説明

投影型映像表示装置

【目的】 ホワイトバランスに優れ、自然な色彩を再現することができる投影型映像表示装置とする。
【構成】 スクリーンに投影すべき画像が表示される液晶パネルと、液晶パネルに光源光を投射する光源と、光源から光源光を液晶パネルに導く反射系とを備えており、液晶パネルは液晶が封入された液晶セルと、液晶セルの入射側及び射出側にそれぞれ設けられる入射側偏光板及び射出側偏光板とを有し、両偏光板のうち少なくとも射出側偏光板は紫外線を透過させるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、拡大画像を表示する液晶パネルを用いた投影型映像表示装置、詳しくはホワイトバランスに優れ、自然な色彩を再現することができる投影型映像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の投影型映像表示装置について図3及び図4を参照しつつ説明する。この種の投影型映像表示装置には、赤色、緑色、青色(以下、R、G、Bとする)の3つの液晶パネル31R、31G、31Bを用いたものがある。かかる投影型映像表示装置は、光源光Lを発する光源10と、光源光Lを各成分LR、LG、LBに分解する反射系20と、拡大投影すべき画像がR、G、Bに対応して表示される3枚の液晶パネル31R、31G、31Bと、3枚の液晶パネル31R、31G、31Bを透過した各成分LR、LG、LBを重畳して図外のスクリーンに拡大投影する拡大投影用レンズ系40とを有している。
【0003】反射系20は、図3に示すように、成分LG、LBのみを透過させる第1のダイクロイックミラー211 と、成分LGのみを透過させる第2のダイクロイックミラー212 と、成分LRのみを透過させる第3のダイクロイックミラー213 と、成分LR、LBのみを透過させる第4のダイクロイックミラー214 と、入射されたすべての成分を反射させる第1〜第2の全反射ミラー201 〜202 とを有している。なお、図3に示す230 は、UV−IRフィルターである。また、240 はコールドミラーである。
【0004】成分LGに対応した画像が表示される液晶パネル31Gには、第1のダイクロイックミラー211 と第2のダイクロイックミラー212 とを透過した成分LGが入射される。また、成分LRに対応した画像が表示される液晶パネル31Rには、第1のダイクロイックミラー211で選択的に反射され、第1の全反射ミラー201 で反射された成分LRが入射される。さらに、成分LBに対応した画像が表示される液晶パネル31Bには、第1のダイクロイックミラー211 を透過し、かつ第2のダイクロイックミラー212 で選択的に反射された成分LBが入射される。
【0005】液晶パネル31Bを透過した成分LB及び液晶パネル31Rを透過した成分LRは、第3のダイクロイックミラー213 に入射される。また、液晶パネル31Gを透過した成分LGは第2の全反射ミラー202 を介して第4のダイクロイックミラー214 に入射される。この第4のダイクロイックミラー214 には、前記第3のダイクロイックミラー213 に入射された成分LR、LBも入射されているので、第4のダイクロイックミラー214 において各成分LR、LG、LBが重畳され、拡大投影レンズ系40を介してスクリーンに投影される。
【0006】以下、液晶パネル31Rを例として、液晶パネルについて説明する。液晶パネル31Rは、図4に示すように、液晶315 が2枚のガラス基板316 に封入されてなる液晶セル311Rと、この液晶セル311Rの前側 (光源10側) に設けられるコンデンサーレンズ312R及び入射側偏光板313Rと、液晶セル311Rの後側に設けられる射出側偏光板314Rとを有している。液晶セル311Rと、入射側偏光板313Rと、コンデンサーレンズ312Rとの間には、冷却ファンからの冷却風が流通するように所定の隙間が開けられている。これに対して、射出側偏光板314Rは、液晶セル311Rに密着して設けられている。また、前記入射側偏光板313R及び射出側偏光板314Rには、入射された紫外線を透過させないための添加物が混入されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した従来の投影型映像表示装置には以下のような問題点がある。従来の投影型映像表示装置では、光源光Lに含まれる各成分LR、LG、LBのうち成分LBの透過率が低下するため、ホワイトバランスが成分LG側に偏りがちになり、自然な色彩を再現することが困難である。成分LBの透過率が低いのは、偏光板が紫外線を透過させないようになっているためである。
【0008】本発明は上記事情に鑑みて創案されたもので、ホワイトバランスに優れ、自然な色彩を再現することができる投影型映像表示装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明に係る投影型映像表示装置は、スクリーンに投影すべき画像が表示される液晶パネルと、この液晶パネルに光源光を投射する光源と、光源から光源光を液晶パネルに導く反射系とを備えており、前記液晶パネルは液晶が封入された液晶セルと、この液晶セルの入射側及び射出側にそれぞれ設けられる入射側偏光板及び射出側偏光板とを有し、両偏光板のうち少なくとも射出側偏光板は紫外線を透過させるようになっている。
【0010】
