説明

抄紙搬送フェルトおよび該抄紙搬送フェルトを備えた抄紙機のプレス装置

【課題】 汚れが落ち易く且つ湿紙の受け渡し時における良好な紙離れ機能を備え、更に湿紙表面の平滑化機能に優れた抄紙搬送フェルトおよび該抄紙搬送フェルトを備えた抄紙機のプレス装置を提供すること。
【解決手段】 抄紙搬送フェルト100は、基層11と、基層11の湿紙W側の表面に形成された第1バット層13Aと、基層11のロール側またはシュー側の表面に形成された第2バット層13Bと、細繊維に分割された複数の分割繊維15Aおよび当該細繊維の間に含浸された高分子弾性材25を含み且つ、細繊維および高分子弾性材25が湿紙Wと直接接触するように第1バット層13Aの湿紙W側の表面に形成された湿紙接触繊維層15と、第1バット層13Aと湿紙接触繊維層15との間に配置された親水性不織布層23と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙搬送フェルトおよび該抄紙搬送フェルトを備えた抄紙機のプレス装置に関し、特に好ましくは、シュープレスを備えたプレス機構に使用される抄紙搬送フェルトおよび該抄紙搬送フェルトを備えたシュープレス型抄紙機のプレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に抄紙機は、ワイヤーパートと、プレスパートと、ドライヤーパートと、を備える。これらワイヤーパート、プレスパート、およびドライヤーパートは、この並び順で湿紙の搬送方向に沿って配置される。湿紙は、ワイヤーパート、プレスパート、およびドライヤーパートそれぞれに配設された抄紙搬送用具に次々と受け渡されながら搬送されるとともに水分を搾り出され(即ち、搾水され)、最終的にはドライヤーパートで乾燥させられる。プレスパートに配置されたプレス装置は、湿紙の搬送方向に沿って直列に並設された複数のプレス機構を具備する。各プレス機構は、一対の無端ベルト状の抄紙搬送フェルトと、当該抄紙搬送フェルトそれぞれの一部を間に挟むように上下に対向配置されるプレスとして一対のロール(即ち、ロールプレス)或いはロールおよびシュー(即ち、シュープレス)と、を有しており、略同一速度で同一方向に走行する抄紙搬送フェルトにより搬送されてくる湿紙を該抄紙搬送フェルトと共にロールとロール或いはロールとシューとで加圧することにより、該湿紙から水分を搾水しながら抄紙搬送フェルトにその水分を吸収させる。尚、このような抄紙機には、湿紙を挟持した抄紙搬送フェルトの一部をロールとロールとで挟みながら加圧するプレス装置がプレスパートに設けられたロールプレス型抄紙機、湿紙を挟持した抄紙搬送フェルトの一部をロールとシューとで挟みながら加圧するプレス装置がプレスパートに設けられたシュープレス型抄紙機、等がある。
【0003】
特にシュープレス型抄紙機によれば、より一般的なロールプレス型抄紙機と比べて、加圧部(即ち、ロールとシューとにより形成されるニップ)のプレスゾーンを広く取れ、それにより加圧時間を長くできるので、より搾水性に優れる。しかし、ロールとシューとの間の加圧部の中央から出口にかけての部分では、湿紙と抄紙搬送フェルトに掛けられた圧力が急激に解放されるため、この部分において抄紙搬送フェルトおよび湿紙の体積が急激に膨張する。その結果、抄紙搬送フェルトおよび湿紙に負圧が生じ、更には、湿紙が細繊維からなるために毛細管現象も加わって、抄紙搬送フェルトに吸収されていた水分が再び湿紙へ移行する所謂再湿現象(re-wetting)が生じる。このように、ロールとシューとの間の加圧部の中央から出口にかけての部分が、抄紙機のプレス装置の搾水性能を低下させる大きな要因となっている。
【0004】
ところで、ワイヤーパートとプレスパートとの間、プレス装置の第1プレス領域と第2プレス領域などのプレス機構間、そしてプレスパートとドライヤーパートとの間では、湿紙を次工程の抄紙搬送用具(例えば、ドライヤーカンバス)に受け渡す必要がある。よって、特にプレス装置における抄紙搬送フェルトには、湿紙搾水機能および湿紙搬送機能だけでなく、次工程へ湿紙を渡す際に湿紙を抄紙搬送フェルトからスムーズに離脱させる(即ち、抄紙搬送フェルトからの湿紙の剥がれを容易にする)紙離れ機能が要求される。その上、プレスパートにおいて湿紙の搬送方向の下流側に配置されるプレス機構の抄紙搬送フェルトには、特に湿紙表面を平滑化させる平滑化機能が更に求められる。
【0005】
抄紙搬送フェルトの再湿現象およびプレスの際のブローイング等を防止するようにした抄紙搬送フェルトとしては、エマルジョン樹脂を含浸し且つ湿紙側部分に工夫を凝らしたものが知られている(特許文献1参照)。当該抄紙搬送フェルトは、より詳細には、基層の表面に形成されたバット層にエマルジョン樹脂が含浸されるとともに当該バット層の湿紙側の表面が緻密で且つセーム革状の滑らかな表面となるようにカレンダー加工されることによりバリヤー層が形成されるか或いは、基層の表面に形成された粗繊維層にエマルジョン樹脂が含浸されるとともに当該粗繊維層上にバリヤー層(不織布層)が設けられ且つ更に当該バリヤー層(不織布層)上に細繊維層が形成され、当該バリヤー層によりエマルジョン樹脂が抄紙搬送フェルトの湿紙側の表面にまで浸透することが阻止されたものであるので、抄紙搬送フェルトの再湿及びブローイングが防止され、それにより抄紙速度を上げることを可能にする。
【0006】
湿紙の受け渡し時の紙離れ機能の改善を図った抄紙搬送フェルトとしては、湿紙を載置して搬送する湿紙載置面の一部に疎水性素材を配置したものが知られている(特許文献2参照)。この抄紙搬送フェルトは、より詳細には、湿紙載置面を有する高分子弾性部材と、該高分子弾性部材内に配置される表層形成体のいずれか一方の素材を疎水性として、湿紙載置面に水を遠ざける部分と水を凝縮する部分とを分散状に設け、湿紙載置面と湿紙との間にできる水膜を破壊して紙離れ機能の改善を図ったものである。
【0007】
また、抄紙搬送フェルトの湿紙側表面から繊維体を突出させて湿紙側表面と湿紙との間にできる水膜を破壊し、紙離れ機能の改善を図ったものも知られている(特許文献3参照)。この抄紙搬送フェルトは、より詳細には、基体、機械側層、およびウレタン樹脂等の高分子弾性部を有する湿紙側層からなり、高分子弾性部の表面を研磨等の加工を行なうことにより、高分子弾性部に混入された繊維体の一部を湿紙側表面から突出させるようにしたものである。
【特許文献1】米国特許第4500588号明細書
【特許文献2】特開2001−89990号公報
【特許文献3】特開2004−124274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
抄紙機のプレス装置では、加圧部(即ち、ニップ)の所で抄紙搬送フェルトに非常に大きな圧力をかけて搾水するため、抄紙搬送フェルトに汚れ(具体的には湿紙に含まれる添加剤や糊等の成分)が付着し易い。よって、抄紙機のプレス装置では、抄紙搬送フェルトの寿命(即ち、抄紙搬送フェルトの使用可能期間)が短いので、こまめに抄紙搬送フェルトを新品に交換するメンテナンスを要求される。尚、このような抄紙搬送フェルトの交換の頻度がロールプレス型抄紙機のプレス装置よりもシュープレス型抄紙機のプレス装置の方が多いことは言うまでもない。
【0009】
