抗体リポソーム
【課題】細胞・組織センシングプローブとして利用できる新規なリポソームを提供すること。低い濃度の抗体溶液を用いて、抗体を効率よくリポソームの表面に結合させることができる方法を提供すること
【解決手段】本発明は、抗体修飾リポソームを提供する。この抗体修飾リポソームは、(A)リポソームと、(B)該リポソームに結合した血清アルブミンと、(C)該リポソーム表面の血清アルブミンに結合したスペーサーと、(D)該スペーサーに結合した抗体とを含み得る。本発明はまた、抗体修飾リポソームを製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、抗体修飾リポソームを提供する。この抗体修飾リポソームは、(A)リポソームと、(B)該リポソームに結合した血清アルブミンと、(C)該リポソーム表面の血清アルブミンに結合したスペーサーと、(D)該スペーサーに結合した抗体とを含み得る。本発明はまた、抗体修飾リポソームを製造する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リポソームに関する。詳細には、本発明のリポソームは、バイオテクノロジー、特に分子イメージングにおいて応用し得る診断用の細胞・組織センシングプローブとして利用できる。
【背景技術】
【0002】
特定のアミノ酸配列を有するペプチドが種々の物質と相互作用を示すことが知られている。
【0003】
例えばウイルス粒子の外皮には感染時に標的とする細胞に発現する受容体タンパクに親和性をもつペプチドが存在し、ウイルスの感染時に重要な役割を果たしている。良く知られている例にはHBV(B型肝炎ウイルス)のPreS1領域がある(非特許文献1)。PreS1はヒトの肝細胞に存在する受容体タンパクに結合することにより肝臓に感染し肝炎を引き起こす。また、この種のペプチドはファージデイスプレイライブラリー(非特許文献2〜6)よりスクリーニングして得ることができ、多くの例が報告されている(非特許文献7および8)。
【0004】
このようなペプチドのある物質に対する結合活性をリポソームのターゲッテイングに応用することができる。例えば標的とする部位に特異的に発現している物質(タンパク、レクチン、糖鎖など)に対し結合能を有するペプチドをスクリーニングし、リポソームの表面に提示させれば、リポソームを標的部位に集積させることができる。
【0005】
現在、このようなリポソームを用いた技術の開発が進められている(非特許文献9〜14、特許文献1〜4)が、実用的な技術はまだ開発されていない。
【特許文献1】特表2002-508301号
【特許文献2】特公平06-103306号
【特許文献3】特公平05-44626号
【特許文献4】特開昭63-106561号
【非特許文献1】Nir Paran,Arik Cooper and Yosef Shaul. Rev.Med.Virol.2003;13:137−143
【非特許文献2】Methods Enzymol. 1993;217:228−257(1996)
【非特許文献3】Anal. Biochem.238;1−3(1996)
【非特許文献4】Methods Enzymol.245;228−257(1994)
【非特許文献5】Pasqualini,R.,Koivunen,E.,and Ruoslahti,E,(1995)J.Cell.Biol. 130 1189−1196
【非特許文献6】Science 273:458−464(1996)
【非特許文献7】Nature Biotech 21;1040−1046(2003)
【非特許文献8】T.B.C.(1999)274;11593−11598.
【非特許文献9】Biochimica et Biophysica Acta, 987 (1989) 15-20
【非特許文献10】CANCER RESEARCH47, 5954-5959, November 15, 1987
【非特許文献11】Proc. Nati.Acad. Sci. USA Vol. 85, pp. 8027-8031, November 1988
【非特許文献12】Cytotechnology(2005) 47:51-57
【非特許文献13】Journal of Biotechnology75 (1999) 23-31
【非特許文献14】EXPERIMENTALCELL RESEARCH 200,333-338 (1992)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、バイオテクノロジー、特に分子イメージングにおいて応用し得る診断用の細胞・組織センシングプローブとして利用できる新規なリポソームを提供することにある。
【0007】
本発明の別の課題は、抗体を効率よくリポソームの表面に結合させるのに有用なリポソームの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明者等は鋭意研究の結果、予想外に従来適切と思われていた濃度よりも低い濃度の抗体溶液を用いて、抗体を効率よくリポソームの表面に結合させることができる方法を見いだし、本発明を完成させるに至ったものである。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、以下の手段を提供する。
(項目1) (A)リポソームと、
(B)該リポソームに結合した血清アルブミンと、
(C)該リポソーム表面の血清アルブミンに結合したスペーサーと、
(D)該スペーサーに結合した抗体と
を含む、抗体修飾リポソーム。
(項目2)前記スペーサーが、以下の式:
−[CRn1Rn2]n−[S−S]r−[CRm1Rm2]m−
で表される構造を有し、
該n、mおよびrは、独立して0以上の整数であり、ただし、n+m+rは1以上であり、
該Rn1および該Rn2は、独立して、水素もしくは置換基であるかまたは隣接する炭素との二重結合を意味するか、または該Rn1とRn2とが一緒になって=Oもしくは隣接する炭素との三重結合を意味するか、あるいは隣接する複数の炭素原子とアリール基を形成し、
該Rm1および該Rm2は、独立して、水素もしくは置換基であるかまたは隣接する炭素との二重結合を意味するか、または該Rm1と該Rm2とが一緒になって=Oであり、そして
は、独立して、水素であるか、またはRm1と一緒になって=Oもしくは隣接する炭素との三重結合を意味するか、あるいは隣接する複数の炭素原子とアリール基を形成し、
該置換基は、それぞれ独立して、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アルコキシ、炭素環基、ヘテロ環基、ハロゲン、ヒドロキシ、チオ−ル、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、アシル、チオカルボキシ、アミド、置換されたアミド、置換されたカルボニル、置換されたチオカルボニル、置換されたスルホニルおよび置換されたスルフィニルからなる群より選択される、
請求項1に記載の抗体修飾リポソーム。
(項目3)前記n+mは1〜20の整数であり、前記置換基は、アリール、カルボニル、アミノ、カルボキシおよびヒドロキシからなる群より選択される、請求項2に記載の抗体修飾リポソーム。
(項目4)前記血清アルブミンが、ヒト由来血清アルブミンである、請求項1に記載の抗体修飾リポソーム。
(項目5)前記抗体は、抗体全体またはその免疫原性フラグメントである、請求項1に記載の抗体修飾リポソーム。
(項目6)さらに標識物質を含む、請求項1に記載の抗体修飾リポソーム。
(項目7)前記抗体修飾リポソームに含まれるタンパク質量が、該抗体修飾リポソーム作製時の添加抗体量換算で約0.025mg/mL〜0.5mg/mLの範囲にある、請求項1に記載の抗体修飾リポソーム。
(項目8)前記抗体修飾リポソームに含まれるタンパク質量が、該抗体修飾リポソーム作製時の添加抗体量換算で約0.050mg/mL〜0.075mg/mLの範囲にある、請求項7に記載の方法。
(項目9)抗体修飾リポソームを製造する方法であって、該方法は、以下:
A)リポソームを提供する工程;
B)該リポソームと血清アルブミンとを、該リポソームと該血清アルブミンとが結合する条件下で接触させて、血清アルブミン結合リポソームを生成させる工程;および
C)該血清アルブミン結合リポソームと抗体とを、スペーサーの存在下で該血清アルブミンと該抗体とが該スペーサーを介して結合する条件下で接触させて、抗体修飾リポソームを生成させる工程
を包含する、方法。
(項目10)前記スペーサーが、以下の式:
−[CRn1Rn2]n−[S−S]r−[CRm1Rm2]m−
で表される構造を有し、
該n、mおよびrは、独立して0以上の整数であり、ただし、n+m+rは1以上であり、
該Rn1および該Rn2は、独立して、水素もしくは置換基であるかまたは隣接する炭素との二重結合を意味するか、または該Rn1とRn2とが一緒になって=Oもしくは隣接する炭素との三重結合を意味するか、あるいは隣接する複数の炭素原子とアリール基を形成し、
該Rm1および該Rm2は、独立して、水素もしくは置換基であるかまたは隣接する炭素との二重結合を意味するか、または該Rm1と該Rm2とが一緒になって=Oであり、そして
は、独立して、水素であるか、またはRm1と一緒になって=Oもしくは隣接する炭素との三重結合を意味するか、あるいは隣接する複数の炭素原子とアリール基を形成し、
該置換基は、それぞれ独立して、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アルコキシ、炭素環基、ヘテロ環基、ハロゲン、ヒドロキシ、チオ−ル、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、アシル、チオカルボキシ、アミド、置換されたアミド、置換されたカルボニル、置換されたチオカルボニル、置換されたスルホニルおよび置換されたスルフィニルからなる群より選択される、
請求項9に記載の方法。
(項目11)前記n+mは1〜20の整数であり、前記置換基は、アリール、カルボニル、アミノ、カルボキシおよびヒドロキシからなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
(項目12)前記リポソームが、標識物質を含む、請求項9に記載の方法。
(項目13)前記標識物質が、
【0010】
【化9】
【0011】
【化10】
Cy7、Cy3B、Cy3.5、Alexa Fluoro350、Alexa Fluoro488、Alexa Fluoro532、Alexa Fluoro546、Alexa Fluoro594、Alexa Fluoro633、Alexa Fluoro647、Alexa Fluoro680、Alexa Fluoro700、Alexa Fluoro750、フルオレセイン−4−イソチオシアネート(FITC)、ローダミンおよびカルセインからなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
(項目14)前記B)工程が、前記リポソームをトリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカンにより親水性化処理する工程を含む、請求項9に記載の方法。
(項目15)前記B)工程において、前記リポソームと該血清アルブミンとが結合する条件が、該リポソームを含む溶液に、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを添加し、20〜30℃で、2〜24時間にわたって攪拌し、親水性化状態にする条件である、請求項9に記載の方法。
(項目16)前記B)工程が、以下:
(B1)前記リポソームを含む溶液に、炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)溶液を添加し、20〜30℃で2〜24時間撹拌して、リポソーム粒子表面を親水性の状態にする工程;
(B2)(B1)工程において、粒子表面が親水性化されたリポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去し、該炭酸緩衝液をトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換する工程;
(B3)(B2)工程において、該緩衝液が該トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液に交換された溶液に、血清アルブミンを含むトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)を添加して20〜30℃で反応させて反応溶液を生成する工程;および
