座標値に対応する位置を含む画素ブロックBs(n)の画素データとに基づいて、期間T(n)の第1エリアの各特徴点の動きベクトルを検出する。
【0050】
第1算出部54は、第1検出部53により検出された期間T(n)の第1エリアの各特徴点の動きベクトルに基づいて、期間T(n)の画像の動きベクトルを算出する。好適には、第1算出部54は、第1検出部51により検出された各特徴点の動きベクトルに対して、第1保存部52により保存された各特徴点の特徴量で重み付けを行って、期間T(n)の画像の動きベクトルを算出する。
【0051】
第1算出部54により算出される期間T(n)の画像の動きベクトル(V1x,V1y)は下記(1)式で表される。ここで、V1x(i)は第1エリアの特徴点iにおける動きベクトルの水平成分であり、V1y(i)は第1エリアの特徴点iにおける動きベクトルの垂直成分であり、W1(i)は第1エリアの特徴点iの特徴量である。
【0052】
【数1】

【0053】
第2抽出部61は、各画像フレームF(n)中の第2エリアF2(n)における複数の特徴点を抽出する。第2保存部62は、第2抽出部61により抽出された各特徴点の座標値と該特徴点を含む画素ブロックの画素データとを対応付けて特徴点データメモリ14に保存する。好適には、第2保存部62は、第2抽出部61により抽出された各特徴点の特徴量をも特徴点データメモリ14に保存する。
【0054】
第2検出部63は、第2保存部62により特徴点データメモリ14に保存された画像フレームF(n-1)中の第2エリアF2(n-1)の各特徴点の座標値と該特徴点を含む画素ブロックの画素データとを読み出し、画像フレームF(n-1)中の第2エリアF2(n-1)の特徴点を含む画素ブロックBp(n-1)の画素データと、画像フレームF(n)中の第2エリアF2(n)において該特徴点の座標値に対応する位置を含む画素ブロックBs(n)の画素データとに基づいて、期間T(n)の第2エリアの各特徴点の動きベクトルを検出する。
【0055】
第2算出部64は、第2検出部63により検出された期間T(n)の第2エリアの各特徴点の動きベクトルに基づいて、期間T(n)の画像の動きベクトルを算出する。好適には、第2算出部64は、第2検出部61により検出された各特徴点の動きベクトルに対して、第2保存部62により保存された各特徴点の特徴量で重み付けを行って、期間T(n)の画像の動きベクトルを算出する。
【0056】
第2算出部64により算出される期間T(n)の画像の動きベクトル(V2x,V2y)は下記(2)式で表される。ここで、V2x(i)は第2エリアの特徴点iにおける動きベクトルの水平成分であり、V2y(i)は第2エリアの特徴点iにおける動きベクトルの垂直成分であり、W2(i)は第2エリアの特徴点iの特徴量である。
【0057】
【数2】

【0058】
補正量算出部12は、第1算出部54により算出された期間T(n)の画像の動きベクトル(V1x,V1y)に基づいて、画像フレームF(n)についての切り出し位置を算出する。好適には、補正量算出部12は、第1算出部54により算出された期間T(n)の画像の動きベクトル(V1x,V1y)と、第2算出部64により算出された期間T(n-1)の画像の動きベクトル(V2x,V2y)とに基づいて、画像フレームF(n)についての切り出し位置を算出する。更に好適には、補正量算出部12は、第1算出部54により算出された期間T(n)の画像の動きベクトル(V1x,V1y)と、第2算出部64により算出された期間T(n-1)の画像の動きベクトル(V2x,V2y)とに対して重み付けを行って画像の動きベクトル(Mx,My)を求め、これに基づいて画像フレームF(n)についての切り出し位置を算出する。
【0059】
補正量算出部12により算出される画像の動きベクトル(Mx,My)は下記(3)式で表される。ここで、ΣW1(i)およびW2それぞれは重み付けの係数である。重み付け係数W2は、固定値であってもよく、外部から設定可能であってもよい。重み付け係数W2は、kΣW2(i)であってもよく、係数kが外部から設定可能であってもよい。ΣW1(i)に替えて固定値が用いられてもよい。
【0060】
【数3】

【0061】
