説明

投写型表示装置

【課題】光合成プリズムの欠陥によって発生するスクリーン上の影を目立たなくする。
【解決手段】投写型表示装置の構成として、光源1と、光源1から出射しかつダイクロイックミラー6,7で分離された各色成分の光を変調する複数の反射型液晶表示素子11R,11G,11Bと、複数の反射型液晶表示素子の各々よりも光源側に配置された複数の光拡散板14R,14G,14Bと、複数の反射型液晶表示素子で変調した各色成分の光を合成する光合成プリズム12と、光合成プリズムで合成した光を投影する投影レンズ13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3板方式の液晶プロジェクタ装置などの投写型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光源から出射された白色光を赤(R)、緑(G)、青(B)の3色に色分離するとともに、各色成分の光をそれぞれに対応する光変調素子で変調し、かつ変調後の3色の光を合成してスクリーンに投影する投写型表示装置が実用化されている。
【0003】
投写型表示装置としては、光源として放電ランプを用いたものや、光変調素子として透過型液晶表示素子やDMD(Digital Micromirror Device)を用いたものが知られており、デバイス、光学系とも、さまざまな改良が重ねられている。さらに近年では、より高解像度な反射型液晶表示素子を用いた投写型表示装置も実用化されている。
【0004】
一般に、投写型表示装置では、光源から出射された白色光をダイクロイックミラーでR,G,Bの3色に色分離する一方、各々の光変調素子で変調された光をクロスダイクロイックプリズムなどで合成し、投影レンズによりスクリーン上に拡大投影している。
【0005】
クロスダイクロイックプリズム70は、図5に示すように、三角柱状をなす4つのプリズム71,72,73,74の2面にそれぞれ所望の反射特性が得られるように光学薄膜を形成し、この光学薄膜を介して4つのプリズム71,72,73,74を貼り合わせて直方体に形成したものである。
【0006】
下記の特許文献1には、液晶表示素子を用いた投写型表示装置の光学手段(マルチレンズアレー)に形成される凸レンズを千鳥格子状に配置することにより、スクリーン上での影の発生を抑える技術が提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開平9−90510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記構成のダイクロイックプリズム70では、4つのプリズム71〜74に共通の接合部(プリズム中心の垂線)75で次のような問題が発生する場合がある。第1に、4つのプリズム71〜74の貼り合わせは、一般に紫外線硬化型樹脂などの接着剤を用いて行われるが、これが必ずしも均一に貼り合わせられるわけではないという問題がある。第2に、各々のプリズム71〜74の面精度が悪いために、互いの貼り合わせ部分に隙間が生じるという問題がある。第3に、各々のプリズム71〜74に成膜のムラがあった場合、接合部75が不連続な反射特性を有するという問題がある。第4に、各々のプリズム71〜74の接合部75近傍の鋭利な箇所に割れや欠けなどが生じるという問題がある。
【0009】
上記のような問題が発生した場合、例えば図6に示すように、フライアイレンズ76、コンデンサーレンズ77、フィールドレンズ78、液晶表示素子79を順に透過してクロスダイクロイックレンズ70に入射する光の一部は、プリズム接合部75を通過する際に散乱し、これがスクリーン上に投射される画像に影として現れてしまう。
【0010】
照明光学系として、フライアイレンズや、ロッドインテグレータを用いた場合、プリズム接合部75を通過する光は、図7に示すように周期的な強度分布を持つことになる。その結果、スクリーン上の画像には、図8に示すように周期的な影(表示のムラ)が現れる。さらにレーザ発光素子のように極めて点光源に近いコヒーレントな光源を利用した場合は、その指向性の強さのためにスクリーン上の周期的な影がよりはっきりと表示され、良好な画像を得ることができなくなってしまう。
【0011】
本発明は、光合成素子で合成される光の散乱に起因したスクリーン上での影の発生を抑えることができる投写型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る投写型表示装置は、光源と、光源から出射した光を色成分ごとに変調する複数の光変調素子と、複数の光変調素子の各々よりも光源側に配置された複数の光拡散素子と、複数の光変調素子で変調した各色成分の光を合成する光合成素子と、光合成素子で合成した光を投影する投影光学素子とを備えるものである。
