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抄紙用プレスフェルト
説明

抄紙用プレスフェルト

【課題】フェルトの抄紙機への仕掛りが容易で仕掛り作業時間が短く、また、抄紙最高速度までの初期馴染み運転期間が短く、フェルトライフの長い抄紙用プレスフェルトの提供。
【解決手段】抄紙用プレスフェルトにおいて、補強繊維基材5の湿紙載置側およびプレスロール側の両面にバット繊維層6、7を配置し、前記バット繊維層の少なくとも一方には溶融繊維が配置されており、フェルトの湿紙載置側のフェルト内のバット繊維層には加圧に対する変形性が高く、加圧後の回復性に優れた高分子弾性体8をフェルト内のバット層に絡ませて分散付着させてなる。高分子弾性体は、フィルム状にした時、室温20℃、相対湿度65%の環境下で測定された100%モジュラス値が1〜100kg/cmであり、また、100%伸長後残留歪が30%以下であり、高分子弾性体の付着量が抄紙用プレスフェルト重量に対して0.5〜20重量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙機に使用される抄紙用プレスフェルト(プレスファブリックとも呼ばれる)に関する。更に詳しくは、新品の抄紙用プレスフェルトを抄紙機に掛け入れ、抄紙運転開始直後から、徐々に抄紙速度を上げて最高抄紙速度に到るまでに要する期間(初期馴染み期間と云う)が短縮でき、しかも抄紙機の運転を安定化でき、湿紙の搾水性が良い抄紙用プレスフェルト(以下、単に「フェルト」ということがある)に関する。
【背景技術】
【0002】
抄紙工程において、湿紙から搾水するために、従来から一般に抄紙機は、ワイヤーパートと、プレスパートと、ドライヤーパートとを備える。これらワイヤーパート、プレスパート、およびドライヤーパートは、この順で湿紙の搬送方向に沿って配置される。湿紙は、ワイヤーパート、プレスパートそれぞれに配置された抄紙用具に次々と受け渡されながら搬送されるとともに脱水、搾水され、最終的にはドライヤーパートで乾燥させられる。
【0003】
これらの各々のパートでは湿紙を脱水し(ワイヤーパート)、搾水し(プレスパート)、そして乾燥する(ドライヤーパート)といった各機能に対応した抄紙用具が使用されている。また、プレスパートは、湿紙の搬送方向に沿って直列に並設された1つ以上のプレス装置を具備することが一般的である。
【0004】
各プレス装置には、無端状(クローズドタイプ)のフェルトを配置し、あるいは有端状のフェルトを抄紙機上で連結し無端状に形成したフェルトを配置する。そして、プレス装置は、対向する一対のロール(すなわちロールプレス)、あるいは対向するロールとシュー(すなわちシュープレス)を有しており、該フェルトは湿紙を置載して湿紙の搬送方向に沿って移動しつつ、該フェルトと共にロールプレスあるいはシュープレスで加圧することにより、湿紙から水分を搾水してフェルトにその水分を連続的に吸収させるか、フェルト内を通過させて外部へ排出させている。
【0005】
ここで、図1を用いて抄紙機のプレスパートの一例を詳しく説明する。抄紙パートは、抄紙工程における前パートであるワイヤーパートと、その後段に位置するプレスパート、更にその後段に位置するドライヤーパートがこの順で湿紙の搬送方向に沿って設置される。このプレスパートは4つのプレス装置を有する標準的なトランスファーツインバー形式の抄紙機であって、トップロール1aとボトムロール1bとで形成される1番プレス装置(1P)と、2番ロールとセンターロール(CR)とで形成される2番プレス装置(2P)と、3番ロールとセンターロール(CR)とで形成される3番プレス装置(3P)と、トップロール4aとボトムロール4bとで形成される4番プレス装置(4P)がプレスパートの個々のプレス装置として、湿紙の搬送方向に沿って直列に並設形成されている。なお、プレス装置においては、トップロール(1aまたは4a)とボトムロール(1bまたは4b)のいずれか一方、あるいはロール3にシュープレス装置を形成した抄紙機もある。
【0006】