この(3)式が表していることは以下のとおりである。本実施形態における手振れ補正処理では、画像フレーム中の第1エリアの特徴点の動きベクトルに基づいて画像の動きベクトルを求めることを基本とする。しかし、画像フレームの画像の絵柄によっては第1エリアのみでは正確な動きベクトルを検出することができない場合がある。代表的な例としては、第1エリア(例えば画面上部)の絵柄が極端に平坦であって、特徴をもった特徴点が第1エリアにおいて検出されない場合である。このような画像に対してブロックマッチング処理を行うと、画像の特徴よりランダムなノイズ成分に対してマッチングを行ってしまう可能性が高く、手振れ補正処理という目的に対して不適切な動きベクトルが得られてしまう場合がある。
【0062】
このような場合、第1算出部54により算出された期間T(n)の画像の動きベクトル(V1x,V1y)より、時刻は1フレーム分だけ過去とはなるが第2算出部64により算出された期間T(n-1)の画像の動きベクトル(V2x,V2y)のほうが、確率的には真の動きベクトルに近い値をとる可能性が高い。そこで、本実施形態では、画像フレームF(n-1)の第2エリアF2(n-1)で検出した動きベクトルの値を加味する意図で、特徴量で重みづけを行う。
【0063】
上記(3)式によれば、第1エリアの絵柄が平坦な場合には、上式の特徴量W1(i)が小さい値をとり、画像フレームF(n)の第1エリアF1(n)で検出した動きベクトルの重みと比べて、画像フレームF(n-1)の第2エリアF2(n-1)で検出した動きベクトルの重みが相対的に大きくなる。重み付け係数W2は実際のシステム上で適当に決定されればよい。
【0064】
次に、本実施形態の手振れ補正処理装置10の動作について説明するとともに、本実施形態の手振れ補正処理方法について説明する。図7は、本実施形態の手振れ補正処理方法を説明するフローチャートである。ここでは、手振れ補正処理装置10に画像フレームF(n)の画素データが入力されたときに行われる処理を説明する。本実施形態の手振れ補正処理方法は、ステップS10〜S19を含む動きベクトル検出ステップ,補正量算出ステップS20および画像切り出し処理ステップS30を備える。
【0065】
ステップS10では、撮像部30から出力された画像フレームF(n)の画素データがラスタスキャン順で動きベクトル検出部11に入力される。画像フレームF(n)の入力期間のうちの初期の所定期間に動きベクトル検出部11に入力された第1エリアF1(n)の画素データは、第1抽出部51および第1検出部53に入力されて、ステップS11〜S14の処理が行われる。
【0066】
第1抽出ステップS11では、第1抽出部51により、画像フレームF(n)中の第1エリアF1(n)における複数の特徴点が抽出される。第1保存ステップS12では、第1保存部52により、第1抽出ステップS11で抽出された各特徴点の座標値と該特徴点を含む画素ブロックの画素データと該特徴点の特徴量とが対応付けられて特徴点データメモリ14に保存される。
【0067】
第1検出ステップS13では、第1検出部53により、第1保存ステップS12で特徴点データメモリ14に保存された画像フレームF(n-1)中の第1エリアF1(n-1)の各特徴点の座標値と該特徴点を含む画素ブロックの画素データとが読み出され、画像フレームF(n-1)中の第1エリアF1(n-1)の特徴点を含む画素ブロックBp(n-1)の画素データと、画像フレームF(n)中の第1エリアF1(n)において該特徴点の座標値に対応する位置を含む画素ブロックBs(n)の画素データとに基づいて、期間T(n)の第1エリアの各特徴点の動きベクトルが検出される。
【0068】
第1算出ステップS14では、第1算出部54により、第1保存ステップS12で特徴点データメモリ14に保存された画像フレームF(n-1)中の第1エリアF1(n-1)の各特徴点の特徴量が読み出され、第1検出ステップS13で検出された各特徴点の動きベクトルに対して各特徴点の特徴量で重み付けが行われて、期間T(n)の画像の動きベクトル(V1x,V1y)が算出される(上記(1)式)。
【0069】
画像フレームF(n)の第1エリアF1(n)の画素データの後に動きベクトル検出部11に入力された第2エリアF2(n)の画素データは、第2抽出部61および第2検出部63に入力されて、ステップS16〜S19の処理が行われる。
【0070】
