説明

抄紙機用布に使用する溝付きの有孔層

抄紙機に使用する溝を有する有孔層を提供する。溝(8)は、層を横切って圧力低下を減少するように有孔層(6)の表面の流動を拡散させる機能を有し、これにより、微粉の移動が減少する。この様式において、この微粉に関連した明/暗パターンは、回避され、得られる紙シートの質は、向上される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙技術に関する。特に、本発明は、抄紙機のプレス部用のプレス布に関する。
【背景技術】
【0002】
紙の製造は、木材の処理から始める。木材は、2つの主要な成分、つまりセルロースとリグニンとから主になり、これら両者とも、有機物であって、その分子は、炭素原子の側鎖及び環の周囲に構築される。セルロースは、植物細胞の細胞壁に見出され、紙の製造に使用される繊維材料である。リグニンは、セルロース繊維をともに保持する一種の接着剤として機能する複合巨大分子であって、細胞壁を強化し、木材に機械的強度を与える。木材から製紙に適したパルプへと変換するため、セルロース繊維は、リグニンから遊離される必要がある。
【0003】
製紙工程において、セルロース繊維ウェブは、繊維スラリー、つまりセルロース繊維の水性分散液を抄紙機の形成部において移動する形成布上に堆積させて、形成される。このスラリーからは、形成布を介して大量の水が排出され、形成布の表面上にセルロース製繊維ウェブが残存する。
【0004】
新規に形成されたセルロース製繊維ウェブは、形成部から一連のプレスニップを有するプレス部へと進む。このセルロース製繊維ウェブは、プレス布、又は場合によっては、斯かる2つのプレス布の間で支持されたプレスニップを通過する。プレスニップにおいて、セルロース製繊維ウェブには、圧縮力がかけられ、そこから水を絞り出し、セルロース製繊維ウェブから紙シートへとかえるように互いにウェブにおいてセルロース繊維を接着する。この水は、プレス布で受容され、理想的には、紙シートに戻らない。
【0005】
この紙シートは、蒸気で内的に加熱される、少なくとも一連の回転可能な乾燥ドラム又はシリンダーを有する乾燥部へと最終的に進む。新規に形成された紙シートは、乾燥布により上記の一連のドラムの周囲で連続して配置されるセルペンタイン路(serpentine path)に向けられ、これは、ドラムの表面に対して近接して紙シートを保持する。加熱されたドラムは、紙シートの水分含量を、蒸発により、所望のレベルにまで低下させる。
【0006】
当然のことながら、形成布、プレス布及び乾燥布は、全て、抄紙機においてエンドレスループの形態であって、コンベアの機能を有する。さらに、当然のことながら、紙製造は、かなりの速度で進行する連続工程である。つまり、繊維スラリーは、形成部において形成布上に連続して堆積される一方で、新規に製造された紙シートは、乾燥部を出た後、ロール上に連続して巻き取られる。
【0007】
本発明は、プレス部に使用されるプレス布に特に関する。プレス布は、紙製造工程において重要な役割を演じる。これらの機能の一つとして、上述したように、プレスニップを介して製造された紙製品を支持し且つ運搬することが挙げられる。
【0008】
また、プレス布は、紙シートの表面の最終仕上げにも関与する。つまり、プレス布は、プレス布を介して通過する間に平滑でマークのない表面が紙に補完されるように、平滑な表面と均一な弾力性を有するように、設計される。
【0009】
おそらく最も重要なことに、プレス布は、プレスニップにおいて湿潤した紙から抽出された大量の水を受容する。この機能を担うため、水が通過するプレス布の内部で、いわゆるボイド容量(void volume)と称される空間を文字通り有する必要があり、また、プレス布は、実用的な寿命の間、水に対して十分な透過性を有する必要がある。最後に、プレス布は、湿潤した紙から受容した水がプレスニップから出て紙に再び戻り再度湿潤させることを阻止し得る必要がある。
【0010】
現在のプレス布は、製造される紙のグレードに合わせて導入される抄紙機の要件を満たすように種々の広範な様式で製造される。一般的に、プレス布は、微細な不織繊維材料のバットをニードルパンチして基礎織布を有する。この基礎織布は、単繊維、諸より単繊維、多重フィラメント又は諸より多重フィラメントヤーンから織られてもよく、単一層であっても、多重層であっても、積層体であってもよい。このヤーンは、抄紙機用の布技術において当業者により上述の目的で使用されるポリアミドやポリエステル樹脂などの複数の合成ポリマー樹脂のいずれかから典型的に成形される。
【0011】