(B4)該反応溶液に、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS緩衝液、pH7.0〜9.0)を添加して、20〜30℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該血清アルブミンを除去し、該溶液の緩衝液をPBS緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換する工程を包含する、請求項9に記載の方法。
(項目17)前記(B)工程が、以下:
(B1−1)前記蛍光色素を内包したかまたは結合したリポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、該溶液中に含まれる緩衝液を炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)に交換する工程;
(B1−2)該(B1−1)工程において該緩衝液が該炭酸緩衝液に変換された溶液にビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去する工程;および
(B1−3)該(B1−2)工程において、該遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去した溶液に、0.5〜1mM トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)溶液を添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、さらに冷蔵〜室温で一晩撹拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを除去し、該炭酸緩衝液をN−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換して親水性化処理されたリポソームを含む溶液を生成させる工程
をさらに包含する、請求項9に記載の方法。
(項目18)前記C)工程が、以下:
(C1)該リポソームを含む溶液に、架橋剤を添加して、20〜30℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該架橋剤を除去する工程であって、該架橋剤は、3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート、ジチオビス[スクシンイミジルプロピオネート]、およびジスクシンイミジルスベレートからなる群より選択される;および
(C2)(C1)工程において、該遊離の該架橋剤を除去した溶液に、該抗体溶液を添加して、20〜30℃で反応させ、炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)を添加し、20〜30℃で2〜4時間撹拌し、分画分子量150K〜300Kで限外濾過し、遊離の該抗体と該架橋剤を除去する工程;および
(C3)(C2)工程において、遊離の該抗体と該架橋剤を除去した溶液の緩衝液を、炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)に交換する工程を包含する、
請求項9に記載の方法。
(項目19)前記架橋剤が、3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)である、請求項9に記載の方法。
(項目20)前記抗体が、抗体全体またはその免疫原性フラグメントである、請求項9に記載の方法。
(項目21)前記抗体修飾リポソームに含まれるタンパク質量が、該抗体修飾リポソーム作製時の添加抗体量換算で約0.025mg/mL〜0.5mg/mLの範囲にある、請求項9に記載の方法。
(項目22)前記抗体修飾リポソームに含まれるタンパク質量が、該抗体修飾リポソーム作製時の添加抗体量換算で約0.050mg/mL〜0.075mg/mLの範囲にある、請求項9に記載の方法。
(項目23)前記A)工程において提供されるリポソームが、標識物質として、
【0012】
【化11】
【0013】
【化12】
Cy7、Cy3B、Cy3.5、Alexa Fluoro350、Alexa Fluoro488、Alexa Fluoro532、Alexa Fluoro546、Alexa Fluoro594、Alexa Fluoro633、Alexa Fluoro647、Alexa Fluoro680、Alexa Fluoro700、Alexa Fluoro750、フルオレセイン−4−イソチオシアネート(FITC)、ローダミンおよびカルセインからなる群より選択される標識物質を含み、
前記リポソームをトリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカンにより親水性化処理する工程をさらに包含し、
前記B)工程が、以下:
(B1−1)前記蛍光色素を内包したかまたは結合したリポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、該溶液中に含まれる緩衝液を炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)に交換する工程;
(B1−2)該(B1−1)工程において該緩衝液が該炭酸緩衝液に変換された溶液にビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去する工程;および
(B1−3)該(B1−2)工程において、該遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去した溶液に、0.5〜1mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)溶液を添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、さらに冷蔵〜室温で一晩撹拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを除去し、該炭酸緩衝液をN−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換して親水性化処理されたリポソームを含む溶液を生成させる工程を包含する、工程;
(B2)(B1)工程において、粒子表面が親水性化されたリポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去し、該炭酸緩衝液をトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換する工程;
(B3)(B2)工程において、該緩衝液が該トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液に交換された溶液に、血清アルブミンを含むトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)を添加して20〜30℃で反応させて反応溶液を生成する工程;および
(B4)該反応溶液に、PBS緩衝液(pH7.0〜9.0)を添加して、20〜30℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該血清アルブミンを除去し、該溶液の緩衝液をPBS緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換する工程を包含する工程であり、そして
前記C)工程が、以下:
(C1)該リポソームを含む溶液に、3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)を添加して、20〜30℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)を除去する工程;および
(C2)(C1)工程において、該遊離の該3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)を除去した溶液に、該抗E−セレクチン抗体溶液を添加して、20〜30℃で反応させ、炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)を添加し、20〜30℃で2〜4時間撹拌し、分画分子量150K〜300Kで限外濾過し、遊離の該抗体と該3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)を除去する工程;および
(C3)(C2)工程において、遊離の該抗体と該3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)を除去した溶液の緩衝液を、炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)に交換する工程を包含する工程であって、
ここで、該抗体は、抗EGFR抗体、IgG、抗E−セレクチン抗体および抗p−セレクチン抗体からなる群より選択され、かつ該抗体を含む溶液には、該抗体が0.05〜1/mLの範囲で含まれる、請求項9に記載の方法。
(項目24)抗体修飾リポソームを製造する方法であって、該方法は、以下:
a)リポソームを提供する工程;
b)該リポソームとプロテインAとを、該リポソームと該プロテインAとが結合する条件下で接触させる工程;および
c)該プロテインAが結合したリポソームと抗体とを、該プロテインAと該抗体とが直接結合する条件下で接触させる工程
を包含する、方法。
(項目25)前記リポソームが、標識物質として、
【0014】
【化13】
【0015】
【化14】
Cy7、Cy3B、Cy3.5、Alexa Fluoro350、Alexa Fluoro488、Alexa Fluoro532、Alexa Fluoro546、Alexa Fluoro594、Alexa Fluoro633、Alexa Fluoro647、Alexa Fluoro680、Alexa Fluoro700、Alexa Fluoro750、フルオレセイン−4−イソチオシアネート(FITC)、ローダミンおよびカルセインからなる群より選択される標識物質を含む、請求項24に記載の方法。
(項目26)前記b)工程が、前記リポソームをトリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカンにより親水性化処理する工程を含む、請求項24に記載の方法。
(項目27)前記b)工程が、以下:
(b1−1)前記リポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、該溶液中に含まれる緩衝液を炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)に交換する工程;
(b1−2)該(b1−1)工程において該緩衝液が該炭酸緩衝液に変換された溶液にビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去する工程;および
(b1−3)該(b1−2)工程において、該遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去した溶液に、0.5〜1mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)溶液を添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、さらに冷蔵〜室温で一晩撹拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを除去し、該炭酸緩衝液をN−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換して親水性化処理されたリポソームを含む溶液を生成させる工程を包含する、工程;
(b2)該親水性化したリポソームを含む溶液に、メタ過ヨウ素酸ナトリウム/N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)溶液を添加し、冷蔵〜室温で一晩撹拌して、リポソーム粒子表面を酸化する工程;
(b3)(b2)工程において、粒子表面が酸化されたリポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該メタ過ヨウ素酸ナトリウムを除去し、該N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液をPBS緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換する工程;
(b4)(b3)工程において、該緩衝液が該PBS緩衝液に交換された溶液に、プロテインA/PBS緩衝液(pH7.0〜9.0)を添加して冷蔵〜室温で反応させて反応溶液を生成する工程;
