説明

手芸用簡易穿孔具

【課題】
皮革や厚手の布にポンチを用いて所要の孔を穿孔するとき、ポンチをハンマーで叩くときに発生する騒音が大きかった。また、ポンチを押し込んだ後で引き抜く際に、摩擦により布や皮革がポンチとともに連れ上がり作業性を損なう問題があった。
【解決手段】
基端を枢軸によって基台に支持された操作レバーに、前記基台に面してポンチを取付け、操作レバーの上下動によって被加工皮へ穿孔できるようにするとともに、前記操作レバーにポンチの先端近傍へ伸びる押圧部材を取り付け、その押圧部材によって被加工皮を押圧した状態で被加工皮からポンチを引き抜き可能とした穿孔具である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手芸用として好適な簡易穿孔具に関するもので、とくに、皮革の穿孔に好適な穿孔具に関する。
【背景技術】
【0002】
手芸では、たとえば、比較的厚い織布や薄い皮革を結合するのに、それらの縁に丸形あるいは菱形の孔を開け、その孔に紐を通して結ぶことがある。その紐を通す孔を穿孔するのに、従来は穿孔したい孔と同形のポンチ、彫刻刀などを用い、ハンマーで打撃を加えて穿孔していたが、激しい打撃音を生じるので夜間に作業をすると、家族その他、周囲に迷惑を及ぼす不具合があった。
【0003】
このような不具合を解消するため、動力を用いる方法(特許文献1参照)も知られているが、装置が高価で手芸用には適さない。そこで発明者は、図5で示すように、テコを用いて打撃によることなく大きな穿孔力の得られる簡単な道具を作る着想を得た。なお、図5中の符号は本発明の実施例と類似した機能を有する部品については、説明に用いたと同様の符号を付してある。
【0004】
しかしながら、テコの作用は一方向にしか力を及ぼさないため、ポンチを皮革へ押し込むことは容易であっても、一旦、押し込んだポンチを引き抜くときポンチと皮革との摩擦のため皮革がポンチとともに持ち上がってしまい、それを分離する工程を要したので、作業の効率を著しく低下させるという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平11−42595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、テコを用いて人力で皮革や厚手の繊維からなる被加工皮に孔を開ける際、穿孔に用いたポンチを材料から抜脱させる作業を容易にすることのできる、構造が簡単で製造の容易な手段を備えた穿孔具が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、細長く作られた基台の一端に被加工皮の支持部と他端にヒンジピンとを設け、そのヒンジピンに基台に沿って上方へ伸びる操作レバーを回動可能に取付け、その操作レバーの下面に前記支持部方向へ伸びる穿孔用の工具を取り付けるとともに、前記操作レバーの遊端を筒状となし、その内部へ一端に把時部を備えた操作ハンドルの他端を挿入して所定の範囲内で回動可能に枢支し、その操作ハンドルの内端部に位置して前記操作レバーの下面に通し孔を設け、下方から押圧部材の上部を回動可能に挿通して支持し、その押圧部材の下端部をばね材によって前記穿孔具の近傍に保持したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る手芸用簡易穿孔具は、テコの原理を用いて穿孔具たるポンチを昇降させることにより、被加工皮を穿孔するものであるから、穿孔に際して打撃音を発生させることがなく、さらに、装置も小型で場所をとらず、装置の移動も容易である。
【0009】
また、穿孔操作の後でパンチを被加工皮から抜き取る操作を行う際に、パンチの退去に先立って押圧部材がパンチの近傍の被加工皮を支持台上へ押し付けるので、パンチが抜き取られるとき被加工皮がもち上がる不具合がないので、穿孔操作を容易にすることができる。
【0010】
さらに、操作ハンドルが、筒状に作られた操作レバーの端部へ挿入した状態で枢支されているので、外観が優れている上に、操作ハンドルを前記操作レバーを回動させる動作と、押圧部材を被加工皮へ向けて進退させる動作とに共用されるので、穿孔操作と退去操作との二つの操作を行うのに持ち替える必要がなく操作が容易であるなどの効果がある。
【実施例1】
【0011】
