説明

手洗器

【課題】排水口3をむやみに閉塞することを防止して、手洗器Aへの貯水を簡単にはできなくする技術を提供すること。
【解決手段】手洗器Aは、水道管5の先端に取り付けられる蛇口22と、蛇口22から吐き出される水道水を受けると共に、受けた水道水を配水管77に通じる排水口33から排出する手洗器本体11と、排水口33を覆い、手洗器本体11との間に隙間sを空けた状態で、手洗器本体11に取り付けられる覆体4とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手洗器に関する。
【背景技術】
【0002】
公園その他公衆の場における水飲み場には、洗面ボールその他の手洗器を設置してある。
【0003】
手洗器は、公衆の場の利用者であれば、誰でも利用できるが、利用者の中には、一時的であっても、手洗器を占有的に利用する者がいる。
【0004】
そのような者は、手洗器の栓を閉じて貯水をし、貯水した水を、例えばペットの水浴びに利用したり、浴用に利用したりする。
【0005】
しかし、このように一部の者だけの便宜を図るために公衆の設備が設けられているわけではない。
【0006】
そこで、このような不心得者の利用を排除するための対策として、例えば、手洗器の排水口を閉塞する栓の除去が考えられる。また、ポップアップ式の栓を用いた手洗器であれば、栓による排水口の開閉用操作レバーを栓のできない箇所で固定して、排水口を常に開いた状態とし、手洗器に貯水できないようにすることが考えられる。
【特許文献1】特開昭48−12168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、栓を取り払っても、取り払った栓と同じ市販の栓を購入してこれを適用すれば、これまでと同様、不謹慎な利用は可能である。また、操作レバーを固定しても、無理やりに固定を解除すれば、やはり不心得者による利用は再開されてしまう。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みて発明されたものであって、その解決しようとする課題は、排水口をむやみに閉塞することを防止し、手洗器への貯水を簡単にできなくする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明の手洗器は、次の手段を採用する。
すなわち、本発明の手洗器は、水を受ける水受け凹部及びこの水受け凹部に臨む排水口を有する手洗器本体と、前記排水口を覆い、前記水受け凹部との間に隙間を空けた状態で、手洗器本体に取り付けられる覆体とを有することを特徴とする。
【0010】
隙間は、針金,薄い金属板,ティシュなどを入れられない適度に、小さいことが望ましい。
【0011】
本発明によれば、覆体が手洗器本体との間に隙間を空けた状態で取り付けられているので、例えば蛇口から水道水を出した場合、水道水は、この隙間を介して前記排水口に流れる。
【0012】
また、排水口が覆体によって覆われるので、覆体を除去しない限り、排水口を閉塞することはできない。この結果、蛇口から出た水道水は排水口から排水される。
【0013】
覆体は、覆鉢形状をしているので、蛇口からの出水がはじかれることなく、覆体の表面に沿って緩やかに流下する。したがって、本発明の手洗器を使用している人の衣服に、蛇口からの水道水が飛び跳ねて、衣服に浸みてしまうことを抑制できる。
【0014】
さらに、覆体は、その頂部に頂部形成凹部を有し、この頂部形成凹部には、前記覆体を手洗器本体に対して回転可能に取り付けるための取付治具が取り付けられている。
【0015】
また、前記覆体の裏面には、覆体と前記水受け凹部との間の空間に位置し、前記水受け凹部に当接しつつ覆体の回転に応じて回転するスクレーパを有するようにすることも可能である。
【0016】
このようにすれば、スクレーパが水受け凹部に当接しつつ回転するので、水受け凹部の表面にたとえ水あかなどの汚物が付着していても、当該汚物は、スクレーパと当接する範囲において、スクレーパによって除去される。
【0017】
また、覆体の裏面と手洗器本体の表面との間に泥や砂などの異物が詰まっても、覆体を回転すれば、スクレーパによって泥や砂などの汚物が撹拌され、その結果、固まっている汚物を細分化することができる。
【0018】
よって、細かくなった汚物を、排水口から流すことができる。なお、汚物を排水管に流すと排水管が汚物で詰まってしまうので、排水口の下流近傍には、ゴミ取り用のスクレーパを設置しておくことが好ましい。
