説明

投票用紙の読取装置および読取方法

【課題】記載領域外への書込み(他事記載)を適切に検出することができる投票用紙の読取装置および読取方法を提供する。
【解決手段】撮像手段175または176は、投票用紙3の記載面を表す画像情報175または176を生成する。情報処理手段4は、学習モードにおいて、この画像情報中の着色を表す着色ドット41を膨張させてマスク領域50を決定する。また、情報処理手段4は、判定モードにおいて、画像情報におけるマスク領域50以外における着色ドットに基づき、他事記載の有無を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投票用紙の読取装置および読取方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来用いられていた投票用紙の読取装置としては、例えば下記の特許文献1等に示されている構成が用いられている。すなわち、投票用紙の記載面(表側の面)の画像情報を生成し、この画像情報に基づいて、投票用紙に付されている記入枠を検出するとともに、記入枠の内側に記載された例えば候補者や政党等の記載内容を読み取り、記載内容毎に自動的に分類するものである。
【0003】
なお、投票者によって投票用紙の記入枠の外側(記載領域外)に書込みがなされた場合、その書込みは「他事記載」であるとされ、その投票は無効票となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−5022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の投票用紙の読取装置では、記載領域外への書込み(他事記載)を適切に検出することができないという問題があった。投票用紙の記載面(表側の面)には、記載領域外にも選挙名や注意書き等の印刷がなされる場合があるが、これらの印刷と、投票者によって記載領域外に書き込まれた事項(他事記載)との区別が困難である。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、記載領域外への書込み(他事記載)を適切に検出することができる投票用紙の読取装置および読取方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る投票用紙の読取装置は、投票用紙が搬送される搬送路と、搬送路に対向して配置された撮像手段と、撮像手段に接続された情報処理手段とを備え、撮像手段は、投票用紙が搬送路を搬送される際に、投票用紙の面を表す画像情報を生成し、情報処理手段は、学習モードにおいて、画像情報中の着色を表す着色ドットを膨張させてマスク領域を決定し、情報処理手段は、判定モードにおいて、画像情報中のマスク領域以外における着色ドットに基づき、他事記載の有無を判定する。
【0008】
着色ドットの膨張は、着色ドットの周囲に位置するドットをマスク領域の一部とすることにより行われてもよい。
着色ドットの周囲に位置するドットは、着色ドットから所定の範囲内に位置するドットであってもよい。
着色ドットは、投票用紙への印刷または筆記用具による書込みを表すドットであってもよい。
投票用紙の面には、所定の記載領域を区画する記入枠が印刷され、マスク領域は、さらに所定の記載領域に基づいて決定されてもよい。
【0009】
また、本発明に係る投票用紙の読取方法は、上述の投票用紙の読取装置を用いるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の投票用紙の読取装置によれば、学習モードにおいて未記入投票用紙の画像情報中の印刷事項を膨張させてマスク領域を決定し、判定モードにおいてマスク領域以外における着色に基づいて記入済投票用紙の他事記載の有無を判定するので、マスク領域に含まれる印刷等は他事記載に関する判定から除外することができ、他事記載を適切に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1による投票用紙の読取装置を示す構成図である。
【図2】図1の撮像ユニットを示す構成図である。
【図3】未記入投票用紙の記載面を示す図である。
【図4】記入済投票用紙の記載面を示す図である。
【図5】学習モードにおける投票用紙の読取装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】着色ドットの膨張を説明するドットパターンを示す図である。
【図7】マスク領域50の例を示す図である。
【図8】判定モードにおける投票用紙の読取装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】他事記載を含まない記入済投票用紙の例を示す図である。