【0013】
本発明に係る投写型表示装置においては、各色成分の光を変調する光変調素子よりも光源側に配置された光拡散素子で光を拡散することにより、光合成素子で合成される光の散乱に起因したスクリーン上の影が視覚的に目立たなくなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の投写型表示装置によれば、光合成素子で合成される光の散乱に起因したスクリーン上での影の発生を抑えて画質の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の具体的な実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る投写型表示装置の構成例を示す概略図である。図示した投写型表示装置100は、光源となるランプ1と、2つのインテグレータレンズ(フライアイレンズ)2,3と、偏光ビームスプリッタ4と、集光素子となるコンデンサーレンズ5と、光分離素子となる2つのダイクロイックレンズ6,7と、反射ミラー8と、3つのフィールドレンズ9R,9G,9Bと、偏光素子となる3つの反射型偏光子10R,10G,10Bと、光変調素子となる3つの反射型液晶表示素子11R,11G,11Bと、光合成素子となる光合成プリズム12と、投影光学素子となる投影レンズ13と、光拡散素子となる3つの光拡散板14R,14G,14Bとを備えた構成となっている。
【0017】
ランプ1は、白色の光を出射するもので、例えば超高圧水銀ランプを用いて構成されるものである。ランプ1は、発光部1aとリフレクタ1bとを有するものである。ランプ1の発光部1aはリフレクタ1bの焦点位置に配置されている。ランプ1の発光部1aで発生した光はリフレクタ1bで反射されることにより、ほぼ平行な光となって出射される。
【0018】
インテグレータレンズ2,3は、各々の反射型液晶表示素子11R,11G,11Bに入射する光の照度を均一化するために設けられたものである。偏光ビームスプリッタ4は、インテグレータレンズ2,3を通して入射する光を所定の方向に偏光するものである。コンデンサーレンズ5は、偏光ビームスプリッタ4を通して入射する光を集光するものである。
【0019】
ダイクロイックミラー6は、コンデンサーレンズ5を通して入射する光のうち、赤色成分(赤色波長帯域)の光を透過し、緑色成分(緑色波長帯域)及び青色成分(青色波長帯域)の光を90度方向に反射するものである。ダイクロイックミラー7は、ダイクロイックミラー6で反射した光のうち、青色成分の光を透過し、緑色成分の光を90度方向に反射するものである。反射ミラー8は、ダイクロイックミラー6を透過した赤色成分の光を90度方向に反射するものである。
【0020】
フィールドレンズ9Rは、反射ミラー8で反射した赤色成分の光を透過するものである。フィールドレンズ9Gは、ダイクロイックミラー7で反射した緑色成分の光を透過するものである。フィールドレンズ9Bは、ダイクロイックミラー7を透過した青色成分の光を透過するものである。
【0021】
反射型偏光子10Rは、フィールドレンズ9Rを通して入射する光を透過する一方、反射型液晶表示素子11Rから入射する光を90度方向に反射するものである。反射型偏光子10Gは、フィールドレンズ9Gを通して入射する光を透過する一方、反射型液晶表示素子11Gから入射する光を90度方向に反射するものである。反射型偏光子10Bは、フィールドレンズ9Bを通して入射する光を透過する一方、反射型液晶表示素子11Bから入射する光を90度方向に反射するものである。
【0022】
反射型液晶表示素子11Rは、反射型偏光子10Rを通して入射する赤色成分の光を変調するものである。反射型液晶表示素子11Gは、反射型偏光子10Gを通して入射する緑色成分の光を変調するものである。反射型液晶表示素子11Bは、反射型偏光子10Bを通して入射する青色成分の光を変調するものである。
【0023】
光合成プリズム12は、各々の反射型偏光子10R,10G,10Bから入射する各色成分(R,G,B)の光を合成するものである。光合成プリズム12は、クロスダイクロイックプリズムを用いて構成されるものである。投影レンズ13は、光合成プリズム12で合成して得られる光(画像)を図示しないスクリーン上に拡大投影するものである。
【0024】
光拡散板14Rは、ランプ1からフィールドレンズ9Rを通して入射する赤色成分の光を拡散透過するものである。光拡散板14Rは、ランプ1を最上流とし、投影レンズ13を最下流とした光路上において、反射型液晶表示素子11Rよりも光源側で、かつ当該反射型液晶表示素子11Rに最も近いレンズであるフィールドレンズ9Rと反射型偏光子10Rの間に配置されている。また、光拡散板14Rは、フィールドレンズ9Rの出射側に配置されている。
