手術用ドレープ
【課題】器具類を装着したままで脱着を可能であるとともに繰り返し使用が可能な手術用ドレープを提供する。
【解決手段】患者の手術箇所を覆うための基布1と、基布1が切り取られた開口部2とを備える手術用ドレープにおいて、基布を洗濯可能な素材で構成したこと、前記開口部2は患者の手術箇所を開口内に挿入する、あるいは露出させる形状であること、開口部2と基布の端部とを結ぶ線上に開口部2から連続した開閉可能なスリット4を形成し、スリット4を開閉することにより基布1を患者から着脱自在とした手術用ドレープ。
【解決手段】患者の手術箇所を覆うための基布1と、基布1が切り取られた開口部2とを備える手術用ドレープにおいて、基布を洗濯可能な素材で構成したこと、前記開口部2は患者の手術箇所を開口内に挿入する、あるいは露出させる形状であること、開口部2と基布の端部とを結ぶ線上に開口部2から連続した開閉可能なスリット4を形成し、スリット4を開閉することにより基布1を患者から着脱自在とした手術用ドレープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリットを開閉することで医療器具を装着したままで着脱可能であり、高温水による洗濯が可能な素材からなる基布を備えた衛生的な手術用ドレープに関する。さらに詳しくは、手術用ドレープにおいて、基布を洗濯可能な素材で構成するとともに、患者の手術箇所を露出させるための開口部と基布の端部とを結ぶ線上に連続した開閉可能なスリットを形成した手術用ドレープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療現場において、患者に対して手術を行なう場合、または、所定の検査などを行なう場合には、患部からの出血や輸液の飛散による周囲の汚染、術者への感染、患部周辺領域の滅菌などを図る観点から、患者を被包し、患部のみを露出させるために手術用ドレープが用いられる。手術用ドレープは、通常、滅菌された状態で折り畳まれ、パウチ袋などに封入されて医療現場に供給される。
【0003】
医療分野においては、院内感染防止、コスト削減などの観点から、使い捨てが可能な不織布からなる製品が急速に普及してきている。手術用ドレープも例外ではなく、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン系重合体を原料とする不織布が用いられる。不織布を用いた手術用ドレープは通常使い捨てであり、血液や体液などが付着したものは感染性産業廃棄物として処分されている。そこで、医療用に用いられている不織布の材質などを改善することにより、織・編物に近い外観で、ソフトな風合を有しドレープ性に優れ、各種滅菌処理による残留EOG除去性に優れ、水や血液などのふき取り性(ワイプドライ性)に優れる特性を有するとともに、産業廃棄性に優れていて焼却が容易で、悪臭・有毒ガスが発生しない医療器具滅菌用不織布が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
一方、従来の形式の開口部付きの手術用ドレープでは、手術目的に合致した、すなわち、患者のからだの大きさ、術野の形状や寸法などに対して最適な形状および寸法の開口部を有するドレープを用意するには、多種類をストックしておくことが必要となり実質的に不可能であった。そのため、術野開口部の形状や寸法が異なる何種類かのドレープを品揃えしておき、手術に際して、目的のものに比較的近い形状や寸法の開口部を有するドレープを選び使用していた。
【0005】
手術の種類によって手術用ドレープに求められる機能は異なるため、各種の手術に対応可能な手術用ドレープが提案されている。例えば、外周端辺部が平面部中央に向かって凹んだ切欠き部を有する1組のドレープユニットを、切欠き部を互いに対向させて接合し、それぞれの外周端辺部の凹んだ部分で囲まれた開口部を有するドレープを形成するドレープユニット(特許文献2参照)や、手術時に開窓部の孔のサイズを所望の大きさに容易に且つ迅速に適宜調整可能とするために、患者の全身を覆い得る程度の大きさを有する基布と、患者の切開箇所を露出させるための孔のサイズ可変の開窓部とから構成され、開窓部は孔における所望の領域を覆い得る大きさを有する複数種類の開窓蓋を備え、孔の所望領域を覆うように基布あるいは補強布に貼付することにより、前記孔のサイズを調整可能としている医療用ドレープ(特許文献3参照)が提案されている。
【0006】
また、医療用ドレープは、患者への手術が終了した後は取り除かれるが、患部に医療器具が取りつけられたまま手術が終了した場合(例えば、患部である腕に点滴用のラインが確保された場合)には、点滴用のラインが開口部を通過した状態のままであるため、医療用ドレープをその縁部から開口部にかけて切り開かないと、医療用ドレープを患者から排除することはできない。
【0007】
手術室などにおいては、身近な場所にハサミがあるため、容易に医療用ドレープを切り開くことができるが、病棟などにおいて、簡易的に手術を行なう場合には、身近な場所にハサミなどがない場合がある。そのため、医療用ドレープを切り開くことができない場合が生じる。こうした問題点を解消するに当たり医療用ドレープにおいて、ハサミなどの器具を用いることなく、容易に切り開くことが可能な構造を有する医療用ドレープが提案された。このような医療用ドレープとしては、例えば、開口部が設けられた基布を備え、この基布には、切れ目および補助布から構成される脆弱領域が形成され、この脆弱領域を素手で切裂くことができる衣料用ドレープ(特許文献4、5参照)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−238449号公報
【特許文献2】特開2001−252287号公報
【特許文献3】特開2004−81566号公報
【特許文献4】特開2004−57564号公報
【特許文献5】特開2008−167943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来技術で示すように、従来の手術用ドレープは不織布などを基布として製造されており、基布を含む全ての部品が使い捨ての製品(ディスポーザブル製品)であった。通常、基布は患者の全身を覆うものであり、非常に大きいため、ドレープは自ずと高価なものとなり、医療廃棄物の処理コストが嵩むという課題があった。また、手術用ドレープは、手術室で着用される製品であることから、短時間で容易に取り付けられ、また容易に取り外すことができることは不可欠であるが、手術終了後に、患部に医療器具が取りつけられたままで手術などが終了した場合には、それらの器具を患部につけたままドレープを除去する必要があり、そのためには縁部から開口部にかけてドレープを切り開かなければならなかった。さらに、感染の危険性が少ないドレープの提供が不可欠とされていた。
【0010】
本発明は、こうした従来技術のこれらの課題を解決することを目標に本発明者らが鋭意開発努力を積み重ねることにより本発明に到達したものであり、手術用ドレープにおいて、基布を洗濯可能とし、開口部はバクテリアバリア性を有する素材を使用して構成し、患者の手術箇所を挿入あるいは露出させる開口部と基布の端部とを結ぶ線上に連続した開閉可能なスリットを形成し、このスリットを開閉することにより基布を患者から着脱自在とすることにより従来の課題が解決されることを見出した。また、開閉自在の長いスリットを設けることにより、ドレープの患者への装着や機器類の設置が簡便となる。さらに、本発明は、洗濯可能とすることにより何回も使用可能とすることにより資源の浪費および医療廃棄物の排出量を削減することができ、且つ、取り付けおよび取り外しの容易性に優れ感染の危険性が極めて低い手術用ドレープを提供することを目的とする。また、本発明者らは、ドレープの中心線にスリットを設けると、手術に使用していると、ドレープのスリット部分が盛り上がりスリット部分で開き易くなること、この開いた部分が汚染の原因となることがあることを見出し、こうした汚染の原因が生起することがないドレープを提供することを本発明の目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は以下の技術的事項から構成される。
(1)患者の手術箇所を覆うための基布と、基布が切り取られた開口部とを備える手術用ドレープにおいて、基布を洗濯可能な素材で構成したこと、前記開口部は患者の手術箇所を開口内に挿入する、あるいは露出させる形状であること、開口部と基布の端部とを結ぶ線上に開口部から連続した開閉可能なスリットを形成し、スリットを開閉することにより基布を患者から着脱自在としたこと、を特徴とする手術用ドレープ。
(2)スリットが開口部から基布の端部まで形成されている(1)に記載の手術用ドレープ。
(3)スリットが開口部から基布の端部を結ぶ線上の途中まで形成されている(1)に記載の手術用ドレープ。
(4)開口部からのスリットの開始端が、開口部の中心線を外れた箇所に設けられている(1)から(3)のいずれかに記載の手術用ドレープ。
(5)スリットが解放されることがないように両側のスリットを同時に係止する開き防止部材がドレープの表面側または裏面側に設けられている(1)から(4)のいずれかに記載の手術用ドレープ。
(6)非透水性の素材からなる開き防止部材がスリット全長に亘り設けられている(5)に記載の手術用ドレープ。
(7)スリットの端部が重なり合って係止されている(1)から(6)のいずれかに記載の手術用ドレープ。
(8)スリットを係止するための係止具が、スリットの端部に寄せるとともに係止具間が狭くなるように設けられている(1)から(7)のいずれかに記載の手術用ドレープ。
(9)基布が洗濯可能でありその素材が、ポリエステル、綿、ポリアミド、ポリアクリルニトリル、ポリプロピレン、ポリウレタンから選ばれた1またはそれ以上の材質を含む(1)から(8)のいずれかに記載の手術用ドレープ。
(10)基布が防水性、通気性、吸水性、および撥水性のいずれかを有する素材、あるいはこれらのいずれかを組合せた特性を有する素材からなる(1)から(9)のいずれかに記載の手術用ドレープ。
(11)開口部周辺に位置する基布にバクテリアバリア性シートが用いられている(1)から(10)のいずれかに記載の手術用ドレープ。
(12)開口部周辺に位置するバクテリアバリア性シートが伸縮性を有している(11)に記載の手術用ドレープ。
(13)開口部が、穴を有する伸縮性のあるゴムシートにより覆われている(1)から(12)のいずれかに記載の手術用ドレープ。
(14)開口部とスリットは連続して形成され、患者の手術箇所に医療器具を装着したままでドレープを患者から外せることができる(1)から(13)のいずれかに記載の手術用ドレープ。
