説明

抗コロナウイルス剤

コロナウイルスに対して効果があり、しかも各種製品に加工し効果の持続性が期待できる抗ウイルス剤を提供することである。本発明は、銀イオン担持体からなるコロナウイルスに対して有効な抗ウイルス剤および、これを含有するコロナウイルス不活化することができる製品であり、不活化方法である。銀イオン担持体は、下記式(1)、チタン酸カリウム、ウラン酸カリウム、バナジン酸カリウム、ニオブ酸カリウム、タングステン酸ナトリウム、モリブデン酸マグネシウム、ペンタホウ酸カルシウム、アルミノケイ酸塩、リン酸アルミニウム、ヘキサシアノ鉄ニッケル、セピオライト、モンモリロナイト、シリカゲル、ゼオライト、β−アルミナ、含水酸化チタン、ヒドロキシアパタイト及びガラス質担持体から選ばれる少なくとも1種である。AgM2(PO・nHO(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、コロナウイルスに対して効果を示し、プラスチックや塗料等に配合することが可能な抗コロナウイルス剤に関するものである。抗コロナウイルス剤を含有させた繊維や樹脂等から作製した抗コロナウイルス製品に関するものである。
【背景技術】
近年、様々な感染症が社会問題となっている。特に東南アジアで流行したSARSコロナウイルスによる重症急性呼吸器症候群(SARS)は、未だにワクチンはなく、根本的な治療法もないため、如何に感染を予防するかが重要である。しかし、SARSの感染は、感染者との直接接触や飛沫感染ばかりでなく、感染者が触れたドアノブや衣料などの物品を介した間接接触により拡大した可能性があるとの情報もある。WHO研究施設ネットワークが集積したSARSコロナウイルスの安定性と抵抗性に関する最初のデータによれば、条件によってSARSコロナウイルスは、外界で数日間生存する。従って、感染者が接触する機会の多い物品は、常に消毒等により清浄化することが感染予防には有効であると考えられる。
SARSコロナウイルスに対しては、エタノール、次亜塩素酸ソーダ、ヨードホール、過酢酸、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドおよびエチレンオキサイドガスが消毒剤として効果があると報告されている。しかし、これら消毒剤は一時的な効果しかなく、明らかにコロナウイルスが付着したことがわかれば使用可能であるが、持続的な効果は望めないため、常に様々な物品を清浄な状態に保つことはできないという問題がある。
一方、細菌類に対し持続性のある抗菌剤として銀系無機抗菌剤が知られている。銀系無機抗菌剤とは、銀を無機化合物に担持した抗菌剤で、耐熱性が高いため様々な製品形態に加工して使用することが可能である。例えば、銀および/または銀化合物を担持させた活性炭(例えば、特開昭49−61950号参照)、銀含有の溶解性ガラス(例えば、特開昭63−307807号参照)、銀、銅および/または亜鉛を含有するゼオライト(例えば、特開昭60−181002号参照)、銀を含有するリン酸ジルコニウム(例えば、特開平3−83905号参照)などがある。しかし、これら銀系無機抗菌剤が、SARSコロナウイルスなどのコロナウイルスに有効であるとの報告はない。
硝酸銀によりHSV(herpes simplex virus)−1および2に対しては活性が認められるが、Vacciniavirus、Adenovirus、VSV、PoliovirusおよびHVJなどには活性がないことが報告されている(例えば、R.B.Thurman,C.P.Gerba,「The Molecular Mechanisms of Copper and Silver ion Disinfection of Bacteria and Viruses」、Critical Reviews in Environmental Control,1989年,第18巻,4号,p295−315参照)。
【発明の開示】
コロナウイルスに対して効果があり、しかも各種製品に加工し効果の持続性が期待できる抗ウイルス剤を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、有効成分として銀イオンを用い、かつ銀イオンを担持体に安定に保持させることで、課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
本発明は、銀イオンを安定して保持する担持体からなることを特徴とするコロナウイルスに対して有効な抗ウイルス剤に関する。本発明は、抗コロナウイルス剤を含有するコロナウイルス不活化することができる製品である。また、本発明の銀イオン担持体を用いるコロナウイルスの不活化方法である。
