説明

投資事業パッケージ形成方法及び投資事業パッケージ形成支援システム

【課題】 複数の事業の中から実施する事業として投資を行う事業の明確な基準に基づく論理的な採択を支援する投資事業パッケージ形成支援システムを提供する。
【解決手段】 達成すべき目標値を複数の項目の各々について設定し(ステップS10)、設定された目標値と現況を示す現況値との差分を算出する(ステップS11)。次に、目標値を達成するための事業の各々について、事業を実施した場合の効果及び目標値との差分に基づいて、成果目標の達成に対する寄与度を算出する(ステップS13)。次に、算出された寄与度の合計値及び必要なコストに関する値に基づいて、事業の各々の単位コスト当りの寄与度合計値を単位コスト寄与度合計値として算出する(ステップS15)。そして、算出された単位コスト寄与度の値が大きい順に、事業の中から実施する事業を採択し(ステップS17)、採択された事業を投資対象の事業として表示する(ステップS20)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の事業の中から投資を行う事業を採択し、投資事業パッケージを形成するための投資事業パッケージ作成方法及び投資を行う事業の採択と投資事業パッケージの形成を支援する投資事業パッケージ形成支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、設定された複数の成果目標を達成するために複数の事業を行っている団体等、例えば、地方自治体や公益団体等においては、設定された複数の成果目標が達成可能となるように実施する事業が決定されていた。また、事業に対して振り分け可能な予算が予め定められている場合には、振り分け可能な予算の範囲内で、複数の成果目標を達成可能とするか、又は、成果目標の達成に近い成果を得ることができる事業が実施する事業として採択されていた。
【0003】
ここで、複数の成果目標の達成に向けて、或いは成果目標の達成に近づけるために、複数の事業の中から実施する事業を採択する場合には、成果目標の達成のために必須の事業と、成果目標の達成には必ずしも必要でない事業とを判別して事業の採択を行い、実施すべき事業のパッケージ形成を行う、或いは複数の成果目標の達成、又は、成果目標の達成に近づけるためにより有用な事業から優先順位をつけて、実施すべき事業のパッケージの形成を行なう必要があるが、従来は過去における各事業実施の実績や経験に基づいて事業の採択が行われていた。
【0004】
なお、本発明において「投資事業パッケージ」とは、複数の投資事業の候補の中から選び出す、実際に投資を行ない実施する複数の投資事業(投資事業群)をいう。
【0005】
なお、企業が毎年執り行う事業(予算を伴い、計画・準備・実施の段階を踏んで行われる比較的規模の大きい行事等)の運用を支援する事業管理システムが存在する(例えば、特許文献1参照)。この事業管理システムによれば、実施する事業の事業名、期限及び内容等の事業に関するデータや、実施する事業の実行者、管理者及び指示者等の関係者に関するデータをデータベースに登録し、事業の実行者、管理者及び指示者等の関係者がそれぞれデータベースに記憶されている事業に関するデータを確認することにより、事業の推進が円滑に行われるように管理している。
【0006】
【特許文献1】特開2002−24489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、実施が決定している事業の運営や推進を管理するシステムは多数存在しているが、複数の成果目標の達成、或いは成果目標の達成に近づけるために実施する事業を的確に決定するための方法やシステム等は提供されていない。従って、これまでは実施する事業の決定を過去の実績や経験に基づいて行わなければならず、状況の変化に対応して適切な実施事業を決定することが困難であった。また、過去の実績や経験から、事業選定のための明確な基準を設定するには至っていない。
【0008】
この発明の課題は、複数の成果目標を達成する、或いは成果目標の達成に近づけるために、複数の事業の中から実施する事業として投資を行う事業を明確な基準に基づいて論理的に採択し、実施すべき事業のパッケージを形成することができる投資事業パッケージ形成方法及び投資を行う事業の採択と投資事業パッケージの形成を支援する投資事業パッケージ形成支援システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の投資事業パッケージ形成方法は、達成すべき目標値を複数の項目の各々について設定する目標値設定工程と、前記目標値設定工程において設定された目標値と、前記複数の項目の各々の現況を示す現況値との差分を算出する差分算出工程と、前記目標値設定工程において設定された目標値を達成するための所定の事業の各々について、該所定の事業を実施した場合の前記複数の項目の各々に対する効果及び前記差分算出工程において算出された前記複数の項目の各々についての差分に基づいて、前記複数の項目の各々について目標達成に対する寄与度を算出する寄与度算出工程と、前記寄与度算出工程において算出された各々の寄与度の合計値を各々の事業毎に算出する寄与度合計値算出工程と、前記寄与度合計値算出工程において算出された寄与度合計値及び前記所定の事業を実施する際に必要なコストに関する値に基づいて、前記所定の事業の各々の単位コスト当りの寄与度合計値を単位コスト寄与度合計値として算出する単位コスト寄与度合計値算出工程と、前記単位コスト寄与度合計値算出工程により算出された単位コスト寄与度合計値が大きい順に、前記所定の事業の中から実施する事業を採択する事業採択工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
この請求項1記載の投資事業パッケージ形成方法によれば、各項目に対する単位コスト当りの寄与度の合計値が大きい順に所定の事業の中から実施する事業を採択することができる。即ち、各事業の各項目に対する単位コスト当りの寄与度の合計値が高い事業から順に実施する事業を採択することにより、各項目の目標(成果目標)を効率よく達成することができるように実施する事業を採択することができる。
【0011】
また、請求項2記載の投資事業パッケージ形成方法は、前記事業採択工程において、既に採択された事業により前記複数の項目の中で何れかの項目の目標が達成可能な場合に、目標を達成可能な項目に対する効果のみを有する事業の採択を排除することを特徴とする。
【0012】
この請求項2記載の投資事業パッケージ形成方法によれば、所定の事業の中から採択された事業により任意の項目の目標達成が可能な場合には、該項目に対する効果のみを有する事業の採択を排除しているため、各項目の目標達成のために必要十分な事業を実施する事業として採択することができる。
【0013】
また、請求項3記載の投資事業パッケージ形成方法は、前記事業採択工程において採択された事業群を初期解として、分枝限定法によってより厳密な最適解を求める最適事業採択工程を更に含むことを特徴とする。この請求項3記載の投資事業パッケージ形成方法によれば、より厳密なコスト最小の事業パッケージを形成することができる。
【0014】
また、請求項4記載の投資事業パッケージ形成方法は、前記目標値設定工程において設定された目標値を変更する目標値変更工程を更に含むことを特徴とする。この請求項4記載の投資事業パッケージ形成方法によれば、状況の変化等により目標値を変更する必要が生じた場合に、迅速に対応することができる。
【0015】
また、請求項5記載の投資事業パッケージ形成方法は、事業への投資限度額を設定する投資限度額設定工程と、達成すべき目標値を複数の項目の各々について設定する目標値設定工程と、前記目標値設定工程において目標値が設定された項目の各々に重要度を示す重みを付与する重み付け工程と、前記目標値設定工程において設定された目標値を達成するための所定の事業の各々について、該所定の事業を実施した場合の前記複数の項目の各々に対する効果を算出する効果算出工程と、前記所定の事業を実施する際に必要なコストに関する値とに基づいて、単位コストあたりの効果を算出する単位コスト効果算出工程と、各々の事業が持つ単位コスト効果と同じ単位コスト効果を持つ事業が出現する確率の大小を示す規準化得点を算出する規準化得点算出工程と、前記重み付け工程において前記複数の項目の各々に付与された重み及び前記規準化得点算出工程において算出された規準化得点に基づいて、重み付き規準化得点の合計値を各々の事業毎に算出する重み付き規準化得点合計値算出工程と、前記投資限度額設定工程において設定された投資限度額の範囲内において、前記重み付き規準化得点合計値が大きい順に、前記所定の事業の中から実施する事業を採択する事業採択工程とを含むことを特徴とする。
