説明

把手

【課題】低コストで製造することができ、支持具にロゴ等の記号を美しく表示することができ、支持具の天地、左右に気を付けなくても容易に組み付けることが可能な把手の提供を課題とする。
【解決手段】操作対象の本体S2に対して外方へ延出して取り付けられる一対の支持具10,20の間に棒状の握り部材30の両端部30a,30bが嵌合されて形成される把手について、支持具10,20のそれぞれに、本体S2から延出する方向D1に対する外周面であって握り部材30の長手方向D2に対して側面となる二面10c,10d,20c,20dのうちの一面10c,20dにのみ記号12,22を表示し、かつ、握り部材30を隔てて対向する支持具20,10と同じ形状とし、支持具10,20の延出方向D1と平行であって握り部材30の中央部CE1を通る仮想軸AX1を中心として記号12,22を含めて2回回転対称となるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作対象の本体に取り付けられる一対の支持具の間に棒状の握り部材の両端部が嵌合されて形成される把手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されるように、折れ戸に一対の支持具を左右に取り付け、長手方向を左右に向けた把手を支持具間に設置するとともにその両端部を支持具の凹部に嵌合してなる取っ手が知られている。同取っ手の支持具の対向側部には凹部が設けられるとともに該凹部の中心部に位置して軸部が設けられ、この軸部表面には突起が設けられるとともに軸部の裏側に位置してビス孔が設けられている。一方、把手両端部の端面には穴部が設けられ、把手両端部の裏側部に前記穴部に連通する透孔が設けられている。把手の両端部を支持具の凹部に嵌合し、前記軸部を前記穴部に圧入し、さらに把手の前記透孔より軸部のビス孔に固定ビスを螺入することにより、折れ戸の取っ手が形成される。
【0003】
また、特許文献2には、握り部と前記握り部の両端に設けられた支柱部とを有し、前記握り部と前記支柱部とが中空縦長部材の両端を折り曲げて一体に形成されている金属製取手が記載されている。
【特許文献1】実開昭61−161362号公報
【特許文献2】特開2005−336708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術は支持具にロゴ(ロゴタイプ)等の記号を表示するものではなく、支持具に記号を刻印等により表示する際に美しく表示する技術が無かった。
また、特許文献1に記載の支持具に記号を表示すると、左右の支持具が別部品になり、取っ手の製造コストが高くなってしまう。さらに、支持具を天地逆、左右逆に取り付けてしまうという不具合が生じることがあるので、支持具の取付に際しては天地左右の向きに気を付けなければならない。
特許文献2に記載の金属製取手では、握り部の長さを変える際に取手全体を変更する必要があるため、製造コストが高くなってしまう。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、低コストで製造することができ、支持具にロゴ等の記号を美しく表示することができ、支持具の天地、左右に気を付けなくても容易に組み付けることが可能な把手の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、操作対象の本体に対して外方へ延出して取り付けられる一対の支持具の間に棒状の握り部材の両端部が嵌合されて形成される把手であって、前記支持具のそれぞれは、前記本体から延出する方向に対する外周面であって前記握り部材の長手方向に対して側面となる二面のうちの一面にのみ記号が表示され、かつ、前記握り部材を隔てて対向する支持具と同じ形状とされ、前記支持具の延出方向と平行であって前記握り部材の中央部を通る仮想軸を中心として前記記号を含めて2回回転対称となるようにされたことを特徴とする。
なお、本明細書において、2回回転対称とは、一つの立体図形を一定軸のまわりに180°回転移動させて初めて同じ立体図形になる性質をいうものとする。
【0007】
本把手は、一対の支持具と握り部材とが別部材とされているので、支持具間の間隔を変える際に握り部材を変えるだけでよく、把手全体を変更する必要が無い。また、両支持具は、同じ形状とされているので、同じ部材で済む。従って、把手を低コストで製造することができる。
さらに、本把手は支持具の延出方向と平行であって握り部材の中央部を通る仮想軸を中心として記号を含めて2回回転対称とされているので、把手の片面には一方の支持具の記号のみが表示される。これにより、把手の片面に記号が両方の支持具に表示されるといった煩雑さが生じないため、ロゴ等の記号が把手に美しく表示される。加えて、取り付けられる支持具が握り部材の中央部を通る仮想軸を中心として2回回転対称とされているので、支持具の配置が天地逆、左右逆にならない。
