説明

手摺柱

【課題】他の用途に用いられる部材を利用して立設することができ、立設作業に要する時間と費用を低減することができる手摺柱を提供する。
【解決手段】本発明の手摺柱1は、他の用途に用いられる複数の係止金物11が配置された床面12に立設される手摺柱1であって、係止金物11上に配置される台座2と、台座2を係止金物11に固定する連結部材3と、台座2上に配置される柱部材4と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他の用途に用いられる複数の係止金物が配置された床面に立設される手摺柱に関し、特に、固縛用の係止金物が配置された床面に適した手摺柱に関する。
【背景技術】
【0002】
手摺は、歩行者の歩行を補助したり、歩行可能な領域や立ち入り禁止区域を特定したりする場合に設置され、道路、階段、建物のベランダや屋上、工場や工事現場の敷地内、船舶の甲板、展示物や陳列物の周囲等、種々の場所で使用される。かかる手摺は、例えば、床面に立設される複数の手摺柱と、該手摺柱に掛け渡される手摺索や手摺棒と、により構成される。そして、手摺柱は、床面に直に埋め込まれたり、床面に埋め込まれた専用の金具に捩じ込まれたり、スタッドボルト等により床面に固定されたりする。
【0003】
また、床面の加工を要しない手摺柱の立設方法として、例えば、特許文献1や特許文献2に記載された方法が既に提案されている。特許文献1には、手摺を設置したい場所(堤体頂部)の側面部に挟装部を配置してネジ部材を締め付けることにより固定される手摺柱が開示され、特許文献2には、C形鋼に固定される手摺柱が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−317027号公報
【特許文献2】実用新案登録第3047370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、床面の加工を要する手摺柱の立設方法では、手摺柱を立設するためだけのために床面を加工しなければならず、また、手摺柱を立設する場所も予め計画しておかなければならず、手摺柱の立設作業に時間と費用を要するという問題があった。特に、船舶の甲板上に手摺柱を立設する場合には、床面に専用金具を埋め込むことが多く、船舶の製造時に専用金具を埋め込む穴を穿設して専用金具を配置する等の施工を要し、手摺柱を所望の位置に短時間で立設することが困難であるという問題があった。加えて、手摺を使用しない場合には床面の加工が無駄になっていた。一方で、船舶の甲板のように、例えば、固縛用の係止金物が配置された床面も存在し、手摺柱を立設するための専用金具を使用した場合には、床面への加工が重複し作業効率が悪いという問題もあった。
【0006】
また、上述した特許文献1や特許文献2に記載された手摺柱は、堤体頂部やC形鋼等の特定の部分又は部材に固定されるものであり、堤体頂部やC形鋼を有しない床面では使用できないという問題があった。
【0007】
本発明は上述した問題点に鑑み創案されたものであり、他の用途に用いられる部材を利用して立設することができ、立設作業に要する時間と費用を低減することができる手摺柱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、他の用途に用いられる複数の係止金物が配置された床面に立設される手摺柱であって、前記係止金物上に配置される台座と、該台座を前記係止金物に固定する連結部材と、前記台座上に配置される柱部材と、を有することを特徴とする手摺柱が提供される。
【0009】
前記台座は、例えば、略平板部材により構成され、前記連結部材を挿通させる開口部を有する。かかる開口部は、例えば、丸孔、長孔又は切欠部のいずれかにより構成される。
【0010】
前記連結部材は、例えば、前記係止金物及び前記開口部に挿通される挿通部材と、該挿通部材の両端部を締め付ける締結部材と、を有する。より具体的には、前記挿通部材をUボルトで構成し、前記締結部材をナットで構成してもよい。
【0011】
