説明

投球機

【課題】発射するボールに投球方向の回転及びねじり方向の回転を任意に設定できる投球機の提供を目的とする。
【解決手段】ボールを挟持及び発射する方向に回転する複数の発射ローラと、前記発射ローラにてボールが発射される際に発射方向に対して所定のねじり方向又は逆方向に回転し、当該発射ボールにねじり回転を付与又は無回転にするジャイロローラを備えたことを特徴とする投球機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野球,卓球,テニス,サッカー,バレーボール等の球技スポーツの練習に用いると効果的なボールの投球機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば野球のピッチングマシーンを例にして説明すると、任意の球速(80〜150km/h超)で直球,カーブ及びシュート等の変化球を投球できるローラ式のピッチングマシンが公知である。
しかし、直球やカーブ等の投球はボールが投球方向に回転するものである。
即ち、ボールの回転軸は打者と直交方向の平面内にある。
しかし、このようなボールの回転軸が投球方向と直交する面内だけの球種では練習用の投球機としては不充分であり、ボールの発射方向に対して所定のねじり方向の回転が加わったジャイロボール,カットボールさらにはナックル,フォークボールと称される無回転の球種も必要である。
特許文献1,2にはローラの回転軸をボールの発射方向に対して所定の角度だけねじり配置した2ローラ式,3ローラ式のピッチングマシンをそれぞれ開示する。
しかし、特許文献1に開示する2ローラ式では、発射用のローラの回転軸にねじりを与えているが、理論的には可能であっても実際には、ボールとローラ表面との摩擦が考慮されていないため、ねじりを与える回転力のねじり成分がボールとローラ表面との滑りにより減少し、ボールにねじり回転が殆ど付与されないものであった。
また、特許文献2に開示する3ローラ式では3つのローラの全てにねじり機構を付与するのは容易でない。
実際、投球機にあってはジャイロボールのみでなく、直球,カーブ等の投球方向に回転するボールの発射も必要であり、ねじり機構のローラを逆方向にねじり戻すことになるため機械的構造が複雑になる。
また、ボールを発射するためのローラの回転速度とねじり方向のジャイロ回転数を任意に変更することもできない。
特許文献3には回転する筒状部を発射ローラとは別に設けた技術を開示するが、3つの発射ローラ全体を回転しなければならず構造が複雑になり、ねじり方向のジャイロ回転数に制限が大きく実際の投手の投げる回転まで上げることが難しい問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3986124号公報
【特許文献2】特開2006−67735号公報
【特許文献3】特開2010−273930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、発射するボールに投球方向の回転及びねじり方向の回転を任意に設定できる投球機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る投球機は、ボールを挟持及び発射する方向に回転する複数の発射ローラと、前記発射ローラにてボールが発射される際に発射方向に対して所定のねじり方向又は逆方向に回転し、当該発射ボールにねじり回転を付与又は無回転にするジャイロローラを備えたことを特徴とする。
本発明に係る投球機は、上記にて例として説明した野球の投球に限定されるものではなく、全ての球技に適用できる。
例えば卓球の球すじは大きなジャイロ回転がかかっているものもあり、球の大きさが小さいこともあり発射スピードは遅いが、ジャイロ回転数は大きいボールがある。
このような球種にも本発明に係る投球機は対応可能である。
また、野球ボールより大きいサッカーボールの発射等、各種球技におけるボールの発射に用いることができる。
本明細書にてジャイロローラとは、発射ローラとは異なる方向に回転し、ボールにねじり力を付与したり、無回転にするためのローラをいう。
【0006】
このような投球機の具体的構成例としては、発射ローラは2つの発射ローラが対向配置され、ジャイロローラは2つのジャイロローラが前記2つの対向発射ローラと概ね直交する方向に対向配置されているものや、発射ローラはボールの発射方向の周回りに3つ以上有し、ジャイロローラは前記発射ローラの間に少なくとも1つ以上有するものが挙げられる。
発射ローラは対向配置した2つのローラ、又はボールの周廻りに3つ以上のローラを配置し、中央に形成した空間部にボールを投入することでボールの発射方向に回転する複数のローラの回転力でボールを挟み込み、前方に発射するものである。
従って、発射ローラの少なくとも外周部はゴム弾性のある材質がよく、圧縮性と弾発力があるものがよい。
また、発射ローラの直径は、対象となるボールの大きさや種類にもよるが、ボールの直径の2〜8倍程度がよい。
例えば、野球ボールの場合は、直径が200mm〜450mmの範囲がよい。
発射ローラの外周面は、平坦面あるいは曲率半径が80mm以上の緩やかな形状がよい。
これに対してジャイロローラは、ボールが発射ローラの間を通過する際にボールの側面に摩擦力で接触し、この発射するボールに対してねじり方向〜直角方向の回転力を付与、あるいは発射ボールが無回転になるように摩擦力を付与するものである。
よって、ジャイロローラは、発射ローラと干渉しないように配置される。
ジャイロローラは、発射ローラの回転方向に対して所定のねじり角度でボールの外周面に接触することから、外周面が凸方向の曲面であるのが好ましく、ボール半径の1/2〜4倍程度の曲率であるのが好ましく、ジャイロローラの直径も発射ローラよりも小さい方が好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、ボールを発射させるために回転する発射ローラの他にボールが発射する際にねじり方向の回転力又は無回転にするジャイロローラを独立制御された状態で設けたので理論的にはあらゆる方向の回転ボールや無回転ボールを発射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る投球機のローラの配置例を示す。 (a)は斜視図、(b)は正面図を示す。
【図2】正面から見た発射ローラに対して、ジャイロローラのねじり角度の例を示す。 (a)はねじり角度γ=0°,(b)はねじり角度γ=30°,(c)はねじり角度γ=90°の例である。
