説明

手織り機

【課題】 折り畳み可能であると共に、コンパクトで運搬可能な手織り機を具現化させることを課題とする。
【解決の手段】 ロクロ位置、織布巻き取り部側板51と経糸巻き付け部保持側板50の開閉構造、前脚53と後脚54の回転可能構造により、運搬可能な収納高さを60cm以下、収納奥行きを40cm以下の折りたたみ収納サイズを可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手織り機に関する。
【背景技術】
【0002】
手織り教室に通い手織りを受講する時、受講後自宅にて受講の続きを行ないたい場合は、運搬可能な簡易手織り機である卓上手織り機を用いるコースを選択するか、脱着型の綜絖及び巻き取り部を有する手織り機を手織り教室と自宅に保有し、脱着型の綜絖及び巻き取り部を持ち運ぶ方法しかなく、手織り教室に手織り機を持ち運び受講できる本格的な足踏みタイプの手織り機は存在していなかった。
【0003】
この持ち運び受講できる本格的な足踏みタイプの手織り機は存在していなかった原因は従来の手織り機の収納のための構造が、手織り機を上下に分離した方式あるいは、手織り機をX型にし折りたたむ方式しか存在しておらず、収納後の高さと奥行きの両方をコンパクトにする方法が存在していなかったためである。
【0004】
また、従来の綜絖に連結された足踏み板を操作することにより経糸を開口させる機構の2枚の綜絖枠を有する手織り機にあっては、綜絖枠の可動範囲より高い位置にロクロが設けられており、背丈の高い手織り機となっていた。
【0005】
また、先行例には、手織り機の上部と下部が着脱自在となる手織り機が開示されおり(例えば、特許文献1参照)、他の先行例には、前後に並置された前脚及び後脚の交点を支軸により結合してなる脚体を備え、上記交点の支軸を支点とした上記前脚及び後脚の開閉作動に伴って、上記綜絖部と筬部の配設距離が伸縮されるようにしたことを特徴とする手織り機が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9- 256243号公報
【特許文献2】特開平6- 287836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、手織り愛好者が、卓上手織り機のような経糸密度の低いレベルの製法に対し、より高いレベルの製法を習得できる機会を可能にする運搬可能な手織り機を具現化させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る手織り機では、前記経糸巻き付け部10を保持する1組の経糸巻き付け部保持側板50と、前記織布巻き取り部11を保持して前記経糸巻き付け部保持側板50に交差する1組の織布巻き取り部側板51とを有し、それらの交点となる上部接点部52を中心として2組の側板50,51が開閉可能になる構造を有し、経糸巻き付け部保持側板50又は織布巻き取り部側板51に、回転の中心点を持つ前脚53又は後脚54が回転可能に連結され、収納時には、経糸巻き付け部10と織布巻き取り部11が接近することが可能で、製織時床面に接している前脚53及び後脚54の端部が経糸巻き付け部保持側板50又は織布巻き取り部側板51の前脚回転支点55と後脚回転支点56を中心として回転することにより経糸巻き付け部10と織布巻き取り部11に接近するようになっている、という構成を採用することが可能である。
【0008】
この発明によれば、折りたたんで持ち運びが可能なコンパクトな足踏みタイプの手織り機を実現することができ、本格的な織物を手織り教室で学ぶとともに、織物教室での続きを同じ手織り機を使用し、自宅で行うことが可能な手織り機を提供することができる。
【0009】
本発明に係る手織り機では、2枚の綜絖枠12,13の下部相互間を連結する連結部材43の中間部を2枚の綜絖枠12,13の相互間に配置されたロクロ40に巻き掛けることによって、それら2枚の綜絖枠12,13が引き違い式に交互に上下動して経糸60を開口させるように構成されていると共に、それぞれの綜絖枠12,13を2枚の足踏み板41,41に個別に連結してある、という構成を採用することが可能である。
【0010】
この発明によれば、綜絖枠の上部に手織り機の構造物を構成する必要性がなくなり、手織り機自体の高さを低く抑えることが可能になる。
【0011】
本発明に係る手織り機では、収納時に手織り機を分離せずに収納高さ62を60cm以下、収納奥行き63を40cm以下に折りたためる、という構成を採用することが可能である。
【0012】
この発明によれば、手織り機を分離せず、収納高さ62を60cm以下、収納奥行き63を40cm以下に折り収納することにより、運搬を可能となる足踏みタイプの手織り機を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、手織り機を分離せず、手織り機をコンパクトに折りたたみ収納することができ、手織り機を運搬を可能となる足踏みタイプの手織り機を実現することができる。また、本格的な織物を手織り教室で学ぶとともに、織物教室での続きを同じ手織り機を使用し、自宅で行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に示す実施の形態により、本発明を詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明における手織り機の製織時の状態を図示するものであり、綜絖枠12,13に連結された足踏み板41を操作することにより経糸60を開口させる機構を示している。経糸60を巻回することの出来る経糸巻き付け部10を保持する1組の経糸巻き付け部保持側板50と、この経糸巻き付け部10と平行に配置され織布を巻き取ることのできる織布巻き取り部11を保持する1組の織布巻き取り部側板51とを有し、この経糸巻き付け部保持側板50と織布巻き取り部側板51とが交差し、この交点となる上部接点部52を中心として、2組の側板50,51が開閉可能になる構造を有し、経糸巻き付け部保持側板50の上部接点部52を境として経糸巻き付け部10と反対の端部に、回転の中心点である前脚回転支点55を持つ回転可能な前脚53を有し、織布巻き取り部側板51の上部接点部52を境として織布巻き取り部11と反対の端部に、回転の中心点である後脚回転支点56を持つ回転可能な後脚54を有した構造になっている。