この基礎織布は、それ自体、多くの異なる形態をとる。例えば、エンドレスの形態に織られてもよく、平織りであってもよく、織り継目を有するエンドレスな形態とされてもよい。代替的に、基礎織布は、改変されたエンドレス織り(weaving)として一般的に知られる工程により、製造されてもよく、この基礎織布の幅方向の端部には、機械方向(MD)のヤーンを用いて継目ループが設けられる。この目的において、このMDヤーンは、端部で裏返してこの布の幅方向の端部間を前後して連続に織り、継目ループを形成する。この様式で製造される基礎布は、抄紙機に導入される間、エンドレスの形態で載置される。そのため、機械上で継目可能な布と称される。このように布をエンドレスの形態に載置するため、布の幅方向の2つの端部をともにとり、この2つの端部における継目ループは、互いに噛み合わされ、噛み合わされた継目ループにより形成された通路を介して、継ぎ合わせピン又はピントルが挿入される。
【0012】
さらに、プレス布は、複数の層で形成されてもよい。例えば、プレス布は、織基礎層及び互いに積層された中間層を有してもよい。このような布のひとつに、Albany International社のApertech(登録商標)プレス布がある。このプレス布は、基礎織布とポリマー層とを有する。Apertech(登録商標)のポリマー層は、有孔であり、これを図1に示す。図1は、このポリマー層の紙側の平面図であって、ポリマー層を符号2で示し、孔を符号4で示す。図1から明らかなように、表面2は、平滑で、この孔は、この表面の全体に均一に配置されている。
【0013】
本発明は、Apertech(登録商標)布に使用される層のような、抄紙機用布の有孔層の性能向上に関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の発明者は、有孔層を有する抄紙機用布の適用例のいくつかで、紙シートに有孔層の孔パターンが反復していることを見出した。本発明の発明者は、斯かるマークは、紙ウェブにおける比較的高密度のリグニンを有する微粉が集積して起こることをさらに見出した。さらに、この紙における孔パターンの反復は、微粉の遊離を発生する孔を介して流動密度と、これに関連した、紙の明/暗のコントラストを有する領域を発生させるリグニンによるものである。
【0015】
抄紙機用布の有孔層により発生する特定の適用例における問題の観点から、本発明の目的とするところは、層を横切った圧力低下を低下させるように有孔層の表面における流動性を拡散し、これにより、孔を介した流動濃度を減少させ、従って、紙ウェブにおける微粉の移動を減少させることである。この目的を達成するため、溝付きの有孔層を提供する。この溝は、流動性を拡散し、微粉の移動を減少させて、微粉に関連した明/暗パターンを回避し、得られる紙シートの質を向上させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の好適実施例について、抄紙機用布の点で、説明する。しかしながら、注目すべきは、本発明は、布の表面を横切って流体が拡散する現象が布の特性を向上させるその他の工業的な設定に使用される布と同様に、抄紙機の他の部分に使用する布にも適用可能である点である。本発明が適用可能なその他の布の種類のいくつかの例には、抄紙機用形成布、抄紙機用乾燥布、空気透過(through−air)乾燥布及びパルプ形成布が挙げられる。本発明が適用可能な布の種類のその他の例としては、ウェットレイド、ドライレイド、メルトブローン及び/又はスパンボンド工程における不織布を製造するのに使用されるような加工布が挙げられる。
【0017】
図2は、本発明による有孔層の部位に係る平面図である。図2から明らかなように、有孔層には、多数の島領域10、多数の溝領域8及び多数の孔6が含まれる。溝領域は、島領域が存在する平面の下部の平面に存在する。この層の断面図を図5に示す。
【0018】
図5を参照すると、明らかなように、溝領域の平面は、この層の上部表面24の下の距離tに存在する。溝領域は、この溝深さを規定する。明らかなように、この溝深さは、この層の全体の厚さTの約1/4程度である。なお、この全体の厚さは、島領域の平面を規定する上部表面から下部表面26への距離を規定するものである。以下、明確に表現するため、4つの孔28についてのみ図5に示す。
【0019】
注目すべきは、溝深さは、上述の全体の厚さの1/4に限定されないことであって、層を形成するのに使用する材料や最終的な層の所望する特性によって、変更されてもよい。また、注目すべきは、溝領域について均一な深さを有するように述べたが、表面の平面に平行した単一の平面に溝領域が横切るような場合のように、溝領域の深さを変更したものも本発明の実施例として含まれる。つまり、代替的な実施例において、溝領域は、平面に存在せず、或いは上部表面の平面又は下部表面の平面のいずれにも平行でない平面に存在する。さらに、島領域の高さは、上述の層の上部表面が平坦でない構造を有し且つ島領域がもはや単一の平面に存在しないように、変更されることも可能である。さらに、注目すべきは、図2に示す実施例において、複数の孔は、部分的に溝に存在し、且つ部分的に島に存在する。各孔は、溝の全体又は島の全体のいずれかに存在し溝/島の境界を横切って存在する孔がないように、上述の層を形成することも可能である。いずれにしても、孔は、溝が形成される前、又は形成された後のいずれかに、形成されてもよい。