(15)開口部が、基布の裏面および/または表面には基布より小片の補強を兼ねたバクテリアバリア性シートを重ね合わせて開口部を切り取って貫通させたしたものである(1)から(14)のいずれかに記載の手術用ドレープ。
(16)基布より小片のバクテリアバリア性シートが、基布の裏面側(患者側)に設けられている(1)から(15)のいずれかに記載の手術用ドレープ。
(17)基布の開口部周辺のバクテリアバリア性シートを含む部分が他の基布部分より分離可能となるように別体からなる(1)から(16)のいずれかに記載の手術用ドレープ。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、取り付け容易性に優れ、且つ、衛生的な手術用ドレープの提供が可能となる。また、本発明により、手術用ドレープを洗濯可能とすることにより何回にも亘り使用可能とし、資源の浪費が防止され、医療廃棄物の排出量を大幅に削減することができ、且つ、取り付けおよび取り外しの容易性に優れた手術用ドレープを提供することができるとともに、ドレープのバリア性を向上させることにより細菌による感染などの危険性を低減することができる。また、手術用ドレープに要するコストを低減することにより手術経費の節減にも寄与することができる。
例えば、ドレープの円形穴の部分に腕や足を入れ、そのまま医療器具を装着すると、医療器具に引っかかってドレープが抜けなくなってしまうことがあるが、本発明は、医療器具を装着したままでもドレープを外せることができる。また、ドレープを外した後に医療器具を装着することができる場合もあるが、これでは医療の世界で言う不潔になる恐れがあるため、本発明では、ドレープを装着したまま医療器具を装着する方が清潔であり医療現場で好まれている医療器具の装着方法をとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の手術用ドレープにおいて、開口部からドレープの端部にまで設けたスリットが閉じられている状態を示す。
【図2】手術用ドレープのスリット部が面ファスナーにより閉じられている部分の断面図を示す。
【図3】図1に示されたドレープのスリット部が開放されている状態を示す。
【図4】スリット部がスナップにより係合される手術用ドレープにおいて、スリット部が解放された状態を示す。
【図5】スリットの一端が二重になりボタンで係合された部分の断面図を示す。
【図6】泌尿器科で使用される手術用全面ドレープの全体図を示す。
【図7】バクテリアバリア性シートを開口部周辺部に設け、開口部を、穴を有する伸縮性ゴムシートで覆ったドレープを示す。
【図8】開口部の周囲を伸縮性のあるバクテリアバリア性シートで構成したVATSドレープを示す。
【図9】開口部を、穴を有する伸縮性ゴムシートで覆った上肢穴あきドレープの全体図を示す。
【図10】開口部から基布の端部にまで設けられたスリットの開口端が、開口の中心線を外れた位置に設けられているドレープ全体図を示す。
【図11】開口部付近のスリットが解放されることを防止する開き防止部材が設けられているドレープの要部を示す。
【図12】基布の途中までしか形成されていないスリットが解放されることを防止する開き防止部材がスリットの全面を被覆するように設けられているドレープの要部を示す。
【図13】開口部を穴あきゴムシートで覆ったドレープにおいて、スリッドの全面が裏面(患者側)からゴムテープで覆われているドレープの全体図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、主として胸腔や腹腔などの体腔、消化管や尿管などの管腔部または血管などに挿入して、体液の排出、薬液や造影剤などの注入点滴に用いたりする検査や治療などを行うために使用される手術用ドレープに関するものであり、例えば、体内に挿入する中空の柔らかい細い管であるカテーテルや、体外につながれる回路、チューブ、ラインなどに関連して用いることができる手術用ドレープである。本発明は、患者の手術箇所である患部を露出させるための開口部と、この開口部から伸びるスリットを有するとともに、洗濯可能な基布からなることに特徴を有する手術用ドレープに関する。
【0015】
本発明の穴あきスリット付のドレープは、リユーザブルであるため手術で使用された後、これを回収し、洗濯、消毒し、検査し、さらに滅菌を行うことにより再度手術で使用することができる。実用的なドレープとしては、これまで、使い捨ての不織布か綿製品のどちらかしか選択肢はなかった。不織布であればゴミ・環境・CO2の問題がクローズアップされており、また綿製品であれば、血液・体液が透過するため、現在の医療の世界では感染の危険性が高いとされ使用が減ってきている。本発明は、例えば、ポリエステル100%で高温での洗濯・滅菌に耐えられる素材からなっており、また、一切のピンホールも無い状態にあるため血液の透過することはない。また、織物であるため不織布のように破るとか穴を開けるというような使用方法は出来なくなっているが、不織布などの使用状況に類似させた使用法が採用でき、簡便な脱着を実現するためにスリットを入れて対応した。その他、本発明では、単にスリットを入れるだけでなく、スリット部を重ねることにより、バリア性を保てる状態にした。また、スリットを開口またはドレープの中心線を外して設けることにより、ドレープを装着して手術を行う過程でスリット部が盛り上がり、開口または隙間が生じることが防止できる。さらに、本発明の基布は使用する素材を選定することにより、血液がドレープを経由して体に伝わり患者の体に付着している菌が血液を経由してドクターの手や医療器具に接触し汚染することを防止することができる。
【0016】
さらに本発明について詳細に説明する。
従来、通常の円形または四角形状の開口部が設けられ、その開口部に腕や足などを入れて、そのまま医療器具を一旦装着すると、手術後には医療器具やチューブ、ラインなどが引っかかってドレープが抜けなくなってしまうことがある。本発明の手術用ドレープはこれらの器具類を装着したままでもドレープを外せるように、開口部と基布の端部とを結ぶ線上に連続した開閉可能なスリットを形成し、スリットを開閉することにより基布を患者から着脱自在とした点に特徴を有する手術用ドレープである。
手術後、ドレープを外した後に術後用の医療器具を装着する場合があるが、そうすると雑菌類の感染の恐れがあるため、ドレープを装着したまま医療潜具を装着する方が清潔であり、病院では好まれている。ドレープが不織布製で引き裂き力に弱い材質であれば、医療器具を装着した後でも、これを破ってドレープを外す事ができるためこのような心配がなかった。
【0017】
しかしながら、手術用ドレープをリユーザプルとし、手術で使用された後に回収し、洗濯(消毒)し、検査し、滅菌を行い、再度手術で使用するシステムを構築するには従来の手術用ドレープでは不適切でありである。これまで、手術用ドレープでは不織布(使い捨て)か綿製品の選択しかなく、不織布は環境・CO2の問題から、また、加工処理をしていない綿布単独の製品であれば感染の危険性が高いとされ使用が減ってきている。 そこで、本発明では、ポリエステル、綿、ポリアミド、ポリアクリルニトリル、ポリプロピレン、ポリウレタンなどの高温での洗濯・滅菌に耐えられる素材またはその応用品を使用するものであり、好適には、一切のピンホールも無い状態にある布を採用するものである。このような強固な布からなる手術用ドレープは、当然不織布のように破ることにより穴を開けるとか、手術後に破ることにより穴を広げるというような使用方法は出来なくなってしまう。そこで、本発明では、不織布と同様の使用便宜性にするために、開口部と基布の端部を結ぶ線上にスリットを入れることにより、また、スリットを重ね合わせて係止できるようにすることで従来技術の問題点を解決し、さらに開口部周辺をバクテリアバリア性とすることにより汚染の危険を減少させた。
【0018】
本発明は、患者を覆うための基布と、基布が切り取られた開口部とを備える手術用ドレープにおいて、基布を洗濯可能な素材で構成したこと、前記開口部は患者の手術箇所を開口内に挿入する、あるいは露出させる形状であること、開口部と基布の端部とを結ぶ線上に連続した開閉可能なスリットを形成し、スリットを開閉することにより基布を患者から着脱自在とした手術用ドレープに関するものである。その構造は、例えば、図1に示されているように、矩形状の一辺が約90cmの基布1からなり、その中央には直径約10cmの開口部2が設けられている、開口部2の周辺はバクテリアバリア性シート3が設けられ、血液、微生物などによる汚染を防止している。この開口部2から患者の手術箇所を開口内に挿入するかあるいは露出させる。開口部2から基布1の端部5を結ぶ直線上には基布1およびバクテリアバリア性シート3を切断する長さ約40cmのスリット4が設けられその端部5から開口部2に至る切断部分は重ね合わされて密封され、スリット4を左右に開くことにより空間を形成することができる。図3はスリット4を左右に開いて広げたところである。スリットを広げることにより形成された空間を通して機器、パイプ、カテーテルなどが患部に接続されまたは取り外される。また、左右のスリットは重なり会ってバリア性能を向上させることにより血液などの漏えいを防止している。バクテリアバリア性シート3の部分には、撥水性と防水性を備え微生物を透過することのないシートが使用される。
【0019】
手術用のドレープに設けた左右のスリット4は重ね合わせて両者を開閉自在に係合することができる留具が設けられている。この留具は比較的弱い力で係合を解除することができるものであればよく、例えば、面状ファスナー、ボタン、スナップ、フックなどが例示されるが、スリットから液体などの漏洩は防止されなければならない。図1には、面ファスナー4を留め具とする本発明のドレープが例示されている。図2は面ファスナー4a、4bによる係合部の断面の一例を示したものである。図4にはスナップボタンを留め具として係合する本発明のドレープが例示されている。図5はスナップボタンを留め具とした係合部の断面を示すものであり、この係合部では一方の端部が他方の端部に挟み込まれてスナップボタンにより係合されているため、係合部での強度が増加し、さらに密封性が強化される。
【0020】
例えば、図7、8、9に示すように、スリット4をドレープの中心線、または開口部の中心線に沿って設けることにより本発明の目的を達成することができる。しかしながら、これらの図面に示されたようなドレープを手術に使用しているとドレープのスリット4に沿っての部分が盛り上がり、ちょうどスリット4の係止部6の間に開口が形成され易くなるためこの部分にできた開口から微生物などの汚染物が侵入することが生ずる恐れがある。このような原因による汚染を防止するには、ドレープの開口部2の中心線7から外れた箇所をスリットの開始端41とすることにより避けることができる。また、スリット間を係止する係止部6となるドットボタンの設置間隔を小さくすることによっても避けることができる。スリット4の開始端41を中心線7より移動させて設けた例を図10に示す。