【0025】
光拡散板14Gは、ランプ1からフィールドレンズ9Gを通して入射する緑色成分の光を拡散透過するものである。光拡散板14Gは、上記光路上において、反射型液晶表示素子11Gよりも光源側で、かつ当該反射型液晶表示素子11Gに最も近いレンズであるフィールドレンズ9Gと反射型偏光子10Gの間に配置されている。また、光拡散板14Gは、フィールドレンズ9Gの出射側に配置されている。
【0026】
光拡散板14Bは、ランプ1からフィールドレンズ9Bを通して入射する青色成分の光を拡散透過するものである。光拡散板14Bは、上記光路上において、反射型液晶表示素子11Bよりも光源側で、かつ当該反射型液晶表示素子11Bに最も近いレンズであるフィールドレンズ9Bと反射型偏光子10Bの間に配置されている。また、光拡散板14Bは、フィールドレンズ9Bの出射側に配置されている。
【0027】
上記構成からなる投写型表示装置100においては、ランプ1から出射した白色光がインテグレータレンズ2,3、偏光ビームスプリッタ4及びコンデンサーレンズ5を順に透過してダイクロイックミラー6に入射する。ダイクロイックミラー6では、赤色成分の光が透過し、緑色成分及び青色成分の光が反射する。
【0028】
ダイクロイックミラー6を透過した赤色成分の光は、反射ミラー8で反射した後、フィールドレンズ9R、光拡散板14R及び反射型偏光子10Rを順に透過する。さらに、反射型偏光子10Rを透過した光は、反射型液晶表示素子11Rに入射し、そこで映像信号に応じて変調される。反射型液晶表示素子11Rで変調された赤色成分の光は、再び反射型偏光子10Rに入射する。このとき、反射型液晶表示素子11Rでの変調の度合いにより、一部の光は反射型偏光子10Rを透過して光源方向に戻り、他の光は反射型偏光子10Rで反射して光合成プリズム12に入射する。
【0029】
一方、ダイクロイックミラー6で反射した光はダイクロイックミラー7に入射する。ダイクロイックミラー7では、青色成分の光が透過し、緑色成分の光が反射する。ダイクロイックミラー7で反射した緑色成分の光は、フィールドレンズ9G、光拡散板14G及び反射型偏光子10Gを順に透過する。さらに、反射型偏光子10Gを透過した光は、反射型液晶表示素子11Gに入射し、そこで映像信号に応じて変調される。反射型液晶表示素子11Gで変調された緑色成分の光は、再び反射型偏光子10Gに入射する。このとき、反射型液晶表示素子11Gでの変調の度合いにより、一部の光は反射型偏光子10Gを透過して光源方向に戻り、他の光は反射型偏光子10Gで反射して光合成プリズム12に入射する。
【0030】
また、ダイクロイックミラー7を透過した青色成分の光は、フィールドレンズ9B、光拡散板14B及び反射型偏光子10Bを順に透過する。さらに、反射型偏光子10Bを透過した光は、反射型液晶表示素子11Bに入射し、そこで映像信号に応じて変調される。反射型液晶表示素子11Bで変調された青色成分の光は、再び反射型偏光子10Bに入射する。このとき、反射型液晶表示素子11Bでの光の変調の度合いにより、一部の光は反射型偏光子10Bを透過して光源方向に戻り、他の光は反射型偏光子10Bで反射して光合成プリズム12に入射する。
【0031】
光合成プリズム12では、緑色成分の光が透過し、赤色成分及び青色成分の光が90度方向に反射する。このため、光合成プリズム12に入射した各色成分の光は合成されて同じ方向に出射される。こうして合成された光は投影レンズ13に入射する。投影レンズ13は、光合成プリズム12から入射した光の映像(画像)を所定の倍率に拡大してスクリーンに映し出す。
【0032】
このように動作する投写型表示装置100において、光合成プリズム12に入射する赤色成分の光は、反射型液晶表示素子11Rよりも光源側に設けられた光拡散板14Rを透過する際に拡散する。同様に、光合成プリズム12に入射する緑色成分の光は、反射型液晶表示素子11Gよりも光源側に設けられた光拡散板14Gを透過する際に拡散し、光合成プリズム12に入射する青色成分の光は、反射型液晶表示素子11Bよりも光源側に設けられた光拡散板14Bを透過する際に拡散する。
【0033】
そうすると、光合成プリズム12の接合部を通過する赤色成分の光によるスクリーン上の影は、上記光拡散板14Rでの光の拡散によって分散する。同様に、光合成プリズム12の接合部を通過する緑色成分の光によるスクリーン上の影は、上記光拡散板14Gでの光の拡散によって分散し、光合成プリズム12の接合部を通過する青色成分の光によるスクリーン上の影は、上記光拡散板14Bでの光の拡散によって分散する。
