説明

把手取り付け構造

【課題】本発明は、従来の把手取り付け構造を改良することにより、高度の熟練を要することなく把手をドア等の開閉体に容易に取り付けることが可能で、しかも、長期にわたって把手がガタ付くのを防止する。
【解決手段】一方の把手2の把手取り付け部22と、引付ピース51とが、開閉体4を挟んで引付ねじ51で共締めされてドア4に固定され、他方の把手3の把手取り付け部33に設けられた中空部32aが、前記引付ピースに螺合された内側芯金52の外周に嵌合され、前記中空部に設けられた貫通孔に挿通された固定ねじ56が、前記内側芯金に締結固定されている。前記内側芯金は引付ピースに対して所定角度だけ回転できるように、引付ピースの軸方向の長さは、前記内側芯金の長さよりも大きく設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に用いるドア等の開閉体の把手取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物などのドアの内外両側には、ドアを開閉するための室内外用把手がそれぞれ設けられ、これら室内外用把手の把手取り付け部が同一軸線上に配置されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ドア100の内外両面に把手を取り付ける場合には、図13(a)に示すように、室外用把手102の把手取り付け部104と、内側芯金106とはドア100を挟んでボルト107で共締めされてドア100に固定されている。
【0004】
図13(b)に示すように、室内用把手103の把手取り付け部105には、その先端部に中空部111が設けられており、この中空部111が前記内側芯金106の外周に嵌合される。中空部111の周壁には、一対の貫通孔112が水平方向に形成されている。そして、各貫通孔112を貫通した固定ねじ113を、内側芯金106の周壁に形成された雌ねじ114に締結することにより、室内用把手103は内側芯金106を介してドア100に固定されている。
【特許文献1】特開2004−197416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の把手取り付け構造において、室内用把手103を内側芯金106に固定する際には、室内用把手103の中空部11の貫通孔112と、内側芯金106の雌ねじ114とが互いに正確に一致していなければならない。具体的には、内側芯金106の雌ねじ114が、中空部111の貫通孔112に対応するように水平方向を向いていないと、室内用把手103を内側芯金106に外嵌した際に、室内用把手103の貫通孔112と、内側芯金106の雌ねじ114とが合致せず、固定ねじ113を締結することができない。
【0006】
また、ボルト107を締結するときに、内側芯金106も一緒に回転してしまうため、内側芯金106の雌ねじ114が水平方向を向くように、一旦締結したボルト107を少し緩めた後に、内側芯金106を所定の回転角度に戻していた。この結果、室内外用把手102、103を長期間使用していると、把手102、103がガタ付くといった問題があった。
【0007】
本発明は、従来の把手取り付け構造を改良することにより、高度の熟練を要することなく把手をドア等の開閉体に容易に取り付けることが可能で、しかも、長期にわたって把手がガタ付くのを防止することを第1の課題とする。
【0008】
また、本発明は、引付ねじが専用のものでなく市販品であっても使用することができるようにすることを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、ドア等の開閉体の両側に一対の把手の把手取り付け部を配置し、一方の把手の把手取り付け部と、固定部材とが、開閉体を挟んで引付ねじで共締めされてドアに固定され、他方の把手の把手取り付け部に設けられた中空部が、前記固定部材の外周に嵌合され、前記中空部の周壁には貫通孔が設けられ、該貫通孔に挿通された固定ねじが、前記固定部材に締結固定されている把手取り付け構造において、前記固定部材は、前記引付ねじが挿通され且つ引付ねじによりドア側に押圧される引付ピースと、該引付ピースの外周に螺合される内側芯金とからなり、内側芯金には、前記固定ねじが螺合される雌ねじが設けられ、前記引付ねじの締結時に、前記内側芯金は引付ピースに対して所定角度だけ回転できるように、引付ピースの軸方向の長さは、前記内側芯金の長さよりも大きく設定されていることにある。
【0010】
本発明の前記引付ピースは、筒状体からなるとともに、引付ねじに螺合されている。
【0011】
本発明の前記引付ピースは、筒状体からなるとともに、引付ねじに差し込まれ、前記引付ピースと引付ねじとは接着剤で固定されている。
【0012】
本発明の前記引付ピースは、筒状体からなるとともに、引付ねじに差し込まれ、前記引付ピースと引付ねじとは溶接により固定されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、高度の熟練を要することなく把手を容易に取り付けることが可能で、しかも、長期にわたって把手がガタ付くのを防止することことができる。
【0014】
また、本発明は、固定部材を引付ピースと内側芯金との別部材から構成しているので、所定種類の引付ピースを準備しておくことにより、引付ねじが専用のものでなく市販品であっても使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1〜図10は本発明の一実施の形態にかかるドア用把手1を示す。かかる把手1は、図3に示すように、開閉体としてのドア4の内外面にそれぞれ取り付けられる一方の把手としての室外用把手2と、他方の把手としての室内用把手3とから構成されている。
