説明

手摺ベルト清掃装置及び方法

【課題】 人手による手摺ベルトの清掃作業が不要である、あるいは、その頻度を低くできる手摺ベルト清掃装置及び方法を提供する。
【解決手段】 手摺ベルト清掃装置1は、手摺ベルトBの表面に押し当てられて回転させられる原動ローラー10と、回転しながら手摺ベルトBの表面に押し当てられるブラシローラー20と、これらを支持するベース40を備える。ベース40は、エスカレーターの乗り口の床面上に設置される。原動ローラー10の回転軸11とブラシローラー20の回転軸23には、各々プーリ18、28が固定されている。各プーリ18、28の間にはタイミングベルト30がたすき掛けされて巻き回されている。手摺ベルトBとの摩擦により原動ローラー10が回転するとタイミングベルト30を介してブラシローラー20が回転し、手摺ベルトBの表面に付着したほこりやごみを除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレーターや動く歩道などの人員輸送用装置に搭載される手摺ベルトを清掃する装置及び方法に関する。特には、手摺ベルトの循環走行によって駆動力を得る手摺ベルト清掃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレーターや動く歩道などの人員輸送用装置には、階段や歩道と同じ速度で循環走行するように駆動される手摺ベルトが配設されている。このような手摺ベルトには、多くの人が直接接触するため、汚れが付着しやすい。さらに、特に屋外施設に設けられている場合は、空気中のほこりも付着する。このため、定期的(1〜7日毎)に洗剤を用いて人手によって清掃される場合が多い。この場合、例えば、洗剤を付けた雑巾を走行する手摺ベルトの表面に押し当てて同表面を清掃する。
【0003】
この場合、清掃直後は手摺ベルトは清潔な状態に保たれるが、ある程度時間が経過すると、また汚れやほこりが付着してしまう。手摺ベルトを常時清潔な状態に保つには、人手による清掃作業を頻繁に行わねばならず人件費が高くなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、循環走行する手摺ベルトを利用して駆動することによって、人手による手摺ベルトの清掃作業が不要である、あるいは、その頻度を低くできる手摺ベルト清掃装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の手摺ベルト清掃装置は、 エスカレーター等の人員輸送用ベルトコンベアの手摺ベルトを清掃する装置であって、 前記手摺ベルトの表面に押し当てられて回転させられる原動ローラーと、 回転しながら前記手摺ベルトの表面に押し当てられるブラシローラーと、 前記原動ローラーの回転を前記ブラシローラーに伝える回転伝動機構と、 前記原動ローラー及び前記ブラシローラーを回転自在に保持するベースと、 を具備し、 該ベースが、前記コンベアの乗り口における、前記手摺ベルトの床寄り走行部分に対向する床上に設置されることを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、以下の作用効果を奏する。
(1)エスカレーター等の人員輸送用ベルトコンベアの乗り口の床に設置するので、既存のエスカレーター等に設置可能である。
(2)ブラシローラーの回転動力は手摺ベルトの走行力から得るので、独自の動力や配線が不要であり、経済的である。
(3)エスカレーターの運転中は常時清掃作業を行うので、手摺ベルトを清潔に保つことができ、衛生的である。
(4)洗剤を使用した人手による清掃作業は不要となる。あるいは作業頻度を少なくできる。さらに、この際にも、雑巾などを強い力で長時間手摺ベルトに押しつけなくてもすむ。このため人件費を低減できる。
【0007】
本発明においては、 前記ベースの裏面に、高粘着層又は高摩擦力層が形成されていることとすれば、ベースを床上に設置した後、位置ずれなどが生じにくい。
なお、ベースの裏面を高粘着性又は高摩擦性を有するように表面処理してもよい。
【0008】
本発明においては、 前記ブラシローラーの幅が、前記手摺ベルトの幅よりも広いこととすれば、ブラシローラーが手摺ベルトの表面のみならず側面にも回転接触するので、手摺ベルトの側面も清掃できる。
【0009】
本発明においては、 前記回転伝動機構が、 前記原動ローラーの回転軸に固定されたプーリと、 前記ブラシローラーの回転軸に固定されたプーリと、 前記両プーリ間にたすき掛けされたベルトと、を有し、 前記原動ローラーとブラシローラーの直径比が1:1〜1:2であることが好ましい。
【0010】
