説明

投影装置、投影制御方法及びプログラム

【課題】センサの経時変化による性能の劣化等を勘案し、長期間にわたって常に正確なフォーカス状態を維持する。
【解決手段】光像を形成し、形成した光像を自動合焦機能を有するレンズ光学系により投影して投影対象面で結像させる投影部(14〜25)と、投影部(14〜25)の光学レンズユニット22の温度を検出する温度センサ27と、温度センサ27の検出結果に対応する補正値を設定したテーブルを記憶したプログラムメモリ29と、温度センサ27での検出結果に応じてプログラムメモリ29の記憶するテーブルを参照し、得た補正値により光学レンズユニット22のフォーカスレンズ22aの位置を移動させて自動合焦機能による結像位置を補正し、補正した結像位置に対するフォーカスレンズ22a位置の微調整入力を受付け、受付けた微調整入力に応じてプログラムメモリ29の記憶するテーブルを更新設定させる制御部28とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動合焦機能を有するプロジェクタ等に好適な投影装置、投影制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液例式の投写型表示装置で、冷却液の温度変化によりフォーカスずれが発生した場合に、そのフォーカスずれを自動的に補正して常に最良の投射画像を得るべく、冷却液の温度を温度センサにより検出し、検出した温度に応じてフォーカスレンズを駆動するモータの回転方向及び回転量を制御するようにした技術が考えられている。(例えば、特許文献1)
また、投射表示装置において、光源点灯後に時間が経過しても、計時に従ってフォーカスレンズ群を移動してピントずれが発生しないようにするべく、光源が点灯した時点で計時を開始し、以後、計時によるずれ量のタイムテーブルを基にフォーカス補正量を演算し、このフォーカス補正量にモード別の補正量を加えて校正した上で、フォーカスモータを駆動し、フォーカスレンズ群を移動させてピント補正を行なう技術が考えられている。(例えば、特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−244847号公報
【特許文献2】特開2006−163060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1,2に記載された技術は、レンズの温度、あるいは光源ランプを点灯してからの時間を基準として、フォーカスレンズに生じている筈のずれ量を補正し、正確なフォーカス状態を維持するようにしたものである。
【0005】
しかしながら、現実の製品では、各種センサや光学レンズ等で特性に個体毎のばらつきが大きいため、上記特許文献1,2に記載された原理的な補正に加えて、工場出荷前に各個体毎にキャリブレーションを施してフォーカス補正量を調整する必要があった。
【0006】
しかるに、プロジェクタ装置がユーザに購入され、長期間にわたって使用に供されると、各種センサや光学レンズ系の経時変化、具体的には検出精度の劣化等に連れて初期のフォーカス精度を維持することができなくなり、徐々にフォーカス位置にずれを生じるようになる。
【0007】
こうした経時変化等によるフォーカス状態のずれに関し、上記特許文献1,2に記載された技術では全く対処することができない。
【0008】
本発明は上記のような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、センサの経時変化による性能の劣化等を勘案し、長期間にわたって常に正確なフォーカス状態を維持することが可能な投影装置、投影制御方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、光源からの光を用いて光像を形成し、形成した光像を自動合焦機能を有するレンズ光学系により投影して投影対象面で結像させる投影手段と、上記投影手段のレンズ光学系の温度を検出する温度検出手段と、上記温度検出手段の検出結果に対応する補正値を設定したテーブルを記憶したテーブル記憶手段と、上記温度検出手段での検出結果に応じて上記テーブル記憶手段の記憶するテーブルを参照し、得た補正値により上記投影手段のレンズ光学系中の特定のレンズ位置を移動させ、自動合焦機能による結像位置を補正する投影制御手段