説明

手袋

【課題】風合いに優れ、脱着性にも優れた作業用手袋を提供する。
【解決手段】ゴムまたは合成樹脂からなる手袋基体1に無数の熱膨張性マイクロカプセル2を含有させ、熱膨張性マイクロカプセル2を破裂させることにより手袋基体1内面に開口する開口部5の周囲の一部または全周に手袋基体1内面より突出する凸部4を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムまたは樹脂製の手袋基体の内面に開口した凸部を設けた手袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から家庭用手袋としては一般的に、特許文献1に開示されているように手袋基体内面に植毛をしたもの、特許文献2に開示されているように手袋内面を滑剤(ウレタン樹脂)でコーティングしたもの、また特許文献3に開示されているようにゴム製手袋の内面にクロリネーション(塩素化処理)したものが利用されている。クロリネーションもしくは滑剤で処理した手袋は、植毛などの脱離が嫌われる作業場で主に使用されている。これらの手袋の装着は手が乾いている場合抵抗なくスムーズに行なえるが、手が濡れている場合は装着しづらく、また作業終了後に手袋を脱ごうとするとき、特に手が発汗していると指先を引っ張っただけでは脱げず、手袋の裾から反転させてようやく脱げるというのが常である。そこで、脱ぎ易さを向上させるために内面に粒子を添加した滑剤のコーティング層を設けた手袋の場合は、滑剤樹脂のエマルジョンが低粘度のため、粒子が沈降を起こし、加工できたとしても滑剤層の肉厚が1μm〜3μmと薄いため、粒子が滑剤のコーティング層から容易に脱離してしまうという問題がある。
【0003】
また、特許文献4には手袋基材の内側に粒子が添加されて凸部を持つ層を有し、さらにその内側に凸部分の厚みよりも薄い滑剤のコーティング層を有する手袋が開示されているが、凸部がざらざらして風合いが良くないことや、粒子の数が多く必要で、高価なものになるという問題がある。
【0004】
さらに、特許文献5には手袋内面にマイクロカプセルの気泡層を有する手袋が開示されているが、保温効果を目的としているため気泡層は厚めであり、また断熱性を付与するために気泡は独立気泡を形成しており、手袋の着脱性向上効果は低く、また手袋が厚くなり風合いが悪いという問題がある。
【特許文献1】特開2004−107825号公報
【特許文献2】特開平6−10202号公報
【特許文献3】特開2004−131885号公報
【特許文献4】特開2004−316013号公報
【特許文献5】特開平6−81203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、このような課題を解決するもので、風合いに優れ、脱着性にも優れた作業用手袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の手袋は、ゴムまたは合成樹脂からなる手袋基体の内面に、無数の開口した凸部を形成したことを特徴とする。
請求項2に記載の手袋は、開口した凸部が、開口部の周囲の一部または全周に手袋基体内面より突出した凸部であることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の手袋は、開口した凸部が、手袋基体に熱膨張性マイクロカプセルを含有させ、熱膨張性マイクロカプセルを破裂させることにより形成されたものであることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の手袋は、開口部の周囲に形成された凸部の密度が13〜95個/mmであることを特徴とする。
請求項5に記載の手袋は、手袋基体の外側に防水性のゴム層または合成樹脂層を設けてなることを特徴とする。
【0009】
請求項6に記載の手袋は、凸部を備えた開口部の存在部以外の手袋基体の内面に滑剤のコーティング層を形成してなることを特徴とする。
請求項7に記載の手袋は、ゴムまたは合成樹脂が天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、アクリル酸エステルゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどの単独重合体あるいは共重合体からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明によれば、ゴムまたは合成樹脂からなる手袋基体の内面に開口した無数の凸部が形成されていることにより、着脱性が向上し、特に汗などで手が濡れているときの着脱性が向上し、手袋内面にさらさら感があり良好な風合いを備えた手袋を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図1に基づき具体的に説明する。