前記柱部材は、前記台座と一体に形成されていてもよいし、分離可能に形成されていてもよい。また、前記柱部材は、前記床面と略平行に配置される手摺を支持する支持部材を有することが好ましい。前記柱部材は、前記支持部材の向きを任意に変更できるように構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上述した本発明に係る手摺柱によれば、床面に既設の係止金物に手摺柱を固定できるようにしたことにより、手摺柱の立設作業を簡略化でき、立設作業に要する時間と費用を低減することができる。特に、船舶の甲板やヘリポート等には、床面に載置された荷物や備品を固縛するための係止金物が予め配置されており、この係止金物を利用して手摺柱を立設することにより、専用金具が不要となり、手摺柱を立設するための床面への加工も不要となり、効果的に手摺柱の立設作業に要する時間と費用を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る手摺柱の第一実施形態を示す部分断面図であり、(A)は手摺柱の立設前の状態、(B)は手摺柱の立設後の状態、を示している。
【図2】台座及び係止金物を示す図であり、(A)は係止金物の平面図、(B)は台座の平面図、(C)は図1(A)におけるII矢視図、である。
【図3】床面に手摺を配置した状態を示す平面図である。
【図4】本発明に係る手摺柱の第二実施形態を示す図である。
【図5】本発明に係る手摺柱の他の実施形態を示す図であり、(A)は第三実施形態、(B)は第四実施形態、である。
【図6】本発明に係る手摺柱の第五実施形態を示す図であり、(A)は立設前の部分断面図、(B)は図6(A)におけるB矢視図、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図1〜図6を用いて説明する。ここで、図1は、本発明に係る手摺柱の第一実施形態を示す部分断面図であり、(A)は手摺柱の立設前の状態、(B)は手摺柱の立設後の状態、を示している。また、図2は、台座及び係止金物を示す図であり、(A)は係止金物の平面図、(B)は台座の平面図、(C)は図1(A)におけるII矢視図、である。なお、図2(C)において、係止金物は点線で図示している。
【0015】
図1に示すように、本発明の手摺柱1は、他の用途に用いられる複数の係止金物11が配置された床面12に立設される手摺柱1であって、係止金物11上に配置される台座2と、台座2を係止金物11に固定する連結部材3と、台座2上に配置される柱部材4と、を有する。
【0016】
前記係止金物11は、例えば、船舶の甲板等の床面12に予め配設された部品であり、荷物や備品を固縛する索体を係止する用途に用いられる。かかる係止金物11は、図1(A)及び図2(A)に示すように、例えば、床面12上に窪みを形成する凹部11aと、その外周に形成された円板状のフランジ部11bと、十字形状に形成された係止部11cと、により構成される。かかる係止金物11は、床面12と略面一に形成されている。係止部11cは、I字形状やクローバー形状であってもよい。
【0017】
前記台座2は、係止金物11に固定されるとともに柱部材4を支持する部品である。かかる台座2は、図1(A)及び図2(B)に示すように、略平板部材21により構成され、連結部材3を挿通させる開口部22を有する。台座2の略中央部には、柱部材4の支持台23が配置されている。支持台23は、中心部が繰り抜かれた略円柱状をなしており、繰り抜き部分の内周面に柱部材4を螺合させるネジが切られている。また、略平板部材21はドーナツ形状をなしており、中心部の空隙に支持台23が挿入された状態で溶接され一体化されている。また、開口部22は、支持台23を挟む平行線L1,L2に沿って外周部から形成された4つの切欠部により構成されている。開口部22を平行線L1,L2に沿って形成することにより、連結部材3の挿通や調整を容易に行うことができる。勿論、開口部22は、丸孔や長孔であってもよい。また、台座2は、金属製であってもよいし、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂等の合成樹脂製であってもよい。
【0018】
前記連結部材3は、台座2を係止金物11に固定する部品である。かかる連結部材3は、図1(A)及び図2(C)に示すように、係止金物11及び開口部22に挿通される挿通部材31と、挿通部材31の両端部を締め付ける締結部材32と、を有する。挿通部材31は、台座2の開口部22に挿通可能であるとともに、係止金物11の凹部11aに挿通可能であり、さらに、係止部11cを挿通部材31と台座2の間で挟むことができるように構成される。かかる挿通部材31には、例えば、両端にネジが切られた略U字形状のUボルトを使用することができるが、これに限定されるものではなく、紐やゴム等の可撓性部材を使用してもよい。また、締結部材32は、挿通部材31と台座2の距離を縮めることにより、台座2を係止金物11に押し付けて固定する部品である。かかる締結部材32には、例えば、ナットを使用することができる、これに限定されるものではなく、挿通部材31の種類に応じて適宜選択することができる。