【実施例】図1は紫外線を透過させる場合と透過させない場合とを比較するためのグラフ、図2はホワイトバランスと黒体放射軌跡との関係を示すグラフである。なお、従来のものと略同一の部品等には同一の符号を付して説明を行う。
【0011】本実施例に係る投影型映像表示装置は、スクリーンに投影すべき画像が表示される3枚の液晶パネル31R、31G、31Bと、この液晶パネル31R、31G、31Bに光源光Lを投射する光源10と、光源10から光源光Lを各液晶パネル31R、31G、31Bに導く反射系20とを備えている。
【0012】なお、3枚の液晶パネル31R、31G、31Bの構造は同一なので、液晶パネル31R、31G、31Bの代表として赤色に対応する画像が表示される液晶パネル31Rを挙げて説明する。液晶パネル31Rの構造、すなわち液晶315 が封入された液晶セル311Rと、この液晶セル311Rの入射側及び射出側にそれぞれ設けられる入射側偏光板313R及び射出側偏光板314Rとを有している点は、従来の技術の欄で説明した液晶パネル31Rと同様である。
【0013】しかし、この液晶パネル31Rが従来のものと異なる点は、射出側偏光板314Rが紫外線を透過させる点にある。射出側偏光板314Rが紫外線を透過させるとすると、図1に示すように、従来のものであれば、380nm 以下の成分は透過できないが、紫外線が透過できるようにしたものでは、330nm 以上の成分を透過させることができる。従って、この本発明に係る投影型映像表示装置に用いられる液晶パネル31Rでは、光源光Lの成分LBに相当する短波側の成分の透過率が向上する。すなわち、画像の表示に用いられる成分LBが従来の場合より増加するのである。
【0014】このように、紫外線を透過させる射出側偏光板314Rを得るには、従来であれば混入していた紫外線を透過させなくする添加物を混入せずに射出側偏光板314Rを成形する。なお、入射側偏光板313Rは、従来のものと同様に紫外線を透過させないものを使用する。
【0015】一方、前記反射系20は、2枚の全反射ミラー201 〜202 と、4枚のダイクロイックミラー211 〜214 とを有し、光源10からの光源光Lを成分LR、LG、LBに分解し、各成分LR、LG、LBをそれぞれ対応する液晶パネル31R、31G、31Bに入射させるものである。なお、3枚の液晶パネル31R、31G、31B及び反射系20は、従来の投影型映像表示装置と同様に配置されているので、詳細な説明は省略する。
【0016】ホワイトバランスは、図2に実線Cで示す黒体放射軌跡線上にあることが望ましいが、従来のように、紫外線を透過させない入射側偏光板と射出側偏光板とを使用し、光源10としてメタルハライドランプを用いる場合には、ホワイトバランスは点Aの位置にある。しかし、本発明に係る投影型映像表示装置のように、入射側偏光板313Rのみが紫外線を透過しない、すなわち射出側偏光板のみが紫外線を透過させるようにしておけば、ホワイトバランスは従来より黒体放射軌跡に近い点Bに変位し、より自然な色彩を再現することができる。
【0017】なお、上述の実施例では、3枚の液晶パネル31R、31G、31Bを使用した投影型映像表示装置を例に挙げたが、本発明はこれに限定されることなく、1枚の液晶パネルのみを使用するいわゆる単板式の投影型映像表示装置にも応用することができる。
【0018】さらに、入射側偏光板には紫外線を透過させないコーティングを施し、射出側偏光板には該コーティングを施さないようにしても上述と同様の効果を奏することができる。
【0019】
【発明の効果】本発明に係る投影型映像表示装置は、スクリーンに投影すべき画像が表示される液晶パネルと、この液晶パネルに光源光を投射する光源と、光源から光源光を液晶パネルに導く反射系とを備えており、前記液晶パネルは液晶が封入された液晶セルと、この液晶セルの入射側及び射出側に設けられる入射側偏光板及び射出側偏光板とを有し、前記入射側偏光板は入射された紫外線を透過させないように構成されているので、従来のものより光源光の成分LBが増加してホワイトバランスが理想とする黒体放射軌跡線に近づく。これにより、従来より自然な色彩を再現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】紫外線を透過させる場合と透過させない場合とを比較するためのグラフである。
【図2】ホワイトバランスと黒体放射軌跡との関係を示すグラフである。
【図3】投影型映像表示装置の構成を示す概略的構成図である。
【図4】液晶パネルの構成を示す概略的構成図である。
【符号の説明】
10 光源
20 反射系
31R、31G、31B 液晶パネル
L 光源光

【特許請求の範囲】
【請求項1】 スクリーンに投影すべき画像が表示される液晶パネルと、この液晶パネルに光源光を投射する光源と、光源から光源光を液晶パネルに導く反射系とを具備しており、前記液晶パネルは液晶が封入された液晶セルと、この液晶セルの入射側及び射出側にそれぞれ設けられる入射側偏光板及び射出側偏光板とを有し、両偏光板のうち少なくとも射出側偏光板は紫外線を透過させることを特徴とする投影型映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平5−11247
【公開日】平成5年(1993)1月19日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−189202
【出願日】平成3年(1991)7月2日
【出願人】(000005049)シヤープ株式会社 (33,933)