図において、1は熱膨張性マイクロカプセル2を含有する手袋基体で、この手袋基体1の内部の熱膨張性マイクロカプセル2を破裂させることにより手袋基体1の内面側に凹部3および凸部4を形成してある。この凹部3および凸部4は1つの熱膨張性マイクロカプセル2ごとに繋がった状態で形成されており、手袋基体1の内面側に位置する開口部5の奥の凹部3と手袋基体1の内面より突出して開口部5の外周部に形成された凸部4である。6は前記凸部4を備えた開口部5の存在部以外の手袋基体1の内面に形成した滑剤のコーティング層である。ところで、前記開口部5の外周部の凸部4は外周部の一部だけに形成されているものや、外周部の全周に形成されているものがある。
【0012】
前記開口部5の凸部4は、熱膨張性マイクロカプセル2を手袋中に配合すること、または手袋内面に熱膨張性マイクロカプセル2を配合した内面層を設けることで形成することができる。通常、凸部の形成に使用される粒子としてはメチルメタクリレート共重合体やアクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレンーブタジエン共重合体などからなる球状粒子が使用され、粒子による凸形状を形成するのみである。本発明者らは通常の粒子の代わりに球状の熱膨張マイクロカプセル2を使用し、加熱膨張後、破泡させることで、熱膨張マイクロカプセル2が開口部5を形成し、この開口部5の形成により手と手袋との接触面積を減らし、摩擦を低減する効果が非常に高いことを見出した。なお、開口部5は手袋内面全体に亘って設けられるようにしても良く、あるいは指部、甲部、掌部など部分的に設けられるようにしても良い。
【0013】
前記凹部3およびこの凹部3の開口部5の外周部に凸部4を形成するために使用される熱膨張性マイクロカプセル2とはガスバリア性の基膜からなるマイクロカプセル中に、−15〜150℃の沸点を持つ低沸点化合物を内包しており、加熱することによって内部ガスが膨張し、カプセル全体が膨張する中空球体などを言う。低沸点化合物とは例えばイソブタン、ノルマルブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、ネオペンタン、プロパン、プロピレン、ブテン、メタンのハロゲン化物(塩化メチル、メチレンクロリドなど)、テトラアルキルシランなどが挙げられる。熱膨張性マイクロカプセル2の基膜の材質は特に限定しないが、アクリルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン、塩化ビニルなどからなる共重合体が挙げられる。熱膨張性マイクロカプセル2としてはマツモトマイクロスフェアー(登録商標)F−30(松本油脂製薬株式会社製)、マツモトマイクロスフェアーF−50(松本油脂製薬株式会社製)、マツモトマイクロスフェアーF−80S(松本油脂製薬株式会社製)、マツモトマイクロスフェアーF−85(松本油脂製薬株式会社製)、ADVANCELL(登録商標)EM(積水化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0014】
前記手袋基体1はゴムまたは合成樹脂からなり、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、アクリル酸エステルゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、ウレタンゴム、ブチルゴム、ポリブタジエンゴム、シリコーンゴム、エチレン・プロピレンゴム、フッ素ゴムなどの単独重合体あるいは共重合体、10重量%以下のカルボキシル変性基などを持つ共重合体およびポリ塩化ビニルなどが挙げられる。なかでもエマルジョンなどの水分散体は塗布時と比べ乾燥後の厚みは原料の水分量に従い薄くなり、熱膨張性マイクロカプセル2が固定されると同時に表面に露出されやすい。従って、天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、アクリル酸エステルゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどの単独重合体あるいは共重合体、10重量%以下のカルボキシル変性基などを持つ共重合体の水分散体が好ましい。これらは単独で使用しても良く、複数を混ぜ合わせて使用することもできる。また、架橋剤や顔料、界面活性剤、加硫促進剤、老化防止剤、増粘剤、可塑剤などの通常使用される配合物の他、タック防止剤やフィラー、抗菌剤、香料、保湿剤などを封入したマイクロカプセルなどが含まれていても良い。
【0015】