【図3】ジャイロローラのねじり角度とボールの回転力の関係を示す。 (a)はγ=0°,(b)はγ=30°,(c)はγ=90°の例である。
【図4】2つの発射ローラと2つのジャイロローラの組み合せを用いた場合の投球シミュレーション結果を示す。
【図5】3つの発射ローラと1つのジャイロローラを組み合せた構造例を示す。
【図6】3つの発射ローラに対して1つのジャイロローラをねじり配置した例を示す。 (a)はねじり角度γ=90°,(b)はγ=45°の例を示す。
【図7】3つの発射ローラと1つのジャイロローラを組み合せた場合のシミュレーション結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1〜図4は、対向する2の発射ローラ11,12に2つの対向するジャイロローラ21,22を用いた例を示す。
なお、両ジャイロローラはX−Y平面内で角度γを0゜〜90°まで可変することが可能な構造となっている。
図2は、対向する2つの発射ローラ11,12の正面から見た投球機の構成例であり、発射ローラ11,12は、それぞれモーターM,Mにて回転軸d,dが平行になるように配置されている。
図示を省略したが、2つの発射ローラ11,12との間隔が調整可能に制御されている。
この2つの発射ローラ11,12と概ね直交する方向に2つのジャイロローラ21,22が対向配置され、モーターMj1,Mj2にて回転制御され、図示を省略したが、2つのジャイロローラ21,22との間隔及び回転軸dj1,dj2のねじり角度γが2つの発射ローラの配置面に対して、γ=0〜90°まで調整可能に制御されている。
ジャイロ系のボールは、γ=30,60,90°等として角度を変えて投球することによって、飛翔するボールの3要素(球速,回転軸,スピン数)を任意に選択することができる。
また、ねじり角度を無くすことで直球やカーブ等の一般的な変化球が得られる。
【0010】
上記の投球機の構造例を用いて解析ソフト(ANSYS/LS−DYNA)にて投球シミュレーションを行った。
その結果を図4に示す。
なお、ボールは硬式野球ボールを使用し各発射ローラの回転数はN=N= 2050 [min−1],また、対向するジャイロローラの回転数はNJ1 =NJ2=5467 [min−1]とした。
このように発射ローラとジャイロローラの回転数を設定することで、4つのローラの外周速度V=34.35 m/sが等しくなるようにした。
図4より、γ=0゜の場合はスピンがほとんどない無回転のボール、γ=30゜と90゜では反時計回転のジャイロボールが投球されていることがわかる。
もちろん各ボールのスピン量は、各ローラ回転数を調節することによって変更できる。 なお、γ=30゜,90゜とも回転軸は打者の真正面方向に向いており非常にきれいなジャイロボールとなっている。
γ=30゜と90゜のスピン量Sを比較すると、γ=90゜の方が高い。
これは当然ではあるが、γ=90゜の方が大きなスピン力が働いているためであると考えられる。
一方、球速Vはγが増加するに従って低下する。
これはスピン力が増加するほど、ボールの並進力が低下するためであると推測される。
投球シミュレーションの結果、2ジャイロローラ付2発射ローラ式の投球機では、ねじり角γをつけることによってきれいなジャイロボールが投球できることが明らかになった。
もちろん、本投球機で4つのローラ回転数を変化させれば直球やカーブ等の変化球を投球可能である。
また、このように2つのジャイロローラを対向するように設けると、ボールが両側からねじり方向の回転力で支持されるので、ボールにねじり摩擦力が効果的に伝わる。
【0011】
図5,6に3つの発射ローラ11,12,13を周廻りに配置し、上部にジャイロボール投球用のジャイロローラ21を有し、このローラの回転角(ねじり角;γ)と回転数Nを変更することによってボールの回転軸を3次元のあらゆる方向に設定でき、ジャイロ回転数(スピン数)もジャイロローラの回転数によって任意に与えることができる例を示す。
【0012】
例えば、同じ球速のジャイロボールでもジャイロローラの回転数を変更することによってスピン数が異なるジャイロボールが投球可能である。
また、ジャイロボール系以外の直球やカーブ等を投球することもできる。
解析ソフト(ANSYS/LS−DYNA)を用いて投球シミュレーションを実施した結果を図7に示す。
なお、ボールは硬式野球ボールを使用し3つの発射ローラの回転数は、N= N= N=2050 [min−1],ジャイロローラの回転数N=5467 [min−1]とした。
このローラ回転数は、4つのローラの外周速度V=34.35 m/sと等しくした。
【0013】
この結果、γ=0゜の場合はスピンのあまりない直球、γ=45゜では逆スピンのカットボール、γ=90゜では反時計回転のジャイロボールがそれぞれ投球できていることがわかる。
もちろん各ボールのスピン量は、各ローラ回転数を調節することによって変更できる。
【符号の説明】
【0014】
1 ボール
11 発射ローラ
12 発射ローラ
21 ジャイロローラ
22 ジャイロローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールを挟持及び発射する方向に回転する複数の発射ローラと、
前記発射ローラにてボールが発射される際に発射方向に対して所定のねじり方向又は逆方向に回転し、当該発射ボールにねじり回転を付与又は無回転にするジャイロローラを備えたことを特徴とする投球機。
【請求項2】
前記発射ローラは2つの発射ローラが対向配置され、
前記ジャイロローラは2つのジャイロローラが前記2つの対向発射ローラと概ね直交する方向に対向配置されていることを特徴とする請求項1記載の投球機。
【請求項3】
前記発射ローラはボールの発射方向の周回りに3つ以上有し、前記ジャイロローラは前記発射ローラの間に少なくとも1つ以上有することを特徴とする請求項1記載の投球機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図4】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−111318(P2013−111318A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261231(P2011−261231)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(504160781)国立大学法人金沢大学 (282)