【0017】
室外用把手2および室内用把手3は、金属、ガラス、木材等からなる棒状体の握り部21、31と、この握り部21、31の両端部に一体的に設けられた一対の把手取り付け部22、32とから構成されている。なお、本実施の形態は、室外用把手2および室内用把手3を上下方向に取り付ける場合について説明するが、その取り付け方向は特に限定されるものではない。
【0018】
ドア4は、建物等に使用される木製ドア、ガラス製ドア、アルミ枠ドア等である。
【0019】
前記室外用把手2および室内用把手3は、図1および図2に示す引付手段5により、ドア4の内外面にそれぞれ取り付けられている。図1において、ドア4の左側が室内で、ドア4の右側が室外を示す。引付手段5は、引付ねじとしての頭部付き引付ねじ50と、引付ピース51と、内側芯金52と、皿ばね53と、ワッシャ54とから構成されている。なお、引付ピース51および内側芯金52により固定部材が構成されている。
【0020】
内側芯金52は、図2および図10に示すように、その中心に雌ねじ52aが軸方向に貫通して設けられている。また、内側芯金52の周壁には、雌ねじ52aに貫通するように中心に向けて複数個(例えば2個)の雌ねじ52bが形成されている。そして、内側芯金52外周に、室内用把手3の把手取り付け部32に設けられた中空部32aが嵌合される。この中空部32aの周壁には、雌ねじ52bに対応する一対の貫通孔33が半径方向で且つ水平に設けられている。なお、貫通孔33の設ける位置および個数は、前記雌ねじ52bに対応して適宜決定される。
【0021】
頭部付き引付ねじ50は、頭部50aと前記ドア4に貫通された取付孔4aに挿通されるねじ部50bとを備えている。なお、頭部付き引付ねじ50は、市販の適宜長さを有する規格品のものが使用される。ねじ部50bの先端部は、前記室外用把手2の把手取り付け部22の端面に形成された雌ねじ25に螺合される。また、ねじ部50bの基部(頭部50aの近傍)には、頭部50aよりも小径で且つねじ部50bよりも大径の引付ピース51が設けられている。
【0022】
この引付ピース51は筒状を呈しており、中心に前記ねじ部50bに螺合する雌ねじ57が形成されるとともに、外周に内側芯金52の雌ねじ52aが螺合するねじ58が形成されている。引付ピース51の軸方向の長さ(頭部50aの端面から引付ピース51の端面51aまでの長さ)L1は、内側芯金52の長さL2よりも若干大きく(L1>L2)なるように設定されている(図2および図7参照)。
【0023】
例えば、引付ピース51の長さL1と内側芯金52の長さL2の差L3が略0.5mmに設定するのが好ましい。しかも、この略0.5mmのスペースで内側芯金52が引付ピース51に対して約180度回転できるように、それぞれのねじピッチが設定されている。
【0024】
また、頭部付き引付ねじ50の締結時に、引付ピース51の端面51aが、ねじ部50bに挿通された皿ばね53およびワッシャ54をドア4に押圧するようになっている。
【0025】
次に、上記構造における一対の把手22、23をドア21の両面に取り付ける場合について説明する。
【0026】
先ず、頭部付き引付ねじ50のねじ部50bに、長エア引付ピース51を頭部50aに当接するまで予めねじ込んでおく(図8(a)参照)。このように、頭部付き引付ねじ50と引付ピース51とをそれぞれ別部材から構成することにより、引付ピース51は所定長さのものを準備しておいて、頭部付き引付ねじ50は、ドア4の厚さ等に応じて任意の規格品を使用することができ、部品のコストおよび在庫の削減を図ることができる。
【0027】
さらに、頭部付き引付ねじ50のねじ部50bにねじ込まれた引付ピース51に、内側芯金52を螺合するとともに、ねじ部50bに、皿ばね53およびワッシャ54を順次挿通する(図8(b)参照)。
【0028】
次に、内側芯金52、皿ばね53およびワッシャ54が一体となった頭部付き引付ねじ50のねじ部50bを、ドア4の挿通孔4aに挿通し、ねじ部50bの先端部を室外用把手2の把手取り付け部22の雌ねじ部25に螺合する(図4参照)。このとき、頭部付き引付ねじ50を締結すると、引付ピース51の端面51aが皿ばね53の押圧力を受けることとなり、室外用把手2をドア4にガタ付くことなく取り付けることができる。
【0029】
このように、頭部付き引付ねじ50を締結した状態であっても、引付ピース51の軸方向の長さL1は、内側芯金52の長さL2よりも若干大きくなるように設定されていることから、引付ピース51に螺合された内側芯金52は、頭部付き引付ねじ50の頭部50aと皿ばね53との間で押圧されることはなく、所定の角度だけ回転可能になっている。この結果、内側芯金52を所定角度回転させることにより、内側芯金52の雌ねじ52b位置が水平となるように調整する。
【0030】
さらに、室内用把手3の把手取り付け部32の中空部32aを、内側芯金52に外嵌する。室内用把手3の把手取り付け部32の貫通孔33と、前記のように内側芯金52の雌ねじと52bとが一致しているため、固定ねじ56を、室内用把手3の把手取り付け部32の貫通孔33に挿通し、内側芯金52の雌ねじ52bに締結して室内用把手3をドア4に迅速に取り付けることができる。