【図10】他事記載を含む記入済投票用紙の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による投票用紙の読取装置を示す構成図である。図において、投票用紙の読取装置には、読取装置本体1と拡張スタッカユニット2とが設けられている。読取装置本体1には、ホッパ10、本体側搬送手段11、第1〜第5スタッカ12〜16、撮像ユニット17、及び表示手段18が設けられている。
【0013】
ホッパ10は、外部から投入された複数枚の投票用紙3が貯められるケースである。本体側搬送手段11は、複数の搬送ローラ11aから構成されており、ホッパ10から第1〜第5スタッカ12〜16まで搬送方向110に沿って投票用紙3を搬送する第1本体内搬送路111を形成している。また、本体側搬送手段11は、第1本体内搬送路111の中途位置111aから分離されるとともに、拡張スタッカユニット2に向けて投票用紙3を搬送する第2本体内搬送路112を形成している。撮像ユニット17は、後述のように投票用紙3の端面を示す画像情報を生成するものであり、搬送方向110に沿うホッパ10の下流かつ中途位置111aの上流に配置されている。表示手段18は、利用者に対する情報を表示するものである。
【0014】
拡張スタッカユニット2は、読取装置本体1から分離可能な拡張ユニットである。拡張スタッカユニット2には、拡張側搬送手段20、及び第6〜第13スタッカ21〜28が設けられている。拡張側搬送手段20は、第2本体内搬送路112を通って拡張スタッカユニット2に搬送された投票用紙3を第6〜第13スタッカ21〜28まで搬送する拡張側搬送路200を形成している。
【0015】
第1〜第13スタッカ12〜16,21〜28は、後述のように分類された投票用紙3がそれぞれ貯められるケースである。なお、この実施の形態では、1つの拡張スタッカユニット2が読取装置本体1に接続されている例を示しているが、必要とされるスタッカの数に応じて、複数の拡張スタッカユニット2が読取装置本体1に接続されてもよい。また、読取装置本体1から分離可能なものとして拡張スタッカユニット2を説明しているが、読取装置本体1と拡張スタッカユニット2とは互いに一体に設けられていてもよい。
【0016】
次に、図2は、図1の撮像ユニット17を示す構成図である。撮像ユニット17には、第1及び第2案内板170,171と、第1〜第3ローラ部172〜174と、第1及び第2撮像手段175,176と、第1及び第2対向ローラ177,178とが設けられている。
【0017】
第1及び第2案内板170,171は、搬送方向110に沿って延在された板部材であり、第1本体内搬送路111を挟むように互いに対向して配置されている。これら第1及び第2案内板170,171は、投票用紙3が撮像ユニット17を通過する際に投票用紙3を案内するものである。なお、詳細には図示しないが、第1及び第2案内板170,171には、前述の第1〜第3ローラ部172〜174等が配置される各位置に開口部がそれぞれ設けられている。
【0018】
第1ローラ部172は、第1及び第2案内板170,171の開口部を通して互いの外周面が接触するように第1本体内搬送路111を挟んで配置された一対のローラ172aから構成されている。第2及び第3ローラ部173,174も、第1ローラ部172と同様に一対のローラ173a,174aから構成されている。これら第1〜第3ローラ部172〜174は、搬送方向110に沿って互いに離間して配置されており、各ローラ172a〜174a間に進入された投票用紙3を搬送方向110に沿って送り出す(搬送する)ものである。すなわち、第1〜第3ローラ部172〜174は、本体側搬送手段11の一部を構成している。
【0019】
ここで、第1案内板170が配置されている側の第1本体内搬送路111の一方の端面を搬送路表面113と呼び、第2案内板171が配置されている側の他方の端面を搬送路裏面114と呼ぶ。換言すると、投票用紙3が撮像ユニット17を通過する際に、投票用紙3の第1及び第2端面3a,3bが対向する第1本体内搬送路111の端面を、搬送路表面113及び搬送路裏面114と呼ぶ。投票用紙3の向きに応じて、第1端面3aは投票用紙3の表面(記載面)及び裏面のいずれか一方であり、第2端面3bは表面(記載面)及び裏面の他方である。また、投票用紙3の表裏方向及び天地方向の向きが互いに揃えられていない場合、投票用紙3の向きは4通り想定される。すなわち、表天向き、表地向き、裏天向きおよび裏地向きである。
【0020】