(b5)さらに、該反応溶液に、シアノホウ素酸ナトリウム/PBS緩衝液(pH7.0〜9.0)を添加して、冷蔵〜室温で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該シアノホウ素酸ナトリウムおよび該プロテインAを除去し該溶液の緩衝液を2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(pH6.8〜8.0)に交換する工程を包含する工程
を包含する、請求項24に記載の方法。
(項目28)前記c)工程が、以下:
(c1)前記リポソームを含む溶液に、抗体溶液を添加して、4〜30℃で反応させ、2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(pH6.8〜8.0)を添加し、4〜30℃で2時間〜一晩にわたり撹拌し、分画分子量150K〜300Kで限外濾過し、遊離の該抗体を除去する工程;および
(c2)(c1)工程において、遊離の該抗体を除去した溶液の緩衝液を、2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(pH6.8〜8.0)に交換する工程を包含する工程である、請求項21に記載の方法。
(項目29)前記抗体は、抗体全体またはその免疫原性フラグメントである、請求項24記載の方法。
(項目30)前記抗体を含む溶液には、前記抗体が0.025〜10mg/mLの範囲で含まれる、請求項24に記載の方法。
(項目31)抗体修飾リポソームを製造する方法であって、該方法は、以下:
a)リポソームを提供する工程;
b)該リポソームとプロテインAとを、該リポソームと該プロテインAとが結合する条件下で接触させる工程;および
c)該プロテインAが結合したリポソームと抗体とを、該プロテインAと該抗体とが直接結合する条件下で接触させる工程
を包含し、ここで
前記a)工程において提供されるリポソームが、標識物質として、
【0016】
【化15】
【0017】
【化16】
Cy7、Cy3B、Cy3.5、Alexa Fluoro350、Alexa Fluoro488、Alexa Fluoro532、Alexa Fluoro546、Alexa Fluoro594、Alexa Fluoro633、Alexa Fluoro647、Alexa Fluoro680、Alexa Fluoro700、Alexa Fluoro750、フルオレセイン−4−イソチオシアネート(FITC)、ローダミンおよびカルセインからなる群より選択される標識物質を含み、
前記b)工程が、以下:
(b1−1)該リポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、該溶液中に含まれる緩衝液を炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)に交換する工程;
(b1−2)該(b1−1)工程において該緩衝液が該炭酸緩衝液に変換された溶液にビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去する工程;および
(b1−3)該(b1−2)工程において、該遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去した溶液に、40mgトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)溶液を添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、さらに冷蔵〜室温で一晩撹拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを除去し、該炭酸緩衝液をN−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換して親水性化処理されたリポソームを含む溶液を生成させる工程を包含する、工程;
(b2)該親水性化したリポソームを含む溶液に、メタ過ヨウ素酸ナトリウム/N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)溶液を添加し、冷蔵〜室温で一晩撹拌して、リポソーム粒子表面を酸化する工程;
(b3)(b2)工程において、粒子表面が酸化されたリポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該メタ過ヨウ素酸ナトリウムを除去し、該N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液をPBS緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換する工程;
(b4)(b3)工程において、該緩衝液が該PBS緩衝液に交換された溶液に、プロテインA/PBS緩衝液(pH7.0〜9.0)を添加して冷蔵〜室温で反応させて反応溶液を生成する工程;
(b5)さらに、該反応溶液に、シアノホウ素酸ナトリウム/PBS緩衝液(pH7.0〜9.0)を添加して、冷蔵〜室温で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該シアノホウ素酸ナトリウムおよび該プロテインAを除去し該溶液の緩衝液を2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(pH6.8〜8.0)に交換する工程を包含する工程であり、そして
前記c)工程が、以下:
(c1)該リポソームを含む溶液に、抗体溶液を添加して、4〜30℃で反応させ、2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(pH6.8〜8.0)を添加し、4〜30℃で2時間〜一晩にわたり撹拌し、分画分子量150K〜300Kで限外濾過し、遊離の該抗体を除去する工程;および
(c2)(c1)工程において、遊離の該抗体を除去した溶液の緩衝液を、2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(pH6.8〜8.0)に交換する工程を包含する工程であって、
ここで、該抗体は、抗体全体またはその免疫原性フラグメントであり、かつ該抗体を含む溶液には、抗体が0.025〜0.5mg/mLの範囲で含まれる、方法。
【0018】
以下に、本発明の好ましい実施形態を示すが、当業者は本発明の説明および当該分野における周知慣用技術からその実施形態なnaga実施することができ、本発明が奏する作用および効果を容易に理解することが認識されるべきである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によって、抗体修飾リポソームならびにその製造法およびその利用法が提供される。本発明の抗体修飾リポソームは、低い濃度の抗体溶液を用いて、抗体を効率よくリポソームの表面に結合させることができるという予想外に顕著な効果を有する。本発明の抗体修飾リポソームは、標識などを含めることにより、診断薬としても利用可能である。このような効果は、本発明によって初めて提供されるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当上記分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0021】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を適宜説明する。
【0022】
本明細書において、用語「抗体」とは、免疫原である抗原によって惹起された特異的なアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子をいう。抗体は、B細胞により生産され、血液、体液中に存在する。抗体は、抗原と特異的に反応するという特徴を有する。抗体は、抗原の呈示による刺激の結果としてではなく自然に存在する場合もあり得る。基本的には、抗体の分子構造は各2本の軽鎖と重鎖とから形成されるが、二量体、三量体、五量体としても存在し得る。これらとしては、例えば、IgA、IgE、IgM、IgG等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の抗体修飾リポソームにおいて使用される抗体は、臓器、疾患、免疫細胞等に特異的に発現する抗原に対する抗体が挙げられ得る。好ましくは、例えば、炎症血管内皮に発現するE−セレクチン、p−セレクチンに対する抗体であり得るが、これらに限定されない。1つの実施形態において、本発明の抗体リポソームにおいて使用され得る抗体は、例えば、抗EGFR抗体、IgGであり得る。本明細書において「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、および抗イディオタイプ抗体、ならびにそれらの断片、例えばF(ab’)2およびFab断片、ならびにその他の組換えにより生産された結合体を含む。さらにこのような抗体を、酵素、例えばアルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、αガラクトシダーゼなど、に共有結合させまたは組換えにより融合させてよい。
【0023】
本明細書において使用される場合「添加抗体量」とは、添加した抗体の最終濃度をいう。例えば、抗体修飾リポソーム作製時では、リポソームと抗体溶液とを反応させるときの抗体の最終濃度をいう。スペーサーを介した抗体修飾リポソームの場合には、この添加抗体量は、スペーサーの結合したリポソームと抗体溶液の反応時の抗体濃度をいう。本明細書において、この「添加抗体量」は「抗体量」とも称され得る。
【0024】
本明細書において使用される場合、タンパク質量の「添加抗体量換算」とは、抗体修飾リポソーム作製時の、抗体溶液の最終濃度で換算した場合のタンパク質量をいう。
【0025】
(リポソーム)
本明細書において「リポソーム」とは、通常、膜状に集合した脂質層および内部の水層から構成される閉鎖小胞を意味する。代表的に使用されるリン脂質のほか、コレステロール、糖脂質などを組み込ませることも可能である。リポソームは内部に水を含んだ閉鎖小胞であるため、水溶性の薬剤などを小胞内に保持させることも可能である。したがって、このようなリポソームによって、細胞膜を通過しえない薬物や遺伝子などを細胞内に送達するのに使われる。また、生体適合性も良いのでDDS用のナノ粒子性キャリア材料としての期待が大きい。本発明において、リポソームは、修飾基を付するために、エステル結合を付与する官能基を有する構成単位(例えば、糖脂質、ガングリオシド、ホスファチジルグリセロールなど)またはペプチド結合を付与する官能基を有する構成単位(例えば、ホスファチジルエタノールアミン)を有し得る。
【0026】
リポソームは、当該分野において公知の任意の手法(例えば、コール酸透析法、薄膜法、逆層蒸発法、エタノール注入法、脱水−再水和法等)により製造することができる。例えば、その中でもコール酸透析法による方法が挙げられる。コール酸透析法では、a)脂質と界面活性剤の混合ミセルの調製、およびb)混合ミセルの透析により製造を実施する。
【0027】
また、超音波照射法、エクストルージョン法、フレンチプレス法、ホモジナイゼーション法等を用いて、リポソームの粒子径を調節することも可能である。本発明のリポソーム自体の製法について、具体的に述べると、例えば、まず、ホスファチジルコリン類、コレステロール、ホスファチジルエタノールアミン類、ホスファチジン酸類、ガングリオシド類、糖脂質類もしくはホスファチジルグリセロール類を配合成分とする脂質と界面活性剤コール酸ナトリウムとの混合ミセルを調製する。とりわけ、ホスファチジン酸類もしくはジセチルホスフェート等の長鎖アルキルリン酸塩類の配合は、リポソームを負に荷電させるために必須であり、ホスファチジルエタノールアミン類の配合は親水性化反応部位として、ガングリオシド類または糖脂質類またはホスファチジルグリセロール類の配合はリンカーの結合部位として必須のものである。ガングリオシド類、糖脂質類、ホスファチジルグリセロール類、スフィンゴミエリン類およびコレステロール類からなる群から選択される少なくとも1種の脂質はリポソーム中で集合し、リンカーを結合させる足場(ラフト)として機能する。本発明のリポソームは、このようなタンパク質を結合させうるラフトが形成されることによりさらに安定化される。すなわち、本発明のリポソームは、リンカーを結合させるためのガングリオシド、糖脂質、ホスファチジルグリセロール類、スフィンゴミエリン類およびコレステロール類からなる群から選択される少なくとも、1種の脂質のラフトが形成されたリポソームを含む。そして、これにより得られる混合ミセルの限外濾過を行うことによりリポソームを作製する。本発明において使用するリポソームは、通常のものでも使用できるが、その表面は親水性化されていることが望ましい。上述のようにしてリポソームを作製した後にリポソーム表面を親水性化する。
【0028】