また、スリット4に沿っての盛り上がりによる開口や隙間の形成は、スリットの接合部に設ける係止具をスリットの端部にできるだけ近づけて、しかも数多く設けることにより、開口や隙間が形成される余地をなくすることにより防止することができる。
【0021】
また、スリット部4は係止部6により確実に係止して手術中にも開くことがないようにすることが必要である。しかしながら、手術用具の重みなどによりスリット部の係止が外れることがあるため、安全策として、手術中にスリットの解放による汚染、手術の障害となることを防止するために開口近くのスリットが開くことがないように、スリットの解放を防止する器具である開き防止部材8を設置することができる。例えば、スリットの両側6a、6b間を、テープなどを利用して、ドットボタン、面ファスナー、フック、接着性のテープなどにより固定することにより安全性を向上させることができる。図11は開口部2付近のスリット4を布製のテープをドットボタンにより係止した例であり、最も開きやすい部分のみを固定している。
【0022】
図12に示した例は、スリット4の全体を覆う布製の開き防止部材8をドットボタンにより固定したものであり、この開き防止部材8はスリット4が解放されることを防止すると共に、スリット4の部分の密閉を強化することになる。
図13に示した例は、開口部2を、中央に手術用の開口22を有する伸縮性のゴムシートにより裏側(患者側)から覆ったドレープを裏側から見た図である。スリット4の全長が非透水性の開き防止部材8により覆われている。この例では、開き防止材8としてゴムシート21と同じ材質のテープが接着剤により接着されている。この開き防止材8は非透水性であることから、水、細菌類などの透過を防止することができる。ドレープの使用後にはゴムシート類は適宜切断されて患者から取り外される。
このように、スリット4には、開き防止作用を有する部材を設けることにより、またスリット4を閉鎖してスリット部分からの汚染の浸透を防止する部材を設けることにより本発明のドレープはさらに衛生的なものとなる。
【0023】
本発明におけるスリットの長さは、ドレープ全体の大きさ、開口部の大きさ、手術する患部の大きさ位置、患部に接続する機器類、パイプ類の数などに応じて決定されるものである。例えば、図1、3、4に示すように、開口部2から基布の端部5までの全線が切り込まれてスリットとなったドレープや、開口部から基布の端部へ至る線上で、開口部からある程度の長さ(基布の端部にまでは至らない長さ)が切り込まれてスリットとなったドレープ(図6、図12)が挙げられる。スリットは、必ずしも直線状とする必要はなく、患部の位置、大きさや、機器類の設置位置などに応じた適宜な形状とすることができる。
【0024】
基布は、防水性、通気性、吸水性、および撥水性のいずれかを有する素材、あるいはこれらのいずれかを組合せた特性を有する素材から選ばれ、開口部周辺に位置する基布には、特に、バクテリアバリア性シートが用いることが好ましい。
基布の材質としては、ポリエステル、綿、ポリアミド、ポリアクリルニトリル、ポリプロピレン、ポリウレタンなどからなり、高温での洗濯・滅菌に耐えられる素材を使用した布が用いられ、好適には、ピンホールが無い状態にある布を採用することが望まれるが、綿などの吸水性を有する布やピンホールのある布であっても撥水加工や樹脂などのコーティング、積層処理により基布として最適な布製品とすることができる (例えば、前記載素材の布製品の加工方法の一例としては、ニット系・ファブリクス系・ラミネート系・コーティングなどである。) 。基布を洗濯して繰り返し使用可能な素材で構成することにより、医療廃棄物を削減することを可能とする。使用後の基布には血液などが付着していることから、感染源とならないよう滅菌、消毒処理(例えば、80℃の熱水による10分間の熱水消毒工程)が施されて再利用がなされる。基布には、その表面に菌やウィルスに対するバリア性を奏する処理、例えば、縫製箇所に縫製穴が露出しないように縫製を施すことが好ましい。
【0025】
本発明で基布として使用に適した布の具体例としては、例えば、ポリエステル製でバリア性、ドレープ性の高いデュポン社製の「ソンタラ」を挙げることができる。さらに好ましくは、撥水性能、防水性能によるバクテリアバリア性を有するシートや織物を開口部の周囲に設けることにより感染の危険性を低下させることができる。このような特性を有する素材としては、例えば、コーティング剤を使用していない透湿性が極めて高く快適な着用感が得られ、しかもリントの発生が大きく抑えられた生地からなり、外部からのバリア性を保持し着用側には通気性を確保する素材(例えば、米国規格ANSI/AAMIPB70のバリア性能分類レベル2をクリアするポリエステルマイクロファイバー製CPA素材/ナガイレーベン社製造)、また、生地表面に被膜を形成し、同時に繊維の隙間にまで被膜素材を充填させて防水性と耐久性をほぼ限界にまで高めているためどのような液体または微生物の浸透をも許さない多層構造素材(例えば、米国規格ANSI/AAMIPB70のバリア性能分類レベル4をクリアするCPX素材/ナガイレーベン社製造、また同様にレベル4をクリアするゴアメディカルファブリクス素材/ジャパンゴアテックス社製造)を挙げることができる。
【0026】
また、開口部には穴を有する完全防水性の伸縮性のゴムシートにより覆うことも可能である。ゴムシートはバクテリアバリア性を有するものであるとともに、その開口部を広げることにより患部に機器類を容易に装着することができ、装着が終った後には自然と開口部が元に戻るため開口面積が少なくなり体液などの流出による汚染を減少することができる。これらの、バクテリアバリア性を有する素材は、特に、ドレープの開口部周辺に利用することにより感染の危険性を低減することができ、それ以外の部分は撥水処理をした織物、シート類であってもよい。
【0027】
基布の、例えば略円形状に形成されている開口部の周辺部分は、患者の体液などにより汚染されやすい場所であるから、特にバクテリアバリア性を必要とするために上記した素材を設けることが好ましい。さらに開口部分には補強のための素材を付属させることや、液体吸収性などの特性を調整することができる。補強シートは、患部の位置に略円形状の穴が形成されており、この穴は基布開口部に位置を合わせて設けられ、開口部の縁部の補強がなされる。例えば、表面が吸水性に富んだ素材により構成し、裏面側は防水性の富んだ材料により構成したシートを基布表面に設けることにより、患者への液体の付着が防止され、周囲の汚染、術者への感染などを確実に防ぐことが可能となる。また、このシートを基布の裏面側に設けて、患者側に補強シートの防水面を向けることにより患者の体液が基布に浸透しないようにすることができる。バクテリアバリア性シートにより補強性を付与することもできる。
【0028】
バクテリアバリア性シートと補強シートとしては、吸水、防水、撥水性、通気性などの特性を有する素材から選ばれて適宜組み合わせて使用され、例えば、吸水/防水、撥水/防水、防水/耐久性を有する素材類が組み合わされて用いられるが、用途、必要とする特性に応じて単層構造、二重構造、または三重構造以上の積層構造とし、特性の違う各層を組み合わせることにより各種の手術に適用可能とすることができる。例えば、織物生地の両表面に樹脂フィルムをラミネートした三層構造を有し、樹脂フィルムが耐滅菌性・耐アルカリ性を有するポリエステルトリコットからなり、織物生地が無機質のシリコンを充填した無機質フィルムからなるシート、および、優れた撥水性能、防水性能を有するポリエステルフィラメントからなる生地であってリントの発生が大きく抑えられているシートなどがあげられる。
【0029】
次に、泌尿器系の手術用に特別に構成された本発明の手術用ドレープについて説明すると、泌尿器科の分野においては、多くのものが尿失禁を治療し得るよう構成された、ニードルや糸通しや結紮キャリアを使用して、様々な治療を行っている。ドレープに開口部と接続されたスリットを設け開閉可能にすることでニードルや糸通しや結紮キャリアを設置または取り外しすることが容易となる。
泌尿器科で使用されるスリットドレープの一例を図6に示す。例示したドレープは全面ドレープであり、手術用ドレープは手術する患部周辺を中心に着脱自在に設けられている。本発明のドレープは図6に示されるように、開口部2と開口部2からスリット4が形成されたスリット4は基布1の端部には達していない。また、基布より小片のバクテリアバリア性シート7を備え、基布1とシート7は同じ大きさの開口部2を形成しており、開口部2は基布1とシート7が貫通したものである。開口部2は患者の手術箇所のみを開口内に挿入し露出させる形状または大きさである。開口部2から基布1の端部に向かう方向に沿って形成されたスリット4は左右一対が重なるように開閉可能に構成し、基布は洗濯可能な素材で構成している。
【0030】
本発明のドレープは、心臓外科、脳外科、眼科、カテーテル検査、泌尿器科、産婦人科や関節鏡・整形外科などいずれの手術や処置においても使用される。例えば、受水袋付腹腔鏡下胆嚢摘出用ドレープ、吸水パッド付き眼科用手術用ドレープなど手術ごとに適した種類が用意され、また、手術部位全体を一枚で覆う全面ドレープで、手術部位や手術方法に合わせてその大きさや孔の形状大きさが異なる種類のものを取り揃えられ、コードホルダーやポケットなどが取り付けられた種類などがあるが、本発明のドレープはいずれのものにも適用できる。
本発明のドレープでは、必要な部分のみをスリット入りとして取り外し自在にとすることができる。例えば、図7に示したドレープのバクテリアバリア性シート3の部分を着脱自在とし、基布1および基布1に設けられたスリット4との接続を可能とすることができる。
次に、本発明の詳細を実施例により説明するが、本発明は何ら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0031】