第1撮像手段175は、第1案内板170の開口部を通して搬送路表面113に対向するように第1ローラ部172と第2ローラ部173との間に配置されている。第1撮像手段175は、光源部175aと撮像部175bとを有しており、投票用紙3が撮像ユニット17を通過する際に投票用紙3の第1端面3aを示す第1画像情報175cを生成するものである。具体的には、投票用紙3が撮像ユニット17を通過する際に、投票用紙3の第1端面3aに対して光源部175aから撮像光が照射され、第1端面3aで反射された撮像光が撮像部175bで受光されることで、第1画像情報175cが生成される。
【0021】
第1対向ローラ177は、第2案内板171の開口部を通して第1撮像手段175の撮像側端面に対向するように第1ローラ部172と第2ローラ部173との間に配置されている。この第1対向ローラ177は、その外周面と第1撮像手段175の撮像側端面との間に投票用紙3が進入された際に投票用紙3を搬送方向110に沿って送り出すように、第1撮像手段175の撮像側端面に近接して配置されている。
【0022】
第2撮像手段176は、第2案内板171の開口部を通して搬送路裏面114に対向するように第2ローラ部173と第3ローラ部174との間に配置されている。すなわち、第2撮像手段176は、搬送方向110に沿う第1撮像手段175の下流に配置されており、第1撮像手段175に対して非対向とされている。第2撮像手段176は、前述の第1撮像手段175と同様に光源部176aと撮像部176bとを有しており、第1端面3aとは逆側の投票用紙3の第2端面3bを示す第2画像情報176cを生成するものである。
この第1画像情報175cおよび第2画像情報176cは、いずれも2次元に配列されたドットの集合によって画像を表すものである。
【0023】
第2対向ローラ178は、第1案内板170の開口部を通して第2撮像手段176に対向するように第2ローラ部173と第3ローラ部174との間に配置されている。この第2対向ローラ178は、第1対向ローラ177と同様に、第2撮像手段176の撮像側端面に近接して配置されている。
【0024】
第1及び第2撮像手段175,176には、情報処理手段4が接続されている。この情報処理手段4は、プログラム等の情報を記憶する記憶部と、この記憶部の情報に基づいて処理動作を行う演算部とを含むコンピュータから構成されている。詳細には、情報処理手段4は、読取装置本体1に内蔵されたコンピュータ、又は読取装置本体1とは別体に設けられたコンピュータと読取装置本体1に内蔵されたコンピュータとの組み合わせから構成されている。この情報処理手段4は、後述のように、第1及び第2撮像手段175,176からの第1及び第2画像情報175c,176cを処理するものである。
【0025】
図3は、投票用紙3の記載面を示す。この投票用紙3は、投票者による記入が未だなされていない未記入投票用紙31である。投票用紙3の記載面には所定の印刷事項が印刷されている。この印刷事項は、印刷文字301および記入枠302を含む。印刷文字301は、たとえば選挙の名称や注意書き等を表すものであり、記入枠302は、投票者が所定の事項(例えば候補者名や政党名等)を記載すべき記載領域を区画するものである。
【0026】
投票用紙3の地色は、たとえば白色であるが、他の特定の色であってもよい。また、印刷事項は、たとえば黒色に着色された印刷であるが、これは第1及び第2画像情報175c,176cにおいて投票用紙3の地色と区別可能な色であれば黒色以外の色に着色されていてもよい。
【0027】
図4は、図3とは異なる状態の投票用紙3の記載面を示す。この投票用紙3は、投票者による記入がなされた記入済投票用紙32である。記入済投票用紙32の記載面には、図3の印刷事項(印刷文字301および記入枠302)に加え、投票者による記載内容303が記入されている。記載内容303は、投票者が筆記用具を用いて記入枠302内に記入するものであり、投票者が指定しようとする所定の事項(例えば候補者名や政党名等)を表す。記載内容303は、筆記用具により、第1及び第2画像情報175c,176cにおいて投票用紙3の地色とは区別可能となる色に着色されている。
【0028】
本実施形態に係る投票用紙の読取装置は、学習モードおよび判定モードを含む複数の動作モードで動作可能である。学習モードは、図3の未記入投票用紙31に対応して選択されるモードであり、未記入投票用紙31を用いた学習を行ってマスク領域を決定するモードである。判定モードは、図4の記入済投票用紙32に対応して選択されるモードであり、マスク領域を用いて投票者による他事記載の有無を判定するモードである。