【0016】
この請求項5記載の投資事業パッケージ形成方法によれば、投資限度額の範囲内において、所定の事業の中から重み付き規準化得点合計値が大きい順に実施する事業を採択している。従って、重みの付けられた複数の項目に対する規準化得点の合計値が高い事業から順に実施する事業として採択することができるため、投資限度額の範囲内において重みの付けられた複数の項目の目標達成に重みに応じて効率的に寄与する事業を的確に採択することができる。
【0017】
また、請求項6記載の投資事業パッケージ形成方法は、前記投資限度額設定工程において設定された事業への投資限度額を調整する投資限度額調整工程を更に含み、前記投資限度額調整工程において前記投資限度額が調整された場合には、前記事業採択工程において、調整後の前記投資限度額の範囲内で事業の採択を行うことを特徴とする。
【0018】
この請求項6記載の投資事業パッケージ形成方法によれば、投資限度額を調整した場合には調整後の投資限度額の範囲内において事業の採択を行うことができる。従って、投資限度額を増額又は減額した場合であっても、調整後の投資限度額に迅速に対応して事業の採択を行うことができる。
【0019】
また、請求項7記載の投資事業パッケージ形成方法は、前記重み付け工程が、前記複数の項目の各々に付与された重みの値を変更する重み変更工程を更に含むことを特徴とする。この請求項7記載の投資事業パッケージ形成方法によれば、重み付けの値を変更、即ち、項目の重要度を変更することができるため、重要度の変化に柔軟、かつ、迅速に対応した事業の採択を行うことができる。
【0020】
また、請求項8記載の投資事業パッケージ形成支援システムは、達成すべき目標値を複数の項目の各々について設定する目標値設定手段と、前記目標値設定手段において設定された目標値と、前記複数の項目の各々の現況を示す現況値との差分を算出する差分算出手段と、前記目標値設定手段により設定された目標値を達成するための所定の事業の各々について、該所定の事業を実施した場合の前記複数の項目の各々に対する効果及び前記差分算出手段により算出された前記複数の項目の各々についての差分に基づいて、前記複数の項目の各々について目標達成に対する寄与度を算出する寄与度算出手段と、前記寄与度算出手段において算出された各々の寄与度の合計値を各々の事業毎に算出する寄与度合計値算出手段と、前記寄与度合計値算出手段により算出された寄与度合計値及び前記所定の事業を実施する際に必要なコストに関する値に基づいて、前記所定の事業の各々の単位コスト当りの寄与度合計値を単位コスト寄与度合計値として算出する単位コスト寄与度合計値算出手段と、前記単位コスト寄与度合計値算出手段により算出された単位コスト寄与度合計値が大きい順に、前記所定の事業の中から実施する事業を採択する事業採択手段と、前記事業採択手段により採択された事業を投資対象の事業として出力する出力手段とを備えることを特徴とする。
【0021】
この請求項8記載の投資事業パッケージ形成支援システムによれば、各事業の各項目に対する単位コスト当りの寄与度合計値が大きい順に所定の事業の中から実施する事業を採択することができる。即ち、各項目に対する単位コスト当りの寄与度の合計値が高い事業から順に実施する事業を採択することにより、各項目の目標を効率よく達成できる事業を投資対象の事業として出力することができる。そのため、投資対象の事業として出力された内容を参照して最終的に実施する事業を決定する等、実施する事業の採択において有用な資料を提供することができる。
【0022】
また、請求項9記載の投資事業パッケージ形成支援システムは、前記事業採択手段が、既に採択された事業により前記複数の項目の中で何れかの目標が達成可能な場合に、目標を達成可能な項目に対する効果のみを有する事業の採択を排除することを特徴とする。この請求項9記載の投資事業パッケージ形成支援システムによれば、各項目の目標達成のために必要十分な事業のみを実施する事業として採択することができる。
【0023】
また、請求項10記載の投資事業パッケージ形成支援システムは、前記事業採択手段により採択された事業群を初期解として、分枝限定法によってより厳密な最適解を求めることを特徴とする。この請求項10記載の投資事業パッケージ形成支援システムによれば、より厳密にコストを最小限に抑えた事業パッケージの形成を支援することができる。
【0024】
また、請求項11記載の投資事業パッケージ形成支援システムは、前記目標値設定手段により設定された目標値を変更する目標値変更手段を更に備えることを特徴とする。この請求項11記載の投資事業パッケージ形成システムによれば、状況の変化等により目標値を変更する必要が生じた場合に、迅速に対応することができる。
【0025】
また、請求項12記載の投資事業パッケージ形成システムは、事業への投資限度額を設定する投資限度額設定手段と、達成すべき目標値を複数の項目の各々について設定する目標値設定手段と、前記目標値設定手段により目標値が設定された項目の各々に重要度を示す重みを付与する重み付け手段と、前記目標値設定手段により設定された目標値を達成するための所定の事業の各々について、該所定の事業を実施した場合の前記複数の項目の各々に対する効果を算出する効果算出手段と、前記効果算出手段において算出された効果と、前記所定の事業を実施する際に必要なコストに関する値とに基づいて、単位コストあたりの効果を算出する単位コスト効果算出手段と、各々の事業が持つ単位コスト効果と同じ単位コスト効果を持つ事業が出現する確率の大小を示す規準化得点を算出する規準化得点算出手段と、前記重み付け手段により前記複数の項目の各々に付与された重み及び前記規準化得点算出手段により算出された規準化得点に基づいて、重み付き規準化得点の合計値を各々の事業毎に算出する重み付き規準化得点合計値算出手段と、前記投資限度額設定手段により設定された投資限度額の範囲内において、前記重み付き規準化得点合計値が大きい順に、前記所定の事業の中から実施する事業を採択する事業採択手段と、前記事業採択手段により採択された事業を、投資対象の事業として出力する出力手段とを備えることを特徴とする。
【0026】
この請求項12記載の投資事業パッケージ形成支援システムによれば、重み付けられた複数の項目に対する規準化得点の合計値が高い事業から順に、投資限度額の範囲内において実施する事業を採択することができる。また、採択された事業を投資対象の事業として出力することができるため、適切な事業の採択のために有用な資料を提供することができる。
【0027】
また、請求項13記載の投資事業パッケージ形成支援システムは、前記投資限度額設定手段において設定された事業への投資限度額を調整する投資限度額調整手段を更に備え、前記投資限度額調整手段により前記投資限度額が調整された場合に、前記事業採択手段は、調整後の前記投資限度額の範囲内で事業の採択を行うことを特徴とする。この請求項13記載の投資事業パッケージ形成支援システムによれば、投資限度額の増額又は減額に迅速に対応して事業の採択を行うことができる。
【0028】
また、請求項14記載の投資事業パッケージ形成支援システムは、前記重み付け手段が、前記複数の項目の各々に付与された重みの値を変更する重み変更手段を更に備えることを特徴とする。この請求項14記載の投資事業パッケージ形成支援システムによれば項目の重要度の変化に柔軟、かつ、迅速に対応した事業の採択を行うことができる。
【発明の効果】
【0029】
この発明に係る投資事業パッケージ形成方法によれば、各事業の各項目に対する単位コスト当りの寄与度の合計値が高い事業から順に実施する事業を採択することにより、各項目の目標を効率よく達成する事業を採択することができる。また、重みを付けた各項目に対する単位コスト当りの寄与度合いの重み付き合計値が高い事業から順に投資限度額の範囲内で実施する事業を採択することにより、投資限度額の範囲内で各項目の重みに応じて各項目の目標達成に効率的に寄与する事業を的確に採択することができる。従って、事業を採択する際の予算や状況等に応じ、明確な基準に基づいて論理的に適切な事業の採択を行うことができる。
【0030】