本実施例の手術用ドレープを図1に示す。これは手術する患部を主にカバーするドレープの一例であり、横幅82cm、縦幅90cmのポリエステル製布帛(デュポン社製ソンタラ)を基布1とし、その中央部には直径10cmの開口部2が形成されている。開口部2の基布裏面側にはバクテリアバリア性シート3が重ね合わされて開口部2と同じ大きさの開口が切り取られている。バクテリアバリア性シート3は患者から出た体液などが基布1に含浸しないように撥水、防水処理され水や微生物の透過が防止されている。開口部2の下端から基布の端部6に至る全線上において、基布2およびバクテリアバリア性シート3に切り込みを入れられてスリット4が形成されている。このスリット4を左右に開いた状態で、患部に機器類、コード、パイプ、カテーテルなどが接続され、また取り外される。スリット4は、左右の端部を重ね合わせることにより閉鎖され、密封を可能とした。スリット4の左右の端部には面ファスナー4a、4bを備えてスリット4の係合に用いる。図1は面ファスナー4a、4bが係合した状態を示し、図2はそのときの面ファスナー4a、4bを含むスリット部の断面を示す。図3は、面ファスナー4a、4bの係合が解かれスリット4開かれた状態を示す。
【実施例2】
【0032】
本実施例は、実施例1において、係合部材として複数のスナップ6a、6bをスリット4の左右の端面に設けスリット4を開閉自在にした具体例を図4に示す。
【実施例3】
【0033】
本実施例の泌尿器科における手術に使用されるドレープの一例を図6に示す。この手術用ドレープは全面ドレープであり、患者の全身を覆うための基布1と、バクテリアバリア性シート7とから構成され、バクテリアバリア性シート7には、開口部2および指嚢穴(図示せず)が設けられている。基布1は表面に撥水処理が施されたポリエステル製布からなり、上端辺の横幅が約200cm、上端辺から下端辺までの長さは約250cmである。基布1の中央部には、直径約5cmの開口部2とその下方に位置する直径約4cmの指嚢穴(図示せず)とが設けられている。開口部2の周囲で基布1の上層には、横幅が約40cm、縦幅が約50cmのバクテリアバリア性シート7が設けられている。基布1の上端辺と補強シートの上端辺まで距離は約115cmである。開口2からはスリット4が基布1および補強シート7を切断して設けられ、その長さは開口2から上方に10cmの長さである。
【実施例4】
【0034】
本実施例は図7に示すように、整形手術などに使用される280×210cmの大きさのドレープであり、基布1のほぼ中央部には150×60cmのバクテリアバリア性シート3が設けられ、開口部2は伸縮性のあるゴムシート21で覆われている。バクテリアバリア性シート3は完全防水の生地からなり高い圧力をかけても液体が透過しないレベル4クラスの生地であってCPX素材からなっている。開口部2は25×25cmの大きさからなり、中央部にφ3cmの開口22を有するゴムシート21より覆われている。ゴムシート21はバクテリアバリア性シート3と同様の完全防水性能を有している。スリット4は、開口部2からドレープの端部まで設けられ、スリットの左右は重なり会って係合し、体液・バクテリアなどの漏えいを防止している。
【実施例5】
【0035】
本実施例は図8に示すように、全身用の穴あきドレープであり主に腹部などの手術用に用いられる例である。バクテリアバリア性シート3はドレープの腹部に相当する位置に127×136cmの大きさでその中央上部には25×25cmの開口部2が設けられている。基布1は撥水処理されたポリエステル製布からなり、バクテリアバリア性シート3はレベル4クラスのCPX素材からなっている。開口2は力を加えて外側に延伸している間は30×30cmの大きさに拡大することができる。開口側でのスリットの開始端41は、開口2またはドレープの中心線7上に設けられている。
【実施例6】
【0036】
本実施例は図9に示すように、整形用の穴あきドレープであり、バクテリアバリア性シート3が100×70cmの大きさで設けられ、その中央上部には20×20cmの開口部2が設けられている。この開口部2は中央にφ3cmの開口22が設けてある開口部2よりは大きめのゴムシート21により覆われている。基布1は撥水処理されたポリエステル製布からなり、バクテリアバリア性シート3は実施例4と同様の素材からなっている。本実施例においても、開口側でのスリットの開始端41は、開口2またはドレープの中心線7上に設けられている。本実施例のドレープを手術に使用した際には、スリット部が盛り上がり若干の開口や隙間が生じる場合がみられたが、実用上の支障はなかった。
【実施例7】
【0037】
本実施例は、実施例5と同様の全身用の穴あきドレープであり主に腹部などの手術用に用いられる例である。図10に示されるように、開口側でのスリットの開始端41は、開口2またはドレープの中心線7を外れた位置に設けられていて、スリット4の開始端41は開口周端部23が伸びるように設けられている。本実施例のドレープを手術に使用した際には、スリット部が盛り上がり開口や隙間が生じることはなかった。
【実施例8】
【0038】
図11に示す実施例は、穴あきドレープの開口2にスリット4が形成され、開口側でのスリットの開始端41は、開口2またはドレープの中心線7を外れた位置に設けられていて、スリット4の開始端41は開口周端部23の延長上にある。さらに、スリット6a、6b間で開くことがないように開き防止部材8が2か所設けられ、ドットボタン81により係止されている。
【実施例9】
【0039】
図12に示す実施例は、穴あきドレープの開口2にスリット4がドレープの基布の端部にまでは達しないで途中まで形成されている例である。短いスリット4の全長を開き防止部材8でもって覆い、開き防止材8とスリット4の両端面とをドットボタン81、82で固定することにより、スリット4を確実に閉鎖している。
【実施例10】
【0040】
本実施例は図13に示すように、整形用の穴あきドレープであり、バクテリアバリア性シート3が100×70cmの大きさで設けられ、その中央上部には20×20cmの開口部2が設けられている。この開口部2は中央にφ3cmの開口22が設けてある開口部2よりは大きめのゴムシート21により覆われている。基布1は撥水処理されたポリエステル製布からなり、バクテリアバリア性シート3は実施例4と同様の素材からなっている。 本実施例においては、スリット4は、ドレープの裏側(患者側)からゴムシート21と同質の材料から作製されたテープが接着されて封鎖されている。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、スリットを開閉することで医療器具の着脱を簡便に行なうことが可能であるとともに、高温水による洗濯が可能な素材からなる基布を備えた手術用ドレープに関するものであり、例えば、脳外科用(U型含む)、肩関節鏡半座位用、眼科用、婦人科用、牽引・CHS用、経皮的腎結石破砕術用、整形外科用のドレープに適用可能であり、特に患部にさまざまな機器類を装着した手術を行なう用途に好適である。本発明は、基布を洗濯可能な素材で構成するとともに、患者の手術箇所を露出させるための開口部と基布の端部とを結ぶ線上に連続した開閉可能なスリットを形成した繰返し使用可能な手術用ドレープに関するものであり、従来の使い捨てドレープと比較して、一回の手術に要するドレープの費用を低く抑えることができるとともに、ドレープの廃棄処理費用を低減し、廃棄処理の際のCO2の発生、大気汚染を減少させることができる。
【符号の説明】
【0042】
1: 基布
2: 開口部
21:ゴムシート
22:ゴムシートの開口(穴)
23:開口周端部
3、7: バクテリアバリア性シート
4: スリット
41:スリット開始端
4a、4b: 面ファスナー、ボタン
5:基布端部
6a、6b:ボタンを設けたスリット
7:開口あるいはドレープの中心線
8:開き防止部材
81、82:ボタン
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリットを開閉することで医療器具を装着したままで着脱可能であり、高温水による洗濯が可能な素材からなる基布を備えた衛生的な手術用ドレープに関する。さらに詳しくは、手術用ドレープにおいて、基布を洗濯可能な素材で構成するとともに、患者の手術箇所を露出させるための開口部と基布の端部とを結ぶ線上に連続した開閉可能なスリットを形成した手術用ドレープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療現場において、患者に対して手術を行なう場合、または、所定の検査などを行なう場合には、患部からの出血や輸液の飛散による周囲の汚染、術者への感染、患部周辺領域の滅菌などを図る観点から、患者を被包し、患部のみを露出させるために手術用ドレープが用いられる。手術用ドレープは、通常、滅菌された状態で折り畳まれ、パウチ袋などに封入されて医療現場に供給される。
【0003】
医療分野においては、院内感染防止、コスト削減などの観点から、使い捨てが可能な不織布からなる製品が急速に普及してきている。手術用ドレープも例外ではなく、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン系重合体を原料とする不織布が用いられる。不織布を用いた手術用ドレープは通常使い捨てであり、血液や体液などが付着したものは感染性産業廃棄物として処分されている。そこで、医療用に用いられている不織布の材質などを改善することにより、織・編物に近い外観で、ソフトな風合を有しドレープ性に優れ、各種滅菌処理による残留EOG除去性に優れ、水や血液などのふき取り性(ワイプドライ性)に優れる特性を有するとともに、産業廃棄性に優れていて焼却が容易で、悪臭・有毒ガスが発生しない医療器具滅菌用不織布が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
一方、従来の形式の開口部付きの手術用ドレープでは、手術目的に合致した、すなわち、患者のからだの大きさ、術野の形状や寸法などに対して最適な形状および寸法の開口部を有するドレープを用意するには、多種類をストックしておくことが必要となり実質的に不可能であった。そのため、術野開口部の形状や寸法が異なる何種類かのドレープを品揃えしておき、手術に際して、目的のものに比較的近い形状や寸法の開口部を有するドレープを選び使用していた。
【0005】
手術の種類によって手術用ドレープに求められる機能は異なるため、各種の手術に対応可能な手術用ドレープが提案されている。例えば、外周端辺部が平面部中央に向かって凹んだ切欠き部を有する1組のドレープユニットを、切欠き部を互いに対向させて接合し、それぞれの外周端辺部の凹んだ部分で囲まれた開口部を有するドレープを形成するドレープユニット(特許文献2参照)や、手術時に開窓部の孔のサイズを所望の大きさに容易に且つ迅速に適宜調整可能とするために、患者の全身を覆い得る程度の大きさを有する基布と、患者の切開箇所を露出させるための孔のサイズ可変の開窓部とから構成され、開窓部は孔における所望の領域を覆い得る大きさを有する複数種類の開窓蓋を備え、孔の所望領域を覆うように基布あるいは補強布に貼付することにより、前記孔のサイズを調整可能としている医療用ドレープ(特許文献3参照)が提案されている。