第2抽出ステップS16では、第2抽出部61により、画像フレームF(n)中の第2エリアF2(n)における複数の特徴点が抽出される。第2保存ステップS17では、第2保存部62により、第2抽出ステップS16で抽出された各特徴点の座標値と該特徴点を含む画素ブロックの画素データと該特徴点の特徴量とが対応付けられて特徴点データメモリ14に保存される。
【0071】
第2検出ステップS18では、第2検出部63により、第2保存ステップS17で特徴点データメモリ14に保存された画像フレームF(n-1)中の第2エリアF2(n-1)の各特徴点の座標値と該特徴点を含む画素ブロックの画素データとが読み出され、画像フレームF(n-1)中の第2エリアF2(n-1)の特徴点を含む画素ブロックBp(n-1)の画素データと、画像フレームF(n)中の第2エリアF2(n)において該特徴点の座標値に対応する位置を含む画素ブロックBs(n)の画素データとに基づいて、期間T(n)の第2エリアの各特徴点の動きベクトルが検出される。
【0072】
第2算出ステップS19では、第2算出部64により、第2保存ステップS17で特徴点データメモリ14に保存された画像フレームF(n-1)中の第2エリアF2(n-1)の各特徴点の特徴量が読み出され、第2検出ステップS18で検出された各特徴点の動きベクトルに対して各特徴点の特徴量で重み付けが行われて、期間T(n)の画像の動きベクトル(V2x,V2y)が算出される(上記(2)式)。
【0073】
第1抽出ステップS11および第1保存ステップS12と、第1検出ステップS13および第1算出ステップS14とは、並列処理が可能である。また、第2抽出ステップS16および第2保存ステップS17と、第2検出ステップS18および第2算出ステップS19とは、並列処理が可能である。第1算出ステップS14の後に補正量算出ステップS20が行われる。
【0074】
補正量算出ステップS20では、補正量算出部12により、第1算出ステップS14で算出された期間T(n)の画像の動きベクトル(V1x,V1y)と、第2算出ステップS19で算出された期間T(n-1)の画像の動きベクトル(V2x,V2y)とに対して重み付けが行われて画像の動きベクトル(Mx,My)が求められ(上記(3)式)、これに基づいて画像フレームF(n)についての切り出し位置が算出される。
【0075】
画像切り出し処理ステップS30では、画像切り出し処理部13により、補正量算出ステップS20で算出された切り出し位置に基づいて、画像信号処理部20による画像信号処理ステップで画像処理がなされて出力された画像フレームF(n)中の部分範囲の画素データが切り出されて、その切り出し後の画素データが出力される。
【0076】
そして、画像信号処理部20による各種画像処理および手振れ補正処理装置10による手振れ補正処理がなされた各画像フレームの画素データが表示部40に入力されて、手振れの影響が低減された動画像が表示部40により表示される。
【0077】
本実施形態では、特徴点を抽出して手振れ補正処理をする際に、動きベクトル検出部11の第1抽出部51および第2抽出部61が抽出した画像フレームF(n)中の特徴点に関するデータ(特徴点の座標値、特徴点の特徴量、特徴点を含む画素ブロックBp(n)の画素データ)を特徴点データメモリ14に保存するとともに、動きベクトル検出部11の第1検出部53および第2検出部63が画像の動きベクトルを検出する際に用いる画像フレームF(n)中の一部の画素ブロックBs(n)の画素データをサーチデータメモリ15に保存すればよいので、フレームメモリを使用することなく手振れ補正処理を行うことが可能である。したがって、本実施形態では、手振れ補正処理装置10のコストを抑えることが可能であり、カメラシステム1や画像処理システム2のコストをも抑えることが可能である。
【0078】