以下、図示の実施例を説明する。図中、10は手芸用簡易穿孔具であり、手芸用簡易穿孔具10は角形鋼管によって構成された基台12を有する。基台12には一端に被加工皮Wの支持部12aが設けられ、他端には2個のブラケット12b、12bが溶着されている。そのブラケット12b、12bにはヒンジピン14が取り付けられており、操作レバー15が回動可能に枢支されている。
【0012】
操作レバー15は鋼製の2個の角形鋼管を溶接して作られており、前記ヒンジピン14から上方へ伸びる鉛直部15aと、その鉛直部の上端近傍から操作者側へ伸びる水平部15bとによって略L形をなしており、前記水平部15bの下面に穿孔用の工具たるポンチTが取り付けられている。
【0013】
すなわち、ポンチTは水平部15bの下面に下方を向けて溶着された角形鋼管15cへ、下方から挿入した後、その角形鋼管15cの角部の一つに螺合させた蝶ボルト22によって、対角の内面へ押し付けて着脱可能に固定する構成となっているが、この構成自体には新しさはなく、慣用されたものである。
【0014】
操作レバー15の操作者側となる水平部15bの開口端には、断面が角形をした鋼材からなる捧状の操作ハンドル17の一端が挿入され、水平方向の枢軸16によって支持されて上下方向に回動可能となっている。また、下側内壁には通し孔15dが設けられ、下方から吊下げロッド22の上部が下方から挿入され、吊ピン19によって回動可能に支持されている。よって、吊下げロッド22の昇降範囲は操作ハンドル17の水平部15bへ挿入された先端部が、水平部15bの上側内壁、あるいは下側内壁に当接しない僅かな範囲、すなわち、被加工皮Wの厚さよりやや大きめの2〜4mmの範囲に限られる。
【0015】
前記吊下げロッド22の下端部には、被加工皮Wを前記支持部12a上へ押し付けるための押圧部材20が取り付けられている。押圧部材20は前記ポンチTを被加工皮Wから引き抜く際に、被加工皮Wを前記支持部12a上へ抑えつけておくため設けられるものであり、細長い略短冊状の鋼板からなっている。押圧部材20の上端部は吊下げロッド22に設けられたボス22aとナット23とによって固く挟持されており、下端部がポンチTの刃先付近まで伸びている。24は吊下げロッド22をポンチTの側面へ向けて付勢するためのばねであり、かくて、押圧部材20はパンチTの側面へ常時当接している。
【0016】
40は作業台18上に載置される案内部材であり、被加工皮Wを一直線上で移動させるために用いられる。案内部材40は薄い金属板を折り曲げて作られており、図4で示すように、作業台18上に支持される支持面41とその両脇の補強袖42,42とによって断面が略コ字状に作られている。
【0017】
さらに、前記両脇の補強袖42、42の下縁は作業台18の幅よりやゝ狭くしてあり、作業台18へ取付けたとき僅かに変形して、その弾力で所定の位置に係止されようになっている。また、前記支持面41の作業者側の端部を延長した上で、上方へ折り曲げて案内壁43を形成したものである。
【0018】
よって、案内部材40を作業台18へ取り付けるには、補強袖42、42の間隔を拡げて作業台18の上面に載せる操作で足り、補強袖42、42の弾力によって固定されるとともに、補強袖42、42を作業台18の側面に当接させた状態で摺動させることができ、それによって、前記ポンチTと案内壁43との距離、換言すれば被加工皮Wの縁と穿孔された孔との距離を変更することができる。
【0019】
また、被加工皮Wたる皮革の縁を案内壁43に当接させると、ポンチTによって穿孔するべき位置が決まるとともに、案内壁43に沿って移動させることにより、孔を一列に整列した状態に穿孔できる。
【0020】
次に、被加工皮Wに小孔を穿設する操作を図6によって説明する。同図(a)は初期位置を示し、図中、パンチTと押圧部材20は基台12の支持部12a上にある。この状態から操作者は、一方の手で操作ハンドル17を基台12上から持ち上げて操作レバー15に取り付けたパンチTと、押圧部材20とを上方へ退去させ、他方の手で同図(b)で示すように、基台12の支持部12aへ被加工皮Wを載せ、案内部材40に突き当てて所定の位置に位置決めする。このとき、当然ながら操作ハンドル17の遊端部は水平部15bの内側下壁に当接しており押圧部材20は下方へ最大限まで突出している。
【0021】