また、この発明に係る投資事業パッケージ形成支援システムによれば、各項目の目標を効率よく達成できる事業を投資対象の事業として出力することができる。また、投資限度額の範囲内において、項目の目標達成に効率的に寄与する事業を投資対象の事業として出力することができる。そのため、投資対象の事業として表示されている内容を参照して最終的に実施する事業を決定する等、実施する事業の採択に有用な資料を提供して投資を行う事業の採択を支援することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照してこの発明を実施するための最良の形態に係る投資事業パッケージ形成支援システムについて説明する。
【0032】
図1は、この発明の実施の形態に係る投資事業パッケージ形成支援システムのブロック構成図である。投資事業パッケージ形成支援システムは、図1に示すように、投資事業パッケージ形成支援システムにおけるデータの処理を制御するデータ制御部2を備えている。このデータ制御部2には、複数の項目(成果項目)についてそれぞれの項目が達成すべき目標値等を入力する入力部4及び入力された目標値等を記憶するデータ記憶部6が接続されている。また、データ制御部2には、投資事業パッケージ形成支援システムが設置されている団体等において、過去に実施された事業に関するデータ等を記憶した事業データ記憶部8及び投資の対象となる事業等を表示する表示部10が接続されている。
【0033】
データ記憶部6には、複数の項目のそれぞれが達成すべき目標値、即ち、複数の項目の各々について達成すべき目標(成果目標)として設定された目標値が項目毎に記憶される。また、所定の項目の各々に関する各事業の現況を示す現況値がデータ記憶部6において各項目毎に記憶されている。また、データ記憶部6には、成果目標を達成するために実施する事業として採択された事業、即ち、投資の対象として採択された事業が記憶される。
【0034】
事業データ記憶部8には、過去に実施された事業に関するデータ及び実施される可能性がある事業に関するデータが記憶されている。この事業に関するデータには、例えば、事業を示す事業コード、事業名、事業概要及び事業実施のために必要な(費やした)費用等のデータが事業毎に記憶されている。
【0035】
次に、図2のフローチャートを参照して、この発明の第1の実施の形態に係る投資事業パッケージ形成支援システムによる投資事業パッケージ形成の処理について説明する。なお、この投資事業パッケージ形成支援システムにおいては、全ての項目について成果目標を達成するための事業採択を行う。
【0036】
まず、複数の項目の各々について達成すべき目標値(T)を設定する(ステップS10)。即ち、予め設けられている複数の項目の各々について、例えば、「事故削減」、「渋滞削減」、「医療機関アクセス改善」、「地場産品販売額増」及び「緊急車両到着時間削減」という各項目に関して、目標値(T)として、「事故率」、「渋滞時間」、「医療機関アクセス最長時間」、「地場産品販売額」及び「緊急車両現場到着平均時間」の値を入力部4を介して入力することにより目標値(T)を設定する。なお、設定された目標値(T)は、各項目に対応させてデータ記憶部6に記憶される。
【0037】
ここで、「事故率」とは、車両が1km走行する際に発生する事故の件数を示す数値であり、「件/台km」を単位とする指標である。また、「渋滞時間」は道路が渋滞している時間、「医療機関アクセス最長時間」は医療機関から最も遠い地域から医療機関へ到達するまでの時間、「地場産品販売額」はある地域の地場産品の販売額である。また、「緊急車両現場到着平均時間」は、緊急車両が通報を受けてから現場まで到着する平均の時間である。
【0038】
次に、設定された各項目の目標値(T)と各項目の現況を示す現況値との差分(ΔT)を算出する(ステップS11)。即ち、データ記憶部6に記憶されているデータの中から複数の項目の各々について、その時点における現況を示す現況値のデータを抽出しデータ記憶部6に記憶されている目標値(T)との差分(ΔT)を算出する。なお、算出された目標値(T)と現況との差分(ΔT)は、各項目に対応させてデータ記憶部6に記憶される。
【0039】
図3は、目標値(T)及び目標値と現況値との差分(ΔT)の一例を示す図である。例えば、「事故率」の現況値が「150」であり、図3に示すように、「事故率」の目標値(T)として「120」が設定されている場合には、差分(ΔT)として「30」が算出される。この差分(ΔT)により、事故削減の成果目標を達成するため、即ち、現況よりも事故の発生件数を低減するための成果目標を達成するためには、事故率を現況値よりも「30」低下させる必要があることが示される。また、「渋滞時間」の現況値が「120」であり、図3に示すように、「渋滞時間」の目標値(T)として「100」が設定されている場合には、差分(ΔT)として「20」が算出される。この差分(ΔT)により、成果目標を達成するため、即ち、現況よりも渋滞時間を低減するための成果目標を達成するためには、渋滞時間を現況値よりも「20」低下させる必要があることが示される。同様に、「医療機関アクセス最長時間」の現況値が「1.4」、「医療機関アクセス最長時間」の目標値(T)が「1.2」の場合には、差分(ΔT)として「0.2」が算出され、「地場産品販売額」の現況値が「1800」、「地場産品販売額」の目標値(T)が「2000」の場合には、差分(ΔT)として「200」が算出される。これらの差分(ΔT)により、医療機関アクセス改善の成果目標を達成するためには、医療機関アクセス最長時間を現況値よりも「0.2」低下させ、地場産品販売額の成果目標を達成するためには、地場産品販売額を現況値よりも「200」増加させる必要があることが示される。また、「緊急車両現場到着平均時間」の現況値が「4.4」であり、図3に示すように、「緊急車両現場到着平均時間」の目標値(T)が「4.2」の場合には、差分(ΔT)として「0.2」が算出される。この差分(ΔT)により、緊急車両現場到着平均時間削減の成果目標を達成するため、即ち、現況よりも緊急車両現場到着平均時間を削減させるためには、緊急車両現場到着平均時間を現況値よりも「0.2」低下させる必要があることが示される。
【0040】
次に、投資の候補となっている各事業について、事業を実施する場合に必要となるコスト(C)及び事業の持つ各項目に対する効果(E)を参照又は算出する(ステップS12)。即ち、まず、事業データ記憶部8に記憶されている事業データの中から、例えば、事業Cを実施するために必要な費用を示すデータを抽出し、これを事業Cのコスト(C)とする。次に、各項目に対する事業の効果(E)、即ち、事業を実施することにより得られる効果、例えば、事業Cを実施することにより事故削減にもたらす効果を算出する。ここで、例えば、事業Cを実施した場合の事故削減に対する効果(E)は、事業Cの実施に伴う事故発生率の減少等に基づいて算出される。また、事業Cの渋滞削減に対する効果(E)は、事業Cの実施に伴う渋滞時間の減少量等に基づいて求める。医療機関アクセス改善、地場産品販売額増及び緊急車両現場到着平均時間削減についても、それぞれ効果(E)が算出される。なお、事業C以外の投資の候補となっている事業についても、コスト(C)及び効果(E)が参照又は算出される。また、参照又は算出されたコスト(C)は事業毎に、効果(E)は事業毎に各項目に対応させてそれぞれデータ記憶部6に記憶される。
【0041】
図4は、参照又は算出されたコスト(C)及び効果(E)の一例を示す図である。図4に示すように、各事業に対応させて投資の候補となっている事業のコスト(C)が記憶され、各事業及び項目に対応させて効果(E)が記憶されている。ここで、事業の種類により効果(E)が得られる項目が異なっているため、一部の項目に対してのみ効果(E)が参照又は算出されている事業が存在する。また、全ての項目に対して効果(E)が参照又は算出されている事業も存在する。例えば、事業Aは緊急車両現場到着平均時間削減に対する効果(E)のみが参照又は算出されているが、事業Cは全ての項目に対して効果(E)が参照又は算出されている。ここで、例えば、事業Aは警察署・消防署周辺の道路の拡幅事業であり、事業Cは道路の新規整備等の事業である。また、事業A〜事業Hには、例えば、道路の新規整備、拡幅又はバイパス整備等の各種の事業が含まれている。
【0042】
