説明

打楽器

【課題】胴本体の開放面に張設したドラムヘッドで成る打楽器における効果的なミュート機能を実現可能な打楽器を提供する。
【解決手段】胴本体20の外周面には、その縦方向において適宜の間隔でラグ30が設けられている。また、スライド用長穴107が形成された段差付ガイド110を介してテンションボルト100をラグ30に締結可能に構成されている。そして、段差付ガイド110の厚み部分が、スライド用長穴107の長手方向に沿って、第1の厚さ部(厚板部)とこれより薄い第2の厚さ部(薄板部)とその両厚さ間で除々変化する中間部でなっていて、これにより、テンションボルト100の締め付けによるドラムヘッド10の張設力を簡単に変更操作できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胴本体の開放面に張設したドラムヘッドで成る打楽器におけるこのドラムヘッドの張設力を調整する機能を備えた打楽器の改良に関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、打楽器の練習をスタジオ内ではなく通常の室内においても行うことを可能にするために、ドラム等の打楽器において、胴本体の開放面に張設されたドラムヘッド(通常「打面シート」とも称される)の張設力を変更してミュート機能を実現すべく様々な提案がなされてきた。例えば、ドラムヘッドの裏面側(即ち、胴本体内部側)において、フェルトパッドを押し付ける操作を行うための機構や、ドラムヘッドの表面上側から制振板をドラムヘッドに接触させてミュート機能を実現するもの等が提案されていた(例えば、特許文献1参照)。更に、打楽器の外側から空気を供給し、胴本体内を膨張させて、ドラムヘッドの張設力を調整するものも提案されていた(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−12987号公報(第2−4頁、第7図)
【特許文献2】米国特許第635192号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した空気を供給するタイプの打楽器は、ドラムヘッドの張設力を調節して打音のピッチを変更することには効果はあるものの、ミュート機能を意識した構成とはされていなかった。また、上述したように各種の機構によってドラムヘッドの張設力を調整したり、ドラムヘッドの振動を抑制するようにしても音色が変更する効果はあるものの、音量を急激に抑制可能なものではなかった。
【0005】
本発明は、かかる従来の課題を解決するためになされたもので、胴本体の開放面に張設したドラムヘッドでなる打楽器における効果的なミュート機能を簡易な構成で実現可能な打楽器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、胴本体の開放面にドラムヘッドを張設した打楽器において、
空気の供給・排出により伸縮する蛇腹状の蛇腹部材と、この蛇腹部材の上端面に設けられ、弾性力を有する複数の突起が形成された制御部材と、を備え、
前記蛇腹部材が空気の供給によって伸長することによって、前記制御部材の複数の突起部の夫々が前記ドラムヘッドの裏面全体を押すように構成したことを特徴とするようにした。
【0007】
この発明によれば、空気の供給・排出により伸長(膨張、伸縮)する蛇腹部材が空気の供給によって伸長することによって、弾性力を有する複数の突起が形成された制御部材の複数の突起部の夫々がドラムヘッドの裏面全体を押すので、ドラムヘッド全体が万遍なく押圧されミュート機能が効果的となる。
【0008】
本発明の他の態様は、胴本体の開放面にドラムヘッドを張設した打楽器において、
前記ドラムヘッドを前記胴本体の開口面に張設するに際して、リムがドラムヘッドの周縁部材を押し付けることにより、ドラムヘッドを胴本体に張設可能な構成とし、更に、
前記張設力を第1のレベルと第2のレベルとの間で調節可能であり、且つ、前記張設力を前記第1のレベルと前記第2のレベルとの間で双方向において除々に変更可能とする張設力調整機構を備えたことを特徴とする打楽器を提供する。
【0009】
この発明によれば、張設力調整機構が、ドラムヘッドの張設力を第1のレベルと第2のレベル間で調節可能であると共に、張設レベルを、第1のレベルと第2のレベルとの間で双方向において除々に変更可能とすることができる。この結果、両レベル間での切換え操作が極めて簡単となり両レベル間において除々に張設力レベルを変化させることができ、ミュート機能も効果的に実現できる。より具体的には、胴本体外周面には、その縦方向において適宜の間隔でラグが設けられ、 前記張設力調整機構は、前記リムと連接された、長穴が形成された段差付ガイドを介して、ボルトを前記ラグに締結して前記ドラムヘッドを張設する構成とされ、
前記段差付ガイドの厚み部分が、前記長穴の長手方向に沿って、第1の厚さ部とこれより薄い第2の厚さ部とその両厚さ部間で除々に厚さが変化する厚み傾斜部とで構成されたものが考えられ、これは構造が簡素であるので好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、胴本体の開放面に張設したドラムヘッドでなる打楽器における効果的なミュート機能を実現可能な簡易な構成の打楽器を提供することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0012】
(全体構成)