と、上記投影制御手段で補正した結像位置に対する上記特定のレンズ位置の微調整入力を受付ける微調整入力手段と、上記微調整入力手段で受付けた微調整入力に応じて上記テーブル記憶手段の記憶するテーブルを更新設定させる更新手段とを具備したことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発明において、上記更新手段は、上記テーブル記憶手段の記憶するテーブルに対し、設定温度範囲両端での補正値を固定して受付けた微調整入力に伴う補間処理を実行することを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、上記請求項1記載の発明において、上記更新手段は、上記テーブル記憶手段の記憶するテーブルに対し、受付けた微調整入力に伴って設定温度範囲内の補正値全体を一律にシフトすることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、上記請求項1記載の発明において、通常の投影動作を行なうモードと上記投影手段のレンズ光学系中の特定のレンズ位置の補正を行なうキャリブレーションモードとを切換設定するモード設定手段をさらに具備し、上記微調整入力手段及び更新手段は、上記モード設定手段により上記キャリブレーションモードが設定されている場合に有効となることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、光源からの光を用いて光像を形成し、形成した光像を自動合焦機能を有するレンズ光学系により投影して投影対象面で結像させる投影部を備えた投影装置の投影制御方法であって、上記投影部のレンズ光学系の温度を検出する温度検出工程と、上記温度検出工程での検出結果に対応する補正値を設定したテーブルを予め記憶するテーブル記憶工程と、上記温度検出工程での検出結果に応じて上記テーブル記憶工程で記憶したテーブルを参照し、得た補正値により上記投影部のレンズ光学系中の特定のレンズ位置を移動させ、自動合焦機能による結像位置を補正する投影制御工程と、上記投影制御工程で補正した結像位置に対する上記特定のレンズ位置の微調整入力を受付ける微調整入力工程と、上記微調整入力工程で受付けた微調整入力に応じて上記テーブルを更新設定させる更新工程とを有したことを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、光源からの光を用いて光像を形成し、形成した光像を自動合焦機能を有するレンズ光学系により投影して投影対象面で結像させる投影部を備えた投影装置に内蔵されたコンピュータが実行するプログラムであって、上記投影部のレンズ光学系の温度を検出する温度検出ステップと、上記温度検出ステップでの検出結果に対応する補正値を設定したテーブルを予め記憶するテーブル記憶ステップと、上記温度検出ステップでの検出結果に応じて上記テーブル記憶ステップで記憶したテーブルを参照し、得た補正値により上記投影部のレンズ光学系中の特定のレンズ位置を移動させ、自動合焦機能による結像位置を補正する投影制御ステップと、上記投影制御ステップで補正した結像位置に対する上記特定のレンズ位置の微調整入力を受付ける微調整入力ステップと、上記微調整入力ステップで受付けた微調整入力に応じて上記テーブルを更新設定させる更新ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、センサの経時変化による性能の劣化等を勘案し、長期間にわたって常に正確なフォーカス状態を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の一形態に係るプロジェクタ装置の電子回路の機能構成を示すブロック図。
【図2】同実施の形態に係る電源オン時のフォーカスレンズの位置補正に関する処理内容を示すフローチャート。
【図3】同実施の形態に係る温度補正ルックアップテーブルの内容とその遷移状態とを例示する図。