また、本実施形態では、画像フレームF(n)の第1エリアF1(n)についての第1算出部54による処理(第1算出ステップS14)が終了すると、補正量算出部12による処理(補正量算出ステップS20)が行われるので、画像信号処理部20が画像フレームF(n)について画像処理後の画素データを出力するときまでに補正量算出部12による切り出し位置算出の処理(補正量算出ステップS20)の終了が可能となる。しがたって、本実施形態では、カメラシステム1における動画像処理で必要とされるリアルタイム処理が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1…カメラシステム、2…画像処理システム、10…手振れ補正処理装置、11…動きベクトル検出部、12…補正量算出部、13…画像切り出し処理部、14…特徴点データメモリ、15…サーチデータメモリ、20…画像信号処理部、30…撮像部、40…表示部、51…第1抽出部、52…第1保存部、53…第1検出部、54…第1算出部、61…第2抽出部、62…第2保存部、63…第2検出部、64…第2算出部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画像フレームからなる動画像における手振れの影響を補正処理する装置であって、
前記複数の画像フレームのうちの第nの画像フレームF(n)の画素データを入力する際の初期の所定期間に入力した画像フレームF(n)中の第1エリアの画素データと、画像フレームF(n)より前の第(n−1)の画像フレームF(n-1)中の第1エリアの特徴点に関する情報とに基づいて、画像フレームF(n-1)から画像フレームF(n)までの期間T(n)の画像の動きベクトルを検出する動きベクトル検出部と、
前記動きベクトル検出部により検出された画像の動きベクトルに基づいて画像フレームF(n)についての切り出し位置を算出する補正量算出部と、
前記補正量算出部により算出された切り出し位置に基づいて画像フレームF(n)中の部分範囲の画素データを切り出して、その切り出し後の画素データを出力する画像切り出し処理部と、
を備えることを特徴とする手振れ補正処理装置。
【請求項2】
前記動きベクトル検出部が、
各画像フレーム中の第1エリアにおける複数の特徴点を抽出する第1抽出部と、
前記第1抽出部により抽出された各特徴点の座標値と該特徴点を含む画素ブロックの画素データとを対応付けて保存する第1保存部と、
前記第1保存部により保存された画像フレームF(n-1)中の第1エリアの各特徴点の座標値と該特徴点を含む画素ブロックの画素データとを読み出し、画像フレームF(n-1)中の第1エリアの特徴点を含む画素ブロックの画素データと、画像フレームF(n)中の第1エリアにおいて該特徴点の座標値に対応する位置を含む画素ブロックの画素データとに基づいて、期間T(n)の第1エリアの各特徴点の動きベクトルを検出する第1検出部と、
前記第1検出部により検出された期間T(n)の第1エリアの各特徴点の動きベクトルに基づいて、期間T(n)の画像の動きベクトルを算出する第1算出部と、
を含み、
前記補正量算出部が、前記第1算出部により算出された期間T(n)の画像の動きベクトルに基づいて、画像フレームF(n)についての切り出し位置を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の手振れ補正処理装置。
【請求項3】
前記動きベクトル検出部が、
各画像フレーム中の第1エリア以外の第2エリアにおける複数の特徴点を抽出する第2抽出部と、
前記第2抽出部により抽出された各特徴点の座標値と該特徴点を含む画素ブロックの画素データとを対応付けて保存する第2保存部と、
前記第2保存部により保存された画像フレームF(n-1)中の第2エリアの各特徴点の座標値と該特徴点を含む画素ブロックの画素データとを読み出し、画像フレームF(n-1)中の第2エリアの特徴点を含む画素ブロックの画素データと、画像フレームF(n)中の第2エリアにおいて該特徴点の座標値に対応する位置を含む画素ブロックの画素データとに基づいて、期間T(n)の第2エリアの各特徴点の動きベクトルを検出する第2検出部と、
前記第2検出部により検出された期間T(n)の第2エリアの各特徴点の動きベクトルに基づいて、期間T(n)の画像の動きベクトルを算出する第2算出部と、
を更に含み、
前記補正量算出部が、前記第1算出部により算出された期間T(n)の画像の動きベクトルと、前記第2算出部により算出された期間T(n-1)の画像の動きベクトルとに基づいて、画像フレームF(n)についての切り出し位置を算出する、
ことを特徴とする請求項2に記載の手振れ補正処理装置。
【請求項4】
前記第1保存部が、前記第1抽出部により抽出された各特徴点の特徴量をも保存し、