本発明は、上記知見に基づいて完成されたものであり、以下に示すものである。
1. 銀イオン担持体からなることを特徴とする抗コロナウィルス剤。
2. 上記記載の銀イオン担持体が下記式(1)、チタン酸カリウム、ウラン酸カリウム、バナジン酸カリウム、ニオブ酸カリウム、タングステン酸ナトリウム、モリブデン酸マグネシウム、ペンタホウ酸カルシウム、アルミノケイ酸塩、リン酸アルミニウム、ヘキサシアノ鉄ニッケル、セピオライト、モンモリロナイト、シリカゲル、ゼオライト、β−アルミナ、含水酸化チタン、ヒドロキシアパタイト及びガラス質担持体から選ばれる少なくとも1種である上記1記載の抗コロナウィルス剤。
AgM2(PO・nHO (1)
(式(1)のAはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオンおよび水素イオンから選ばれる少なくとも1種のm価(mは正の整数)のイオンであり、M2はジルコニウムやチタンの4価金属イオンであり、nは0≦n≦6を満たす数であり、aおよびbはいずれもa+mb=1またはa+mb=2を満たす正数であり、cおよびdはa+mb=1の時、c=2およびd=3であり、a+mb=2の時、c=1およびd=2である。)
3. 上記記載の銀イオン担持体が上記式(1)、シリカゲル、ゼオライト及びガラス質担持体から選ばれる少なくとも1種である上記1記載の抗コロナウィルス剤。
4. 上記記載の銀イオン担持体が上記式(1)である上記1記載の抗コロナウィルス剤。
5. コロナウィルスがSARSウィルスである上記1〜4にそれぞれ記載の抗コロナウィルス剤。
6. 上記1〜4にそれぞれ記載の抗コロナウィルス剤を含有する製品。
7. コロナウィルスがSARSウィルスである上記6記載の抗コロナウィルス剤を含有する製品。
8. 上記1〜4にそれぞれ記載の抗コロナウィルス剤を用いることを特徴とするコロナウイルス不活化方法。
9. コロナウィルスがSARSウィルスである上記8記載の抗コロナウィルス剤を用いることを特徴とするコロナウイルス不活化方法。
【発明を実施するための最良の形態】
以下本発明について説明する。
本発明におけるコロナウイルスとは、一本鎖(+)RNAウイルスのコロナウイルス科のウイルスをさし、コロナウイルス属、トロウイルス属を含む。伝染性気管支炎ウイルス(IBV)、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス(FIP)、イヌコロナウイルス(CCV)、ブタ伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)、ウマトロウイルス(EqTV)などがある。エンベロープ表面に存在する突起によって太陽のコロナ様の外観を持つことからこの名が付いている。2003年に東南アジアで流行したSARSの原因は、このコロナウイルスの新種の1種である。
本発明における抗ウイルス剤中の有効成分である銀イオンは、その担持体に安定して担持されることが必要である。ここで安定に保持されるとは、熱(例えば温度200℃以下)、水(例えば湿度10〜100%)による影響がなく常にイオンの状態であり、金属や酸化物等の非イオン状態に変化しないことを意味する。
本発明において銀イオンを安定して保持する担持体は、リン酸ジルコニウムなどで代表される一般式(1)で表されるものや、チタン酸カリウム(KTi)、ウラン酸カリウム(K)、バナジン酸カリウム(KV)、ニオブ酸カリウム(KNbO)、タングステン酸ナトリウム(Na13)、モリブデン酸マグネシウム(MgMo)等の酸素酸塩、ペンタホウ酸塩(Ca(B)(OH))、グラファイト、結晶性アルミノケイ酸塩、結晶性リン酸アルミニウム、ヘキサシアノ鉄酸塩、セピオライト(MgSi1230(OH)(HO))、シリカゲル、モンモリロナイト等のゼオライト様物質、β−アルミナ(Al)、含水酸化チタン(TiO・nHO)、ヒドロキシアパタイト(Ca(PO)(OH)・nHO)等の含水酸化物および銀含有溶解性ガラスなどを挙げることができる。
上記の銀イオン担持体の中で、銀イオンを強固に担持できることから、一般式(1)、銀担持ゼオライト様物質、および銀含有溶解性ガラスなどが好ましく、更に好ましくはリン酸ジルコニウム、銀担持ゼオライトおよび銀含有溶解性ガラスなどが好ましい。
上記式(1)は、一般式(2)で示される化合物より得ることができる。
A’xZr(PO (2)
式(2)のA’はアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはアンモニウムイオンから選ばれる少なくとも1種の金属イオンであり、xはA’が1価であるときは1であり、Aが2価であるときは1/2である。これを、室温〜100℃において、適当な濃度で銀イオンを含有する水溶液中に浸漬することにより、式(1)で示される化合物を得ることができる。
