説明

扱胴

【課題】 扱胴をドラム型と籠型とに簡単に仕様変更して利用できるようにする。
【解決手段】 脱穀装置の対向する一方の側板と他方の側板とに亘って回転自在に軸支される回転基材35に、外周に扱歯42を備えた周方向に分割可能な扱胴ドラム41と、扱歯45を備えた扱胴回転軸心方向に長い棒状部材43の複数本とを付け替え可能に構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、普通型(全稈投入型)のコンバインの脱穀装置に装備される扱胴の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記扱胴としては、円筒状に形成された扱胴ドラムの外周に多数の扱歯を取り付けたドラム型のもの(特許文献1参照)や、扱歯を備えた棒状部材を扱胴軸心方向に向けて周方向に配列した籠型のもの(特許文献2参照)が用いられている。
【特許文献1】特開2006−14708号公報
【特許文献2】特開平2−222615号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記したドラム型の扱胴は稲や麦などの作物の脱穀に好適であり、籠型の扱胴は豆類の脱穀やヒマワリの種子の脱穀のように、脱粒に揉み処理を必要とするような作物の脱穀に適している。従って、両種の作物を栽培しているユーザーは2種類のコンバインを準備して使い分けたり、あるいは、2種類の扱胴を全体的に取り替えて使用する必要があり、前者では経済的な負担が大きくなるものであり、後者では扱胴全体の取り替えに大掛かりな分解整備作業が必要で、多大な手間と時間がかかるものとなる。
【0004】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、扱胴をドラム型と籠型とに簡単に仕様変更して利用できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、脱穀装置の対向する一方の側板と他方の側板とに亘って回転自在に軸支される回転基材に、外周に扱歯を備えた周方向に分割可能な扱胴ドラムと、扱歯を備えた扱胴回転軸心方向に長い棒状部材の複数本とを付け替え可能に構成してあることを特徴とする。
【0006】
上記構成によると、脱穀装置に軸支したままの回転基材に、周方向に分割可能な扱胴ドラムを取り付けることでドラム型の扱胴を構成することができる。脱穀装置に軸支したままの回転基材に、扱歯付きの棒状部材を取り付けることで籠型の扱胴を構成することができ、収穫する作物に応じて仕様の扱胴を変更することができる。
外周構造部を構成する扱胴ドラムや扱歯付きの棒状部材は、組立て完成した扱胴に比べて周方向に小型の部材で、かつ、重ねて保管することができ、使われない外周構造部をスペース少なく管理しておくことができる。
【0007】
従って、第1の発明によると、扱胴全体を取り替えるような大掛かりな分解作業をしなくても、回転基材を軸支したままで比較的簡単に扱胴をドラム型と籠型とに仕様変更して利用することができ、一機種で二種の仕様での脱穀作業を行うことができて、ユーザーの経済的負担を軽減するのに有効となる。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記回転基材の端部に、投入されてきた作物を導入するオーガ部を備えてあるものである。
【0009】
上記構成によると、ドラム型あるいは籠型のいずれにおいても、共通のオーガ部を用いて作物を円滑確実に導入することができ、入口部での詰まりのない良好な脱穀処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1に、本発明に係る普通型のコンバインの全体側面が、また、図2に、その全体平面がそれぞれ示されている。このコンバインは、左右一対のクローラ走行装置1を備えた走行機体2に、脱穀装置3と穀粒回収部4が左右に並列して配備されるとともに、穀粒回収部4の前方にキャビン仕様の運転部5が配備され、更に、脱穀装置3の前部には支点X周りに上下揺動自在に刈取り作物搬送用のフィーダ6が連結され、このフィーダ6の前端に刈取り部7が連結されている。
【0011】