【0019】
前記柱部材4は、略水平に掛け渡される手摺部材(手摺索や手摺棒)を支持する部品である。かかる柱部材4は、図1(A)及び(B)に示すように、床面12に対して略垂直に立設される柱本体部41と、床面12と略平行に配置される手摺部材(図示せず)を支持する支持部42と、を有する。支持部42は、例えば、柱本体部41の頂部や側周部に配置される。支持部42は、リング状であってもよいし、螺旋状であってもよいし、フック状であってもよい。また、柱部材4は、台座2と分離可能に形成されており、柱本体部41の下端に台座2と接続可能な接続部43を有する。接続部43には、台座2の支持台23に螺合可能なネジが切られている。また、柱部材4を台座2に接続する場合には、接続部43と支持台23の間に座金44を挿入することが好ましい。かかる座金44を挿入することにより、柱部材4の向きを固定したまま、座金44を締め付けて柱部材4を台座2に固定することができ、柱部材4の支持部42の向きを任意に調整することがでる。
【0020】
上述した手摺柱1によれば、(1)係止金物11に連結部材3の挿通部材31を挿通する、(2)台座2を挿通部材31が開口部22に挿通されるようにして係止金物11上に配置する、(3)連結部材3の締結部材32を挿通部材31に締め付けて台座2を係止金物11に固定する、(4)座金44を介して柱部材4の接続部43を台座2の支持台23に嵌め込む、(5)座金44を締め付けて柱部材4を台座2に固定する、の工程により、図1(B)に示したように、手摺柱1を床面12に立設することができる。したがって、床面12に既設の係止金物11に手摺柱1を固定することができ、手摺柱1の立設作業を簡略化することができ、立設作業に要する時間と費用を低減することができる。
【0021】
ここで、図3は、床面に手摺を配置した状態を示す平面図である。図3に示すように、床面12には複数の係止金物11が千鳥状又は格子状に配置されている。また、床面12上には荷物13が載置されている。荷物13は、例えば、係止索により係止金物11に固縛される。そして、荷物13を取り囲む係止金物11に手摺柱1を立設し、各手摺柱1に手摺部材14を掛け渡すことにより、荷物13の外周に手摺を配置することができる。手摺柱1を立設する係止金物11は、荷物13を囲む領域を形成することができる範囲において任意に選択され、例えば、荷物13を囲むとともに手摺部材14により形成される領域の面積が最小となるように選択することができる。また、手摺柱1は、床面12上に通路15や柵等を形成するために立設することもできる。
【0022】
次に、本発明に係る手摺柱1の他の実施形態について説明する。ここで、図4は、本発明に係る手摺柱の第二実施形態を示す図である。また、図5は、本発明に係る手摺柱の他の実施形態を示す図であり、(A)は第三実施形態、(B)は第四実施形態、である。また、図6は、本発明に係る手摺柱の第五実施形態を示す図であり、(A)は立設前の部分断面図、(B)は図6(A)におけるB矢視図、を示している。なお、各図において、図1及び図2に示した第一実施形態の手摺柱1と同じ構成部品については、同じ符号を付し重複した説明を省略する。
【0023】
図4に示した第二実施形態の手摺柱1は、台座2と柱部材4を一体に形成したものである。具体的には、ドーナツ形状の略平板部材21により構成された台座2の中心部の空隙に柱部材4を構成する柱本体部41の下端が挿入された状態で溶接され、台座2と柱部材4とが一体化される。また、手摺柱1に掛け渡される手摺部材を支持する支持部42は、個別に向きを調整できるように配置される。例えば、手摺柱1の頂部に配置される支持部42は、手摺柱1の頂部に形成されたネジ穴に螺合できるように構成されており、支持部42を水平方向に回転できるように配置している。また、手摺柱1の側周部に配置される支持部42は、手摺柱1に嵌挿されるスライダ部42aと、スライダ部42aを柱本体部41に固定する固定具42bと、を有する。固定具42bは、柱本体部41に当接して支持部42を保持するものであってもよいし、柱本体部41に形成された窪みや孔に挿入されるピンやボルト等によって構成されるものであってもよい。かかる構成の支持部42によれば、支持部42を水平方向に回転できるだけでなく、柱本体部41に沿って上下方向にも移動させることができる。
【0024】