この状態から、操作ハンドル17を持ち上げていた力を緩め下方へ向けて回動操作すると、操作レバー15は自重によって下方へ回動し、パンチTと押圧部材20とが略同時に被加工材Wに当接して下降が停止するから、操作ハンドル17に力を加えて穿孔を行う。
【0022】
操作ハンドル17に力を加えて下方へ押し下げると、まず、操作レバー15に対して操作ハンドル17のみが回動し、吊下げロッド22を介して押圧部材20がパンチTに対して上方へ退去し、同図(c)で示すように、パンチTのみが被加工材W中へ進入して静かに穿孔が行われる。
【0023】
被加工皮Wの穿孔が終了し、被加工皮WからポンチTを引き抜くため、操作ハンドル17を持ち上げると、まず、吊下げロッド22を介して押圧部材20が下降してパンチT近傍の被加工材Wに当接し被加工皮Wの上面を支持部12aへ向けて押圧する。
【0024】
さらに操作ハンドル17を上方へ回動操作すると引き続き押圧部材20が被加工皮Wへ押し付けた状態にあるので、同図(d)で示すように、ポンチTは被加工皮Wを支持部12aの上に残したまま上方へ移動し離脱し、引き続いて押圧部材20も上方へ退去する。
【0025】
よって、前記操作レバー15がヒンジピン14を軸として上方へ回動しポンチTが披加工材Wから離脱するとき、被加工皮WがポンチTとともに持ち上がる、いわゆる連れ上がりが阻止されるから、ポンチTは被加工皮Wから円滑に離脱できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本願発明の一実施例を示す簡易穿孔具の正面図である。
【図2】その平面図である。
【図3】図1の右側面図である。
【図4】要部である案内部材の外観図である。
【図5】手芸用簡易穿孔具の作動工程を示す工程図である。
【図6】従前の手芸用簡易穿孔具を示す図3相当の右側面図である。
【符号の説明】
【0027】
10 手芸用簡易穿孔具
12 基台
12a 支持部
12b ブラケット
14 ヒンジピン
15 操作レバー
15a 鉛直部
15b 水平部
15c 角形鋼管
15d 通し孔
16 水平方向の枢軸
17 操作ハンドル
18 作業台(ゴム台)
18a 逃げ孔
19 吊ピン
20 押圧部材
22 吊下げロッド
22a ボス
23 ナット
24 蝶ボルト
26 ばね
40 案内部材
41 支持面
42 補強袖
43 案内壁
S 距離
T 穿孔用の工具(ポンチ)
W 被加工皮

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長く作られた基台の一端に被加工皮の支持部と他端にヒンジピンとを設け、そのヒンジピンに基台に沿って上方へ伸びる操作レバーを回動可能に取付け、その操作レバーの下面に前記支持部方向へ伸びる穿孔用の工具を取り付けるとともに、前記操作レバーの遊端を筒状となし、その内部へ一端に把時部を備えた操作ハンドルの他端を挿入して所定の範囲内で回動可能に枢支し、その操作ハンドルの内端部に位置して前記操作レバーの下面に通し孔を設け、下方から押圧部材の上部を回動可能に挿通して支持し、その押圧部材の下端部をばね材によって前記穿孔具の近傍に保持してなる手芸用簡易穿孔具。
【請求項2】
請求項1において、前記基台は角形鋼管によって作られている手芸用簡易穿孔具。
【請求項3】
請求項1において、前記操作レバーを前記ヒンジピンから上方へ伸びる鉛直部と、その鉛直部の上端近傍から操作者側へ伸びる水平部とによって略L形に形成してなる手芸用簡易穿孔具。
【請求項4】
請求項3において、前記操作レバーの水平部は角形鋼管によって作られ、前記操作ハンドルは前記水平部の開口端の内部に挿入した状態で水平方向の枢軸によって枢支され、その遊端に前記押圧部材の上端部が回動可能に軸支されている手芸用簡易穿孔具。
【請求項5】
請求項1において、前記基台の一端に設けた被加工皮の支持部と穿孔具との間に案内孔を設けたゴム状の案内部材を介在させてなる手芸用簡易穿孔具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−29969(P2010−29969A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193517(P2008−193517)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(308023952)
【Fターム(参考)】