その上、抄紙機のプレス装置では、加圧部(即ち、ニップ)の所での非常に大きな圧力や摩擦によって、抄紙搬送フェルトの湿紙に直接接触するバット層の表面の繊維の抜け落ちや切れ落ち(即ち、所謂脱毛)が著しく生じる。当該抜け落ちた繊維や切れ落ちた繊維の多くは、水シャワーおよびサクションボックス等からなる清掃手段によりプレス装置外へ排出されるが、多少それらの一部が湿紙の表面に付着する場合がある。当該抜け落ちた繊維や切れ落ちた繊維は湿紙の繊維よりも太くて硬いため、そのような繊維が表面に付着しつつも製造された紙(即ち、製紙)は、印刷適性に劣る場合がある(より具体的には、印刷した際に色抜け等が生じる場合がある)。このように、抄紙搬送フェルトの湿紙に直接接触するバット層表面の繊維の脱毛は、印刷物等の紙製品の品質を悪くする。一方、バット層の表面は、繊維の脱毛により表面が粗くなるため、湿紙の表面平滑度を著しく低くする要因となっている。
【0010】
しかし、抄紙搬送フェルトの湿紙に直接接触するバット層の表面を形成する繊維を単に細繊維に置き換えることは困難である。具体的な理由としては、抄紙搬送フェルトの製造工程の一つであるニードリング工程(ニードリング工程における前段階にカーディングがあり、このカーディング後の繊維ウエッブシートをニードリングにて植設する。)における前段階で細繊維をカーディングすると繊維塊(即ち、繊維の塊)ができ易く、当該繊維塊は、カーディング直後のニードリングでフェルトに植設されてしまい、抄紙搬送フェルトの表面に比較的大きな凹凸を形成するので、湿紙の表面平滑度が低下するからである。
【0011】
特許文献1で開示されている湿紙側表面がカレンダー加工された抄紙搬送フェルトは、表面平滑性の良い、不透水性の(即ち、湿紙側表面からプレス側表面へ水を通さない)、抄紙搬送フェルトであるが、湿紙搾水性能および紙離れ性能に劣るため、抄紙搬送フェルトに湿紙搾水機能および高い紙離れ機能を求める抄紙機のプレス装置には不向きである。このような抄紙搬送フェルトでは、滑らかな湿紙側表面と湿紙との間に薄い水膜が形成され易く、該水膜があたかも接着剤のように作用して湿紙が湿紙側表面に貼り付く可能性が高い。また、特許文献1で開示されている基層側の粗繊維層と繊維塊を含み得る湿紙側の細繊維層とに不織布層が介在する抄紙搬送フェルトも、抄紙搬送フェルトに湿紙搾水機能および高い平滑化機能を求める抄紙機のプレス装置には不向きである。
【0012】
また、特許文献2および特許文献3で開示されている抄紙搬送フェルトは、紙離れ機能の改善がある程度図られてはいるものの、いずれも通常繊維からなるバット層の全体が高分子弾性部材を含んで構成されるため、プレス時における抄紙搬送フェルトの圧縮および回復性能が低く、しかも不透水性である(即ち、湿紙側表面からプレス側表面へ水を通さない)ため、湿紙の搾水性が期待できない。また高分子弾性部材から湿紙側に突出する繊維の太さも比較的太いため抄紙用プレスフェルトの湿紙側表面の凹凸も大きなものとなる。
【0013】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、汚れが落ち易く且つ湿紙の受け渡し時における良好な紙離れ機能を備え、更に湿紙表面の平滑化機能に優れた抄紙搬送フェルトおよび該抄紙搬送フェルトを備えた抄紙機のプレス装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した目的を達成するため、本発明に係る抄紙搬送フェルトおよび該抄紙搬送フェルトを備えた抄紙機のプレス装置は、下記(1)〜(12)を特徴としている。
(1) 抄紙機のプレスパートに設けられたプレス装置に配置され、当該プレス装置におけるプレスと共に一つのプレス機構を形成し、湿紙を挟持しながら前記プレスにより加圧され、それにより前記湿紙から搾り出された水分を吸収する一対の抄紙搬送フェルトのうち少なくとも一方の抄紙搬送フェルトであって、
基層と、
前記基層の湿紙側の表面に形成された第1バット層と、
前記基層のプレス側の表面に形成された第2バット層と、
細繊維に分割された複数の分割繊維および前記細繊維の間に含浸された高分子弾性材を含み且つ、前記細繊維および前記高分子弾性材が前記湿紙と直接接触するように前記第1バット層の湿紙側の表面に形成された湿紙接触繊維層と、
前記第1バット層と前記湿紙接触繊維層との間に配置された親水性不織布層と、
を備え、
前記湿紙接触繊維層の前記湿紙と直接接触する表面では前記高分子弾性材によって前記細繊維が部分的に被覆されていること。
(2) 上記(1)の構成の抄紙搬送フェルトの前記湿紙接触繊維層が、1重量%〜10重量%の前記高分子弾性材を含むこと。
(3) 上記(1)または(2)の構成の抄紙搬送フェルトの前記湿紙接触繊維層を形成する繊維が、前記分割繊維15重量%〜100重量%、残部非分割繊維からなること。
(4) 上記(1)〜(3)のいずれかの構成の抄紙搬送フェルトにおける前記分割繊維各々の分割前の繊度が、3.3デシテックス以下であること。
(5) 上記(4)の構成の抄紙搬送フェルトにおける前記分割繊維各々の分割前の繊度が、1.9デシテックスであること。
(6) 上記(1)〜(5)のいずれかの構成の抄紙搬送フェルトを備えた抄紙機のプレス装置であること。
(7) 上記(1)〜(3)のいずれかに記載した構成の抄紙搬送フェルトを有する前記プレス機構を複数備えた抄紙機のプレス装置であって、当該複数のプレス機構が、それらの前記抄紙搬送フェルトにより搬送される湿紙の搬送方向に沿って直列に並設されていること。
(8) 上記(7)の構成の抄紙機のプレス装置における前記分割繊維各々の分割前の繊度が、3.3デシテックス以下であること。
(9) 上記(8)の構成の抄紙機のプレス装置における前記分割繊維各々の分割前の繊度が、1.9デシテックスであること。
(10) 上記(6)〜(9)のいずれかの構成の抄紙機のプレス装置がクローズドドロータイプのプレス装置であること。
(11) 上記(6)〜(10)のいずれかの構成の抄紙機のプレス装置がシュープレス型抄紙機のプレス装置であり、当該プレス装置の前記プレスが、前記抄紙搬送フェルトを加圧するロールおよびシューを有するシュープレスであること。
(12) 上記(6)〜(10)のいずれかの構成の抄紙機のプレス装置がロールプレス型抄紙機のプレス装置であり、当該プレス装置の前記プレスが、前記抄紙搬送フェルトを加圧する一対のロールを有するロールプレスであること。
【0015】
上記(1)の構成の抄紙搬送フェルトによれば、複数の分割繊維を細繊維に分割した後、それら細繊維の間に高分子弾性材を含浸させることにより形成された湿紙接触繊維層が、湿紙と直接接触するように抄紙搬送フェルトの第1バット層の湿紙側の表面に形成されているので、湿紙接触繊維層の表面平滑度を向上させることができ、これにより平滑な表面を有する高品質の紙を製紙することができる。また、湿紙接触繊維層の表面は、分割繊維の分割により形成された細繊維が部分的に高分子弾性材によって被覆された表面となっており、湿紙接触繊維層の表面には、それら微小の細繊維の突出による多少の凹凸があるので、湿紙接触繊維層と湿紙との間の水膜が破られ易く或いは形成され難く、従って、抄紙搬送フェルトからの紙離れ性がよく、湿紙を次工程の抄紙搬送フェルトに容易に渡すことができる。