図示しないが、情報処理手段4と通信可能な入力手段が設けられていてもよく、使用者はその入力手段を操作して情報処理手段4に指示を出すことにより、投票用紙の読取装置の動作モードを適宜設定することができる。このような入力手段は、ボタン等を含む周知の構成によって実現することができる。
【0029】
図5は、学習モードにおける投票用紙の読取装置の処理の流れを示すフローチャートである。使用者は、投票用紙の読取装置の動作モードを学習モードに設定した後、未記入投票用紙31をホッパ10に投入する。
まず、第1及び第2撮像手段175,176が、それぞれ未記入投票用紙31において対応する面を表す第1及び第2画像情報175c,176cを生成する(ステップS1)。
【0030】
次に、情報処理手段4は、第1及び第2撮像手段175,176からの第1及び第2画像情報175c,176cに基づき、未記入投票用紙31の表裏を識別する(ステップS2)。ここで、情報処理手段4は、第1及び第2撮像手段175,176からの第1及び第2画像情報175c,176cに基づいて、第1及び第2端面3a,3bのいずれか一方である表面から記入枠302を検出する。そして、第1端面3aおよび第2端面3bのどちらから記入枠302が検出されるかを判定することによって、表裏が識別される。これによって、未記入投票用紙31の記載面が第1及び第2画像情報175c,176cのいずれに対応するかが識別されることになる。
【0031】
以下の例では、第1画像情報175cが記載面に対応する場合について説明する。なお、第2画像情報176cが記載面に対応する場合も同様である。
情報処理手段4は、第1画像情報175cに基づいて未記入投票用紙31の天地方向を識別する(ステップS3)。これはたとえば印刷文字301の向きに基づいて行われる。この時点で、未記入投票用紙31の向きが、表天向き、表地向き、裏天向き、及び裏地向きのいずれであるかが識別される。
【0032】
情報処理手段4は、第1画像情報175c中の着色を表すドット(着色ドット)を膨張させ、マスク領域を決定する(ステップS4)。ここで、第1画像情報175cは未記入投票用紙31の画像情報であるので、着色は印刷事項(印刷文字301および記入枠302)によるもののみである。あるドットが未記入投票用紙31の地色を表すドット(地色ドット)であるか、または着色ドットであるかは、たとえばドットの色値を用いて周知技術により判定可能である。
【0033】
図6は、着色ドットの膨張を説明するドットパターン40の例を示す。ドットパターン40は、第1画像情報175cの一部であり、この例では横11ドット×縦14ドットである。ドットパターン40は、着色ドット(格子状のタイルパターンを用いて示す)および地色ドット(無地のタイルパターンおよび平行斜線のタイルパターンを用いて示す)を含む。
【0034】
すべての着色ドットについて、その着色ドットの周囲に位置するドットを膨張ドットとする。着色ドットおよび膨張ドットはマスク領域を構成するドットである。「周囲」とは、たとえば上下左右各2ドット以内の領域と定義することができる。例として、着色ドットのうち図6中で最上段に位置する着色ドット41について見ると、着色ドット41から上下左右各2ドットの範囲内のドットはすべて膨張ドット41aとなる(図では着色ドットと重なるものを除く)。
そして、着色ドットおよび膨張ドットによって構成される領域をマスク領域とする。
【0035】
さらに、情報処理手段4は、記入枠302の内側に対応するドットが構成する領域をマスク領域に追加する。
図7は、このようにして構成されるマスク領域50の例を示す。
なお、図6の例では上下左右各2ドットの範囲内を「周囲」としているが、周囲の定義はこれとは異なっていてもよい。たとえばサイズが異なっていてもよく(3ドット以内等)、または形状が異なっていてもよい(円形等)。
【0036】
図5に戻り、次に、情報処理手段4は、決定されたマスク領域を記憶部に記憶する(ステップS5)。これはたとえば画像中の各ドットがマスク領域であるか非マスク領域であるかを表す2値画像形式のデータとして記憶することができる。また、マスク領域は天地方向を示す情報を含む。たとえば画像の一方向(たとえば縦方向)の座標がより小さい方向を天向きとすることができる。
このようにして学習モードにおける動作が終了する。
【0037】
図8は、判定モードにおける投票用紙の読取装置の処理の流れを示すフローチャートである。使用者は、投票用紙の読取装置の動作モードを判定モードに設定した後、記入済投票用紙32をホッパ10に投入する。記入済投票用紙32は複数であってもよく、図8の処理は記入済投票用紙32それぞれに対して実行される。
【0038】
まず、学習モード(図5)と同様に、第1及び第2撮像手段175,176が、それぞれ記入済投票用紙32において対応する面を表す第1及び第2画像情報175c,176cを生成する(ステップS11)。