【0006】
また、医療用ドレープは、患者への手術が終了した後は取り除かれるが、患部に医療器具が取りつけられたまま手術が終了した場合(例えば、患部である腕に点滴用のラインが確保された場合)には、点滴用のラインが開口部を通過した状態のままであるため、医療用ドレープをその縁部から開口部にかけて切り開かないと、医療用ドレープを患者から排除することはできない。
【0007】
手術室などにおいては、身近な場所にハサミがあるため、容易に医療用ドレープを切り開くことができるが、病棟などにおいて、簡易的に手術を行なう場合には、身近な場所にハサミなどがない場合がある。そのため、医療用ドレープを切り開くことができない場合が生じる。こうした問題点を解消するに当たり医療用ドレープにおいて、ハサミなどの器具を用いることなく、容易に切り開くことが可能な構造を有する医療用ドレープが提案された。このような医療用ドレープとしては、例えば、開口部が設けられた基布を備え、この基布には、切れ目および補助布から構成される脆弱領域が形成され、この脆弱領域を素手で切裂くことができる衣料用ドレープ(特許文献4、5参照)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−238449号公報
【特許文献2】特開2001−252287号公報
【特許文献3】特開2004−81566号公報
【特許文献4】特開2004−57564号公報
【特許文献5】特開2008−167943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来技術で示すように、従来の手術用ドレープは不織布などを基布として製造されており、基布を含む全ての部品が使い捨ての製品(ディスポーザブル製品)であった。通常、基布は患者の全身を覆うものであり、非常に大きいため、ドレープは自ずと高価なものとなり、医療廃棄物の処理コストが嵩むという課題があった。また、手術用ドレープは、手術室で着用される製品であることから、短時間で容易に取り付けられ、また容易に取り外すことができることは不可欠であるが、手術終了後に、患部に医療器具が取りつけられたままで手術などが終了した場合には、それらの器具を患部につけたままドレープを除去する必要があり、そのためには縁部から開口部にかけてドレープを切り開かなければならなかった。さらに、感染の危険性が少ないドレープの提供が不可欠とされていた。
【0010】
本発明は、こうした従来技術のこれらの課題を解決することを目標に本発明者らが鋭意開発努力を積み重ねることにより本発明に到達したものであり、手術用ドレープにおいて、基布を洗濯可能とし、開口部はバクテリアバリア性を有する素材を使用して構成し、患者の手術箇所を挿入あるいは露出させる開口部と基布の端部とを結ぶ線上に連続した開閉可能なスリットを形成し、このスリットを開閉することにより基布を患者から着脱自在とすることにより従来の課題が解決されることを見出した。また、開閉自在の長いスリットを設けることにより、ドレープの患者への装着や機器類の設置が簡便となる。さらに、本発明は、洗濯可能とすることにより何回も使用可能とすることにより資源の浪費および医療廃棄物の排出量を削減することができ、且つ、取り付けおよび取り外しの容易性に優れ感染の危険性が極めて低い手術用ドレープを提供することを目的とする。また、本発明者らは、ドレープの中心線にスリットを設けると、手術に使用していると、ドレープのスリット部分が盛り上がりスリット部分で開き易くなること、この開いた部分が汚染の原因となることがあることを見出し、こうした汚染の原因が生起することがないドレープを提供することを本発明の目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は以下の技術的事項から構成される。
(1)患者の手術箇所を覆うための基布と、基布が切り取られた開口部とを備える手術用ドレープにおいて、基布を洗濯可能な素材で構成したこと、前記開口部は患者の手術箇所を開口内に挿入する、あるいは露出させる形状であること、開口部と基布の端部とを結ぶ線上に開口部から連続した開閉可能なスリットを形成し、スリットを開閉することにより基布を患者から着脱自在としたこと、を特徴とする手術用ドレープ。
(2)スリットが開口部から基布の端部まで形成されている(1)に記載の手術用ドレープ。
(3)スリットが開口部から基布の端部を結ぶ線上の途中まで形成されている(1)に記載の手術用ドレープ。
(4)開口部からのスリットの開始端が、開口部の中心線を外れた箇所に設けられている(1)から(3)のいずれかに記載の手術用ドレープ。
(5)スリットが解放されることがないように両側のスリットを同時に係止する開き防止部材がドレープの表面側または裏面側に設けられている(1)から(4)のいずれかに記載の手術用ドレープ。
(6)非透水性の素材からなる開き防止部材がスリット全長に亘り設けられている(5)に記載の手術用ドレープ。
(7)スリットの端部が重なり合って係止されている(1)から(6)のいずれかに記載の手術用ドレープ。
(8)スリットを係止するための係止具が、スリットの端部に寄せるとともに係止具間が狭くなるように設けられている(1)から(7)のいずれかに記載の手術用ドレープ。
(9)基布が洗濯可能でありその素材が、ポリエステル、綿、ポリアミド、ポリアクリルニトリル、ポリプロピレン、ポリウレタンから選ばれた1またはそれ以上の材質を含む(1)から(8)のいずれかに記載の手術用ドレープ。
(10)基布が防水性、通気性、吸水性、および撥水性のいずれかを有する素材、あるいはこれらのいずれかを組合せた特性を有する素材からなる(1)から(9)のいずれかに記載の手術用ドレープ。
(11)開口部周辺に位置する基布にバクテリアバリア性シートが用いられている(1)から(10)のいずれかに記載の手術用ドレープ。
(12)開口部周辺に位置するバクテリアバリア性シートが伸縮性を有している(11)に記載の手術用ドレープ。
(13)開口部が、穴を有する伸縮性のあるゴムシートにより覆われている(1)から(12)のいずれかに記載の手術用ドレープ。
(14)開口部とスリットは連続して形成され、患者の手術箇所に医療器具を装着したままでドレープを患者から外せることができる(1)から(13)のいずれかに記載の手術用ドレープ。
(15)開口部が、基布の裏面および/または表面には基布より小片の補強を兼ねたバクテリアバリア性シートを重ね合わせて開口部を切り取って貫通させたしたものである(1)から(14)のいずれかに記載の手術用ドレープ。
(16)基布より小片のバクテリアバリア性シートが、基布の裏面側(患者側)に設けられている(1)から(15)のいずれかに記載の手術用ドレープ。
(17)基布の開口部周辺のバクテリアバリア性シートを含む部分が他の基布部分より分離可能となるように別体からなる(1)から(16)のいずれかに記載の手術用ドレープ。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、取り付け容易性に優れ、且つ、衛生的な手術用ドレープの提供が可能となる。また、本発明により、手術用ドレープを洗濯可能とすることにより何回にも亘り使用可能とし、資源の浪費が防止され、医療廃棄物の排出量を大幅に削減することができ、且つ、取り付けおよび取り外しの容易性に優れた手術用ドレープを提供することができるとともに、ドレープのバリア性を向上させることにより細菌による感染などの危険性を低減することができる。また、手術用ドレープに要するコストを低減することにより手術経費の節減にも寄与することができる。
例えば、ドレープの円形穴の部分に腕や足を入れ、そのまま医療器具を装着すると、医療器具に引っかかってドレープが抜けなくなってしまうことがあるが、本発明は、医療器具を装着したままでもドレープを外せることができる。また、ドレープを外した後に医療器具を装着することができる場合もあるが、これでは医療の世界で言う不潔になる恐れがあるため、本発明では、ドレープを装着したまま医療器具を装着する方が清潔であり医療現場で好まれている医療器具の装着方法をとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の手術用ドレープにおいて、開口部からドレープの端部にまで設けたスリットが閉じられている状態を示す。
【図2】手術用ドレープのスリット部が面ファスナーにより閉じられている部分の断面図を示す。
【図3】図1に示されたドレープのスリット部が開放されている状態を示す。
【図4】スリット部がスナップにより係合される手術用ドレープにおいて、スリット部が解放された状態を示す。
【図5】スリットの一端が二重になりボタンで係合された部分の断面図を示す。
【図6】泌尿器科で使用される手術用全面ドレープの全体図を示す。
【図7】バクテリアバリア性シートを開口部周辺部に設け、開口部を、穴を有する伸縮性ゴムシートで覆ったドレープを示す。
【図8】開口部の周囲を伸縮性のあるバクテリアバリア性シートで構成したVATSドレープを示す。
【図9】開口部を、穴を有する伸縮性ゴムシートで覆った上肢穴あきドレープの全体図を示す。
【図10】開口部から基布の端部にまで設けられたスリットの開口端が、開口の中心線を外れた位置に設けられているドレープ全体図を示す。
【図11】開口部付近のスリットが解放されることを防止する開き防止部材が設けられているドレープの要部を示す。
【図12】基布の途中までしか形成されていないスリットが解放されることを防止する開き防止部材がスリットの全面を被覆するように設けられているドレープの要部を示す。
【図13】開口部を穴あきゴムシートで覆ったドレープにおいて、スリッドの全面が裏面(患者側)からゴムテープで覆われているドレープの全体図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、主として胸腔や腹腔などの体腔、消化管や尿管などの管腔部または血管などに挿入して、体液の排出、薬液や造影剤などの注入点滴に用いたりする検査や治療などを行うために使用される手術用ドレープに関するものであり、例えば、体内に挿入する中空の柔らかい細い管であるカテーテルや、体外につながれる回路、チューブ、ラインなどに関連して用いることができる手術用ドレープである。本発明は、患者の手術箇所である患部を露出させるための開口部と、この開口部から伸びるスリットを有するとともに、洗濯可能な基布からなることに特徴を有する手術用ドレープに関する。
