説明

手袋の製造方法及び手袋

【課題】強度、柔軟性、透湿性及び耐薬品性(水、アルコール、アセトン等)に優れ、長時間の着用においても内部が蒸れず、良好な装着性を有する手袋の製造方法及びこのような手袋を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、ポリエステルポリオール(a1)及びポリエーテルポリオール(a2)からなる混合ポリオール(a)とポリイソシアネート(b)とを反応させ、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)を得る第一工程、有機溶媒(B)に溶解された上記ウレタンプレポリマー(A)に対し、ジアミン(c)を用いた鎖延長反応を行い、ポリウレタンウレア(C)の溶液を得る第二工程、及び上記ポリウレタンウレア(C)の溶液に手型を浸漬した後、上記手型を溶液から取り出し、乾燥させ、上記手型表面にポリウレタンウレア(C)の皮膜を形成させる第三工程を有する手袋の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手袋の製造方法及び手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン材料で作られた手袋は、手術用、検査用、食品加工用、染色用など多くの用途に使用されている。ポリウレタン材料は伸縮性が高く、引張強度や引裂強度、針突き刺し抵抗性などに優れると共に、柔軟性などの装着性にも優れている。かかる手袋には、細かな作業に対応すべく、より薄い膜で形成されることが要望される。また、手袋を疲れずに長時間装着するには、柔軟性と共に蒸れないことも求められる。蒸れると、作業者自身の手の荒れを惹き起こす場合や、汗による不快感や雑菌の繁殖など、衛生上の問題を惹き起こす。このような蒸れを無くすために、ポリウレタン材料には、高い透湿性が求められている。さらには、食品や各種工業分野では、様々な薬品が扱われることから、耐薬品性の高い手袋の開発が求められている。
【0003】
そこで、上記要求に対応するために、以下の技術が開発されている。
(1)ポリエステルウレタンウレア又はポリエーテルウレタンウレアの有機溶媒溶液を用いた手袋(特許第3221995号公報参照)
(2)ポリウレタンエラストマーにモレキュラーシーブが添加された手袋(特表2006−504811号公報参照)
(3)テトラヒドロフランとエポキシ化合物との共重合体からなるポリエーテルウレタンウレアを用いた手袋(特開2004−218096号公報参照)
(4)ポリエステルジオール及び/又はポリエーテルジオールを用いたポリウレタンを用いた手袋(特開2004−215686号公報参照)
【0004】
上記(1)のように、ウレア構造を有する材料を用いた手袋は、引裂強度や引張強度に優れ、また、成形した際のピンホールの発生が少ないなどの優れた特徴を有するが、透湿性や耐薬品性に劣る。透湿性を改善したものとして、モレキュラーシーブを添加した上記(2)の手袋があるが、この手袋においても、耐薬品性は改善されていない。また、上記(3)の手袋は、耐加水分解性や装着した際の風合いに優れているが、強度は劣る。一方、上記(4)の手袋は、強度及び繰り返し装着した際の装着性に優れるものの、耐薬品性に劣る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3221995号公報
【特許文献2】特表2006−504811号公報
【特許文献3】特開2004−218096号公報
【特許文献4】特開2004−215686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、強度、柔軟性、透湿性及び耐薬品(水、アルコール、IPA,アセトン等)性に優れ、長時間の着用においても内部が蒸れず、良好な装着性を有する手袋の製造方法及びこのような手袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、
ポリエステルポリオール(a1)及びポリエーテルポリオール(a2)からなる混合ポリオール(a)とポリイソシアネート(b)とを反応させ、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)を得る第一工程、
有機溶媒(B)に溶解された上記ウレタンプレポリマー(A)に対し、ジアミン(c)を用いた鎖延長反応を行い、ポリウレタンウレア(C)の溶液を得る第二工程、及び
上記ポリウレタンウレア(C)の溶液に手型を浸漬した後、上記手型を溶液から取り出し、乾燥させ、上記手型表面にポリウレタンウレア(C)の皮膜を形成させる第三工程
を有する手袋の製造方法である。
【0008】
当該製造方法によれば、上記工程を有することで、強度、柔軟性、透湿性及び耐薬品性に優れ、長時間の着用においても内部が蒸れず、良好な装着性を有する手袋を得ることができる。特に、当該製造方法においては、得られるポリウレタンウレアがポリエステルポリオール骨格とポリエーテルポリオール骨格とを有するため、強度と透湿性及び柔軟性との両立を図ることができる。
【0009】