上記トランスファーツインバー形式の抄紙機は複数枚(図1では4枚)の抄紙用フェルトが使われる。通常は、湿紙をワイヤーパートから受取るピックアップフェルト(PUフェルト)と、1番プレス装置(1P)のトップロール側で使用されるピックアップフェルト、ボトムロール側で使用される1Pボトムフェルト、および3番プレス装置(3P)と4番プレス装置(4P)のそれぞれに3Pフェルトと4Pフェルトが使用される。2番プレス装置(2P)で使用されるフェルトは、ピックアップフェルトが兼ねる。
【0007】
前記フェルトは、図2または図3に示すように補強繊維基材5と表バット繊維層6、裏バット繊維層7により構成され、通常バット層は補強繊維基材の湿紙載置側およびプレスロール側の両面に配置されるが、湿紙載置側にのみ配置されるものもある。これら表バット繊維層6、裏バット繊維層7は、バットを構成する短繊維(ステープルファイバー)を補強繊維基材にニードルパンチングにより絡合一体化して構成されている。該フェルトは、湿紙から水を搾ること(搾水性)、湿紙の平滑性を高めること、及び湿紙を搬送する基本的な機能を果す。
【0008】
上記フェルトの機能のうち、特に湿紙から水を搾る搾水機能は重要視される。湿紙はフェルトと共にロールプレスまたはシュープレスによる加圧部位を通過することによりプレス圧搾され、湿紙の水分をフェルトに移行させた後、サクションボックスの吸引力またはスクイズプレスの圧力でフェルト外に排出するため、フェルト中には空間体積を適切に確保するための通水性と、圧縮性と回復性の持続が重要視される。
【0009】
前記フェルトの適切な空間体積とは、徐々に抄紙速度を上げて最高抄紙速度に至った時のフェルトの空間体積である。すなわち、新品フェルトを用い抄紙した直後から、抄紙機の運転速度を早く最高抄紙速度に到達させることは生産性の面から重要である。かかる最高抄紙速度到達までの期間(初期馴染み期間)は抄紙機の運転条件により変わるが、一般には1〜2日、最長では5日ほどである。特に、タンデムニプコフレックスプレスやオプティプレス抄紙機を代表とする、ノードロー・ストレートスルータイプのような湿紙搬送方式は運転速度が速いため、上記のフェルトの初期馴染み期間を短くすることが必要となっている。
【0010】
かかるフェルトの初期馴染み期間を短くするために、フェルトが仕上がったのち、後加工で加圧することによりフェルトの厚みを薄くし、密度を上げる方策がとられている。フェルトの加圧効果を増すために、熱媒によって加熱されたロールにフェルトを接する場合もある。高密度のフェルトの作用効果としては、フェルト中にできる空間体積を減らすことで、フェルトがプレス部で受ける加圧力を湿紙に伝えやすくすることができる。
【0011】
また、特許文献1には、フェルト表面側(湿紙置載側)をポリマー物質で処理したのち表面研摩し、フェルト表面の空間体積減少及び密度を上げたフェルト及びその製造方法が記載されている。かかる構造の抄紙用フェルトは、新品フェルトとして初めからコンパクト化(高密度化)されているため、抄紙機にフェルトを使用したときの、上述の初期馴染み期間の短縮化を図ったものである。
【0012】
しかし、特許文献1に記載される前記ポリマー物質はポリウレタン、ポリカーボネートウレタン、ポリアクリレート、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂またはそれらの混合物のポリマーを抄紙用フェルトに用いたものであって、該ポリマーの接着力・凝結力でフェルトをコンパクト化するものの、フェルト全体に剛性を与えてしまうものであった。フェルトの剛性が増大すると、抄紙機のプレス下での圧縮性と回復性とが抑制されるから、湿紙の搾水能力が損なわれ、また抄紙機に抄紙用フェルトを配置する際、抄紙機内の狭いロール間を手繰りでフェルトを入れる時に、フェルトの剛性によって掛け入れが困難になる問題があった。
【0013】