【0020】
また、溝は、機械方向に一定の角度を有することも可能である。さらに、斜交平行模様状態に、互いに一定の角度で2つの一連の溝を存在させることも可能である。
【0021】
図3は、本発明の他の実施例による有孔層の部位に係る平面図である。図3から明らかなように、全ての孔12は、溝領域14に限定されており、島領域10には、孔は存在しない。図3において、図2の実施例と関連して述べた全ての変法は、孔の配置に関する変法を除いて、適用可能である。
【0022】
図4は、本発明のさらに他の実施例による有孔層の部位に係る平面図である。図4から明らかなように、全ての孔18は、島領域22に限定されており、溝領域20に孔は存在しない。図2の実施例と関連して述べた全ての変法は、孔の配置に関する変法を除いて、図4の実施例に適用可能である。
【0023】
上述の各実施例に拘わらず、抄紙機用プレス布を達成するため、本発明による溝付き有孔層とその他の層とを組み合わせることも、好ましい。例えば、本発明による溝付き有孔層は、Apertech(登録商標)の有孔層の変わりに「grooved Apertech(登録商標)」を構築するように、変更されてもよい。
【0024】
いずれの実施例においても、本発明は、抄紙機用布の有孔層の表面における流動性を拡散する。この流動性の拡散は、層を横切る圧力低下を減少させ、これにより、斯かる移動性を紙シートに与える明/暗パターンを減少/回避する効果を有する微粉の移動を減少させる。
【0025】
本発明の改変は、本願の開示内容の点で、当業者に明らかであるが、このような改変は、本願に添付した本発明の特許請求の範囲を逸脱させるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】関連技術における抄紙機用布の有孔層の平面図
【図2】本発明の実施例による有孔層の平面図
【図3】本発明の他の実施例による有孔層の平面図
【図4】本発明のさらに別の実施例による有孔層の平面図
【図5】本発明による有孔層の断面図
【符号の説明】
【0027】
2 表面
6 孔
8 溝領域
10 島領域
12 孔
14 溝領域
16 島領域
18 孔
20 溝領域
22 島領域
24 上部表面
26 下部表面
28 孔
t 距離
T 厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の島領域と;
複数の溝領域と;
複数の孔と;
を有することを特徴とする抄紙機用布に使用する層。
【請求項2】
前記溝領域は、平面に存在することを特徴とする請求項1に記載の層。
【請求項3】
前記島領域は、平面に存在することを特徴とする請求項1に記載の層。
【請求項4】
前記溝領域は、平面に存在し、
前記島領域は、平面に存在する、
ことを特徴とする請求項1に記載の層。
【請求項5】
前記溝領域の平面と、前記島領域の平面とは、平行であることを特徴とする請求項4に記載の層。
【請求項6】
機械方向に0°を越える角度で配置された一連の溝領域を有することを特徴とする請求項1に記載の層。
【請求項7】
前記の一連の溝領域は、斜交平行模様であることを特徴とする請求項1に記載の層。
【請求項8】
前記孔は、前記島領域及び前記溝領域の両方に分散され、
1つ以上の前記孔は、島領域と溝領域との境界に渡って存在することを特徴とする請求項1に記載の層。
【請求項9】
前記孔は、前記溝領域にのみ存在することを特徴とする請求項1に記載の層。
【請求項10】
前記孔は、前記島領域にのみ存在することを特徴とする請求項1に記載の層。
【請求項11】
複数の島領域と、複数の溝領域とを有する改変された基礎材料を形成するように、基礎材料に複数の溝を形成するステップと;
前記の改変された基礎材料に複数の孔を形成するように、前記の改変された基礎材料に孔を開けるステップと;
を有することを特徴とする抄紙機用布に使用する層を形成する方法。
【請求項12】
前記溝領域は、平面に存在することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記島領域は、平面に存在することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記溝領域は、平面に存在し、