上記ジアミン(c)が、脂肪族ジアミン(c1)及び脂環族ジアミン(c2)からなることが好ましい。ジアミン(c)として上記2種を混合して用いることで、得られる手袋の強度と柔軟性とを共にさらに高めることなどができ、その結果、装着性をより向上させることができる。
【0010】
上記ポリエステルポリオール(a1)とポリエーテルポリオール(a2)との質量比(a1/a2)としては、50/50以上95/5以下が好ましい。用いる2種のポリオールをこのような質量比とすることで、得られる手袋の各特性をバランスよくさらに高めることができる。
【0011】
上記脂肪族ジアミン(c1)と脂環族ジアミン(c2)との質量比(c1/c2)としては、10/90以上90/10以下が好ましい。このような質量比とすることで、得られる手袋の強度及び耐薬品性と柔軟性とを高いレベルで両立させることができる。
【0012】
本発明の手袋は、当該製造方法により得られるものである。当該手袋は、強度、柔軟性、透湿性及び耐薬品性に優れ、長時間の着用においても内部が蒸れず、良好な装着性を有する。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明の製造方法によれば、強度、柔軟性、透湿性及び耐薬品性に優れ、長時間の着用においても内部が蒸れず、良好な装着性を有する手袋を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の手袋の製造方法及び手袋の実施の形態を詳説する。
【0015】
<手袋の製造方法>
本発明の手袋の製造方法は、
ポリエステルポリオール(a1)及びポリエーテルポリオール(a2)からなる混合ポリオール(a)とポリイソシアネート(b)とを反応させ、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)を得る第一工程、
有機溶媒(B)に溶解された上記ウレタンプレポリマー(A)に対し、ジアミン(c)を用いた鎖延長反応を行い、ポリウレタンウレア(C)の溶液を得る第二工程、及び
上記ポリウレタンウレア(C)の溶液に手型を浸漬した後、上記手型を溶液から取り出し、乾燥させ、上記手型表面にポリウレタンウレア(C)の皮膜を形成させる第三工程
を有する。以下、各工程について順に説明する。
【0016】
<第一工程>
この第一工程では、上述のとおり、ポリエステルポリオール(a1)及びポリエーテルポリオール(a2)からなる混合ポリオール(a)とポリイソシアネート(b)とを反応させ、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)を得る。
【0017】
上記ポリエステルポリオール(a1)は、得られる手袋の強度等を高める効果がある。上記ポリエステルポリオールとしては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。
【0018】
上記ポリエステルポリオールを構成する酸成分としては、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等が挙げられる。これらの中でもアジピン酸が好ましい。
【0019】
上記ポリエステルポリオールを構成するグリコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール、ポリオール成分としてグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。これらの中でも、エチレングリコール及びプロピレングリコールが好ましい。
【0020】
また、上記ポリエステルポリオールとしては、ポリカプロラクトン、ポリ(β−メチル−γ−バレロラクトン)、ポリバレロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール等も挙げられる。
【0021】
上記ポリエステルポリオール(a1)の分子量としては特に限定されず、低分子量から高分子量のものまで使用可能である。なお、得られる手袋の強度等の諸特性を高めるためには、数平均分子量が1,000〜6,000で2官能以上のポリエステルポリオールが好ましく、数平均分子量が1,800〜5,500の2官能以上のポリエステルポリオールがさらに好ましい。
【0022】
上記ポリエーテルポリオール(a2)は、エーテル結合の酸素を有しており、水分子を呼び込む性質が炭素原子に比べて強い。従って、ポリエーテルポリオールは、得られる手袋の透湿性等を改善する効果がある。また、ポリエーテルポリオールは、得られる手袋の柔軟性も向上させる。
【0023】
上記ポリエーテルポリオールとしては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。上記ポリエーテルポリオールは、例えば、水や、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の低分子量ポリオールを開始剤として用い、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を開環重合させることにより得ることができる。
【0024】