さらに、特許文献2が開示するプレスファブリック(フェルト)は、フェルト表面側をポリマー分散液でコート処理し、乾燥させることにより、バット繊維間をポリマーフィルム(膜)で被覆し連結し、またはバット繊維周囲を被覆する(ポリマー層の厚みは0.05mm〜1.5mmである)ことにより、前記ポリマー膜がバット繊維から離脱することをなくし、フェルト表面層の空間体積と密度を調整している。前記ポリマーとして、ポリウレタンエラストマー、ポリエーテル・ポリアミドエラストマー、エンジニアリングポリアミド(ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6,12等)が例示されている。フェルト重量に対する前記ポリマー配合量は、具体的数値としては開示されていない。
【0014】
このフェルトでは通気度が適度に調整され、またハイプレッシャーシャワーによるフェルト洗浄を可能にすると言った特徴を有している。しかし、フェルトの初期馴染み期間は短くなるものの、フェルトの空間体積を減らしフェルト全体の厚みを薄くしているため、フェルトが使用中に受ける繰り返しのプレス加圧により偏平となり、フェルトの使用可能な厚み限界に到達するのが早くなり、湿紙を十分に搾れる期間(フェルトライフ)が短くなる欠点がある。
【0015】
また、特許文献3には基体と、湿紙側バット繊維層と、裏面側バット繊維層とを有し、前記湿紙側バット繊維層は高分子弾性材料に包含され、前記裏面側バット繊維層は溶融繊維を含んでいる抄紙用フェルトを開示する。
【0016】
しかし、特許文献3に記載される高分子弾性材料はウレタンエマルション、酢酸ビニル系エマルション等の高分子材料のエマルションであるから、それらの混合物のポリマーを抄紙用フェルトに用いたものであって、該ポリマーの接着力・凝結力でフェルトをコンパクト化するものの、フェルト全体に剛性を与えてしまうものであった。フェルトの剛性が増大すると、抄紙機のプレス下での圧縮性と回復性とが抑制されるから、湿紙の搾水能力が損なわれ、また抄紙機に抄紙用フェルトを配置する際、抄紙機内の狭いロール間を手繰りでフェルトを入れる時に、フェルトの剛性によって掛け入れが困難になる問題があった。
【0017】
更に、特許文献3に記載されるフェルトでは、更に裏面側バット繊維層は溶融繊維を含んでいるから、裏面側バット繊維層を密度の高い柔軟な層に形成でき、フェルトの再湿抑制効果を発揮するが、抄紙用フェルトとしてその空間体積を適切に確保するとともに、通水性と圧縮性を長期に亘って持続でき、抄紙用プレスフェルトの初期馴染み期間を従来品より短縮できるフェルトには至らなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特表2005−524002号公報
【特許文献2】米国公開特許第2009/0163104号公報
【特許文献3】特開2009−127135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従来のフェルトが搾水する湿紙に加圧や水圧を伝える作用の乏しい空間体積を含んでいたのに対して、本発明ではフェルトの使用初期から初期馴染みに適切な空間量を確保でき、フェルトの馴染み期間を4日程度以内に短くすることができるフェルトを提供することを課題とする。また、フェルトの厚み変形抵抗を減らせればプレスロールなどで加圧されたときに加圧密度が上がり易くなるとともに、加圧後の回復性が高く、しかも汚れ蓄積や過度な偏平が進まず、通水性や圧縮性を長期に持続でき、更にまたフェルトの剛性が高くなく抄紙機への掛入性が良好なフェルトを提供することも課題とする。
【0020】
具体的には、本発明は、抄紙用プレスフェルトの中に適度な柔軟性を具備し、かつ圧縮性と回復性に優れた高分子弾性体と溶融繊維とを含ませることにより、フェルト中の空間体積を適切に確保するとともに、通水性と圧縮性を長期に亘って持続でき、抄紙用プレスフェルトの初期馴染み期間を従来品より短縮できる、フェルトライフが長く、搾水性に優れ、更に抄紙機への掛入性が良好な抄紙用プレスフェルトを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