本発明のリポソームは、例えば、リポソームの構成脂質が、ホスファチジルコリン類(モル比0〜15%)、ホスファチジルエタノールアミン類(モル比0〜10%)、ホスファチジン酸類、および長鎖アルキルリン酸塩からなる群から選択される1種以上の脂質(モル比0〜10%)、糖脂質類、ホスファチジルグリセロール類およびスフィンゴミエリン類からなる群から選択される1種以上の脂質(モル比0〜40%)、ならびにコレステロール類(モル比0〜30%)を含むリポソームである。
【0029】
本明細書において使用される場合、用語「脂質」とは、長鎖の脂肪族炭化水素またはその誘導体をいう。「脂質」は、例えば、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、アルデヒドなどの形態をとることができる。
【0030】
本明細書において、リポソームを構成する脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン類、ホスファチジルエタノールアミン類、ホスファチジン酸類、長鎖アルキルリン酸塩類、糖脂質類(ガングリオシド類など)、ホスファチジルグリセロール類、スフィンゴミエリン類、コレステロール類等が挙げられる。
【0031】
ホスファチジルコリン類としては、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン等が挙げられる。
【0032】
ホスファチジルエタノールアミン類としては、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン等が挙げられる。
【0033】
ホスファチジン酸類としては、ジミリストイルホスファチジン酸、ジパルミトイルホスファチジン酸、ジステアロイルホスファチジン酸が挙げられる。長鎖アルキルリン酸塩類としてはジセチルホスフェート等が挙げられる。
【0034】
糖脂質類としては、ガラクトシルセラミド、グルコシルセラミド、ラクトシルセラミド、ホスフナチド、グロボシド、ガングリオシド類等が挙げられる。ガングリオシド類としては、ガングリオシドGM1(Galβ1,3GalNAcβ1,4(NeuAα2,3)Galβ1,4Glcβ1,1’Cer)、ガングリオシドGDla、ガングリオシドGTlb等が挙げられる。
【0035】
ホスファチジルグリセロール類としては、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロ−ル、ジステアロイルホスファチジルグリセロール等が好ましい。
【0036】
このうち、ホスファチジン酸類、長鎖アルキルリン酸塩類、糖脂質類、およびコレステロール類はリポソームの安定性を上昇させる効果を有するので、構成脂質として添加するのが望ましい。例えば、本発明において、リポソームを構成する脂質としては、ホスファチジルコリン類(モル比0〜15%)、ホスファチジルエタノールアミン類(モル比0〜10%)、ホスファチジン酸類、および長鎖アルキルリン酸塩からなる群から選択される1種以上の脂質(モル比0〜10%)、糖脂質類、ホスファチジルグリセロール類およびスフィンゴミエリン類からなる群から選択される1種以上の脂質(モル比0〜40%)、ならびにコレステロール類(モル比0〜30%)を含むものが挙げられる。
【0037】
(抗体修飾リポソーム)
本明細書において「抗体修飾リポソーム」とは、抗体とリポソームとを含む物質をいい、好ましくは、抗体が直接または間接的に結合することによって修飾されたリポソームをいう。
【0038】
本明細書において「スペーサー」とは、抗体とリポソームを架橋できる物質、例えば、血清アルブミン、プロテインA、その他タンパク質、2価の架橋剤などをいう。
【0039】
抗体と血清アルブミンを共役するのに適する広範なスペーサーは、その骨格に−(CH2)1−〜−(CH2)n−(n=20程度)の原子を有するのが好ましい。このようなジラジカル(diradical)スペーサーは、任意に置換されていてもよく、鎖内に、二重結合、ジスルフィド結合、三重結合、アリール基、ヘテロ原子を含有し得る。1つの実施形態では、このスペーサー基は、1またはそれ以上の炭素を任意に有し得、各炭素は、置換されていても置換されていなくてもよく、鎖中の結合は任意に飽和又は不飽和であり、分岐状または直鎖状であってもよい。スペーサー化合物は、その鎖中の炭素原子がN、OまたはSで置換されていてもよい。好ましくは、C1〜C20の鎖であり、好ましくは置換され得る置換基としては、アリール、カルボニル、アミノ、カルボキシ、ヒドロキシなどを挙げることができる。スペーサーとしては非常に広い範囲のものを選択することができ、架橋を目的とする標的によって変動し、当業者は本明細書の記載に基づき、本発明を実施するにおいて適切にスペーサーを選択することができる。
【0040】
本明細書においては、特に言及がない限り、置換は、ある有機化合物または置換基中の1または2以上の水素原子を他の原子または原子団で置き換えるか、または二重結合もしくは三重結合とすることをいう。水素原子を1つ除去して1価の置換基に置換するかまたは単結合と一緒にして二重結合とすることも可能であり、そして水素原子を2つ除去して2価の置換基に置換するか、または単結合と一緒にして三重結合とすることも可能である。
【0041】
本発明における置換基としては、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アルコキシ、炭素環基、ヘテロ環基、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、カルバモイル、アシル、アシルアミノ、チオカルボキシ、アミド、置換されたカルボニル、置換されたチオカルボニル、置換されたスルホニルまたは置換されたスルフィニルが挙げられるがそれらに限定されない。このような置換基は、本発明において、アミノ酸の設計のときに、適宜利用することができる。
【0042】
好ましくは、置換基は、複数存在する場合それぞれ独立して、水素原子またはアルキルであり得るが、複数の置換基全てが水素原子であることはない。より好ましくは、独立して、置換基は、複数存在する場合それぞれ独立して、水素およびC1〜C6アルキルからなる群より選択され得る。置換基は、すべてが水素以外の置換基を有していても良いが、好ましくは、少なくとも1つの水素、より好ましくは、2〜n(ここでnは置換基の個数)の水素を有し得る。置換基のうち水素の数が多いことが好ましくあり得る。大きな置換基または極性のある置換基は本発明の効果(特に、アルデヒド基との相互作用)に障害を有し得るからである。従って、水素以外の置換基としては、好ましくは、C1〜C6アルキル、C1〜C5アルキル、C1〜C4アルキル、C1〜C3アルキル、C1〜C2アルキル、メチルなどであり得る。ただし、本発明の効果を増強し得ることもあることから、大きな置換基を有することもまた好ましくあり得る。
【0043】
本明細書において、C1、C2、、、Cnは、炭素数を表す。従って、C1は炭素数1個の置換基を表すために使用される。
【0044】
本明細書において「アルキル」とは、メタン、エタン、プロパンのような脂肪族炭化水素(アルカン)から水素原子が一つ失われて生ずる1価の基をいい、一般にCnH2n+1−で表される(ここで、nは正の整数である)。アルキルは、直鎖または分枝鎖であり得る。本明細書において「置換されたアルキル」とは、以下に規定する置換基によってアルキルのHが置換されたアルキルをいう。これらの具体例は、C1〜C2アルキル、C1〜C3アルキル、C1〜C4アルキル、C1〜C5アルキル、C1〜C6アルキル、C1〜C7アルキル、C1〜C8アルキル、C1〜C9アルキル、C1〜C10アルキル、C1〜C11アルキルまたはC1〜C12アルキル、C1〜C2置換されたアルキル、C1〜C3置換されたアルキル、C1〜C4置換されたアルキル、C1〜C5置換されたアルキル、C1〜C6置換されたアルキル、C1〜C7置換されたアルキル、C1〜C8置換されたアルキル、C1〜C9置換されたアルキル、C1〜C10置換されたアルキル、C1〜C11置換されたアルキルまたはC1〜C12置換されたアルキルであり得る。ここで、例えばC1〜C10アルキルとは、炭素原子を1〜10個有する直鎖または分枝状のアルキルを意味し、メチル(CH3−)、エチル(C2H5−)、n−プロピル(CH3CH2CH2−)、イソプロピル((CH3)2CH−)、n−ブチル(CH3CH2CH2CH2−)、n−ペンチル(CH3CH2CH2CH2CH2−)、n−ヘキシル(CH3CH2CH2CH2CH2CH2−)、n−ヘプチル(CH3CH2CH2CH2CH2CH2CH2−)、n−オクチル(CH3CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2−)、n−ノニル(CH3CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2−)、n−デシル(CH3CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2−)、−C(CH3)2CH2CH2CH(CH3)2、−CH2CH(CH3)2などが例示される。また、例えば、C1〜C10置換されたアルキルとは、C1〜C10アルキルであって、そのうち1または複数の水素原子が置換基により置換されているものをいう。
【0045】
本明細書において「置換されていてもよいアルキル」とは、上で定義した「アルキル」または「置換されたアルキル」のいずれであってもよいことを意味する。
【0046】
本明細書において「アルキレン」とは、メチレン、エチレン、プロピレンのような脂肪族炭化水素(アルカン)から水素原子が二つ失われて生ずる2価の基をいい、一般に−CnH2n−で表される(ここで、nは正の整数である)。アルキレンは、直鎖または分枝鎖であり得る。本明細書において「置換されたアルキレン」とは、以下に規定する置換基によってアルキレンのHが置換されたアルキレンをいう。これらの具体例は、C1〜C2アルキレン、C1〜C3アルキレン、C1〜C4アルキレン、C1〜C5アルキレン、C1〜C6アルキレン、C1〜C7アルキレン、C1〜C8アルキレン、C1〜C9アルキレン、C1〜C10アルキレン、C1〜C11アルキレンまたはC1〜C12アルキレン、C1〜C2置換されたアルキレン、C1〜C3置換されたアルキレン、C1〜C4置換されたアルキレン、C1〜C5置換されたアルキレン、C1〜C6置換されたアルキレン、C1〜C7置換されたアルキレン、C1〜C8置換されたアルキレン、C1〜C9置換されたアルキレン、C1〜C10置換されたアルキレン、C1〜C11置換されたアルキレンまたはC1〜C12置換されたアルキレンであり得る。ここで、例えばC1〜C10アルキレンとは、炭素原子を1〜10個有する直鎖または分枝状のアルキレンを意味し、メチレン(−CH2−)、エチレン(−C2H4−)、n−プロピレン(−CH2CH2CH2−)、イソプロピレン(−(CH3)2C−)、n−ブチレン(−CH2CH2CH2CH2−)、n−ペンチレン(−CH2CH2CH2CH2CH2−)、n−ヘキシレン(−CH2CH2CH2CH2CH2CH2−)、n−ヘプチレン(−CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2−)、n−オクチレン(−CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2−)、n−ノニレン(−CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2−)、n−デシレン(−CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2−)、−CH2C(CH3)2−などが例示される。また、例えば、C1〜C10置換されたアルキレンとは、C1〜C10アルキレンであって、そのうち1または複数の水素原子が置換基により置換されているものをいう。本明細書において「アルキレン」は、酸素原子および硫黄原子から選択される原子を1またはそれ以上含んでいてもよい。
【0047】
本明細書において「置換されていてもよいアルキレン」とは、上で定義した「アルキレン」または「置換されたアルキレン」のいずれであってもよいことを意味する。
【0048】
本明細書において「シクロアルキル」とは、環式構造を有するアルキルをいう。「置換されたシクロアルキル」とは、以下に規定する置換基によってシクロアルキルのHが置換されたシクロアルキルをいう。具体例としては、C3〜C4シクロアルキル、C3〜C5シクロアルキル、C3〜C6シクロアルキル、C3〜C7シクロアルキル、C3〜C8シクロアルキル、C3〜C9シクロアルキル、C3〜C10シクロアルキル、C3〜C11シクロアルキル、C3〜C12シクロアルキル、C3〜C4置換されたシクロアルキル、C3〜C5置換されたシクロアルキル、C3〜C6置換されたシクロアルキル、C3〜C7置換されたシクロアルキル、C3〜C8置換されたシクロアルキル、C3〜C9置換されたシクロアルキル、C3〜C10置換されたシクロアルキル、C3〜C11置換されたシクロアルキルまたはC3〜C12置換されたシクロアルキルであり得る。例えば、シクロアルキルとしては、シクロプロピル、シクロヘキシルなどが例示される。