上記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の官能基数が2以上のものを挙げることができる。
【0025】
上記ポリエーテルポリオールとしては、テトラヒドフランのホモポリマー(ポリテトラメチレンエーテルジオール)及びテトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフラン等の置換基としてアルキル基を有するテトラヒドロフランとの共重合体(テトラメチレンエーテルとアルキル基側鎖を有するテトラメチレンエーテルとの共重合体等)が好ましい。これらのポリエーテルポリオールを用いることで、得られる手袋の柔軟性や耐薬品性等をさらに高めることができる。
【0026】
上記ポリエーテルポリオール(a2)の分子量としては特に限定されず、低分子量から高分子量まで使用可能である。なお、得られる手袋の透湿性や柔軟性等の諸特性を高めるためには、平均分子量が1,000〜6,000で2官能以上のポリエーテルポリオールが好ましく、平均分子量が1,500〜4,000の2官能以上のポリエーテルポリオールがさらに好ましい。
【0027】
混合ポリオール(a)におけるポリエステルポリオール(a1)とポリエーテルポリオール(a2)との質量比としては、50/50以上95/5以下が好ましく、60/40以上90/10以下がさらに好ましい。このような質量比とすることで、得られる手袋の各特性をバランスよくさらに高めることができる。具体的には、上記質量比が上記下限未満(ポリエステルポリオール(a1)が少なく、ポリエーテルポリオール(a2)が多い)の場合は、得られる手袋は透湿性や柔軟性に優れるが、強度や耐薬品性(耐水性等)が低下する。逆に、上記質量比が上記上限を超える(ポリエステルポリオール(a1)が多く、ポリエーテルポリオール(a2)が少ない)場合は、得られる手袋の強度や耐薬品性(耐水性等)は向上するが、透湿性や柔軟性が低下する。
【0028】
上記ポリイソシアネート(b)としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。上記ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0029】
上記芳香族ポリイソシアネートとしては、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等を挙げることができる。
【0030】
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0031】
上記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0032】
上記脂環族ポリイソシアネートとしては、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0033】
これらの中でも、入手の容易さや生産性等の点から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートがより好ましい。
【0034】
上記混合ポリオール(a)とポリイソシアネート(b)との配合比は、混合ポリオール(a)の水酸基モル当量1に対して、ポリイソシアネート(b)のイソシアネート基モル当量が1より大きくなることが必要である。このようにすることで、第一工程で得られるウレタンプレポリマー(A)の末端にイソシアネート基を存在させることができる。通常、(b)/(a)のモル当量比は1.5以上2.2以下であり、より好ましくは1.6以上2.1以下である。
【0035】
第一工程で得られるウレタンプレポリマー(A)におけるイソシアネート基の含有率(NCO%、質量基準)としては、1.0%以上4.0%以下が好ましく、1.1%以上3.0%以下がより好ましい。
【0036】
第一工程であるウレタンプレポリマー(A)を得るウレタン化反応は、公知の種々の方法を用いることができる。通常、(1)全量仕込みで反応する場合と、(2)ポリオール(a)や触媒をフラスコに仕込み、ポリイソシアネート(b)を滴下する方法とに大別されるが、反応を簡便に行う場合は上記(1)が好ましい。
【0037】
ウレタン化反応における反応温度としては120℃以下が好ましく、70℃以上110℃以下がより好ましい。120℃を越えると、アロハネート反応が進行し、直鎖状の構造を有するウレタンプレポリマーが得られなくなる。また、120℃を超えると、反応速度の制御が困難になる。なお、70℃を下回ると、反応速度が低下する。
【0038】
なお、十分な反応を行うためには、このウレタン化反応の反応時間としては、1時間以上20時間以下が好ましく、2時間以上10時間以下がより好ましい。
【0039】
また、第一工程(ウレタン化反応)においては、必要に応じて、得られる手袋の強度の改善や粘度の調整のために、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のグリコール類、エチレンジアミン、N−アミノエチルエタノールアミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン等の多価アミン類も併用することができる。
