説明

打寿命打切り試験からの寿命見積もり方法・装置

【課題】 打切り試験において、一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命水準を、試験データの解釈の違いを引き起こすことなく、簡単かつ迅速に試算することができ、かつ信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても試算できる方法を提供する。
【解決手段】 入力された試験結果データDから、未破損時間を何時間とするかの解釈で種々異なる、未破損時間と、未破損個数または破損個数との関係の場合分けを設定基準に従って行う。場合分けされた各場合毎の、未破損時間と、未破損個数または破損個数とから、ワイブルスロープの値を用いて寿命の下限および上限をそれぞれ演算する。この場合別の寿命演算過程で得られた各場合毎の寿命の範囲を全て充足する寿命の範囲を試験対象品のロットの寿命範囲と定める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軸受またはその他の機械部品の寿命試験として、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、打切り時間後の試験継続等を行ったときに、少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命を見積もる方法、装置、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
寿命試験は、軸受等の機械部品の性能を評価するために欠かせない試験の1つである。寿命試験には、大きく分けて(1) 実機の使用環境に近い条件で試験を行う実機試験と、(2) 比較的過酷な条件で寿命試験を行う加速試験がある。前者は、製品が有限時間内に破損するケースが極めて少ないため、ある目標時間まで破損することなく試験が継続すれば、寿命は問題ないと判断する試験である(以下、このような試験を「打切り試験」と呼ぶ)。一方、後者は、比較的短時間で破損が発生するので、ワイブルプロットで寿命が算出でき(例えば非特許文献1)、その算出寿命から性能の優劣を判定する試験である(以下、このような試験を「加速試験」と呼ぶ)。
【0003】
従来より、寿命試験は経験を積んだ熟練者が行っており、試験条件や試験個数を決める寿命試験の設計と寿命試験結果の解釈に対して経験的に確からしい判断ができたと考えられる。
図31に、従来から行われてきた寿命試験の設計と寿命試験結果の解釈の手順を、打切り試験と加速試験ごとに示す。
また、現在、寿命試験において経験的に判断されているものの詳細を、表1に示す。
【0004】
【表1】

【0005】
なお、ワイブル分布を機械部品の寿命判断に用いるものは、種々の特許文献,非特許文献に提案されている。
【特許文献1】特開2006−040203号公報
【特許文献2】特開2002−277382号公報
【特許文献3】特開2005−226829号公報
【非特許文献1】真壁肇著、信頼性工学入門79、1991年発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
打切り試験は、打切り時間が経過すると要求寿命が満足されたとする試験であるが、納期に余裕がある場合など、打切り時間の経過後も引き続いて試験を継続し、その試験対象品の寿命水準を確認したい場合がある。このような状況は、しばしば発生する。
しかし、従来、このような打切り試験の継続で試験対象品の寿命水準を試算する適切な方法がなかった。
また、上記試験対象品の寿命水準として、対象ロットの寿命が何時間以上であるかという寿命の下限だけでなく、そのロットの寿命の上限が何時間であるかという上限を知りたい場合があるが、このような寿命の上限を試算する方法についても、従来は適切な方法がなかった。
【0007】
そこで、本発明者は、試験対象品のワイブルスロープの値を用いて、試験対象品の寿命水準として、下限および上限を見積もる方法を案出した。
しかし、上記の寿命水準を見積もる方法では、寿命試験の結果のデータの見方によっていくつかの計算結果を出すことができる。例えば、3個の寿命試験を行い、2000h 以上、2000h 以上、1000h 破損というデータが得られた場合、(1) 3個中2 個が2000h 以上、(2) 3個中3個1000h 以上、(3) 3個中1個が1000h 以下という解釈が可能になる。これらの解釈はいずれも可能であるが、解釈の違いにより保証できる寿命が変化する場合がある。このように、上記案出方法では、データの解釈の違いによって保証できる寿命が異なってしまうという問題があった。
【0008】
この発明の目的は、打切り試験において、少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命水準の試算を、試験データの解釈の違いを引き起こすことなく行うことができて、保証できる寿命の計算を、誰が行っても同じ計算結果にできる方法、装置、およびその方法の実施のためのコンピュータプログラムを提供することである。
この発明の他の目的は、上記寿命水準の試算を、簡単かつ迅速に行うことができ、かつ信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても寿命水準を試算することのできるようにすることである。
この発明のさらに他の目的は、試験対象品のロットの寿命の下限だけでなく、上限を、簡単かつ迅速に試算することができ、かつ信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても試算することのできるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の寿命打切り試験からの寿命見積もり方法は、軸受またはその他の機械部品または試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、所定信頼度の寿命についての要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、
一部の試験対象品が破損し残りの試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命を見積もる方法であって、
コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、並びに上記打切り試験の試験結果データである、試験個数分の未破損時間と試験の打切りまたは破損有無のデータを入力する入力過程と、
上記コンピュータに、寿命を演算させ演算結果を表示装置の画面に表示させるコンピュータ演算処理過程とを含み、
上記コンピュータ演算処理過程として、
上記入力過程で入力された上記試験結果データから、未破損時間を何時間とするかの解釈で種々異なる、未破損時間と、未破損個数または破損個数との関係の場合分けを設定基準に従って行う場合分け手順と、
上記コンピュータにより、上記場合分けされた各場合毎の、未破損時間と、未破損個数または破損個数とから、上記ワイブルスロープの値を用いて寿命をそれぞれ演算する場合別寿命演算手順と、
上記場合別寿命演算過程で得られた各場合毎の寿命の範囲を全て充足する寿命の範囲を試験対象品のロットの寿命範囲と定める全解釈満足寿命範囲決定手順と、
を実行する方法である。
【0010】
なお、上記所定信頼度の寿命は、例えばL10寿命(90%の信頼度の寿命)や、L50寿命(50%の信頼度の寿命)等である。未破損時間および寿命は、必ずしも時間の単位でなくても良く、例えば、軸受を回転させて試験を行うときの回転回数等の負荷回数で表示されていても良い。
【0011】
この方法によると、上記場合分け手順により、試験結果データから、未破損時間を何時間とするかの解釈で種々異なる、未破損時間と、未破損個数または破損個数との関係の場合分けを設定基準に従って行い、場合別寿命演算手順において、その場合分けされた各場合毎の、未破損時間と、未破損個数または破損個数とから寿命をそれぞれ演算し、全解釈満足寿命範囲決定手順では、各場合毎の寿命の範囲を全て充足する寿命の範囲を試験対象品のロットの寿命範囲と定める。
このように、各場合毎の寿命の範囲を全て充足する寿命の範囲を試験対象品のロットの寿命範囲と定めるため、試験対象品のロットの寿命水準の試算を、試験データの解釈の違いを引き起こすことなく行うことができて、保証できる寿命の計算を、誰が行っても同じ計算結果にできる。また、上記試験対象品のロットの寿命の水準は、試験対象品のワイブルスロープの値を用いて計算するため、信頼度の高い計算が簡単に行える。
【0012】
この発明方法は、上記ロットの寿命の上限および下限のうち、少なくとも下限を見積もる方法であっても良い。上記場合別寿命演算手順では、各場合における、寿命の少なくとも下限をそれぞれ演算する。一般的には、ロットの寿命の下限を知ることが求められる。下限においても、試験結果データの解釈で種々異なる値が生じるため、この発明方法で、各場合毎の寿命の下限を全て充足する寿命の下限を求めることが、実用効果が高い。
【0013】
また、この発明方法は、上記ロットの寿命の上限および下限の両方を見積もる方法であっても良い。上記場合別寿命演算手順では、各場合における、寿命の上限および下限をそれぞれ演算する。一般的には、ロットの寿命の下限を知ることが求められるが、上限を知りたい場合もある。そのため、この発明方法で、各場合毎の寿命の下限および上限間の範囲を全て充足する寿命の下限と上限を求めることが、より好ましい。
なお、場合分けは、寿命の下限を求めるための場合分けと、上限を求めるための場合分けとで互いに異ならせても良いが、いずれであっても、各場合毎の寿命の範囲を全て充足する寿命の範囲を試験対象品のロットの寿命範囲と定める。
【0014】
この発明方法において、上記場合別寿命演算手順における寿命の下限を演算する手順としては、例えば次の手順が採用できる。
すなわち、上記場合別寿命演算手順は、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順(G21)と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、破損個数分の乱数を短いものから順に除いた残りの乱数が未破損時間以上になるか否かを調べる乱数分析手順(G22)と、
上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返し、この繰り返しの各回おける上記乱数分析手順で調べた未破損時間以上にある確率を調べる設定割合寿命充足調査手順(G23)と、
この設定割合寿命充足調査手順(G23)を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命充足調査手順(G24)と、
この異寿命充足調査手順(G24)により得られた寿命と未破損時間以上にある確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命と定める寿命読み取り手順(G25)と、
を含む手順である。
【0015】
ワイブル分布は、次式、
【0016】
【数1】

【0017】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
によって特定される。
【0018】