図5(A)及び(B)に示した実施形態は、台座2と柱部材4の接続方法が第一実施形態とは異なる。図5(A)に示した第三実施形態の手摺柱1は、台座2の支持台23に形成されたキー溝23aに柱部材4の接続部43に形成されたキー43aを差し込むことによって、柱部材4を台座2に接続するようにしたものである。かかるキー結合は、キー溝23aにキー43aを差し込んだ後、キー43aをキー溝23aに沿って回動させてロックさせるように構成することが好ましい。なお、支持台23にキーを形成し、接続部43にキー溝を形成するようにしてもよい。
【0025】
図5(B)に示した第四実施形態の手摺柱1は、台座2の支持台23に柱部材4の接続部43を挿入することによって、柱部材4を台座2に接続するようにしたものである。接続部43を支持台23に挿入する長さは、柱部材4が傾倒しない長さに設定される。また、接続部43を支持台23に挿入した後、ピンやボルトにより接続部43を支持台23に固定するようにしてもよい。
【0026】
図6(A)及び(B)に示した第五実施形態の手摺柱1は、係止金物11の形状が第一実施形態とは異なる。第五実施形態に示した係止金物11は、床面12上に突出した半環状をなしている。かかる形状の係止金物11に台座2を固定する場合には、例えば、台座2が係止金物11を覆うことができるように、略平板部材21に中空部24を形成すればよい。また、図6(B)に示すように、係止金物11に2本の連結部材3を配置できない場合には、1本の連結部材3により台座2と係止金物11を固定するようにしてもよい。なお、第五実施形態では、台座2の開口部22は長孔に形成されている。
【0027】
本発明は上述した実施形態に限定されず、船舶の甲板以外にも、道路、階段、建物のベランダや屋上、工場や工事現場の敷地内、駐車場、展示物や陳列物の周囲等、他の用途に用いられる係止金物11が配置された床面12であれば、どこでも使用することができる等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0028】
1…手摺柱
2…台座
3…連結部材
4…柱部材
11…係止金物
11a…凹部
11b…フランジ部
11c…係止部
12…床面
13…荷物
14…手摺部材
15…通路
21…略平板部材
22…開口部
23…支持台
23a…キー溝
24…中空部
31…挿通部材
32…締結部材
41…柱本体部
42…支持部
42a…スライダ部
42b…固定具
43…接続部
43a…キー
44…座金


【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の用途に用いられる複数の係止金物が配置された床面に立設される手摺柱であって、
前記係止金物上に配置される台座と、該台座を前記係止金物に固定する連結部材と、前記台座上に配置される柱部材と、を有することを特徴とする手摺柱。
【請求項2】
前記台座は、略平板部材により構成され、前記連結部材を挿通させる開口部を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の手摺柱。
【請求項3】
前記開口部は、丸孔、長孔又は切欠部のいずれかである、ことを特徴とする請求項2に記載の手摺柱。
【請求項4】
前記連結部材は、前記係止金物及び前記開口部に挿通される挿通部材と、該挿通部材の両端部を締め付ける締結部材と、を有することを特徴とする請求項1に記載の手摺柱。
【請求項5】
前記挿通部材はUボルトであり、前記締結部材はナットである、ことを特徴とする請求項4に記載の手摺柱。
【請求項6】
前記柱部材は、前記台座と一体又は分離可能に形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の手摺柱。
【請求項7】
前記柱部材は、前記床面と略平行に配置される手摺部材を支持する支持部を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の手摺柱。
【請求項8】
前記柱部材は、前記支持部の向きを調整できるように構成されている、ことを特徴とする請求項7に記載の手摺柱。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−196296(P2010−196296A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40254(P2009−40254)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(502422351)株式会社アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド (159)