【0040】
第一工程(ウレタン化反応)において、反応速度を調整するために必要に応じて公知の触媒を使用することができる。上記触媒としては、例えば、3級アミン系化合物や有機金属系化合物等が挙げられる。3級アミン系化合物としては、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、DBU等が挙げられる。有機金属系化合物としては、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、トリブチル錫オキサイド、2−エチルヘキサン酸錫、テトラブチルチタネート、2−エチルヘキサン酸鉛、ナフテン酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉄、鉄アセチルアセトネート、2−エチルヘキサン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、ナフテン酸ジルコニウムなどが挙げられる。これらの中でも、反応性の点から有機金属系化合物が好ましく、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)がより好ましい。また安全性の点からは有機金属系化合物よりも3級アミン径化合物が好ましく、更に好ましくは無触媒が好ましい。上記触媒の使用量は特に限定されないが、全体溶液に対して0〜0.1質量%が好ましい。
【0041】
第一工程(ウレタン化反応)において、粘度調整や反応速度調整のために必要に応じて、溶媒を使用することができる。上記溶媒は、通常の一般的な有機溶媒、例えば、トルエン、酢酸エチルなどの他に、第二工程において使用する有機溶媒(B)と同じであってもよい。上記溶媒の使用量は、全固形分100質量部当たり、0〜20質量部程度の範囲が好ましい。触媒を使用しない場合は、溶媒を使用せずに反応成分の濃度を高めた状態とすることにより反応速度を高める方法が好ましい。
【0042】
<第二工程>
この第二工程では、通常、先ず、第一工程で得られたウレタンプレポリマー(A)を有機溶媒(B)に溶解させる。但し、第一工程のウレタン化反応を有機溶媒中で行った場合、この有機溶媒をそのまま用いることもできる。
【0043】
上記有機溶媒(B)としては、特に限定されないが、ウレタンプレポリマー(A)及び得られるポリウレタンウレア(C)の溶解性や、第三工程における取扱性等の点から、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルプロピオンアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルホスホアミドなどが好ましく、DMFやDMAcがより好ましい。
【0044】
鎖延長反応前の溶液におけるウレタンプレポリマー(A)の濃度としては、15質量%以上25質量%以下が好ましい。また、この溶液の粘度としては、5Pa・s以下が好ましい。また、この溶液の温度は70℃以下とすることが好ましい。この溶液をこのような条件とすることで、鎖延長反応をより効果的に行うことができる。
【0045】
上記溶液にジアミン(c)を添加することで、ウレタンプレポリマー(A)に対する鎖延長反応を行い、ポリウレタンウレア(C)の溶液を得る。
【0046】
上記ジアミン(c)が、脂肪族ジアミン(c1)及び脂環族ジアミン(c2)からなることが好ましい。ジアミン(c)として上記2種を混合して用いることで、得られる手袋の強度と柔軟性とを共にさらに高めることなどができ、その結果、装着性をより高めることができる。
【0047】
上記脂肪族ジアミン(c1)は、ポリウレタンウレア(C)の溶液の粘度を高め、また、得られる手袋の柔軟性を付与する効果が大きいが、強度を低下させる傾向がある。
【0048】
上記脂肪族ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルー1,5−ペンタンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、ポリアルキレンポリアミン等が挙げられる。これらの中でも、エチレンジアミンが好ましい。
【0049】
上記脂環族ジアミン(c2)は、ポリウレタンウレアの溶液の粘度を高めることなく、得られる手袋の強度や耐薬品性を改善する効果があるが、柔軟性を悪くする傾向がある。また、脂環族ジアミンを用いることで、溶液の粘度の長期安定性が良好となる。
【0050】
上記脂環族ジアミンとしては、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン等が挙げられる。これらの中でも、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが好ましい。
【0051】