軸受等の機械部品の寿命は、ワイブル分布に従うとされている。ワイブル分布は、ワイブルスロープm、尺度因子α、最小寿命γの3つのパラメータを持っており、ワイブルスロープmによって指数分布、対数正規分布、正規分布を表現できる万能分布として知られている。量産される軸受等では、ワイブルスロープは実績値が既知である場合が多く、この発明方法において、ワイブルスロープには、試験対象となる機械部品の実績値を用いることが好ましい。実績値がない場合は、適宜の方法で見積もったワイブルスロープを用いてもよい。最小寿命γは、種々の規格、例えばISO等によって計算方法が定められており、そのように定められたいずれかの計算方法を用いることが好ましい。尺度因子αは、ワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、要求寿命の値、および上記最小寿命γから一義的に決定される演算式があり、その演算式を用いて特定しても良い。
【0019】
この方法によると、未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、破損個数分の乱数を短いものから順に除いた残りの乱数が未破損時間以上になるか否かを調べる。この手順を設定回数、例えば数千回数繰り返し、未破損時間以上にある確率を調べる。この確率を、順次異なる寿命を持つワイブル分布に対して求める。
このようにして得れた寿命と未破損時間以上にある確率の関係は、どのような寿命分布であれば、上記未破損時間まで未破損である確率が高いかということを示している。したがって、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値(L10寿命であれば、100%から90%を引いた10%)となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命と定めることができる。
このように、種々の寿命のワイブル乱数を試験個数だけ発生させ、破損個数分を除いた残存乱数により、どのような寿命分布であれば、上記未破損時間まで未破損である確率が高いかという確率分布を求めるようにしたため、未破損時間から試験対象品の寿命水準を高い信頼度で求めることができる。また、上記の処理はコンピュータシミュレーションとし、コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間を入力するだけで、寿命水準が出力されるようにしたため、熟練を要することなく、簡単に、かつ迅速に、未破損時間から寿命水準を求めることができる。
【0020】
この発明方法において、上記場合別寿命演算手順における寿命の上限を演算する手順としては、例えば次の手順が採用できる。
すなわち、上記場合別寿命演算手順は、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順(G21A)と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になるか否かを調べる乱数分析手順(G22A)と、
上記乱数発生手順(G21A)および上記乱数分析手順(G22A)を設定回数繰り返し、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になる確率を調べる設定割合寿命非充足調査手順(G23A)と、
この設定割合寿命非充足調査手順(G23A)を、上記未破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命非充足調査手順(G24A)と、
この異寿命非充足調査手順(G24A)により得られた寿命と未破損時間以下になる確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命の上限と定める寿命上限読み取り手順(G25A)と、を含む。
前記100%から減算する所定信頼度は、例えば90%とする。
【0021】
なお、上記寿命上限読み取り手順(G25A)は、より具体的には、上記異寿命非充足調査手順(G24A)により調べた各設定割合寿命毎の未破損時間以下になる確率を、寿命と未破損時間以下になる確率の関係である累積確率分布とし、この累積確率分布から、発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命の上限と定める手順とされる。
【0022】
この方法によると、未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になるか否かを調べる。この手順を設定回数、例えば数千回数繰り返し、未破損時間以上にある確率を調べる。この確率を、順次異なる寿命を持つワイブル分布に対して求める。
このようにして得られた寿命と未破損時間以下にある確率の関係は、どのような寿命分布であれば、最も短い方から破損個数までの試験対象品の寿命が上記未破損時間以下になる確率が高いかということを示している。したがって、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値(L10寿命であれば、100%から90%を引いた10%)となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命の上限と定めることができる。
このように、種々の寿命のワイブル乱数を試験個数だけ発生させ、どのような寿命分布であれば、最も短い方から破損個数までの試験対象品の寿命が未破損時間以下になる確率が高いかという確率分布を求めるようにしたため、未破損時間から試験対象品の寿命の上限を高い信頼度で求めることができる。また、上記の処理はコンピュータシミュレーションとし、コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間を入力するだけで、寿命水準が出力されるようにしたため、熟練を要することなく、簡単に、かつ迅速に、未破損時間から寿命の上限を求めることができる。
なお、上記の場合別寿命演算手順において、寿命の下限と上限との両方を求めるときは、上記の下限を求める手順と上限を求める手順との両方の手順を含むようにする。
【0023】
この発明における、寿命打切り試験からの寿命見積もり装置は、軸受またはその他の機械部品または試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、所定信頼度の寿命についての要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、
一部の試験対象品が破損し残りの試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命を見積もる装置であって、
演算処理装置1と、この演算処理装置1の出力を画面に表示する表示装置2と、上記演算処理装置1に入力を行う入力手段3とを備える。
【0024】
上記演算処理装置1は、
上記表示装置2の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、並びに上記打切り試験の試験結果データである、試験個数分の未破損時間と試験の打切りまたは破損有無のデータの入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段7E0と、
実行命令の入力に応答して、寿命を見積もる演算を行いその演算結果を上記表示の画面に出力する寿命見積もり演算手段220とを備える。
【0025】
上記寿命見積もり演算手段220は、
上記入力手段3で入力された上記試験結果データから、未破損時間を何時間とするかの解釈で種々異なる、未破損時間と、未破損個数または破損個数との関係の場合分けを設定基準に従って行う場合分け手段221と、
上記場合分け手段221により場合分けされた各場合毎の、未破損時間と、未破損個数または破損個数とから、上記ワイブルスロープの値を用いて寿命をそれぞれ演算する場合別寿命演算手段222と、
上記場合別寿命演算手段222で得られた各場合毎の寿命の範囲を全て充足する寿命の範囲を試験対象品のロットの寿命範囲と定める全解釈満足寿命範囲決定手段223と、
を備える。
【0026】
この構成の寿命打切り試験からの寿命見積もり装置によると、この発明の寿命見積もり方法を実施することができて、打切り試験において、少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命水準の試算を、試験データの解釈の違いを引き起こすことなく行うことができて、保証できる寿命の計算を、誰が行っても同じ計算結果にできる。
【0027】
この発明の命打切り試験からの寿命見積もりプログラムは、コンピュータで実行可能なプログラムであって、
表示装置の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、試験個数、並びに上記打切り試験の試験結果データである、試験個数分の未破損時間と試験の打切りまたは破損有無のデータの入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順(F10)と、
実行命令に応答して、寿命を演算し上記表示装置の画面に表示させる寿命演算手順(F20)とを含む。
【0028】
上記寿命演算手順(F10)は、
上記入力手段で入力された上記試験結果データから、未破損時間を何時間とするかの解釈で種々異なる、未破損時間と、未破損個数または破損個数との関係の場合分けを設定基準に従って行う場合分け手順(V1)と、
上記コンピュータにより、上記場合分けされた各場合毎の、未破損時間と、未破損個数または破損個数とから、上記ワイブルスロープの値を用いて寿命をそれぞれ演算する場合別寿命演算手順(V2)と、
上記場合別寿命演算過程で得られた各場合毎の寿命の範囲を全て充足する寿命の範囲を試験対象品のロットの寿命範囲と定める全解釈満足寿命範囲決定手順(V3)と、
を含む。
【0029】
この構成の寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラムは、この発明の寿命見積もり方法の実施に使用され、打切り試験において、少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命水準の試算を、試験データの解釈の違いを引き起こすことなく行うことができて、保証できる寿命の計算を、誰が行っても同じ計算結果にできる。
【発明の効果】
【0030】
この発明の寿命打切り試験からの寿命見積もり方法、装置、プログラムによると、入力された上記試験結果データから、未破損時間を何時間とするかの解釈で種々異なる、未破損時間と、未破損個数または破損個数との関係の場合分けを設定基準に従って行い、その場合分けされた各場合毎の、未破損時間と、未破損個数または破損個数とから、上記ワイブルスロープの値を用いて寿命をそれぞれ演算し、得られた各場合毎の寿命の範囲を全て充足する寿命の範囲を試験対象品のロットの寿命範囲と定めるため、打切り試験において、少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命水準の試算を、試験データの解釈の違いを引き起こすことなく行うことができて、保証できる寿命の計算を、誰が行っても同じ計算結果にできる。
上記各場合毎の寿命をそれぞれ演算するときに、種々の寿命のワイブル乱数を試験個数だけ発生させ、破損個数分を除いた残存乱数により、どのような寿命分布であれば、上記未破損時間まで未破損である確率が高いかという確率分布を求めるようにした場合は、未破損時間から試験対象品の寿命水準の下限を高い信頼度で求めることができる。