また、分割繊維の分割により形成された細繊維は、高分子弾性材によってある程度結合されるとともに部分的に被覆されているので所謂脱毛現象が生じ難く、抄紙搬送フェルトからの脱落が防止される。これにより、本発明に係る抄紙搬送フェルトを用いた抄紙機により製造された紙はその表面が極めて滑らかなものとなり、その上、抄紙搬送フェルトの寿命(即ち、抄紙搬送フェルトの使用可能期間)が長いため、抄紙搬送フェルトを新品に交換するメンテナンスの頻度を少なくすることができる。
また、第1バット層と湿紙接触繊維層との間に親水性不織布層が配置されているので、湿紙接触繊維層の表面側から含浸された高分子弾性材は、親水性不織布層で阻止されて親水性不織布層よりも深い層(即ち、第1バット層、基層、第2バット層)まで含浸されることはなく、湿紙接触繊維層にのみ(例えば、表面から0.5mm程度)高分子弾性材が配置される。
従って、抄紙搬送フェルトは、透水性と適度な圧縮、回復機能(クッション性)を有するので、搾水性を効果的に発揮することができる。また、高分子弾性材を含む湿紙接触繊維層に一時的に付着した汚れ(具体的には湿紙に含まれる添加剤や糊等の成分)は、抄紙搬送フェルトの適度な圧縮、回復機能(クッション性)のため、湿紙接触繊維層の表面から剥がれ易く、湿紙に移行する。即ち、抄紙搬送フェルトは、高い自浄機能を有する。これにより、抄紙搬送フェルトに汚れが残存し難く、また、湿紙に移行する汚れは、元々湿紙に成分として含まれるものであるので、湿紙の品質に何ら影響を与えることもない。また、一旦湿紙から抄紙搬送フェルトに吸い取られた水分の湿紙への再移行(即ち、所謂再湿現象)が親水性不織布層により阻止される。
尚、本発明に係る抄紙搬送フェルトの湿紙接触繊維層は、複数の分割繊維を細繊維に分割した後、それら細繊維の間に高分子弾性材を含浸させたものであり、分割繊維の分割は、抄紙搬送フェルト製造工程の一つであるニードリング工程で為されることが好ましい。ニードリング工程における前段階でカーディングにより分割繊維を細繊維に分割すると繊維塊(即ち、繊維の塊)ができ易く、当該繊維塊は、ニードリングでフェルトに植設されてしまい、抄紙搬送フェルトの表面に比較的大きな凹凸を形成するので、湿紙の表面平滑度が低下する。分割繊維の分割は、例えば、ニードリング工程において細い番手の針を用いたニードリングにて行なってもよく、或いは、ニードリング工程後において起毛機のブラシ(通称薊)で植設された分割繊維を摩擦したり、或いは、ニードリング工程後に抄紙搬送フェルトを精練(湯洗)する等して行なってもよい。即ち、分割繊維の分割は、ニードリング工程における前段階であるカーディングよりも後で、且つ高分子弾性材を含浸する前であれば、どの工程でもよい。そして、分割繊維の細繊維への分割後に当該細繊維の間に高分子弾性材が含浸される。
高分子弾性材の含浸は、複数の分割繊維を細繊維に分割した後、常温で水系ウレタン樹脂、水系アクリル樹脂、水系エポキシ樹脂、水系合成ゴム(即ち、水系エマルジョン樹脂)、等の合成樹脂を、ロールで塗布、或いはスプレーで吹き付けて細繊維の間に含浸させ、更に、加熱して硬化させて行なわれる。
上記(2)の構成の抄紙搬送フェルトによれば、湿紙接触繊維層が、1重量%〜10重量%の高分子弾性材を含むので、繊維間の全ての気孔が高分子弾性材によって充填されることはなく、適度の気孔が保持されている。換言すれば、湿紙接触繊維層が、ポーラスな組織となっており、湿紙接触繊維層と湿紙の間に形成される水膜を分散させ、且つ適度のクッション性も有する。これにより、抄紙搬送フェルトからの紙離れ性がよく、更にプレス機構においてプレスの加圧により伸縮して湿紙から搾り出された水分を吸収し、且つ平滑な表面を有する抄紙搬送フェルトとすることができる。また、高分子弾性材の含浸割合を変更することにより、各プレス機構に最適な特性(紙離れ性、表面平滑性、搾水性、等)を抄紙搬送フェルトに持たせることができる。尚、含浸される高分子弾性材の比率を1重量%以上としたのは、高分子弾性材の比率が1重量%より少ないと高分子弾性材の効果が殆ど期待できないからであり、また、高分子弾性材の比率を10重量%以下としたのは、高分子弾性材の比率が10重量%より多いと抄紙搬送フェルトのクッション性と透水性が失われて湿紙の搾水性が低下するからである。
上記(3)の構成の抄紙搬送フェルトによれば、湿紙接触繊維層を形成する繊維が、分割繊維15重量%〜100重量%、残部非分割繊維からなるので、湿紙接触繊維層が分割繊維からなるものであってもよいし、或いは分割繊維と非分割繊維との混紡比率を適宜変更することによって、抄紙搬送フェルトの特性を変えてもよい。ここで、混紡繊維の重量比率は、「分割繊維の重量/(分割繊維の重量+非分割繊維の重量)×100」で定義される。尚、非分割繊維とは、カーディングする際やニードリングする際においても、またニードリング工程よりも後の抄紙搬送フェルト製造工程においても、分割されない通常の短繊維である。
抄紙搬送フェルトに求められる特性である表面平滑性と搾水性とは逆相関の関係にあり、湿紙表面の平滑化性能を向上させるために抄紙搬送フェルトの密度を高めると搾水性が悪くなる傾向がある。一方、搬送される湿紙の搬送方向上流から下流に向かって配置された複数のプレス機構には、それぞれ微妙に異なる機能が要求され、上流側に配置されたプレス機構の抄紙搬送フェルトには搾水性が重視され、そして下流側に配置されたプレス機構の抄紙搬送フェルトには湿紙表面の平滑化性能が求められる。従って、非分割繊維と分割繊維との混紡比率を適宜変更することにより、それぞれのプレス機構に最適な特性(表面平滑性、搾水性、等)を抄紙搬送フェルトに持たせることが可能となる。
上記(4)の構成の抄紙搬送フェルトによれば、分割繊維各々の分割前の繊度が3.3デシテックス以下であるので、仮に分割繊維の分割前の繊度が3.3デシテックスであったとしても、分割繊維の分割により形成された細繊維の繊度は3.3デシテックスよりも小さくなる。このように、分割することにより湿紙の繊維の繊度に限り無く近い繊度の細繊維となる分割繊維を含む湿紙接触繊維層を形成すれば、表面平滑性に非常に優れた高品質の紙を製造することができる。また、このような細繊維の間に高分子弾性材を含浸させることにより、湿紙接触繊維層の表面を更に平滑、且つ紙離れ性のよい表面とすることができる。例え、所謂脱毛現象により、湿紙接触繊維層から抜け落ちたり切れ落ちた細繊維(即ち、分割繊維の分割により形成された細繊維)が湿紙の表面に多少付着しても当該細繊維は極めて細いので湿紙の品質を低下させることはない。
また、上記(5)の構成の抄紙搬送フェルトによれば、分割繊維各々の分割前の繊度が1.9デシテックスであるので、更に好ましい。尚、非分割繊維については、例えば1.9デシテックス(即ち、分割繊維の分割前の繊度と同じ値)〜6デシテックスの繊度を有するものが望ましい。
上記(6)の構成の抄紙機のプレス装置によれば、上記(1)〜(5)のいずれかの抄紙搬送フェルトを備えるので上述したように優れた作用および効果を奏する。
上記(7)の構成の抄紙機のプレス装置のように、上記(1)〜(3)いずれかの構成の抄紙搬送フェルトを有するプレス機構を複数備えた抄紙機のプレス装置であって、当該複数のプレス機構が、それらの抄紙搬送フェルトにより搬送される湿紙の搬送方向に沿って直列に並設されていれば、特に湿紙から効率良く搾水し、且つ紙離れよく次の抄紙搬送フェルトに渡す上で好適である。即ち、上記(7)の構成の抄紙機のプレス装置によれば、水分を多く含む湿紙から多量の水を効果的に搾り出すことができ、また確実に次の抄紙搬送フェルトに湿紙を渡すことができ、高速での抄紙操業が可能となる。
