説明

抑草材

【課題】除草剤が環境に与える悪影響を本質的に改善し、環境を維持する抑草材を提供する。
【解決手段】抑草成分として酸化マグネシウム系固化材を5重量部〜50重量部含み、増量剤として土又は砂、砂利、人工骨材、着色剤を95重量部〜50重量部とセメント混和材の糊料又は減水材、収縮低減材を含み、補強材として高分子系繊維もしくは、無機繊維を含む混合物を土壌表面に散布又は土壌に混合して、水分を添加して固化させることを特長とする抑草材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化マグネシウム系固化材を用いた抑草材に関する。
【背景技術】
【0002】
農業上の除草は除草剤を多量に使用することで解決されると考えられていた。しかし、一部選択性除草剤で解決する方法はあっても、全体的には、人力による除草が大部分を占め、除草剤は農耕地・非農耕地の至るところで使用されており、これに伴う環境破壊が進行して、特に水生生物の駆逐が進行し生態系が大きく変化しており、この悪影響を避けるためには減農薬を行う以外に方法がなく対策が急務である。
【0003】
しかし、依然、農業に対する省力化は、農業人口の老齢化にも影響されて、安易な方法の除草剤散布作業が好まれ、人力による除草作業は過大な労力を要するため嫌われて、除草剤を含む農薬による、環境破壊は進む一方である。
【0004】
特に、グリホサート系除草剤は年間3回以上の散布が必要であり、土壌のイオン交換が地耐力を低下させ、雨水による表土流失が起こり易くなっている弊害が発生している。
【0005】
本来、これらは非農耕地用で使用することが限定されているのに対し、現在は殆どの農耕地で使用され、農地周り、畦、宅地、工場敷、公園、道路敷、運動場、法面など毒性は低いながら、安全性は有機アミンであるため、流れ込む河川の魚毒性は保障されていないのが現状である。又、農薬の一部に抑草剤があり、これは、わい化剤であって草の背丈を伸ばさない薬剤であり、除草剤と作用的に大差がない。
【0006】
市場には、抑草マット又は抑草シートが販売されている。これは、地表面を遮光と被覆により、草を生やさない物で、殆どが高分子系のフイルムからなり、一部は廃農ビを使用して抑草することも行われている、しかし、耐候性が悪く熱に弱い欠点があり、法面などの土砂流失を防止する目的で用いられているが恒久性に乏しい製品である。
【0007】
又更に、砂、まさ土や小砕石に普通セメントを混合した製品がある。これは、地表面を肥料分の少ない物で覆うことにより、更にセメントで固めることにより草を抑制する物であり、ソイルセメントが6価クロムの影響を懸念して禁止されていることを無視した製品であり、環境を無視も甚だしい製品である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、除草剤が環境に与える悪影響を本質的に改善し、環境を維持するには、日本国内の土壌成分で不足しがちなマグネシウムを主体とする肥料成分を主成分とし、又、新たにアルミニウム化合物に雑草発芽に選択的に有効な塩基性アルミニウムゲル及びマグネシウム系固化材もしくはマグネシウム化合物を使用し、雑草の環境抵抗性を逆用して、休眠ホルモンのアブシジン酸含有量の高い雑草の性質を利用し、農作物のアブシジン酸含有量の低い点の性質の差を活用し、雑草のアブシジン酸を安定化させる方法で発芽を抑える方法を発見した。新しい概念から生まれた抑草方法である。
【0009】
従って、一般的な農作物はアブシジン酸含有量が低く、発芽が早く開始されるのに対し、雑草は環境に対する抵抗性を高める為に、アブシジン酸含有量が高く発芽が遅くなるように植物生理的性質の差があるのを利用したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち本発明は、抑草成分として酸化マグネシウム系固化材を5重量部〜50重量部含み、増量剤として土又は砂、砂利、人工骨材、着色剤を95重量部〜50重量部とセメント混和材の糊料又は減水材、収縮低減材を含み、補強材として高分子系繊維もしくは、無機繊維を含む混合物を土壌表面に散布又は土壌に混合して、水分を添加して固化させることを特長とする抑草材である。
【発明の効果】