一般式(1)の好ましい具体例として、以下のものがある。
Ag0.01Na1.99Zr(PO
Ag0.1(NH1.9Ti(PO・4H
Ag0.005Li0.995Zr(PO
Ag0.01(NH0.99Zr(PO
Ag0.05Na0.95Zr(PO
Ag0.20.8Ti(PO
Ag0.10.9Zr(PO
Ag0.40.15Na0.45Zr(PO
Ag0.60.1Na0.3Zr(PO
本発明における銀イオン担持体に含まれる銀イオンは、0.01〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜15質量%であり、特に好ましくは0.1〜5質量%である。銀イオン担持体に含まれる銀イオンが0.01質量%以下では、コロナウイルスに対し抗ウイルス効果が出ない場合があり、20質量%以上では、銀イオン担持体を含有するものの着色や経済的に不利であることから好ましくない。
本発明の抗コロナウイルス剤は、水に対する銀イオンの溶出量が、0.5μg/リットル/日以上(例えば10gの銀イオン担持体に対し)であることが好ましく、5μg/リットル/日以上であることが効果持続性の観点より好ましい。但し、銀イオンの溶出が多過ぎる場合は、効果の面で充分以上の銀イオンが溶出することから好ましくなく、銀イオン担持体含有物の着色の面からも好ましくない。
また該担持体の粒子径は0.1〜15μmが好ましく、更に0.5〜10μmが更に好ましい。この粒子径にすることで、効果的に有効性を発揮できることから好ましい。
本発明の抗コロナウイルス剤は、銀化合物の溶液に一般式(1)で表されるリン酸ジルコニウム、チタン酸カリウム、ウラン酸カリウム、バナジン酸カリウム、ニオブ酸カリウム、タングステン酸ナトリウム、モリブデン酸マグネシウム、ペンタホウ酸カルシウム、アルミノケイ酸塩、リン酸アルミニウム、ヘキサシアノ鉄ニッケル、セピオライト、モンモリロナイト、シリカゲル、ゼオライト、β−アルミナ、含水酸化チタン、ヒドロキシアパタイトなどの担持体を加えて攪拌することによって得ることができる。使用できる銀化合物としては、硝酸銀、硫酸銀、過塩素酸銀、酢酸銀、ジアンミン銀硝酸塩、およびジアンミン硫酸塩等を挙げることができる。攪拌は、10〜80℃、好ましくは40〜60℃で1〜50時間、好ましくは5〜24時間バッチ式または連続式によって行うことができる。攪拌終了後、担持体を水洗したのち60〜170℃で乾燥する。また、酸化銀または上記記載の銀化合物を含有させて水溶解性ガラスを作製することができる。
本発明の抗コロナウイルス剤は粉末であるので、このまま使用しても、これを加工してから使用することもできる。例えば、懸濁状態として、または粒状体、抄紙体、ペレット体、シート、フィルム等の成型体として使用することができる。また、多孔質体や繊維体の形態とすることができる。さらにそれらを塗料、布、不織布、発泡シート、紙、プラスチック、および無機質板などに加工することもできる。
下記に本発明の抗コロナウイルス剤を用いた製品の製造例を記載する。
○銀リン酸ジルコニウム系担持体を用いた製造例
銀を3.7質量%含有する銀リン酸ジルコニウム系担持体を繊維用ポリエステル樹脂に対し1質量%の割合で配合し、常法により溶融紡糸することにより2デニール、75フィラメントからなる抗コロナウイルス性ポリエステルマルチフィラメントを得ることができる。このフィラメントから布や紙を製造することができる。
銀を3.7質量%含有する銀リン酸ジルコニウム系担持体をポリプロピレン樹脂に対し10質量%の割合で配合し、担持体10質量%のマスターバッチを作製した。この担持体マスターバッチをポリプロピレン樹脂に対し10質量%の割合で混合後、常法により射出成形することにより抗コロナウイルス性ポリプロピレン成形品を得ることができる。この成形品は抗コロナウイルス製品として使用することができる。
銀を3.7質量%含有する銀リン酸ジルコニウム系担持体をUV硬化アクリル塗料に対し1質量%の割合で配合し、抗コロナウイルス性UV塗料を調製した。この抗コロナウイルス塗料を、常法にてSUS板に塗布することにより抗コロナウイルス性SUS板を得ることができる。このような抗コロナウイルス塗料を用いて壁、天井や床等に塗布して抗コロナウイルス塗料として使用することができる。
○銀ゼオライトY系担持体を用いた製造例
銀を2.0質量%含有する銀ゼオライトY系担持体を繊維用ポリアミド樹脂に対し1質量%の割合で配合し、常法により溶融紡糸することにより2デニール、75フィラメントからなる抗コロナウイルス性ポリアミドマルチフィラメントを得ることができる。このフィラメントから布や紙を製造することができる。