次に、成果目標の達成に対する各事業の寄与度を算出する(ステップS13)。即ち、効果(E)を差分(ΔT)で除算することにより、各事業の各項目の成果目標の達成に対する寄与度(E/ΔT)を算出する。例えば、事業Cの事故削減に対する効果(E)「10」(図4参照)を事故率の目標値(T)と現況値との差分(ΔT)「30」(図3参照)で除算することにより事業Cの事故削減に対する寄与度(E/ΔT)「0.333」を算出する。同様にして、事業Cの他の項目の成果目標の達成に対する寄与度(E/ΔT)を算出すると共に、各事業の各項目の成果目標の達成に対する寄与度(E/ΔT)を算出する。算出された寄与度(E/ΔT)は、事業毎に各項目に対応させてデータ記憶部6に記憶される。なお、寄与度(E/ΔT)は、ある項目に関する寄与度の累計の値が「1又はそれ以上の値」であればその項目の成果目標が達成できることを示す指標である。
次に、各事業毎に各項目に対する寄与度の合計値を算出する(ステップS14)。即ち、ステップS13において算出された寄与度(E/ΔT)の事業毎の合計値(寄与度合計値)、例えば、事故削減、渋滞削減、医療機関アクセス改善、地場産品販売額増及び緊急車両現場到着平均時間削減のそれぞれに対する事業Cの寄与度(E/ΔT)の合計値(ΣK)を算出する。
【0043】
次に、各事業の単位コスト当りの寄与度合計値(ΣK/C)を算出する(ステップS15)。即ち、算出された寄与度合計値を事業のコスト、例えば、事業Cの寄与度合計値を事業Cのコストで除算することにより、事業Cが全項目の成果目標の達成に向けて、どれだけ効率的に寄与するかを示す指標として(ΣK/C)(単位コスト寄与度合計値)を算出する。なお、算出された寄与度合計値(ΣK)及び単位コスト寄与度合計値(ΣK/C)は、各事業に対応させてデータ記憶部6に記憶される。
【0044】
図5は、各事業の各項目に対する寄与度(E/ΔT)、寄与度合計値(ΣK)及び単位コスト寄与度合計値(ΣK/C)の一例を示す図である。図5に示すように、例えば、事業Cの各項目に対する寄与度(E/ΔT)として、即ち、事故削減(E/ΔT)「0.333」、渋滞削減(E/ΔT)「0.500」、医療機関アクセス改善(E/ΔT)「0.450」、地場産品販売額増(E/ΔT)「0.200」及び緊急車両現場到着平均時間削減(E/ΔT)「0.600」が算出されている。また、寄与度合計値(ΣK)として、例えば、事業Cの各項目に対する寄与度の合計値「2.083」が算出されており、この寄与度合計値「2.083」をコスト(C)「30」で除算した単位コスト寄与度合計値(ΣK/C)「0.069」が算出されている。また、事業A、B、D〜Hの各事業についても、各項目に対する寄与度(E/ΔT)、寄与度合計値及び単位コスト寄与度合計値(ΣK/C)が算出される。
【0045】
投資の候補となっている全ての事業について、コスト(C)、効果(E)、寄与度(E/ΔT)及び単位コスト寄与度合計値(ΣK/C)が算出された場合には(ステップS16)、単位コスト寄与度合計値(ΣK/C)の値に基づいて投資の候補となっている事業を並べ替える(ステップS17)。即ち、単位コスト寄与度合計値(ΣK/C)の値が高い順に投資の候補となっている事業を並べ替える。
【0046】
図6は、単位コスト寄与度合計値(ΣK/C)の値が高い順に並べ替えられた事業の一例を示す図である。図6に示すように、単位コスト寄与度合計値(ΣK/C)の値が高い順番に、即ち、単位コスト寄与度合計値(ΣK/C)の値が最も高い事業Aから単位コスト寄与度合計値(ΣK/C)の値が最も低い事業Hへと、投資の候補となっている事業A〜Hが並べられている。ここで、単位コスト寄与度合計値(ΣK/C)の値が高い事業程、全項目の成果目標の達成に対して効率的に寄与することになる。そのため、図6に示すように、単位コスト寄与度合計値(ΣK/C)の値が高い順に投資の候補となっている事業が並べられた場合には、該並び順がそのまま事業採択の優先順位になる。
【0047】
次に、各項目の成果目標を達成するために実施する事業を採択する(ステップS18)。即ち、各項目毎に、寄与度(E/ΔT)の合計値が「1又はそれ以上の値」となるように、単位コスト寄与度合計値(ΣK/C)の値が高い事業を優先して事業の採択を行う。そして、採択された事業により全ての成果目標を達成することができる場合には(ステップS19)、処理を終了する。一方、採択された事業では達成することができない成果目標が存在する場合には(ステップS19)、ステップS18に戻り事業の採択を行う。
【0048】
図7は、投資の対象として採択された事業の一例を示す図である。図7に示すように、事業毎にコスト(C)、各項目に対する寄与度(E/ΔT)及び事業を採択するか否かを示す採否が示される。また、寄与度(E/ΔT)については、各事業の各項目に対する寄与度(E/ΔT)が上段に表示され、採択された事業の寄与度(E/ΔT)の累計値が下段に示される。また、採否として「○」が表示されている場合には、事業が採択されたことを示し、「×」が表示されている場合には、事業が採択されなかったことを示している。更に、図7に示すように、最下部に、各項目の成果目標の達成率(目標達成率)、即ち、「事故削減」の目標達成率「1.50」、「渋滞削減」の目標達成率「1.15」、「医療機関アクセス改善」の目標達成率「1.00」、「地場産品販売額増」の目標達成率「2.55」及び「緊急車両現場到着平均時間削減」の目標達成率「2.60」が示されている。
【0049】
ここで、事業の採択は、まず、図7に示すように、図6において単位コスト寄与度合計値(ΣK/C)の値が最も高く、優先順位が一番高い事業Aを実施事業として採択することから行われる。事業Aにおいては、緊急車両現場到着平均時間削減(E/ΔT)の値が「1」になっているため、事業Aを採択することにより、緊急車両現場到着平均時間削減という項目の成果目標を達成することができる。従って、事業A以下の優先順位となっている事業の中で、項目に対する寄与度(E/ΔT)として緊急車両現場到着平均時間削減(E/ΔT)のみを有する事業は投資の候補から除外し、該事業の採択を排除する。即ち、緊急車両現場到着平均時間削減(E/ΔT)のみを有する事業B及び事業Eを投資の候補から除外する。
【0050】
次に、図7に示すように、事業Aにより成果目標を達成することができる項目は緊急車両現場到着平均時間削減のみであるため、その他の項目の成果目標を達成するために実施する事業の採択を行う。即ち、投資の候補となっている事業の中で事業Aに次いで高い単位コスト寄与度合計値(ΣK/C)を持ち、緊急車両現場到着平均時間削減以外の項目に対する寄与度(E/ΔT)を有する事業Fを投資の対象として採択する。各項目に対して事業Fが有する寄与度(E/ΔT)は、事故削減(E/ΔT)「0.200」、地場産品販売額増(E/ΔT)「0.800」及び緊急車両現場到着平均時間削減(E/ΔT)「0.200」であるため、事故削減(E/ΔT)の累計値として「0.200」、地場産品販売額増(E/ΔT)の累計値として「0.800」、緊急車両現場到着平均時間削減(E/ΔT)の累計値として「1.200」が事業Fのそれぞれの寄与度(E/ΔT)の下段に表示される。この事業Fを採択することにより成果目標が達成される項目は存在しないため、事業Fに次いで高いコスト寄与度合計値(ΣK/C)を持ち、優先順位が事業Fの次の順位となっている事業Gを採択し、各項目に対する寄与度(E/ΔT)の累計値を算出する。同様にして、全ての項目に対する寄与度(E/ΔT)の累計値が「1又はそれ以上の値」となるまで、優先順位に基づいて事業の採択を行う。
【0051】
そして、全ての項目に対する寄与度(E/ΔT)の累計値が「1又はそれ以上の値」となり、採択された事業を実施することにより全ての項目について成果目標を達成できることが示された時点で、実施する事業の採択を終了する。即ち、図7に示すように、事業Dを採択した時点において、事故削減(E/ΔT)の累計値「1.500」、渋滞削減(E/ΔT)の累計値「1.150」、医療機関アクセス改善(E/ΔT)の累計値「1.000」、地場産品販売額増(E/ΔT)「2.550」及び緊急車両現場到着平均時間削減(E/ΔT)「2.600」と全ての項目に対する寄与度の累計値が「1」以上となっているため、残されている事業Hを採択することなく事業の採択を終了する。
【0052】
次に、投資の候補となっている事業の中から採択された事業を投資対象の事業として表示部10に表示する(ステップS20)。例えば、図7に示す採択された事業の一例を、投資対象の事業として表示部10に表示する。
【0053】