【0049】
本明細書において「置換されていてもよいシクロアルキル」とは、上で定義した「シクロアルキル」または「置換されたシクロアルキル」のいずれであってもよいことを意味する。
【0050】
本明細書において「アルケニル」とは、分子内に二重結合を一つ有する脂肪族炭化水素から水素原子が一つ失われて生ずる1価の基をいい、一般にCnH2n−1−で表される(ここで、nは2以上の正の整数である)。「置換されたアルケニル」とは、以下に規定する置換基によってアルケニルのHが置換されたアルケニルをいう。具体例としては、C2〜C3アルケニル、C2〜C4アルケニル、C2〜C5アルケニル、C2〜C6アルケニル、C2〜C7アルケニル、C2〜C8アルケニル、C2〜C9アルケニル、C2〜C10アルケニル、C2〜C11アルケニルまたはC2〜C12アルケニル、C2〜C3置換されたアルケニル、C2〜C4置換されたアルケニル、C2〜C5置換されたアルケニル、C2〜C6置換されたアルケニル、C2〜C7置換されたアルケニル、C2〜C8置換されたアルケニル、C2〜C9置換されたアルケニル、C2〜C10置換されたアルケニル、C2〜C11置換されたアルケニルまたはC2〜C12置換されたアルケニルであり得る。ここで、例えばC2〜C10アルキルとは、炭素原子を2〜10個含む直鎖または分枝状のアルケニルを意味し、ビニル(CH2=CH−)、アリル(CH2=CHCH2−)、CH3CH=CH−などが例示される。また、例えば、C2〜C10置換されたアルケニルとは、C2〜C10アルケニルであって、そのうち1または複数の水素原子が置換基により置換されているものをいう。
【0051】
本明細書において「置換されていてもよいアルケニル」とは、上で定義した「アルケニル」または「置換されたアルケニル」のいずれであってもよいことを意味する。
【0052】
本明細書において「アルケニレン」とは、分子内に二重結合を一つ有する脂肪族炭化水素から水素原子が二つ失われて生ずる2価の基をいい、一般に−CnH2n−2−で表される(ここで、nは2以上の正の整数である)。「置換されたアルケニレン」とは、以下に規定する置換基によってアルケニレンのHが置換されたアルケニレンをいう。具体例としては、C2〜C25アルケニレンまたはC2〜C25置換されたアルケニレンが挙げられ、なかでも特にC2〜C3アルケニレン、C2〜C4アルケニレン、C2〜C5アルケニレン、C2〜C6アルケニレン、C2〜C7アルケニレン、C2〜C8アルケニレン、C2〜C9アルケニレン、C2〜C10アルケニレン、C2〜C11アルケニレンまたはC2〜C12アルケニレン、C2〜C3置換されたアルケニレン、C2〜C4置換されたアルケニレン、C2〜C5置換されたアルケニレン、C2〜C6置換されたアルケニレン、C2〜C7置換されたアルケニレン、C2〜C8置換されたアルケニレン、C2〜C9置換されたアルケニレン、C2〜C10置換されたアルケニレン、C2〜C11置換されたアルケニレンまたはC2〜C12置換されたアルケニレンが好ましい。ここで、例えばC2〜C10アルキルとは、炭素原子を2〜10個含む直鎖または分枝状のアルケニレンを意味し、−CH=CH−、−CH=CHCH2−、−(CH3)C=CH−などが例示される。また、例えば、C2〜C10置換されたアルケニレンとは、C2〜C10アルケニレンであって、そのうち1または複数の水素原子が置換基により置換されているものをいう。本明細書において「アルケニレン」は、酸素原子および硫黄原子から選択される原子を1またはそれ以上含んでいてもよい。
【0053】
本明細書において「置換されていてもよいアルケニレン」とは、上で定義した「アルケニレン」または「置換されたアルケニレン」のいずれであってもよいことを意味する。
【0054】
本明細書において「シクロアルケニル」とは、環式構造を有するアルケニルをいう。「置換されたシクロアルケニル」とは、以下に規定する置換基によってシクロアルケニルのHが置換されたシクロアルケニルをいう。具体例としては、C3〜C4シクロアルケニル、C3〜C5シクロアルケニル、C3〜C6シクロアルケニル、C3〜C7シクロアルケニル、C3〜C8シクロアルケニル、C3〜C9シクロアルケニル、C3〜C10シクロアルケニル、C3〜C11シクロアルケニル、C3〜C12シクロアルケニル、C3〜C4置換されたシクロアルケニル、C3〜C5置換されたシクロアルケニル、C3〜C6置換されたシクロアルケニル、C3〜C7置換されたシクロアルケニル、C3〜C8置換されたシクロアルケニル、C3〜C9置換されたシクロアルケニル、C3〜C10置換されたシクロアルケニル、C3〜C11置換されたシクロアルケニルまたはC3〜C12置換されたシクロアルケニルであり得る。例えば、好ましいシクロアルケニルとしては、1−シクロペンテニル、2−シクロヘキセニルなどが例示される。
【0055】
本明細書において「置換されていてもよいシクロアルケニル」とは、上で定義した「シクロアルケニル」または「置換されたシクロアルケニル」のいずれであってもよいことを意味する。
【0056】
本明細書において「アルキニル」とは、アセチレンのような、分子内に三重結合を一つ有する脂肪族炭化水素から水素原子が一つ失われて生ずる1価の基をいい、一般にCnH2n−3−で表される(ここで、nは2以上の正の整数である)。「置換されたアルキニル」とは、以下に規定する置換基によってアルキニルのHが置換されたアルキニルをいう。具体例としては、C2〜C3アルキニル、C2〜C4アルキニル、C2〜C5アルキニル、C2〜C6アルキニル、C2〜C7アルキニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C9アルキニル、C2〜C10アルキニル、C2〜C11アルキニル、C2〜C12アルキニル、C2〜C3置換されたアルキニル、C2〜C4置換されたアルキニル、C2〜C5置換されたアルキニル、C2〜C6置換されたアルキニル、C2〜C7置換されたアルキニル、C2〜C8置換されたアルキニル、C2〜C9置換されたアルキニル、C2〜C10置換されたアルキニル、C2〜C11置換されたアルキニルまたはC2〜C12置換されたアルキニルであり得る。ここで、例えば、C2〜C10アルキニルとは、例えば炭素原子を2〜10個含む直鎖または分枝状のアルキニルを意味し、エチニル(CH≡C−)、1−プロピニル(CH3C≡C−)などが例示される。また、例えば、C2〜C10置換されたアルキニルとは、C2〜C10アルキニルであって、そのうち1または複数の水素原子が置換基により置換されているものをいう。
【0057】
本明細書において「置換されていてもよいアルキニル」とは、上で定義した「アルキニル」または「置換されたアルキニル」のいずれであってもよいことを意味する。
【0058】
本明細書において「アルコキシ」とは、アルコール類のヒドロキシ基の水素原子が失われて生ずる1価の基をいい、一般にCnH2n+1O−で表される(ここで、nは1以上の整数である)。「置換されたアルコキシ」とは、以下に規定する置換基によってアルコキシのHが置換されたアルコキシをいう。具体例としては、C1〜C2アルコキシ、C1〜C3アルコキシ、C1〜C4アルコキシ、C1〜C5アルコキシ、C1〜C6アルコキシ、C1〜C7アルコキシ、C1〜C8アルコキシ、C1〜C9アルコキシ、C1〜C10アルコキシ、C1〜C11アルコキシ、C1〜C12アルコキシ、C1〜C2置換されたアルコキシ、C1〜C3置換されたアルコキシ、C1〜C4置換されたアルコキシ、C1〜C5置換されたアルコキシ、C1〜C6置換されたアルコキシ、C1〜C7置換されたアルコキシ、C1〜C8置換されたアルコキシ、C1〜C9置換されたアルコキシ、C1〜C10置換されたアルコキシ、C1〜C11置換されたアルコキシまたはC1〜C12置換されたアルコキシであり得る。ここで、例えば、C1〜C10アルコキシとは、炭素原子を1〜10個含む直鎖または分枝状のアルコキシを意味し、メトキシ(CH3O−)、エトキシ(C2H5O−)、n−プロポキシ(CH3CH2CH2O−)などが例示される。
【0059】
本明細書において「置換されていてもよいアルコキシ」とは、上で定義した「アルコキシ」または「置換されたアルコキシ」のいずれであってもよいことを意味する。
【0060】
本明細書において「ヘテロ環(基)」とは、炭素およびヘテロ原子をも含む環状構造を有する基をいう。ここで、ヘテロ原子は、O、SおよびNからなる群より選択され、同一であっても異なっていてもよく、1つ含まれていても2以上含まれていてもよい。ヘテロ環基は、芳香族系または非芳香族系であり得、そして単環式または多環式であり得る。ヘテロ環基は置換されていてもよい。
【0061】
本明細書において「置換されていてもよいヘテロ環(基)」とは、上で定義した「ヘテロ環(基)」または「置換されたヘテロ環(基)」のいずれであってもよいことを意味する。
【0062】
本明細書において「アルコール」とは、脂肪族炭化水素の1または2以上の水素原子をヒドロキシル基で置換した有機化合物をいう。本明細書においては、ROHとも表記される。ここで、Rは、アルキル基である。好ましくは、Rは、C1〜C6アルキルであり得る。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0063】
本明細書において「炭素環基」とは、炭素のみを含む環状構造を含む基であって、前記の「シクロアルキル」、「置換されたシクロアルキル」、「シクロアルケニル」、「置換されたシクロアルケニル」以外の基をいう。炭素環基は芳香族系または非芳香族系であり得、そして単環式または多環式であり得る。「置換された炭素環基」とは、以下に規定する置換基によって炭素環基のHが置換された炭素環基をいう。具体例としては、C3〜C4炭素環基、C3〜C5炭素環基、C3〜C6炭素環基、C3〜C7炭素環基、C3〜C8炭素環基、C3〜C9炭素環基、C3〜C10炭素環基、C3〜C11炭素環基、C3〜C12炭素環基、C3〜C4置換された炭素環基、C3〜C5置換された炭素環基、C3〜C6置換された炭素環基、C3〜C7置換された炭素環基、C3〜C8置換された炭素環基、C3〜C9置換された炭素環基、C3〜C10置換された炭素環基、C3〜C11置換された炭素環基またはC3〜C12置換された炭素環基であり得る。炭素環基はまた、C4〜C7炭素環基またはC4〜C7置換された炭素環基であり得る。炭素環基としては、フェニル基から水素原子が1個欠失したものが例示される。ここで、水素の欠失位置は、化学的に可能な任意の位置であり得、芳香環上であってもよく、非芳香環上であってもよい。
【0064】
本明細書において「置換されていてもよい炭素環基」とは、上で定義した「炭素環基」または「置換された炭素環基」のいずれであってもよいことを意味する。
【0065】
本明細書において「ヘテロ環基」とは、炭素およびヘテロ原子をも含む環状構造を有する基をいう。ここで,ヘテロ原子は、O、SおよびNからなる群より選択され、同一であっても異なっていてもよく、1つ含まれていても2以上含まれていてもよい。ヘテロ環基は、芳香族系または非芳香族系であり得、そして単環式または多環式であり得る。「置換されたヘテロ環基」とは、以下に規定する置換基によってヘテロ環基のHが置換されたヘテロ環基をいう。具体例としては、C3〜C4炭素環基、C3〜C5炭素環基、C3〜C6炭素環基、C3〜C7炭素環基、C3〜C8炭素環基、C3〜C9炭素環基、C3〜C10炭素環基、C3〜C11炭素環基、C3〜C12炭素環基、C3〜C4置換された炭素環基、C3〜C5置換された炭素環基、C3〜C6置換された炭素環基、C3〜C7置換された炭素環基、C3〜C8置換された炭素環基、C3〜C9置換された炭素環基、C3〜C10置換された炭素環基、C3〜C11置換された炭素環基またはC3〜C12置換された炭素環基の1つ以上の炭素原子をヘテロ原子で置換したものであり得る。ヘテロ環基はまた、C4〜C7炭素環基またはC4〜C7置換された炭素環基の炭素原子を1つ以上へテロ原子で置換したものであり得る。ヘテロ環基としては、チエニル基、ピロリル基、フリル基、イミダゾリル基、ピリジル基などが例示される。水素の欠失位置は、化学的に可能な任意の位置であり得、芳香環上であってもよく、非芳香環上であってもよい。
【0066】
本明細書において、炭素環基またはヘテロ環基は、下記に定義されるように1価の置換基で置換され得ることに加えて、2価の置換基で置換され得る。そのような二価の置換は、オキソ置換(=O)またはチオキソ置換(=S)であり得る。
【0067】