上記脂肪族ジアミン(c1)と脂環族ジアミン(c2)との質量比(c1/c2)としては、10/90以上90/10以下が好ましい。このような質量比とすることで、得られる手袋の強度及び耐薬品性と柔軟性とを高いレベルで両立させることができる。上記質量比が上記下限未満(脂肪族ジアミン(c1)が少なく、脂環族ジアミン(c2)が多い)の場合は、柔軟性が低下する。逆に、上記質量比が上記上限を超える(脂肪族ジアミン(c1)が多く、脂環族ジアミン(c2)が少ない)場合は、溶液の粘度が高くなり、また、得られる手袋の強度や耐薬品性が低下する。
【0052】
上記ジアミン(c)においては、さらに、必要に応じてトルエンジアミンや4,4′−ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ジアミンを加えて用いることもできる。芳香族ジアミンは、得られる手袋の強度や耐熱性を向上させることができる。
【0053】
上記ジアミン(c)の使用量としては、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)中のイソシアネート量と化学量論的に当量となる量が好ましい。通常、ウレタンプレポリマー(A)に対して0.3質量%以上2.0質量%以下である。
【0054】
上記ジアミン(c)を用いたウレタンプレポリマー(A)に対する鎖延長反応の際の温度としては、室温以上70℃以下が好ましい。ジアミン(c)のウレタンプレポリマー(A)を含む溶液への添加により反応熱が発生するが、70℃を超えないようにすることが好ましい。70℃を越えると、得られるポリウレタンウレア(C)が網目構造を形成するいわゆるゲル化が発生し、手袋成形のための液状を確保できなくなる場合がある。一方、室温未満では反応時間がかかるだけでなく、溶液の粘度が高くなり、手袋成形に適切な粘度の溶液を得ることができない場合がある。
【0055】
なお、ジアミン(c)は、有機溶媒(B)に溶解し、希釈して添加することもできる。
【0056】
鎖延長反応の終点は、イソシアネート基の化学測定や、IR測定によるイソシアネート基の消失により判断することができる。
【0057】
なお、溶液粘度の安定性のために、鎖延長反応の終了後、上記溶液に反応停止剤を添加することが好ましい。上記反応停止剤としては、エチルアミン等の2級アミン化合物、エタノール等の1級アルコール、エチレングリコール等のジオール、酒石酸等の酸などを挙げることができる。
【0058】
<第三工程>
第三工程では、上記ポリウレタンウレア(C)の溶液に手型を浸漬した後、上記手型を溶液から取り出し、乾燥させ、上記手型表面にポリウレタンウレア(C)の皮膜を形成させる。上記皮膜を手型から離すことで、手袋を得ることができる。
【0059】
上記ポリウレタンウレア(C)の溶液としては、濃度が14質量%以上25質量%以下、粘度が5Pa・s以上25Pa・s以下(30℃測定)であることが好ましい。より好ましくは、濃度が15質量%以上20質量%以下で、粘度が7Pa・s以上15Pa・s以下である。特に好ましくは、濃度が17質量%以上20質量%以下で、粘度が8Pa・s以上12Pa・s以下である。上記溶液の濃度及び粘度をこのような範囲とすることで、薄膜で、かつ上記諸性能を好適に発揮することができる手袋を効率的に製造することができる。
【0060】
上記手型は、手の形をしたモールドである。上記手型は、通常、木、アルミニウム、セラミックなどから形成されている。
【0061】
上記溶液から手型を引き抜く速度を調整することなどにより、手型表面の液膜(得られる皮膜)の厚みを調整することができる。
【0062】
上記手型を溶液から取り出した後の乾燥における乾燥温度としては、70℃以上150℃以下が好ましく、乾燥時間としては5分以上1時間以下が好ましい。
【0063】
なお、上記ポリウレタンウレア(C)の溶液には、必要に応じて、顔料、防黴剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤、加水分解防止剤、香料、染料、無機系充填剤、抗菌剤、粘度調節剤、チキソ剤、架橋剤等の添加剤を、本発明の趣旨を損なわない範囲で添加してもよい。
【0064】
また、手型表面にポリウレタンウレア(C)の皮膜を形成させた後、この皮膜表面に公知の防着剤を付着させることもできる。この手段としては、防着剤の水溶液に、表面にポリウレタンウレア(C)の皮膜が形成された手型を浸漬し、引き出した後、乾燥させる方法を挙げることができる。
【0065】
<手袋>
本発明の手袋は、当該製造方法により得られるものである。当該手袋は、強度、柔軟性、透湿性及び耐薬品性に優れ、長時間の着用においても内部が蒸れず、良好な装着性を有する。さらに、当該手袋は、特別な添加物等を必須としないことから、水溶性不純物の量も減らすことができ、発塵性も低くすることができる。従って、当該手袋は、手術用、検査用、食品加工用、染色用など様々な用途に使用することができる。
【0066】
当該手袋の透湿度の下限としては、1,000g/m・24hrが好ましく、1,400g/m・24hrがより好ましく、1,500g/m・24hrがさらに好ましい。透湿度が上記下限未満の場合は、透湿性に乏しく、蒸れやすくなり、装着性が低下する。なお、当該手袋の透湿度の上限としては、特に限定されないが、例えば、2,300g/m・24hrである。当該手袋の透湿度を上記上限より高くすると、強度等が低下する場合がある。