この第1の実施の形態に係る投資事業パッケージ形成支援システムによれば、投資の候補となっている事業の中から、各項目に対する単位コスト当りの寄与度の合計値に基づいて、各項目の成果目標を達成するために実施する事業を採択している。従って、各項目について設定された成果目標を確実に達成することができる事業を、実施する事業として採択することができる。
【0054】
また、この第1の実施の形態に係る投資事業パッケージ形成支援システムによれば、投資の候補となっている事業について、項目に対する単位コスト当りの寄与度の合計値(ΣK/C)を算出し、算出された単位コスト寄与度合計値(ΣK/C)の値が高い事業を優先して採択している。従って、単位コスト寄与度合計値(ΣK/C)の値が大きい事業から、即ち、全項目の成果目標の達成に対してより効率的に寄与する可能性の高い事業から順に投資を行う事業として採択することができる。また、単位コスト当りの寄与度に基づいて採択する事業に優先順位を与えているため、各項目の成果目標を効率的に達成することができる事業を明確な基準に基づいて、論理的に採択することができる。
【0055】
また、この第1の実施の形態に係る投資事業パッケージ形成支援システムによれば、各項目の成果目標を達成するために必要か否かという観点に基づいて論理的に実施する事業を採択することができる。従って、過去の実績や経験に基づいて事業の採択を行う場合に比べ、明確な根拠に基づいて事業の採択を行うことができ、状況の変化に迅速に対応し、かつ、的確な事業の採択を容易に実現することができる。
【0056】
また、この第1の実施の形態に係る投資事業パッケージ形成支援システムによれば、単位コスト寄与度合計値(ΣK/C)に基づいて採択された事業を投資対象の事業として表示部に表示している。従って、例えば、表示部に表示されている投資対象の事業を参照して最終的に採択する事業を決定する等、採択する事業を最終的に決定する際の有用な資料を提供することができる。
【0057】
なお、上述の第1の実施の形態に係る投資事業パッケージ形成支援システムにおいては、単位コスト寄与度合計値(ΣK/C)の値に基づく優先順位に従って実施する事業を採択しているが、採択された事業の全てが項目の成果目標の達成のために実施する必要があるか否かを確認するようにしてもよい。即ち、図7において示す採択された事業を仮採択された事業とし、仮採択された事業について単位コスト寄与度合計値(ΣK/C)の値が低い事業から順に、採択されなかったものと仮定して各項目に対する寄与度(E/ΔT)の累計値から該事業の寄与度(E/ΔT)の値を減算する。この時、累計値から採択されなかったと仮定された事業の寄与度(E/ΔT)を減算した値が全て「1又はそれ以上の値」となっていれば、該事業を実施しなくても全ての項目について成果目標を達成することができることになるため、該事業を投資の候補となっている事業から除外し非採択とする。例えば、図8に示すように、事業Gを採択すべき事業から除外した場合であっても、事故削減(E/ΔT)「1.200」、渋滞削減(E/ΔT)「1.150」、医療機関アクセス改善(E/ΔT)「1.000」、地場産品販売額増(E/ΔT)「1.700」及び緊急車両現場到着平均時間削減(E/ΔT)「2.300」となり、全てが「1又はそれ以上の値」となっているため、事業Gを除外しても全ての項目について成果目標の達成が可能であることを確認できる。この場合には、全ての項目について成果目標の達成のために必要十分な事業のみを実施することができるため、より効率的に実施すべき事業を採択することができる。
【0058】
また、上述の第1の実施の形態に係る投資事業パッケージ形成支援システムにおいては、単位コスト寄与度合計値(ΣK/C)の値に基づく採択の優先順位に従って投資の対象となる事業を採択しているが、先に採択された事業との組み合わせを考慮してより優先して採択すべき事業を決定するようにしてもよい。即ち、図7に示す場合において、事業Aを採択した後に、投資の候補となっている事業の中で単位コスト寄与度合計値(ΣK/C)に基づく優先順位は事業Fの方が事業Gよりも高いが、事業Aとの組み合わせにおいて、事業Fと事業Gのどちらを採択する方がより効率的かを考慮するようにしてもよい。
【0059】
例えば、n個の目標値があり、目標値と現況値との差分をΔT,ΔT,…ΔTとする。また、各項目の成果目標の達成に寄与する事業W,W,Wがあり、それぞれのコストをC,C,C、それぞれの事業のそれぞれの項目に対する効果をE11,E12,…,E1n、E21,E22,…,E1n,E31,E32,…,E3nとする。また、それぞれの事業の持つそれぞれの項目に対する効果を、それぞれ対応する項目の目標値と現況値との差分ΔTで除した寄与度の値を

【0060】
ここで、

【0061】
のとき、

【0062】
であれば、

【0063】
となる。この場合には、Wの次にWを採択する方がWの次にWを採択するよりも効率的に項目の成果目標を達成することができることになる。
【0064】
逆に式Iの左辺が負であれば、

【0065】
となる。この場合には、投資の候補となっている事業の中で、Wの次に優先順位が高い事業がWとなっている場合であっても、Wの次にWを採択した方が効率的に項目の成果目標を達成することができる。従って、上述のように式Iの算出結果を考慮し、優先順位に加え既に採択された事業との組み合わせに基づいて、より効率的に項目の成果目標を達成することができる事業を採択するようにしてもよい。
【0066】
次に、図面を参照してこの発明の第2の実施の形態に係る投資事業パッケージ形成支援システムについて説明する。なお、第2の実施の形態に係る投資事業パッケージ形成支援システムの構成は、第1の実施の形態に係る投資事業パッケージ形成支援システムと同様の構成であるため説明を省略する。
【0067】
次に、図9のフローチャートを参照して、投資限度額の範囲内で実施する事業を採択する処理について説明する。
【0068】
まず、投資の対象となっている事業全体に対して投資可能な投資限度額を設定する(ステップS21)。即ち、実際に実施される事業の数等とは無関係に、事業に配分することができる資金の上限額を入力部4を介して入力することにより、投資限度額を設定する。なお、設定された投資限度額はデータ記憶部6に記憶される。
【0069】
次に、複数の項目の各々について達成すべき目標値(T)を設定する(ステップS22)。即ち、上述の第1の実施の形態と同様に、例えば、「事故削減」、「渋滞削減」、「医療機関アクセス改善」、「地場産品販売額増」及び「緊急車両現場到着平均時間削減」という各項目について、目標値(T)として、「事故率」、「渋滞時間」、「医療機関アクセス最長時間」、「地場産品販売額」及び「緊急車両平均現場到着時間」の値を設定する。なお、設定された目標値(T)は、各項目に対応させてデータ記憶部6に記憶される。
【0070】
次に、目標値(T)が設定された各項目について、各々の項目の重要度を示す重み(W)を付与する(ステップS23)。即ち、目標値(T)が設定された各項目の重要度を示す重み(W)を付与する。ここで、各項目に付与される重み(W)は、例えば、任意の項目について付与されている重み(W)が「1」であり、ある項目に対する効果が100である事業は、この項目に対する効果が「100」のままで評価される。その一方、重み(W)として「2」が項目に付与されている場合には、この効果(E)が「100」の事業は、この項目に対する効果(E)が「200」として評価される。即ち、重み(W)として大きな値が付与され重要度が高い項目に対する事業の効果(E)が高く評価されるため、重み(W)の値が大きな項目に対する効果(E)の値が大きな事業程、実施する事業として優先的に採択される。
【0071】
図10は、目標値(T)及び重み(W)の一例を示す図である。図10に示すように、目標値(T)として、「事故率」は「120」、「渋滞時間」は「100」、「医療機関アクセス最長時間」は「1.2」、「地場産品販売額」は「2000」及び「緊急車両平均現場到着時間」は「4.2」が設定されている。また、重み(W)として、「事故率」及び「医療機関アクセス最長時間」はそれぞれ「5」が設定され、「渋滞時間」、「地場産品販売額」及び「緊急車両平均現場到着時間」はそれぞれ「1」が設定されている。従って、「事故削減」及び「医療機関アクセス改善」に対する事業の効果(E)は本来の効果(E)の5倍の値として評価され、「渋滞時間」、「地場産品販売額」及び「緊急車両現場到着平均時間削減」に対する事業の効果(E)は本来の効果(E)の値で評価されることになる。