本発明の手摺ベルト清掃方法は、 エスカレーター等の人員輸送用ベルトコンベアの手摺ベルトを清掃する方法であって、 前記ベルトコンベアの乗り口の床寄りの部分において原動ローラーを前記手摺ベルトの表面に押し当てて回転させ、 前記原動ローラーの回転を、回転伝動機構によって、該原動ローラーに隣接して設置されたブラシローラーに伝えて該ブラシローラーを回転させ、これにより該ブラシローラーを前記手摺ベルトの表面に押し当て、前記手摺ベルトの表面を清掃することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、本発明の手摺ベルト清掃装置は、エスカレーター等の人員輸送用ベルトコンベアの乗り口の床に設置するので、既存のエスカレーター等に簡単に設置することができる。さらに、手摺ベルトの走行力を利用してブラシローラーを回転させるので、独自の動力や配線が不要であり、経済的である。また、エスカレーターの運転中は常時清掃作業を行うので、手摺ベルトを清潔に保つことができ、洗剤を使用した人手による清掃作業を不要あるいは作業頻度を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る手摺ベルト清掃装置の構造を示す斜視図である。
【図2】図1の手摺ベルト清掃装置の設置位置を図である。
【図3】図1の手摺ベルト清掃装置によって手摺ベルトの表面を清掃している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る手摺ベルト清掃装置を説明する。
手摺ベルト清掃装置1は、手摺ベルトBの表面に押し当てられて回転させられる原動ローラー10と、回転しながら手摺ベルトBの表面に押し当てられるブラシローラー20と、原動ローラー10の回転をブラシローラー20に伝える回転伝動機構と、を有し、これらはベース40に支持されている。
【0014】
原動ローラー10は、手摺ベルトBの幅とほぼ同じ長さであり、摩擦係数の高い材料(例えば、ウレタン樹脂やシリコンゴムなど)で作製される。原動ローラー10の軸心にはローラー軸11が挿通されている。ローラー軸11の両端からやや内寄りの部分は、ベース40に立設する軸受支柱13に回転可能に支持されている。各軸受支柱13は、ベース40に立設されている支柱部15と、支柱部15に対してバネ14により上方に付勢されるように支持される軸受部16とを有する。この軸受支柱13により、原動ローラー10は上方に付勢されている。また、各軸受支柱13は、ベース40に対して高さ調整可能に固定されている。さらに、回転軸11の両端には、各々プーリ18が固定されている。
【0015】
ブラシローラー20は、手摺ベルトBの幅よりもやや長い長さであり、本体部21と、本体部21の表面に植設された、ブラシの素線となる多数の線状体22を有する。本体部21の径は、原動ローラー10の径の1〜2倍である。この例では、線状体22は本体部21の全表面に植設されているのではなく、円周上において所定の間隔で植設されている。線状体22は、長さが1〜6cmであり、柔軟性を有する材料(例えば、ナイロンやポリエステルマイクロファイバなど)で作製される。さらに、線状体22は静菌作用あるいは抗菌作用を有することが好ましい。
なお、線状体22を円周方向の間隔を開けずに本体部21の全表面に植設することもできる。
【0016】
本体部21の軸心にはローラー軸23が挿通されている。ローラー軸23の両端からやや内寄りの部分は、ベースに立設する軸受支柱25に回転可能に支持されている。この際、ブラシローラー20と原動ローラー10とがほぼ平行であって、両ローラーの中心位置がほぼ同じ位置となるように位置決めされる。また、各軸受支柱25は、ベースに対して高さ調整可能に固定されている。さらに、回転軸23の両端には、各々プーリ28が固定されている。ブラシローラー軸23に固定されたプーリ28の径と、原動ローラー軸11に固定されたプーリ18の径との比は1:1〜1:2である。
【0017】
原動ローラー軸11の両端に固定されたプーリ18と、ブラシローラー軸23の両端に固定されたプーリ28との間には、各々タイミングベルト30が巻き回されている。各タイミングベルト30は、図に示すように、両プーリ18、28間でたすき掛けされている。これにより、両プーリ18、28は反対方向に回転する。また、ブラシローラー20と原動ローラー10の周速度はほぼ同じとなる。なお、ブラシローラー20の周速度を原動ローラー10の周速度よりも速くしてもよい。
なお、プーリ18、28を、各々原動ローラー軸11、ブラシローラー軸23の片方の端部のみに設けて、両ローラー10、20間の回転伝動機構を各ローラーの片側のみに配置してもよい。この場合、装置1の設置スペースに制約がある場合に対応できる。
【0018】
ベース40は、この例では平坦なプレート状である。ベース40の裏面には、高粘着層又は高摩擦力層が貼り付けられている。あるいは、ベース40の裏面を高粘着性又は高摩擦性を有するように表面処理してもよい。
【0019】
次に、図2を参照して、この手摺ベルト清掃装置1をエスカレーターに設置した状態を説明する。この例では、上りエスカレーターの場合を示す。