特に、複数のプレス機構のうち湿紙の搬送方向の下流側に配置されたプレス機構に、比較的多量(1重量%〜10重量%の範囲内で)の高分子弾性材を含む湿紙接触繊維層を備えた抄紙搬送フェルトを配置すれば、高分子弾性材の含浸量の少ない抄紙搬送フェルトと比べて透水性についてはやや低下する場合も考えられるが、湿紙表面の平滑化機能だけでなく高い紙離れ性を有するので、高速で搬送される湿紙を確実に次工程に渡すことができ、高速での抄紙が可能となる。
上記(8)の構成の抄紙機のプレス装置によれば、分割繊維各々の分割前の繊度が3.3デシテックス以下であるので、仮に分割繊維の分割前の繊度が3.3デシテックスであったとしても、分割繊維の分割により形成された細繊維の繊度は3.3デシテックスよりも小さくなる。このように、分割することにより湿紙の繊維の繊度に限り無く近い繊度の細繊維となる分割繊維を含む湿紙接触繊維層を形成すれば、表面平滑性に非常に優れた高品質の紙を製造することができる。
また、上記(9)の構成の抄紙機のプレス装置によれば、分割繊維各々の分割前の繊度が1.9デシテックスであるので、更に好ましい。
上記(10)の構成の抄紙機のプレス装置によれば、クローズドドロータイプのプレス装置とすることにより、湿紙が一対の抄紙搬送フェルトにより挟持された状態で搬送される。これにより、強度が弱く且つ切れ易い湿紙に力を掛けることなく、極めて高速で湿紙を搬送することができる。従って、効率の良い抄紙が可能となる。
上記(11)の構成の抄紙機のプレス装置によれば、シュープレス型抄紙機のプレス装置とすることにより、加圧部(即ち、ロールとシューとにより形成されるニップ)のプレスゾーンが広く、それにより加圧時間を長くできるので、より搾水性に優れ、しかも所謂再湿現象を阻止できるので、ロールとシューとの間の加圧部の中央から出口にかけての部分における搾水性能が高い。
上記(12)の構成の抄紙機のプレス装置によれば、ロールプレス型抄紙機のプレス装置としても、上述したような本発明による優れた作用および効果の恩恵を受けることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、汚れが落ち易く且つ湿紙の受け渡し時における良好な紙離れ機能を備え、更に湿紙表面の平滑化機能に優れた抄紙搬送フェルトおよび該抄紙搬送フェルトを備えた抄紙機のプレス装置を提供できる。
【0017】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための最良の形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明に係る抄紙搬送フェルト100の縦断面図、図2は図1に示される抄紙搬送フェルトの湿紙接触繊維層を形成する分割繊維の拡大断面図、そして図3は本発明に係る抄紙機のプレス装置の一実施形態の概略構成を示す平面図である。
【0020】
図1に示されるように、抄紙搬送フェルト100は、基層11と、バット層13(第1バット層13Aおよび第2バット層13B)と、親水性不織布層23と、湿紙接触繊維層15と、を備える。より詳細には、基層11の湿紙側の表面に第1バット層13Aが形成され、基層11のプレス側(より詳細には、一対のロールのうちの一方側またはロールおよびシューのうちの一方側)の表面に第2バット層13Bが形成され、第1バット層13Aの湿紙側の表面に親水性不織布層23が形成され、そして湿紙と直接接触するように親水性不織布層23の湿紙側の表面に湿紙接触繊維層15が形成されている。これら基層11、バット層13(第1バット層13Aおよび第2バット層13B)、親水性不織布層23および湿紙接触繊維層15は、ニードリングにより絡合一体化されている。
【0021】
基層11は、抄紙搬送フェルト100に強度を付与するためのものであり、例えば、耐摩耗性、耐疲労性、伸張特性および防汚性、等に優れたナイロン6、ナイロン66、等の合成繊維、羊毛等の天然繊維、等を素材とした織布または糸材を織らずに重ね合わせたもの、或いはフィルム状にしたもの、等を適宜用いることができる。本実施形態では、基層11として、織成されたものを採用している。
【0022】
バット層13(第1バット層13Aおよび第2バット層13B)は、6デシテックス(dtex)以上の繊度(一般的には、17デシテックス程度)のステープルファイバ17により形成された非分割繊維層である。バット層13を形成する素材は、基層11と同様の素材が適宜用いられる。尚、第2バット層13Bは、抄紙搬送フェルト100に要求される特性に応じて省略してもよい。
【0023】
親水性不織布層23は、バット層13を形成する繊維よりも細い、例えば、繊度4デシテックス以下の非分割繊維を積層することにより高密度に構成された親水性不織布により形成される。親水性不織布層23を形成する親水性不織布の例としては、ナイロン等の樹脂を溶融させ且つ紡糸してなる繊維を積層することにより構成された、例えば、連続したフィラメントを積層してなるスパンボンド不織布、熱風で溶融ポリマーを延伸して微細繊維化しシート状にした不織布、等が挙げられる。
【0024】
尚、有効に再湿防止するためには、親水性不織布層23の親水性は、親水性不織布層23の水分率を30〜50%になるように調湿したとき、水との接触角が30°以下とするのが望ましい。尚、親水性不織布層23の水分率は、(水/全体重量)×100から求められる。
【0025】
湿紙接触繊維層15を形成する繊維は分割繊維15Aからなる(換言すれば、分割繊維15Aが湿紙接触繊維層15を形成する繊維の100重量%を占める)。湿紙接触繊維層15を形成する分割繊維15Aは各々、図2に示されるように、押圧や摩擦或いは湯洗等によって複数の細繊維(後述される花弁部19および茎部21)に分割する構造を持つ複合繊維であり、繊度が3.3デシテックス以下のものが好ましく、本実施形態では繊度が1.9デシテックス、そして長さが51mmの断面円形の繊維が用いられる。分割繊維15Aは、例えば、6つの断面扇形の花弁部19と当該花弁部19のうち隣り合うものの側面同士を結合させる断面略アスタリスク形状の茎部21といった7つの部分から構成され、これらの部分が断面円形に統合され、分割可能に形成されている。
【0026】
分割繊維15Aの素材については、例えばナイロン6(即ち、N6)で形成され、そして茎部21が例えばポリブチレンテレフタレート(即ち、PBT)で形成される。このような分割繊維15Aの具体例としては、商品名「PA31」:東レ株式会社製等が挙げられる。尚、分割繊維15Aの繊度を3.3デシテックス以下としたのは、主に湿紙接触繊維層15の形成を容易にするためであり、具体的には、抄紙搬送フェルト100自体の製造工程であるニードリング工程における前段階でカーディングする際には分割繊維15Aが分割されず、高分子弾性材の含浸に先立って行なわれる分割工程(例えば、ニードリング、起毛機による起毛工程、精練による湯洗、等)の際に効果的に分割されるようにするためである。
【0027】