【0072】
次に、投資の候補となっている各事業について、事業を実施する際に必要となるコスト(C)及び効果(E)を参照又は算出する(ステップS24)。即ち、まず、事業データ記憶部8に記憶されている事業データの中から、例えば、事業Cを実施するために必要な費用を示すデータを抽出し、事業Cのコスト(C)とする。次に、各項目に対する事業の効果(E)、即ち、事業を実施することにより得られる効果、例えば、事業Cを実施することにより事故削減という項目の成果目標の達成にもたらす効果を算出する。なお、コスト(C)及び効果(E)は上述の第1の実施の形態と同様の処理により算出され、各事業及び各項目に対応させてデータ記憶部6に記憶される。
【0073】
図11は、参照又は算出されたコスト(C)及び効果(E)の一例を示す図である。図11に示すように、各事業に対応させて投資の候補となっている事業のコスト(C)が記憶され、各事業及び各項目に対応させて効果(E)が記憶されている。ここで、事業の種類により効果(E)が得られる項目が異なっているため、一部の項目に対してのみ効果(E)が参照又は算出されている事業が存在する。また、全ての項目に対して効果(E)が参照又は算出されている事業も存在する。例えば、事業Aは緊急車両現場到着平均時間削減に対する効果(E)のみが参照又は算出されているが、事業Cは全ての項目に対して効果(E)が参照又は算出されている。
【0074】
次に投資の候補となっている各事業が持つ複数の目標の達成に向けた効果(E)を、当該事業のコスト(C)で除し、単位コストあたりの効果である単位コスト効果(E/C)を算出する(ステップ25)。図12は算出された単位コスト効果の一例を示す図である。ここで、図11に示すように、各事業は全ての項目に対して効果(E)を有しているとは限らず、事業の中には特定の項目、例えば、「緊急車両現場到着平均時間削減」のみに対して効果(E)を有しており、その他の項目に対しては効果(E)を有していない事業も存在する。このため図12に示すように、効果(E)を有していない場合には、単位コスト効果(E/C)も0となる(図12では空欄として示している)。
次に、投資の候補となっている各事業と同じ単位コスト効果(E/C)を持つ事業が出現する確率の大小を示す規準化得点(SS)を算出する(ステップS26)。即ち、規準化得点を算出する際には、まず、項目毎の単位コスト効果(E/C)の平均値及び標準偏差を算出する。例えば、図11に示す「事故削減」に対する事業A〜事業Hの効果(E)をコスト(C)で割った値である単位コスト効果(E/C)の合計値「2.842(=0.500+0.667+0.600+0.450+0.625)」を事業の数「8」で除することにより、全事業の「事故削減」に対する単位コスト効果(E/C)の平均「0.355」を算出する。同様に、「渋滞削減」、「医療機関アクセス改善」、「地場産品販売額増」及び「緊急車両現場到着平均時間削減」について単位コスト効果(E/C)の平均を算出する。また、全ての項目について単位コスト効果(E/C)の標準偏差を算出し、平均と併せて各項目に対応させてデータ記憶部6に記憶する。次に、各事業の各項目に対する単位コスト効果(E/C)の値から対応する項目に関する効果の全事業平均値を減じ、標準偏差で除することにより、各事業の各項目に対する規準化得点(SS)を算出する。
【0075】
図13は、各事業の各項目に対する規準化得点(SS)の一例を示す図である。ここで、図11に示すように、各事業は全ての項目に対して効果(E)を有しているとは限らず、事業の中には特定の項目、例えば、「緊急車両現場到着平均時間削減」のみに対して効果(E)を有しており、その他の項目に対しては効果(E)を有していない事業も存在する。そのため、図13に示すように、効果(E)を有していない場合や、単位コスト効果(E/C)の値が平均を下回っている場合には、規準化得点(SS)の値がマイナスとなっている。例えば、事業Aは「緊急車両現場到着平均時間削減」の項目に対する単位コスト効果(E/C)のみを有しており、「事故削減」、「渋滞時間」「医療機関アクセス改善」及び「地場産品販売額増」に対する単位コスト効果(E/C)は有していないため(図12参照)、「事故削減」等に対する規準化得点(SS)の値は当然マイナスの値になる。一方、「緊急車両現場到着平均時間削減」に対する単位コスト効果(E/C)の平均値は、図12に示す単位コスト効果(E/C)の値に基づいて「0.013」と算出され、事業Aの「緊急車両現場到着平均時間削減」の単位コスト効果(E/C)の値は「0.025」であるため、事業Aの「緊急車両現場到着平均時間削減」に対する規準化得点(SS)の値はマイナスの値にはならない。なお、規準化得点(SS)は、ある事業がある項目の成果目標の達成に対して、他の事業に比べてどれだけ得難い寄与をしているかを示す指標であり、規準化得点(SS)の値が大きい程、項目の成果目標の達成に対する寄与度合いが大きいことを示すと同時に、そのような寄与度を持つ事業がどれだけ得難いかを示している。
【0076】
次に、規準化得点(SS)とステップS23で付与した各項目に対する重みに基づいて、重み付き規準化得点を算出する(ステップS27)。即ち、規準化得点(SS)に項目に付されている重み(W)の値を乗ずることにより重み付き規準化得点(WSS)を算出する。例えば、「事故率」に付与されている重み(W)の値「5」(図10参照)を、「事故削減」に対する事業Aの規準化得点(SS)「−1.176」(図13参照)に乗ずることにより、事業Aの「事故削減」に対する重み付き規準化得点「−5.882」が算出される。同様にして、各事業の各項目に対する重み付き規準化得点を算出する。なお、算出された重み付き規準化得点は事業毎に各項目に対応させてデータ記憶部6に記憶される。
【0077】
次に、事業毎に重み付き規準化得点合計値(ΣWSS)を算出する(ステップS28)。即ち、事業毎に各項目に対応する重み付き規準化得点の合計値(ΣWSS)、例えば、事業Aの重み付き規準化得点計値として、事業Aの「事故削減」、「渋滞削減」、「医療機関アクセス改善」、「地場産品販売額増」及び「緊急車両現場到着平均時間削減」に対する重み付き規準化得点の合計値、を算出する。なお、算出された重み付き規準化得点合計値(ΣWSS)の値は、各事業に対応させてデータ記憶部6に記憶される。
【0078】
図14は、重み付き規準化得点(WSS)及び重み付き規準化得点合計値(ΣWSS)の一例を示す図である。図14に示すように、例えば、事業Aについて、コスト(C)「8」、「事故削減」に対する重み付き規準化得点「−5.882」、「渋滞削減」に対する重み付き規準化得点「−0.538」、「医療機関アクセス改善」に対する重み付き規準化得点「−2.682」、「地場産品販売額増」に対する重み付き規準化得点「−0.574」、「緊急車両現場到着平均時間削減」に対する重み付き規準化得点「0.840」、重み付き規準化得点合計値(ΣWSS)「−8.836」が算出されている。事業B〜事業Hについても、コスト(C)、重み付き規準化得点、重み付き規準化得点合計値及び重み付き規準化得点合計値(ΣWSS)が算出されている。
【0079】
次に、重み付き規準化得点合計値(ΣWSS)の値に基づいて投資の候補となっている事業の並べ替えを行う(ステップS29)。即ち、重み付き規準化得点合計値(ΣWSS)の値が高い順に投資の候補となっている事業を並べ替える。
【0080】
図15は、重み付き規準化得点合計値(ΣWSS)の値に基づいて並べ替えられた事業の一例を示す図である。図15に示すように、投資の候補となっている事業A〜事業Hの中で、最も重み付き規準化得点合計値(ΣWSS)の値が高い事業Dを最上位とし、重み付き規準化得点合計値(ΣWSS)の値が高い順に事業C、F、H、G、E、A、Bと並べ替えられている。この図15に示す事業の並び順は、実施する事業を採択する際の優先順位となっているため、重み付き規準化得点合計値(ΣWSS)の値が最も高い事業Dが最優先で採択される事業となる。
【0081】
次に、重み付き規準化得点合計値(ΣWSS)の値が高い順に並べ替えられた事業の中から実施する事業を採択する(ステップS30)。即ち、重み付き規準化得点合計値(ΣWSS)の値が高い事業から優先して、投資を行い実施する事業を採択する。次に、採択された事業のコスト(C)の合計値(コスト計)を算出する(ステップS31)。
【0082】