前記ゴムまたは合成樹脂からなる手袋基体1の厚みは少なくとも熱膨張性マイクロカプセル2を固定できる厚みであれば良く、その厚みは用途に応じて適宜決定すれば良い。
また、前記手袋基体1の外側に必要に応じて、防水性のゴム層または合成樹脂層を設けることができる。
【0016】
前記防水性のゴム層または合成樹脂層の材料は既知のゴムまたは合成樹脂から選ばれ、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、アクリル酸エステルゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、ウレタンゴム、ブチルゴム、ポリブタジエンゴム、シリコーンゴム、エチレン・プロピレンゴム、フッ素ゴムなどの単独重合体あるいは共重合体、10重量%以下のカルボキシル変性基などを持つ共重合体、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。これらは単独で使用しても良く、複数を混ぜ合わせて使用しても良い。手袋の厚みは0.08mm〜0.4mmが好ましく、より好ましくは0.1〜0.35mm、さらに好ましくは0.1〜0.3mmである。手袋の厚みが0.08mm未満ではフィルムが薄すぎて弱く、破れやすくなる傾向があるため好ましくなく、0.4mmより厚い場合はフィルムが厚すぎるために硬くなり、手袋としての柔軟性に欠けると共に作業性が低下する傾向があるため好ましくない。この手袋の厚みを考慮して防水性のゴム層または合成樹脂層の厚みが決定される。なお、手袋の厚みとは指先から12cm付近の掌中央部分の平均厚みとする。防水性のゴム層または合成樹脂層は1層で形成しても良く、多層構造であっても良い。多層構造の場合は異なる材質の層から構成しても良い。また、防水性のゴム層または合成樹脂層には架橋剤や顔料、界面活性剤、加硫促進剤、老化防止剤、増粘剤、可塑剤などの通常使用される配合物の他、タック防止剤やフィラー、抗菌剤などが含まれても良い。
【0017】
ここで手袋内面を形成する手袋基体1から防水性のゴム層または合成樹脂層が剥離しないように、手袋内面を形成する手袋基体1と防水性のゴム層または合成樹脂層の材質は溶解性パラメーターが近いことが好ましく、溶解性パラメーターの差は2以下が好ましく、より好ましくは1以下であり、同じ材質であることが最も好ましい。
【0018】
手袋基体1の外側に防水性のゴムまたは合成樹脂層を設ける場合、内面層を形成する手袋基体1は前記熱膨張性マイクロカプセル2を固定できる厚みであれば良い。そこで、手袋基体1の厚みは乾燥後で膨張してない熱膨張性マイクロカプセル2の直径に対して15〜100%が好ましく、より好ましくは25〜85%、さらに好ましくは45〜70%である。手袋基体1の厚みが熱膨張性マイクロカプセル2の直径より小さい場合、熱膨張性マイクロカプセル2が膨張する際に埋まってない部分を中心に膨張の圧力がかかり、破泡することによって、手袋内面に発泡粒子2の破泡からなる開口した凸部を形成する。手袋基体1の厚みが熱膨張性マイクロカプセル2の直径に対して15%未満の場合は膨張した熱膨張性マイクロカプセル2が手袋基体1によって充分に固定されず、膨張時に熱膨張性マイクロカプセル2が表面から脱離してしまう傾向があるため好ましくなく、手袋基体1の厚みが熱膨張性マイクロカプセル2の直径に対して100%より大きい場合は熱膨張性マイクロカプセル2が手袋基体1内に埋没するする場合があり、埋没した熱膨張性マイクロカプセル2は膨張する際に膨張の圧力が外側の防水性のゴム層または合成樹脂層側へもかかり、膨張を受けた防水性のゴム層または合成樹脂層の厚みが薄くなる傾向があり、手袋の強度が低下する傾向があるため好ましくない。
【0019】
熱膨張性マイクロカプセル2は作成中乾燥後のキュア中に膨張すれば良く、100〜200℃で膨張するものが好ましく、より好ましくは110〜180℃、さらに好ましくは120〜150℃である。一般に手袋作成過程は100℃未満で乾燥され、その後100℃以上でキュアされる。膨張温度が100℃未満では手袋が乾燥される前に膨張してしまうために熱膨張性マイクロカプセル2が乾燥中で軟らかい防水性のゴム層または合成樹脂層側へも強く膨張することによって部分的に手袋の厚みが減少し、強度の低下が生じる傾向があるため好ましくない。
【0020】
熱膨張性マイクロカプセル2の加熱後の大きさは直径30〜150μmであり、破泡して開口した凸部を形成する。
膨張前の熱膨張性マイクロカプセル2の大きさは平均直径5〜50μmが好ましく、より好ましくは10〜35μm、さらに好ましくは10〜20μmである。膨張前の熱膨張性マイクロカプセル2の直径が5μmよりも小さい場合には膨張して破裂した後の凹凸が小さく、着脱性が向上しにくい傾向がある。膨張前の熱膨張性マイクロカプセル2の直径が50μmよりも大きい場合は手袋基体1を厚くする必要があり、手袋全体の厚みが厚くなって風合いが悪くなる傾向がある。