【0034】
このため、光合成プリズム12の接合部への光の入射角度(垂直入射を0度と規定)と光強度との関係をみると、光拡散板14R,14G,14Bを設けない場合は、プリズム接合部での光の散乱により、上記図7及び図8に示すように、光の強度分布が急峻になって周期的なピーク値をもつため、スクリーン上に濃い影が現れてしまうが、光拡散板14R,14G,14Bを設けた場合は、図2に示すように、光の強度分布がなだらかになるため、スクリーン上に影が現れにくくなる。
【0035】
したがって、光合成プリズム12の接合部を通過する各色成分の光に関しては、仮にプリズム接合部を通過する光束の一部が散乱したとしても、散乱した光束がスクリーン上に広がって均一化される。このため、スクリーン上では周期的な影の濃度が薄くなる。この結果、プリズム接合部での光の散乱に起因したスクリーン上の影が視覚的に目立たなくなる。よって、画質の向上が図られる。
【0036】
また一般に、上記のような照明光学系の中に光拡散素子を使用すると、光量のロスの原因となるため、光変調素子に対する光量の低下といった問題が生じる。このため、光拡散素子の特性としては、プリズム接合部への光入射角度と光強度との関係を図7の状態から図2の状態に変化させ得る範囲で、できる限り光の拡散角度を小さく、つまりヘーズ値を小さくする必要がある。光拡散素子の光の拡散角度は、光拡散素子への垂直入射に対する拡散分布における半値全幅で表されるものである。
【0037】
光拡散素子の拡散角度、もしくはヘーズ値と、光量のロスとの関係は、照明光学系のFナンバー、液晶表示素子の寸法、光源より出射する光束の光分布などによって異なるため、一概に述べることは難しいものの、現状一般的に使用されている光学系(液晶表示素子のパネルサイズ0.6〜0.8インチ程度)、Fナンバー2.0から3.2程度において、光量ロスやスクリーンムラなどの評価を行ったところ、拡散角度は3度以上8度以下が好ましいことが分かった。例えば、拡散角度が5度のときは、光量ロスが2%程度、スクリーンムラ、スクリーン周辺輝度低下率も許容範囲内であった。
【0038】
(第2実施形態)
図3は本発明の第2実施形態に係る投写型表示装置の構成例を示す概略図である。図示した投写型表示装置200は、光源となる3つのレーザ発光素子21R,21G,21Bと、3つのロッドインテグレータ22R,22G,22Bと、集光素子となる3つのコンデンサーレンズ23R,23G,23Bと、反射ミラー24と、3つのフィールドレンズ25R,25G,25Bと、偏光素子となる3つの反射型偏光子26R,26G,26Bと、光変調素子となる3つの反射型液晶表示素子27R,27G,27Bと、光合成素子となる光合成プリズム28と、投影光学素子となる投影レンズ29と、光拡散素子となる3つの光拡散板30R,30G,30Bとを備えた構成となっている。
【0039】
レーザ発光素子21Rは、赤色成分のレーザ光を出射するものである。レーザ発光素子21Gは、緑色成分のレーザ光を出射するものである。レーザ発光素子21Bは、青色成分のレーザ光を出射するものである。ロッドインテグレータ22R,22G,22Bは、各々の反射型液晶表示素子27R,27G,27Bに入射する光の照度を均一化するために設けられたものである。
【0040】
コンデンサーレンズ23Rは、ロッドインテグレータ22Rを通して入射する光を集光するものである。コンデンサーレンズ23Gは、ロッドインテグレータ22Gを通して入射する光を集光するものである。コンデンサーレンズ23Bは、ロッドインテグレータ22Bを通して入射する光を集光するものである。
【0041】
反射ミラー24は、コンデンサーレンズ23Gを通して入射する緑色成分の光を90度方向に反射するものである。フィールドレンズ25Rは、コンデンサーレンズ23Rを通して入射する赤色成分の光を透過するものである。フィールドレンズ25Gは、反射ミラー24で反射した緑色成分の光を透過するものである。フィールドレンズ25Bは、コンデンサーレンズ23Bを通して入射する青色成分の光を透過するものである。
【0042】
反射型偏光子26Rは、フィールドレンズ25Rを通して入射する光を透過する一方、反射型液晶表示素子27Rから入射する光を90度方向に反射するものである。反射型偏光子26Gは、フィールドレンズ25Gを通して入射する光を透過する一方、反射型液晶表示素子27Gから入射する光を90度方向に反射するものである。反射型偏光子26Bは、フィールドレンズ25Bを通して入射する光を透過する一方、反射型液晶表示素子27Bから入射する光を90度方向に反射するものである。
【0043】