【0019】
また、凹部を人の掌や拳よりも小さく形成しておけば、心ない者によって取付治具が取り去られてしまうこともない。なお、取り付け治具は、専用の用具に因らなければ、取り外しが出来ないようにすることも考えられる。
【0020】
さらに、覆体に覆体を回転させるための把手を取り付けておけば、覆体を回転し易くなる。よって、使い勝手がよくなる。
【0021】
加えて、本発明の手洗器では、覆体の表面に多数の小穴を形成することもできる。このようにすれば、覆体の表面に形成されている小穴経由で、水道水が覆体内部に入る。そして、滴り落ちるようにして、水道水は排水口に向かうようになる。したがって、覆体の表面に落下した水道水の飛散を一層効果的に防止できる。
【0022】
また、実質的には手洗器に水道水などの水を強制的に貯留できないようにしているが、外見上、覆体によって排水口が覆われて見えない。このため、排水口に何か手段が講じられ、それにより貯水が強制的に止められているという感じがしない。したがって、通常の使用者にも、また不心得ものにも威圧感を与えることがない。そして覆体と手洗器との形状に丸みを持たせることで、優しいソフトな感じを与えることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、排水口が覆体によって覆われるので、不心得者により排水口が勝手に閉塞されることはない。この結果、手洗器への貯水を容易に実施できなくなる。したがって、公共の場に設置された手洗器が、不心得者により占有されてしまうことを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、この発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態)を実施例に基づいて例
示的に説明する。ただし、本実施例に記載されている構成部品の材質、形状その相対配置などは、特に特定的に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらに限定する趣旨ではない。
【実施例1】
【0025】
図1〜4を参照して、本発明の手洗器の実施例1を説明する。
図1及び2に示すように、本発明の手洗器Aは、手洗器本体1と、手洗器本体1の上面の適所に設置された蛇口2と、手洗器本体1の水受け面11の底部に位置する排水口3と、排水口3を覆う覆体4とを有する。
【0026】
手洗器本体1は陶器でできており、図3の平面図に示すように、円形と矩形角形とを組み合わせ、前方が円形で後方が矩形をしたごとき形状をしている。円形部分と四角形部分とをそれぞれ符合1C及び1Sで示す。四角形部分1Sの一隅部に蛇口2が取り付けられている。蛇口2は、図示しない水道管5の先端と接続される。
【0027】
蛇口2から吐き出される水道水は、手洗器本体1の円形部分1Cに吐出される。吐出された水道水は排水口3を経由して排水管7に流れる(図4参照)。
【0028】
手洗器本体は、公共の場所における設置建物、例えばトイレに設置される。
【0029】
手洗器Aは、その使用にあたり、円形部分1Cの側が手前側であり、四角形部分1Sの側が、公共の設置建物の壁面側に位置する向こう側である。
【0030】
そして、円形部分1Cの中央部は、図4の垂直断面図からわかるように、お椀型(料理などに使うボールのごとき形状)をしている。またその底部中央には、排水管7と接続される既述の排水口3が位置する。円形部分1Cは、水を受ける水受け凹部として機能する。
【0031】
排水口3の直下には、排水口3から流れてくる手洗器Aに貯まったゴミ,泥,砂などの汚物が排水管7の下流に流出しないようにするためのストレーナ8を収容するストレーナ収容管81が設置されている。
【0032】
ストレーナ8は、螺子手段91によってストレーナ収容管81に固定される。
【0033】
ストレーナ収容管81は、収容部本体811と、収容部本体811に対しストレーナ8を出し入れするための開口811aを閉塞する天井蓋812とを有する。
【0034】
ストレーナ収容管81を介在して、排水口3と排水管7とが、連結されている。ストレーナ収容管81は、手洗器本体1に対し、螺合手段9によって一体化されている。排水口3はストレーナ収容管81の真上に位置し、排水管7はストレーナ収容管81の下方部分に位置する。
【0035】