【0015】
本発明の穴あきスリット付のドレープは、リユーザブルであるため手術で使用された後、これを回収し、洗濯、消毒し、検査し、さらに滅菌を行うことにより再度手術で使用することができる。実用的なドレープとしては、これまで、使い捨ての不織布か綿製品のどちらかしか選択肢はなかった。不織布であればゴミ・環境・CO2の問題がクローズアップされており、また綿製品であれば、血液・体液が透過するため、現在の医療の世界では感染の危険性が高いとされ使用が減ってきている。本発明は、例えば、ポリエステル100%で高温での洗濯・滅菌に耐えられる素材からなっており、また、一切のピンホールも無い状態にあるため血液の透過することはない。また、織物であるため不織布のように破るとか穴を開けるというような使用方法は出来なくなっているが、不織布などの使用状況に類似させた使用法が採用でき、簡便な脱着を実現するためにスリットを入れて対応した。その他、本発明では、単にスリットを入れるだけでなく、スリット部を重ねることにより、バリア性を保てる状態にした。また、スリットを開口またはドレープの中心線を外して設けることにより、ドレープを装着して手術を行う過程でスリット部が盛り上がり、開口または隙間が生じることが防止できる。さらに、本発明の基布は使用する素材を選定することにより、血液がドレープを経由して体に伝わり患者の体に付着している菌が血液を経由してドクターの手や医療器具に接触し汚染することを防止することができる。
【0016】
さらに本発明について詳細に説明する。
従来、通常の円形または四角形状の開口部が設けられ、その開口部に腕や足などを入れて、そのまま医療器具を一旦装着すると、手術後には医療器具やチューブ、ラインなどが引っかかってドレープが抜けなくなってしまうことがある。本発明の手術用ドレープはこれらの器具類を装着したままでもドレープを外せるように、開口部と基布の端部とを結ぶ線上に連続した開閉可能なスリットを形成し、スリットを開閉することにより基布を患者から着脱自在とした点に特徴を有する手術用ドレープである。
手術後、ドレープを外した後に術後用の医療器具を装着する場合があるが、そうすると雑菌類の感染の恐れがあるため、ドレープを装着したまま医療潜具を装着する方が清潔であり、病院では好まれている。ドレープが不織布製で引き裂き力に弱い材質であれば、医療器具を装着した後でも、これを破ってドレープを外す事ができるためこのような心配がなかった。
【0017】
しかしながら、手術用ドレープをリユーザプルとし、手術で使用された後に回収し、洗濯(消毒)し、検査し、滅菌を行い、再度手術で使用するシステムを構築するには従来の手術用ドレープでは不適切でありである。これまで、手術用ドレープでは不織布(使い捨て)か綿製品の選択しかなく、不織布は環境・CO2の問題から、また、加工処理をしていない綿布単独の製品であれば感染の危険性が高いとされ使用が減ってきている。 そこで、本発明では、ポリエステル、綿、ポリアミド、ポリアクリルニトリル、ポリプロピレン、ポリウレタンなどの高温での洗濯・滅菌に耐えられる素材またはその応用品を使用するものであり、好適には、一切のピンホールも無い状態にある布を採用するものである。このような強固な布からなる手術用ドレープは、当然不織布のように破ることにより穴を開けるとか、手術後に破ることにより穴を広げるというような使用方法は出来なくなってしまう。そこで、本発明では、不織布と同様の使用便宜性にするために、開口部と基布の端部を結ぶ線上にスリットを入れることにより、また、スリットを重ね合わせて係止できるようにすることで従来技術の問題点を解決し、さらに開口部周辺をバクテリアバリア性とすることにより汚染の危険を減少させた。
【0018】
本発明は、患者を覆うための基布と、基布が切り取られた開口部とを備える手術用ドレープにおいて、基布を洗濯可能な素材で構成したこと、前記開口部は患者の手術箇所を開口内に挿入する、あるいは露出させる形状であること、開口部と基布の端部とを結ぶ線上に連続した開閉可能なスリットを形成し、スリットを開閉することにより基布を患者から着脱自在とした手術用ドレープに関するものである。その構造は、例えば、図1に示されているように、矩形状の一辺が約90cmの基布1からなり、その中央には直径約10cmの開口部2が設けられている、開口部2の周辺はバクテリアバリア性シート3が設けられ、血液、微生物などによる汚染を防止している。この開口部2から患者の手術箇所を開口内に挿入するかあるいは露出させる。開口部2から基布1の端部5を結ぶ直線上には基布1およびバクテリアバリア性シート3を切断する長さ約40cmのスリット4が設けられその端部5から開口部2に至る切断部分は重ね合わされて密封され、スリット4を左右に開くことにより空間を形成することができる。図3はスリット4を左右に開いて広げたところである。スリットを広げることにより形成された空間を通して機器、パイプ、カテーテルなどが患部に接続されまたは取り外される。また、左右のスリットは重なり会ってバリア性能を向上させることにより血液などの漏えいを防止している。バクテリアバリア性シート3の部分には、撥水性と防水性を備え微生物を透過することのないシートが使用される。
【0019】
手術用のドレープに設けた左右のスリット4は重ね合わせて両者を開閉自在に係合することができる留具が設けられている。この留具は比較的弱い力で係合を解除することができるものであればよく、例えば、面状ファスナー、ボタン、スナップ、フックなどが例示されるが、スリットから液体などの漏洩は防止されなければならない。図1には、面ファスナー4を留め具とする本発明のドレープが例示されている。図2は面ファスナー4a、4bによる係合部の断面の一例を示したものである。図4にはスナップボタンを留め具として係合する本発明のドレープが例示されている。図5はスナップボタンを留め具とした係合部の断面を示すものであり、この係合部では一方の端部が他方の端部に挟み込まれてスナップボタンにより係合されているため、係合部での強度が増加し、さらに密封性が強化される。
【0020】
例えば、図7、8、9に示すように、スリット4をドレープの中心線、または開口部の中心線に沿って設けることにより本発明の目的を達成することができる。しかしながら、これらの図面に示されたようなドレープを手術に使用しているとドレープのスリット4に沿っての部分が盛り上がり、ちょうどスリット4の係止部6の間に開口が形成され易くなるためこの部分にできた開口から微生物などの汚染物が侵入することが生ずる恐れがある。このような原因による汚染を防止するには、ドレープの開口部2の中心線7から外れた箇所をスリットの開始端41とすることにより避けることができる。また、スリット間を係止する係止部6となるドットボタンの設置間隔を小さくすることによっても避けることができる。スリット4の開始端41を中心線7より移動させて設けた例を図10に示す。
また、スリット4に沿っての盛り上がりによる開口や隙間の形成は、スリットの接合部に設ける係止具をスリットの端部にできるだけ近づけて、しかも数多く設けることにより、開口や隙間が形成される余地をなくすることにより防止することができる。
【0021】
また、スリット部4は係止部6により確実に係止して手術中にも開くことがないようにすることが必要である。しかしながら、手術用具の重みなどによりスリット部の係止が外れることがあるため、安全策として、手術中にスリットの解放による汚染、手術の障害となることを防止するために開口近くのスリットが開くことがないように、スリットの解放を防止する器具である開き防止部材8を設置することができる。例えば、スリットの両側6a、6b間を、テープなどを利用して、ドットボタン、面ファスナー、フック、接着性のテープなどにより固定することにより安全性を向上させることができる。図11は開口部2付近のスリット4を布製のテープをドットボタンにより係止した例であり、最も開きやすい部分のみを固定している。
【0022】
図12に示した例は、スリット4の全体を覆う布製の開き防止部材8をドットボタンにより固定したものであり、この開き防止部材8はスリット4が解放されることを防止すると共に、スリット4の部分の密閉を強化することになる。
図13に示した例は、開口部2を、中央に手術用の開口22を有する伸縮性のゴムシートにより裏側(患者側)から覆ったドレープを裏側から見た図である。スリット4の全長が非透水性の開き防止部材8により覆われている。この例では、開き防止材8としてゴムシート21と同じ材質のテープが接着剤により接着されている。この開き防止材8は非透水性であることから、水、細菌類などの透過を防止することができる。ドレープの使用後にはゴムシート類は適宜切断されて患者から取り外される。
このように、スリット4には、開き防止作用を有する部材を設けることにより、またスリット4を閉鎖してスリット部分からの汚染の浸透を防止する部材を設けることにより本発明のドレープはさらに衛生的なものとなる。
【0023】
本発明におけるスリットの長さは、ドレープ全体の大きさ、開口部の大きさ、手術する患部の大きさ位置、患部に接続する機器類、パイプ類の数などに応じて決定されるものである。例えば、図1、3、4に示すように、開口部2から基布の端部5までの全線が切り込まれてスリットとなったドレープや、開口部から基布の端部へ至る線上で、開口部からある程度の長さ(基布の端部にまでは至らない長さ)が切り込まれてスリットとなったドレープ(図6、図12)が挙げられる。スリットは、必ずしも直線状とする必要はなく、患部の位置、大きさや、機器類の設置位置などに応じた適宜な形状とすることができる。
【0024】
基布は、防水性、通気性、吸水性、および撥水性のいずれかを有する素材、あるいはこれらのいずれかを組合せた特性を有する素材から選ばれ、開口部周辺に位置する基布には、特に、バクテリアバリア性シートが用いることが好ましい。
基布の材質としては、ポリエステル、綿、ポリアミド、ポリアクリルニトリル、ポリプロピレン、ポリウレタンなどからなり、高温での洗濯・滅菌に耐えられる素材を使用した布が用いられ、好適には、ピンホールが無い状態にある布を採用することが望まれるが、綿などの吸水性を有する布やピンホールのある布であっても撥水加工や樹脂などのコーティング、積層処理により基布として最適な布製品とすることができる (例えば、前記載素材の布製品の加工方法の一例としては、ニット系・ファブリクス系・ラミネート系・コーティングなどである。) 。基布を洗濯して繰り返し使用可能な素材で構成することにより、医療廃棄物を削減することを可能とする。使用後の基布には血液などが付着していることから、感染源とならないよう滅菌、消毒処理(例えば、80℃の熱水による10分間の熱水消毒工程)が施されて再利用がなされる。基布には、その表面に菌やウィルスに対するバリア性を奏する処理、例えば、縫製箇所に縫製穴が露出しないように縫製を施すことが好ましい。