手摺ベルトBは、階段の両側方に、エスカレーターの乗り口と降り口との間で循環走行するように配設されている。手摺ベルト清掃装置1は、上りエスカレーターの乗り口の、手摺ベルトが上方へ180°回転する直前の部分の床上に設置される。この際、原動ローラー10が上流側、ブラシローラー20が下流側となるように位置決めする。ベース40の裏面は高粘着性又は高摩擦性を有するので、いったん設置されたベース40の位置ずれなどが生じにくい。なお、原動ローラー10とブラシローラー20の位置は逆でもよい。
【0020】
そして、原動ローラー10がある程度の圧力で手摺ベルトBの表面に接触するように、軸受支柱13の高さを調整する。同時に、ブラシローラー20と手摺ベルトBの表面との間に所定の間隔(例えば1〜3cm)が開くように、軸受支柱25の高さを調整する。
【0021】
図1を参照して、手摺ベルト清掃装置1の動作を説明する。手摺ベルトBが循環走行すると、同ベルトBに接触している原動ローラー10は、ベルトBとの摩擦によって回転する。この例では、ベルトBが図の左上から右下に走行すると、原動ローラー10は図の時計方向に、手摺ベルトBの走行速度と同じ周速度で回転する。こうして原動ローラー10とともに原動ローラー軸11が回転すると、タイミングベルト30を介してブラシローラー20が図の反時計方向に回転する。つまり、ブラシローラー20は、手摺ベルトBの走行方向と反対方向に回転する。このため、ブラシローラー20の周速度は、相対的に手摺ベルトBの走行速度の2倍となる。この回転によってブラシローラー20の本体部21に植設された線状体22が遠心力によって立ち上がって手摺ベルトBの表面に接触し、これによりベルトBの表面に付着したほこりなどを除去する。
【0022】
一般に、手摺ベルトBは図1や図3に示すように、両側端部が裏面に向かって折り返されている。この例では、ブラシローラー20の幅は手摺ベルトBの幅よりも広いので、図3に示すように、手摺ベルトBの折り返されている面にもブラシローラー20の線状体22が接触して同面も清掃する。
【0023】
なお、手摺ベルト清掃装置1を、下りエスカレーターの乗り口の床面上に設置することも当然可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 手摺ベルト清掃装置
10 原動ローラー 11 回転軸
13 軸受支柱 14 バネ
15 支柱部 16 軸受部
18 プーリ
20 ブラシローラー 21 本体部
22 線状体 25 軸受支柱
28 プーリ 30 タイミングベルト
40 ベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレーター等の人員輸送用ベルトコンベアの手摺ベルトを清掃する装置であって、
前記手摺ベルトの表面に押し当てられて回転させられる原動ローラーと、
回転しながら前記手摺ベルトの表面に押し当てられるブラシローラーと、
前記原動ローラーの回転を前記ブラシローラーに伝える回転伝動機構と、
前記原動ローラー及び前記ブラシローラーを回転自在に保持するベースと、
を具備し、
該ベースが、前記コンベアの乗り口における、前記手摺ベルトの床寄り走行部分に対向する床上に設置されることを特徴とする手摺ベルト清掃装置。
【請求項2】
前記ベースの裏面に、高粘着層又は高摩擦力層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の手摺ベルト清掃装置。
【請求項3】
前記ブラシローラーの幅が、前記手摺ベルトの幅よりも広いことを特徴とする請求項1又は2に記載の手摺ベルト清掃装置。
【請求項4】
前記回転伝動機構が、
前記原動ローラーの回転軸に固定されたプーリと、
前記ブラシローラーの回転軸に固定されたプーリと、
前記両プーリ間にたすき掛けされたベルトと、
を有し、
前記原動ローラーとブラシローラーの直径比が1:1〜1:2であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の手摺ベルト清掃装置。
【請求項5】
エスカレーター等の人員輸送用ベルトコンベアの手摺ベルトを清掃する方法であって、
前記ベルトコンベアの乗り口の床寄りの部分において原動ローラーを前記手摺ベルトの表面に押し当てて回転させ、
前記原動ローラーの回転を、回転伝動機構によって、該原動ローラーに隣接して設置されたブラシローラーに伝えて該ブラシローラーを回転させ、これにより該ブラシローラーを前記手摺ベルトの表面に押し当て、前記手摺ベルトの表面を清掃することを特徴とする手摺ベルト清掃方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−218892(P2012−218892A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87073(P2011−87073)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(506238134)
【出願人】(506291748)株式会社セラテック (4)
【Fターム(参考)】