前記刈取り部7は、左右の分草フレーム11に亘ってバリカン型の刈取り装置12、および、刈り取った作物を刈り幅の左寄り箇所に向けて横送りするオーガ13が架設された構造となっている。フィーダ6にはチェーン式の掻揚げコンベア14が内装されており、オーガ13で横送りされて掻込みフィンガー15で後方に掻き込まれた作物が、フィーダ6の底面に沿って掻き揚げ搬送されて脱穀装置3の前端に投入供給されるようになっている。
【0012】
走行機体2とフィーダ6の下部との間に油圧シリンダ16が架設され、この油圧シリンダ16の伸縮作動によって刈取り部7がフィーダ6と一体に揺動昇降されるようになっている。刈取り部7の前部上方には、植立した穀稈を後方に掻き込んで引き上げる掻込みリール17が装備されている。
【0013】
前記掻込みリール17は、支点a周りに上下揺動自在な左右一対の支持アーム18の前部に支架されており、油圧シリンダ19によって支持アーム18を上下揺動することで掻込みリール17の掻込み作用高さを変更することができるとともに、掻込みリール17を支持アーム18に沿ってスライド調節して掻込み作用位置を前後に調節することが可能となっている。
【0014】
掻込みリール17は、正六角形状の左右のリールフレーム20、左右のリールフレーム20の頂部6箇所に回動自在に水平支架された6本のタイン取付け軸21、各タイン取付け軸21に一定ピッチで並列装備された樹脂製のタイン22、リールフレーム20に対して後方に偏心して回動自在に支持された正六角形状の補助リールフレーム23、等で構成されている。リールフレーム20と補助リールフレーム23が同調して掻込み方向に回転駆動されることで、補助リールフレーム23にリンク連係された各タイン取付け軸21が掻込み方向と逆方向に同調回転され、各タイン取付け軸21のタイン22が常に下向きの掻き込み姿勢を維持して掻き込み方向の公転移動するよう構成されている。
【0015】
このコンバインは機体左側を未刈り側とする回り刈りを標準の刈取り形態としており、標準の刈取り形態で背丈の高い作物を収穫する場合には、図1に示すように、刈取り作物と未刈り作物とを分離する左側の分草フレーム11の前端に備えられた分草具25に、棒材をL形に屈曲してなる補助分草具26を連結するとともに、補助分草具26の上部に枢支連結した分草棒27を後方に延出して掻込みリール17の軸支部に乗せ掛け係止するとよい。このように構成することで、刈取り部7の前方の刈り取り作物を掻込みリール17の作用域に導くとともに、左側の未刈り作物を掻込みリール17の作用域の左外側に押し退け、未刈り作物の不当な脱粒や引き抜きを防止して良好な収穫を行うことができる。
【0016】
図4,図5に示すように、周方向6本のタイン取付け軸21のうち、1本置きのタイン取付け軸21の左端近くに、金属丸棒材からなる補助タイン28が取り付けられている。機体左側を未刈り側とする標準の刈取り形態を行う際に、未刈り作物と絡まった刈り取り作物の掻き込みを剛性の高い補助タイン28で強力に行い、樹脂製のタイン22が掻き込み負荷で変形したり、損傷するようなことなく良好な掻き込みを行うことができるようになっている。
【0017】
図3に示すように、前記脱穀装置3の上部には、扱胴29を前後に軸支収容した扱室30が備えられるとともに、脱穀装置3の下部には、脱穀処理物を揺動風選処理する選別部31が配備されている。詳細な構造の説明は省略するが、扱室30において作物から分離された処理物は選別部31で揺動篩い選別および風選処理を受け、精選された穀粒は穀粒回収部4に搬出されて回収されるとともに、2番物は選別部31の前部に還元されて再選別され、脱穀処理後の作物稈は扱室終端の送塵口32から送出されて、回転チョッパ8で細断されるようになっている。
【0018】
本発明は、上記扱胴29の構造に特徴を備えているものであり、その詳細な構造を以下に説明する。
図7に示すように、前記扱胴29は、扱室30における前後に対向する側板33,34に亘って軸支された回転基材35と、この回転基材35の周部に取り付けられる外周構造部36とで構成されており、外周構造部36を取り替えることで、図8〜図10に示すドラム型の扱胴29と、図11〜図14に示す籠型の扱胴29を構成することができるようになっている。
【0019】