銀を1.1質量%含有する銀ゼオライトA系担持体をABS樹脂に対し10質量%の割合で配合し、担持体10質量%のマスターバッチを作製した。この担持体マスターバッチをABS樹脂に対し10質量%の割合で混合後、常法により射出成形することにより抗コロナウイルス性ABS成形品を得ることができる。この成形品は抗コロナウイルス製品として使用することができる。
○銀ガラス系担持体を用いた製造例
銀を1.0質量%含有する銀ガラス系担持体を繊維用ポリエステル樹脂に対し0.5質量%の割合で配合し、常法により溶融紡糸することにより30デニールの抗コロナウイルス性ポリエステルモノフィラメントを得ることができる。このフィラメントから布や紙を製造することができる。
銀を1.0質量%含有する銀ガラス系担持体をポリスチレン樹脂に対し10質量%の割合で配合し、担持体10質量%のマスターバッチを作製した。この担持体マスターバッチをポリスチレン樹脂に対し10質量%の割合で混合後、常法により射出成形することにより抗コロナウイルス性ポリスチレン成形品を得ることができる。この成形品は抗コロナウイルス製品として使用することができる。
○銀担持シリカゲル系担持体を用いた製造例
銀を1.1質量%含有する銀シリカゲル系担持体を繊維用ポリプロピレン樹脂に対し1質量%の割合で配合し、常法により溶融紡糸することにより30デニールの抗コロナウイルス性ポリプロピレンモノフィラメントを得ることができる。このフィラメントから布や紙を製造することができる。
銀を1.1質量%含有する銀シリカゲル系担持体をポリエチレン樹脂に対し10質量%の割合で配合し、担持体10質量%のマスターバッチを作製した。この担持体マスターバッチをポリエチレン樹脂に対し10質量%の割合で混合後、常法により射出成形することにより抗コロナウイルス性ポリエチレン成形品を得ることができる。この成形品は抗コロナウイルス製品として使用することができる。
本発明の製品としては、コロナウイルスを無害化することが望まれる各種分野や場所で使用することができる。例えば医療分野、化粧品分野、繊維衣料分野、寝装分野、生活用品分野、建材分野、船舶分野、水処理分野等を挙げることができる。医療分野では医薬品、手術用具、ばんそう膏、医療廃棄物容器、リネン類等に使用することができる。そして、本発明の抗コロナウイルス剤を用いる具体例としては、ドア、床、壁などに、また白衣、手袋、靴カバー、マスク、カーテン、シーツ、タオル、フキンなどが挙げられる。また、空気清浄機やエアコンディショナー等にフィルターとして組込んでも良い。
【実施例】
以下本発明を実施例により説明する。
【実施例1】
SARS患者から分離したSARSコロナウイルス(SARS−COV−P11とSARS−COV−P8)に対する銀リン酸ジルコニウム(商品名:ノバロンAG300,東亞合成(株)製)のウイルス不活化試験を行った。
○アフリカミドリザル腎継代細胞VERO E6の単層形成プレート(VERO E6単層形成プレート)
4×10個/mlのVERO E6細胞を96穴培養プレートに接種し、インキュベーターで37℃、5%CO、24時間培養し、細胞を単層化させた。
○銀リン酸ジルコニウムのアフリカミドリザル腎継代細胞VERO E6に対する毒性
VERO E6細胞に対する銀リン酸ジルコニウムの毒性を測定した。即ち、6000〜187.5μg/ml濃度の銀リン酸ジルコニウムをイーグル細胞培養培地で調製し、これらをVERO E6単層形成プレートに加えて37℃、5%CO、5〜7日間培養した。毎日顕微鏡で観察して毒性を調べた。この結果、銀リン酸ジルコニウムの毒性は下記のようであった。
TD=1500μg/ml
TD50=3000μg/ml
○SARSコロナウイルスの毒力試験
細胞形態変化(CPE)法を用いてVERO E6細胞に対するSARS−COV−P11およびSARS−COV−P8の毒力を測定し、TCID50を決定した。
○銀リン酸ジルコニウムによるSARSコロナウイルス不活化
上記で決定した100TCID50量のSARSコロナウイルスを含む培養液に対して1500μg/mlになるように銀リン酸ジルコニウムを加え、4時間および6時間撹拌した。そして、これらの培養液について、銀リン酸ジルコニウムの濃度が1500〜23.4μg/ml相当になるように2倍希釈して検定液を調製した。これらの各検定液をVERO E6単層形成プレートに入れて(各濃度4穴使用)37℃、5%CO、5〜7日間培養した。この培養期間中は、毎日顕微鏡でウイルスによるCPEを観察し、無処理である対照ウイルスのCPEが51%以上になった時点で試験を終了とした。そしてSARSコロナウイルスに対する銀リン酸ジルコニウムの100%不活化濃度、50%不活化濃度および25%不活化濃度を求めた。この結果を表1に記載した(μg/ml)。