【図4】同実施の形態に係る温度補正ルックアップテーブルの内容の他の遷移状態を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明をDLP(Digital Light Processing)(登録商標)方式のプロジェクタ装置に適用した場合の実施の一形態について図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態に係るプロジェクタ装置10の電子回路の構成について示すものである。同図で、入出力コネクタ部11より入力される各種規格の画像信号が、入出力インタフェース(I/F)12、システムバスSBを介して画像変換部13で所定のフォーマットの画像信号に統一された後に、投影処理部14へ送られる。
【0019】
投影処理部14は、送られてきた画像信号をビデオRAM15に展開して記憶させた上でこのビデオRAM15の記憶内容からビデオ信号を生成する。投影処理部14は、このビデオ信号のフレームレート、例えば60[フレーム/秒]と色成分の分割数、及び表示階調数を乗算した、より高速な時分割駆動により、空間的光変調素子(SOM)である例えばマイクロミラー素子16を表示駆動する。
【0020】
一方、リフレクタ17内に配置された、例えば超高圧水銀灯を用いた光源ランプ18が高輝度の白色光を出射する。光源ランプ18の出射した白色光は、カラーホイール19を介して時分割で原色に着色され、インテグレータ20で輝度分布が均一な光束とされた後にミラー21で全反射して上記マイクロミラー素子16に照射される。
【0021】
しかして、マイクロミラー素子16での反射光で光像が形成され、形成された光像が光学レンズユニット22を介して、投影対象となるここでは図示しないスクリーンに投影表示される。
【0022】
光学レンズユニット22は、マイクロミラー素子16で形成された光像を拡大してスクリーン等の対象に投影するものであり、合焦位置及びズーム位置(投影画角)を任意に可変できるものとする。
【0023】
このうち、特に合焦位置はフォーカスレンズ22aが図中に矢印Aで示す如く光軸方向に沿って前後に移動することで制御されるもので、当該フォーカスレンズ22aはステッピングモータ(M)23の回動駆動により移動する。
【0024】
しかるに、上記光源ランプ18の点灯駆動、及び上記カラーホイール19を回転させるモータ(M)24の回転駆動、及び上記ステッピングモータ23の回動駆動等をいずれも投影光処理部25が実行する。
【0025】
この投影光処理部25はまた、リフレクタ17に取付けられて光源ランプ18の温度を検出する温度センサ26、及び光学レンズユニット22のレンズ鏡筒の外周面の一部に取付けられてフォーカスレンズ22aを含む光学レンズユニット22の温度を検出する温度センサ27からのそれぞれ温度データを入力する。
【0026】
上記各回路の動作すべてを制御部28が制御する。この制御部28は、CPU、ワークメモリ等により構成され、EEPROM等の不揮発性メモリでなるプログラムメモリ29に固定記憶された動作プログラムや各種定型データ、後述する温度補正テーブル等を用いて制御動作を実行する。
【0027】
上記制御部28にはさらに、上記システムバスSBを介して測距処理部30、及び音声処理部31が接続される。
【0028】
測距処理部30は、このプロジェクタ装置10の前面に上記光学レンズユニット22と近接した、直交配置された2対の位相差センサからなる測距センサ32を制御駆動し、それらの検出出力から任意の点位置までの距離を算出するもので、算出された距離値データを上記制御部28へ送る。
【0029】
音声処理部31は、PCM音源等の音源回路を備え、投影動作時に与えられる音声データをアナログ化し、プロジェクタ装置10の本体ケーシングの例えば背面に設けられるスピーカ33を駆動して拡声放音させ、あるいは必要によりビープ音等を発生させる。
【0030】
なお、制御部28に対して、キースイッチ部34及びIr受光部35から直接ユーザのキー操作に応じた操作信号が入力される。
このキースイッチ部34としては、例えば電源キー、ズームキー、フォーカスキー、入力選択キー、「Mode」キー、カーソル(「↑」「↓」「←」「→」)キー、「Enter」キー、「Cancel」キー等からなるもので、同様のキーがこのプロジェクタ装置10の図示しないリモートコントローラにも配設されているものとする。
【0031】
Ir受光部35は、プロジェクタ装置10の本体ケーシングの前面及び背面に設けられ、図示しないリモートコントローラからの赤外光変調信号を復調してコード信号化し、制御部28に送出する。
【0032】
次に上記実施の形態の動作について説明する。