また、上記各場合毎の寿命をそれぞれ演算するときに、種々の寿命のワイブル乱数を試験個数だけ発生させ、破損個数分を除いた残存乱数により、どのような寿命分布であれば、最も短い方から破損個数までの試験対象品の寿命が未破損時間以下になる確率が高いかという確率分布を求めるようにした場合は、未破損時間から試験対象品の寿命水準の上限を高い信頼度で求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
この発明の一実施形態を説明する。この寿命打切り試験からの寿命見積もり方法は、軸受を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、打切り時間後の試験継続等を行ったときに、少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命の下限および上限を見積もる方法である。なお、軸受の他の機械部品や、軸受またはその他の機械部品の試験片の打切り試験における打切り時間を見積もる場合にも適用できる。
この実施形態の寿命打切り試験からの寿命見積もり方法は、例えば、一つのロットの軸受の中から一部の軸受を抜き取って打切り寿命試験を行い、そのロットの寿命を確認する試験等に適用される。
【0032】
以下、この実施形態を図面と共に説明する。この寿命打切り試験からの寿命見積もり方法は、図1に示すコンピュータ1に、寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラム210を実行させることで行う。コンピュータ1はパーソナルコンピュータ等からなり、中央処理装置4およびメモリ5を有し、所定のオペレーションシステムによって動作するものである。コンピュータ1には、液晶表示装置等の画面によって表示可能な表示装置2と、キーボードやマウス等の入力装置3が接続され、あるいは付属して設けられている。コンピュータ1、表示装置2、入力装置3、および寿命見積もりプログラム210により、図2および図3に各機能達成手段をブロックで示した寿命見積もり装置が構成される。同図の寿命見積もり装置の構成については、後に説明する。
寿命見積もりプログラム210は、コンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図5,図6に流れ図で示す手順を備えるものである。同図の内容は、後に説明する。
【0033】
この寿命見積もり方法は、図4に示すように、コンピュータ1に対して所定の情報を入力する入力過程E10と、コンピュータ1で演算処理を行って演算結果を出力するコンピュータ演算処理過程E20とからなる。
【0034】
入力過程E10では、図8に示すように所定の入力情報の入力を促す入力画面2a0が、コンピュータ1の出力によって表示装置2に表示される。この画面では、入力情報として打切り試験の対象となる軸受のワイブルスロープの値、および試験開始時の試験個数の入力を促す表示を行わせる。また、この画面には、計算を行う条件の表示として、例えば「破損3個より少ないときのL10寿命とL50寿命の範囲を見積もる」という文字による表示が行われる。
ワイブルスロープの値には、試験対象となる型番の軸受における実績値を入力する。実績値は10個以上の試験で得た結果を用いることが望ましく、より好ましくは20個以上の試験結果である。また、破損個数が3個よりも少ない時に限定したのは、通常、試験対象品の破損個数が3個よりも少ない場合に計算するためであり、これは、3個以上の破損が生じた場合、ワイブルプロットによる寿命の算出が可能であるためである。
【0035】
また、上記入力過程E0では、上記入力画面に2a0における入力ボックスへのワイブルスロープの値、および試験個数の入力の他に、打切り試験の試験結果データDである、試験個数分の未破損時間と試験の打切りまたは破損有無のデータDを入力する。
この試験結果データDは、例えば図8に示すように、試験片毎の未破損時間(試験継続時間に等しい)と、その未破損時間における試験の打ち切りまたは破損の状況を試験片番号と共に記録したデータである。試験結果データDは、この他に例えば、複数設定した所定時間毎(例えば、1000時間、2000時間、…ごと)の破損個数および試験打切りの有無のデータであっても良い。
上記試験結果データDは、入力装置3からファイルとして入力するようにしても、また入力画面2a0に試験結果データ入力欄を設け、その入力欄にキーボード等から入力するようにしても良い。
【0036】
図1の寿命見積もりプログラム210は、コンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図5、図6、図14、図26に流れ図で示す手順を備える。図5に示すように、寿命見積もりプログラム210は、促し画面出力手順F10と寿命演算手順F20とでなり、促し画面出力手順F10では、図8と共に前述した入力画面2a0を出力する。この入力画面2a0に対して、上記各入力情報が入力手段3から入力され、かつ入力画面2a0のOKキーのクリック等によって実行命令が入力手段3から入力されると、寿命演算手順F20が実行される。なお、促し画面出力手順F10では、ワイブルスロープの値および試験個数の他に、上記試験結果データDが適正に入力されたか否かを判断し、適正に入力された場合は、上記クリック等の実行命令によって寿命演算手順F20を実行するが、試験結果データD等の入力が適正に行われていない場合は、適正な入力を促す適宜の表示を入力画面2a0等に表示させる。同図の入力画面2a0に対して入力する過程が、図4の入力過程E10であり、同図のコンピュータ演算処理過程E20は図5の寿命演算手順F20を実行する過程である。
【0037】
図4のコンピュータ演算処理過程E20は、図6に図5の寿命演算手順F20の具体例を示すように、場合分け手順V1と、場合別寿命演算手順V2と、全解釈満足寿命範囲決定手順V3とを実行する過程である。
【0038】
これらの手順V1、V2、V3を含む寿命演算手順F20の全体を説明する。
まず、寿命の下限を求める場合について説明する。今、全データ個数をN個とし、それらデータを昇順に並び替えて、追い番号iを付け、追い番号ごとのデータをDiとする。それらの昇順に並び替えた結果から、N個中N-i+1個がDi以上という解釈が可能になる(合計N個の解釈)。これら解釈ごとに、寿命の下限を計算する。
次に、破損データから寿命の上限を求める場合について説明する。今、全データ個数をN個とし、全破損データ個数をMとし、破損データだけを抜き出し、それらデータを昇順に並び替えて、追い番号iを付け、追い番号ごとのデータをMiとする。それらの昇順に並び替えた結果から、N個中i個がMi以上という解釈が可能になる(合計M個の解釈)。これら解釈ごとに、寿命の上限を計算する。
以下、具体例を上げて説明する。まず、寿命の下限を求める場合について説明する。今、図7(A)のデータが得られたとする。この場合のデータは、1)7個中7個が1000h以上、2)7個中6個が2000h以上等の解釈が可能である。ここで、2)では、3)7個中6個1000h以上という解釈もなんとか可能である。しかし、この解釈3)は、2)よりも寿命の下限が小さくなることが明らかであり、計算を行っても最後の判定でその結果は反映されないことが分かっているので、結局この解釈について計算する必要はない。同様の考え方で、寿命の下限を求める場合の解釈は、7個(全数データ個数)で十分になる。図7(B)に必要最低限必要な7通りの解釈とその解釈ごとに求まる寿命の下限を示す。これらの解釈で得られた結果はすべて正しい結果であるから、すべての範囲が満たされている領域を選べば、7個中3個の解釈で得られたL10は1139h以上という結果が正になる。
同様に、破損データから寿命の上限を求める場合について説明する。破損データだけを抜き出し、それらデータを昇順に並び替えると、1)7個中1個が1000h以下、2)7個中2個が4000h以下の解釈が可能である。ここで、1)では、3)7個中1個2000h以下という解釈もなんとか可能である。しかし、この解釈3)は、1)よりも寿命の上限が大きくなることが明らかであり、計算を行っても最後の判定でその結果は反映されないことが分かっているので、結局この解釈について計算する必要はない。同様の考え方で、寿命の上限を求める場合の解釈は、2個(破損データ個数)で十分になる。図7(C)に必要最低限必要な2通りの解釈とその解釈ごとに求まる寿命の上限を示す。これらの解釈で得られた結果はすべて正しい結果であるから、すべての範囲が満たされている領域を選べば、7個中1個の解釈で得られたL10は2608h以下という結果が正になる。
【0039】
図6における場合分け手順V1は、入力過程E10で入力された試験結果データDから、上記のように解釈で種々異なる場合分けを設定基準に従って行う手順である。
上記設定基準は適宜設定すれば良い。
【0040】
場合別寿命演算手順V2は、上記のように場合分けされた各場合毎の、未破損時間と、未破損個数または破損個数とから、試験対象品のロットの寿命水準となる寿命を演算する手順である。各場合の寿命の演算は、寿命の下限だけでも良いが、この実施形態では寿命の下限および上限を演算する。また、この寿命の演算には、入力されたワイブルスロープの値を用いる。上記の各場合の寿命の下限を演算する手順は、下限寿命見積もりサブプログラム21′からなり、そのプログラム内容を図14に示す。上記の各場合の寿命の下限を演算する手順は、上限寿命見積もりサブプログラム21A′からなり、そのプログラム内容を図26に示す。これら図14,図26の内容は、後に説明する。
【0041】
図6の全解釈満足寿命範囲決定手順V3は、上記の場合別寿命演算過程V2で得られた各場合毎の寿命の範囲を全て満足する寿命の範囲を、試験対象品のロットの寿命範囲と定める手順である。この手順V3で計算された結果は、図9に出力画面2b0の例を示すように、表示装置2の画面に表示される。
【0042】
上記の場合分け手順V1、場合別寿命演算手順V2、および全解釈満足寿命範囲決定手順V3につき、具体例と共に説明する。
図7(A)の表は、打切り試験の試験結果データDを示している。このデータDは、試験片番号(1〜7)毎に、未破損時間と、その未破損時間で破損に至ったかまたは試験を打ち切ったかを示すデータである。このデータDの解釈としては、同図(B)と同図(C)の表のように、9通りの解釈が可能であり、例えば、上記のように、未破損時間が1000時間の場合は、試験個数7個の全てが残存していることになる。未破損時間が2000時間の場合は、試験個数7個のうち、6個が残存していることになる。すべての場合で、それぞれ保証できる寿命が計算できることになる。図7(B),(C)において、表中の右側の欄は、各場合別のL10寿命の下限または上限を示す。これらすべての計算結果は、データの解釈に問題が無い場合、すべてが正しい結果になる。したがって、保証できる寿命はすべての不等式が成り立つ領域になる。同図の表の例では、L10寿命の範囲は1139時間以上で、2608時間以下になる。
【0043】
以上のことから明らかなように、この実施形態における打切り試験結果からの寿命の見積り方法を使えば、保証できる寿命の計算を誰が行っても、同じにできるようになる。
【0044】
図2,図3と共に寿命打切り試験からの寿命見積もり装置につき説明する。この寿命見積もり装置は、上記打切り試験において、一部の試験対象品が破損し残りの試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命を見積もる装置であって、演算処理装置であるコンピュータ1と、このコンピュータ1の出力を画面に表示する表示装置2と、コンピュータ1に入力を行う入力装置3とを備える。