尚、湿紙接触繊維層15を形成する繊維は、分割繊維15Aだけでなくともよい。具体的には、湿紙接触繊維層15を形成する繊維は、分割繊維15重量%〜100重量%、残部非分割繊維からなるものであってもよい。非分割繊維とは、カーディングの際やニードリングの際においても、またはニードリング工程よりも後の抄紙搬送フェルト製造工程においても、分割されない通常の短繊維である。また、非分割繊維としては、例えば1.9デシテックス(即ち、分割繊維の分割前の繊度と同じ値)〜6デシテックスの繊度を有するステープルファイバが望ましい。
【0028】
高分子弾性材25は、複数の分割繊維15Aの分割により形成された細繊維の間に湿紙接触繊維層15の湿紙表面側から含浸される。具体的に、湿紙接触繊維層15は、1重量%〜10重量%の高分子弾性材25を含む。高分子弾性材25は、複数の分割繊維15Aを細繊維に分割した後、常温で水系ウレタン樹脂、水系アクリル樹脂、水系エポキシ樹脂、水系合成ゴム(即ち、水系エマルジョン樹脂)等の合成樹脂を、ロールで塗布、或いはスプレーで吹き付けて細繊維の間に含浸させた後、加熱して硬化させる。このとき、湿紙接触繊維層15の下層(即ち、第1バット層13Aの湿紙側表面)には親水性不織布層23が配置されているので、高分子弾性材25は、親水性不織布層23によりそれ以上の含浸が阻止されて、第1バット層13A、基層11および第2バット層13Bに含浸されることはない。
【0029】
このように構成される抄紙搬送フェルト100の標準的な一例の各構成要素の坪量は、湿紙接触繊維層15の坪量が200g/m、親水性不織布層23の坪量が40g/m、第1バット層13Aの坪量が400g/m、基層11の坪量が650g/m、そして第2バット層13Bの坪量が100g/mである。また、湿紙接触繊維層15には、5重量%(10g/m)の高分子弾性材25が含まれる。
【0030】
また、抄紙搬送フェルト100を軽量化した一例の各構成要素の坪量は、湿紙接触繊維層15の坪量が100g/m、親水性不織布層23の坪量が40g/m、第1バット層13Aの坪量が200g/m、そして基層11の坪量が200g/mであり、第2バット層13Bは省略される。また、湿紙接触繊維層15には、1重量%(1g/m)の高分子弾性材25が含まれる。
【0031】
また、抄紙搬送フェルト100を重量化した一例の各構成要素の坪量は、湿紙接触繊維層15の坪量が300g/m、親水性不織布層23の坪量が40g/m、第1バット層13Aの坪量が800g/m、基層11の坪量が1500g/m、そして第2バット層13Bの坪量が300g/mであり、湿紙接触繊維層15には、10重量%(30g/m)の高分子弾性材25が含まれる。
【0032】
抄紙搬送フェルト100の製造方法を簡単に説明する。先ず、織成された基層11の両面にニードリング等によりバット層13が一体化されたものを準備する。そして、第1バット層13Aの表面に親水性不織布層23およびカーディング後の分割繊維15Aのウエッブシートを載置した後、分割繊維15Aのウエッブシート、親水性不織布層23、バット層13および基層11を貫いてニードリングして絡合一体化する。尚、カーディング工程の際、分割繊維15Aは、その繊度1.9デシテックスを維持できるので、例えば細繊維(花弁部19および茎部21)に分割した状態でカーディングした場合に生じる繊維塊の発生を防止できる。
【0033】
次に、ニードリングや、起毛機のブラシにより摩擦し、或いは、精練工程での湯洗等の分割作業によって分割繊維15Aを細繊維(花弁部19および茎部21)に分割して、細繊維で覆われた平滑な湿紙側表面を有する、高分子弾性材25が未だ含浸されていない状態の湿紙接触繊維層15を形成する。そして、その湿紙側表面に高分子弾性材25をロールで塗布、或いはスプレーで吹き付けて細繊維の間に含浸させた後、加熱して高分子弾性材25を硬化させる。このとき、湿紙接触繊維層15の下層には親水性不織布層23が配置されているので、高分子弾性材25は、親水性不織布層23より下層への含浸が阻止されて、第1バット層13A、基層11および第2バット層13Bに含浸されることはない。用い得る高分子弾性材25としては、水系ウレタン樹脂、水系アクリル樹脂、水系エポキシ樹脂、水系合成ゴム(即ち、水系エマルジョン樹脂)等の合成樹脂が例示され、高分子弾性材25の含浸率は抄紙搬送フェルト100が装着されるプレス機構の求める特性に応じて1重量%〜10重量%の範囲で適宜選択される。
【0034】
このようにして製造された、例えば、ピックアップ用の抄紙搬送フェルト100(抄紙機のプレス装置の入り口に配置される抄紙搬送フェルト)においては、湿紙接触繊維層15の坪量が150g/m、高分子弾性材25の含浸率が1重量%、そして抄紙搬送フェルト100を形成する繊維全体の密度が0.420g/cm、通気度は25cc/cm/sec(この値は、JIS L 1096に基づきフラジール形法により圧力125Paを抄紙搬送フェルト100の試験片にかけて測定された値の平均値である。)である。また、多段プレス装置の、例えば、第3プレス機構に装着される抄紙搬送フェルト100においては、湿紙接触繊維層15の坪量が200g/m、高分子弾性材25の含浸率が3重量%、そして抄紙搬送フェルト100を形成する繊維全体の密度が0.450g/cm、通気度は15cc/cm/secである。また、例えば、第4プレス機構に装着される抄紙搬送フェルト100においては、湿紙接触繊維層15の坪量が250g/m、高分子弾性材25の含浸率が5重量%、そして抄紙搬送フェルト100を形成する繊維全体の密度が0.500g/cm、通気度は5cc/cm/secである。
【0035】
尚、抄紙する紙の種類に合わせて最適な特性を有する抄紙搬送フェルト100とするため、基層11、バット層13、親水性不織布層23、および湿紙接触繊維層15をそれぞれ形成する繊維の種類、および高分子弾性材25の種類や含浸量は、各々または組み合わせた際の特性等を考慮して適宜選定される。
【0036】
(抄紙搬送フェルト100の変形例)
抄紙搬送フェルト100の好適な変形例として、1.9デシテックスの分割繊維15Aを30重量%含み且つ残部(即ち、70重量%)が3.3デシテックスの非分割繊維である混紡繊維を有する湿紙接触繊維層を備えたものを挙げる。この場合、湿紙接触繊維層を形成する繊維の平均太さは約2.9デシテックスとなる。尚、基層11、バット層13、親水性不織布層23、および高分子弾性材25は上述と同様なものである。湿紙接触繊維層が、細繊維に分割されない非分割繊維を含むことにより、湿紙接触繊維層の表面が密になり過ぎることがなく適度の透水性および凹凸面が確保されるので、湿紙Wから効果的に搾水すると共に良好な紙離れ性を確保できる。
【0037】
次に、無端ベルト状(環状)に形成された抄紙搬送フェルト100を装着したシュープレス型抄紙機のプレス装置300を図3を参照しながら説明する。
【0038】
図3に示されるように、シュープレス型抄紙機のプレス装置300は、湿紙Wの搬送方向(矢印A方向)に沿って第1プレス機構51および第2プレス機構53の2台のプレス機構が直列に配置された、所謂クローズドドロータイプのプレス装置300である。湿紙Wが一対のシュープレス用の抄紙搬送フェルト100に挟持された状態で搬送され且つ加圧されるクローズドドロータイプのシュープレス型抄紙機とすることにより、湿紙Wを例えば1200〜1400m/minといった高速で安定して搬送することができる。これにより、オープンドロータイプのシュープレス型抄紙機等と比較して極めて高い効率で抄紙することが可能となる。
【0039】