本明細書において「ハロゲン」とは、周期表7B族に属するフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)などの元素の1価の基をいう。
【0068】
本明細書において「ヒドロキシ」とは、−OHで表される基をいう。「置換されたヒドロキシ」とは、ヒドロキシのHが下記で定義される置換基で置換されているものをいう。
【0069】
本明細書において「チオール」とは、ヒドロキシ基の酸素原子を硫黄原子で置換した基(メルカプト基)であり、−SHで表される。「置換されたチオール」とは、メルカプトのHが下記で定義される置換基で置換されている基をいう。
【0070】
本明細書において「シアノ」とは、−CNで表される基をいう。「ニトロ」とは、−NO2で表される基をいう。「アミノ」とは、−NH2で表される基をいう。「置換されたアミノ」とは、アミノのHが以下で定義される置換基で置換されたものをいう。
【0071】
本明細書において「カルボキシ」とは、−COOHで表される基をいう。「置換されたカルボキシ」とは、カルボキシのHが以下に定義される置換基で置換されたものをいう。
【0072】
本明細書において「チオカルボキシ」とは、カルボキシ基の酸素原子を硫黄原子で置換した基をいい、−C(=S)OH、−C(=O)SHまたは−CSSHで表され得る。「置換されたチオカルボキシ」とは、チオカルボキシのHが以下に定義される置換基で置換されたものをいう。
【0073】
本明細書において「アシル」とは、カルボン酸からOHを除いてできる1価の基をいう。アシル基の代表例としては、アセチル(CH3CO−)、ベンゾイル(C6H5CO−)などが挙げられる。「置換されたアシル」とは、アシルの水素を以下に定義される置換基で置換したものをいう。
【0074】
本明細書において「アミド」とは、アンモニアの水素を酸基(アシル基)で置換した基であり、好ましくは、−CONH2で表される。「置換されたアミド」とは、アミドが置換されたものをいう。
【0075】
本明細書において「カルボニル」とは、アルデヒドおよびケトンの特性基である−(C=O)−を含むものを総称したものをいう。「置換されたカルボニル」は、下記において選択される置換基で置換されているカルボニル基を意味する。
【0076】
本明細書において「チオカルボニル」とは、カルボニルにおける酸素原子を硫黄原子に置換した基であり、特性基−(C=S)−を含む。チオカルボニルには、チオケトンおよびチオアルデヒドが含まれる。「置換されたチオカルボニル」とは、下記において選択される置換基で置換されたチオカルボニルを意味する。
【0077】
本明細書において「スルホニル」とは、特性基である−SO2−を含むものを総称したものをいう。「置換されたスルホニル」とは、下記において選択される置換基で置換されたスルホニルを意味する。
【0078】
本明細書において「スルフィニル」とは、特性基である−SO−を含むものを総称したものをいう。「置換されたスルフィニル」とは、下記において選択される置換基で置換されているスルフィニルを意味する。
【0079】
本明細書において「アリール」とは、芳香族炭化水素の環に結合する水素原子が1個離脱して生ずる基をいい、本明細書において、炭素環基に包含される。
【0080】
1つの実施形態において、このスペーサーは、以下の式:
−[CRn1Rn2]n−[S−S]r−[CRm1Rm2]m−
で表される構造を有し、
該n、mおよびrは、独立して0以上の整数であり、ただし、n+m+rは1以上であり、
該Rn1および該Rn2は、独立して、水素もしくは置換基であるかまたは隣接する炭素との二重結合を意味するか、または該Rn1とRn2とが一緒になって=Oもしくは隣接する炭素との三重結合を意味するか、あるいは隣接する複数の炭素原子とアリール基を形成し、
該Rm1および該Rm2は、独立して、水素もしくは置換基であるかまたは隣接する炭素との二重結合を意味するか、または該Rm1と該Rm2とが一緒になって=Oであり、そして
は、独立して、水素であるか、またはRm1と一緒になって=Oもしくは隣接する炭素との三重結合を意味するか、あるいは隣接する複数の炭素原子とアリール基を形成し、該置換基は、それぞれ独立して、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アルコキシ、炭素環基、ヘテロ環基、ハロゲン、ヒドロキシ、チオ−ル、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、アシル、チオカルボキシ、アミド、置換されたアミド、置換されたカルボニル、置換されたチオカルボニル、置換されたスルホニル、置換されたスルフィニルなどであり得る。
【0081】
本明細書において使用され得る好ましいスペーサーとしては、例えば、−CO−CH2−CH2−S−S−CH2−CH2−CO−、−CO−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CO−などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
スペーサの構造は、好ましくは、スペーサーの長さが、11〜12Å、両末端にスクシンイミジルプロピオネート構造あるいはスルホスクシンイミジルプロピオネート構造を有する構造であるが、該リポソーム上のHSAあるいは抗体のアミノ基と結合でき得る構造でありさえすればよい。
【0083】
本発明において、抗体とリポソームとを架橋するためには、例えば、ビススルホスクシンイミジルスベラート、ジスクシンイミジルグルタレート、ジチオビススクシンイミジルプロピオネート、ジスクシンイミジルスベラート、3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)、エチレングリコールビススクシンイミジルスクシネート、エチレングリコールビススルホスクシンイミジルスクシネート等の2価試薬などを使用することができる。
【0084】
本明細書において「プロテインA」とは、黄色ブドウ球菌細胞壁に由来する分子量42,000のタンパク質であり、IgGに結合するものをいう。プロテインAは、抗体の定常領域(Fcフラグメント)に結合するので抗原抗体反応を妨害しない。プロテインAは、IgGの動物種やサブクラスにより抗体との親和性に大きな違いを有する。
【0085】
本発明において、蛍光性は、抗体修飾リポソームの構成要素の少なくとも1つが蛍光性を有すること、または抗体修飾リポソームが新たに蛍光性を有する要素(例えば、蛍光色素)をさらに有することによって付与される。
【0086】
本発明において、「蛍光性」とは、例えば、蛍光色素、蛍光タンパク質(例えば、GFP、CFP、YFPなど)、発光酵素(例えば、ルシフェラーゼなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
蛍光性を有する要素としては、例えば、蛍光色素、蛍光タンパク質(例えば、GFP、CFP、YFPなど)、発光酵素(例えば、ルシフェラーゼなど)が挙げられるが、これらに限定されない。蛍光色素としては、例えば、
【0088】
【化17】
【0089】
【化18】
Cy7、Cy3B、Cy3.5、Alexa Fluoro350、Alexa Fluoro488、Alexa Fluoro532、Alexa Fluoro546、Alexa Fluoro594、Alexa Fluoro633、Alexa Fluoro647、Alexa Fluoro680、Alexa Fluoro700、Alexa Fluoro750、フルオレセイン−4−イソチオシアネート(FITC)、ローダミン、カルセイン、それらの組み合わせのような蛍光色素によって付与され得る。
【0090】
このような抗体修飾リポソームは、以下の方法によって製造され得る。具体的には、この方法は、A)リポソームを提供する工程;B)該リポソームと血清アルブミンとを、該リポソームと該血清アルブミンとが結合する条件下で接触させて、血清アルブミン結合リポソームを生成させる工程;およびC)該血清アルブミン結合リポソームと抗体とを、スペーサーの存在下で該血清アルブミンと該抗体とが該スペーサーを介して結合する条件下で接触させて、抗体修飾リポソームを生成させる工程を包含する。
【0091】
他の実施形態において、この方法は、a)リポソームを提供する工程;b)該リポソームとプロテインAとを、該リポソームと該プロテインAとが結合する条件下で接触させる工程;およびc)該プロテインAが結合したリポソームと抗体とを、該プロテインAと該抗体とが直接結合する条件下で接触させる工程を包含する。
【0092】
蛍光色素の結合または封入は、薬物をリポソーム中に結合または封入するために用いられる任意のものが使用される。例えば、蛍光標識されたリポソームを製造する方法は、リポソーム形成と同時に蛍光色素を内包させる工程を包含し得る。該リポソーム形成と同時に蛍光色素を内包させる工程では、超音波処理した溶液と蛍光標識溶液とを混合することにより、リポソームに蛍光性を付与することができる。好ましくは、この蛍光標識溶液は、1−(ε−カルボキシペンチル)−1’−エチル−3,3,3’,3’−テトラメチルインドカルボシアニン−5,5’−ジスルホネートカリウム塩−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(cy3)、1,1’−ビス(ε−カルボキシペンチル)−3,3,3’,3’−テトラメチルインドカルボシアニン−5,5’−ジスルホネートカリウム塩,ジ−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(cy5.5)を含み得る。
【0093】
本発明において使用される場合、「冷蔵(下)」とは、約1℃〜約12℃、好ましくは約2℃〜約8℃の範囲の温度をいう。本発明において使用される場合、「室温」とは、約15℃〜約30℃、好ましくは約20℃〜約25℃の範囲の温度をいう。
【0094】
本明細書において使用される用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされたものを包含し得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。
【0095】
本明細書では、特に言及するときは、「タンパク質」は、比較的大きな分子量を有するアミノ酸のポリマーまたはその改変体を指し、「ペプチド」というときは、比較的小さな分子量を有するアミノ酸のポリマーまたはその改変体を指すことがあることが理解されるべきである。そのような分子量としては、例えば、約30kDa、好ましくは約20kDa、より好ましくは約10kDaなどを挙げることができるがそれらに限定されない。
【0096】
本明細書中で使用される場合、「生体由来タンパク質」とは、生物に由来するタンパク質をいい、どの生物(例えば、任意の種類の多細胞生物(例えば、動物(例えば、脊椎動物、無脊椎動物)、植物(例えば、単子葉植物、双子葉植物など)など))由来のタンパク質でもよい。好ましくは、脊椎動物(例えば、メクラウナギ類、ヤツメウナギ類、軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物など)由来のタンパク質、より好ましくは、哺乳動物(例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目など)由来のタンパク質が用いられる。さらに好ましくは、霊長類(例えば、チンパンジー、ニホンザル、ヒト)由来のタンパク質が用いられる。最も好ましくは投与を目的とする生体由来のタンパク質が用いられる。本明細書において、生体由来タンパク質が別の物質と結合した状態を示す場合、生体由来タンパク質基と称される。
【0097】
本明細書で使用される場合「血清タンパク質」は、血液が自然に凝固したときに残る液体部分に含まれるタンパク質をいう。血清タンパク質としては、任意の動物のものを使用することができるが、ヒト由来のものが好ましい。本明細書において、ヒト由来タンパク質が別の物質と結合した状態を示す場合、ヒト由来タンパク質基と称される。
【0098】
本明細書で使用される場合、「血清アルブミン」は、血清中に含まれるアルブミンをいう。本明細書において、血清アルブミンが別の物質と結合した状態を示す場合、血清アルブミン基と称される。血清アルブミンとしては、たとえば、ウシ由来、ヒト由来のものなどを挙げることができる。好ましくは、ヒト由来のものが好ましい。狂牛病等のリスクを回避することができるからである。
【0099】
本発明における抗体修飾リポソームは、リポソーム膜またはリンカーの少なくとも一方が親水性化合物、好ましくは、トリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカンを結合させることにより親水性化されていてもよい。
【0100】