コンピュータ1は、上記表示装置2の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、並びに上記打切り試験の試験結果データDである、試験個数分の未破損時間と試験の打切りまたは破損有無のデータの入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段7E0と、
実行命令の入力に応答して、寿命を見積もる演算を行いその演算結果を上記表示の画面に出力する寿命見積もり演算手段220とを備える。
【0045】
上記寿命見積もり演算手段220は、場合分け手段221と、場合別寿命演算手段222と、全解釈満足寿命範囲決定手段223と、結果出力手段280とを備える。これらの各手段は、コンピュータ1のハードウェア(OSを含む)と、次に示す各手順とで構成される。
場合分け手段221は、上記入力装置3で入力された上記試験結果データDから、未破損時間を何時間とするかの解釈で種々異なる、未破損時間と、未破損個数または破損個数との関係の場合分けを設定基準に従って行う手段であり、図6の場合分け手順V1により構成される。
場合別寿命演算手段222は、上記場合分けされた各場合毎の、未破損時間と、未破損個数または破損個数とから、上記入力値のワイブルスロープの値を用いて寿命をそれぞれ演算する手段であり、図6の場合別演算手順21′で構成される。
全解釈満足寿命範囲決定手段223は、上記場合別寿命演算手段222で得られた各場合毎の寿命の範囲を全て充足する寿命の範囲を試験対象品のロットの寿命範囲と定める手段であり、図6の全解釈満足寿命範囲決定手順V3により構成される。
結果出力手段280は、全解釈満足寿命範囲決定手順V3で計算されたロットの寿命範囲を表示装置2の画面に出力する手段である。
【0046】
場合別寿命演算手段222は、下限寿命見積もり演算部22′および上限寿命見積もり演算部22A′を有し、これらの演算部22′,22A′は、図6の下限寿命見積もりサブプログラム21′および上限寿命見積もりサブプログラム21A′により構成される。 下限寿命見積もり演算部22′および上限寿命見積もり演算部22A′の具体的な構成は、図3に示すが、これらについては、後に図11,図23と共に説明する。なお、図3と、図11,図23とで、対応する構成部分は、同一符号を付してある。
【0047】
次に、場合別演算手段V2(図6)における下限寿命見積もりサブプログラム21′、上限寿命見積もりサブプログラム21A′、および図2の下限寿命見積もり演算部22′、下限寿命見積もり演算部22A′の具体的内容例につき説明する。
下限寿命見積もりサブプログラム21′、および上限寿命見積もりサブプログラム21A′は、それぞれ図14,図26に流れ図で示す手順を持つプログラムであるが、これらのプログラムは、上記の場合分け手順V1の後に実行させる他に、寿命試験結果をオペレータが解釈して、上記場合分けにおける一つの場合に当たる、未破損時間と、未破損個数または破損個数を定めて計算させるときにも適用される。
【0048】
この実施形態の寿命見積もり装置は、図2では図示を省略したが、試験結果データDを入力して場合分けさせて計算させる使用と、その場合分けの一つの場合に相当する、未破損時間と、未破損個数または破損個数を定めて計算させる使用とが可能とされている。
【0049】
図10〜図21は、上記下限寿命見積もりサブプログラム21′を用い、未破損時間と、未破損個数または破損個数を一つに定めて、寿命の下限を計算させるようにした寿命見積もり方法、装置、およびプログラムを示す。
また、図22〜図30は、上記上限寿命見積もりサブプログラム21A′を用い、未破損時間と、未破損個数または破損個数を一つに定めて、寿命の上限を計算させるようにした寿命見積もり方法、装置、およびプログラムを示す。
場合分けして計算させる使用と、未破損時間,未破損個数または破損個数を一つに定めて寿命の下限または上限を計算させる使用との使い分けは、例えば、入力装置3から所定のモード選択の入力を行うことで、対応する促し画面出力手段7E0(図2),7E(図11),7EA(図13)が選択されてその処理が開始されるようにする。
【0050】
図10〜図21と共に、未破損時間と、未破損個数または破損個数を一つに定めて、寿命の下限を計算させる方法,装置,プログラムにつき説明する。
この寿命打切り試験からの寿命見積もり方法は、図10に示すコンピュータ1に、寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラム21を実行させることで行う。この寿命見積もりプログラム21は、図1の寿命見積もりプログラム210の一部となる下限寿命見積もりサブプログラム21′(図6)に対して、上記とは別の促し画面出力手順F1(図13)を設けたものである。
コンピュータ1は上記のものである。このコンピュータ1、表示装置2、入力装置3、および寿命見積もりプログラム21により、図11に各機能達成手段をブロックで示した寿命見積もり装置が構成される。同図の寿命見積もり装置の構成については、後に説明する。
寿命見積もりプログラム21は、コンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図13および図14に流れ図で示す手順を備えるものである。同図の内容は、後に説明する。
【0051】
この寿命見積もり方法は、図11に示すように、コンピュータ1に対して所定の情報を入力する入力過程E1と、コンピュータ1で演算処理を行って演算結果を出力するコンピュータ演算処理過程E2とからなる。
【0052】
入力過程E1では、図16に示すように所定の入力情報の入力を促す入力画面2aが、コンピュータ1の出力によって表示装置2に表示される。この画面では、入力情報として打切り試験の対象となる軸受のワイブルスロープの値、試験開始時の試験個数、未破損個数および未破損時間の入力を促す表示を行わせる。ワイブルスロープの値には、試験対象となる型番の軸受における実績値を入力する。
実績値は10個以上の試験で得た結果を用いることが望ましく、より好ましくは20個以上の試験結果である。
【0053】
図12のコンピュータ演算処理過程E2では、入力された未破損時間,未破損個数等からその試験対象品を含むロットの寿命水準となる寿命を演算し、その演算結果を、図17のように出力画面2bに表示する。すなわち、少なくともいえる寿命の計算結果が同図のように出力される。
【0054】
図10の寿命見積もりプログラム21は、コンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図13,図14に流れ図で示す手順を備える。図13に示すように、寿命見積もりプログラム21は、促し画面出力手順G1と寿命演算手順G2とでなり、促し画面出力手順G1では、図17と共に前述した入力画面2aを出力する。この入力画面2aに対して、上記各入力情報が入力手段3から入力され、かつ入力画面2aのOKキーのクリック等によって実行命令が入力手段3から入力されると、寿命演算手順F2が実行される。同図の入力画面2aに対して入力する過程が、図12の入力過程A1であり、同図のコンピュータ演算処理過程E2は図13の寿命演算手順F2を実行する過程である。
【0055】
寿命演算手順G2は、図6の下限寿命見積もりサブプログラム21′であり、図14に流れ図で示す各手順で構成される。この流れ図には、各手順G21〜G26毎の具体的な処理例を併記してある。
【0056】
理解の容易のため、図14の流れ図を説明する前に、同図の流れ図の処理につき、全数未破損である場合に限定した処理を、具体的数値例と共に、図15と共に説明する。
【0057】
図15は、継続している全数未破損の打切り試験の途中結果から寿命を算出するための手順を示す。今、目標品質がL10寿命で1000時間を保証するための試験を行っている状況を考える。納期が3ヶ月(2100時間)であったため、試験個数を6個用意して全数打切り時間が1860時間の打切り試験を開始した。
試験は破損が発生することなく継続し、全数打切り時間が1860時間を経過したので目標品質を保証できるという結果が得られた。試験を終了してもよいが、試験機を他の調査で今すぐ使用するという状況ではないので、その製品の寿命水準を把握しておくという目的で更に試験を継続するということになった。
【0058】
今、試験が継続して3000時間が経過し、試験片6個全数未破損という状況から言える寿命を試算する。まず、現在の全数未破損時間である3000の1/10倍(=300時間)のL10寿命を持つワイブル分布(ワイブルスロープは実績から設定して1.85)から乱数を6個発生し(手順G21′)、得られた乱数6個すべてが3000時間以上になるかどうかを調べる(手順G22′)。
【0059】
次に、この作業を5000回繰り返し、5000回中何回の頻度で3000時間を越える状況が発生するのかを調べる(G23′)。これらは、ワイブルスロープ1.85、L10寿命300時間の寿命である6個の試験片を寿命試験したときに、どのくらいの確率で3000時間全数未破損になるかを調査していることに対応する。
【0060】
さらに、この確率の調査を3000時間よりも1/10、2/10、3/10…11/10 …200/10倍のL10寿命を持つワイブル分布で行う(G24′)。このように得られた確率につき、横軸をそのL10寿命、縦軸を3000時間全数未破損の確率としたものが図18(A)になる。この図は、どのような寿命分布であれば3000時間全数未剥離になる確率が高いかということを示している。10%の頻度でしか3000時間全数未剥離のデータが得られない寿命分布は、L10寿命が1530時間のものである。したがって、3000時間全数未剥離のデータが得られる場合は、90%の確率でL10寿命が15630時間以上であるといえる。このように、発生確率が10%(L10寿命の信頼度90%を100%から引いた値)に対応する時間を読み取って、その試験対象品のロットのL10寿命が15630時間以上であると読み取る(G25′)。
以上が全数打切り試験の途中結果から寿命を算出する方法である。
【0061】
次に、破損が生じた場合を含む寿命打切り試験から言える寿命について説明する。上記の表1の打切り試験の解釈(2) の項目に示すように、打切り試験の破損状況が複雑でも、その試験片の寿命水準を確認したい状況を想定している。例えば、試験個数10個の試験を行い、その内の2個の試験片は破損したが、その他の8個の試験片は未破損であったため、目標品質を満たすことができたが、引き続き試験を継続して、その試験片の寿命水準を確かめたい状況を想定している。
【0062】
ここでは、総試験軸受中に少数の軸受に破損が発生した状況から寿命を試算する方法について説明する。図14の流れ図は、破損が生じた場合を含む寿命打切り試験から言える寿命の演算手順を示す。
図14の流れ図において、具体例を示す注釈部分を参照して説明する。基本的な手順は、図15と共に前述した全数打切り試験結果から寿命を見積もる手順と同様である。
【0063】