反射型液晶表示素子27Rは、反射型偏光子26Rを通して入射する赤色成分の光を変調するものである。反射型液晶表示素子27Gは、反射型偏光子26Gを通して入射する緑色成分の光を変調するものである。反射型液晶表示素子27Bは、反射型偏光子26Bを通して入射する青色成分の光を変調するものである。
【0044】
光合成プリズム28は、各々の反射型偏光子26R,26G,26Bから入射する各色成分(R,G,B)の光を合成するものである。光合成プリズム28は、クロスダイクロイックプリズムを用いて構成されるものである。投影レンズ29は、光合成プリズム28で合成して得られる光(画像)を図示しないスクリーン上に拡大投影するものである。
【0045】
光拡散板30Rは、レーザ発光素子21Rからフィールドレンズ25Rを通して入射する赤色成分の光を拡散透過するものである。光拡散板30Rは、レーザ発光素子21Rを最上流とし、投影レンズ29を最下流とした光路上において、反射型液晶表示素子27Rよりも光源側で、かつ当該反射型液晶表示素子27Rに最も近いレンズであるフィールドレンズ25Rと反射型偏光子26Rの間に配置されている。また、光拡散板30Rは、フィールドレンズ25Rの出射側に配置されている。
【0046】
光拡散板30Gは、レーザ発光素子21Gを最上流とし、投影レンズ29を最下流とした光路上において、反射型液晶表示素子27Gよりも光源側で、かつ当該反射型液晶表示素子27Gに最も近いレンズであるフィールドレンズ25Gと反射型偏光子26Gの間に配置されている。また、光拡散板30Gは、フィールドレンズ25Gの出射側に配置されている。
【0047】
光拡散板30Bは、レーザ発光素子21Bを最上流とし、投影レンズ29を最下流とした光路上において、反射型液晶表示素子27Bよりも光源側で、かつ当該反射型液晶表示素子27Bに最も近いレンズであるフィールドレンズ25Bと反射型偏光子26Bの間に配置されている。また、光拡散板30Bは、フィールドレンズ25Bの出射側に配置されている。
【0048】
上記構成からなる投写型表示装置200においては、レーザ発光素子21Rから出射された赤色成分のレーザ光が、ロッドインテグレータ22R、コンデンサーレンズ23R、フィールドレンズ25R、光拡散板30R、反射型偏光子26Rを順に透過する。さらに、反射型偏光子26Rを透過した光は、反射型液晶表示素子27Rに入射し、そこで映像信号に応じて変調される。反射型液晶表示素子27Rで変調された赤色成分の光は、再び反射型偏光子26Rに入射する。このとき、反射型液晶表示素子27Rでの変調の度合いにより、一部の光は反射型偏光子26Rを透過して光源方向に戻り、他の光は反射型偏光子26Rで反射して光合成プリズム28に入射する。
【0049】
一方、レーザ発光素子21Gから出射された緑色成分のレーザ光は、ロッドインテグレータ22G、コンデンサーレンズ23Gを順に透過して反射ミラー24で反射した後、フィールドレンズ25G、光拡散板30G、反射型偏光子26Gを順に透過する。さらに、反射型偏光子26Gを透過した光は、反射型液晶表示素子27Gに入射し、そこで映像信号に応じて変調される。反射型液晶表示素子27Gで変調された緑色成分の光は、再び反射型偏光子26Gに入射する。このとき、反射型液晶表示素子27Gでの変調の度合いにより、一部の光は反射型偏光子26Gを透過して光源方向に戻り、他の光は反射型偏光子26Gで反射して光合成プリズム28に入射する。
【0050】
また、レーザ発光素子21Bから出射された青色成分のレーザ光は、ロッドインテグレータ22B、コンデンサーレンズ23B、フィールドレンズ25B、光拡散板30B、反射型偏光子26Bを順に透過する。さらに、反射型偏光子26Bを透過した光は、反射型液晶表示素子27Bに入射し、そこで映像信号に応じて変調される。反射型液晶表示素子27Bで変調された青色成分の光は、再び反射型偏光子26Bに入射する。このとき、反射型液晶表示素子27Bでの変調の度合いにより、一部の光は反射型偏光子26Bを透過して光源方向に戻り、他の光は反射型偏光子26Bで反射して光合成プリズム28に入射する。
【0051】
光合成プリズム28では、緑色成分の光が透過し、赤色成分及び青色成分の光が90度方向に反射する。このため、光合成プリズム28に入射した各色成分の光は合成されて同じ方向に出射される。こうして合成された光は投影レンズ29に入射する。投影レンズ29は、光合成プリズム28から入射した光の映像(画像)を所定の倍率に拡大してスクリーンに映し出す。
【0052】