この結果、銀リン酸ジルコニウムの23.4μg/ml以上の濃度においてSARSコロナウイルスに対する効果が認められた。
このことから、銀リン酸ジルコニウムは、コロナウイルスを無害化する効果があることが分かる。
<製造例>
銀を3.7質量%含有する銀リン酸ジルコニウム系担持体を繊維用ポリエステル樹脂に対し1質量%の割合で配合し、常法により溶融紡糸することにより2デニール、75フィラメントからなる抗コロナウイルス性ポリエステルマルチフィラメントを得た。
銀を3.7質量%含有する銀リン酸ジルコニウム系担持体をポリプロピレン樹脂に対し10質量%の割合で配合し、担持体10質量%のマスターバッチを作製した。この担持体マスターバッチをポリプロピレン樹脂に対し10質量%の割合で混合後、常法により射出成形することにより抗コロナウイルス性ポリプロピレン成形品を得た。
銀を3.7質量%含有する銀リン酸ジルコニウム系担持体をUV硬化アクリル塗料に対し1質量%の割合で配合し、抗菌性UV塗料を調製した。この抗菌塗料を、常法にてSUS板に塗布することにより抗コロナウイルス性SUS板を得た。
【産業上の利用可能性】
本発明の銀イオン担持体による抗コロナウイルス剤は、コロナウイルスに対して効果があり、しかも耐熱性および持続性を有している。このことから、プラスチックなどに加工することで各種形態の抗コロナウイルス製品として利用することができる。また、本発明の銀イオン担持体を用いて部屋などにおいて存在するまたは新たに生着するコロナウイルスを不活化することができることから、感染を防止することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀イオン担持体からなることを特徴とする抗コロナウィルス剤。
【請求項2】
上記記載の銀イオン担持体が下記式(1)、チタン酸カリウム、ウラン酸カリウム、バナジン酸カリウム、ニオブ酸カリウム、タングステン酸ナトリウム、モリブデン酸マグネシウム、ペンタホウ酸カルシウム、アルミノケイ酸塩、リン酸アルミニウム、ヘキサシアノ鉄ニッケル、セピオライト、モンモリロナイト、シリカゲル、ゼオライト、β−アルミナ、含水酸化チタン、ヒドロキシアパタイト及びガラス質担持体から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の抗コロナウィルス剤。
AgM2(PO・nHO (1)
(式(1)のAはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオンおよび水素イオンから選ばれる少なくとも1種のm価(mは正の整数)のイオンであり、M2はジルコニウムやチタンの4価金属イオンであり、nは0≦n≦6を満たす数であり、aおよびbはいずれもa+mb=1またはa+mb=2を満たす正数であり、cおよびdはa+mb=1の時、c=2およびd=3であり、a+mb=2の時、c=1およびd=2である。)
【請求項3】
上記記載の銀イオン担持体が上記式(1)、シリカゲル、ゼオライト及びガラス質担持体から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の抗コロナウィルス剤。
【請求項4】
上記記載の銀イオン担持体が上記式(1)である請求項1に記載の抗コロナウィルス剤。
【請求項5】
コロナウィルスがSARSウィルスである請求項1〜4にそれぞれ記載の抗コロナウィルス剤。
【請求項6】
請求項1〜4にそれぞれ記載の抗コロナウィルス剤を含有する製品。
【請求項7】
コロナウィルスがSARSウィルスである請求項6記載の抗コロナウィルス剤を含有する製品。
【請求項8】
請求項1〜4にそれぞれ記載の抗コロナウィルス剤を用いることを特徴とするコロナウイルス不活化方法。
【請求項9】
コロナウィルスがSARSウィルスである請求項8記載の抗コロナウィルス剤を用いることを特徴とするコロナウイルス不活化方法。

【国際公開番号】WO2005/037296
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【発行日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−509617(P2005−509617)
【国際出願番号】PCT/JP2003/014008
【国際出願日】平成15年10月31日(2003.10.31)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】