以下、説明を簡単にするため、具体例を挙げる。目標品質がL10寿命で1000時間を保証するための試験を行っている状況を考える。納期が5ヶ月(3600時間)であったため、試験個数を6個用意して全数打切り時間が1860時間の打切り試験を開始した。試験を継続している途中、1個の試験片が1000時間で破損した。1000時間は、試験を中止する基準である全数打切り時間の設定値1860時間よりも短いが、試験を中止する基準(要求品質が満たされないとして試験を中止する基準時間)412時間を越えていたため、引き続き試験を継続することになった。目標品質を満たすためには、残存試験片の打切り時間が2626時間になるが、納期的には問題ない状況である。試験を継続した結果、残存試験片が2626時間で破損しなかったため、その製品は目標品質を満たすことができた。試験を終了してもよいが、試験機を他の調査で今すぐ使用するという状況ではないので、その製品の寿命水準を把握しておくという目的で更に試験を継続するということになった。
なお、全数未破損時の打切り時間、一部破損時の打切り時間、および試験中止基準時間は、適宜の方法で見積もることができるが、ここでは説明を省略する。
【0064】
今、試験を継続して3000時間経過し、試験片6個中5個が未破損という状況から言える寿命を試算する。
まず、現在の全数未破損時間である3000時間よりも、適宜の設定割合、例えば1/10倍(=300時間)のL10寿命を持つワイブル分布(ワイブルスロープは実績から設定して1.85)から乱数を6個発生する(手順G21)。
次に、得られた6個の乱数を昇順に並び替え、最も小さな乱数以外の5個のデータが3000時間以上になるかどうかを調べる(手順G22)。
【0065】
次に、この作業を設定回数(この例では5000回)繰り返し、5000回中何回の頻度で3000時間を越える状況が発生するのかを調べる(手順G23)。
これらは、ワイブルスロープ1.85、L10寿命300時間の寿命である6個の試験片を寿命試験したときに、一番短寿命である試験片以外の5個の試験片がどのくらいの確率で3000時間未破損になるかを調査していることに対応する。
【0066】
さらに、この確率の調査を3000時間の1/10、2/10、3/10…11/10 …200/10倍のL10寿命を持つワイブル分布で行う(手順G24)。これは、この方法で寿命演算できる最短寿命を3000時間の1/10、最長寿命を3000時間の200/10倍と設定した場合の演算範囲である。
【0067】
このように順次割合変更しながら、上記手順G23で得た確率について、横軸をL10寿命、縦軸を3000時間6個中5個未破損の確率としたものを作図したものが、図19(B)になる。この図は、どのような寿命分布であれば、最も短寿命である試験軸受以外の5個の試験片が3000時間全数未剥離になる確率が高いかということを示している。10%(L10寿命の信頼度である90%を100%から引いた値)の頻度でしか、3000時間6個中5個未剥離のデータが得られない寿命分布は、L10寿命が1099時間のものである。
【0068】
したがって、最も短寿命である試験片以外の5個の試験片が3000時間全数未剥離になる状況は、90%の確率でL10寿命が1099時間以上である状況といえる。このように、寿命分布と、残存乱数が未破損時間以上全数未剥離になる確率の関係から、(100%)−(信頼度)の時間を読み取り、その軸受のロットの水準となる寿命とする(手順G25)。このように読み取った寿命を、表示装置2の出力画面2bに表示する(手順G26)。
なお、手順G26において、上記の場合分け手順V1(図6)を経て図14の寿命演算手順G2が実行される場合は、上記の読み取った寿命は、画面表示せずに、全解釈寿命充足範囲決定手順V3に渡す。
【0069】
以上が総試験軸受中の少数の試験軸受に破損が発生した状況から寿命を算出する方法である。ここで、この状況の試験は、1000時間全数未破損という状況と考えることもできるし、6個中5個の試験片が3000時間未破損という状況と考えることもできるので、どちらの状況で寿命を試算すればよいかという疑問が残る。このような時には、いずれを採用するかを適宜設定しておけば良い。例えば、2つの状況で寿命の試算を行い、寿命が長く見積もられるほうを採用してもよい。表2に6個の試験片が1000,2000,3000時間全数未剥離であったとき試算できる寿命と6個中5個の試験片が1000,2000,3000時間未剥離であったとき試算できる寿命を示す。
【0070】
【表2】

【0071】
6個中全数の未破損時間1000時間であった時試算できる寿命は、6個中5個の試験片が3000時間未剥離であったとき試算できる寿命よりも短くなることが分かる。この場合、例えば、寿命が長く見積もられるもの(6個中5個の試験片が3000時間未剥離であったとき試算できる寿命)を採用することにする。
【0072】
表3に試験結果の別の例を示す。
【0073】
【表3】

【0074】
この試験結果は、(1) 6個中6個が3050時間以上、(2) 6個中5個が4000時間以上、(3) 6個中4個6000時間以上の3通りの解釈が可能である。表4にそれぞれの解釈で計算を行った結果を示す。
【0075】
【表4】

【0076】
計算の結果、6個中4個が6000時間以上であると解釈するほうが、最も長寿命側の判定ができる。したがって、この試験結果からは、L10寿命が1742時間以上であるといえる。
【0077】
図13,図14に示した寿命見積もりプログラム21についての上記の説明は、具体的に数値を例にとって説明したが、この寿命見積もりプログラム21は、整理すると、次の手順により構成される。
【0078】
この実施形態の寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラム21は、
コンピュータで実行可能なプログラムであって、
表示装置の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順(G1)と、
実行命令に応答して、寿命を演算し上記表示装置の画面に表示させる寿命演算手順(G2)とを含む。
【0079】
上記寿命演算手順(G2)は、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順(G21)と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、破損個数分の乱数を短いものから順に除いた残りの乱数が未破損時間以上になるか否かを調べる乱数分析手順(G22)と、
上記乱数発生手順(G1)および上記乱数分析手順(G22)を設定回数繰り返し、この繰り返しの各回おける上記乱数分析手順で調べた未破損時間以上にある確率を調べる設定割合寿命充足調査手順(G23)と、
この設定割合寿命充足調査手順(G23)を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命充足調査手順(G24)と、
この異寿命充足調査手順(G24)により得られた寿命と未破損時間以上にある確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命と定める寿命読み取り手順(G25)と、
寿命出力手順(G26)とを含む。
【0080】
設定割合寿命充足調査手順(G23)は、上記乱数発生手順(G1)および上記乱数分析手順(G22)を設定回数繰り返させる手順(G231)と、この繰り返しの各回おける上記乱数分析手順で調べた未破損時間以上にある確率を調べる確率調査の手順(G232)とでなる。
【0081】
異寿命充足調査手順(G24)は、設定割合寿命充足調査手順(G23)を、所定の最長寿命に達するまで繰り返させる繰り返し手順(G241)と、繰り返し毎に上記設定割合を順次変更する割合変更手順(G242)とでなる。なお、設定割合の初期値(上記の具体例では1/10)は、手順G21で定めておく。
【0082】
上記乱数発生手順(手順B21)の詳細について説明する。この手順B21は、ワイブル分布特定手順(G211)と、その特定したワイブル分布に従ってワイブル乱数を発生させる手順(G212)とでなる。ワイブル分布特定手順(G211)では、次のワイブル分布を特定する。
一般に軸受の寿命分布は次式1)のワイブル分布に従うと言われている。
【0083】
【数2】

【0084】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
ワイブル分布は、3つのパラメータを持っており、ワイブルスロープmによって指数分布、対数正規分布、正規分布を表現できる万能分布として知られている。参考として、図20に各種パラメータを変化させた時のワイブル分布の変化を示す。ワイブルスロープmは、分布の形状を支配するパラメータであり、この値が小さいほどばらつきの大きい分布ということができる。尺度因子αは、横軸(寿命)のスケールを変化させるもので、この値が大きいほど寿命は相対的に長くなる。最小寿命γは、寿命分布の横軸(寿命)を単にシフトさせるものである。
【0085】
この実施形態では、ワイブル乱数を発生させるが、この乱数を発生させるためにはワイブル分布の3つのパラメータを決定する必要がある。決め方の手順は、例えば以下のようになる。
1)ワイブルスロープmを実績から決定する。
2)乱数を発生させたい分布の信頼度(例えばL10寿命であるか、あるいはL50寿
命であるか)を決定する。
3)信頼度から求めたワイブルスロープmから、最小寿命γを所定の数式を使って決定
する。例えば、L10寿命またはL50寿命から求めた尺度因子αから、
最小寿命γを、例えば、以下の2)式を使って決定する。
この式は、1990年制定のISOの最小寿命であり、実験値からの回帰式である。
【0086】
【数3】

【0087】
これは、R≦10の値で、R=0(L10寿命でのa1)のとき、この式は1になるという式である。過去のISOの最少寿命考慮の式では、L10寿命以下の寿命は、この式にL10寿命を書けた値ということで定義されている。Rは信頼度に対応する値(100−Rが信頼度となる値)である。
なお、最小寿命の定め方については、各種の規格(例えばISO)において、時代と共に変更される場合があるが、規格の変更に伴い、実施時の規格に応じた定め方を採用すれば良い。また、最小寿命は、材料試験条件によっても変化するのでより一般的な式で記述するほうが良いとの主張もあり、適宜の値を用いれば良い。
【0088】
ワイブル乱数の発生(手順G212)につき説明する。乱数とは、定性的にはでたらめな数列であって、発生頻度が均一(等確率)で、その発生に規則性がない(無規則性)というものであるが、完全な乱数を発生させることは不可能である。そこで、コンピュータで発生させることのできる疑似乱数を使う。簡易な乱数発生アルゴリズムでは、例えば10進法で20桁ぐらいの周期性が見られるが、周期性が6千桁以上の周期性となるものもあり、このような周期性の少ない乱数発生アルゴリズムを用いることが好ましい。
【0089】
この実施形態では、一様な乱数ではなく、ワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を発生させる。このため発生方法には工夫が必要になる。確率密度関数が複雑な場合、その分布に従う乱数を発生するには棄却法と呼ばれる方法を用いればよく、この実施形態においても、棄却法を用いる。
確率密度関数f(x)の変域が図21のように、0からX0 の範囲にあるとみなされるものとし、その変域内でのf(x)の最大値をMとする。RNを区間〔0,1 〕での一様擬似乱数とするとX0 ・RNにより、区間〔0,x0〕での一様擬似乱数xiを発生することができる。同様にして、M・RNにより、区間〔0,M 〕での一様擬似乱数yiを発生することができる。そこで、このようにして発生させた乱数xi,yiがf(xi)> yi となる条件を満足する場合には、乱数xiは与えられた確率密度分布に従うものとして採用し、満足しなければ、その乱数xiを不採用とする。この作業を繰り返し、確率密度分布に従う確率で乱数xiを採用し、確率密度分布に従う乱数の数列を作っていく方法を棄却法という。この方法は、条件に合わない乱数を捨てることになるので乱数発生法としては効率がよくないが、よい一様乱数さえ得られれば原理的に正しい数列が得られる方法である。