前記回転基材35は、前後の側板33,34に亘って貫通支架される扱胴支軸37、その長手方向三箇所に固着された円盤状のフランジ部材38、扱胴支軸37の前部に連結固定されたオーガ部39とで構成されており、オーガ部39は先細りテーパ状のオーガドラム39aの外周に2条の螺旋羽根39bを取り付けて構成されている。
【0020】
図7中に示すように、ドラム型の扱胴29を構成する場合の外周構造部36は、回転基材35のフランジ部材38にボルト連結される円盤状のステー40と、このステー40の外周にボルト連結される扱胴ドラム41とで構成され、扱胴ドラム41の外周には線材を山形に屈曲してなる多数の扱歯42が所定の配列で植設されている。
【0021】
前記ステー40は半割り状に2分割されて、前後の側板33,34に支架された状態の回転基材35のフランジ部材38に脱着できるようボルト連結されるとともに、扱胴ドラム41も周方向に2分割されて、フランジ部材38に取り付けられた円盤状のステー40の外周に脱着できるようボルト連結されている。
【0022】
図7中に示すように、籠型の扱胴29を構成する場合の外周構造部36は、回転基材35におけるフランジ部材38の周方向複数箇所に脱着可能にボルト連結される扱歯付きの棒状部材43で構成されている。この棒状部材43は丸パイプ材からなり、その前後両端と中間箇所の3箇所に、フランジ部材38への連結部44が突設されるとともに、連結部44の突出方向と逆方向に向けて丸棒材からなる扱歯45が扱胴軸心方向に所定ピッチで突設されている。
【0023】
本発明の扱胴構造は以上のように構成されており、前後の側板33,34に支架されたままの回転基材35に対して2種類の外周構造部36を付け替えることで、扱胴29の全体を取り替えるような大掛かりな操作を要することなく、ドラム型の扱胴29と、籠型の扱胴29を使い分けることができる。
【0024】
〔他の実施例〕
(1)図15に示すように、扱胴ドラム41の後端部に小径部41aを連設して、終端部が小径となったドラム型の扱胴29を構成することもできる。これによると、扱室30の終端での作物の移動空間が大きくなり、脱穀処理後の作物の流出が円滑となり、送塵口32での詰まり発生を防止することができる。
【0025】
(2)本発明の扱胴構造は、刈取り作物をフィードチェーンで挟持搬送しながら脱穀処理する自脱型の脱穀装置に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】コンバインの全体平面図
【図3】ドラム形の扱胴を装備した脱穀装置の縦断側面図
【図4】掻き込みリールの一部を示す側面図
【図5】掻き込みリールの左端側の一部を示す正面図
【図6】掻き込みリールの側面図
【図7】扱胴構成部材を分解した斜視図
【図8】ドラム形の扱胴の前半部を示す縦断側面図
【図9】ドラム形の扱胴の後半部を示す縦断側面図
【図10】ドラム形の扱胴の縦断正面図
【図11】籠形の扱胴を装備した脱穀装置の縦断側面図
【図12】籠形の扱胴の前半部を示す縦断側面図
【図13】籠形の扱胴の後半部を示す縦断側面図
【図14】籠形の扱胴の縦断正面図
【図15】別実施例のドラム形の扱胴を装備した脱穀装置の縦断側面図
【符号の説明】
【0027】
3 脱穀装置
33 側板
34 側板
35 回転基材
36 外周構造部
39 オーガ部
41 扱胴ドラム
42 扱歯
43 棒状部材
45 扱歯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀装置の対向する一方の側板と他方の側板とに亘って回転自在に軸支される回転基材に、外周に扱歯を備えた周方向に分割可能な扱胴ドラムと、扱歯を備えた扱胴回転軸心方向に長い棒状部材の複数本とを付け替え可能に構成してあることを特徴とする扱胴。
【請求項2】
前記回転基材の端部に、投入されてきた作物を導入するオーガ部を備えてある請求項1記載の扱胴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−207360(P2009−207360A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50459(P2008−50459)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】