説明

手術用吸収性基材と併用するX線検出可能要素とその製作方法

手術用吸収性基材と併用して使用するためのX線検出可能要素は、細長い放射線不透過性コアを少なくとも部分的に包む押出成形されたシースを有する、検出可能要素を含む。吸収性基材は、織布および不織布による手術用スポンジおよびガーゼを含んでもよい。放射線不透過性コアと、少なくとも部分的に包むシースとを有するX線検出可能な糸を作製する方法は、シース内に該放射線不透過性コアを押出成形するステップを含む。一実施形態においては、この押出成形するステップは、シース内の放射線不透過性コアを同時押出成形するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、米国仮特許出願第60/782,141号(2006年3月14日米国特許商標庁に出願)に対する優先権およびその利益を主張する。
【0002】
(技術分野)
本開示は、X線検出可能要素に関し、より具体的には、手術用吸収性基材と併用して使用するためのX線検出可能要素に関する。
【背景技術】
【0003】
放射線不透過性要素は、手術用吸収性基材と併用され、外科的手技の際のその検出、回収、および管理を補助する。知られているように、手術部位内に誤って残された異物は、患者が回復する際に深刻な合併症を引き起こし得る。例えば、手術部位に残されたスポンジは、深刻な感染症または死に至る可能性がある。残されたスポンジをその後除去する場合、手術部位の再切開が必要となる。この再切開によって、感染症、さらなる瘢痕化、または他のより深刻な合併症が生じる可能性がある。したがって、手術部位の閉合前に検出され得る吸収性基材を提供することが必要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
故に、本開示は、手術用吸収性基材と併用して使用するためのX線検出可能要素に関する。検出可能要素は、細長い放射線不透過性コアを少なくとも部分的に包む押出シースを有する。吸収性基材は、織布および不織布による手術用スポンジおよびガーゼを含んでもよい。
【0005】
X線検出可能要素の放射線不透過性コアは、30%乃至90%の不透明化剤(または複数)を含有する細長いフィラメントまたは糸である。不透明化剤(または複数)は、1つ以上のエラストマー材料および/またはポリマーと組み合わせて、または混合されて、コアを形成してもよい。そのようなエラストマーポリマーは、ポリ塩化ビニル(PVC)である。一般的不透明化剤は、硫酸バリウム(BaSO)である。放射線不透過性コアの横断面は、要素の全長にわたって、X線下で要素の均一な可視性を可能にする、略円形である。別様に、放射線不透過性コアの横断面は、正方形、長方形、および楕円形を含む、任意の形状であってもよい。また、放射線不透過性コアの横断面は、葉型または多葉型にされてもよい。放射線不透過性コアは、シース内の連続長であってもよく、または放射線不透過性コアは、ペースメーカーワイヤ等の手術野内の他の構造より認識がより容易となるように、断続的に長手方向に間隔を空けられてもよい。
【0006】
X線検出可能要素のシースは、放射線不透過性コアを中心に押出成形されるか、または放射線不透過性コアおよびシースの両方が一緒に押出成形され、例えば、同時押出成形される。シースは、少なくとも部分的に、放射線不透過性コアを包む。シースは、赤い血液環境内での可視性を向上させるために着色されてもよい。また、シースは、手術野内で遭遇する血液または他の流体を撥水するように、疎水性材料から構成されてもよい。シースは、80%乃至99%のエラストマー材料であってもよい。
【0007】
さらに、シースは、浸出性の微生物製剤で被覆または含浸されてもよい。要素のさらに別の変形例は、電磁気装置による検出のために、磁性材料で含浸または被覆されたシースを有してもよい。検出可能性向上のために、付加不透明化剤(または複数)がシースに添加されてもよい。
【0008】