図2は、このプロジェクタ装置10の電源がオンされてから制御部28が通常の投影動作と並行して実施する、光学レンズユニット22のフォーカスレンズ22aの位置の補正に関する処理内容を示すものである。
【0033】
その当初には、まず光源ランプ18の点灯を開始する(ステップS01)。併せて、光学レンズユニット22のフォーカスレンズ22aを予め設定された初期位置に移動させる(ステップS02)。
【0034】
これと共に、以後自動的に温度補正処理を行なう周期を計時する、制御部28内に設けた温度補正タイマの計時を開始させる(ステップS03)。
【0035】
その後、当該温度補正タイマの計時内容が所定の値となった否かにより、フォーカスレンズ22aの位置の温度補正を行なうタイミングとなったか否かを判断する(ステップS04)。
【0036】
ここでまだ温度補正タイマの計時内容が所定の値となっておらず、フォーカスレンズ22aの位置の温度補正を行なうタイミングではないと判断した場合には、次いでフォーカスレンズ22aの位置を手動で移動するためのフォーカスキーの操作がなされたか否かをキースイッチ部34またはIr受光部35からの入力の有無により判断する(ステップS05)。
【0037】
このステップS05でフォーカスキーの操作がなされていないと判断すると、上記ステップS04からの処理に戻る。
【0038】
以後ステップS04,S05の処理を繰返し実行することにより、フォーカスレンズ22aの位置の温度補正を行なうタイミングとなるか、またはユーザによりフォーカスキーが操作されるのを待機する。
【0039】
しかして、フォーカスレンズ22aの位置の温度補正を行なうタイミングとなった場合、ステップS04でこれを判断し、投影光処理部25を介して温度センサ27により光学レンズユニット22の温度データを取得する(ステップS06)。
【0040】
次いで、取得した温度データを用い、プログラムメモリ29に予め記憶している温度補正テーブルLTを参照して、フォーカスレンズ22aの補正量を取得する(ステップS07)。
【0041】
図3(A)−1は、プログラムメモリ29に記憶されている初期状態の温度補正テーブルLTの内容を例示するものである。同図は、温度センサ27が検出した温度データの十の位を縦軸、一の位を横軸としてその組合せにより上記フォーカスレンズ22aの駆動位置を補正する前後(+/−)ステップ数を補正値として読出す。
【0042】
図3(A)−2は、上記図3(A)−1で示す初期状態の温度補正テーブルLTの内容をグラフ化したものであり、温度データによりフォーカスレンズ22aの補正量がリニアに変化するものとしている。
こうして温度補正テーブルLTから読出した補正値に従い、投影光処理部25、ステッピングモータ23を介してその時点でのフォーカスレンズ22aの正規の駆動位置を移動させる(ステップS08)。
【0043】
その後、上記温度補正タイマの計時を再スタートさせた上で(ステップS09)、上記ステップS04からの待機処理に戻る。
【0044】
また、上記ステップS05でユーザによりフォーカスキーが操作されたと判断すると、次いでその時点でのフォーカスレンズ22aの位置を一時的に制御部28内に保存した上で(ステップS10)、ユーザに操作された通りにフォーカスレンズ22aを移動させ(ステップS11)、フォーカスキーの操作が解除されたか否かを判断する(ステップS12)。
【0045】
ここで依然としてフォーカスキーが操作されている間は、その操作に従って上記ステップS11でフォーカスレンズ22aを移動させる。
【0046】
こうしてフォーカスキーが操作される間、ステップS11,S12の操作を繰返し実行し、フォーカスレンズ22aの移動を続行する。
【0047】
そして、フォーカスキーの操作が解除された時点で、上記ステップS12でこれを判断し、フォーカスレンズ22aの移動を停止させた上で、新たな移動後のフォーカスレンズ22aの位置を保持する(ステップS13)。
【0048】
しかるに、フォーカスレンズの移動前と移動後の各レンズ位置の差を算出し、その値が予め設定されている規定量以下であるか否かにより、上記フォーカスキーの操作が正確なフォーカス状態を得るための微調整であったか、あるいはプロジェクタ装置10の設置位置変更等による新たな投影対象に基づく操作であったかを判断する(ステップS14)。
