説明

手術用資材

【課題】
透湿性、防水性、吸液性を兼ね備え、軽量で密着性が良好で発塵が少なく風合いの良好な手術用資材を提供すること。
【解決手段】
ポリオレフィン系樹脂30〜80重量%へ無機充填材20〜70重量%を配合した溶融状態にあるシート状物の少なくとも一方の表面に、親水剤を0.1〜3.0重量%含有する吸水性不織布を圧着貼合した後、少なくとも一軸方向に延伸処理した手術用資材を提供する。さらに好ましくは、前記ポリオレフィン系樹脂が、低密度ポリエチレンおよび/または直鎖状低密度ポリエチレンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術用資材に関するものであり、さらに詳しくは、透湿性、防水性、吸液性を兼ね備え、軽量で発塵が少なく風合いの良好な手術用資材、特に手術着や手術用覆布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、手術の際に医者や看護士が着用する手術着や患者を覆う手術用覆布として、織布、編物、不織布、プラスチックフィルム等が用いられてきた。これらの手術着や手術用覆布には、透湿性、防水性、吸液性、低発塵性、軽量、風合いなどの特性が要求されている。一般に、織物、編物、不織布は通気性や風合いが良く使用感は良好であるが、防水性が低いために手術の際に生じる多量の体液や水分等が手術着や手術用覆布に付着した場合にはそれらが内部まで浸透するという不都合が生じる。すなわち、手術着として用いた場合は、医者等が患者から出た血液等の体液に暴露され、体液中に存在した細菌やウィルスに感染する恐れがあった。また、手術用覆布として使用した場合には、患者が患者自身の体液や手術に用いる薬品に汚染される恐れがあった。
【0003】
また、織物、編物、不織布等は、糸くずの発生も問題になっている。すなわち、手術用覆布は手術中に手術作業を行うための窓を現場で作ることがあるが、このような場合には特に糸くずの問題は大きく、手術用覆布から発生する繊維片がほぐれ出て、患者を汚染する恐れがあった。このような観点からも、織物や編物は好ましくなく、不織布などの場合でも短繊維を用いた不織布では同様な問題が発生し、糸くずなどの異物による手術室の環境汚染や手術切開部位の汚染が問題となっている。
【0004】
上記のような血液等の体液や薬品による汚染を防ぐために、液体類を吸収する布状物と、液体類を透さないフィルム状物とをそれぞれ一体化したシートが用いられてきた。例えば、特許文献1には、エチレン−酢酸ビニル共重合ポリマーからなるフィルムとポリエチレンフィルムを含む多層フィルムと、親水剤を含浸処理したスパンボンド不織布とを上記エチレン−酢酸ビニル共重合ポリマーフィルムが不織布側になるように熱ラミネート法で一体化された液体遮蔽性、吸液性、風合いを兼ね備えた手術用資材が開示されている。しかし、この手術用資材はエチレン−酢酸ビニル共重合ポリマーからなるフィルムとポリエチレンフィルムを含む多層フィルムを用いているため透湿性がないという欠点がある。
【0005】
また、特許文献1の比較例には、親水剤を含浸処理したスパンボンド不織布に、ポリエチレン樹脂を押出しラミネート加工した手術用資材が記載されているが、この手術用資材は吸液性、風合いは良好であるが、透湿性がなく、不織布表面に20×20cmに10個のピンホールが見られ耐水圧が小さく液漏れしやすいという欠点が指摘されている。
【0006】
一方、出血を伴う外科手術において、特に長時間を要する外科手術(内臓器外科、脳外科)等においては、蒸れることのない通気性のある手術用覆布を使用することによって、患者を低温状態に保つことができる。低温状態の患者は酸素消費量が減少するため、体力の低下を抑えることができ、患者にとって負担の少ない手術が可能となる。このようなことからも透湿性を有する手術用覆布が求められている。
【0007】
特許文献2には、ポリオレフィン繊維とレーヨン繊維からなる吸水性不織布層と、通気性を有するポリオレフィンフィルム層と、前記吸水性不織布層またはポリオレフィン不織布層を積層した強度、吸湿性、バクテリアバリア性、耐熱性に優れた不織布積層体が開示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、液体遮蔽性、吸液性、風合いは良好なものの透湿性がないために、医者や患者から出てくる汗が手術着内、あるいは手術用覆布内へこもり不快感を生じるという欠点があった。また、特許文献2の発明は、透湿性、吸液性を有するものの、熱エンボス処理で吸水性不織布層とポリオレフィンフィルムを貼合しているため不織布層とポリオレフィンフィルム層間の密着性が悪く不織布に起因する毛羽立ち、発塵が多いという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−117500号公報