シースは、可視性を向上させるために、長手方向のシース領域に放射状に分割されてもよい。シース領域の1つ以上は、異なる色および/または組成であってもよい。異なる色のシース領域によって、要素の可視性が向上される一方、内蔵された不透明化剤(または複数)および磁性材料によって、要素の検出可能性が増す。また、可視性を向上させるために、シースを少なくとも部分的に包む付加層が、要素に添加されてもよい。付加層は、前述の材料または色のうちの一部または全部の任意の組み合わせから構成されてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図面を参照することによって、本開示の好ましい実施形態がより理解されるであろう。
【0010】
次に、図面を参照すると(同一参照番号は、いくつかの図を通して類似構成要素を示す)、図1Aおよび1Bは、本開示の好ましい実施形態の1つを示す。X線検出可能要素10は、スポンジ、ガーゼ等の手術用吸収性基材と併用して使用することを企図される。X線検出可能要素10は、シース14内に部分的に包まれる放射線不透過性コア12を含む。
放射線不透過性コア12は、好ましくは、30%乃至90%の不透明化剤(または複数)を含有する、細長いフィラメントまたは糸である。また、不透明化剤の他の割合も企図される。不透明化剤(または複数)は、1つ以上の他のエラストマー材料またはポリマーと、組み合わせて、あるいは混合して、放射線不透過性コア12を形成してもよい。そのようなエラストマーポリマーは、ポリ塩化ビニル(PVC)である。一般的不透明化剤は、硫酸バリウム(BaSO)である。好ましい実施形態の1つでは、放射線不透過性コア12は、X線下で確認される際に、その長さに沿って要素の均一な可視性を提供する、円形横断面を有する。しかしながら、放射線不透過性コア12は、正方形、長方形、楕円形、葉型、および多葉型12a(図2Aおよび2B)を含む、任意の形態をとってもよい。
【0011】
X線検出可能要素10のシース14は、放射線不透過性コア12を少なくとも部分的に包み、好ましくは、放射線不透過性コア12を完全に封入する。シース14は、エラストマー材料、ポリマー材料等から加工されてもよい。シース14は、可視性を向上させるために着色されてもよい。例えば、シース14の色は、要素10と、手術野において見られるリンネルや包帯とを対比させるように選択される。そのような色は、青色または緑色を含むが、他の色も企図される。また、シース14は、要素10と、手術部位内に存在する血液とを対比させるために、白色であってもよい。また、シース14は、手術野内で遭遇する血液または他の流体を撥水するように、疎水性材料から構成されてもよい。シース14は、80%乃至99%のエラストマー材料を含んでもよいが、他の組成も想定される。シース14内で使用されるエラストマー材料の割合によって、要素10の強度、弾性、吸収性基材への熱接着性、および一体性が変化する。
【0012】
さらに、シース14は、浸出性の微生物製剤で被覆または含浸されてもよい。また、シース14は、電磁気装置による検出のために、磁性材料で含浸または被覆されてもよい。X線検出可能性を向上させるために、付加不透明化剤(または複数)がシース14に添加されてもよい。さらに、X線検出可能要素10は、熱積層設計であってもよいことが想定される。
【0013】
図3A〜3Cは、シース24内に楕円形横断面を有する放射線不透過性コア22を備えた、X線検出可能要素20を示す。図3Bは、図3Aの平面b−bに沿った、要素20の長手方向横断面図を示す。図3Cは、図3Aの平面c−cに沿った、要素20の長手方向横断面図を示す。平面b−bにおける放射線不透過性コア22の大きい方の寸法は、平面c−cにおけるコア22の小さい方の寸法よりも、X線下での可視性が高い。楕円形状の放射線不透過性コア22を有するX線検出可能要素20は、X線下で固有の可視輪郭を生成するように、吸収性基材と併用されてもよい。
【0014】