ストレーナ収容管81は、本実施形体では、円筒形状をしたものを例示する。また、ストレーナ収容管81に収容されるストレーナ8は、本実施形体では直方体形状をしたものを例示する。しかし、ストレーナ収容管81の形体に合わせて円筒形をしたものであってもよい。
【0036】
そして、排水口3の真上に覆体4が位置する。
覆体4は、覆鉢形状をしており、手洗器本体1との間、詳しくは、覆体4を取り付けたときの覆体4の下縁となる部分41と、手洗器本体1の水受け面11との間に隙間sを空
けた状態で取り付けられる(図4参照)。
【0037】
隙間sは、針金,薄い金属板,ティシュなどを入れられない程度に小さな隙間である。
【0038】
さらに覆体4は、その頂部に頂部形成凹部42を有する。頂部形成凹部42は、覆体4を、手洗器本体1に対して回転可能に取り付けるための取付治具10が、設置される箇所である。頂部形成凹部42の中央には、この取付治具10を通す通し穴421が形成されている。
【0039】
取付治具10は、ストレーナ収容管81の天井蓋812に植設されたボルト101と、ボルト101を天井蓋812に固着するため前記天井蓋812に溶着されているナット102とを含む。
【0040】
ボルト101のボルト頭101aを上にして、覆体4の頂部形成凹部42に形成されている通し穴421にボルト101を通す。通し穴421は、ボルト101の軸部101bよりも大きい。しかし、ボルト頭101aよりも小さい。
【0041】
そして、ストレーナ収容管81の天井蓋812に固着されたナット102にボルト101を螺合することで、既述のように、ボルト101は、天井蓋812に植設される。ボルト101の操作は、専用の用具103に因らなければ、取り外し出来ないようになっている。ボルト101を回転中心として、覆体4は回転可能である。
【0042】
覆体4の通し穴421は、ボルト頭101aよりも小さいため、ボルト101を取り外さない限り、覆体4を手洗器本体1から外すことはできない。
【0043】
また覆体4の裏面43には、ボルト101を中心に外側へ延びる一対のスクレーパ44を有する。スクレーパ44は、覆体4と手洗器本体1との間の空間Sに位置し、覆体4を回転することで空間Sを撹拌するためのものである。
【0044】
スクレーパ44は、図3及び4からわかるように、水受け面11の側が緩やかに湾曲した板形状をしている。いずれのスクレーパ44も同一面が回転方向に向けられるようにして取り付けられている。またスクレーパ44は、覆体4を手洗器本体1に取り付けた状態において、手洗器本体1の水受け面11に一部が当接する(図4参照)。
【0045】
その接触の程度は、当該当接によって、水受け面11とスクレーパ44との間の接触摩擦によって、覆体4の回転が妨げられない程度に調整されたわずかなものである。
【0046】
さらに覆体4の上面における周縁近傍には、覆体4を回転させるための把手46を有する。
【0047】
次にこのような手洗器Aの作用効果を述べる。
手洗器Aによれば、覆体4が手洗器本体1との間に隙間sを空けた状態で取り付けられているので、蛇口2から出た水道水は、この隙間sを介して排水口3に流れる。
【0048】
また、排水口3が覆体4によって覆われるので、覆体4を除去しない限り、排水口3を閉塞することはできない。この結果、水道水は排水口3から確実に排水される。
【0049】
覆体4は、覆鉢形状をしているので、蛇口2からの出水は、弾かれることなく、覆体4の表面に沿って緩やかに流下する。したがって、手洗器Aを使用している人の衣服に蛇口2からの水道水が飛び跳ねて、衣服に浸みてしまうことを抑制できる。
【0050】
さらにスクレーパ44が、水受け凹部である円形部分1Cに当接しつつ回転するので、円形部分1Cの水受け面11がスクレーパ44と当接する範囲において、水受け面11についている水あかなどをスクレーパ44によって除去できる。なおスクレーパ44が、水受け面11の曲率に沿って湾曲する割合を高めることで一層効果的に水あかを除去することができるのは勿論である。
【0051】
さらに、覆体4を把手46を指で摘んで回転すると、スクレーパ44によって覆体4と手洗器本体1との間の空間Sが撹拌されるので、当該空間Sに泥や砂などの異物が詰まってしまっても、固まっている異物を細分化できる。
【0052】
細かくなった汚物は排水口3から流すことができる。ただし、そのまま異物を配水管7に流すと配水管7は詰まってしまうが、排水口3の下流近傍にあるストレーナ8によって、ゴミ等の汚物は収集されるので、心配はない。
【0053】