このように動作する投写型表示装置200において、光合成プリズム28に入射する赤色成分の光は、反射型液晶表示素子27Rよりも光源側に設けられた光拡散板30Rを透過する際に拡散する。同様に、光合成プリズム28に入射する緑色成分の光は、反射型液晶表示素子27Gよりも光源側に設けられた光拡散板30Gを透過する際に拡散し、光合成プリズム28に入射する青色成分の光は、反射型液晶表示素子27Bよりも光源側に設けられた光拡散板30Bを透過する際に拡散する。したがって、上記第1実施形態と同様に、プリズム接合部での光の散乱に起因したスクリーン上の影が視覚的に目立たなくなる。特に、レーザ光などのコヒーレント光を出射するコヒーレントな光源を用いた場合は、その指向性の強さによってスクリーン上の影が目立ちやすくなるため、光拡散素子による画質の改善効果が顕著になる。
【0053】
(第3実施形態)
図4は本発明の第3実施形態に係る投写型表示装置の構成例を示す概略図である。図示した投写型表示装置300は、光源となるランプ31と、2つのインテグレータレンズ(フライアイレンズ)32,33と、偏光ビームスプリッタ34と、集光素子となるコンデンサーレンズ35と、光分離素子となる2つのダイクロイックレンズ36,37と、3つの反射ミラー38,39,40と、2つのリレーレンズ41a,41bと、3つのフィールドレンズ42R,42G,42Bと、第1の偏光素子となる3つの入射側偏光子43R,43G,43Bと、光変調素子となる3つの透過型液晶表示素子44R,44G,44Bと、第2の偏光素子となる3つの出射側偏光子45R,45G,45Bと、光合成素子となる光合成プリズム46と、投影光学素子となる投影レンズ47と、光拡散素子となる3つの光拡散板48R,48G,48Bとを備えた構成となっている。
【0054】
ランプ31は、白色の光を出射するもので、例えば超高圧水銀ランプを用いて構成されるものである。ランプ31は、発光部31aとリフレクタ31bとを有するものである。ランプ31の発光部31aはリフレクタ31bの焦点位置に配置されている。ランプ31の発光部31aで発生した光はリフレクタ31bで反射されることにより、ほぼ平行な光となって出射される。
【0055】
インテグレータレンズ32,33は、各々の透過型液晶表示素子44R,44G,44Bに入射する光の照度を均一化するために設けられたものである。偏光ビームスプリッタ34は、インテグレータレンズ32,33を通して入射する光を所定の方向に偏光するものである。コンデンサーレンズ35は、偏光ビームスプリッタ34を通して入射する光を集光するものである。
【0056】
ダイクロイックレンズ36は、コンデンサーレンズ35を通して入射する光のうち、赤色成分の光を90度方向に反射し、緑色成分及び青色成分の光を透過するものである。ダイクロイックレンズ37は、ダイクロイックレンズ36を透過した光のうち、青色成分の光を透過し、緑色成分の光を90度方向に反射するものである。
【0057】
反射ミラー38は、ダイクロイックレンズ36で反射した赤色成分の光を90度方向に反射するものである。反射ミラー39は、ダイクロイックレンズ37を透過した青色成分の光を90度方向に反射し、反射ミラー40は、反射ミラー39で反射した青色成分の光を90度方向に反射するものである。
【0058】
リレーレンズ41aは、ダイクロイックレンズ37から反射ミラー39に至る光路の途中に配置されている。リレーレンズ41aは、ダイクロイックレンズ37を通して入射する青色成分の光を透過するものである。リレーレンズ41bは、反射ミラー39から反射ミラー40に至る光路の途中に配置されている。リレーレンズ41bは、反射ミラー39で反射した青色成分の光を透過するものである。
【0059】
フィールドレンズ42Rは、反射ミラー38で反射した赤色成分の光を透過するものである。フィールドレンズ42Gは、ダイクロイックレンズ37で反射した緑色成分の光を透過するものである。フィールドレンズ42Bは、反射ミラー40で反射した青色成分の光を透過するものである。
【0060】
入射側偏光子43Rは、フィールドレンズ42Rを通して透過型液晶表示素子44Rに入射する赤色成分の光を偏光し、出射側偏光子45Rは、透過型液晶表示素子44Rを透過した光を偏光するものである。入射側偏光子43Gは、フィールドレンズ42Gを通して透過型液晶表示素子44Gに入射する緑色成分の光を偏光し、出射側偏光子45Gは、透過型液晶表示素子44Gを透過した光を偏光するものである。入射側偏光子43Bは、フィールドレンズ42Bを通して透過型液晶表示素子44Bに入射する青色成分の光を偏光し、出射側偏光子45Bは、透過型液晶表示素子44Bを透過した光を偏光するものである。
【0061】
透過型液晶表示素子44Rは、入射側偏光子43Rを通して入射する赤色成分の光を変調するものである。透過型液晶表示素子44Gは、入射側偏光子43Gを通して入射する緑色成分の光を変調するものである。透過型液晶表示素子44Bは、入射側偏光子43Bを通して入射する青色成分の光を変調するものである。