【0090】
図11と共に寿命打切り試験からの寿命見積もり装置につき説明する。この寿命見積もり装置は、打切り試験において、少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命を見積もる装置であって、演算処理装置であるコンピュータ1と、このコンピュータ1の出力を画面に表示する表示装置2と、コンピュータ1に入力を行う入力装置3とを備える。
コンピュータ1は、表示装置2の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段7Eと、
実行命令の入力に応答して、寿命を見積もる演算を行いその演算結果を上記表示の画面に出力する寿命見積もり演算手段22とを備える。
【0091】
寿命見積もり演算手段22は、乱数発生手段23と、乱数分析手段24と、設定割合寿命充足調査手段25と、異寿命充足調査手段26と、寿命読み取り手段27と、読取結果出力手段28とを備える。
【0092】
乱数発生手段23は、未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させる手段であり、図14の手順G21で説明した処理を行う。上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる。
乱数発生手段23は、ワイブル分布特定部23aと、乱数発生部23bとからなる。ワイブル分布特定部23aは、図14の手順G211で説明した処理を行い、乱数発生部23bは、図14の手順G212Dで説明した処理を行う。
【0093】
乱数分析手段24は、発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、破損個数分の乱数を短いものから順に除いた残りの乱数が未破損時間以上になるか否かを調べる手段であり、図14の流れ図における手順G22で説明した処理を行う。
【0094】
設定割合寿命充足調査手段25は、上記乱数発生手段23および上記乱数分析手段24の処理を設定回数繰り返し、この繰り返しの各回おける上記乱数分析手段24で調べた未破損時間以上にある確率を調べる手段であり、図14の流れ図における手順G23で説明した処理を行う。
【0095】
異寿命充足調査手段26は、上記設定割合寿命充足調査手段26の処理を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す手段であり、図14の流れ図における手順G24で説明した処理を行う。
【0096】
寿命読み取り手段27は、異寿命充足調査手段26の処理により得られた寿命と未破損時間以上にある確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命と定める寿命読み取る手段であり、図14の流れ図における手順G25で説明した処理を行う。
【0097】
読取結果出力手段28は、寿命読み取り手段27で読み取った寿命を上記表示装置2に出力させる手段であり、図14の流れ図における手順G26で説明した処理を行う。
なお、寿命読み取り手段27は、図2の場合分け手段221を経て処理が行われる場合は、読取結果出力手段28(図11)に結果を渡す代わりに、図2の全解釈満足寿命範囲決定手段223に結果を渡す。
【0098】
図3の下限寿命見積もり演算部22′は、図11の寿命見積もり演算手段22に対し、見取り結果手段手段28を省いたものであり、その他の構成要素となる各手段23,24,25,26,29は、特に説明する事項を除き、図11の寿命見積もり演算手段22の各手段23,24,25,26,29と同じである。
【0099】
図22ないし図30と共に、未破損時間と、未破損個数または破損個数を一つに定めて寿命の上限をさせる方法,装置,プログラムについて説明する。
この寿命打切り試験からの寿命見積もり方法は、図22に示すコンピュータ1に、寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラム21Aを実行させることで行う。この寿命見積もりプログラム21Aは、図1の寿命見積もりプログラム210の一部となる上限寿命見積もりサブプログラム21A′(図6)に対して、上記とは別の促し画面出力手順F1Aを設けたものである。
コンピュータ1は上記のものである。このコンピュータ1、表示装置2、入力装置3、および寿命見積もりプログラム21Aにより、図23に各機能達成手段をブロックで示した寿命見積もり装置が構成される。
【0100】
寿命見積もりプログラム21Aは、コンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図25および図26に流れ図で示す手順を備えるものである。
なお、この実施形態における寿命見積もりプログラム21Aは、図10の寿命見積もりプログラム21と同じコンピュータ1で実行されるが、例えば上記寿命の下限の計算の後に、この寿命見積もりプログラム21A寿命の上限の計算を行うようにすることが望ましい。その場合、オペレータの入力事項のうち、重複する入力事項は一度で行うようにし、入力処理を兼用することができるできる。
【0101】
この寿命見積もり方法は、図24に示すように、コンピュータ1に対して所定の情報を入力する入力過程E1Aと、コンピュータ1で演算処理を行って演算結果を出力するコンピュータ演算処理過程E2Aとからなる。
【0102】
入力過程E1では、図28に示すように所定の入力情報の入力を促す入力画面2aAが、コンピュータ1の出力によって表示装置2に表示される。この入力画面2aA、およびこの入力画面に対して行う入力は、第1の実施形態(図1ないし図21)と同様であるので、重複する説明を省略する。ただし、この実施形態では、見積もる寿命は、L10寿命およびL50寿命の上限であり、その旨の表示が行われる。
【0103】
図24のコンピュータ演算処理過程E2Aでは、入力された未破損時間,未破損個数等からその試験対象品を含むロットの寿命の上限(その試験結果からはその寿命以上は期待できないという値)を演算し、その演算結果を、図29のように出力画面2bAに表示する。すなわち、ロットの寿命の上限値が、同図のように出力される。この上限値は、L10寿命およびL50寿命の各々について出力される。
【0104】
図22の寿命見積もりプログラム21Aは、コンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図25,図26に流れ図で示す手順を備える。図25に示すように、寿命見積もりプログラム21Aは、促し画面出力手順F1Aと寿命上限演算手順F2Aとでなり、促し画面出力手順F1では、図28と共に前述した入力画面2aAを出力する。この入力画面2aAに対して、上記各入力情報が入力手段3から入力され、かつ入力画面2aAのOKキーのクリック等によって実行命令が入力手段3から入力されると、寿命上限演算手順F2Aが実行される。同図の入力画面2aAに対して入力する過程が、図24の入力過程E1Aであり、同図のコンピュータ演算処理過程E2Aは図25の寿命上限演算手順F2Aを実行する過程である。
【0105】
寿命上限演算手順F2Aは、図6の上限寿命見積もりサブプログラム21A′であり、図26に流れ図で示す各手順で構成される。この流れ図には、各手順G21A〜G26A毎の具体的な処理例を併記してある。
【0106】
理解の容易のため、図26の流れ図を説明する前に、同図の流れ図の処理につき、1個破損である場合に限定した処理を、具体的数値例と共に、図27と共に説明する。
【0107】
図27は、継続している全数未破損の打切り試験の途中結果から寿命の上限を算出するための手順を示す。
今、6個の試験片の試験が継続して3000時間が経過し、その中の1個の試験片が破損したという状況からいえる寿命範囲を試算する。なお、第1の実施形態により、6個す ての試験片が3000時間以上であった場合の少なくともいえる寿命(90%の確率で保証できる下限のL10寿命)は1530時間以上であると求めることができる。
以下、図27と共に、寿命の上限を求めていく。現在、6個中1個の試験片が3000時間で破損しているが、その破損時間の0.5倍(=1500時間)のL10寿命を持つワイブル分布(ワイブルスロープは実績から設定して1.85)から乱数を6個発生させる(G21A′)。
得られた乱数6個を昇順に並び替え、最も小さい乱数が3000時間以下になるか否かを調べる(G22A)。
次に、この作業を5000回繰り返し、最も小さい乱数が3000時間以下になる状況が5000回中何回の頻度で発生するのかの確率を調べる(G23A′)。
これらは、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1500時間の寿命である6個の試験片を寿命試験したときに、最も短い寿命の試験片ではどのくらいの確率で3000時間以下のデータが出るのかを調査していることに対応する。
さらに、この確率の調査を3000時間よりも、0.5、1、1.5…25倍のL0寿命を持つワイブル分布で行う(G24A′)。
この調査の結果から累積確率分布を求め、10%の確率分布となる時間を読み取る(G25A′)。すなわち、横軸をそのL10寿命、縦軸を最も短い試験片の寿命が3000時間以下になる確率としたものが、図30(B)である。この図は、どのような寿命分布であれば、最も短い試験片の寿命が3000時間以下になる確率が高いかということを示している。
この図から、L10寿命が7316時間の寿命分布を持つ試験片から6個中1個の試験片が3000時間以下の破損が生じることは10%のレアケースである。したがって、6個中1個の試験片が3000時間以下のデータが得られる試験片群の寿命は、90%の確率で、L10寿命が7316時間以下であるといえる。これより、寿命の範囲は1530時間以上7316時間以下であるといえる。
【0108】
以上が1個以上の破損データが得られた場合の寿命の上限を計算する方法である。この方法を応用すれば、2個の破損データが得られた場合でも寿命上限を計算することができる。これらの計算は、上記の寿命見積もりプログラム21,21Aを使って行うが、その入力と出力の結果を図28,図29に示す。ここで、ワイブルスロープは試験個数が10個以上の実際の試験から求めた実績値を入力することが望ましい。
以上のことから明らかなように、この寿命上限の計算方法によれば、その結果からその寿命以上は期待できないという判断が可能になる。
【0109】
次に、図26と共に、寿命上限演算手順F2A、つまり1個以上の破損データが得られた場合の寿命の上限を計算する手順の詳細を説明する。同図の流れ図において、具体例を示す注釈部分を参照して説明する。基本的な手順は、図27と前述した手順と同様である。
【0110】
図26につき、説明が重複するが、図27につき説明した例を具体例として用いる。以下の説明における括弧内の数値は具体例である。
いま、n個(6個)の試験片の試験が継続して所定の未破損時間(3000時間)が経過し、その中のm個(1個)の試験片が破損したという状況から言える寿命範囲を試算する。
【0111】