【0008】
本発明において、例えば握り部材の長手方向を水平方向に向けた把手が本体の鉛直面部分に取り付けられた場合、支持具において本体から延出する方向に対する外周面であって握り部材の長手方向に対して側面となる二面は上面と下面になり、各支持具は上面と下面のうちの一面にのみ記号が表示されればよい。ここで、握り部材を隔てて対向する両支持具は互いに同じ形状とされているので、一方の支持具では上面にのみ記号が表示され、他方の支持具では下面にのみ記号が表示される。
【0009】
請求項に係る発明において、棒状の握り部材には、角柱状や円柱状のような中実の柱状部材、角柱パイプ状や円筒状のような筒状部材、のいずれも含まれる。
上記本体には、キャビネット、引き出し、扉など、種々の家具や建具等が考えられる。
支持具の延出方向と平行であって握り部材の中央部を通る仮想軸を中心として記号を含めて2回回転対称となるようにされたことには、一対の支持具を取り付ける部分の本体に臨んだときに記号が見える状態で把手が2回回転対称であることの他、該部分の本体に臨んだときに記号が隠れるものの記号の位置が2回回転対称である場合が含まれる。
上記記号には、立体的な形状の記号の他、シールに付された記号や印刷された記号といった平面的な形状の記号も含まれる。本明細書において、平面的な形状の記号を含めて2回回転対称であるとは、把手を仮想軸のまわりに180°回転移動させたときに記号が同じ位置に同じ表示態様で表示されることをいうものとする。
なお、上記把手を有する本体にも発明が存在し、当該発明も上述した作用、効果を奏する。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、低コストで製造することができ、支持具にロゴ等の記号を美しく表示することができ、支持具の天地、左右に気を付けなくても容易に組み付けることが可能な把手を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(1)把手の構成:
図1は、本発明の一実施形態に係る把手を取り付けたシステムキッチンS1の要部を示している。システムキッチンS1は、把手100〜102を取り付けたフロアキャビネットS2〜S4等の複数の構成要素が集合して形成される。本発明の把手は、長手方向を左右水平に向けてキャビネットS2の引き出しの前板に取り付けられると好適であるものの、長手方向を上下に向けて幅狭のキャビネットS3の引出ユニットの前板に取り付けられたり、幅広のキャビネットS4の開き戸に取り付けられたりしてもよい。これらのキャビネットS2〜S4は、本発明にいう本体となる。
【0012】
図1と図2に示すように、把手100は、一対の支持具10,20と握り部材30とを有するバーハンドル型の把手とされている。支持具10,20は、操作対象の本体S2に対して外方へ延出して取り付けられる。図示の例では、本体S2において把手100を取り付ける面が鉛直面とされ、左右の支持具10,20の延出方向D1は水平な手前の方向とされている。握り部材30は、棒状とされ、両端部30a,30bが支持具10,20に嵌合されて支持具10,20の間に設けられる。図示の例では、握り部材30の長手方向D2は、水平な左右方向とされている。
【0013】
一方の支持具10は、本体S2から延出する方向(延出方向D1)に対する外周面であって握り部材の長手方向D2に対して側面となる二面10c,10dのうちの一面(上面10c)にのみ記号12が表示されている。他方の支持具20は、延出方向D1に対する外周面であって握り部材の長手方向D2に対して側面となる二面20c,20dのうちの一面(下面20d)にのみ記号22が表示されている。また、握り部材30を隔てて対向する両支持具10,20は、同じ形状とされている。
ここで、支持具10,20の延出方向D1に対する外周面は、基部10b,20bと先端部10a,20aとを結ぶ仮想の軸をとり巻く面であり、上面10c,20c、対向面10e,20e、下面10d,20d、長手方向外側面10f,20fとなる。また、前記外周面であって支持具10,20の長手方向D2に対する側面は、長手方向D2に向いて内部を通る仮想の軸と交わらない面であり、上面10c,20cと下面10d,20dの二面となる。支持具10,20は同形状であるので、一方の支持具10の上面10cに記号が表示されていれば他方の支持具20の下面20dに記号が表示され、一方の支持具10の下面10dに記号が表示されていれば他方の支持具20の上面20cに記号が表示されることになる。
【0014】
本把手100は、一対の支持具10,20を取り付ける部分の本体S2に臨んだときに、記号12,22を含めて握り部材30の中央部CE1を中心として2回回転対称となる形状とされている。ここで、支持具を取り付ける部分の本体S2に臨む向きD3は支持具10,20の延出方向D1とは反対の向きであり、握り部材の中央部CE1を通る2回回転対称の仮想軸AX1は支持具の延出方向D1と平行である。従って、把手100は、記号12,22を含めて、仮想軸AX1を中心として2回回転対称となるようにされていると言える。