第1プレス機構51は、一対のシュープレス用の抄紙搬送フェルト100(100A)と、第1ニップ(換言すれば、第1加圧部)を間に形成するように対向配置された第1シュー55および第1ロール57(換言すれば、第1シュープレス)と、を備える。第2プレス機構53は、一対のシュープレス用の抄紙搬送フェルト100(100B)と、第2ニップ(換言すれば、第2加圧部)を間に形成するように対向配置された第2シュー59および第2ロール61(換言すれば、第2シュープレス)と、を備える。尚、通常、湿紙搾水性能、湿紙表面の平滑化機能を考慮して、第1プレス機構51に装着される抄紙搬送フェルト100Aの高分子弾性材25の含浸量は、第2プレス機構53に装着される抄紙搬送フェルト100Bの高分子弾性材25の含浸量よりも少なくされる。具体的には、第1プレス機構51に装着される抄紙搬送フェルト100Aでは、3重量%の高分子弾性材25が含浸され、第2プレス機構53に装着される抄紙搬送フェルト100Bでは、5重量%の高分子弾性材25が含浸される。即ち、下流側に配置された第2プレス機構53に装着される抄紙搬送フェルトには、湿紙搾水性能よりも湿紙表面の平滑化機能が重視された抄紙搬送フェルト100Bが用いられる。
【0040】
尚、図3に示されるように抄紙搬送フェルト100(100A;100B)を第1プレス機構51および第2プレス機構53の上下の抄紙搬送フェルトとして採用してもよいが、第1プレス機構51および第2プレス機構53の上下いずれか一方の抄紙搬送フェルトに採用してもよい。第1プレス機構51および第2プレス機構53の上下いずれか一方の抄紙搬送フェルトとして抄紙搬送フェルト100(100A;100B)を装着する場合には、その他の抄紙搬送フェルトには抄紙特性に合わせて任意の抄紙搬送フェルトを採用すればよい。また、抄紙搬送フェルト100Aのみ、または、抄紙搬送フェルト100Bのみを第1プレス機構51および第2プレス機構53の抄紙搬送フェルトとして採用してもよい。
【0041】
図3に示されるように、ワイヤーパート(不図示)から搬出されて第1プレス機構51に渡された湿紙Wは、一対の抄紙搬送フェルト100Aに挟持されながら搬送され、そして第1シュー55および第1ロール57により加圧されることにより搾水され、その搾水された水分が抄紙搬送フェルト100Aのポーラスな湿紙接触繊維層15から第1バット層13A等に吸収される。次に湿紙Wは、第2プレス機構53に渡されて一対の抄紙搬送フェルト100Bに挟持されながら搬送され、そして第2シュー59および第2ロール61により加圧されることにより更に搾水され、その搾水された水分が抄紙搬送フェルト100Bのポーラスな湿紙接触繊維層15から第1バット層13A等に吸収される。
【0042】
尚、湿紙Wが、第1プレス機構51から第2プレス機構53に受け渡される際、湿紙Wが接触する湿紙接触繊維層15はポーラスであり、その表面には適度な凹凸面が形成されているので、紙離れ性がよく、抄紙搬送フェルト100Aから容易に剥離して抄紙搬送フェルト100Bに確実に渡される。また、湿紙Wと直接接触する湿紙接触繊維層15の表面は、分割繊維15Aが分割した細繊維および高分子弾性材25(湿紙接触繊維層15が非分割繊維も含む場合は、加えて非分割繊維)で覆われて平滑面となっているので、表面が平滑な湿紙Wが加圧され、ドライヤーパート(不図示)に渡されて乾燥される。
【0043】
尚、第1シュー55と第1ロール57の第1加圧部、および第2シュー59と第2ロール61の第2加圧部から出口にかけて湿紙Wおよび抄紙搬送フェルト100A、100Bに作用していた圧力が開放されると、抄紙搬送フェルト100A、100B内の水分が湿紙W側に移行する再湿現象が起きようとするが、親水性不織布層23がバット層13よりも密度が高く、且つ透水性が低いので、バット層13の水分は親水性不織布層23を透過して湿紙接触繊維層15に移動し難い。これにより、再湿現象の発生が抑制される。
【0044】
尚、上記のように、一例として2段のプレス機構51,53を備えたプレス装置300を本発明に係るシュープレス型抄紙機のプレス装置の一実施形態として説明したが、一つのプレス機構を具備したプレス装置あるいは多数のプレス機構が直列に並んで配置(即ち、並設)されたプレス装置であってもよいことは言うまでもない。
【0045】
ここで、本発明の理解を深めるため、本発明に係る抄紙搬送フェルトの実施形態の構成および該抄紙搬送フェルトを備えたシュープレス型抄紙機のプレス装置の実施形態の構成を簡潔に述べる。
【0046】
抄紙搬送フェルト100は、シュープレス型抄紙機のプレスパートに設けられたプレス装置300に配置され、当該プレス装置300におけるロール(57;61)およびシュー(55;59)を有するシュープレスと共に一つのプレス機構(51;53)を形成し、湿紙Wを挟持しながらロール(57;61)およびシュー(55;59)により加圧され、それにより湿紙Wから搾り出された水分を吸収する一対のシュープレス用の抄紙搬送フェルトのうち少なくとも一方の抄紙搬送フェルト100であって、
基層11と、
基層11の湿紙W側の表面に形成された第1バット層13Aと、
基層11のロール(57;61)側またはシュー(55;59)側の表面に形成された第2バット層13Bと、
細繊維に分割された複数の分割繊維15Aおよび前記細繊維の間に含浸された高分子弾性材25を含み且つ、細繊維および高分子弾性材25が湿紙Wと直接接触するように第1バット層13Aの湿紙W側の表面に形成された湿紙接触繊維層15と、
第1バット層13Aと湿紙接触繊維層15との間に配置された親水性不織布層23と、
を備え、
湿紙接触繊維層15の湿紙Wと直接接触する表面では高分子弾性材25によって前記細繊維が部分的に被覆されている。
【0047】
湿紙接触繊維層15は、1重量%〜10重量%の高分子弾性材25を含む。尚、湿紙接触繊維層15を形成する繊維は、分割繊維15重量%〜100重量%、残部非分割繊維からなるものであってもよい。
【0048】
シュープレス型抄紙機のプレス装置300は、抄紙搬送フェルト100(100A;100B)を有するプレス機構を複数備えたシュープレス型抄紙機のプレス装置であって、当該複数のプレス機構(51,53)が、それらの抄紙搬送フェルト100A,100Bにより搬送される湿紙Wの搬送方向Aに沿って直列に並んで配置(即ち、並設)される。
【0049】
抄紙搬送フェルト100(100A;100B)における分割繊維15A各々の分割前の繊度は、3.3デシテックス以下であり、より好ましくは、1.9デシテックスである。
【0050】
シュープレス型抄紙機のプレス装置300は、クローズドドロータイプのプレス装置である。
【0051】
以上、説明したように、抄紙搬送フェルト100によれば、複数の分割繊維15Aを細繊維に分割した後、それら細繊維の間に高分子弾性材25を含浸させることにより形成された湿紙接触繊維層15が、湿紙Wと直接接触するように抄紙搬送フェルト100の第1バット層13Aの湿紙側の表面に形成されているので、湿紙接触繊維層15の表面平滑度を向上させることができ、これにより平滑な表面を有する高品質の紙を製紙することができる。また、湿紙接触繊維層15の表面は、分割繊維15Aの分割により形成された細繊維が部分的に高分子弾性材25によって被覆された表面となっており、湿紙接触繊維層15の表面には、それら微小の細繊維の突出による多少の凹凸があるので、湿紙接触繊維層15と湿紙Wとの間の水膜が破られ易く或いは形成し難く、従って、抄紙搬送フェルト100からの紙離れ性がよく、湿紙Wを次工程のドライヤーカンバスに容易に渡すことができる。