ステップS31において算出されたコスト計の値が投資限度額を超える場合には(ステップS32)、最後に採択された事業を非採択として事業の採択を終了する。即ち、採択された事業のコスト計が投資限度額を超える場合には、コスト計の値が投資限度額の範囲内となっている事業までを採択する事業として、事業の採択を終了する。
【0083】
図16は、投資を行い実施する事業として採択された事業の一例を示す図である。図16に示すように、重み付き規準化得点合計値(ΣWSS)の値に基づいて並べ替えられた事業について、事業のコスト(C)の累積を示すコスト計、各項目に対する効果(E)、重み付き規準化得点合計値(ΣWSS)の値及び採否を示す「○」又は「×」が示されている。ここで、図16においては、投資限度額として「90」が設定されている場合を例として採択された事業を示している。図16に示すように、採択された事業D、C、F、H、Gのコスト計は、「88」となっているが、更に事業Bを採択した場合のコスト計は「93」となる。即ち、事業Bを採択した場合には投資限度額を超えてしまうことから、事業Bは採択することができず、事業D、C、F、H及び事業Gが投資し実施する事業として採択されている。
【0084】
次に、採択された事業を投資対象の事業として表示部10に表示する(ステップS33)。例えば、図16に示す採択された事業の一例を投資対象の事業として表示部10に表示する。
【0085】
この発明の第2の実施の形態に係る投資事業パッケージ形成支援システムによれば、設定された投資限度額の範囲内で各項目の成果目標の達成に寄与する事業を実施する事業として採択することができる。即ち、単位コスト当りの重み付けられた各項目の成果目標を達成するための寄与度合いの合計値を示す重み付き規準化得点合計値(ΣWSS)が高い順に、設定された投資限度額の範囲内で実施する事業を採択することができる。従って、限られたコストの中で最も高い成果を出すと考えられる事業を実施する事業として採択することができる。
【0086】
また、この発明の第2の実施の形態に係る投資事業パッケージ形成支援システムによれば、各項目に対して重要度を示す重みが付与されているため、各項目の重要度を考慮して事業の採択を行うことができる。例えば、重要度が高く重み(W)として「5」が付与されている項目に対する事業の効果(E)は、例えば実際には「2」となっている場合であっても、採択の際には「10」と評価される。従って、付与されている重みの値が高く、項目に対する効果(E)の値が大きな事業は、必然的に重み付き規準化得点合計値(ΣWSS)の値が高くなり採択の優先順位も高くなる。そのため、重み付けられた項目の成果目標の達成に効率的に寄与する事業から順に、実施する事業として優先的に設定された投資限度額の範囲内で採択することができる。
【0087】
なお、上述の第2の実施の形態に係る投資事業パッケージ形成支援システムにおいては、最初に設定された投資限度額の範囲内で事業の採択を行っているが、投資限度額を調整することができるようにしてもよい。即ち、一度設定した投資限度額を変更し、変更後の投資限度額の範囲内において事業の採択を行うことができるようにしてもよい。この場合には、投資限度額が変更になった場合であっても、迅速に対応することができる。
【0088】
また、各項目に付与されている重み(W)の値を変更することができるようにしてもよい。即ち、項目に設定されている重み(W)の値を変更し、項目の重要度を低く又は高くしてもよい。この場合には、重み(W)の値を変更することによりより重要度が高い項目に対して効果(E)を有する事業を優先的に採択することができ、状況の変化に迅速に対応することができる。
【0089】
また、上述の第2の実施の形態に係る投資事業パッケージ形成支援システムにおいては、重み付き規準化得点合計値(ΣWSS)の値が高い順に優先して事業の選択を行っているが、各項目の成果目標の達成率を考慮して事業の採択を行うようにしてもよい。即ち、上述の第1の実施の形態における場合と同様に、効果(E)の値を目標値(T)と現況を示す現況値との差分(ΔT)で除算することにより寄与度を算出し、採択された事業の任意の項目に対する寄与度の合計値が「1又はそれ以上の値」となった場合には、既に寄与度が「1又はそれ以上の値」となった項目に対する寄与度のみを有する事業の採択を排除するようにしてもよい。
【0090】
この発明の実施の形態に係る投資事業パッケージ形成支援システムによれば、複数の項目の各々の成果目標を全て効率よく達成することができる事業を採択することができる。また、投資限度額の範囲内で最も効率的な成果を得ることができる事業を採択することができる。即ち、事業を採択する際の制約、例えば、全ての項目について成果目標を達成しなければならない、又は、成果目標の達成以前に投資限度額の範囲内で事業の採択を行わなければならない等、事業採択の制約に応じて適切な事業を採択することができる。また、論理的、かつ、明確な基準に基づいて事業の採択を行うことができるため、過去の実績や経験に基づく採択と異なり、状況の変化に対応した事業の採択を行うことができると共に、公共事業で特に求められる説明責任や事業の透明性の確保にもつながる。
【0091】
なお、上述の実施の形態においては、事業の実施に必要な費用を示すデータに基づく事業のコストを用いて事業の採択を行っているが、事業を実施する際のコストを示す関数又はコストを変数とする関数に基づいて事業の選択を行うようにしてもよい。即ち、過去の事業を実施する際のコストを示す関数に所定の数値を乗算等することにより、コストを算出し事業の採択を行うようにしてもよい。又は第2の実施の形態において、事業の効果を規準化し、さらに規準化された効果のすべてが0以上の数値となるように調整したと同様の手段により、コストも規準化し、すべての規準化されたコストが0以上の数値となるよう調整した「コストを変数とする関数」を用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】この発明の実施の形態に係る投資事業パッケージ形成支援システムのブロック構成図である。
【図2】この発明の第1の実施の形態に係る投資事業パッケージ形成システムにおける処理を説明するためのフローチャートである。
【図3】この発明の第1の実施の形態に係る目標値(T)及び差分(ΔT)の一例を示す図である。
【図4】この発明の第1の実施の形態に係るコスト(C)及び効果(E)の一例を示す図である。
【図5】この発明の第1の実施の形態に係る単位コスト寄与度合計値(ΣK/C)の一例を示す図である。
【図6】この発明の第1の実施の形態に係る並べ替えられた事業の一例を示す図である。
【図7】この発明の第1の実施の形態に係る投資対象の事業の一例を示す図である。
【図8】この発明の第1の実施の形態に係る採択された事業の必要性を確認する処理を説明する図である。
【図9】この発明の第2の実施の形態に係る投資事業パッケージ形成支援システムにおける処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】この発明の第2の実施の形態に係る目標値(T)と重み(W)の一例を示す図である。
【図11】この発明の第2の実施の形態に係るコスト(C)と効果(E)の一例を示す図である。
【図12】この発明の第2の実施の形態に係る単位コスト効果(E/C)の一例を示す図である。
【図13】この発明の第2の実施の形態に係る規準化得点(SS)の一例を示す図である。
【図14】この発明の第2の実施の形態に係る重み付き基準化得点(ΣWSS)の一例を示す図である。
【図15】この発明の第2の実施の形態に係る並べ替えられた事業の一例を示す図である。
【図16】この発明の第2の実施の形態に係る投資対象の事業の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0093】
2…データ制御部、4…入力部、6…データ記憶部、8…事業データ記憶部、10…表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
達成すべき目標値を複数の項目の各々について設定する目標値設定工程と、
前記目標値設定工程において設定された目標値と、前記複数の項目の各々の現況を示す現況値との差分を算出する差分算出工程と、
前記目標値設定工程において設定された目標値を達成するための所定の事業の各々について、該所定の事業を実施した場合の前記複数の項目の各々に対する効果及び前記差分算出工程において算出された前記複数の項目の各々についての差分に基づいて、前記複数の項目の各々について目標達成に対する寄与度を算出する寄与度算出工程と、