また、頂部形成凹部42は人の掌や拳よりも小さく、頂部形成凹部42には手が入らないため、心ない者によって取付治具10が取り去られ、その結果、覆体4も取り払われてしまうこともない。
【0054】
このように手洗器Aによれば、排水口3が覆体4によって覆われるので、不心得者により排水口3が勝手に閉塞されることがない。この結果、手洗器Aへの貯水を容易に実施できなくなる。したがって、公共の場に設置された手洗器Aが、不心得者により占有されてしまうことを抑制できる。
【0055】
また、実質的には手洗器Aに水道水を強制的に貯留できないようにしているが、外見上、覆体4によって排水口3が覆われて見えない。このため、排水口3に何か手段が講じられることにより、貯水が強制的に止められている感じがしない。このため、貯留が防止されていても、通常の使用者にも、また不心得ものに対しても威圧感を与えることがない。覆体4と手洗器Aとの丸み形状によって、むしろ優しいソフトな感じを与えることができる。
【実施例2】
【0056】
図5を参照して、本発明の手洗器Aの実施例2を説明する。
実施例2が実施例1と相違する点は、覆体4の表面に多数の小穴110が形成されていることだけである。その他の点は実施例1と同じである。よって、実施例1と同一箇所には、同一符号を付して説明を省略する。
【0057】
小穴110を覆体4に形成することで、覆体4の表面に形成されている小穴経由で水道水が覆体4内部に入る。そして、水道水は、小穴110から滴り落ちるようにして、排水口3に向かうようになる。したがって、覆体4の表面に落下した水道水の飛散を一層効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る手洗器の実施例1の全体斜視図である。
【図2】図1の分解断面図である。
【図3】図1の平面図である。
【図4】図2の組み立て断面図である。
【図5】本発明に係る手洗器の実施例2の全体斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
A 手洗器
1 手洗器本体
1C 円形部分
1S 四角形部分
2 蛇口
3 排水口
4 覆体
5 水道管
7 配水管
8 ストレーナ
9 螺合手段
10 取付治具
11 水受け面
41 下縁となる部分
42 頂部形成凹部
43 裏面
44 スクレーパ
46 把手
81 ストレーナ収容管
91 螺子手段
101 ボルト
101a ボルト頭
101b 軸部
102 ナット
103 用具
110 小穴
421 通し穴
811 収容部本体
811a 開口
812 天井蓋
S 空間
s 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を受ける水受け凹部及びこの水受け凹部に臨む排水口を有する手洗器本体と、
前記排水口を覆い、前記水受け凹部との間に隙間を空けた状態で、手洗器本体に取り付けられる覆体とを有することを特徴とする手洗器。
【請求項2】
前記覆体は、覆鉢形状をしており、この覆鉢を前記手洗器本体に取り付けたときの下縁と前記手洗器本体の水受け面との間に前記隙間が形成され、この隙間を経由して、前記水が前記排水口に流れることを特徴とする請求項1に記載の手洗器。
【請求項3】
前記覆体は、その頂部に頂部形成凹部を有し、
この頂部形成凹部には、前記覆体を前記水受け凹部に対して回転可能に取り付けるための取付治具が設けられ、前記覆体の裏面には、覆体と前記水受け凹部との間の空間に位置し、前記水受け凹部に当接しつつ覆体の回転に応じて回転するスクレーパを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の手洗器。
【請求項4】
前記覆体には、覆体を回転させるための把手を有することを特徴とする請求項3に記載の手洗器。
【請求項5】
前記覆体は、その表面に多数の小穴が形成され、この小穴を経由して、前記水が、前記排水口に流れることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の手洗器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−7884(P2009−7884A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172017(P2007−172017)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000155333)株式会社木村技研 (29)
【Fターム(参考)】