次に、学習モード(図5)と同様に、情報処理手段4が記入済投票用紙32の表裏を識別する(ステップS12)。
以下の例では、第1画像情報175cが記載面に対応する場合について説明する。なお、第2画像情報176cが記載面に対応する場合も同様である。
【0039】
情報処理手段4は、第1画像情報175cにおいて検出された記入枠302内の記載内容303を読み取ることができるか否かを判定する(ステップS13)。読み取ることができると判定した場合には、記載内容303を読み取るとともに(ステップS14)、記入済投票用紙32の天地方向を識別する(ステップS15)。天地方向の識別は、たとえば印刷文字301の向きおよび記載内容303の文字の向きに基づいて行われる。この時点で、記入済投票用紙32の向きが、表天向き、表地向き、裏天向き、及び裏地向きのいずれであるかが識別される。
なお、第1画像情報175cは記入済投票用紙32の画像情報であるので、着色ドットは、印刷事項(印刷文字301および記入枠302)を表すものと、投票者の筆記用具による書込み(記載内容303)を表すものとが混在している。
【0040】
次に、情報処理手段4は、第1画像情報175cにマスクを適用して一部のドットを除去する(ステップS16)。すなわち、記憶部からマスク領域(図5のステップS5において記憶されたもの)のデータを読み出し、第1画像情報175cとマスク領域とを天地向きを一致させた上で重ね合わせ、マスク領域に含まれるドットを第1画像情報175cから除去する。
【0041】
図9および図10は、ステップS16における処理の具体例を示す。
図9は他事記載を含まない記入済投票用紙32の例である。図9(a)は記入済投票用紙32とマスク領域50を重ねて表した図であり、図9(b)はステップS16の処理によって図9(a)からマスク領域に含まれる部分を削除した図である。図9(b)に示すように、ステップS16の処理の結果得られる画像には、印刷文字301、記入枠302および記載内容303のいずれも残っておらず、着色ドットが存在しない。
【0042】
図10は他事記載を含む記入済投票用紙33の例である。図10(a)は記入済投票用紙33とマスク領域50を重ねて表した図である。投票者は、記載内容303に加え、他事記載に該当する可能性のある線304を記入している。図10(b)はステップS16の処理によって図10(a)からマスク領域に含まれる部分を削除した図である。ステップS16の処理の結果得られる画像には、印刷文字301、記入枠302および記載内容303は残っていないが、線304のうちマスク領域50に含まれない部分304aが残っている。すなわち、着色ドットが残っている。この部分304aは他事記載に該当する。
【0043】
このように、未記入投票用紙31にすでに存在する印刷文字301および記入枠302と、記入枠302内の記載内容303とは、学習により適切にマスキングすることができる。一方、未記入投票用紙31には存在せず、かつ記入枠302の外側に存在する書込み、たとえば線304の一部304aについては、他事記載として適切に検出することができる。
【0044】
図8に戻り、次に、情報処理手段4は、他事記載があるか否かを判定する(ステップS17)。この判定は、記載面の他事記載および裏面の他事記載それぞれについて独立して行い、いずれかの面が他事記載を含む場合には、その投票用紙3は他事記載を含むと判定する。
記載面についての判定は、ステップS16において得られる画像に含まれる着色ドットに基づいて行われる。裏面についての判定は、ステップS11において生成される画像情報(この例では第2画像情報176c)に含まれる着色ドットに基づいて行われる。たとえば、着色ドットの数が所定の閾値以上であれば他事記載があると判定し、そうでなければ他事記載がないと判定する。この閾値は使用者が適宜変更可能であってもよい。
【0045】
ステップS17において他事記載がないと判定された場合に、記載内容303及び向きに応じたスタッカ12〜15,21〜28に投票用紙3が搬送される(ステップS18)。ここで、情報処理手段4は、本体側搬送手段11及び拡張側搬送手段20の動作を制御して、投票用紙3を記載内容303毎に異なるスタッカ12〜15,21〜28(図1参照)に搬送させる。
【0046】