本明細書中で使用される場合、「親水性化」は、リポソーム表面に親水性化合物を結合させることをいう。親水性化に用いる化合物としては、低分子の親水性化合物、好ましくは少なくとも1つのOH基を有する低分子の親水性化合物、さらに好ましくは、少なくとも2つのOH基を有する低分子の親水性化合物が挙げられる。また、さらに少なくとも1つのアミノ基を有する低分子の親水性化合物、すなわち分子中に少なくとも1つのOH基と少なくとも1つのアミノ基を有する親水性化合物が挙げられる。親水性化合物は、低分子なので、抗体に対する立体障害となりにくく標的細胞膜面上の抗原認識反応の進行を妨げることはない。また、親水性化合物には、本発明の抗体修飾リポソームにおいて、特定の標的を指向するために用いられる抗体が結合し得る物質は含まれない。このような親水性化合物として、例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなどを含むトリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカン等のアミノアルコール類等が挙げられ、さらに具体的には、トリス(ヒドロキシメチノレ)アミノエタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノエタン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノエタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノプロパン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノプロパン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノプロパン等が挙げられる。
【0101】
本発明の物質または上で定義した官能基が置換基Rによって置換されている場合、そのような置換基Rは、単数または複数存在し、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アルコキシ、炭素環基、ヘテロ環基、ハロゲン、ヒドロキシ、チオ−ル、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、アシル、チオカルボキシ、アミド、置換されたアミド、置換されたカルボニル、置換されたチオカルボニル、置換されたスルホニルおよび置換されたスルフィニルからなる群より選択される。
【0102】
リポソームの親水性化は、従来公知の方法、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体等を共有結合により結合させたリン脂質を用いてリポソームを作成する方法(特開2000−302685号(例えば、CNDAC含有リポソーム製剤ジラウロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン;ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルグリセロール;スフィンゴミエリン;コレステロール;ポリエチレングリコール部分の分子量が約2000であるN−モノメトキシポリエチレングリコールサクシニル−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(以下、PEG2000−DSPEとする。);CNDAC塩酸塩、グルコース水溶液およびトレハロース水溶液を使用し、Banghamら(J.Mol.Biol.8、660−668(1964)参照。)の方法により、多重層リポソームの粗分散液を得た。)と記載されている。))等の方法を採用することによっても行うことができる。このうち、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを用いてリポソーム表面を親水性化することが特に好ましい。本発明のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを用いる手法は、ポリエチレングリコールなどを用いる従来の親水性化方法と比較していくつかの点で好ましい。例えば、本発明のように抗体をリポソーム上に結合してその分子認識機能を標的指向性に利用するものでは、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンは低分子量物質であるので従来のポリエチレングリコールなどの高分子量物質を用いる方法に比べて、抗体に対する立体障害となりにくく標的細胞膜面上の抗原による抗体分子認識反応の進行を妨げないので特に好ましい。
【0103】
また、本発明によるリポソームは該親水化処理後においても粒子径分布や成分組成、分散特性が良好であり、長時間の保存性や生体内安定性も優れているのでリポソーム製剤化して利用するために好ましい。トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを用いてリポソーム表面を親水性化するには、例えばジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン等の脂質を用いて、常法により得たリポソーム溶液にビススルホスクシンイミジルスベラート、ジスクシンイミジルグルタレート、ジチオビススクシンイミジルプロピオネート、ジスクシンイミジルスベラート、3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)、エチレングリコールビススクシンイミジルスクシネート、エチレングリコールビススルホスクシンイミジルスクシネート等の2価試薬を加えて反応させることにより、リポソーム膜上のジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン等の脂質に2価試薬を結合させ、次いでトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを、該2価試薬の−方の結合手と反応させることにより、リポソーム表面にトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを結合せしめる。
【0104】
このように、リポソームを親水性化処理したリポソームは、生体内で極めて安定である。本発明は、表面を低分子化合物で親水性化したリポソームをも包含する。
【0105】
本明細書において、リポソーム、抗体修飾リポソームのタンパク質量は、例えば、リポソームに内包されたHSA量とリポソーム表面にカップリングしたHSAの総タンパク質量をBCA法により測定することができる。
【0106】
【化19】
タンパク質量の測定は、例えば、Micro BCATM Protein Assay Reagentキット(カタログ番号23235BN)(PIERCE Co.LTD)などを用いることができる。標準物質として、2mg/mlアルブミン(BSA)を使用し得る。(1)スタンダード溶液として、標準物質(2mg/ml:アルブミン)をPBS緩衝液で希釈し、0、0.25、0.5、1、2、3、4、5μg/50μl溶液を調製する。(2)Cy3を内包した抗体修飾リポソームをPBS緩衝液で20倍希釈し、検体溶液を調製する。(3)スタンダード溶液、検体溶液をそれぞれ試験管に50μl分注する。(4)各試験管に3%ラウリル硫酸ナトリウム溶液(SDS溶液)を100μl添加する。(5)キットに添付された試薬A、B、Cを、試薬A:試薬B:試薬C=48:2:50となるように混合し、各試験管に150μl添加する。(6)この試験管を、60℃で1時間、静置する。(7)室温に戻ってから、吸光度540nmを測定し、スタンダード溶液により検量線を作成して、リポソームのタンパク質量を測定する。検量線の一例を図1に示す。
【0107】
抗体修飾リポソームのタンパク質量は、例えば、0.5〜2.0mg/mlの範囲であり得る。Cy3により標識された抗体修飾リポソームのタンパク質量は、例えば、0.7mg/ml以上であり得る。
【0108】
リポソーム、抗体修飾リポソームの構成脂質量は、例えば、コレステロール量を定量することにより算出することができる。
【0109】
<脂質定量の原理>
【0110】
【化20】
脂質の定量には、例えば、デタミナーTC555キット(カタログ番号UCC/EAN128)(KYOWA Co.LTD)を用いることができる。標準物質として、キットに添付されている50mg/ml コレステロールを使用する。(1)スタンダード溶液として、標準物質(50mg/ml:コレステロール)をPBS緩衝液で希釈し、0、0.1、0.25、0.5、0.75、1、5、10μg/20μl溶液を調製する。(2)Cy3を内包した抗体修飾リポソームをPBS緩衝液で5倍希釈し、検体溶液を調製する。(3)スタンダード溶液、検体溶液をそれぞれ試験管に20μl分注する。(4)各試験管に、TritonX−100(10%溶液)を17μl添加して撹拌し、その後、37℃、40分間、静置する。(5)デタミナーTC555キットの酵素試薬を300μl添加して撹拌し、その後、37℃、20分間、静置する。(6)吸光度540nmを測定し、スタンダード溶液により検量線(検定線の一例を作成して、リポソームのコレステロール量を測定し、脂質量を求める。
【0111】
コレステロール量から脂質量を求める換算式は、例えば、以下のように表される。
脂質量(μg/50μl)=コレステロール量(μg/50μl)×4.51(換算係数)
リポソーム中の脂質に対するタンパク質の割合は、例えば、上述のタンパク質定量および脂質定量の結果から導くことができる。本発明の抗体修飾リポソームは、好ましくは、脂質に対するタンパク質の割合が、約0.2〜0.5である。
【0112】
本発明の抗体修飾リポソームの脂質量は、例えば、3.0〜6.0mg/mlの範囲であり得る。Cy3により標識された抗体修飾リポソームの脂質量は、例えば、3.0mg/ml以上であり得る。
【0113】
リポソーム、抗体修飾リポソームの粒子径分布および粒子径は、例えば、リポソーム粒子を精製水で50倍に希釈して、ゼータサイザーナノ(Nan−ZS:MALVERN Co.LTD)を用いて測定することができる。
【0114】
本明細書において、リポソーム、抗体修飾リポソームは、粒度分布の最大域において、約80〜130nmの粒子径を有することが好ましい。なぜなら、約80〜130nmの粒子径は、マクロファージなどの免疫系細胞の認識を回避でき、そして肝臓や脾臓の内皮細網系(RES)からの取り込みをある程度回避することができるからである。約80〜130nmの粒子径の抗体修飾リポソームは、薬物を内包させ、その薬物を標的臓器、疾患部分に送達させるのに適している。
【0115】
本明細書において、リポソーム、抗体修飾リポソームは、約80〜130nmの平均粒子径を有し、好ましくは、約80〜120nm、より好ましくは、約100nmの粒子径を有する。なぜなら、リポソームの粒子径が小さすぎると、肝臓・脾臓の細胞内皮系に非特異的に入り、粒子径が大きすぎると、マクロファージなどの免疫系細胞に貪食されやすくなるからである。また、本発明のリポソームは、負に荷電していることが望ましい。負に荷電していることにより、生体中の負に荷電している細胞との相互作用を防ぐことができる。本発明のリポソーム表面のゼ−タ電位は、生理食塩水中において、37℃で、−30〜−90mV、好ましくは−40〜−80mV、さらに好ましくは−50〜−80mVである。リポソーム表面のゼータ電位は、25℃で、−30〜−90mVであり得るが、これらに限定されない。好ましくは、25℃で、−30mV未満である。リポソーム表面のゼータ電位は、室温(例えば、25℃)未満であっても、−30mV以上であってもよい。なぜなら、リポソーム間の凝集が生じさえしなければよいからである。
【0116】
本明細書において「処置または診断のための物質」とは、虚血を処置または診断するために用いられる物質をいう。処置または診断のための物質としては、例えば、虚血を処置または診断するのに有用な試薬もしくは薬物等、適切な処方材料または薬学的に受容可能なキャリア等が挙げられる。
【0117】
(組成物)
本発明の組成物は、必要に応じて、適切な処方材料または薬学的に受容可能なキャリアを含み得る。適切な処方材料または薬学的に受容可能なキャリアとしては、抗酸化剤、保存剤、着色料、蛍光色素、風味料、希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクルおよび/または薬学的アジュバントが挙げられるがそれらに限定されない。代表的には、本発明の組成物は、抗体修飾リポソーム、および必要に応じて他の有効成分を、少なくとも1つの生理的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈剤とともに含む組成物の形態で投与される。例えば、適切なビヒクルは、ミセル、注射溶液、生理的溶液、または人工脳脊髄液であり得、これらには、非経口送達のための組成物に一般的に使用される他の物質を補充することが可能である。