【特許文献2】特開2003−39612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような問題に鑑みなされたもので、透湿性、防水性、吸液性に優れると共に、吸水性不織布と透湿防水フィルムとの密着性が良好なために擦っても発塵が少なく、優れた風合いを有する手術用資材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)ポリオレフィン系樹脂30〜80重量%に無機充填材70〜20重量%を配合した溶融状態にあるシート状物の少なくとも片面に、親水剤を0.1〜3.0重量%含有する繊維からなる吸水性不織布を圧着貼合した後、少なくとも一軸方向に延伸処理する手術用資材が提供され、
(2)前記ポリオレフィン系樹脂が、低密度ポリエチレンおよび/または直鎖状低密度ポリエチレンである(1)記載の手術用資材が提供され、
(3)前記吸水性不織布が主にポリプロピレンよりなる(1)または(2)記載の手術用資材が提供され、
(4)前記シート状物の両面に吸水性不織布を圧着貼合する(1)乃至(3)記載の手術用資材が提供され、
(5)前記シート状物の少なくとも片面に、親水剤を含有する繊維からなる吸水性不織布を圧着貼合した後、縦方向に1.03〜2.50倍延伸する(1)乃至(4)記載の手術用資材が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の手術用資材は、親水剤を配合した吸水性不織布と、無機充填材を配合したポリオレフィン系樹脂よりなる溶融状態にあるシート状物とを、押出しラミネート法により積層一体化後、延伸して微細孔を生じさせることにより得られ、透湿性、防水性、吸液性に優れると共に、吸水性不織布と透湿防水フィルムとの密着性が良好なために擦っても糸くずなどを発生せず、軽量で優れた風合いを有するという特徴がある。さらに、本発明の手術用資材は軽量化、薄膜化が容易であるため、医療機関での廃棄コストの低減や保管場所の減容化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の透湿防水フィルムの両面に吸水性不織布を押出しラミネートした手術用資材の層構成を示した説明図である。
【図2】本発明の透湿防水フィルムの片面に吸水性不織布を押出しラミネートした手術用資材の層構成を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の手術用資材は、ポリオレフィン系樹脂へ無機充填剤を配合した押出し直後の溶融状態にあるシート状物の少なくとも片面に、吸水性と良好な風合いを付与するために吸水性不織布を押出しラミネートした後、少なくとも一軸方向に延伸処理することにより得られる手術用資材に関するものである。以下本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明の透湿防水フィルムに用いられるポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレンブロックコポリマー、変性ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレンと炭素数3〜18の少なくとも一種のα−オレフィンとの共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体や、エチレンとアクリル酸又はメタクリル酸等との共重合体などのポリエチレン系樹脂が挙げられるが、これらの中でも特に、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。更には、密度が0.910g/cm乃至0.930g/cmの低密度ポリエチレン、及び直鎖状低密度ポリエチレンが好適である。これらの樹脂は、低温での溶融押出が可能で、しかも、後述する無機充填剤を多量に配合したシート状物を延伸処理することによって均一で微細な空隙を多数生じさせることができるので好ましい。また、ドレープ性を付与したい場合は、密度が0.88g/cm乃至0.91g/cmの超低密度ポリエチレンやポリオレフィン系エラストマーを配合するのが好ましい。
【0016】
次に上記ポリオレフィン系樹脂に配合する無機充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等、酸化カルシウム、酸化亜鉛、アルミニウム粉、ゼオライト、硫酸バリウム、タルク、珪藻土等が挙げられ、これらの中でも特に炭酸カルシウムが好適である。そして、分散性や加工性、更には、形成させる空隙の大きさ等を考慮すると、これらの無機充填剤の平均粒径としては、0.5乃至10μmが好ましい。特に好ましくは、0.7乃至7.0μmである。また、無機充填剤としては、上記ポリオレフィン系樹脂30〜80重量%へ70〜20重量%を配合するのが好適である。無機充填剤の配合量が20重量%未満である場合には、延伸工程により多数の空隙を生じさせることが困難であり、70重量%を越えるとフィルムの機械的強度が劣るようになるので好ましくない。