【0049】
ここで微調整のための操作ではないと判断した場合には、制御部28内部に設ける、微調整のための操作時間をカウントするための再調整タイマをスタートさせた上で(ステップS20)、上記ステップS04からの待機処理に戻る。
【0050】
また、上記ステップS14でフォーカスレンズの移動前後のレンズ位置の差が規定量以下であり、上記フォーカスキーの操作が正確なフォーカス状態を得るための微調整であったと判断した場合には、微調整のための操作時間をカウントしている再調整タイマのカウント値を参照し(ステップS15)、予め設定した規定時間以上をかけた微調整のためのフォーカスキー操作であるか否かを判断する(ステップS16)。
【0051】
ここでフォーカスキー操作に要した時間が規定値未満であった場合には、フォーカスキーの操作は微調整のためではなく、プロジェクタ装置10の設置位置変更等による新たな投影対象に基づく操作であったものとして、上記ステップS20に進み、微調整のための操作時間をカウントするための再調整タイマをスタートさせた上で、上記ステップS04からの待機処理に戻る。
【0052】
また、上記ステップS16でフォーカスキー操作に要した時間が規定値以上であり、微調整のための操作がなされたと判断した場合には、投影光処理部25を介して温度センサ27でその時点の光学レンズユニット22の温度データを取得し(ステップS17)、取得したフォーカスレンズ22aの温度データに対応したプログラムメモリ29の温度補正テーブルLTの補正値を変更設定する(ステップS18)。
【0053】
図3(B)−1は、ユーザの微調整操作後のフォーカスレンズ22aの位置が「+8」ステップで有り、その時点での光学レンズユニット22の温度データが「44°」であった場合の温度補正テーブルLTの変更設定後の内容を例例示するものであり、図3(B)−2はそれをグラフ化したものである。
【0054】
ここでは、上記図3(A)−1でも示した通り温度データが「44°」のときに初期のフォーカスレンズ22aの位置が「+4」ステップであるのに対し、ユーザの微調整操作により「+8」ステップに移動され、その微調整操作を温度補正テーブルLTに反映させた場合を示している。
【0055】
このようなユーザの微調整は、例えば温度センサ27が長期間の使用により性能が劣化し、検出する温度データが実際の温度より低めになることなどに起因すると思われ、単に上記温度データが「44°」の場合のみならず、温度補正テーブルLT全体を補正する必要が生じるものである。
【0056】
そこで本実施の形態では、上記ステップS18で変更設定した内容に基づき、且つ温度補正テーブルLTで規定する設定温度範囲両端での補正値は変更せずに固定するものとして、全体の特性変化が滑らかとなるような補間処理を実行して、温度補正テーブルLT全体を更新設定する(ステップS19)。
【0057】
図3(C)−1は、上記補間処理後の温度補正テーブルLTの内容を例示するものであり、図3(C)−2はそれをグラフ化したものである。図3(C)−2のグラフ中の実線で示す如く、上記ユーザのフォーカスの微調整の内容を反映した上で全体が滑らかな変化特性となるような補間処理を実行したことにより、次回からは温度センサ27での温度データに対応するフォーカスレンズ22aの駆動位置の補正をより正確に実行することができ、結果として温度センサ27の劣化等の影響を排除して、さらに長い期間にわたるフォーカスレンズ22aの位置の温度に基づく正確な補正を実現できる。
【0058】
こうしてステップS19での温度補正テーブルLTの補間処理による更新設定後、再び上記ステップS04からの待機処理に戻る。
【0059】
このように、例えば温度センサ27の経時変化による性能の劣化、あるいはその他装置全体での不具合による温度補正の精度の低下を補償するべく、ユーザによるフォーカスレンズ22aの位置の微調整操作を反映して温度補正テーブルLTの内容を更新設定するものとしたので、長期間にわたって常に正確なフォーカス状態を維持することが可能となる。
【0060】
なお、上記実施の形態では、図3(C)−1,2でも説明したように、温度補正テーブルLTの更新設定に関し、設定温度範囲両端での補正値を固定した状態で、ユーザの微調整操作に伴う補間処理を実行するものとした。
【0061】