図1は本発明の実施形態である打楽器1の外観の模式的正面図である。また、図2は打楽器1の平面図である。図1、図2に示すように、外観視筒状体の胴本体20(「シェル」とも称する)の上面である開放面にはドラムヘッド10が胴本体1に張設されている。また、胴本体1の外周面には、その縦方向において適宜の間隔を設けてラグ30が配置されている。本例では4個のラグしか設けていないがラグ30の数は4個に限られない。また、後に説明するように、テンションボルト100の支持部を連接したいるリム40が、ドラムヘッド10の外縁部を押さえ付けるようにして、テンションボルト100がラグ30にねじ込まれて締結され所定の張設力でドラムヘッド10が張設されている。
【0013】
(構成1)
図3は本発明の実施形態の打楽器1の第1の構成の模式的説明図である。図3は胴本体1の内部を模式的に説明したものである。正面視ドラムヘッド10よりやや径が大きく肉厚の基準部材55の上面は基準面50となっている。基準部材55の基準面50の上には外観視、蛇腹形状で空気の供給・排出によって縦方向に伸縮可能な蛇腹部70が設けられ、更に、この蛇腹70の上側端部には、弾性力を有する複数の突起(例えばゴム性部材)が形成された制御部80が構成されている。この制御部80の複数の突起は全体でドラムヘッド10の裏面全体を満遍なく押すように構成されている。つまり、ドラムヘッド10の裏面全体を満遍なく押すことができるように突起数、突起間隔等が調整されている。そして、基準部材55には、空気を蛇腹部70に供給するための空気流入管60と蛇腹部70の空気を排出するための空気排出管65とが貫通している。
【0014】
(作用1)
今、図3(a)の状態において、空気排出管65からの排出を停止させた状態(不図示の栓等を装着して排出を停止させる)で、空気流入管60に空気を供給していくと、図3(b)に示すように、ドラムヘッド10と基準面50との間隔を一定としながら蛇腹部70が伸長する。その結果、制御部80の複数の突起がドラムヘッド10の裏面全体を押圧する。なお、元に戻す場合には、空気排出管65から空気を抜く。
【0015】
このように、空気の供給・排出により膨張、伸縮する蛇腹部80が空気の供給によって伸長することによって、弾性力を有する複数の突起部の夫々がドラムヘッド10の裏面全体を押圧するので、ドラムヘッド10裏面全体が万遍なく押圧されてミュート機能が効果的となる。つまり、打音の音色を変更させるよりも打音の音量を効果的に低減することが可能になる。
【0016】
(構成2)
次に、図4乃至図6を参照して第2の構成とその作用を説明する。なお、理解の容易化のため、最初に図7を参照して従来の打楽器を説明する。リム40には、テンションボルト100の支持部が連接されており、一方、胴本体20側にはこのテンションボルト100の先端部に形成されたねじを締結するためのラグ30が設けられている。ドラムヘッド10の外周縁にはヘッド周縁部材12が形成されており、これをリム40が上方から押し付け、ドラムヘッド10を胴本体20に張設すべく、テンションボルト100をラグ30にねじ込む。かくして、ドラムヘッド10は胴本体20の上面開放部に張設されることとなる。しかし、この構成では、ボルト締め量を初期位置まで戻したり、最大ボルト締め量がどの程度であるかはわからず張力調整に手数がかかるうえ、音色をあまり変えずに打音音量を急激に変更する張力調整を行えず、ミュート機能が効果的で、且つ、操作性の良いミュート機能を実現できなかった。
【0017】
これに対して、図4(図4(b)上図は図4(a)の左側面の模式図である)及び図5に示すように、本発明の実施形態の打楽器1は、リム40に、スライド用長穴107が形成された段差付ガイド110を設け、この段差付ガイド110に沿ってテンションボルト100の位置を調整可能になっている。なお、図4(b)においてこの長穴の方向は紙面垂直方向である。また、図4(a)に示すように、段差付ガイド110は、その厚みが最も厚い部分(第1の部分)と、その厚みが最も薄い部分(第2の部分)と、この両者の部分の間にあってその厚みを第1の部分と第2の部分との間で除々に変化させた中間の部分とから構成されている。図4(a)の下図及び図5において、「厚」と記載したのは上記第1の部分、「薄」と記載したのは上記第2の部分、それ以外の「傾(斜)」と記載したのは上記の中間部分に対応する。
【0018】
図5に示すように、リム40に連接された部分に形成されたスライド用長穴107は、図面左右方向にテンションボルト100を移動させるためのものであり、このスライド用長穴107は、図面横長の段差付ガイド107の内面に設けれられている。そのため、テンションボルト100の頭部側の径は、スライド用長穴107よりも大きく設定されていてテンションボルト100がスライド用長穴107を付き抜けていかないようにされている。また、図4のようにワッシャ105を噛ませるようにすれば、ボルト頭部の大きさに関わらず締め付けを強固に行うことができる。
【0019】
さらに、図4(b)に示すように、ラグ30内には、テンションボルト100の先端部を締結させるための雌ねじ穴板111が内蔵されていて、この雌ねじ穴板111自体も、ボルト移動方向(図4(b)紙面垂直方向)に移動可能に構成されている。これを実現するためには、例えば、ラグ30に雌ねじ穴板111のスライドを可能とするために、紙面垂直方向に当該板111の厚みに見合ったスライド溝を設けた構成にしておけば良い。