【0021】
手袋内面に開口した凸部の密度は13〜95個/mmが好ましく、より好ましくは18〜70個/mm、さらに好ましくは30〜60個/mmである。13個/mm未満では手袋内面の凹凸が少なく、手袋脱着時に手と手袋との接触面積が大きくなって滑り性が悪化し、特に手が発汗している状態では脱ぎ嵌めがしにくくなる傾向があり好ましくない。また、95個/mmを超えると熱膨張性マイクロカプセル2が十分に破泡しない傾向があるとともにざらつき感が増し、風合いが悪化する傾向がある上に手袋の強度が低下する傾向があり、好ましくない。
【0022】
手袋内面に露出した凸部のうち開口した凸部の割合は78〜100%程度が好ましく、より好ましくは85〜100%である。78%未満の場合は開口した凸部が減少することによって手袋と手の接触面積が大きくなってしまうために手袋の着脱性が悪化し、好ましくない。
【0023】
熱膨張性マイクロカプセル2の添加量は必要に応じて適宜決定することができるが、手袋基体1を形成する原料の固形分に対し1〜5質量部が好ましく、より好ましくは1.5〜5質量部、さらに好ましくは2〜3質量部である。1質量部未満の場合は手袋内面の粒子密度が低く、手袋着脱時に手と手袋との接触面積が多くなり滑り性が悪化する傾向があるため好ましくなく、5質量部よりも多い場合は熱膨張性マイクロカプセル2の密度が高くなり、ざらつき感が増し風合いが悪化すると共に、手袋の強度が低下してしまう傾向があるため好ましくない。
【0024】
手袋基体1の内面にはさらに既知の滑剤からなるコーティング層6を形成することができ、このコーティング層6の材料としては例えばアクリルまたはウレタンなどの合成樹脂などが挙げられる。コーティング層6の厚みは1〜5μmが好ましく、またコーティング層6にはフィラー、抗菌剤などが含まれていても良い。
【0025】
手袋は既知の方法で作成することができる。例えば、手袋は手型を防水性のゴムまたは合成樹脂原料に浸漬することによって外層が形成され、続いて熱膨張性マイクロカプセル2が混合されたゴムまたは合成樹脂原料に浸漬することで手袋基体1が形成される。熱膨張性マイクロカプセル2を含有する手袋基体1の原料がラテックスコンパウンドの場合は手型に凝固剤塗布後、外層となる防水性のゴムまたは合成樹脂原料を塗布し、さらに熱膨張性マイクロカプセル2を混合したゴムまたは合成樹脂原料を塗布する前にさらに凝固剤を塗布しても良い。さらに手袋基体1の上に必要に応じて滑剤のコーティング層を形成しても良い。続いて乾燥工程を経て、キュア工程にて熱膨張性マイクロカプセル2を膨張後破泡させて、手型から反転離型することで目的の手袋を提供することができる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例1〜17の各手袋について評価を行なった。なお、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。
(手袋強度)
手袋強度は手袋の掌部分からJIS 3号ダンベルで打ち抜いた試験片を用いて引張速度 500mm/min、つかみ具間距離 60mmの条件で引張った際の最大応力を評価した。
【0027】
なお、日本グローブ工業会規格 JRV−016:2003(家庭用ニトリルゴム手袋)より、本実施例での手袋の場合は極薄手の基準となる手袋強度が試験片の幅1cmあたり12N以上であることが望ましい。
(着脱性、WET着脱性、風合い)
10人のモニターから手袋の着脱性、WET着脱性および風合いについて評価を得た。WET着脱性は、霧吹きを用いて水で手を濡らした際の着脱性の評価とした。
【0028】
装着時と脱離時の脱ぎ嵌めやすさ(着脱性)の評価基準は以下の通りである。
◎:非常にスムーズにできる
○:スムーズにできる
△:普通
×:困難である
手袋内部の風合いの評価基準は以下の通りである。
【0029】
◎:非常に良い
○:良い
△:普通
×:悪い
(熱膨張性マイクロカプセル数およびその破裂割合、熱膨張性マイクロカプセルの食い込みの測定)
走査型電子顕微鏡を用いて手袋内面の状態を観察し、手袋内面に露出した熱膨張性マイクロカプセルの数および破裂により開口した凸部の割合を測定した。
【0030】
また、熱膨張性マイクロカプセルの食い込みは、手袋断面の状態を観察し熱膨張性マイクロカプセルの直径に対する熱膨張性マイクロカプセルの埋没割合を測定した。
(実施例1)
NBR手袋の製造:
(イ)原料(1)(外層の原料)の調製
NBRラテックス、乳化剤、コロイド硫黄、酸化亜鉛、加硫促進剤、老化防止剤、顔料を表1の割合で混合し、水で希釈して十分撹拌を行ない、原料(1)を調製した。
【0031】
【表1】