請求項1の発明は、補強繊維基材と、該補強繊維基材の湿紙載置側に配置される表バット繊維層とプレスロール側に配置される裏バット繊維層とを備えた抄紙用プレスフェルトにおいて、前記表バット繊維層及び裏バット繊維層の少なくとも一方には、抄紙用プレスフェルトの重量に対して0.5〜30重量%の溶融繊維が含まれており、更に表バット繊維層には抄紙用プレスフェルトの重量に対して0.5〜20重量%の高分子弾性体が分散付着され、前記高分子弾性体は、前記高分子弾性体をフィルム状にした時のフィルム物性が、室温20℃、相対湿度65%の環境下で測定された100%モジュラス値が1〜100kg/cm、100%伸長後残留歪が30%以下であることを特徴とする、抄紙用プレスフェルトを提供するものである。
【0022】
請求項2の発明は、前記溶融繊維が、絶対粘度が80mPa・s以上である高分子量ポリアミドからなる芯成分と、該芯成分よりも低融点のポリアミドからなる鞘成分、とから構成される芯鞘型複合繊維であることを特徴とする、請求項1に記載の抄紙用プレスフェルトを提供するものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の抄紙用プレスフェルトは、フェルトの使用初期から初期馴染みに適切な空間量を確保でき、フェルトの馴染み期間を短くすることができる。また、フェルトの厚み変形抵抗を減らせればプレスロールなどで加圧されたときに加圧密度が上がり易くなるとともに、加圧後の回復性が高く、しかも汚れ蓄積や過度な偏平が進まず、通水性や圧縮性を長期に持続でき、更にまた抄紙機への掛入性が良好なフェルトを提供できる。このようなフェルトによって、フェルトの搾水性が持続できるなど、フェルトの基本的機能をバランス良く具備した抄紙用プレスフェルトである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は抄紙機のプレスパートの一例を示す概略図である。
【図2】図2は抄紙用プレスフェルトにおいて高分子弾性体が表バット繊維層中に留まって存在し、かつ表バット繊維層中または裏バット繊維層中の少なくとも一方に溶融繊維が配置している状態を示す図である。
【図3】図3は抄紙用プレスフェルトにおいて高分子弾性体が表バット繊維層から裏バット繊維層まで達して存在し、かつ表バット繊維層中または裏バット繊維層中の少なくとも一方に溶融繊維が配置している状態を示した図である。
【図4】図4は引張り試験の概略図である。
【図5】図5はプレステスターの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
本発明は、図1に示すプレスパートで使用するプレスフェルトである。
図2および図3に例示した本発明の抄紙用プレスフェルトは、補強繊維基材5、該補強繊維基材の湿紙載置側(表側)に配置された表バット繊維層6、および該補強繊維基材のプレスロール側(裏側)に配置された裏バット繊維層7を備え、図2は高分子弾性体8が表バット繊維層6中に留まった状態を、図3は高分子弾性体8が表バット繊維層6から裏バット繊維層7まで達した状態を、それぞれ示す。そして、それぞれ表バット繊維層6と裏バット繊維層7の少なくとも一方には、溶融繊維が配置している状態を示す。
【0026】
前記補強繊維基材5は、経糸と緯糸とを織機等により製織した織物が一般的であるが、製織せずに、経糸列と緯糸列の重ね合わせによる格子状素材を使用することもできる。
【0027】
経糸および緯糸からなる補強繊維基材とバットの素材としては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、エンジニアリングポリアミド(ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド612等)、芳香族ポリアミド(アラミド)、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、綿、ウール、金属等を使用することができる。
【0028】