【0017】
次いで、本発明の手術用資材の吸水性不織布を形成する熱可塑性樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のオレフィン系重合体、及びこれらの共重合体を主成分とするポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート等のポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。本発明の吸水性不織布を構成する繊維は単一成分でも混合成分でも良く、また、短繊維でも長繊維でも良い。しかしながら、発塵を少なくするという観点から、繊維の長さは長い方が好ましい。
【0018】
上記熱可塑性樹脂へ吸水性を付与する親水剤としては、脂肪族グリセライド、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、アルキルポリオキシエチレンアルコール、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ソルビタンアルキルエステル、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等のHLBが8以上の界面活性剤、ポリエチレングリコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、側鎖にアンモニウム塩や金属塩などのイオン性基を有するポリマー、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルエステルのようなエチレンオキサイド鎖を有する化合物群から適宜に選択したものが挙げられる。これらは単独で、あるいは二種以上を併用して用いることができる。これら親水剤の添加量は、吸水性不織布の0.1〜3.0重量%が好ましく、さらには0.2〜2.0重量%が好ましい。
【0019】
上記の吸水性不織布を形成する熱可塑性樹脂と吸水性を付与する親水剤とは、例えば単軸押出機、二軸混練機、バンバリーミキサー、加圧型ニーダー、インターナルミキサー等の混練機を用いて樹脂組成物とすることができる。これらの樹脂組成物は、スパンボンド法やメルトブロー法等により太さ20デニール以下のウエブを形成した後、形成したウエブをサーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法等により結合させて吸水性不織布を得ることができる。
【0020】
本発明の手術用資材は、上記の無機充填剤を配合したポリオレフィン系樹脂を押出して得られる溶融状態のシート状物と、その少なくとも片面に、太さ20デニール以下、好ましくは10デニール以下の繊維からなる吸水性不織布とを積層し、圧着貼合することにより得ることができる。不織布の繊維の太さが20デニールを超えると、繊維ひとつひとつの太さが太くなり、手術用資材の風合いが悪くなるため好ましくない。また、吸水性不織布の目付け量は10乃至30g/mが好ましい。不織布の目付け量が30g/mを超えると、得られた手術用資材の重量が重くなるので好ましくなく、逆に不織布の目付け量が10g/m2未満であると、吸液性が劣るので好ましくない。また、本発明の手術用資材の目付け量は30g/m2〜80g/m、さらには40g/m2〜60g/mが好ましい。
【0021】
以下に、本発明の手術用資材の製造方法について述べる。
具体的には、ポリオレフィン系樹脂と無機充填剤とをドライブレンドした混合物、或いは、ポリオレフィン系樹脂と無機充填剤とを溶解混練させた樹脂組成物を押出機に供給し、Tダイを用いてシート状に溶融成形する方法が挙げられる。このように、ポリオレフィン系樹脂へ無機充填剤を配合した樹脂組成物、またはポリオレフィン樹脂と無機充填材との混合物を溶融押出しして溶融状態のシート状物を得ることができる。
【0022】
溶融状態にあるシート状物は、その少なくとも片面に吸水性不織布が積層され、溶融状態にあるシート状物と共にチルロールとゴムロールとで圧着貼合、固化され、次いで延伸処理されることにより本発明の手術用資材を得ることができる。この場合、溶融状態にあるシート状物の両面に吸水性不織布を貼合することもできる。
【0023】
なお、溶融状態にあるシート状物の片面にのみ吸水性不織布を貼合して得られた手術用資材は、手術着として用いる場合は吸水性不織布を貼合した面が外側に、手術用覆布として用いる場合は吸水性不織布を貼合した面が外側になるようにして用いると、患者から出た血液等の体液や薬品などの液体類を不織布層が吸収するので好ましい。
【0024】