【0067】
当該手袋の膜厚としては、特に限定されないが、0.05mm以上0.3mm以下が好ましく、0.08mm以上0.25mm以下がより好ましく、0.1mm以上0.2mm以下がさらに好ましい。膜厚を上記範囲とすることで、強度、柔軟性、透湿性及び耐薬品性等をバランスよく高めることができる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0069】
実施例中の特性値の測定法を以下に示す。
【0070】
溶液粘度:
B型回転粘度計(東京計器製)により、温度30℃にて測定した。
【0071】
膜厚:
ミツトヨ社製の膜厚測定器PK−1012 SUを用いて測定した。
【0072】
透湿性(透湿度):
JIS L 1099 A−1法(塩化カルシウム法)に準拠し、透湿度を測定した。
手袋を構成する皮膜の厚みが0.10mm〜0.20mmである場合、判断基準は、不良=1,000g/m24hr未満、やや良=1,000g/m24hr以上1,400未満g/m24hr、良好=1,400g/m24hr以上2,300g/mhr未満である。
【0073】
強度(常態引張強度):
浸漬成形によって得た成形膜からJIS 3号のダンベルを試験片として切り出し、LLOYD社の引張試験機LR−5Kを用い、チャック間隔60mm、標線20mm、引張速度500mm/分、温度23±2℃で、JIS K6251に準拠して評価した。
試験片が破断したときの荷重を測定し、下記式によって引張強度を求めた。
引張強度(MPa)=F/A
ただし、Fは破断時の引張荷重(N)、Aは試験片の断面積(mm)である。
判断基準は、不良=20MPa未満、やや良=20MPa以上30MPa未満、良好=30MPa以上である。
【0074】
柔軟性(100%モジュラス):
100%伸び時の引張荷重を常態引張強度と同条件で測定して、下記の式によって求めた。
100%モジュラス(MPa)=F100%/A
ただし、F100%は100%伸び時の引張荷重(N)である。
判断基準は、不良=3MPa以上、やや良=2.5MPa以上3MPa未満、良好=2MPa以上2.5MPa未満、特に良好=2MPa未満である。
【0075】
柔軟性(伸び):
常態引張強度を求める際に試験片が破断したときの伸びによって評価した。このとき、試験片に一対の標線を記し、試験前の標線間距離をL(mm)とし、試験により標線間距離が伸びて試験片が破断したときの標線間距離をL(mm)として、下記の式によって求めた。
伸び(%)=(L−L)/L×100
【0076】
耐水性(引張強度):
上記強度の測定と同様にしてJIS 3号のダンベルを切り出し、23±2℃の水に30分間浸漬させた後に取り出した。このサンプルを軽く拭ってから60秒後に上記強度の測定と同様の引張試験を行い、評価した。
耐水性における引張強度の判断基準は、不良=20MPa未満、やや良=20MPa以上25MPa未満、良好=25MPa以上である。
【0077】
耐水性(面積膨潤率):
サンプルから50×50mmの試験片を切り出し、試験液(23℃±2℃)に30分浸漬した後取り出す。この試験片を軽く拭ってから再度面積を測定し、下記式より面積膨潤率を求めた。
面積膨潤率(%)=(浸漬後の面積−初期の面積)/初期の面積×100
【0078】
耐エタノール性(引張強度及び膨潤率):
上記強度の測定と同様にしてJIS 3号のダンベルを切り出し、23±2℃の70%エタノールに30分間浸漬させた後に取り出した。このサンプルを軽く拭ってから60秒後に上記強度の測定と同様の引張試験を行い、評価した。また、浸漬後に取り出したサンプルの面積膨潤率を測定した。
耐エタノール性における引張強度の判断基準は、不良=20MPa未満、やや良=20MPa以上25MPa未満、良好=25MPa以上である。
【0079】
耐IPA性(引張強度及び膨潤率):
上記強度の測定と同様にしてJIS 3号のダンベルを切り出し、23±2℃のイソプロピルアルコール(IPA)に30分間浸漬させた後に取り出した。このサンプルを軽く拭ってから60秒後に上記強度の測定と同様の引張試験を行い、評価した。また、浸漬後に取り出したサンプルの面積膨潤率を測定した。
耐IPA性における引張強度の判断基準は、不良=15MPa未満、やや良=15MPa以上25MPa未満、良好=25MPa以上である。
【0080】
耐アセトン性(引張強度及び膨潤率):
上記強度の測定と同様にしてJIS 3号のダンベルを切り出し、23±2℃のアセトンに30分間浸漬させた後に取り出した。このサンプルを軽く拭ってから60秒後に上記強度の測定と同様の引張試験を行い、評価した。また、浸漬後に取り出したサンプルの面積膨潤率を測定した。
【0081】
溶出性:
手袋の外表面のうち、手のひら面1cmあたり2mlの超純水で室温にて1時間溶出させ、64cmを128mlで溶出させた溶液を試料溶液とした。
下記のそれぞれの成分を各分析方法にて定量し、各細分の合計量を算出した。
Ca,Si,Zn:ICP発光分析法
Na,K :原子吸光光度法
Cl :イオンクロマトグラフ法
【0082】
発塵性:
JIS B−9923(タンブリング法)に準拠し、手袋一枚あたりの気中パーティクル(0.3μm以上粒子)測定を行った。