これにより、フォーカスレンズ22aの位置の温度補正に際してその補正範囲が予め固定されているような制御を行なう場合にも容易に対応できる。
【0062】
また、上記図3(C)−1,2で説明したような、設定温度範囲両端での補正値を固定する必要がない場合には、上記図3(C)−1,2のような更新設定に代えて、図4(A),(B)に示すようにユーザによるフォーカスレンズ22aの位置の微調整操作を温度補正テーブルLT全体に反映して、設定温度範囲内の補正値全体を一律にシフトするものとしてもよい。
【0063】
このような更新設定を行なうものとすれば、上記上図3(C)−1,2で説明した補間処理を行なう必要がなく、制御部28が温度補正テーブルLTをより簡単に更新設定することができ、設定温度範囲全体に渡ってユーザの微調整操作を反映させることができる。
【0064】
なお、上記実施の形態では、フォーカスキーの操作の量と時間とによりユーザが微調整を行なっているのか否かを判断し、微調整を行なっていると判断した場合には即時その操作量とその時点での光学レンズユニット22の温度により温度補正テーブルLTを更新設定するものとして説明したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば入出力コネクタ部11に入力される画像信号により投影動作を実行するノーマルモードと、プログラムメモリ29内に予め記憶されているフォーカシング位置補正用のテストチャート画像を投影してユーザの微調整操作を受付けるキャリブレーションモードとをモードキーの操作により切換えるものとし、キャリブレーションモードが設定されている状態でのみ、ユーザの微調整操作に基づく温度補正テーブルLTの更新設定を行なうものとしてもよい。
【0065】
この場合、上述した如くキャリブレーションモードでは位置補正に適した専用のテストチャート画像を用いることで、より正確な温度補正内容の再設定を行なうことができることに加え、フォーカスキーの操作時間や操作量により微調整のための操作であるか否か等を制御部28側で判断する必要がなく、特にノーマルモード下での制御部28の処理を軽減できる。
【0066】
加えて、プログラムメモリ29に記憶する温度補正テーブルLTの内容を高い頻度で更新設定するのではなく、ユーザ自身が装置の性能をリニューアルしたい場合などにのみ、当該処理を実行するので、よりユーザの意志を反映したキャリブレーション動作が実現できる。
【0067】
なお、上記実施の形態は、DLP(登録商標)方式のプロジェクタ装置に適用した場合について説明したものであるが、本発明はこれに限らず、投影光学系で自動合焦機能を搭載する投影装置であれば、透過型のカラー液晶パネルを表示素子として投影動作を実行する液晶方式のプロジェクタ装置、あるいは原色の光源を時分割でモノクロの液晶表示パネルに透過させるフィールドシーケンシャル駆動の液晶方式のプロジェクタ装置、あるいはスライド投影機やオーバヘッドプロジェクタ(OHP)等でも同様に適用することが可能である。
【0068】
その他、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上述した実施の形態で実行される機能は可能な限り適宜組合わせて実施しても良い。上述した実施の形態には種々の段階が含まれており、開示される複数の構成要件により適宜の組合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施の形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、効果が得られるのであれば、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0069】
10…プロジェクタ装置、11…入出力コネクタ部、12…入出力インタフェース(I/F)、13…画像変換部、14…投影処理部、15…ビデオRAM、16…マイクロミラー素子、17…リフレクタ、18…光源ランプ、19…カラーホイール、20…インテグレータ、21…ミラー、22…光学レンズユニット、22a…フォーカスレンズ、23…ステッピングモータ(M)、24…モータ(M)、25…投影光処理部、26…温度センサ、27…温度センサ、28…制御部、29…プログラムメモリ、30…測距処理部、31…音声処理部、32…測距センサ、33…スピーカ、34…キースイッチ部、35…Ir受光部、LT…温度補正ルックアップテーブル、SB…システムバス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を用いて光像を形成し、形成した光像を自動合焦機能を有するレンズ光学系により投影して投影対象面で結像させる投影手段と、