【0062】
光合成プリズム46は、各々の出射側偏光子45R,45G,45Bから入射する各色成分(R,G,B)の光を合成するものである。光合成プリズム46は、クロスダイクロイックプリズムを用いて構成されるものである。投射レンズ47は、光合成プリズム46で合成して得られる光(画像)を図示しないスクリーン上に拡大投影するものである。
【0063】
光拡散板48Rは、ランプ31からフィールドレンズ42Rを通して入射する赤色成分の光を拡散透過するものである。光拡散板48Rは、ランプ31を最上流とし、投影レンズ47を最下流とした光路上において、透過型液晶表示素子44Rよりも光源側で、かつ当該透過型液晶表示素子44Rに最も近いレンズであるフィールドレンズ42Rと入射側偏光子43Rの間に配置されている。また、光拡散板48Rは、フィールドレンズ42Rの出射側に配置されている。
【0064】
光拡散板48Gは、ランプ31からフィールドレンズ42Gを通して入射する緑色成分の光を拡散透過するものである。光拡散板48Gは、ランプ31を最上流とし、投影レンズ47を最下流とした光路上において、透過型液晶表示素子44Gよりも光源側で、かつ当該透過型液晶表示素子44Gに最も近いレンズであるフィールドレンズ42Gと入射側偏光子43Gの間に配置されている。また、光拡散板48Gは、フィールドレンズ42Gの出射側に配置されている。
【0065】
光拡散板48Bは、ランプ31からフィールドレンズ42Bを通して入射する青色成分の光を拡散透過するものである。光拡散板48Bは、ランプ31を最上流とし、投影レンズ47を最下流とした光路上において、透過型液晶表示素子44Bよりも光源側で、かつ当該透過型液晶表示素子44Bに最も近いレンズであるフィールドレンズ42Bと入射側偏光子43Bの間に配置されている。また、光拡散板48Bは、フィールドレンズ42Bの出射側に配置されている。
【0066】
上記構成からなる投写型表示装置300においては、ランプ31から出射した白色光がインテグレータレンズ32,33、偏光ビームスプリッタ34及びコンデンサーレンズ5を順に透過してダイクロイックレンズ36に入射する。ダイクロイックレンズ36では、赤色成分の光が反射し、緑色成分及び青色成分の光が透過する。
【0067】
ダイクロイックレンズ36で反射した赤色成分の光は、反射ミラー38で反射した後、フィールドレンズ42R、光拡散板48R及び入射側偏光子43Rを順に透過する。さらに、入射側偏光子43Rを透過した光は透過型液晶表示素子44Rに入射し、そこで映像信号に応じて変調される。透過型液晶表示素子44Rで変調された赤色成分の光は、出射側偏光子45Rを透過して光合成プリズム46に入射する。
【0068】
一方、ダイクロイックレンズ36を透過した光はダイクロイックレンズ37に入射する。ダイクロイックレンズ37では、青色成分の光が透過し、緑色成分の光が反射する。ダイクロイックレンズ37で反射した緑色成分の光は、フィールドレンズ42G、光拡散板48G及び入射側偏光子43Gを順に透過する。さらに、入射側偏光子43Gを透過した光は透過型液晶表示素子44Gに入射し、そこで映像信号に応じて変調される。透過型液晶表示素子44Gで変調された緑色成分の光は、出射側偏光子45Gを透過して光合成プリズム46に入射する。
【0069】
また、ダイクロイックレンズ37を透過した青色成分の光は、リレーレンズ41aを透過して反射ミラー39で反射した後、リレーレンズ41bを透過して反射ミラー40で反射する。また、反射ミラー40で反射した青色成分の光は、フィールドレンズ42B、光拡散板48B及び入射側偏光子43Bを順に透過する。さらに、入射側偏光子43Bを透過した光は透過型液晶表示素子44Bに入射し、そこで映像信号に応じて変調される。透過型液晶表示素子44Bで変調された青色成分の光は、出射側偏光子45Bを透過して光合成プリズム46に入射する。
【0070】
光合成プリズム46では、緑色成分の光が透過し、赤色成分及び青色成分の光が90度方向に反射する。このため、光合成プリズム46に入射した各色成分の光は合成されて同じ方向に出射される。こうして合成された光は投射レンズ47に入射する。投射レンズ47は、光合成プリズム46から入射した光の映像(画像)を所定の倍率に拡大してスクリーンに映し出す。
【0071】