前記第1算出部が、前記第1検出部により検出された各特徴点の動きベクトルに対して、前記第1保存部により保存された各特徴点の特徴量で重み付けを行って、期間T(n)の画像の動きベクトルを算出する、
ことを特徴とする請求項2に記載の手振れ補正処理装置。
【請求項5】
前記第2保存部が、前記第2抽出部により抽出された各特徴点の特徴量をも保存し、
前記第2算出部が、前記第2検出部により検出された各特徴点の動きベクトルに対して、前記第2保存部により保存された各特徴点の特徴量で重み付けを行って、期間T(n)の画像の動きベクトルを算出する、
ことを特徴とする請求項3に記載の手振れ補正処理装置。
【請求項6】
前記補正量算出部が、前記第1算出部により算出された期間T(n)の画像の動きベクトルと、前記第2算出部により算出された期間T(n-1)の画像の動きベクトルとに対して、重み付けを行って画像の動きベクトルを求めて、画像フレームF(n)についての切り出し位置を算出する、ことを特徴とする請求項3に記載の手振れ補正処理装置。
【請求項7】
複数の画像フレームからなる動画像における手振れの影響を補正処理する請求項1〜6の何れか1項に記載の手振れ補正処理装置と、
前記複数の画像フレームそれぞれの画素データについて前記手振れ補正処理装置による手振れ補正処理とは異なる画像処理を行う画像信号処理部と、
を備え、
前記画像信号処理部による画像処理および前記手振れ補正処理装置による手振れ補正処理がなされた各画像フレームの画素データを出力する、
ことを特徴とする画像処理システム。
【請求項8】
前記手振れ補正処理装置の前記補正量算出部が、前記画像信号処理部が画像フレームF(n)について画像処理後の画素データを出力するときまでに該画像フレームF(n)についての切り出し位置を算出し、
前記手振れ補正処理装置の前記画像切り出し処理部が、前記補正量算出部により算出された切り出し位置に基づいて、前記画像信号処理部から出力された該画像フレームF(n)中の部分範囲の画素データを切り出して、その切り出し後の画素データを出力する、
ことを特徴とする請求項7に記載の画像処理システム。
【請求項9】
複数の画像フレームからなる動画像における手振れの影響を補正処理する方法であって、
前記複数の画像フレームのうちの第nの画像フレームF(n)の画素データを入力する際の初期の所定期間に入力した画像フレームF(n)中の第1エリアの画素データと、画像フレームF(n)より前の第(n−1)の画像フレームF(n-1)中の第1エリアの特徴点に関する情報とに基づいて、画像フレームF(n-1)から画像フレームF(n)までの期間T(n)の画像の動きベクトルを検出する動きベクトル検出ステップと、
前記動きベクトル検出ステップで検出された画像の動きベクトルに基づいて画像フレームF(n)についての切り出し位置を算出する補正量算出ステップと、
前記補正量算出ステップで算出された切り出し位置に基づいて画像フレームF(n)中の部分範囲の画素データを切り出して、その切り出し後の画素データを出力する画像切り出し処理ステップと、
を備えることを特徴とする手振れ補正処理方法。
【請求項10】
前記動きベクトル検出ステップが、
各画像フレーム中の第1エリアにおける複数の特徴点を抽出する第1抽出ステップと、
前記第1抽出ステップで抽出された各特徴点の座標値と該特徴点を含む画素ブロックの画素データとを対応付けて保存する第1保存ステップと、
前記第1保存ステップで保存された画像フレームF(n-1)中の第1エリアの各特徴点の座標値と該特徴点を含む画素ブロックの画素データとを読み出し、画像フレームF(n-1)中の第1エリアの特徴点を含む画素ブロックの画素データと、画像フレームF(n)中の第1エリアにおいて該特徴点の座標値に対応する位置を含む画素ブロックの画素データとに基づいて、期間T(n)の第1エリアの各特徴点の動きベクトルを検出する第1検出ステップと、
前記第1検出ステップで検出された期間T(n)の第1エリアの各特徴点の動きベクトルに基づいて、期間T(n)の画像の動きベクトルを算出する第1算出ステップと、
を含み、
前記補正量算出ステップでは、前記第1算出ステップで算出された期間T(n)の画像の動きベクトルに基づいて、画像フレームF(n)についての切り出し位置を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の手振れ補正処理方法。