【0025】
本発明で基布として使用に適した布の具体例としては、例えば、ポリエステル製でバリア性、ドレープ性の高いデュポン社製の「ソンタラ」を挙げることができる。さらに好ましくは、撥水性能、防水性能によるバクテリアバリア性を有するシートや織物を開口部の周囲に設けることにより感染の危険性を低下させることができる。このような特性を有する素材としては、例えば、コーティング剤を使用していない透湿性が極めて高く快適な着用感が得られ、しかもリントの発生が大きく抑えられた生地からなり、外部からのバリア性を保持し着用側には通気性を確保する素材(例えば、米国規格ANSI/AAMIPB70のバリア性能分類レベル2をクリアするポリエステルマイクロファイバー製CPA素材/ナガイレーベン社製造)、また、生地表面に被膜を形成し、同時に繊維の隙間にまで被膜素材を充填させて防水性と耐久性をほぼ限界にまで高めているためどのような液体または微生物の浸透をも許さない多層構造素材(例えば、米国規格ANSI/AAMIPB70のバリア性能分類レベル4をクリアするCPX素材/ナガイレーベン社製造、また同様にレベル4をクリアするゴアメディカルファブリクス素材/ジャパンゴアテックス社製造)を挙げることができる。
【0026】
また、開口部には穴を有する完全防水性の伸縮性のゴムシートにより覆うことも可能である。ゴムシートはバクテリアバリア性を有するものであるとともに、その開口部を広げることにより患部に機器類を容易に装着することができ、装着が終った後には自然と開口部が元に戻るため開口面積が少なくなり体液などの流出による汚染を減少することができる。これらの、バクテリアバリア性を有する素材は、特に、ドレープの開口部周辺に利用することにより感染の危険性を低減することができ、それ以外の部分は撥水処理をした織物、シート類であってもよい。
【0027】
基布の、例えば略円形状に形成されている開口部の周辺部分は、患者の体液などにより汚染されやすい場所であるから、特にバクテリアバリア性を必要とするために上記した素材を設けることが好ましい。さらに開口部分には補強のための素材を付属させることや、液体吸収性などの特性を調整することができる。補強シートは、患部の位置に略円形状の穴が形成されており、この穴は基布開口部に位置を合わせて設けられ、開口部の縁部の補強がなされる。例えば、表面が吸水性に富んだ素材により構成し、裏面側は防水性の富んだ材料により構成したシートを基布表面に設けることにより、患者への液体の付着が防止され、周囲の汚染、術者への感染などを確実に防ぐことが可能となる。また、このシートを基布の裏面側に設けて、患者側に補強シートの防水面を向けることにより患者の体液が基布に浸透しないようにすることができる。バクテリアバリア性シートにより補強性を付与することもできる。
【0028】
バクテリアバリア性シートと補強シートとしては、吸水、防水、撥水性、通気性などの特性を有する素材から選ばれて適宜組み合わせて使用され、例えば、吸水/防水、撥水/防水、防水/耐久性を有する素材類が組み合わされて用いられるが、用途、必要とする特性に応じて単層構造、二重構造、または三重構造以上の積層構造とし、特性の違う各層を組み合わせることにより各種の手術に適用可能とすることができる。例えば、織物生地の両表面に樹脂フィルムをラミネートした三層構造を有し、樹脂フィルムが耐滅菌性・耐アルカリ性を有するポリエステルトリコットからなり、織物生地が無機質のシリコンを充填した無機質フィルムからなるシート、および、優れた撥水性能、防水性能を有するポリエステルフィラメントからなる生地であってリントの発生が大きく抑えられているシートなどがあげられる。
【0029】
次に、泌尿器系の手術用に特別に構成された本発明の手術用ドレープについて説明すると、泌尿器科の分野においては、多くのものが尿失禁を治療し得るよう構成された、ニードルや糸通しや結紮キャリアを使用して、様々な治療を行っている。ドレープに開口部と接続されたスリットを設け開閉可能にすることでニードルや糸通しや結紮キャリアを設置または取り外しすることが容易となる。
泌尿器科で使用されるスリットドレープの一例を図6に示す。例示したドレープは全面ドレープであり、手術用ドレープは手術する患部周辺を中心に着脱自在に設けられている。本発明のドレープは図6に示されるように、開口部2と開口部2からスリット4が形成されたスリット4は基布1の端部には達していない。また、基布より小片のバクテリアバリア性シート7を備え、基布1とシート7は同じ大きさの開口部2を形成しており、開口部2は基布1とシート7が貫通したものである。開口部2は患者の手術箇所のみを開口内に挿入し露出させる形状または大きさである。開口部2から基布1の端部に向かう方向に沿って形成されたスリット4は左右一対が重なるように開閉可能に構成し、基布は洗濯可能な素材で構成している。
【0030】
本発明のドレープは、心臓外科、脳外科、眼科、カテーテル検査、泌尿器科、産婦人科や関節鏡・整形外科などいずれの手術や処置においても使用される。例えば、受水袋付腹腔鏡下胆嚢摘出用ドレープ、吸水パッド付き眼科用手術用ドレープなど手術ごとに適した種類が用意され、また、手術部位全体を一枚で覆う全面ドレープで、手術部位や手術方法に合わせてその大きさや孔の形状大きさが異なる種類のものを取り揃えられ、コードホルダーやポケットなどが取り付けられた種類などがあるが、本発明のドレープはいずれのものにも適用できる。
本発明のドレープでは、必要な部分のみをスリット入りとして取り外し自在にとすることができる。例えば、図7に示したドレープのバクテリアバリア性シート3の部分を着脱自在とし、基布1および基布1に設けられたスリット4との接続を可能とすることができる。
次に、本発明の詳細を実施例により説明するが、本発明は何ら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0031】
本実施例の手術用ドレープを図1に示す。これは手術する患部を主にカバーするドレープの一例であり、横幅82cm、縦幅90cmのポリエステル製布帛(デュポン社製ソンタラ)を基布1とし、その中央部には直径10cmの開口部2が形成されている。開口部2の基布裏面側にはバクテリアバリア性シート3が重ね合わされて開口部2と同じ大きさの開口が切り取られている。バクテリアバリア性シート3は患者から出た体液などが基布1に含浸しないように撥水、防水処理され水や微生物の透過が防止されている。開口部2の下端から基布の端部6に至る全線上において、基布2およびバクテリアバリア性シート3に切り込みを入れられてスリット4が形成されている。このスリット4を左右に開いた状態で、患部に機器類、コード、パイプ、カテーテルなどが接続され、また取り外される。スリット4は、左右の端部を重ね合わせることにより閉鎖され、密封を可能とした。スリット4の左右の端部には面ファスナー4a、4bを備えてスリット4の係合に用いる。図1は面ファスナー4a、4bが係合した状態を示し、図2はそのときの面ファスナー4a、4bを含むスリット部の断面を示す。図3は、面ファスナー4a、4bの係合が解かれスリット4開かれた状態を示す。
【実施例2】
【0032】
本実施例は、実施例1において、係合部材として複数のスナップ6a、6bをスリット4の左右の端面に設けスリット4を開閉自在にした具体例を図4に示す。
【実施例3】
【0033】
本実施例の泌尿器科における手術に使用されるドレープの一例を図6に示す。この手術用ドレープは全面ドレープであり、患者の全身を覆うための基布1と、バクテリアバリア性シート7とから構成され、バクテリアバリア性シート7には、開口部2および指嚢穴(図示せず)が設けられている。基布1は表面に撥水処理が施されたポリエステル製布からなり、上端辺の横幅が約200cm、上端辺から下端辺までの長さは約250cmである。基布1の中央部には、直径約5cmの開口部2とその下方に位置する直径約4cmの指嚢穴(図示せず)とが設けられている。開口部2の周囲で基布1の上層には、横幅が約40cm、縦幅が約50cmのバクテリアバリア性シート7が設けられている。基布1の上端辺と補強シートの上端辺まで距離は約115cmである。開口2からはスリット4が基布1および補強シート7を切断して設けられ、その長さは開口2から上方に10cmの長さである。
【実施例4】
【0034】
本実施例は図7に示すように、整形手術などに使用される280×210cmの大きさのドレープであり、基布1のほぼ中央部には150×60cmのバクテリアバリア性シート3が設けられ、開口部2は伸縮性のあるゴムシート21で覆われている。バクテリアバリア性シート3は完全防水の生地からなり高い圧力をかけても液体が透過しないレベル4クラスの生地であってCPX素材からなっている。開口部2は25×25cmの大きさからなり、中央部にφ3cmの開口22を有するゴムシート21より覆われている。ゴムシート21はバクテリアバリア性シート3と同様の完全防水性能を有している。スリット4は、開口部2からドレープの端部まで設けられ、スリットの左右は重なり会って係合し、体液・バクテリアなどの漏えいを防止している。
【実施例5】
【0035】
本実施例は図8に示すように、全身用の穴あきドレープであり主に腹部などの手術用に用いられる例である。バクテリアバリア性シート3はドレープの腹部に相当する位置に127×136cmの大きさでその中央上部には25×25cmの開口部2が設けられている。基布1は撥水処理されたポリエステル製布からなり、バクテリアバリア性シート3はレベル4クラスのCPX素材からなっている。開口2は力を加えて外側に延伸している間は30×30cmの大きさに拡大することができる。開口側でのスリットの開始端41は、開口2またはドレープの中心線7上に設けられている。
【実施例6】
【0036】
本実施例は図9に示すように、整形用の穴あきドレープであり、バクテリアバリア性シート3が100×70cmの大きさで設けられ、その中央上部には20×20cmの開口部2が設けられている。この開口部2は中央にφ3cmの開口22が設けてある開口部2よりは大きめのゴムシート21により覆われている。基布1は撥水処理されたポリエステル製布からなり、バクテリアバリア性シート3は実施例4と同様の素材からなっている。本実施例においても、開口側でのスリットの開始端41は、開口2またはドレープの中心線7上に設けられている。本実施例のドレープを手術に使用した際には、スリット部が盛り上がり若干の開口や隙間が生じる場合がみられたが、実用上の支障はなかった。