【0020】
(作用2) 次に図6を参照して作用を説明する。なお、図6は作用を説明する模式的説明図であり、リム40、ドラムヘッド10、段差付ガイド110の上下の位置関係は図5とは正確には対応しない。また、長穴等は、図面左右方向に延在するように直線的に表現しているが厳密には胴本体20の成す外円周の円弧状に存在する。さて、テンションボルト100を図面最も左側に配置させると、段差付ガイド110の鉛直方向の厚みが最も薄い薄板部に位置する。この状態でテンションボルト100をラグ30内の雌ねじ穴板111のねじ部に締め付けると、ドラムヘッド10の張力が最も小さくなる(図6(a)参照)。一方、テンションボルト100を図面最も右側に配置させると、段差付ガイド110の鉛直方向の厚みが最も厚い厚板部に位置する。この状態でテンションボルト100をラグ30内の雌ねじ穴板111のねじ部に締め付けると、ドラムヘッド10の張力が最も大きくなる(図6(b)参照)。なお、図6(a)、図6(b)の下図は夫々の上図に対する底面図(図面下側から見た図)となっている。また、図6(a)および図6(b)の下図においては、理解容易のため、雌ねじ穴板111の替わりに平面状ナット130を締め付けた例を図示している。
【0021】
この厚板部と薄板部の厚みのそれぞれを、所望の音量低減できるように設定しておけば、所望の音量の切換えを簡単な操作で行えることが可能である。例えば、薄板部を通常スタジオ等で打音時に利用する場合の張設力に対応し、一方、厚板部を室内等でミュートを起動する場合の張設力に対応させるようにすれば、両者間での張設力切換えは極めて簡単に行える。従来のようにねじ締めの具合により一々調整することを不要とする。さらに、傾斜部を利用して張設力の微調整を簡単に行うことができる。
【0022】
以上は、リム40に段差付ガイド110を設けて構成を例にとり説明してきたが、ラグ30内部の方に段差付ガイド110を内蔵させてリム40により、ドラムヘッド10を張設する構成としても良く、この場合にはラグ30にはボルト締めを行うための適宜の開口部が形成されて構成とする。更に、以上の構成は最適な構成例に過ぎず、リム40の押し付けによりドラムヘッド10の張設力をワンタタッチで切換え可能で、且つ、最大および最小張設力間での微量の張設力調整が可能な構成であればこれに限られない。
【産業上の利用可能性】
【0023】
以上説明してきたように、本発明は、ミュート機能を備えた胴本体の開放面にドラムヘッドを張設した打楽器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】打楽器1の外観を示す模式的な説明図である。
【図2】本発明の実施形態である打楽器1の平面図である。
【図3】空気を利用したミュート機構の模式的な説明図である。
【図4】段差付ガイド110を用いた機構の構成の説明図である。
【図5】段差付ガイド110を用いた機構の構成の説明図である。
【図6】作用の模式的な説明図である。
【図7】従来の打楽器のミュート機構の構成の説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 打楽器
20 胴本体
30 ラグ
40 リム
55 基準部材
60 空気流入管
65 空気排出管
70 蛇腹部
80 制御部
100 テンションボルト
105 ワッシャ−
107 スライド用長穴
110 段差付ガイド
111 雌ねじ穴板
130 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴本体の開放面にドラムヘッドを張設した打楽器において、
空気の供給・排出により伸縮する蛇腹状の蛇腹部材と、この蛇腹部材の上端面に設けられ、弾性力を有する複数の突起が形成された制御部材と、を備え、
前記蛇腹部材が空気の供給によって伸長することによって、前記制御部材の複数の突起部の夫々が前記ドラムヘッドの裏面全体を押すように構成したことを特徴とする打楽器。
【請求項2】
胴本体の開放面にドラムヘッドを張設した打楽器において、
前記ドラムヘッドを前記胴本体の開口面に張設するに際して、リムがドラムヘッドの周縁部材を押し付けることにより、ドラムヘッドを胴本体に張設可能な構成とし、更に、
前記張設力を第1のレベルと第2のレベルとの間で調節可能であり、且つ、前記張設力を前記第1のレベルと前記第2のレベルとの間で双方向において除々に変更可能とする張設力調整機構を備えたことを特徴とする打楽器。
【請求項3】
請求項2に記載の打楽器において、
前記胴本体外周面には、その縦方向において適宜の間隔でラグが設けられ、
前記張設力調整機構は、
前記リムと連接された、長穴が形成された段差付ガイドを介して、ボルトを前記ラグに締結して前記ドラムヘッドを張設する構成とされ、
前記段差付ガイドの厚み部分が、前記長穴の長手方向に沿って、第1の厚さ部とこれより薄い第2の厚さ部とその両厚さ部間で除々に厚さが変化する厚み傾斜部とで構成されたことを特徴とする打楽器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−47780(P2009−47780A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−211854(P2007−211854)
【出願日】平成19年8月15日(2007.8.15)
【出願人】(000130329)株式会社コルグ (111)