【0011】
農地、非農耕地に関わらず、草取りの作業は労働力の負荷が高い作業であり、人の手を借りることが最も効率が良く、細部にわたる作業は機械抑草の困難な部分であって、熱帯・亜熱帯地方では、極めて早い雑草の生長に追いつけないのが実状である。
【0012】
従って、農業収量の上で雑草対策は40%を超える収量格差を生む原因となっている。これらに対し、雑草防除の効果が容易に行え、しかも安価に、環境に配慮した化学材料で安全に行うことのできる本発明は、大きな経済効果を持っている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
一般的に、従来の抑草原理は、酸素、水分、光、温度、重力の要素からなり、乾燥状態では発芽せず、暗い状態でも地下茎がなければ発芽せず、低温でも発芽しない、又、圧力が罹った状態では発芽しないのが原則であり、何れかの要素を満たせば抑草出来る可能性が高くなる、上記要素は外因的要素であり、発生の内因的な要素は、成長ホルモン、休眠ホルモンと化学的な要因として、湿度、pH及びイオンや酵素阻害、ストレスなどを環境に配慮した形で抑草することが今日まで成果が得られなかった一因である。
【0014】
酸化マグネシウム及びその水和物の水酸化マグネシウムは、pH10.5の水酸化カルシウムと殆ど肥料的には同等の扱いを受けている物性を持ち、マグネシア肥料としても、硫酸マグネシウムと同様に広く用いられている物質である。しかし、自硬性がある点や石灰に比較して溶解度が極めて低く、発芽に関する生理作用は知られていないのが現状である。
【0015】
土壌中及び寒天培地に、各種の種子を撒いて、これに直接酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムとこれに反応する物質、例えば、各種の無機炭酸塩、有機炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、硫酸塩、セメント、高炉スラグ、アルミ化合物、ポリカルボン酸塩、PVA,PEO,水溶性澱粉、水溶性セルローズなどを二種以上混合すると、水に難溶又は不溶物を与える化合物を生成するものに、発芽を抑制する生理作用があることを見いだして、これらを、直接、土壌面に散布又は増量材となる土や砂、人工骨材に混合するか、基材となる不織布クロス、樹脂等に塗布又は混合して使用する方法及びこれらを用いた抑草施工方法を提案するものある。
【0016】
具体的には、粉体で水を用いて固化させて使用する方法と水溶液を散布後に固化させて、水に不溶又は難溶な物質を得る方法に分けられる。酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムは、水に難溶な物質で8.4×10-4/18℃であり、種子による差はあるが土壌中に固化材を含むと0.3%重量部添加で殆どの種子は発芽が抑制される。
【0017】
しかし、雑草の種子は殆ど土壌表面以下20mm以上には少なく、根茎が主の多年生雑草であるため、この深さ程度に水でスラリーとした本抑草材が到達すれば、一年草雑草では発芽が抑制されることが実証試験で観察されている。従って、増量材を含む本抑草材を少なくとも20mm以上の厚さに地表面を被覆すれば、雑草の発芽は抑制されることになる。
【0018】
然るに、多年性雑草には、地表面以下500mm程度の深さに根茎が存在する種類もあり、竹、茅、蓬、スギナなどでは有効に作用させることが困難である、除草剤の浸透性で根も枯死させる作用の製品でも、根絶できない雑草が多く存在するのは、茎からの浸透に限界があるためである。この対策として、マグネシウム系固化材に、重量物の砂、砂利、人工骨材等の骨材を混合して、重量の圧力で雑草を抑制する方法が併用できる。
【0019】
既に、特願2002−337759の抑草マルチング組成物に上げた、抑草成分については本発明では割愛し、抑草の方法を工法として挙げる。
【0020】
本発明では、生成した抑草成分が中性又は弱アルカリで、発芽まもない農作物に直接散布しても害がないようにすることが可能で、生成したゲルにより、水に不溶で耐水性を有するため、降雨による流失が防止できる特徴がある。
【実施例】
【0021】