【請求項11】
前記動きベクトル検出ステップが、
各画像フレーム中の第1エリア以外の第2エリアにおける複数の特徴点を抽出する第2抽出ステップと、
前記第2抽出ステップで抽出された各特徴点の座標値と該特徴点を含む画素ブロックの画素データとを対応付けて保存する第2保存ステップと、
前記第2保存ステップで保存された画像フレームF(n-1)中の第2エリアの各特徴点の座標値と該特徴点を含む画素ブロックの画素データとを読み出し、画像フレームF(n-1)中の第2エリアの特徴点を含む画素ブロックの画素データと、画像フレームF(n)中の第2エリアにおいて該特徴点の座標値に対応する位置を含む画素ブロックの画素データとに基づいて、期間T(n)の第2エリアの各特徴点の動きベクトルを検出する第2検出ステップと、
前記第2検出ステップで検出された期間T(n)の第2エリアの各特徴点の動きベクトルに基づいて、期間T(n)の画像の動きベクトルを算出する第2算出ステップと、
を更に含み、
前記補正量算出ステップでは、前記第1算出ステップで算出された期間T(n)の画像の動きベクトルと、前記第2算出ステップで算出された期間T(n-1)の画像の動きベクトルとに基づいて、画像フレームF(n)についての切り出し位置を算出する、
ことを特徴とする請求項10に記載の手振れ補正処理方法。
【請求項12】
前記第1保存ステップでは、前記第1抽出ステップで抽出された各特徴点の特徴量をも保存し、
前記第1算出ステップでは、前記第1検出ステップで検出された各特徴点の動きベクトルに対して、前記第1保存ステップで保存された各特徴点の特徴量で重み付けを行って、期間T(n)の画像の動きベクトルを算出する、
ことを特徴とする請求項10に記載の手振れ補正処理方法。
【請求項13】
前記第2保存ステップでは、前記第2抽出ステップで抽出された各特徴点の特徴量をも保存し、
前記第2算出ステップでは、前記第2検出ステップで検出された各特徴点の動きベクトルに対して、前記第2保存ステップで保存された各特徴点の特徴量で重み付けを行って、期間T(n)の画像の動きベクトルを算出する、
ことを特徴とする請求項11に記載の手振れ補正処理方法。
【請求項14】
前記補正量算出ステップでは、前記第1算出ステップで算出された期間T(n)の画像の動きベクトルと、前記第2算出ステップで算出された期間T(n-1)の画像の動きベクトルとに対して、重み付けを行って画像の動きベクトルを求めて、画像フレームF(n)についての切り出し位置を算出する、ことを特徴とする請求項11に記載の手振れ補正処理方法。
【請求項15】
複数の画像フレームからなる動画像における手振れの影響を補正処理する請求項9〜14の何れか1項に記載の手振れ補正処理方法と、
前記複数の画像フレームそれぞれの画素データについて前記手振れ補正処理方法による手振れ補正処理とは異なる画像処理を行う画像信号処理ステップと、
を備え、
前記画像信号処理ステップによる画像処理および前記手振れ補正処理方法による手振れ補正処理がなされた各画像フレームの画素データを出力する、
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項16】
前記手振れ補正処理方法の前記補正量算出ステップでは、前記画像信号処理ステップで画像フレームF(n)について画像処理後の画素データを出力するときまでに該画像フレームF(n)についての切り出し位置を算出し、
前記手振れ補正処理方法の前記画像切り出し処理ステップでは、前記補正量算出ステップで算出された切り出し位置に基づいて、前記画像信号処理ステップから出力された該画像フレームF(n)中の部分範囲の画素データを切り出して、その切り出し後の画素データを出力する、
ことを特徴とする請求項15に記載の画像処理方法。


【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−85035(P2013−85035A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222155(P2011−222155)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(399011195)ザインエレクトロニクス株式会社 (61)
【Fターム(参考)】