(ロ)原料(2)(手袋基体の原料)の調製
NBRラテックス、乳化剤、コロイド硫黄、酸化亜鉛、加硫促進剤、老化防止剤、熱膨張性マイクロカプセル、増粘剤を表2の割合で混合し、水で希釈して十分撹拌を行ない、原料(2)を調製した。なお、未膨張の熱膨張性マイクロカプセルの平均粒径は直径15μmである。
【0032】
【表2】

(ハ)コーティング層原料の調製
エマルジョン系滑剤、乳化剤、増粘剤を表3の割合で混合し、水で希釈して十分撹拌を行ない、コーティング層原料を調製した。
【0033】
【表3】

(ニ)手袋の製造
陶磁器製手型を凝固剤(メタノール100質量部に対して硝酸カルシウム50質量部を溶解した溶液)に浸漬して引き上げた後、上記(イ)で調製した原料(1)に漬けた後、50℃程度の湯に10秒間浸漬し、水滴がなくなる程度に乾燥を行なった後、上記(ロ)で調製した原料(2)に漬けた。その後50℃程度の湯で1分洗浄した後に(ハ)で調製したコーティング層原料に漬けた。引き上げてから70℃で1時間乾燥を行ない、その後風速2m/sの炉内で100℃で10分間、140℃で15分のキュアを行ない、冷却した後手型から反転離型し、目的の手袋を得た。
【0034】
このようにして製造した外層の厚みは0.10±0.005mm、手袋基体の厚みは平均して0.01mm程度であり、膨張前の熱膨張性マイクロカプセルの平均直径に対して60%程度の厚みであった。
(実施例2)
コーティング層原料による処理を省いた以外は実施例1と同様の方法で手袋を作製した。
(実施例3)
原料(2)の熱膨張性マイクロカプセルの添加部数を1.5部とした以外は実施例1と同様の方法で手袋を作製した。
(実施例4)
原料(2)の熱膨張性マイクロカプセルの添加部数を1部とした以外は実施例1と同様の方法で手袋を作製した。
(実施例5)
原料(2)の熱膨張性マイクロカプセルの添加部数を4部とした以外は実施例1と同様の方法で手袋を作製した。
(実施例6)
原料(2)の熱膨張性マイクロカプセルの添加部数を0.5部とした以外は実施例1と同様の方法で手袋を作製した。
(実施例7)
原料(2)の熱膨張性マイクロカプセルの添加部数を6部とした以外は実施例1と同様の方法で手袋を作製した。
(実施例8)
100℃〜140℃でのキュアを行なう際に炉内の風速を1m/sにした以外は実施例1と同様の方法で手袋を作製した。
(実施例9)
100℃〜140℃でのキュアを行なう際に炉内の風速を0.5m/sにした以外は実施例1と同様の方法で手袋を作製した。
(比較例1)
原料(2)において、熱膨張性マイクロカプセルの代わりにPMMA(真球状、直径40μm)をNBR:100質量部に対して20質量部添加したコンパウンドを用い、実施例1と同様の方法で手袋を作製した。
(比較例2)
原料(1)浸漬後、1分間50℃程度の湯で洗浄した後、(ハ)で調製したコーティング層原料に漬けた。その後は実施例1と同様の方法で手袋を作製し、熱膨張性マイクロカプセルが含有された内面層を備えていない手袋を作製した。
(実施例10)
原料(1)の代わりに表4で示す原料(3)、原料(2)の代わりに表5で示す原料(4)を使用して実施例1と同様の方法で手袋を作成した。なお、外層の厚みは0.10mm±0.005mmに調整した。
【0035】
【表4】

【0036】
【表5】

(実施例11)
原料(1)、原料(2)としてそれぞれのNBRラテックスの代わりに天然ゴムラテックスを用い、実施例1と同様の方法で手袋を作成した。なお、外層の厚みは0.10mm±0.005mmに調整した。
(実施例12)
原料(1)を浸漬した後、50℃程度の湯に120秒間浸漬した。それ以外は実施例1と同様の方法で手袋を作製した。
(実施例13)
原料(1)を浸漬した後、50℃程度の湯に30秒間浸漬した。それ以外は実施例1と同様の方法で手袋を作製した。
(実施例14)
原料(1)を浸漬した後、50℃程度の湯に5秒間浸漬した。それ以外は実施例1と同様の方法で手袋を作製した。
(実施例15)
原料(1)を浸漬した後、50℃程度の湯に1秒間浸漬した。それ以外は実施例1と同様の方法で手袋を作製した。
(実施例16)
原料(1)を浸漬した後、50℃程度の湯に240秒間浸漬した。それ以外は実施例1と同様の方法で手袋を作製した。
(実施例17)
原料(1)に漬漬した後、洗浄工程を経ずに原料(2)に漬漬した。それ以外は実施例1と同様の方法で手袋を作製した。
【0037】
以上述べた実施例1〜9、比較例1および2、実施例10〜17の評価結果を表6〜表9に示す。
【0038】
【表6】