サンプル数:20枚、連続した3回の測定値の平均値で評価した。
【0083】
装着性:
手袋を5名の作業者に装着し、5時間通常に事務作業を行った後、各作業者の感想を聴いた。作業者5名の意見より3名以上の意見が同じ場合を集約して、以下のように判定した。
良好=汗による蒸れがなく、手袋装着による疲労感をほとんど感じない。
やや良=汗による蒸れがわずかであり、装着感はあるが、疲労感もわずかである。
不良=汗による蒸れと皮膚のふやけが観察され、疲労感も強い。
【0084】
(実施例1)
アジピン酸とエチレングリコール及びブチレングリコールとからなり数平均分子量4,580であるポリエステルジオール共重合体(a1:日立化成ポリマー製テスラックTA−22−282)180質量部と、平均分子量が3,000のポリテトラメチレンエーテルジオール(a2:保土ヶ谷化学製PTG3000)20質量部、及びジフェニレンメタンジイソシアネート(b:三井武田ケミカル製コスモネートPH)22質量部を反応器に仕込んだ。これらを無溶媒の条件下で80℃、2時間反応させ、イソシアネート末端のウレタンプレポリマー(A)を得た。
【0085】
引き続き、上記反応器に、有機溶媒(B)として900質量部のジメチルフォルムアミド(DMF)を加え、ウレタンプレポリマー(A)を溶解させ、ウレタンプレポリマー(A)の溶液を得た。次いで、温度を50℃とした上記溶液に、エチレンジアミン(c1:EDA)0.9質量部及び1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(c2:1,3−BAC)0.6質量部をDMF20質量部に溶解した溶液を加え、鎖延長反応をした。この溶液に、さらにエチレングリコール7質量部とジエチルアミン1質量部とを添加することによりポリウレタンウレア(C)の溶液を得た。この溶液をDMFで希釈して、濃度18質量%で、B型粘度計による粘度が9Pa・s(30℃)の溶液とした。
【0086】
次に、セラミック製の手型を上記溶液にゆっくりと浸漬した。その後、浸漬した手型を引き上げ、75℃で30分間乾燥させて成形したところで、裾部分にビード加工を施した。さらに、150℃で15分間乾燥を行い、残留する溶媒を完全に除去し皮膜を形成した。次いで、防着剤「坂井化学工業製レジガード U−5SR」を固形分濃度が2.5質量%になるよう水で希釈し、これに皮膜が形成された上記手型を浸漬した。上記手型を引き上げた後、100℃で10分間乾燥させた後、成形体(皮膜)を反転して手型から離型させ、掌部分の膜厚が0.11mmである手袋を得た。得られた手袋の平坦部からサンプルを切り出し、物性及び装着性の評価を行った。その結果を表1に示す。また、溶出性、発塵性はそれぞれ、0.1mg/l未満、30個/cft未満と、共に十分に低い値であった。
【0087】
(実施例2)
実施例1において、ポリエステルジオール共重合体(a1)とポリテトラメチレンエーテルジオール(a2)との量を表1の実施例2に記載の量に変え、さらにジフェニレンメタンジイソシアネート(b)を表1の実施例2に記載の量に変えたこと以外は同実施例に従って手袋を得た。評価結果を表1に示す。
【0088】
(実施例3)
実施例1において、ポリエステルジオール共重合体(a1)とポリテトラメチレンエーテルジオール(a2)との量を表1の実施例3に記載の量に変え、さらにジフェニレンメタンジイソシアネート(b)を表1の実施例3に記載の量に変えたこと以外は同実施例に従って手袋を得た。評価結果を表1に示す。
【0089】
(実施例4)
実施例1において、ポリエステルジオール共重合体(a1)とポリテトラメチレンエーテルジオール(a2)との量を表1の実施例4に記載の量に変えたこと以外は同実施例に従って手袋を得た。評価結果を表1に示す。
【0090】
(実施例5)
実施例1において、ポリエステルジオール共重合体(a1)とポリテトラメチレンエーテルジオール(a2)との量を表1の実施例5に記載の量に変え、さらにジフェニレンメタンジイソシアネート(b)を表1の実施例5に記載の量に変えたこと以外は同実施例に従って手袋を得た。評価結果を表1に示す。
【0091】
(実施例6)
実施例2において、エチレンジアミン(c1)と1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(c2)との量を表1の実施例6に記載の量に変えたこと以外は同実施例に従って手袋を得た。評価結果を表1に示す。
【0092】
(実施例7)
実施例2において、エチレンジアミン(c1)と1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(c2)との量を表1の実施例7に記載の量に変えたこと以外は同実施例に従って手袋を得た。評価結果を表1に示す。
【0093】
(実施例8)
実施例2において、エチレンジアミン(c1)と1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(c2)との量を表1の実施例8に記載の量に変えたこと以外は同実施例に従って手袋を得た。評価結果を表1に示す。
【0094】
(実施例9)