本発明は、以下の実施例に含まれる代表例のみならず、詳細な説明に上げられた説明に含まれる全ての事項に限定される物ではない。
実施例1
軽焼マグネシア20〜70重量部、高炉水砕スラグ80〜30重量部、石膏3〜15重量部、クエン酸0.001〜1.5重量部からなる混合物に山砂100〜600重量部を水で混合してフロー値10のモルタルにして、土壌面上に30mm厚さに敷き詰め、軽く展圧して固化させる。固化物は、圧縮強さが材令28日で1.2N〜5.3N/mm2で透水係数34〜23%である。5月〜10月の5ヶ月間の観察では全く雑草が生えず、更に3年間の間全く雑草が生えない状態が維持された。
実施例2
軽焼マグネシア30重量部、高炉水砕スラグ70重量部、石膏3重量部、クエン酸0.001重量部からなる混合物に関東ローム1000重量部を混合して、土壌面上に30mm厚さに敷き詰め、ローラー展圧した固化物は、圧縮強さが材令28日で2.63N/mm2で透水係数13%である。5月〜10月の5ヶ月間の観察では全く雑草が生えず、更に3年間の間全く雑草が生えない状態が維持された。
実施例3
軽焼マグネシア30重量部、高炉水砕スラグ70重量部、石膏3重量部、クエン酸0.001重量部からなる混合物に川砂100重量部、ウッドチップ100重量部、水100重量部の混合物を厚さ50mmに固化させた固化物は、圧縮強さが材令28日で2.0N/mm2で透水係数33%である。5月〜10月の5ヶ月間の観察では全く雑草が生えず、更に3年間の間全く雑草が生えない状態が維持された。
実施例4
軽焼マグネシア30重量部、高炉水砕スラグ70重量部、石膏3重量部、クエン酸0.001重量部からなる混合物にまさ土500重量部、水35重量部の混合物を厚さ50mmに固化させた固化物は、圧縮強さが材令28日で2.4N/mm2で透水係数30%である。5月〜10月の5ヶ月間の観察では全く雑草が生えず、更に3年間の間全く雑草が生えない状態が維持された。
実施例5
軽焼マグネシア30重量部、高炉水砕スラグ70重量部、石膏3重量部、クエン酸0.001重量部からなる混合物に乾燥まさ土400重量部の混合物を作り、これを厚さ50mm2に敷き詰め、ローラ展圧してから散水して固化させる。固化物は、圧縮強さが材令28日で2.6N/mm2で透水係数32%である。5月〜10月の5ヶ月間の観察では全く雑草が生えず、更に3年間の間全く雑草が生えない状態が維持された。
実施例6
軽焼マグネシア30重量部、高炉水砕スラグ70重量部、石膏3重量部、クエン酸0.001重量部、部分顕化PVA B-20S(電気化学製)0.2重量部に乾燥山砂500重量部の混合物を作り、これを厚さ30mm2に敷き詰め、ローラ展圧してから散水して固化させる。固化物は、圧縮強さが材令28日で2.7N/mm2で透水係数22%である。5月〜10月の5ヶ月間の観察では全く雑草が生えず、更に3年間の間全く雑草が生えない状態が維持された。
実施例7
軽焼マグネシア30重量部、高炉水砕スラグ70重量部、石膏3重量部、クエン酸0.001重量部、部分顕化PVA B-20S(電気化学製)0.2重量部、ビニロン繊維25mmを3.0重量部添加した混合物を作り、これを厚さ30mm2に敷き詰め、ローラ展圧してから散水して固化させる。固化物は、圧縮強さが材令28日で2.7N/mm2で透水係数22%である。5月〜10月の5ヶ月間の観察では全く雑草が生えず、更に3年間の間全く雑草が生えない状態が維持された。
実施例8
硫酸マグネシウム128重量部と重曹100重量部と炭酸ソーダ2.0g に部分顕化PVA B-20S(電気化学製)0.2重量部の粉体混合物を作り、これに30倍の水を加えて溶解し、10kgの噴霧ポンプの先端を3.0mmのパイプを通じて土中に500mm深さまでこの薬液を圧入する。又、地表面には1m2当たり1000ccを散布すると、雑草発芽と茅の発芽を同時に抑制できた。しかし、この作業は1月〜3月中に行う必要があり、茅の発根する4月以降では効果がなかった。
実施例9