実施例1は着脱性、WET着脱性、風合いが非常に良く、手袋強度も良好な手袋であった。
【0039】
実施例2は着脱性、風合い、WET着脱性、手袋強度が良い手袋であった。
実施例3は着脱性、風合いが非常に良く、WET着脱性、手袋強度も良い手袋であった。
【0040】
実施例4は着脱性、風合い、手袋強度は良く、WET着脱性が普通の手袋であった。
実施例5は着脱性、風合い、手袋強度は良く、WET着脱性が普通の手袋であった。
実施例6は手袋強度が非常に良く、風合いも良く、着脱性、WET着脱性が普通の手袋であった。
【0041】
実施例7は着脱性、風合い、WET着脱性、手袋強度が普通の手袋であった。
【0042】
【表7】

実施例8は着脱性が非常に良く、風合い、WET着脱性、手袋強度が良い手袋であった。
【0043】
実施例9は着脱性は良いものの、風合い、WET着脱性、手袋強度が普通の手袋であった。
比較例1は着脱性は良く、WET着脱性、手袋強度は普通であるものの、風合いが悪い手袋であった。
【0044】
比較例2は手袋強度が非常に良く、着脱性は普通であるものの、風合い、WET着脱性が悪い手袋であった。
【0045】
【表8】

実施例10、実施例11ではNBRラテックスの代わりにアクリルエマルジョンあるいは天然ゴムラテックスを用いたが、NBRラテックスを用いた場合と同様に着脱性、風合い、WET着脱性が非常に良く、手袋強度の高い手袋が得られた。
【0046】
【表9】

実施例12は着脱性、風合い、手袋強度は良いものの、WET着脱性は普通の手袋であった。
【0047】
実施例13は着脱性、手袋強度は非常に良く、風合い、WET着脱性が良い手袋であった。
実施例14は着脱性、風合い、WET着脱性、手袋強度が良い手袋であった。
【0048】
実施例15は着脱性、風合いは良いものの、WET着脱性、手袋強度が普通の手袋であった。
実施例16は手袋強度が非常に良く、着脱性、風合い、WET着脱性が普通の手袋であった。
【0049】
実施例17は着脱性、風合い、WET着脱性、手袋強度が普通の手袋であった。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態における手袋の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 手袋基体
2 熱膨張性マイクロカプセル
3 凹部
4 凸部
5 開口部
6 コーティング層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムまたは合成樹脂からなる手袋基体の内面に、無数の開口した凸部を形成したことを特徴とする手袋。
【請求項2】
開口した凸部が、開口部の周囲の一部または全周に手袋基体内面より突出した凸部であることを特徴とする請求項1記載の手袋。
【請求項3】
開口した凸部が、手袋基体に熱膨張性マイクロカプセルを含有させ、熱膨張性マイクロカプセルを破裂させることにより形成されたものであることを特徴とする請求項1または2記載の手袋。
【請求項4】
開口部の周囲に形成された凸部の密度が13〜95個/mmであることを特徴とする請求項1から3までの何れか1項記載の手袋。
【請求項5】
手袋基体の外側に防水性のゴム層または合成樹脂層を設けてなることを特徴とする請求項1から4までの何れか1項記載の手袋。
【請求項6】
凸部を備えた開口部の存在部以外の手袋基体の内面に滑剤のコーティング層を形成してなることを特徴とする請求項1から5までの何れか1項記載の手袋。
【請求項7】
ゴムまたは合成樹脂が天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、アクリル酸エステルゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどの単独重合体あるいは共重合体からなることを特徴とする請求項1から6までの何れか1項記載の手袋。

【図1】
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【公開番号】特開2008−169503(P2008−169503A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−2921(P2007−2921)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(591161900)ショーワグローブ株式会社 (39)
【Fターム(参考)】