また本発明における延伸処理は一軸延伸、二軸延伸のいずれの延伸処理も採用可能であり、一軸延伸でも透湿性能を発現させることができる。まず一軸延伸では、ロール延伸、特に、多段ロール延伸が好適である。延伸温度としては、ロール表面温度を40℃乃至90℃に設定して行うのが好ましい。延伸倍率としては、1.03〜2.50倍が好ましい。一方、二軸延伸ではテンター延伸を用いることができる。二軸延伸も一軸延伸の時と同様に、延伸温度は40℃乃至90℃、延伸倍率は縦、横ともに1.03〜2.50倍が好ましい。本発明の手術用資材は、このように吸水性不織布と透湿防水フィルムとを押出しラミネーション法で貼合したものを延伸するため、透湿防水フィルムの厚さを薄くしても吸水性不織布が存在するため均一な延伸が可能となり、手術用資材の軽量化が可能である。
【0025】
一方、ポリオレフィン系樹脂と無機充填剤とをドライブレンドした混合物、或いは、ポリオレフィン系樹脂と無機充填剤とを溶解混練させた樹脂組成物を押出機にてシート状に溶融成形したフィルムを延伸して微細孔を有する透湿防水フィルムを得、その後、該透湿防水フィルムと吸水性不織布とを熱ラミネート法で貼合する方法もあるが、この方法により得られた手術用資材は透湿防水フィルムと吸水性不織布との密着力が小さいので好ましくない。また、熱ラミネート時の加工温度を上げると透湿防水シートと吸水性不織布との密着力が大きくなるが、延伸によって形成された微細孔が加熱により塞がり得られた手術用資材の透湿性が小さくなるので好ましくない。
【0026】
本発明の手術用資材は血液等の色を目立ち難くするために着色するのが望ましく、透湿防水フィルムを形成するポリオレフィン樹脂組成物へ任意の着色剤を配合することができる。具体的には、血液等が付着しても目立ちにくい、すなわちグリーン系、ブルー系に着色するのが好ましい。さらに、透湿防水フィルムを形成するポリオレフィン樹脂組成物には、必要に応じて酸化防止剤、安定剤、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤などを添加することができる。
【実施例】
【0027】
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、物性の評価は次の通りに行った。
【0028】
(1)密着性
試料の吸水性不織布と透湿防水フィルムとの密着性は、以下の基準で○〜×を決定した。
○:吸水性不織布と透湿防水フィルムとの剥離は見られず、均一に密着している。
△:手で吸水性不織布から透湿防水フィルムを剥がすことができる。
×:吸水性不織布と透湿防水フィルムとがほとんど剥離している。
【0029】
(2)透湿度
透湿度は、JIS K7129の感湿センサ法(付属書A、乾湿センサ法による水蒸気透過度の求め方)に準じ、下記の条件で測定した。 透過セルの温度:40±0.5℃ 高湿度チャンバの設定相対湿度:100% 低湿度チャンバの目標相対湿度:10%相対湿度差:90%
【0030】
(3)耐水圧(防水性)
耐水圧は、JIS L1092 A法により、試験片の裏面に3ケ所から水が出た時の水位を測定することにより求めた。
【0031】
(4)吸水性
吸水性は、水平から45度の傾斜を付けた板上へ試料を載せ、約0.03gの水を100mmの高さから試料へ落とし、落とした水の移動距離を測定することにより求めた。すなわち、水の移動距離が短いほど、試料の吸水性が良好であることを示す。
【0032】
(5)耐磨耗試験
磨耗強さは、JIS L 1096に準じて測定した。
すなわち、直径130mmの円形に切り抜いた試料を磨耗試験機にセットし、磨耗輪CS−10(加重2.45N×2個)を回転速度70rpmで50回転させた前後の試料の重量を測定して求めた。
【0033】
<不織布>
◇ 吸水性不織布A:ポリエチレングリコールオレイルエーテルを0.5重量%含有するポリプロピレン組成物をスパンボンド法により製造した平均繊維径2.4デニール、目付け量18g/mの不織布
◇ 吸水性不織布B:ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートを0.5重量%含有するポリプロピレン組成物をスパンボンド法により製造した平均繊維径2.4デニール、目付け量18g/mの不織布
◇ 親水剤含浸不織布C:ポリプロピレンをスパンボンド法により製造した平均繊維径2.4デニール、目付け量18g/mの不織布へ、水で希釈したアニオン系界面活性剤(サンノプコ製ノプコウェットSN20−T)を1g/mとなるように含浸後乾燥させることにより吸水性処理を行った不織布
◇ 不織布D:ポリエチレンフタレート繊維(平均繊維径3デニール)70重量部とポリエチレン繊維(平均繊維径2デニール)30重量部とからなるスパンボンド法で製造された不織布(目付け量20g/m
◇ 不織布E:レーヨン繊維(平均繊維径2デニール)80重量部とポリエチレン繊維(平均繊維径2デニール)20重量部とからなるスパンボンド法で製造された不織布(目付け量60g/m