高分子弾性体の素材としては、天然ゴム、イソプレンゴム、1,4−ブタジエンゴム、1,2−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ブタジエン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンエラストマー、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素系ゴム、ポリウレタンエラストマー、ポリエチレンに前記ゴムまたはエチレン−酢酸ビニル共重合体を配合したポリオレフィンエラストマーポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマーや、スチレン−ブタジエン−スチレン−共重合体エラストマー、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体エラストマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体エラストマーもしくはこれらの水添物より選ばれたポリスチレンエラストマーおよび可塑化塩化ビニル樹脂から選択された1種または2種以上を使用することができる。
【0029】
前記高分子弾性体は、発泡体であっても部分架橋体であってもよい。また、無機充填剤や耐熱安定剤を含有していてもよい。発泡剤としては炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウムなどが、無機充填剤としては、酸化チタン、カオリン、クレー、タルク、珪藻土、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、溶融シリカ、マイカなどを利用できる。
【0030】
図4は引張り試験機における測定部であり、高分子弾性体フィルムの100%モジュラス値および100%伸張後残留歪の測定に使用される。100%モジュラス値測定はJIS K6251−2004年、また100%伸張後残留歪を測定はJIS K6262−1997年を参考とし、以下の条件で測定する。
【0031】
高分子弾性体試験片41は、両試験項目とも巾10mm、長さ120mm(つかみ代片側40mmを含む)、つかみ具間の距離40mm、厚さ0.5mmサイズのフィルムである。試験は室温20℃、相対湿度65%の環境下で行う。
【0032】
試験片41をつかみ具42に取り付け、引張り速度200mm/分で伸び率110%まで引張り、伸び率が100%のときの応力(kg/cm)を読み取って100%モジュラス値とする。
【0033】
また、伸び率100%まで引張り、伸び率が100%に到達したのち瞬時に同速度で伸びを戻していき、応力が0kg/cmとなった時の伸び率(%)を読み取って100%伸張後残留歪とする。
【0034】
前記高分子弾性体フィルムの100%モジュラスは、フェルトの圧縮性、回復性、及び搾水性の観点から1〜100kg/cm、好ましくは1〜70kg/cm以下である。また、100%伸長後残留歪がフェルトの圧縮性、回復性、及び搾水性の観点から30%以下、好ましくは20%以下である。
【0035】
前記高分子弾性体は、バットを構成する短繊維(一般的短繊維と溶融繊維の短繊維)に5μm〜2mmの厚さの小片で分散して付着する。あるいは、高分子弾性体は前記短繊維が中心となって芯となり、高分子弾性体がその短繊維の周囲を鞘状に1〜40μmの厚さでコーティングされた状態を呈示する。高分子弾性体がバット繊維に小片状および/または芯鞘状に付着すると、フェルトの圧縮性、回復性及び搾水性が優れ、しかもフェルトの使用期間中、長期に渡ってこれらの特性が維持される付加的効果が生じる。
【0036】
高分子弾性体の好ましい付着量は、抄紙用プレスフェルト重量に対して0.5〜20重量%であるが、フェルト重量に対して0.5重量%より少ないと、初期馴染みに適切な空間量が確保できず、馴染み期間が長くなりまた、フェルトの通水性や圧縮性を長期に持続できないことがある。また、フェルト重量に対して20重量%より多いと、フェルトの剛性が高くなり過ぎて厚み変形抵抗を減らすことができなくなり、プレスロールなどで加圧されたときに加圧密度が上がり難く、また、加圧後の回復性が低くなってしまうことがある。
【0037】
これら高分子弾性体を抄紙用プレスフェルト内に含有させる位置は、特に限定されないが、好ましくは補強繊維基材から湿紙載置側バット層(表バット層)の間であればよい。具体的には、湿紙載置側バット層のみ、湿紙載置側バット層からプレスロール側バット層(裏バット層)まで、湿紙載置側バット層から補強繊維基材まで、プレスロール側バット層から基材補強繊維基材までの組み合わせがある。