まず、ステップG21A(乱数発生手順)の処理を説明する。n個中m個(6個中1個)の試験片が所定の未破損時間T(3000時間)で破損しているが、そのm個の試験片が破損した破損時間である上記未破損時間Tに対する設定割合(0.5倍=(1500時間))のL10寿命を持つワイブル分布(ワイブルスロープは実績から設定して1.85から乱数をn個(6個)発生させる。この処理中のワイブル分布の特定(G211A)および乱数発生(G212A)の方法は、第1の実施形態で説明した方法と同様である。
【0112】
ついで、乱数分析手順(G22A)では、得られた乱数n個(6個)を昇順に並び替え、最も小さい方から破損個数m個までの乱数が上記未破損時間T(3000時間)以下になるか否かを調べる。破損個数mが1個の場合は、一番小さい乱数が3000時間以下になるか否かを調べる。
【0113】
次に、設定割合寿命非充足調査手順(G23A)では、上記乱数発生手順(G21A)と乱数分析手順(G22A)を設定回数(5000回)繰り返し(G231A)、最も小さい方から破損個数mまでの乱数が上記未破損時間T以下になるか否かを調べる(G232A)。破損個数mが1個である場合は、一番小さい乱数が3000時間以下になる状況が5000回中何回の頻度で発生するのかの確率を調べる。
これらは、ワイブルスロープ1.85、L10寿命が、(設定割合)×T(1500時間)の寿命であるn個(6個)の試験片を寿命試験したときに、最も小さい方から破損個数mまでの試験片ではどのくらいの確率で未破損時間T(3000時間)以下のデータが出るのかを調査していることに対応する。
【0114】
さらに、異寿命充足調査手順(G24A)では、上記確率の調査(G23A)を、上記未破損時間T(m個の破損が生じた破損時間)(3000時間)よりも、0.5、1、1.5…25倍のL0寿命を持つワイブル分布で行う。
【0115】
寿命上限読み取り手順(G25A)では、上記異寿命充足調査手順(G24A)の結果から累積確率分布を求め、その発生確率が100%から所定信頼度(90%)を減算した値(10%)の確率分布となる寿命時間を読み取る(G25A)。
すなわち、横軸をそのL10寿命、縦軸を最も短い試験片の寿命が未破損時間T(3000時間)以下になる確率としたものが、図30(B)である。この図は、どのような寿命分布であれば、最も短い方から破損個数m(1個)までの試験片の寿命が未破損時間T(3000時間)以下になる確率が高いかということを示している。
この図から、L10寿命が7316時間の寿命分布を持つ試験片から6個中1個の試験片が3000時間以下の破損が生じることは10%のレアケースである。したがって、6個中1個の試験片が3000時間以下のデータが得られる試験片群の寿命は、90%の確率で、L10寿命が7316時間以下であるといえる。これより、寿命の範囲は1530時間以上7316時間以下であるといえる。
【0116】
寿命上限出力手順(G26A)では、寿命上限読み取り手順(G25A)で読み取った寿命の上限を、表示装置2の出力画面2bに表示する。
以上が、寿命上限演算手順F2A、つまり1個以上の破損データが得られた場合の寿命の上限を計算する手順である。
【0117】
このように、種々の寿命のワイブル乱数を試験個数だけ発生させ、どのような寿命分布であれば、最も短い方から破損個数までの試験対象品の寿命が未破損時間以下になる確率が高いかという確率分布を求めるようにしたため、未破損時間から試験対象品の寿命の上限を高い信頼度で求めることができる。また、上記の処理はコンピュータシミュレーションとし、コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間を入力するだけで、寿命水準が出力されるようにしたため、熟練を要することなく、簡単に、かつ迅速に、未破損時間から寿命の上限を求めることができる。
【0118】
図26,図27に示した寿命見積もりプログラム21Aについての上記の説明は、具体的に数値を例にとって説明したが、この寿命見積もりプログラム21Aは、整理すると、次の手順で構成される。
【0119】
この寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラム21Aは、寿命の上限を コンピュータで実行可能なプログラムであって、
表示装置の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順(G1A)と、
実行命令に応答して、寿命を演算し上記表示装置の画面に表示させる寿命上限演算手順(G2A)とを含む。
【0120】
上記寿命上限演算手順(G2A)は、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順(G21A)と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間未満になるか否かを調べる乱数分析手順(G22A)と、
上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返し、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間未満になる確率を調べる設定割合寿命非充足調査手順(G23A)と、
この設定割合寿命非充足調査手順(G23A)を、上記未破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命非充足調査手順(24A)と、
この異寿命非充足調査手順により得られた寿命と未破損時間未満になる確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命の上限と定める寿命上限読み取り手順(G25A)と、
寿命上限出力手順(G26A)とを含む。
【0121】
設定割合寿命非充足調査手順(G23A)は、上記乱数発生手順(G21A)および上記乱数分析手順(G22A)を設定回数繰り返させる手順(G231A)と、この繰り返しの各回おける上記乱数分析手順で調べた最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間未満になる確率を調べる確率調査の手順(G232A)とでなる。
【0122】
異寿命非充足調査手順(G24A)は、設定割合寿命非充足調査手順(G23A)を、所定の最長寿命に達するまで繰り返させる繰り返し手順(G241A)と、繰り返し毎に上記設定割合を順次変更する割合変更手順(G242A)とでなる。なお、設定割合の初期値(上記の具体例では5/10)は、乱数発生手順G21Aで定めておく。
【0123】
この構成の寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラム21Aは、こ未破損時間から寿命の上限を、簡単、迅速求めることができ、かつ信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても未破損時間から寿命水準を適切に求めることができる。
【0124】
図23と共に、第2の寿命打切り試験からの寿命見積もり装置について説明する。この寿命打切り試験からの寿命見積もり装置は、寿命の上限を見積もる装置である。
この寿命見積もり装置は、上記打切り試験において、一部の試験対象品が破損し残りの対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命の上限を見積もる装置であって、演算処理装置であるコンピュータ1と、このコンピュータ1の出力を画面に表示する表示装置2と、コンピュータ1に入力を行う入力手段3とを備える。
【0125】
コンピュータ1は、表示装置2の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段7EAと、
実行命令の入力に応答して、寿命の上限を見積もる演算を行いその演算結果を上記表示の画面に出力する寿命上限見積もり演算手段22Aとを備える。
【0126】
寿命上限見積もり演算手段22Aは、乱数発生手段23Aと、乱数分析手段24Aと、設定割合寿命非充足調査手段25Aと、異寿命非充足調査手段26Aと、寿命読み取り手段27Aと、読取結果出力手段28Aとを備える。
【0127】
乱数発生手段23Aは、未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させる手段であり、図26の手順G21Aで説明した処理を行う。上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる。
乱数発生手段23は、ワイブル分布特定部23Aaと、乱数発生部23Abとからなる。ワイブル分布特定部23Aaは、図26の手順G211Aで説明した処理を行い、乱数発生部23Abは、図26の手順G212Aで説明した処理を行う。
【0128】
乱数分析手段24Aは、発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間未満になるか否かを調べる手段であり、図26の流れ図における手順G22Aで説明した処理を行う。
【0129】
設定割合寿命非充足調査手段25Aは、上記乱数発生手段23Aおよび上記乱数分析手段24Aの処理を設定回数繰り返し、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間未満になる確率を調べる手段であり、図26の流れ図における手順G23Aで説明した処理を行う。
【0130】
異寿命非充足調査手段26Aは、上記設定割合寿命非充足調査手段25Aの処理を、未破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す手段であり、図26の流れ図における手順G24Aで説明した処理を行う。
【0131】
寿命上限読み取り手段29Aは、異寿命非充足調査手段26Aの処理により得られた寿命と未破損時間未満になる確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命の上限と定める手段であって、図26の流れ図における手順G25Aで説明した処理を行う。
【0132】
読取結果出力手段28Aは、寿命上限読み取り手段29Aで読み取った寿命の上限を上記表示装置2に出力させる手段であり、図26の流れ図における手順G26Aで説明した処理を行う。
なお、寿命上限読み取り手段29Aは、図2の場合分け手段221を経て処理が行われる場合は、読取結果出力手段28A(図23)に結果を渡す代わりに、図2の全解釈満足寿命範囲決定手段223に結果を渡す。
【0133】
図3の上限寿命見積もり演算部22A′は、図23の寿命見積もり演算手段22Aに対し、見取り結果手段手段28Aを省いたたものであり、その他の構成要素となる各手段23A,24A,25A,26A,29Aは、特に説明する事項を除いて、図23の寿命上限見積もり演算手段22Aの各手段23A,24A,25A,26A,29Aと同じである。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】この発明の一実施形態に係る寿命見積もり装置の概略ブロック図である。
【図2】同寿命見積もり装置の概念構成を示すブロック図である。
【図3】同寿命見積もり装置の概念構成をより具体的に示すブロック図である。
【図4】同寿命見積もり装置を用いた寿命見積もり方法の概略流れ図である。
【図5】同寿命見積もり方法を実施する寿命見積もりプログラムの概略の流れ図である。
【図6】同寿命見積もりプログラムにおける寿命演算手順の概略の流れ図である。