図4Aおよび4Bは、本開示の代替実施形態を示す。X線検出可能要素30は、放射線不透過性コア32と、放射線不透過性コア32を中心に同軸に取り付けられたシース34とを含む。シース34は、好ましくは、押出成形、同時押出成形、または当業者に知られている他の方法によって、コア32を中心に配置される。細長いシース34は、長手方向軸に沿って、放射状の区分またはシース領域36に分割される。1つ以上のシース領域36は、可視性および/または検出可能性を向上させるために、異なる色および/または組成であってもよい。一実施形態では、細長いシース34は、8つのシース領域36に放射状に分割される。シース領域36は、前述のように、可視性の向上および/または血液の存在の検出を促進するために、青色もしくは緑色、または白色等の色で交互であってもよい。付加不透明化剤(または複数)から構成されるシース領域36は、X線下での要素30の検出可能性を向上させる一方、任意のシース領域36に磁性材料を添加することによって、要素30を電磁気装置によって検出させる。シース34は、前述の特性の一部または全部を備える、任意の数のシース領域36を有してもよい。
【0015】
図5は、本開示の代替実施形態を示す。本実施形態によると、X線検出可能要素40は、放射線不透過性コア42と、シース44と、シース44を部分的に包む材料48の付加層とを有する。付加層48は、前述の材料または色の一部または全部から構成されてもよい。付加層48は、要素40の可視性および/または検出可能性を向上させるために提供されてもよい。
【0016】
放射線不透過性コアは、図1〜4に示されるように、シース内で連続した長さであってもよく、または放射線不透過性コアは、図6に示されるように、断続的に長手方向に間隔を空けられてもよい。断続的な放射線不透過性コア52は、ペースメーカーワイヤ等の手術野における他の構造よりも要素50のより容易な認識を提供する。図7に示されるさらに別の実施形態では、X線検出可能要素60は、シース64内に完全に包まれた、すなわち、シース64の端部まで延在しない、放射線不透過性コア62を有してもよい。図8に示されるさらなる実施形態では、X線検出可能要素70は、シース74内に完全に包まれる断続的な放射線不透過性コア72を有する。
【0017】
図9〜11は、吸収性基材88と併用されるX線検出可能要素80を示す。図9は、縫合84の使用により、吸収性基材88に固定された要素80を示す。図10は、吸収性基材88の繊維86に織り込まれたX線検出可能要素80を示す。要素80は、任意の前述の方法によって、吸収性基材88と併用可能である。加えて、要素80は、接合および接着を通して、基材88と併用されてもよい。図11AおよびBは、可視性および/または検出可能性を向上させるために、種々のパターンで吸収性基材88に織り込まれたX線検出可能要素80を示す。図11Aは、伸長された「Z」のパターンで、吸収性基材88に織り込まれたX線検出可能要素80を示す。図11Bは、「X」のパターンで、吸収性基材88に織り込まれた要素80を示す。吸収性基材88は、スポンジ、ガーゼ等であってもよく、織布および不織布による綿織物、合成繊維織物等から加工されてもよい。
【0018】
種々の修正が、本明細書に開示される実施形態に成され得ることを理解されるであろう。したがって、前述の説明は、限定を目的とするものではなく、好ましい実施形態の例示に過ぎないと解釈されたい。当業者は、本明細書に添付の請求項の範囲および精神内において他の修正を想定されることであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】図1Aは、本開示の原理に従う、X線検出可能要素の軸方向横断面図である。
【図1B】図1Bは、図1Aにおける検出可能要素の長手方向横断面図である。
【図2A】図2Aは、図1Aおよび1BにおけるX線検出可能要素の代替実施形態の軸横断面図である。
【図2B】図2Bは、図2Aにおける検出可能要素の長手方向横断面図である。
【図3A】図3Aは、図1Aおよび1BにおけるX線検出可能要素の代替実施形態の軸横断面図である。
【図3B】図3Bおよび3Cはそれぞれ、図3Aの線b−bおよびc−cに沿った、図3AにおけるX線検出可能要素の長手方向横断面図である。
【図3C】図3Bおよび3Cはそれぞれ、図3Aの線b−bおよびc−cに沿った、図3AにおけるX線検出可能要素の長手方向横断面図である。
【図4A】図4Aは、図1Aおよび1BにおけるX線検出可能要素の代替実施形態の軸横断面図である。
【図4B】図4Bは、図4AにおけるX線検出可能要素の側面図である。
【図5】図5は、図1Aおよび1BにおけるX線検出可能要素の代替実施形態の軸横断面図である。
【図6】図6は、図1Aおよび1BにおけるX線検出可能要素の代替実施形態の長手方向横断面図である。