【0015】
支持具10,20や握り部材30の材質は、特に限定されず、アルミニウム合金、亜鉛合金、銅合金等の金属、ABS等の樹脂成形材料、等とすることができる。
【0016】
図示の支持具10,20は、外観が略四角柱状に形成され、握り部材30を挟み込んだ状態で基部10b,20bが本体S2に当接して該本体に取り付けられる。その際、例えば、基部10b,20bに形成されたねじ孔10b1,20b1にねじを螺合して本体にねじ止めすることにより、支持具10,20が本体に固定される。むろん、支持具の固定方法は、ねじ止め以外の固定方法でもよい。
【0017】
本実施形態では、支持具10,20の先端部10a,20a側の対向面10e,20eに握り部材の長手方向D2外側へ凹んだ凹部(支持具10では凹部14)が形成されている。握り部材30は、外観が角を丸くした略四角柱状に形成され、支持具10,20の凹部の開口部が握り部材30の断面形状に合わせた略正方形とされている。
【0018】
支持具10,20の凹部の中心部には、握り部材30の方向へ突出した略円柱状の軸部16,26が形成されている。これらの軸部16,26の側面には、それぞれ該軸部の径方向外側へ向かって延出した複数本の突条17,27が握り部材の長手方向D2に向かって連続して形成されている。一方、握り部材の両端部30a,30bには軸部16,26の断面形状に合わせた穴32がそれぞれ形成され、各穴32の内側面にはそれぞれ突条17,27の断面形状に合わせて穴32の径方向外側へ向かう複数本の切れ込み33が握り部材の長手方向D2に向かって連続して形成されている。なお、穴32は、握り部材30を長手方向D2へ貫通した貫通穴とされてもよい。
以上により、各突条17,27が各切れ込み33の位置となるように支持具の軸部16,26が握り部材の穴32に挿入したうえで、握り部材の両端部30a,30bが支持具10,20の凹部に挿入して嵌合するようにされている。
なお、握り部材30の側面に対して穴32に連通するねじ穴を設け、支持具10,20と握り部材30とを嵌合させた状態でねじ穴にねじを螺合させて支持具10,20と握り部材30とを固定してもよい。
【0019】
また、図1の左側となる支持具10は、上面10cに記号12が刻印される一方、下面10dに記号は刻印されていない。逆に、図1の右側となる支持具20は、下面20dに記号22が刻印される一方、上面20cに記号は刻印されていない。ここで、支持具10,20は、同じ形状であるので、握り部材の中央部を通る仮想軸AX1を中心として記号12,22を含めて2回回転対称となるように配置される。
【0020】
図では記号を「A」という文字で示したが、記号は、文字でも図形でもよく、会社名、商品名、商標といったロゴ等が考えられる。本実施形態の支持具10,20は、記号12,22が刻印されることにより表示され、外観が良好とされている。支持具に刻印を形成するのは、支持具を成形するのと同時でもよいし、支持具を成形した後でもよい。支持具をインジェクション成形やダイキャスト成形で製造する場合には、成形時に凹部(凹部14)や凸部(軸部16,26)を形成するのと同時に刻印を形成することができるため、支持具の製造コストを低減させることができる。
なお、外観を良好にさせる観点から記号を刻印するのが好適であるものの、記号が表示されたシールを成形後の支持具に後工程で貼ってもよい。また、コスト低減の観点から記号を刻印するのが好適であるものの、成形後の支持具に記号を印刷してもよい。
【0021】
握り部材30は、両端部30a,30bが同じ形状とされていずれも支持具10,20の両方に嵌合可能とされ、中央部CE1を中心として2回回転対称となる形状とされている。
【0022】
以上の構成を有する把手100は、例えば、以下のようにして形成され、本体S2に取り付けられる。
まず、握り部材の両端部30a,30bを支持具10,20の凹部に挿入して該支持具に嵌合させる。次に、支持具10,20で握り部材30を挟んだ状態で該支持具を本体S2にねじ止めすることにより、握り部材30と本体S2とに隙間CL1が形成された状態で把手100が本体S2に固定される。
【0023】
(2)把手の作用、効果:
以下、本把手の作用、効果を説明する。
本把手100は、支持具10,20と握り部材30とが別部品とされているので、長手方向D2の長さを変える際に握り部材30の長さを変えるだけでよく、把手全体を変更する必要が無い。また、両支持具10,20は、同形状とされ、同じ部品に共通化されている。従って、把手の製造コストを低く抑えることができる。
【0024】