【実施例7】
【0037】
本実施例は、実施例5と同様の全身用の穴あきドレープであり主に腹部などの手術用に用いられる例である。図10に示されるように、開口側でのスリットの開始端41は、開口2またはドレープの中心線7を外れた位置に設けられていて、スリット4の開始端41は開口周端部23が伸びるように設けられている。本実施例のドレープを手術に使用した際には、スリット部が盛り上がり開口や隙間が生じることはなかった。
【実施例8】
【0038】
図11に示す実施例は、穴あきドレープの開口2にスリット4が形成され、開口側でのスリットの開始端41は、開口2またはドレープの中心線7を外れた位置に設けられていて、スリット4の開始端41は開口周端部23の延長上にある。さらに、スリット6a、6b間で開くことがないように開き防止部材8が2か所設けられ、ドットボタン81により係止されている。
【実施例9】
【0039】
図12に示す実施例は、穴あきドレープの開口2にスリット4がドレープの基布の端部にまでは達しないで途中まで形成されている例である。短いスリット4の全長を開き防止部材8でもって覆い、開き防止材8とスリット4の両端面とをドットボタン81、82で固定することにより、スリット4を確実に閉鎖している。
【実施例10】
【0040】
本実施例は図13に示すように、整形用の穴あきドレープであり、バクテリアバリア性シート3が100×70cmの大きさで設けられ、その中央上部には20×20cmの開口部2が設けられている。この開口部2は中央にφ3cmの開口22が設けてある開口部2よりは大きめのゴムシート21により覆われている。基布1は撥水処理されたポリエステル製布からなり、バクテリアバリア性シート3は実施例4と同様の素材からなっている。 本実施例においては、スリット4は、ドレープの裏側(患者側)からゴムシート21と同質の材料から作製されたテープが接着されて封鎖されている。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、スリットを開閉することで医療器具の着脱を簡便に行なうことが可能であるとともに、高温水による洗濯が可能な素材からなる基布を備えた手術用ドレープに関するものであり、例えば、脳外科用(U型含む)、肩関節鏡半座位用、眼科用、婦人科用、牽引・CHS用、経皮的腎結石破砕術用、整形外科用のドレープに適用可能であり、特に患部にさまざまな機器類を装着した手術を行なう用途に好適である。本発明は、基布を洗濯可能な素材で構成するとともに、患者の手術箇所を露出させるための開口部と基布の端部とを結ぶ線上に連続した開閉可能なスリットを形成した繰返し使用可能な手術用ドレープに関するものであり、従来の使い捨てドレープと比較して、一回の手術に要するドレープの費用を低く抑えることができるとともに、ドレープの廃棄処理費用を低減し、廃棄処理の際のCO2の発生、大気汚染を減少させることができる。
【符号の説明】
【0042】
1: 基布
2: 開口部
21:ゴムシート
22:ゴムシートの開口(穴)
23:開口周端部
3、7: バクテリアバリア性シート
4: スリット
41:スリット開始端
4a、4b: 面ファスナー、ボタン
5:基布端部
6a、6b:ボタンを設けたスリット
7:開口あるいはドレープの中心線
8:開き防止部材
81、82:ボタン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の手術箇所を覆うための基布と、基布が切り取られた開口部とを備える手術用ドレープにおいて、基布を洗濯可能な素材で構成したこと、前記開口部は患者の手術箇所を開口内に挿入する、あるいは露出させる形状であること、開口部と基布の端部とを結ぶ線上に開口部から連続した開閉可能なスリットを形成し、スリットを開閉することにより基布を患者から着脱自在としたこと、を特徴とする手術用ドレープ。
【請求項2】
スリットが開口部から基布の端部まで形成されている請求項1に記載の手術用ドレープ。
【請求項3】
スリットが開口部から基布の端部を結ぶ線上の途中まで形成されている請求項1に記載の手術用ドレープ。
【請求項4】
開口部からのスリットの開始端が、開口部の中心線を外れた箇所に設けられている請求項1から3のいずれかに記載の手術用ドレープ。
【請求項5】
スリットが解放されることがないように両側のスリットを同時に係止する開き防止部材がドレープの表面側または裏面側に設けられている請求項1から4のいずれかに記載の手術用ドレープ。
【請求項6】
非透水性の素材からなる開き防止部材がスリット全長に亘り設けられている請求項5に記載の手術用ドレープ。
【請求項7】
スリットの端部が重なり合って係止されている請求項1から6のいずれかに記載の手術用ドレープ。
【請求項8】
スリットを係止するための係止具が、スリットの端部に寄せるとともに係止具間が狭くなるように設けられている請求項1から7のいずれかに記載の手術用ドレープ。
【請求項9】
基布が洗濯可能でありその素材が、ポリエステル、綿、ポリアミド、ポリアクリルニトリル、ポリプロピレン、ポリウレタンから選ばれた1またはそれ以上の材質を含む請求項1から8のいずれかに記載の手術用ドレープ。
【請求項10】
基布が防水性、通気性、吸水性、および撥水性のいずれかを有する素材、あるいはこれらのいずれかを組合せた特性を有する素材からなる請求項1から9のいずれかに記載の手術用ドレープ。
【請求項11】
開口部周辺に位置する基布にバクテリアバリア性シートが用いられている請求項1から10のいずれかに記載の手術用ドレープ。
【請求項12】
開口部周辺に位置するバクテリアバリア性シートが伸縮性を有している請求項11に記載の手術用ドレープ。
【請求項13】
開口部が、穴を有する伸縮性のあるゴムシートにより覆われている請求項1から12のいずれかに記載の手術用ドレープ。
【請求項14】
開口部とスリットは連続して形成され、患者の手術箇所に医療器具を装着したままでドレープを患者から外せることができる請求項1から13のいずれかに記載の手術用ドレープ。
【請求項15】
開口部が、基布の裏面および/または表面には基布より小片の補強を兼ねたバクテリアバリア性シートを重ね合わせて開口部を切り取って貫通させたしたものである請求項1から14のいずれかに記載の手術用ドレープ。
【請求項16】
基布より小片のバクテリアバリア性シートが、基布の裏面側(患者側)に設けられている請求項1から15のいずれかに記載の手術用ドレープ。
【請求項17】
基布の開口部周辺のバクテリアバリア性シートを含む部分が他の基布部分より分離可能となるように別体からなる請求項1から16のいずれかに記載の手術用ドレープ。
【請求項1】
患者の手術箇所を覆うための基布と、基布が切り取られた開口部とを備える手術用ドレープにおいて、基布を洗濯可能な素材で構成したこと、前記開口部は患者の手術箇所を開口内に挿入する、あるいは露出させる形状であること、開口部と基布の端部とを結ぶ線上に開口部から連続した開閉可能なスリットを形成し、スリットを開閉することにより基布を患者から着脱自在としたこと、を特徴とする手術用ドレープ。
【請求項2】
スリットが開口部から基布の端部まで形成されている請求項1に記載の手術用ドレープ。
【請求項3】
スリットが開口部から基布の端部を結ぶ線上の途中まで形成されている請求項1に記載の手術用ドレープ。
【請求項4】
開口部からのスリットの開始端が、開口部の中心線を外れた箇所に設けられている請求項1から3のいずれかに記載の手術用ドレープ。
【請求項5】
スリットが解放されることがないように両側のスリットを同時に係止する開き防止部材がドレープの表面側または裏面側に設けられている請求項1から4のいずれかに記載の手術用ドレープ。
【請求項6】
非透水性の素材からなる開き防止部材がスリット全長に亘り設けられている請求項5に記載の手術用ドレープ。
【請求項7】
スリットの端部が重なり合って係止されている請求項1から6のいずれかに記載の手術用ドレープ。
【請求項8】
スリットを係止するための係止具が、スリットの端部に寄せるとともに係止具間が狭くなるように設けられている請求項1から7のいずれかに記載の手術用ドレープ。
【請求項9】
基布が洗濯可能でありその素材が、ポリエステル、綿、ポリアミド、ポリアクリルニトリル、ポリプロピレン、ポリウレタンから選ばれた1またはそれ以上の材質を含む請求項1から8のいずれかに記載の手術用ドレープ。
【請求項10】
基布が防水性、通気性、吸水性、および撥水性のいずれかを有する素材、あるいはこれらのいずれかを組合せた特性を有する素材からなる請求項1から9のいずれかに記載の手術用ドレープ。
【請求項11】
開口部周辺に位置する基布にバクテリアバリア性シートが用いられている請求項1から10のいずれかに記載の手術用ドレープ。
【請求項12】
開口部周辺に位置するバクテリアバリア性シートが伸縮性を有している請求項11に記載の手術用ドレープ。
【請求項13】
開口部が、穴を有する伸縮性のあるゴムシートにより覆われている請求項1から12のいずれかに記載の手術用ドレープ。
【請求項14】
開口部とスリットは連続して形成され、患者の手術箇所に医療器具を装着したままでドレープを患者から外せることができる請求項1から13のいずれかに記載の手術用ドレープ。
【請求項15】
開口部が、基布の裏面および/または表面には基布より小片の補強を兼ねたバクテリアバリア性シートを重ね合わせて開口部を切り取って貫通させたしたものである請求項1から14のいずれかに記載の手術用ドレープ。
【請求項16】
基布より小片のバクテリアバリア性シートが、基布の裏面側(患者側)に設けられている請求項1から15のいずれかに記載の手術用ドレープ。
【請求項17】
基布の開口部周辺のバクテリアバリア性シートを含む部分が他の基布部分より分離可能となるように別体からなる請求項1から16のいずれかに記載の手術用ドレープ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−205895(P2012−205895A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−57156(P2012−57156)
【出願日】平成24年3月14日(2012.3.14)
【出願人】(591090013)株式会社トーカイ (3)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月14日(2012.3.14)
【出願人】(591090013)株式会社トーカイ (3)
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