【0038】
溶融繊維の素材としては、単一成分からなる全溶融型の繊維、或いは2成分またはそれ以上の成分からなる非全溶融型の複合繊維(コンジュゲート繊維)を使用することができる。複合繊維では、並列型または芯鞘型が好ましく使用することができる。具体的には、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、共重合ポリアミドなどを成分とする繊維が好ましい。本発明では特に2成分からなる複合繊維で、芯成分がポリアミドであり鞘成分が共重合ポリアミドである、芯鞘型複合繊維が特に好ましく使用できる。
【0039】
芯鞘型複合繊維の芯成分に用いられるポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド610、ポリアミド612等であることが好ましい。詳しくはεカプロラクタムの重合(ポリアミド6)や、ヘキサメチレンジアミン・アジピン酸塩の重縮合(ポリアミド66)、1,4−ジアミノブタン・アジピン酸塩の重縮合(ポリアミド46)、ヘキサメチレンジアミン・セバシン酸塩の重縮合(ポリアミド610)、ヘキサメチレンジアミン・ドデカン二酸塩の重縮合(ポリアミド612)等の重縮合により得られたポリアミドが好ましく、しかもDSC(示差走査熱分析計)による融点が200℃以上である脂肪族ポリアミドを挙げることができる。
【0040】
芯鞘型複合繊維の鞘成分に用いられるポリアミドとしては、芯成分よりも低融点のポリアミドが用いられる。鞘成分に好ましく用いられるポリアミドとしては、ポリアミド6/12、ポリアミド6/610、ポリアミド66/6、ポリアミド66/12、ポリアミド66/610等の二元共重合ポリアミド、ポリアミド6/66/12、ポリアミド6/66/610等の三元共重合ポリアミドを挙げることができる。なお、これらの共重合ポリアミドは組成(共重合成分の重量%)により融点が変動することは良く知られる処であるが、本発明で使用できる共重合ポリアミドは、その融点が180℃以下のものが特に好ましく使用できる。
【0041】
更に前記芯鞘型複合繊維は、絶対粘度が80mPa・s以上である高分子量ポリアミドからなる芯成分と、該芯成分よりも低融点のポリアミドからなる鞘成分、とから構成される芯鞘型複合繊維であることが好ましい。
【0042】
ここで、絶対粘度が80mPa・s以上とは、ポリアミドを0.5g/95%硫酸100mlで溶解し、25℃の温度で測定した絶対粘度であって、振動式粘度計で測定することができる。
【0043】
前記溶融繊維は、表バット繊維層及び裏バット繊維層を構成する一般的短繊維(ステープルファイバー)に前記溶融繊維の短繊維(ステープルファイバー)を混綿してバット原料としたものを、補強繊維基材にニードルパンチングにより絡合一体化してフェルトを構成後、熱処理することで前記溶融繊維の一部を溶融し、バット層の内部で一般的短繊維と融着される繊維体である。ここで、一般的短繊維とは抄紙用フェルトのバット層の素材として通常使用される、ポリアミド6やポリアミド66、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、エンジニアリングポリアミド(ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド612等)、芳香族ポリアミド(アラミド)、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、綿、ウール等を云う。
【0044】
溶融繊維の好ましい使用量は、抄紙用プレスフェルト重量に対して0.5〜30重量%であるが、フェルト重量に対して0.5重量%より少ないと、フェルト内部の一般的短繊維と溶融繊維の溶着形成が少ないため、フェルト中の空間体積を適切に確保できず、通水性と圧縮性を長期に亘って持続できなくなり、フェルトの耐久性が劣ることになる。また、溶融繊維の使用量が、フェルト重量に対して30重量%より多いと、フェルトの剛性が高くなり厚み変形抵抗を減らすことができなくなり、プレスロールなどで加圧されたときに加圧密度が上がり難く、また、加圧後の回復性が低くなってしまうことがある。