【図7】試験結果データと、場合分け例と、場合毎の寿命を全て満足する寿命の関係の例を示す説明図である。
【図8】図1の寿命見積もり装置における入力画面例の説明図である。
【図9】図1の寿命見積もり装置における出力画面例の説明図である。
【図10】同実施形態に係る寿命見積もり装置の場合分け無しとして下限計算に使用する変形使用例の概略ブロック図である。
【図11】同寿命見積もり装置の同変形使用例における概念構成を示すブロック図である。
【図12】同寿命見積もり装置を同変形使用例での寿命見積もり方法の概略流れ図である。
【図13】同寿命見積もり方法を同変形使用例で実施する寿命見積もりプログラムの概略の流れ図である。
【図14】同プログラムにおける下限寿命見積もりサブプログラムとなる寿命演算手順の詳細を示す流れ図である。
【図15】同流れ図を特定の数値の場合に適用した例を示す概略流れ図である。
【図16】図10の寿命見積もり装置における入力画面例の説明図である。
【図17】図10の寿命見積もり装置における出力画面例の説明図である。
【図18】(A)はワイブル分布の例のグラフ、(B)は寿命分布と全数未破損となる確率の関係を示すグラフである。
【図19】(A)はワイブル分布の例のグラフ、(B)は寿命分布と6個中5個未破損となる確率の関係を示すグラフである。
【図20】ワイブル分布の各パラメータの影響例を示すグラフである。
【図21】ワイブル分布の定め方を示すグラフである。
【図22】同実施形態に係る寿命見積もり装置の場合分け無しとして上限計算に使用する変形使用例の概略ブロック図である。
【図23】同寿命見積もり装置の同変形使用例における概念構成を示すブロック図である。
【図24】同寿命見積もり装置を同変形使用形態で用いる寿命見積もり方法の概略流れ図である。
【図25】同寿命見積もり方法を同変形使用形態で実施する寿命見積もりプログラムの概略の流れ図である。
【図26】同プログラムにおける上限寿命見積もりサブプログラムとなる寿命演算手順の詳細を示す流れ図である。
【図27】同流れ図を特定の数値の場合に適用した例を示す概略流れ図である。
【図28】図22の寿命見積もり装置における入力画面例の説明図である。
【図29】図22の寿命見積もり装置における出力画面例の説明図である。
【図30】所定割合寿命が非充足となる頻度を示すグラフ、(B)は寿命と累積確率のの関係を示すグラフである。
【図31】従来の打切りおよび加速試験の手順を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0135】
1…コンピュータ(演算処理手段)
2…表示装置
3…入力装置
7E…促し画面出力手段
7E0…促し画面出力手段
7EA…促し画面出力手段
21…寿命見積もりプログラム
22…寿命見積もり演算手段
23……乱数発生手段
24…乱数分析手段
25…設定割合寿命調査手段
26…異寿命充足調査手段
27…寿命読み取り手段
28…読取結果出力手段
21A…寿命見積もりプログラム
22A…寿命上限見積もり演算手段
23A……乱数発生手段
24A…乱数分析手段
25A…設定割合寿命非充足調査手段
26A…異寿命非充足充足調査手段
27A…寿命読み取り手段
28A…読取結果出力手段
22′…下限寿命見積もり演算部
22A′…上限寿命見積もり演算部
210…寿命見積もりプログラム
220…寿命見積もり手段
221…場合分け手段
222…場合別寿命見積もり演算部
223…全解釈寿命範囲決定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受またはその他の機械部品または試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、所定信頼度の寿命についての要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、
一部の試験対象品が破損し残りの試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命を見積もる方法であって、
コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、並びに上記打切り試験の試験結果データである、試験個数分の未破損時間と試験の打切りまたは破損有無のデータを入力する入力過程と、
上記コンピュータに、寿命を演算させ演算結果を表示装置の画面に表示させるコンピュータ演算処理過程とを含み、
上記コンピュータ演算処理過程として、
上記入力過程で入力された上記試験結果データから、未破損時間を何時間とするかの解釈で種々異なる、未破損時間と、未破損個数または破損個数との関係の場合分けを設定基準に従って行う場合分け手順と、
上記コンピュータにより、上記場合分けされた各場合毎の、未破損時間と、未破損個数または破損個数とから、上記ワイブルスロープの値を用いて寿命をそれぞれ演算する場合別寿命演算手順と、
上記場合別寿命演算過程で得られた各場合毎の寿命の範囲を全て充足する寿命の範囲を試験対象品のロットの寿命範囲と定める全解釈満足寿命範囲決定手順と、
を実行する寿命打切り試験からの寿命見積もり方法。
【請求項2】
請求項1において、上記ロットの寿命の上限および下限のうち、少なくとも下限を見積もる方法であり、上記場合別寿命演算手順では、各場合における、寿命の少なくとも下限をそれぞれ演算する寿命打切り試験からの寿命見積もり方法。
【請求項3】
請求項1において、上記ロットの寿命の上限および下限の両方を見積もる方法であり、上記場合別寿命演算手順では、各場合における、寿命の上限および下限をそれぞれ演算する寿命打切り試験からの寿命見積もり方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、上記場合別寿命演算手順における寿命の下限を演算する手順は、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、破損個数分の乱数を短いものから順に除いた残りの乱数が未破損時間以上になるか否かを調べる乱数分析手順と、
上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返し、この繰り返しの各回おける上記乱数分析手順で調べた未破損時間以上にある確率を調べる設定割合寿命充足調査手順と、
この設定割合寿命充足調査手順を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命充足調査手順と、
この異寿命充足調査手順により得られた寿命と未破損時間以上にある確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命と定める寿命読み取り手順と、
を含む寿命打切り試験からの寿命見積もり方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、上記ロットの寿命の上限および下限の両方を見積もる方法であり、上記場合別寿命演算手順では、各場合における、寿命の上限および下限をそれぞれ演算するものとし、上記場合別寿命演算手順における寿命の上限を演算する手順は、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になるか否かを調べる乱数分析手順と、
上記乱数発生手順および乱数分析手順を設定回数繰り返し、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になる確率を調べる設定割合寿命非充足調査手順と、
この設定割合寿命非充足調査手順を、上記未破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命非充足調査手順と、
この異寿命非充足調査手順により得られた寿命と未破損時間以下になる確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命の上限と定める寿命上限読み取り手順と、
を含む寿命打切り試験からの寿命見積もり方法。
【請求項6】
軸受またはその他の機械部品または試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、所定信頼度の寿命についての要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、
一部の試験対象品が破損し残りの試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命を見積もる装置であって、
演算処理装置と、この演算処理装置の出力を画面に表示する表示装置と、上記演算処理装置に入力を行う入力手段とを備え、
上記演算処理装置は、
上記表示装置の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、並びに上記打切り試験の試験結果データである、試験個数分の未破損時間と試験の打切りまたは破損有無のデータの入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段と、
実行命令の入力に応答して、寿命を見積もる演算を行いその演算結果を上記表示の画面に出力する寿命見積もり演算手段とを備え、
上記寿命見積もり演算手段は、
上記入力手段で入力された上記試験結果データから、未破損時間を何時間とするかの解釈で種々異なる、未破損時間と、未破損個数または破損個数との関係の場合分けを設定基準に従って行う場合分け手段と、
上記場合分け手段により場合分けされた各場合毎の、未破損時間と、未破損個数または破損個数とから、上記ワイブルスロープの値を用いて寿命をそれぞれ演算する場合別寿命演算手段と、
上記場合別寿命演算手段で得られた各場合毎の寿命の範囲を全て充足する寿命の範囲を試験対象品のロットの寿命範囲と定める全解釈満足寿命範囲決定手段と、
を備える寿命打切り試験からの寿命見積もり装置。
【請求項7】
コンピュータで実行可能なプログラムであって、
表示装置の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、試験個数、並びに上記打切り試験の試験結果データである、試験個数分の未破損時間と試験の打切りまたは破損有無のデータの入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順と、
実行命令に応答して、寿命を演算し上記表示装置の画面に表示させる寿命演算手順とを含み、
上記寿命演算手順は、
上記入力手段で入力された上記試験結果データから、未破損時間を何時間とするかの解釈で種々異なる、未破損時間と、未破損個数または破損個数との関係の場合分けを設定基準に従って行う場合分け手順と、
上記コンピュータにより、上記場合分けされた各場合毎の、未破損時間と、未破損個数または破損個数とから、上記ワイブルスロープの値を用いて寿命をそれぞれ演算する場合別寿命演算手順と、
上記場合別寿命演算過程で得られた各場合毎の寿命の範囲を全て充足する寿命の範囲を試験対象品のロットの寿命範囲と定める全解釈満足寿命範囲決定手順と、
を含む寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2008−145415(P2008−145415A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192891(P2007−192891)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】