上記投影手段のレンズ光学系の温度を検出する温度検出手段と、
上記温度検出手段の検出結果に対応する補正値を設定したテーブルを記憶したテーブル記憶手段と、
上記温度検出手段での検出結果に応じて上記テーブル記憶手段の記憶するテーブルを参照し、得た補正値により上記投影手段のレンズ光学系中の特定のレンズ位置を移動させ、自動合焦機能による結像位置を補正する投影制御手段と、
上記投影制御手段で補正した結像位置に対する上記特定のレンズ位置の微調整入力を受付ける微調整入力手段と、
上記微調整入力手段で受付けた微調整入力に応じて上記テーブル記憶手段の記憶するテーブルを更新設定させる更新手段と
を具備したことを特徴とする投影装置。
【請求項2】
上記更新手段は、上記テーブル記憶手段の記憶するテーブルに対し、設定温度範囲両端での補正値を固定して受付けた微調整入力に伴う補間処理を実行することを特徴とする請求項1記載の投影装置。
【請求項3】
上記更新手段は、上記テーブル記憶手段の記憶するテーブルに対し、受付けた微調整入力に伴って設定温度範囲内の補正値全体を一律にシフトすることを特徴とする請求項1記載の投影装置。
【請求項4】
通常の投影動作を行なうモードと上記投影手段のレンズ光学系中の特定のレンズ位置の補正を行なうキャリブレーションモードとを切換設定するモード設定手段をさらに具備し、
上記微調整入力手段及び更新手段は、上記モード設定手段により上記キャリブレーションモードが設定されている場合に有効となる
ことを特徴とする請求項1記載の投影装置。
【請求項5】
光源からの光を用いて光像を形成し、形成した光像を自動合焦機能を有するレンズ光学系により投影して投影対象面で結像させる投影部を備えた投影装置の投影制御方法であって、
上記投影部のレンズ光学系の温度を検出する温度検出工程と、
上記温度検出工程での検出結果に対応する補正値を設定したテーブルを予め記憶するテーブル記憶工程と、
上記温度検出工程での検出結果に応じて上記テーブル記憶工程で記憶したテーブルを参照し、得た補正値により上記投影部のレンズ光学系中の特定のレンズ位置を移動させ、自動合焦機能による結像位置を補正する投影制御工程と、
上記投影制御工程で補正した結像位置に対する上記特定のレンズ位置の微調整入力を受付ける微調整入力工程と、
上記微調整入力工程で受付けた微調整入力に応じて上記テーブルを更新設定させる更新工程と
を有したことを特徴とする投影制御方法。
【請求項6】
光源からの光を用いて光像を形成し、形成した光像を自動合焦機能を有するレンズ光学系により投影して投影対象面で結像させる投影部を備えた投影装置に内蔵されたコンピュータが実行するプログラムであって、
上記投影部のレンズ光学系の温度を検出する温度検出ステップと、
上記温度検出ステップでの検出結果に対応する補正値を設定したテーブルを予め記憶するテーブル記憶ステップと、
上記温度検出ステップでの検出結果に応じて上記テーブル記憶ステップで記憶したテーブルを参照し、得た補正値により上記投影部のレンズ光学系中の特定のレンズ位置を移動させ、自動合焦機能による結像位置を補正する投影制御ステップと、
上記投影制御ステップで補正した結像位置に対する上記特定のレンズ位置の微調整入力を受付ける微調整入力ステップと、
上記微調整入力ステップで受付けた微調整入力に応じて上記テーブルを更新設定させる更新ステップと
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−141644(P2012−141644A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−91472(P2012−91472)
【出願日】平成24年4月13日(2012.4.13)
【分割の表示】特願2007−73212(P2007−73212)の分割
【原出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】