【0031】
また、内側芯金52は、頭部付き引付ねじ50によりドア4側に押圧され回転が規制されている引付ピース51に螺合しているため、内側芯金52は回転しない限り、頭部付き引付ねじ50の軸方向に移動することはなく、室内外用把手2、3を長期間使用しても把手2、3が緩んでガタ付くのを防止できる。また、本実施の形態の把手22、23は、高度の熟練を要することなく容易に把手を取り付けることが可能で、修理、取替え等のメンテナンス等においても有利である。
【0032】
本発明は、前記の実施の形態に限定されるものではない。例えば、図11(a)および(b)に示すように、引付ピース51は、中心に雌ねじ(内側ねじ部)をも設けることなく、通常の孔59を加工をしたものであってもよい。この引付ピース51の孔59にねじ部50bを差し込んで、引付ピース51と頭部付き引付ねじ50とを接着剤60で接着して固定する。
【0033】
また、図12(a)および(b)に示すように、引付ピース51の孔59にねじ部50bを差し込んで、引付ピース51と頭部付き引付ねじ50とを溶接61で固定する。かかる場合には、溶接61が引付ピース51とワッシャ54との接触の支障とならないように、引付ピース51側に溶接用面取りを加工するのが好ましい。
【0034】
引付ピース51は、長さや直径等が相違する複数種類のものを予め製造しておいて、各種類の引付ピース51に対して、任意の長さの頭部付き引付ねじ50を使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態を示すドアの両面に把手を取り付けた状態の一部断面を含む平面図である。
【図2】図1の要部を示す断面平面図である。
【図3】本発明の一実施形態を示すドアの両面に把手を取り付けた状態を示す正面図である。
【図4】同ドアに室外用把手を取り付けた状態の一部断面を含む平面図である。
【図5】同室内用把手を引付手段に取り付ける直前の斜視図である。
【図6】同室内用把手を引付手段に取り付けた状態の斜視図である。
【図7】同引付手段の一部断面を含む分解図である。
【図8】(a)は頭部付き引付ねじに引付ピースを取り付けた状態を示す正面図、(b)は頭部付き引付ねじに引付ピース、皿ばねおよびワッシャを取り付けた状態を示す断面正面図である。
【図9】本発明の一実施形態の引付ピースを示し、(a)は側面図、(b)は断面正面図である。
【図10】内側芯金を示し、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図11】本発明の他の実施形態を示し、(a)は頭部付き引付ねじに引付ピースを取り付けた状態を示す正面図、(b)は同断面正面図である。
【図12】本発明の更に他の実施形態を示し、(a)は頭部付き引付ねじに引付ピースを取り付けた状態を示す正面図、(b)は同断面正面図である。
【図13】従来例を示し、(a)はドアに室外用把手を取り付けた状態の一部断面を含む平面図、(b)はドアの両面に把手を取り付けた状態の一部断面を含む平面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 把手
2 一方の把手
3 他方の把手
4 ドア(開閉体)
22 把手取り付け部
23 把手取り付け部
50 頭部付き引付ねじ(引付ねじ)
51 引付ピース
52 内側芯金
32a 中空部
33 貫通孔
52a雌ねじ
52b雌ねじ
53 皿ばね
54 ワッシャ
56 固定ねじ
58 ねじ
60 接着剤
61 溶接

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア等の開閉体の両側に一対の把手の把手取り付け部を配置し、一方の把手の把手取り付け部と、固定部材とが、開閉体を挟んで引付ねじで共締めされてドアに固定され、他方の把手の把手取り付け部に設けられた中空部が、前記固定部材の外周に嵌合され、前記中空部の周壁には貫通孔が設けられ、該貫通孔に挿通された固定ねじが、前記固定部材に締結固定されている把手取り付け構造において、
前記固定部材は、前記引付ねじが挿通され且つ引付ねじによりドア側に押圧される引付ピースと、該引付ピースの外周に螺合される内側芯金とからなり、内側芯金には、前記固定ねじが螺合される雌ねじが設けられ、前記引付ねじの締結時に、前記内側芯金は引付ピースに対して所定角度だけ回転できるように、引付ピースの軸方向の長さは、前記内側芯金の長さよりも大きく設定されていることを特徴とする把手取り付け構造。
【請求項2】
前記引付ピースは、筒状体からなるとともに、引付ねじに螺合されている請求項1に記載の把手取り付け構造。
【請求項3】
前記引付ピースは、筒状体からなるとともに、引付ねじに差し込まれ、前記引付ピースと引付ねじとは接着剤で固定されている請求項1に記載の把手取り付け構造。
【請求項4】
前記引付ピースは、筒状体からなるとともに、引付ねじに差し込まれ、前記引付ピースと引付ねじとは溶接により固定されている請求項1に記載の把手取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−261104(P2008−261104A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−102778(P2007−102778)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(595143056)ホクデン工業株式会社 (20)