前記寄与度算出工程において算出された各々の寄与度の合計値を各々の事業毎に算出する寄与度合計値算出工程と、
前記寄与度合計値算出工程において算出された寄与度合計値及び前記所定の事業を実施する際に必要なコストに関する値に基づいて、前記所定の事業の各々の単位コスト当りの寄与度合計値を単位コスト寄与度合計値として算出する単位コスト寄与度合計値算出工程と、
前記単位コスト寄与度合計値算出工程により算出された単位コスト寄与度合計値が大きい順に、前記所定の事業の中から実施する事業を採択する事業採択工程と
を含むことを特徴とする投資事業パッケージ形成方法。
【請求項2】
前記事業採択工程は、
既に採択された事業により前記複数の項目の中で何れかの項目の目標が達成可能な場合に、目標を達成可能な項目に対する効果のみを有する事業の採択を排除することを特徴とする請求項1記載の投資事業パッケージ形成方法。
【請求項3】
前記事業採択工程において採択された事業を初期解として、分枝限定法によってより厳密な最適解を求める最適事業採択工程を更に含むことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の投資事業パッケージ形成方法。
【請求項4】
前記目標値設定工程において設定された目標値を変更する目標値変更工程を更に含むことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の投資事業パッケージ形成方法。
【請求項5】
事業への投資限度額を設定する投資限度額設定工程と、
達成すべき目標値を複数の項目の各々について設定する目標値設定工程と、
前記目標値設定工程において目標値が設定された項目の各々に重要度を示す重みを付与する重み付け工程と、
前記目標値設定工程において設定された目標値を達成するための所定の事業の各々について、該所定の事業を実施した場合の前記複数の項目の各々に対する効果を算出する効果算出工程と、
前記効果算出工程において算出された効果と、前記所定の事業を実施する際に必要なコストに関する値とに基づいて、単位コストあたりの効果を算出する単位コスト効果算出工程と、
各々の事業が持つ単位コスト効果と同じ単位コスト効果を持つ事業が出現する確率の大小を示す規準化得点を算出する規準化得点算出工程と、
前記重み付け工程において前記複数の項目の各々に付与された重み及び前記規準化得点算出工程において算出された規準化得点に基づいて、重み付き規準化得点の合計値を各々の事業毎に算出する重み付き規準化得点合計値算出工程と、
前記投資限度額設定工程において設定された投資限度額の範囲内において、前記重み付き規準化得点合計値が大きい順に、前記所定の事業の中から実施する事業を採択する事業採択工程と
を含むことを特徴とする投資事業パッケージ形成方法。
【請求項6】
前記投資限度額設定工程において設定された事業への投資限度額を調整する投資限度額調整工程を更に含み、
前記投資限度額調整工程において前記投資限度額が調整された場合には、前記事業採択工程において、調整後の前記投資限度額の範囲内で事業の採択を行うことを特徴とする請求項5記載の投資事業パッケージ形成方法。
【請求項7】
前記重み付け工程は、
前記複数の項目の各々に付与された重みの値を変更する重み変更工程を更に含むことを特徴とする請求項5又は請求項6記載の投資事業パッケージ形成方法。
【請求項8】
達成すべき目標値を複数の項目の各々について設定する目標値設定手段と、
前記目標値設定手段において設定された目標値と、前記複数の項目の各々の現況を示す現況値との差分を算出する差分算出手段と、
前記目標値設定手段により設定された目標値を達成するための所定の事業の各々について、該所定の事業を実施した場合の前記複数の項目の各々に対する効果及び前記差分算出手段により算出された前記複数の項目の各々についての差分に基づいて、前記複数の項目の各々について目標達成に対する寄与度を算出する寄与度算出手段と、
前記寄与度算出手段において算出された各々の寄与度の合計値を各々の事業毎に算出する寄与度合計値算出手段と、
前記寄与度合計値算出手段により算出された寄与度合計値及び前記所定の事業を実施する際に必要なコストに関する値に基づいて、前記所定の事業の各々の単位コスト当りの寄与度合計値を単位コスト寄与度合計値として算出する単位コスト寄与度合計値算出手段と、
前記単位コスト寄与度合計値算出手段により算出された単位コスト寄与度合計値が大きい順に、前記所定の事業の中から実施する事業を採択する事業採択手段と、
前記事業採択手段により採択された事業を投資対象の事業として出力する出力手段と
を備えることを特徴とする投資事業パッケージ形成支援システム。
【請求項9】
前記事業採択手段は、
既に採択された事業により前記複数の項目の中で何れかの目標が達成可能な場合に、目標を達成可能な項目に対する効果のみを有する事業の採択を排除することを特徴とする請求項8記載の投資事業パッケージ形成支援システム。
【請求項10】
前記事業採択手段により採択された事業を初期解として、分枝限定法によってより厳密な最適解を求める最適事業採択手段を更に含むことを特徴とする請求項8又は請求項9記載の投資事業パッケージ形成支援システム。
【請求項11】
前記目標値設定手段により設定された目標値を変更する目標値変更手段を更に備えることを特徴とする請求項8〜請求項10の何れか一項に記載の投資事業パッケージ形成支援システム。
【請求項12】
事業への投資限度額を設定する投資限度額設定手段と、
達成すべき目標値を複数の項目の各々について設定する目標値設定手段と、
前記目標値設定手段により目標値が設定された項目の各々に重要度を示す重みを付与する重み付け手段と、
前記目標値設定手段により設定された目標値を達成するための所定の事業の各々について、該所定の事業を実施した場合の前記複数の項目の各々に対する効果を算出する効果算出手段と、
前記効果算出手段において算出された効果と、前記所定の事業を実施する際に必要なコストに関する値とに基づいて、単位コストあたりの効果を算出する単位コスト効果算出手段と、
各々の事業が持つ単位コスト効果と同じ単位コスト効果を持つ事業が出現する確率の大小を示す規準化得点を算出する規準化得点算出手段と、
前記重み付け手段により前記複数の項目の各々に付与された重み及び前記規準化得点算出手段により算出された規準化得点に基づいて、重み付き規準化得点の合計値を各々の事業毎に算出する重み付き規準化得点合計値算出手段と、
前記投資限度額設定手段により設定された投資限度額の範囲内において、前記重み付き規準化得点合計値が大きい順に、前記所定の事業の中から実施する事業を採択する事業採択手段と、
前記事業採択手段により採択された事業を、投資対象の事業として出力する出力手段と
を備えることを特徴とする投資事業パッケージ形成支援システム。
【請求項13】
前記投資限度額設定手段において設定された事業への投資限度額を調整する投資限度額調整手段を更に備え、
前記投資限度額調整手段により前記投資限度額が調整された場合に、前記事業採択手段は、調整後の前記投資限度額の範囲内で事業の採択を行うことを特徴とする請求項12記載の投資事業パッケージ形成支援システム。
【請求項14】
前記重み付け手段は、
前記複数の項目の各々に付与された重みの値を変更する重み変更手段を更に備えることを特徴とする請求項12又は請求項13記載の投資事業パッケージ形成支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−133962(P2006−133962A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−320553(P2004−320553)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(505398941)東日本高速道路株式会社 (66)
【出願人】(505398952)中日本高速道路株式会社 (94)
【出願人】(505398963)西日本高速道路株式会社 (105)
【出願人】(594096667)財団法人高速道路技術センター (10)
【出願人】(000155469)株式会社野村総合研究所 (1,067)
【上記2名の代理人】
【識別番号】100112427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 芳洋