硫酸マグネシウム128重量部と重曹200重量部と硫酸ソーダ142重量部と炭酸ソーダ2.0gの粉体混合物を作り、これに60倍の水を加えて溶解し、10kgの噴霧ポンプの先端を3.0mmのパイプを通じて土中に500mm深さまでこの薬液を圧入する。又、地表面には1m2当たり1000ccを散布すると、雑草発芽と茅の発芽を同時に抑制できた。しかし、この作業は1月〜3月中に行う必要があり、茅の発根する4月以降では効果がなかった。しかし、冬季の施工では以後2年間茅の発生がなく、根茎のスギナ、ヨモギでも同様な抑制作用が見られた。
実施例10
軽焼マグネシア30重量部、高炉水砕スラグ70重量部、石膏3重量部、クエン酸0.001重量部、部分顕化PVA B-20S(電気化学製)0.2重量部に乾燥山砂500重量部の混合物を作り、竹林の横にトレンチーャで横溝を深さ50cm掘り、これに上記混合物を厚さ30mmに充填して埋め戻しを行う。その後3年間経過しても竹の進入はなく、竹林の周囲への拡散が防止できた。
実施例11
軽焼マグネシア30重量部、高炉水砕スラグ70重量部、石膏3重量部、クエン酸0.001重量部、部分顕化PVA B-20S(電気化学製)0.2重量部に乾燥山砂500重量部の混合物に水を小量ずつ加えて、パンミキサーの回転数を始め60rpm/分から徐々に回転数を低下させて30rpm/分の間で造粒させると、粒径が3mm〜6mmの造粒物を得る。これを土壌上に30mm厚さに敷きつめると、4月〜10月間雑草の繁茂が完全に抑制できた。
実施例12
軽焼マグネシア70重量部、硫酸マグネシウム1水塩38重量部、石膏3重量部、クエン酸0.2重量部、ベントナイト50重量部からなる混合物に瓦粉砕品の3〜7mmφの球状骨材350重量部を混合して、土壌面に30mm厚さに敷きつめ、水を噴霧して固化させる。固化物からは、雑草が7月間発芽しないことが確認された。
実施例13
軽焼マグネシア30重量部、高炉水砕スラグ70重量部、石膏3重量部、クエン酸0.001重量部からなる混合物と、製紙スラッジ骨材95重量部に水85重量部を混合して、土壌面に50mm厚さに敷きつめ、ローラーで展圧して固化させた舗装は、3月〜9月までの間、雑草の発芽が皆無であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抑草成分として酸化マグネシウム系固化材を5重量部〜50重量部含み、増量剤として土又は砂、砂利、人工骨材、着色剤を95重量部〜50重量部とセメント混和材の糊料又は減水材、収縮低減材を含み、補強材として高分子系繊維もしくは、無機繊維を含む混合物を土壌表面に散布又は土壌に混合して、水分を添加して固化させることを特長とする抑草材。
【請求項2】
抑草成分として酸化マグネシウム系固化材を5重量部〜50重量部含み、増量剤として土又は砂、砂利、人工骨材、着色剤を95重量部〜50重量部とセメント混和材の糊料又は減水材、収縮低減材を含み、補強材として高分子系繊維もしくは、無機繊維を含む混合物を土壌表面に散布又は土壌に混合して、水分を添加して固化させることを特長とする抑草工法。
【請求項3】
抑草成分として酸化マグネシウム系固化材を5重量部〜50重量部含み、増量剤として、土又は砂、砂利、人工骨材、着色剤95重量部〜50重量部とセメント混和材の糊料又は減水材、収縮低減材を含み、補強材として高分子系繊維又は、ガラス繊維、天然繊維から成るクロス又はネット及び不織布に反応性糊料のPVA又は、ポリアクリル酸・ポリアクリルアミドを添加したスラリーを1mm〜5mm塗布してなる、抑草マット成型材。
【請求項4】
抑草成分として酸化マグネシウム系固化材を5重量部〜50重量部含み、増量剤として
土又は砂、砂利、人工骨材、木材チップ、着色剤を95重量部〜50重量部とセメント混和材の糊料又は減水材、収縮低減材を含み、補強材として高分子系繊維もしくは、無機繊維を含む混合物のスラリーを土壌表面に吹き付けもしくは、水を加えて展圧して固化させることを特長とする抑草施工方法。

【公開番号】特開2007−330114(P2007−330114A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163183(P2006−163183)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(506203132)有限会社中川 (1)
【出願人】(000221672)東武化学株式会社 (2)
【出願人】(506253023)
【Fターム(参考)】