【0034】
[実施例1]
線状低密度ポリエチレン(密度:0.920g/cm、MFR:20g/10分)85重量%と低密度ポリエチレン(密度:0.919g/cm、MFR:2g/10分)15重量%とからなるポリオレフィン系樹脂100重量部と炭酸カルシウム(平均粒子径:1.25μm)100重量部とからなる透湿防水フィルム用樹脂組成物を、Tダイを備えた押出し機へ供給し厚さ20μmのシート状に溶融押出しした。次いで、溶融状態にあるシート状物の両面に吸水性不織布Aを積層し、チルロールとゴムロールとで挟んで圧着貼合した。次いで、吸水性不織布Aを貼合した透湿防水フィルムを延伸温度60℃にて縦方向に1.13倍延伸することにより、厚さ55μmの本発明の手術用資材を得た。得られた手術用資材の特性を表1に示す。
【0035】
[実施例2]
吸水性不織布として吸水性不織布Bを用いた以外は実施例1と同様にして、手術用資材を得た。得られた手術用資材の特性を表1に示す。
【0036】
[比較例1]
吸水性不織布として親水剤塗布不織布Cを用いた以外は実施例1と同様にして、手術用資材を得た。得られた手術用資材の特性を表1に併せて示す。
【0037】
[比較例2]
溶融状態の低密度ポリエチレンフィルム(厚さ30μm)の両面へ不織布Dを重ね合せ、圧着貼合し手術用資材を得た。得られた手術用資材の特性を表1に併せて示す。
【0038】
[比較例3]
中密度ポリエチレン(密度:0.94g/cm、MFR:30g/10分)40重量部と炭酸カルシウム(平均粒子径1.0μm)60重量部との混合物を、Tダイを備えた押出し機により溶融押出しした後、縦方向に3倍に延伸し厚さ100μmの透湿防水フィルムを得た。次いで、この透湿防水フィルムと不織布E(繊維径:2デニール、目付け量60g/m)とを重ね合せ、熱エンボス処理することにより、目付け量168g/mの手術用資材を得た。
【0039】
【表1】

【0040】
表1より明らかなように、比較例1は不織布の表面に吸水処理を行っているため吸水性は良好なものの、透湿防水フィルムであるポリエチレンとの密着性が悪く、さらに耐水圧が小さく防水性が悪い。比較例2は透湿性のないポリエチレンフィルムを用いているため耐水圧は良好で押出しラミネート法でポリエチレンフィルムと不織布を貼合しているため密着性が良好なものの、吸水性、透湿性が悪い。また、比較例3は透湿性フィルムを用いているため透湿性、耐水圧は良好なものの不織布による吸水性が悪く、また密着性が低いために磨耗試験での糸くずの発生が多いという欠点を有している。それに対し、本発明の手術用資材は透湿性フィルムと吸水性不織布との貼合を押出しラミネート法で行っているため密着性が良好で耐磨耗試験でも糸くずの発生が極めて少なく、透湿防水フィルムを使用しているため透湿性と防水性(耐水圧が高い)を有しており、さらには、吸水性不織布に親水剤を配合しているため吸水性をも有しており、手術用資材として必要な特性を備えている。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の手術用資材は、手術用資材に要求される透湿性、防水性、吸液性、低発塵性、軽量性、良好な風合いを兼ね備えているため、医療現場における手術を行う際に医者や看護士が着用する手術着や患者を覆う手術用覆布として用いることがでる。
【符号の説明】
【0042】
10、20 手術用資材
11、21 吸水性不織布
12、22 透湿防水フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂30〜80重量%に無機充填材70〜20重量%を配合した溶融状態にあるシート状物の少なくとも片面に、親水剤を0.1〜3.0重量%含有する繊維からなる吸水性不織布を圧着貼合した後、少なくとも一軸方向に延伸処理することを特徴とする手術用資材。
【請求項2】
前記ポリオレフィン系樹脂が、低密度ポリエチレンおよび/または直鎖状低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1に記載の手術用資材。
【請求項3】
前記吸水性不織布が主にポリプロピレンよりなることを特徴とする請求項1または2に記載の手術用資材。
【請求項4】
前記シート状物の両面に吸水性不織布を圧着貼合することを特徴とする請求項1乃至3に記載の手術用資材。
【請求項5】
前記シート状物の少なくとも片面に、親水剤を含有する繊維からなる吸水性不織布を圧着貼合した後、縦方向に1.03〜2.50倍延伸することを特徴とする請求項1乃至4に記載の手術用資材。

【図1】
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【図2】
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