【0045】
溶融繊維を抄紙用プレスフェルト内に配置させる位置は、表バット繊維層6と裏バット繊維層7の少なくとも一方に溶融繊維が配置していれば良い。つまり、溶融繊維がバット層内で高分子弾性体と共存しても良い。本発明では、フェルトの使用初期から初期馴染みに適切な空間量を確保でき、フェルトの馴染み期間を4日程度以内に短くすることができるフェルトを提供するために、バット繊維層内に溶融繊維の配合量と高分子弾性体の付着量とを上手く組み合わせ調整することで、フェルトの厚み変形抵抗を減らし、プレスロールまたはシュープレスで加圧されたときに加圧密度が上がり易くなるとともに、加圧後の回復性が高く、しかも汚れ蓄積や過度な偏平が進まず、通水性や圧縮性を長期に持続できるフェルトができる。
【0046】
バット繊維を構成する短繊維(一般的短繊維と溶融繊維の短繊維)に高分子弾性体を付着させる方法は、高分子弾性体の溶媒分散液をフェルト表面に塗布、スプレー散布、またはブレードコートなどの手段で塗布・含浸させ、ついで熱処理、乾燥させて付着させる。このとき、同時に前記溶融繊維の一部が溶融し、バット繊維層の内部で一般的短繊維、溶融繊維、高分子弾性体がそれぞれ融着される。
【0047】
本発明の抄紙用プレスフェルトは、このフェルトが搾水する湿紙に加圧や水圧を伝える作用を得られる程度に空間体積(空気透過度が2〜50cc/cm秒、125Pa)を含んでいれば良い。すなわち、フェルトの空間体積は、初期馴染み期間から運転速度が安定した、最高抄紙速度領域に移行してから使用末期に至るまで、一定の空間体積が維持されればよい。
【0048】
本発明の抄紙用プレスフェルトの好ましいフェルト硬さ(剛性)は、プレスロール等による加圧時に容易に変形し、フェルト密度を最大限に上げる程度である。そのためには、フェルト中に含有される高分子弾性体は前記100%モジュラス、100%伸長後残留歪で示す柔軟性を有する。
【実施例】
【0049】
以下、実施例および比較例により本発明を説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
実施例1〜8および比較例1〜3
本実施例および比較例において使用したフェルトの基本構成は次のとおりである。
補強繊維基材(ポリアミドモノフィラメントの撚糸、平織):坪量750g/m
バット層:17dtexのポリアミド6ステープルファイバーと溶融繊維とを、表1に記載した配合量で配合した混綿繊維を使用した。
溶融繊維:芯材料として高分子量ポリアミド6(25℃での絶対粘度85mPa・s、融点220℃)と鞘材料として共重合ポリアミド6/12(融点140℃)を使用し、芯部と鞘部の容積比率が1:1である芯鞘型複合繊維
補強繊維基材の湿紙載置側(表バット層):坪量500g/m
補強繊維基材のプレスロール側(裏バット層):坪量250g/m
補強繊維基材に裏バット繊維と表バット繊維とを積層し、ニードリングにより絡合一体化してフェルトを形成した後、高分子弾性体をフェルトの表側からスプレー塗布し、105℃で乾燥したのち、140℃の熱風を当て同時に熱プレスして熱処理した。
高分子弾性体は、表1に示す樹脂および条件で適用した。
【0051】
【表1】

【0052】
実施例1〜8、比較例1〜3で得たフェルトを図5に示すプレステスターで走行テスト(条件:1000m/分、加圧100KN/m、100時間)を実施し、フェルトの搾水性、弾性持続性を評価した。
【0053】
図5に示すプレステスターを用い、試料のフェルト10は一対のプレスロールPR,PRでプレス(圧搾)を受けながら、ガイドロールGRの周囲を周回する。このプレステスターでは、フェルト10のプレス前厚み、およびプレス下厚みと、プレス後の厚みとを、それぞれSE0、およびSE1、SE2の厚みセンサーにより計測することができる。また、一対のプレスロールPR,PRの入口で湿紙サンプルを投入し、プレス出口で湿紙を回収して、それらの水分を測定することができる。フェルトは水分付与シャワーによって、水分調整された状態でテストを実施した。
【0054】
湿紙の搾水試験は下記のプレステスターの条件、計算式の下に行った。