尚、分割繊維15Aと非分割繊維との混紡繊維を有する湿紙接触繊維層15とする場合は、高分子弾性材25が、細繊維(分割繊維15Aが分割したもの)の間、当該細繊維と非分割繊維との間、および非分割繊維の間に含浸される。また、そのような湿紙接触繊維層15の湿紙Wと直接接触する表面では高分子弾性材25によって細繊維および非分割繊維が部分的に被覆され、当該湿紙接触繊維層15の表面には、それら微小の細繊維および非分割繊維の突出による多少の凹凸があるので、湿紙接触繊維層と湿紙Wとの間の水膜が破られ易く或いは形成し難く、従って、抄紙搬送フェルト100からの紙離れ性がよく、湿紙Wを次工程のドライヤーカンバスに容易に渡すことができる。
【0052】
また、分割繊維15Aの分割により形成された細繊維は、高分子弾性材25によってある程度結合されるとともに部分的に被覆されているので所謂脱毛現象が生じ難く、抄紙搬送フェルト100からの脱落が防止される。これにより、抄紙搬送フェルト100を用いたシュープレス型抄紙機により製造された紙はその表面が極めて滑らかなものとなり、その上、抄紙搬送フェルト100の寿命(即ち、抄紙搬送フェルト100の使用可能期間)が長いため、抄紙搬送フェルト100を新品に交換するメンテナンスの頻度を少なくすることができる。
【0053】
また、第1バット層13Aと湿紙接触繊維層15との間に親水性不織布層23が配置されているので、湿紙接触繊維層15の表面側から含浸された高分子弾性材25は、親水性不織布層23で阻止されて親水性不織布層23よりも深い層(即ち、第1バット層13A、基層11、第2バット層13B)まで含浸されることはなく、湿紙接触繊維層15にのみ(例えば、表面から0.5mm程度)配置される。
【0054】
従って、抄紙搬送フェルト100は、透水性と適度な圧縮、回復機能(クッション性)を有するので、搾水性を効果的に発揮することができる。また、高分子弾性材25を含む湿紙接触繊維層15に一時的に付着した汚れ(具体的には湿紙Wに含まれる添加剤や糊等の成分)は、抄紙搬送フェルト100の適度な圧縮、回復機能のため、湿紙接触繊維層15の表面から剥がれ易く、湿紙Wに移行する。即ち、抄紙搬送フェルト100は、高い自浄機能を有する。これにより、抄紙搬送フェルト100に汚れが残存し難く、また、湿紙Wに移行する汚れは、元々湿紙Wに成分として含まれるものであるので、湿紙Wの品質に何ら影響を与えることもない。また、一旦湿紙Wから抄紙搬送フェルト100に吸い取られた水分の湿紙Wへの再移行(即ち、所謂再湿現象)が親水性不織布層23により阻止される。
【0055】
またシュープレス型抄紙機のプレス装置300によれば、抄紙搬送フェルト100(100A;100B)を有する複数のプレス機構51、53が、それらの抄紙搬送フェルト100(100A;100B)により搬送される湿紙Wの搬送方向に沿って直列に並設されていれば、特に湿紙Wから効率良く搾水し、且つ紙離れよく次の抄紙搬送フェルトに渡す上で好適である。即ち、水分を多く含む湿紙Wから多量の水を効果的に搾り出すことができ、且つ確実に次の抄紙搬送フェルトに湿紙Wを渡すことができ、高速での抄紙操業が可能となる。特に、複数のプレス機構51、53のうち湿紙Wの搬送方向の下流側に配置されたプレス機構53に、比較的多量(1重量%〜10重量%の範囲内で)の高分子弾性材25を含浸させた抄紙搬送フェルト100Bを配置すれば、高分子弾性材25の含浸量の少ない抄紙搬送フェルト100Aと比べて透水性についてはやや低下する場合も考えられるが、湿紙表面の平滑化機能だけでなく高い紙離れ性を有するので、高速で搬送される湿紙Wを確実に次工程のドライヤーカンバスに渡すことができ、高速での抄紙が可能となる。
【0056】
また、湿紙接触繊維層15における分割繊維15Aと非分割繊維との混紡比率を適宜変更することによって、抄紙搬送フェルト100の特性を変えることができる。ここで、混紡繊維の重量比率は、「分割繊維15Aの重量/(分割繊維15Aの重量+非分割繊維の重量)×100」で定義される。抄紙搬送フェルト100に求められる特性である表面平滑性と搾水性とは逆相関の関係にあり、湿紙表面の平滑化性能を向上させるために抄紙搬送フェルト100の密度を高めると搾水性が悪くなる傾向がある。一方、搬送される湿紙Wの搬送方向上流から下流に向かって配置された複数のプレス機構51、53には、それぞれ微妙に異なる機能が要求され、上流側に配置されたプレス機構51の抄紙搬送フェルト100Aには搾水性が重視され、そして下流側に配置されたプレス機構53の抄紙搬送フェルト100Bには湿紙表面の平滑化性能が求められる。従って、非分割繊維と分割繊維15Aとの混紡比率を適宜変更することにより、それぞれのプレス機構51、53に最適な特性(表面平滑性、搾水性、等)を抄紙搬送フェルト100に持たせることが可能となる。
【0057】
また、抄紙搬送フェルト100によれば、湿紙接触繊維層15が、1重量%〜10重量%の高分子弾性材25を含むので、繊維間の全ての気孔が高分子弾性材25によって充填されることはなく、繊維間に適度の気孔が保持されている。換言すれば、ポーラスな組織となっている。従って、湿紙接触繊維層15と湿紙Wの間に形成される水膜を分散させ、且つ適度のクッション性を有する。これにより、抄紙搬送フェルト100からの紙離れ性がよく、更にプレス機構51、53においてロール57、61とシュー55、59との加圧により伸縮して湿紙Wから搾り出された水分を吸収し、且つ平滑な表面を有する抄紙搬送フェルト100とすることができる。また、高分子弾性材25の含浸割合を変更することにより、各プレス機構51、53に最適な特性(紙離れ性、表面平滑性、搾水性、等)を抄紙搬送フェルト100に持たせることができる。
【0058】
また、抄紙搬送フェルト100によれば、分割繊維15A各々の分割前の繊度が3.3デシテックス以下であるので、仮に分割繊維15Aの分割前の繊度が3.3デシテックスであったとしても、分割繊維15Aの分割により形成された細繊維の繊度は3.3デシテックスよりも小さくなる。このように、分割することにより湿紙Wの繊維の繊度に限り無く近い繊度の細繊維となる分割繊維15Aを含む湿紙接触繊維層15を形成すれば、表面平滑性に非常に優れた高品質の紙を製造することができる。また、このような細繊維の間に高分子弾性材25を含浸させることにより、湿紙接触繊維層15の表面を更に平滑、且つ紙離れ性のよい表面とすることができる。例え、所謂脱毛現象により、湿紙接触繊維層15から抜け落ちたり切れ落ちた細繊維(即ち、分割繊維15Aの分割により形成された細繊維)が湿紙Wの表面に多少付着しても当該細繊維は極めて細いので湿紙Wの品質を低下させることはない。また、分割繊維15A各々の分割前の繊度が1.9デシテックスといった小さい値であれば、更に好ましい。
【0059】