さらに、支持具10,20が同形状とされ、本把手100は支持具の延出方向D1と平行であって握り部材の中央部CE1を通る仮想軸AX1を中心として記号12,22を含めて2回回転対称となるようにされている。これにより、把手100の上側には記号12のみが現れ、記号22は把手100の下側に隠れる。このように、把手の片面に一方の記号のみが現れるので、煩雑とならずに記号が支持具に美しく表示される。
また、両支持具10,20が握り部材の中央部を通る仮想軸AX1を中心として2回回転対称に配置されるので、図1に示す把手を180°回転させて本体に取り付けた様子を示した図3を見ると分かるように、左右の支持具10,20が逆に配置されても把手全体の形状は同じであり、把手100の上側には左側の支持具にのみ記号が現れる。従って、支持具を天地逆、左右逆に取り付けるようなことが生じない。
以上説明したように、本把手によると、把手を低コストで製造することができ、記号を美しく表示することができ、支持具の天地、左右に気を付けなくても本体に対して把手を容易に組み付けることが可能になる。
【0025】
なお、図1のキャビネットS3に取り付けられた把手101のように、握り部材の長手方向を鉛直方向に向けた把手が本体の鉛直面部分に取り付けられた場合、支持具において本体から延出する方向に対する外周面であって握り部材の長手方向に対して側面となる二面は左面と右面になる。この場合、把手の右側を見たときに把手の右側には一方の記号のみが現れ、他方の記号は把手の左側に隠れる。逆に、把手の左側を見たときに把手の左側には一方の記号のみが現れ、他方の記号は把手の右側に隠れる。いずれにしても、把手の片面に一方の記号のみが現れるので、煩雑とならずに記号が支持具に美しく表示される。
【0026】
(3)変形例:
本発明の把手は、種々の変形例が考えられる。
本把手が取り付けられる本体には、システムキッチンのキャビネット以外にも、洗面化粧台のキャビネット等が考えられる。
支持具と握り部材との嵌合構造は、支持具10,20に凹部を形成して握り部材の端部30a,30bを挿入して嵌合する構造以外にも、握り部材の端面に突出部を形成し支持具の対向面に穴部を形成して握り部材の突出部を支持具の穴部に挿入して嵌合する構造等でもよい。
【0027】
また、記号を表示する支持具の面は、平面以外にも、曲面等でもよい。
例えば、図4に示す把手200のように、支持具110,120が略円柱状に形成されている場合、支持具110,120の延出方向に対する外周面111,121であって握り部材130の長手方向D2に対して側面となる二面は、上から見える上面部111a,121aと、下から見える下面部111b,121bとなる。そして、上面部111a,121aの一方(上面部111a)と下面部111b,121bの一方(下面部121b)に記号112,122が表示されていればよい。
【0028】
なお、本発明は、上述した実施形態や変形例に限られず、上述した実施形態および変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態および変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本体に取り付けられた把手の例を示す斜視図。
【図2】一対の支持具と握り部材との嵌合構造の一例を示す分解斜視図。
【図3】図1に示す把手を180°回転させて本体に取り付けた様子を示す斜視図。
【図4】本体に取り付けられた把手の変形例を示す正面図。
【符号の説明】
【0030】
10,20…支持具、10c,20c…上面、10d,20d…下面、
12,22…記号、
30…握り部材、
100,101,102,200…把手、
CE1…中央部、CL1…隙間、
D1…延出方向、D2…長手方向、
S1…システムキッチン、S2〜S4…キャビネット(本体)、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作対象の本体に対して外方へ延出して取り付けられる一対の支持具の間に棒状の握り部材の両端部が嵌合されて形成される把手であって、
前記支持具のそれぞれは、前記本体から延出する方向に対する外周面であって前記握り部材の長手方向に対して側面となる二面のうちの一面にのみ記号が表示され、かつ、前記握り部材を隔てて対向する支持具と同じ形状とされ、
前記支持具の延出方向と平行であって前記握り部材の中央部を通る仮想軸を中心として前記記号を含めて2回回転対称となるようにされたことを特徴とする把手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−183120(P2008−183120A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−17954(P2007−17954)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(392008529)ヤマハリビングテック株式会社 (349)