前記島領域は、平面に存在する、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記溝領域の平面と、前記島領域の平面とは、平行であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
機械方向に0°を越える角度で配置された一連の溝領域を有することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記の一連の溝領域は、斜交平行模様であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記孔は、前記島領域及び前記溝領域の両方に分散され、
1つ以上の前記孔は、島領域と溝領域との境界に渡って存在することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記孔は、前記溝領域にのみ存在することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記孔は、前記島領域にのみ存在することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項21】
複数の島領域と複数の溝領域とを有する改変された基礎材料を形成するように基礎材料に複数の溝を形成し、前記の改変された基礎材料に複数の孔を形成するように孔を開けることにより、形成されたことを特徴とする抄紙機用布に使用する層。
【請求項22】
前記溝領域は、平面に存在することを特徴とする請求項21に記載の層。
【請求項23】
前記島領域は、平面に存在することを特徴とする請求項21に記載の層。
【請求項24】
前記溝領域は、平面に存在し、
前記島領域は、平面に存在する、
ことを特徴とする請求項21に記載の層。
【請求項25】
前記溝領域の平面と、前記島領域の平面とは、平行であることを特徴とする請求項24に記載の層。
【請求項26】
機械方向に0°を越える角度で配置された一連の溝領域を有することを特徴とする請求項21に記載の層。
【請求項27】
前記の一連の溝領域は、斜交平行模様であることを特徴とする請求項26に記載の層。
【請求項28】
前記孔は、前記島領域及び前記溝領域の両方に分散され、
1つ以上の前記孔は、島領域と溝領域との境界に渡って存在することを特徴とする請求項21に記載の層。
【請求項29】
前記孔は、前記溝領域にのみ存在することを特徴とする請求項21に記載の層。
【請求項30】
前記孔は、前記島領域にのみ存在することを特徴とする請求項21に記載の層。
【請求項31】
複数の島領域と;
複数の溝領域と;
複数の孔と;
を有する層を備えることを特徴とする抄紙機用プレス布。
【請求項32】
前記溝領域は、平面に存在することを特徴とする請求項31に記載のプレス布。
【請求項33】
前記島領域は、平面に存在することを特徴とする請求項31に記載のプレス布。
【請求項34】
前記溝領域は、平面に存在し、
前記島領域は、平面に存在する、
ことを特徴とする請求項31に記載のプレス布。
【請求項35】
前記溝領域の平面と、前記島領域の平面とは、平行であることを特徴とする請求項34に記載のプレス布。
【請求項36】
機械方向に0°を越える角度で配置された一連の溝領域を有することを特徴とする請求項31に記載のプレス布。
【請求項37】
前記の一連の溝領域は、斜交平行模様であることを特徴とする請求項36に記載のプレス布。
【請求項38】
前記孔は、前記島領域及び前記溝領域の両方に分散され、
1つ以上の前記孔は、島領域と溝領域との境界に渡って存在することを特徴とする請求項31に記載のプレス布。
【請求項39】
前記孔は、前記溝領域にのみ存在することを特徴とする請求項31に記載のプレス布。
【請求項40】
前記孔は、前記島領域にのみ存在することを特徴とする請求項31に記載のプレス布。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−531826(P2007−531826A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520206(P2006−520206)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/021238
【国際公開番号】WO2005/010276
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(591097414)アルバニー インターナショナル コーポレイション (110)
【氏名又は名称原語表記】ALBANY INTERNATIONAL CORPORATION
【Fターム(参考)】