このように動作する投写型表示装置300において、光合成プリズム46に入射する赤色成分の光は、透過型液晶表示素子44Rよりも光源側に設けられた光拡散板48を透過する際に拡散する。同様に、光合成プリズム46に入射する緑色成分の光は、透過型液晶表示素子44Gよりも光源側に設けられた光拡散板48Gを透過する際に拡散し、光合成プリズム46に入射する青色成分の光は、透過型液晶表示素子44Bよりも光源側に設けられた光拡散板48Bを透過する際に拡散する。したがって、上記第1実施形態及び第2実施形態と同様に、プリズム接合部での光の散乱に起因したスクリーン上の影が視覚的に目立たなくなる。
【0072】
なお、上記各実施形態においては、フィールドレンズの出射側に当該フィールドレンズと別個に光拡散素子(光拡散板)を設けるようにしたが、これに限らず、例えば、AR(antireflection)コートなどの成膜コストを下げるために、光拡散素子をフィールドレンズと一体化した構成としてもよい。レンズを一体化する方法としては、例えばフィルム上、もしくはガラス基板に形成された光拡散素子を、熱硬化樹脂、UV硬化樹脂などによって貼合する方法などがある。
【0073】
また、光変調素子として液晶表示素子を用いた場合は、各色成分の光が光拡散素子を透過した後に偏光子に入射することになる。このため、光拡散素子の特性としては、当該光拡散素子を透過する際に光が複屈折しないよう、非複屈折性を有することが重要となる。
【0074】
ただし、光変調素子は液晶表示素子に限らず、例えばDMD(Digital Micromirror Device)やその他の変調素子を光変調素子に用いてもよい。
【0075】
また、上記各実施形態においては、フィールドレンズの出射側に光拡散素子を配置したが、フィールドレンズの入射側に光拡散素子を配置してもよい。
【0076】
また、拡散素子の配置位置としては、後段のインテグレータレンズ(フライアイレンズ)と光変調素子との間がよく、更に光利用効率を高めるためには光変調素子側に最も近いレンズ(フィールドレンズ)の周辺部に配置するのがよい。また、フライアイレンズではなくロッドインテグレータを使用している光学系の場合は、ロッドインテグレータ直後のレンズと光変調素子との間がよく、更に光利用効率を高めるためには光変調素子側に最も近いレンズ(フィールドレンズ)の周辺部に配置するのがよい。他の配置場所としては、光源と前段のフライアイレンズ(もしくはロッドインテグレータの入射側)の間が良く、更に光源としてレーザ発光素子を利用している場合は光束の径がより小さい位置に配置するのが、光利用効率を高められるため好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1実施形態に係る投写型表示装置の構成例を示す概略図である。
【図2】光拡散素子を設けた場合の光入射角度と光強度の関係を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る投写型表示装置の構成例を示す概略図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る投写型表示装置の構成例を示す概略図である。
【図5】光合成用のクロスダイクロイックプリズムの構成を示す図である。
【図6】クロスダイクロイックプリズムに入射する光の経路を示す模式図である。
【図7】光拡散素子を設けない場合の光入射角度と光強度の関係を示す図である。
【図8】スクリーン上の影を示す図である。
【符号の説明】
【0078】
1,31…ランプ、11R,11G,11B,27R,27G,27B…反射型液晶表示素子、12,28,46…光合成プリズム、13,29,47…投影レンズ、14R,14G,14B,30R,30G,30B,48R,48G,48B…光拡散板、21R,21G,21B…レーザ発光素子、44R,44G,44B…透過型液晶表示素子、100,200,300…投写型表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から出射した光を色成分ごとに変調する複数の光変調素子と、
前記複数の光変調素子の各々よりも前記光源側に配置された複数の光拡散素子と、
前記複数の光変調素子で変調した各色成分の光を合成する光合成素子と、
前記光合成素子で合成した光を投影する投影光学素子と
を備えることを特徴とする投写型表示装置。
【請求項2】
前記光拡散素子の拡散角度が3度以上8度以下である
ことを特徴とする請求項1記載の投写型表示装置。
【請求項3】
前記光拡散素子は非複屈折性を有する
ことを特徴とする請求項1記載の投写型表示装置。
【請求項4】
前記光源はコヒーレントな光源である
ことを特徴とする請求項1記載の投写型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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