【0016】
また、綜絖ガイド側板45は、織布巻き取り部側板51端部の後脚回転支点56にて、織布巻き取り部側板51と後脚54と同じ連結材を介し繋がっており、製織時は各固定ネジ57により、経糸巻き付け部保持側板50、織布巻き取り部側板51、前脚53、後脚54、綜絖ガイド側板45を固定して使用する構造になっている。
【0017】
なお、本発明の手織り機においては、経糸巻き付け部保持側板50、織布巻き取り部側板51、前脚53、後脚54、綜絖ガイド側板45の固定にネジを用いず、凹凸のはめ込み方式、鈎状の部材による連結、ピンによるロック等の方法を用てもよい。
【0018】
図2は、本発明における製織時の手織り機の折りたたみ収納時の状態を図示するものであり、収納時、経糸巻き付け部10と織布巻き取り部11が接近することが可能で、製織時床面に接している前脚53、後脚54の端部が、経糸巻き付け部保持側板50端部の前脚回転支点55、織布巻き取り部側板51端部の後脚回転支点56を中心として回転し、経糸巻き付け部10と織布巻き取り部11に接近する折りたたみ機構になっており、手織り機を分離せず、収納高さ62を60cm以下、収納奥行き63を40cm以下に折りたたむことが可能である。
【0019】
なお、折りたたみ収納時、製織中の織布ならびに経糸を取り付けたまま折りたため、折りたたんだ状態から再度図1の状態に戻すことが可能である。
【0020】
図3は、本発明における手織り機の他の要部を図示するものである。同図のように、交互に上下動する2枚の綜絖枠12,13に紐44を介して個別に連結された2枚の足踏み板41を有していて、2枚の足踏み板41を操作することにより経糸60を開口させることができるようになっている。すなわち、綜絖枠12,13が上下方向にスライド可能なガイド部42を有し、2枚の綜絖枠12,13の間にロクロ40が配置され、このロクロ40の高さ位置が経糸60の下口開口47や上口開口46の高さ位置より低くなっていて、高分子素材の連結部材43がこのロクロ40を介して2枚の綜絖下部に連結された構造となっている。なお、45は綜絖ガイド側板、61は緯糸を示している。
【0021】
このロクロの位置により、上口開口46の綜絖枠13の上部に手織り機の構造物を配置する必要性がなくなって手織り機の高さを低くおさえることが可能である。
【0022】
図4は、本発明における手織り機の製織時状態の他の実施形態を図示するものであり、図1において、経糸巻き付け部保持側板50の上部接点部52を境として経糸巻き付け部10と反対の端部に、回転の中心点である前脚回転支点55を持つ回転可能な前脚53を有し、織布巻き取り部側板51の上部接点部52を境として織布巻き取り部11と反対の端部に、回転の中心点である後脚回転支点56を持つ回転可能な後脚54を有した構造を示したが、本発明の手織り機は、経糸巻き付け部保持側板50に回転の中心点である後脚回転支点56を持つ回転可能な後脚54と、織布巻き取り部側板51に回転の中心点である前脚回転支点55を持つ回転可能な前脚53を有した構造であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る手織り機の製織時の斜視図である。
【図2】本発明に係る手織り機の要部側面図である。
【図3】本発明に係る手織り機の要部側面図である。
【図4】本発明に係る手織り機の製織時の他の実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
10:経糸巻き付け部
11:織布巻取り部
12:綜絖枠
13:綜絖枠
40:ロクロ
41:足踏み板
42:ガイド部
43:連結部材
44:紐
45:綜絖ガイド側板
46:上口開口
47:下口開口
50:経糸巻き付け部保持側板
51:織布巻き取り部側板
52:上部接点部
53:前脚
54:後脚
55:前脚回転支点
56:後脚回転支点
57:固定ネジ
60:経糸
61:緯糸
62:収納高さ
63:収納奥行き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸巻き付け部(10)を保持する1組の経糸巻き付け部保持側板(50)と、織布巻き取り部(11)を保持して前記経糸巻き付け部保持側板(50)に交差する1組の織布巻き取り部側板(51)とを有し、それらの交点となる上部接点部(52)を中心として2組の前記側板である経糸巻き付け部保持側板(50)及び織布巻き取り部側板(51)が開閉可能になる構造を有し、
経糸巻き付け部保持側板(50)又は織布巻き取り部側板(51)に、回転の中心点を持つ前脚(53)又は後脚(54)が回転可能に連結され、
収納時には、経糸巻き付け部(10)と織布巻き取り部(11)が接近することが可能で、製織時床面に接している前脚(53)及び後脚(54)の端部が経糸巻き付け部保持側板(50)又は織布巻き取り部側板(51)の前脚回転支点(55)と後脚回転支点(56)を中心として回転することにより経糸巻き付け部(10)と織布巻き取り部(11)に接近するようになっていることを特徴とする手織り機。
【請求項2】
2枚の綜絖枠(12,13)の下部相互間を連結する連結部材(43)の中間部を2枚の綜絖枠(12,13)の相互間に配置されたロクロ(40)に巻き掛けることによって、それら2枚の綜絖枠(12,13)が引き違い式に交互に上下動して経糸(60)を開口させるように構成されていると共に、それぞれの綜絖枠(12,13)を2枚の足踏み板(41,41)に個別に連結してある請求項1に記載した手織り機。
【請求項3】
収納時に手織り機を分離せずに収納高さ(62)を60cm以下、収納奥行き(63)経糸巻き付け部(10)又は織布巻き取り部(11)の回転軸と同心の歯車を40cm以下に折りたためることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した手織り機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−265800(P2006−265800A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−89985(P2005−89985)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(501348531)ワールドリビング株式会社 (5)
【Fターム(参考)】