尚、抄紙搬送フェルト100は、湿紙接触繊維層15の分割繊維15Aを細繊維に分割した後、それら細繊維の間に高分子弾性材25を含浸させたものであり、分割繊維15Aの分割は、抄紙搬送フェルト製造工程の一つであるニードリング工程で為されることが好ましい。ニードリング工程における前段階でカーディングにより分割繊維15Aを細繊維に分割すると繊維塊(即ち、繊維の塊)ができ易く、当該繊維塊は、ニードリングでフェルトに植設されてしまい、抄紙搬送フェルトの表面に比較的大きな凹凸を形成するので、湿紙の表面平滑度が低下する。分割繊維15Aの分割は、例えば、ニードリング工程において細い番手の針を用いたニードリングにて行なってもよく、或いは、ニードリング工程後において起毛機のブラシ(通称薊)で植設された分割繊維15Aを摩擦したり、或いは、ニードリング工程後に抄紙搬送フェルト100を精練(湯洗)する等して行なってもよい。即ち、分割繊維15Aの分割は、ニードリング工程における前段階であるカーディングよりも後で、且つ高分子弾性材25を含浸する前であれば、どの工程でもよい。そして、分割繊維15Aの細繊維への分割後に当該細繊維の間に高分子弾性材25が含浸される。
【0060】
高分子弾性材25の含浸は、分割繊維15Aを細繊維に分割した後、常温で水系ウレタン樹脂、水系アクリル樹脂、水系エポキシ樹脂、水系合成ゴム(即ち、水系エマルジョン樹脂)、等の合成樹脂を、ロールで塗布、或いはスプレーで吹き付けて細繊維の間に含浸させ、更に、加熱して硬化させて行なわれる。
【0061】
また、シュープレス型抄紙機のプレス装置300によれば、クローズドドロータイプのプレス装置であるので、湿紙Wが一対の抄紙搬送フェルト100により挟持された状態で搬送される。これにより、強度が弱く且つ切れ易い湿紙Wに力を掛けることなく、極めて高速で湿紙Wを搬送することができる。従って、効率の良い抄紙が可能となる。
【0062】
尚、本発明は、前述した実施形態および変形例に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、前述した実施形態および変形例における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0063】
例えば、搬送の途中で湿紙Wが単独で搬送される部分を有するオープンドロータイプのシュープレス型抄紙機のプレス装置に抄紙搬送フェルト100を装着しても同様に有効に作用する。また、クローズドドロータイプ或いはオープンドロータイプのロールプレス型抄紙機のプレス装置に抄紙搬送フェルト100を装着しても、上述したような本発明による優れた作用および効果の恩恵を受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る抄紙搬送フェルトの実施形態の縦断面図である。
【図2】図1に示される抄紙搬送フェルトの湿紙接触繊維層を形成する分割繊維の拡大断面図である。
【図3】本発明に係る抄紙機のプレス装置の一実施形態の概略構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0065】
100(100A、100B) 抄紙搬送フェルト
300 シュープレス型抄紙機のプレス装置
11 基層
13 バット層
13A 第1バット層
13B 第2バット層
15 湿紙接触繊維層
15A 分割繊維
23 親水性不織布層
25 高分子弾性材
51 湿紙の搬送方向上流側に配置されたプレス機構
53 湿紙の搬送方向下流側に配置されたプレス機構
55 シュー
57 ロール
59 シュー
61 ロール
A 湿紙の搬送方向
W 湿紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙機のプレスパートに設けられたプレス装置に配置され、当該プレス装置におけるプレスと共に一つのプレス機構を形成し、湿紙を挟持しながら前記プレスにより加圧され、それにより前記湿紙から搾り出された水分を吸収する一対の抄紙搬送フェルトのうち少なくとも一方の抄紙搬送フェルトであって、
基層と、
前記基層の湿紙側の表面に形成された第1バット層と、
前記基層のプレス側の表面に形成された第2バット層と、
細繊維に分割された複数の分割繊維および前記細繊維の間に含浸された高分子弾性材を含み且つ、前記細繊維および前記高分子弾性材が前記湿紙と直接接触するように前記第1バット層の湿紙側の表面に形成された湿紙接触繊維層と、
前記第1バット層と前記湿紙接触繊維層との間に配置された親水性不織布層と、
を備え、
前記湿紙接触繊維層の前記湿紙と直接接触する表面では前記高分子弾性材によって前記細繊維が部分的に被覆されていることを特徴とする抄紙搬送フェルト。
【請求項2】
前記湿紙接触繊維層が、1重量%〜10重量%の前記高分子弾性材を含むことを特徴とする請求項1に記載した抄紙搬送フェルト。
【請求項3】
前記湿紙接触繊維層を形成する繊維が、前記分割繊維15重量%〜100重量%、残部非分割繊維からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載した抄紙搬送フェルト。
【請求項4】
前記分割繊維各々の分割前の繊度が、3.3デシテックス以下であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一つに記載した抄紙搬送フェルト。
【請求項5】
前記分割繊維各々の分割前の繊度が、1.9デシテックスであることを特徴とする請求項4に記載した抄紙搬送フェルト。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一つに記載した抄紙搬送フェルトを備えた抄紙機のプレス装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項3のいずれか一つに記載した抄紙搬送フェルトを有する前記プレス機構を複数備えた抄紙機のプレス装置であって、当該複数のプレス機構が、それらの前記抄紙搬送フェルトにより搬送される湿紙の搬送方向に沿って直列に並設されていることを特徴とする抄紙機のプレス装置。
【請求項8】
前記分割繊維各々の分割前の繊度が、3.3デシテックス以下であることを特徴とする請求項7に記載した抄紙機のプレス装置。
【請求項9】
前記分割繊維各々の分割前の繊度が、1.9デシテックスであることを特徴とする請求項8に記載した抄紙機のプレス装置。
【請求項10】
クローズドドロータイプのプレス装置であることを特徴とする請求項6〜請求項9のいずれか一つに記載した抄紙機のプレス装置。
【請求項11】
請求項6〜請求項10のいずれか一つに記載した抄紙機のプレス装置がシュープレス型抄紙機のプレス装置であり、当該プレス装置の前記プレスが、前記抄紙搬送フェルトを加圧するロールおよびシューを有するシュープレスであることを特徴とする抄紙機のプレス装置。
【請求項12】
請求項6〜請求項10のいずれか一つに記載した抄紙機のプレス装置がロールプレス型抄紙機のプレス装置であり、当該プレス装置の前記プレスが、前記抄紙搬送フェルトを加圧する一対のロールを有するロールプレスであることを特徴とする抄紙機のプレス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−97181(P2006−97181A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−284264(P2004−284264)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000180597)イチカワ株式会社 (99)
【Fターム(参考)】