搾水試験条件:加圧100KN/m、抄速1000m/分
プレス前湿紙含水率;70%
プレス前湿紙含水率=(プレス前湿紙重量−乾燥紙重量)÷プレス前湿紙重量×100
プレス後湿紙含水率=(プレス後湿紙重量−乾燥紙重量)÷プレス後湿紙重量×100
プレス後湿紙含水率が低いほど搾水性の良いフェルトである。製紙業界においては、プレス後湿紙含水率の差が1%であっても、プレス後の紙の乾燥工程における熱エネルギー量に多大な影響を及ぼすことが分かっている。
【0055】
フェルトの圧縮試験は下記のプレステスターの条件、計算式の下に行った。
プレステスターにおいて、
プレス前厚み:T0
プレス下厚み:T1(100KN/m)
プレス後厚み:T2
プレス時圧縮率=(T0−T1)÷T0×100
プレス前後厚み保持率=T2÷T0×100
【0056】
これらの実験結果を表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
表2は、プレス後湿紙含水率の値が小さいほど搾水性に優れることを示し、プレス時圧縮率(フェルトの圧縮性に相当)、プレス前後厚みの保持率(フェルトの圧縮後の回復性に相当)の値が大きいほど弾性持続性が優れることを示す。
実施例1〜8においては、含有する高分子弾性体により湿紙の搾水性、フェルトの圧縮性と回復性及びその持続性が向上していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の抄紙用プレスフェルトは、抄紙機の安定生産が可能な最高速度到達までの、初期馴染み期間を含めた使用通期での湿紙の搾水性を向上することができ、比較例3のようなモジュラスの高い樹脂を用いたフェルトに比べて抄紙機へ掛入れ性が良好な抄紙用プレスフェルトを得ることができる。また、高分子弾性体と溶融繊維とがバット繊維と溶着しあうことにより、バット繊維が脱落しにくく、耐脱毛性に優れた抄紙用プレスフェルトを得ることができる。
【符号の説明】
【0060】
1P〜4P … 1番プレス装置〜4番プレス装置
1a、4a … トップロール
1b、4b … ボトムロール
CR … センターロール
2、3 … ロール
5 … 補強繊維基材
5a … 経糸(MD糸)
5b … 緯糸(CMD糸)
6 … 表バット繊維層
7 … 裏バット繊維層
8 … 高分子弾性体含有層
10 … フェルト
41 … 試験片
42 … つかみ具
GR … ガイドロール
PR … プレスロール
SE0 … 厚みセンサー
SE1 … 厚みセンサー
SE2 … 厚みセンサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強繊維基材と、該補強繊維基材の湿紙載置側に配置される表バット繊維層とプレスロール側に配置される裏バット繊維層とを備えた抄紙用プレスフェルトにおいて、前記表バット繊維層及び裏バット繊維層の少なくとも一方には、抄紙用プレスフェルトの重量に対して0.5〜30重量%の溶融繊維が含まれており、更に表バット繊維層には抄紙用プレスフェルトの重量に対して0.5〜20重量%の高分子弾性体が分散付着され、前記高分子弾性体は、前記高分子弾性体をフィルム状にした時のフィルム物性が、室温20℃、相対湿度65%の環境下で測定された100%モジュラス値が1〜100kg/cm、100%伸長後残留歪が30%以下であることを特徴とする、抄紙用プレスフェルト。
【請求項2】
前記溶融繊維が、絶対粘度が80mPa・s以上である高分子量ポリアミドからなる芯成分と、該芯成分よりも低融点のポリアミドからなる鞘成分、とから構成される芯鞘型複合繊維であることを特徴とする、請求項1に記載の抄紙用プレスフェルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−154014(P2012−154014A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24366(P2011−24366)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000180597)イチカワ株式会社 (99)
【Fターム(参考)】