【図7】図7は、図1Aおよび1BにおけるX線検出可能要素の代替実施形態の長手方向横断面図である。
【図8】図8は、図1Aおよび1BにおけるX線検出可能要素の代替実施形態の長手方向横断面図である。
【図9】図9本開示に従って構成されたX線検出可能要素と併用される手術用吸収性基材の断片的平面図である。
【図10】図10は、X線検出可能要素が基材の一体化された一部として形成される、手術用吸収性基材の断片的平面図である。
【図11A】図11Aと図11Bとは、X線検出可能要素によって形成される、異なるパターンを有する手術用吸収性基材の平面図である。
【図11B】図11Aと図11Bとは、X線検出可能要素によって形成される、異なるパターンを有する手術用吸収性基材の平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織内の流体を吸収する器具であって、
吸収性基材と、
該基材と併用される検出可能要素であって、細長い放射線不透過性コアと該コアを少なくとも部分的に包む押出成形されたシースとを有する、検出可能要素と
を含む、器具。
【請求項2】
前記吸収性基材は、手術用のスポンジまたはガーゼである、請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記放射線不透過性コアは、不透明化剤を含む、請求項1に記載の器具。
【請求項4】
前記不透明化剤は、BaSO4である、請求項3に記載の器具。
【請求項5】
前記放射線不透過性コアは、エラストマーポリマーを含む、請求項1に記載の器具。
【請求項6】
前記放射線不透過性コアは、略楕円形横断面を画定する、請求項1に記載の器具。
【請求項7】
前記放射線不透過性コアは、前記長手方向軸に沿って断続的に間隔を空けられている、請求項1に記載の器具。
【請求項8】
前記放射線不透過性コアは、前記シース内に完全に包まれている、請求項1に記載の器具。
【請求項9】
前記シースは、着色されている、請求項1に記載の器具。
【請求項10】
前記シースは、エラストマー材料を含む、請求項1に記載の器具。
【請求項11】
前記シースは、疎水性材料を含む、請求項1に記載の器具。
【請求項12】
前記シースは、1つ以上の浸出性の抗菌剤を含む、請求項1に記載の器具。
【請求項13】
前記シースは、磁性材料を含む、請求項1に記載の器具。
【請求項14】
前記シースは、複数の放射状シース領域を含む、請求項1に記載の器具。
【請求項15】
前記シース領域の1つ以上は、着色されている、請求項14に記載の器具。
【請求項16】
前記シース領域の1つ以上は、不透明化剤を含む、請求項14に記載の器具。
【請求項17】
前記シースは、少なくとも部分的に覆われる、請求項1に記載の器具。
【請求項18】
放射線不透過性コアと、少なくとも部分的に包むシースとを有するX線検出可能な糸を作製する方法であって、
該シース内に該放射線不透過性コアを押出成形するステップを含む、方法。
【請求項19】
前記押出成形するステップは、前記シース内の前記放射線不透過性コアを同時押出成形するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
吸収性物品と併用して使用するためのX線検出可能要素であって、
細長い放射線不透過性コアと、
該コアを少なくとも部分的に包む押出成形されたシースと
を含む、X線検出可能要素。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【公表番号】特表2009−529958(P2009−529958A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500391(P2009−500391)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/005986
【国際公開番号】WO2007/106373
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(501289751)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (320)