実施例2において、エチレンジアミン(c1)と1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(c2)との量を表1の実施例9に記載の量に変えたこと以外は同実施例に従って手袋を得た。評価結果を表1に示す。
【0095】
(実施例10)
実施例2において、エチレンジアミン(c1)と1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(c2)との量を表1の実施例10に記載の量に変えたこと以外は同実施例に従って手袋を得た。評価結果を表1に示す。
【0096】
(実施例11)
実施例2において、エチレンジアミン(c1)と1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(c2)との量を表1の実施例11に記載の量に変えたこと以外は同実施例に従って手袋を得た。評価結果を表1に示す。
【0097】
(実施例12)
実施例2において、ポリテトラメチレンエーテルジオール(a2)をテトラメチレンエーテルとアルキル基側鎖を有するテトラメチレンエーテルとの共重合体(ポリエーテルポリオール共重合体:保土ヶ谷化学製PTG−L3000)に変えたこと以外は同実施例に従って手袋を得た。評価結果を表1に示す。
【0098】
(実施例13)
実施例2において、ポリテトラメチレンエーテルジオール(a2)を分子量4,000であるポリプロピレングリコール(旭硝子製エクセノール510)に変え、ジアミン(c1)の量を0.6質量部、及びジアミン(c2)の量を0.4質量部に変えること以外は同実施例に従って手袋を得た。評価結果を表1に示す。
【0099】
(比較例1)
実施例1において、ポリエステルジオール共重合体(a1)とポリテトラメチレンエーテルジオール(a2)との量を表1の比較例1に記載の量に変えたこと以外は同実施例に従って手袋を得た。評価結果を表1に示す。
【0100】
(比較例2)
実施例1において、ポリエステルジオール共重合体(a1)とポリテトラメチレンエーテルジオール(a2)との量を表1の比較例2に記載の量に変え、さらにジフェニレンメタンジイソシアネート(b)を表1の比較例2に記載の量に変えたこと以外は同実施例に従って手袋を得た。評価結果を表1に示す。
【0101】
【表1】

【0102】
表1に示されるように、2種のポリオールを併用した各実施例で得られた手袋は、透湿性、強度、柔軟性、耐薬品性(耐水性、耐エタノール性、耐IPA性及び耐アセトン性)及び装着性に優れていることがわかる。一方、比較例1で得られた手袋は透湿性や柔軟性等が劣り、比較例2で得られた手袋は強度や耐薬品性等が劣る。また、実施例1〜3と実施例4・5とを比較すると、2種のポリオールの比を限定することで、透湿性及び耐水性等が高まることがわかる。
【0103】
実施例6・11とその他の実施例とを比較すると、脂肪族ジアミンと脂環族ジアミンとを併用することで、強度及び柔軟性等が高まることがわかる。さらに、実施例7〜10をそれぞれ比較すると、上記2種のジアミンの比を限定することで、柔軟性及び耐薬品性(例えば、耐IPA性及び耐エタノール性)等が高まることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
以上説明したように、本発明の製造方法で得られる手袋は、強度、柔軟性、透湿性及び耐薬品性に優れ、長時間の着用においても内部が蒸れず、良好な装着性を有する。さらに、当該手袋は、特別な添加物等を必須としないことから、水溶性不純物の量も減らすことができ、発塵性も低くすることができる。従って、当該手袋は、手術用、検査用、食品加工用、染色用など様々な用途に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルポリオール(a1)及びポリエーテルポリオール(a2)からなる混合ポリオール(a)とポリイソシアネート(b)とを反応させ、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)を得る第一工程、
有機溶媒(B)に溶解された上記ウレタンプレポリマー(A)に対し、ジアミン(c)を用いた鎖延長反応を行い、ポリウレタンウレア(C)の溶液を得る第二工程、及び
上記ポリウレタンウレア(C)の溶液に手型を浸漬した後、上記手型を溶液から取り出し、乾燥させ、上記手型表面にポリウレタンウレア(C)の皮膜を形成させる第三工程
を有する手袋の製造方法。
【請求項2】
上記ジアミン(c)が、脂肪族ジアミン(c1)及び脂環族ジアミン(c2)からなる請求項1に記載の手袋の製造方法。
【請求項3】
上記ポリエステルポリオール(a1)とポリエーテルポリオール(a2)との質量比(a1/a2)が、50/50以上95/5以下である請求項1又は請求項2に記載の手袋の製造方法。
【請求項4】
上記脂肪族ジアミン(c1)と脂環族ジアミン(c2)との質量比(c1/c2)が、10/90以上90/10以下である請求項2又は請求項3に記載の手袋の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の手袋の製造方法により得られる手袋。