一方、記載内容303の読取判定時(ステップS13)に、例えば文字抽出に失敗する等して読取り不可と判定された場合、及び、他事記載の有無判定時(ステップS17)に他事記載ありと判定された場合には、その投票用紙3は無効若しくは再検査が必要なものとしてリジェクトされ、リジェクト又は識別不能用のスタッカ16に搬送される(ステップS19)。すなわち、情報処理手段4は、他事記載を含む投票用紙3を、他事記載を含まない投票用紙3とは異なるスタッカ16に搬送させる。この実施の形態では、第5スタッカ16がリジェクト又は識別不能用として割り当てられている。このように、情報処理手段4は、他事記載が行われているか否かに応じて、異なるスタッカに投票用紙を搬送させる。
このようにして、判定モードにおける動作が終了する。
【0047】
以上のように、本実施形態に係る投票用紙3の読取装置によれば、情報処理手段4は、学習モードにおいて、未記入投票用紙31の画像情報中の印刷事項を膨張させてマスク領域50を決定する。また、判定モードにおいて、マスク領域以外における着色に基づいて記入済投票用紙32および32の他事記載の有無を判定する。このため、マスク領域50に含まれる印刷事項301、記入枠302および記載内容303は他事記載に関する判定から除外することができ、投票者によって記載領域外に書き込まれた事項(他事記載)を明確に識別して適切に検出することができる。
【0048】
また、他事記載を含む投票用紙3と他事記載を含まない投票用紙3とは異なるスタッカ16に搬送させるので、投票用紙3の記載内容303毎の分類と同時に無効票の点検作業を行うことができ、投票用紙3の管理に係る労力を大幅に低減できる。すなわち、従来装置では、投票用紙3を記載内容303毎に分類した後に、他事記載が無いか点検する工程が必要であったが、この後工程を簡素化でき、開票集計作業をより早く完了させることができる。
【0049】
上述の実施の形態1では、撮像手段として第1及び第2撮像手段175,176を設けているが、撮像手段は単独でもよい。この場合、使用者はあらかじめ記入済投票用紙32の表裏を揃えてホッパ10に投入することになる。
【符号の説明】
【0050】
3 投票用紙(3a 第1端面、3b 第2端面、31 未記入投票用紙、32および33 記入済投票用紙)、4 情報処理手段、111 第1本体内搬送路、112 第2本体内搬送路、40 ドットパターン、41 着色ドット、41a 膨張ドット、50 マスク領域、175c 第1画像情報、176c 第2画像情報、175 第1撮像手段、176 第2撮像手段、301 印刷文字、302 記入枠、303 記載事項、303 記載内容、304 線、304a 線の部分(他事記載)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投票用紙が搬送される搬送路と、
前記搬送路に対向して配置された撮像手段と、
前記撮像手段に接続された情報処理手段と
を備え、
前記撮像手段は、前記投票用紙が前記搬送路を搬送される際に、前記投票用紙の面を表す画像情報を生成し、
前記情報処理手段は、学習モードにおいて、前記画像情報中の着色を表す着色ドットを膨張させてマスク領域を決定し、
前記情報処理手段は、判定モードにおいて、前記画像情報中の前記マスク領域以外における着色ドットに基づき、他事記載の有無を判定する
投票用紙の読取装置。
【請求項2】
前記着色ドットの前記膨張は、前記着色ドットの周囲に位置するドットを前記マスク領域の一部とすることにより行われる、請求項1に記載の投票用紙の読取装置。
【請求項3】
前記着色ドットの周囲に位置するドットは、前記着色ドットから所定の範囲内に位置するドットである、請求項1に投票用紙の読取装置。
【請求項4】
前記着色ドットは、前記投票用紙への印刷または筆記用具による書込みを表すドットである、請求項1〜3のいずれか一項に投票用紙の読取装置。
【請求項5】
前記投票用紙の前記面には、所定の記載領域を区画する記入枠が印刷され、
前記マスク領域は、さらに前記所定の記載領域に基づいて決定される、請求項1〜4のいずれか一項に投票用紙の読取装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の投票用紙の読取装置を用いた投票用紙の読取方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−23550(P2012−23550A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159831(P2010−159831)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(592221908)武蔵エンジニアリング株式会社 (30)
【出願人】(592049302)阪和電子工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】