【0118】
本明細書で使用される受容可能なキャリア、賦形剤または安定化剤は、好ましくは、レシピエントに対して非毒性であり、そして好ましくは、使用される投薬量および濃度において不活性であり、好ましくは、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、または他の有機酸;アスコルビン酸、α−トコフェロール;低分子量ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン);モノサッカリド、ジサッカリドおよび他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリン);キレート剤(例えば、EDTA);糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール);塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);ならびに/あるいは非イオン性表面活性化剤(例えば、Tween、プルロニック(pluronic)またはポリエチレングリコール(PEG))などが挙げられる。
【0119】
例示の適切なキャリアとしては、中性緩衝化生理食塩水、または血清アルブミンと混合された生理食塩水が挙げられる。好ましくは、その生成物は、適切な賦形剤(例えば、スクロース)を用いて凍結乾燥剤として処方される。他の標準的なキャリア、希釈剤および賦形剤は所望に応じて含まれ得る。他の例示的な組成物は、pH約7.0−8.5のTris緩衝剤またはpH約4.0−5.5の酢酸緩衝剤を含み、これらは、さらに、ソルビトールまたはその適切な代替物を含み得る。
【0120】
以下に本発明の組成物の一般的な調製法を示す。なお、動物薬組成物、医薬部外品、水産薬組成物、食品組成物および化粧品組成物等についても公知の調製法により製造することができることに注意されたい。
【0121】
本発明の組成物などは、薬学的に受容可能なキャリアと必要に応じて配合し、例えば、注射剤、懸濁剤、溶液剤、スプレー剤等の液状製剤として非経口的に投与することができる。薬学的に受容可能なキャリアの例としては、賦形剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤、崩壊阻害剤、吸収促進剤、吸収剤、湿潤剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等が挙げられる。また、必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の製剤添加物を用いることができる。また、本発明の組成物には、シアリルルイスX、脂質など以外の物質を配合することも可能である。非経口の投与経路としては、静脈内、筋肉内、皮下投与、皮内投与、粘膜投与、直腸内投与、膣内投与、局所投与、皮膚投与など等が挙げられるがそれらに限定されない。全身投与されるとき、本発明において使用される医薬は、発熱物質を含まない、薬学的に受容可能な水溶液の形態であり得る。そのような薬学的に受容可能な組成物の調製について、pH、等張性、安定性などを考慮することは、当業者の技術範囲内である。
【0122】
液状製剤における溶剤の好適な例としては、注射溶液、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油およびトウモロコシ油等が挙げられる。
【0123】
液状製剤における溶解補助剤の好適な例としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウムおよびクエン酸ナトリウム等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0124】
液状製剤における懸濁化剤の好適な例としては、例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等が挙げられる。
【0125】
液状製剤における等張化剤の好適な例としては、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトール等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0126】
液状製剤における緩衝剤の好適な例としては、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩およびクエン酸塩等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0127】
液状製剤における無痛化剤の好適な例としては、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウムおよび塩酸プロカイン等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0128】
液状製剤における防腐剤の好適な例としては、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0129】
液状製剤における抗酸化剤の好適な例としては、亜硫酸塩、アスコルビン酸、α−トコフェロールおよびシステイン等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0130】
注射剤として調製する際には、液剤および懸濁剤は殺菌され、かつ血液または他の目的のための注射部位における溶媒と等張であることが好ましい。通常、これらは、細菌保留フィルター等を用いるろ過、殺菌剤の配合または照射などによって無菌化する。さらにこれらの処理後、凍結乾燥等の方法により固形物とし、使用直前に無菌水または無菌の注射用希釈剤(塩酸リドカイン水溶液、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、エタノールまたはこれらの混合溶液等)を添加してもよい。
【0131】
さらに、本発明の組成物は、着色料、保存剤、香料、矯味矯臭剤、甘味料等、ならびに他の薬剤を含んでいてもよい。
【0132】
本発明において使用される物質、組成物等の量は、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、被験体の年齢、体重、性別、既往歴、細胞の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明の方法を被験体に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、被験体の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。頻度としては、例えば、毎日−数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)の投与が挙げられる。1週間−1ヶ月に1回の投与を、経過を見ながら施すことが好ましい。投与する量は、処置されるべき部位が必要とする量を見積もることによって確定することができる。
【0133】
本明細書において「被験体」とは、疾患の処置または診断の対象とされる動物をいう。本発明が対象とする動物は、例えば、鳥類、哺乳動物などであってもよい。好ましくは、そのような動物は、哺乳動物(例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目など)であり得る。例示的な被験体としては、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌなどの動物が挙げられるがそれらに限定されない。さらに好ましくは、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、モルモットなどの小動物が用いられ得る。
【0134】
(好ましい実施形態の説明)
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでない。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。
【0135】
1つの局面において、本発明は抗体修飾リポソームを提供する、この抗体修飾リポソームは、(A)リポソームと、(B)該リポソームに結合した血清アルブミンと、(C)該リポソーム表面の血清アルブミンに結合したスペーサーと、(D)該スペーサーに結合した抗体とを含み得る。
【0136】
1つの実施形態において、このスペーサーは、以下の式:
−[CRn1Rn2]n−[S−S]r−[CRm1Rm2]m−
で表される構造を有し、
該n、mおよびrは、独立して0以上の整数であり、ただし、n+m+rは1以上であり、
該Rn1および該Rn2は、独立して、水素もしくは置換基であるかまたは隣接する炭素との二重結合を意味するか、または該Rn1とRn2とが一緒になって=Oもしくは隣接する炭素との三重結合を意味するか、あるいは隣接する複数の炭素原子とアリール基を形成し、
該Rm1および該Rm2は、独立して、水素もしくは置換基であるかまたは隣接する炭素との二重結合を意味するか、または該Rm1と該Rm2とが一緒になって=Oであり、そして
は、独立して、水素であるか、またはRm1と一緒になって=Oもしくは隣接する炭素との三重結合を意味するか、あるいは隣接する複数の炭素原子とアリール基を形成し、該置換基は、それぞれ独立して、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アルコキシ、炭素環基、ヘテロ環基、ハロゲン、ヒドロキシ、チオ−ル、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、アシル、チオカルボキシ、アミド、置換されたアミド、置換されたカルボニル、置換されたチオカルボニル、置換されたスルホニル、置換されたスルフィニルなどであり得る。
【0137】
本明細書において使用され得る好ましいスペーサーとしては、例えば、−CO−CH2−CH2−S−S−CH2−CH2−CO−、−CO−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CO−などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0138】
1つの実施形態において、本発明の抗体修飾リポソームにおいて使用され得るスペーサーは、−CO−CH2−CH2−S−S−CH2−CH2−CO−、−CO−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CO−、などが挙げられるが、これらに限定されない。スペーサーの構造は、好ましくは、スペーサーの長さが、11〜12Å、両末端にスクシンイミジルプロピオネート構造あるいはスルホスクシンイミジルプロピオネート構造を有する構造であるが、該リポソーム上のHSAあるいは抗体のアミノ基と結合でき得る構造でありさえすればよい。
【0139】
他の実施形態において、本発明において使用され得る血清アルブミンは、様々な生物種に由来の血清アルブミンが使用され得る。好ましくは、血清アルブミンは、ヒト由来血清アルブミンである。
【0140】
他の実施形態において、本発明の抗体修飾リポソームでは、種々な抗体が使用され得る。このような抗体としては、例えば、抗EGFR抗体、抗E−セレクチン抗体、抗p−セレクチン抗体、IgGが挙げらるが、これらに限定されない。
【0141】
本発明の抗体修飾リポソームの一例として、抗E−セレクチン抗体リポソームが挙げられる。この抗E−セレクチン抗体リポソームは、担癌部位の血管内皮、癌組織への局在が、例えば、組織切片により観察・確認され得る。
【0142】
本発明の抗体修飾リポソームの他の例として、抗P−セレクチン抗体リポソームが挙げられる。この抗P−セレクチン抗体リポソームは、炎症部位への集積性が、例えば、組織切片により観察・確認され得る。
【0143】
本発明の抗体修飾リポソームの別の例として、抗EGFR抗体リポソームが挙げられる。この抗EGFR抗体リポソームは、担癌部位への集積性が、例えば、組織切片により観察・確認され得る。
【0144】
好ましい実施形態において、本発明の抗体修飾リポソームは、さらに標識物質を含みうる。この標識物質としては、例えば、
【0145】
【化21】
【0146】
【化22】
Cy7、Cy3B、Cy3.5、Alexa Fluoro350、Alexa Fluoro488、Alexa Fluoro532、Alexa Fluoro546、Alexa Fluoro594、Alexa Fluoro633、Alexa Fluoro647、Alexa Fluoro680、Alexa Fluoro700、Alexa Fluoro750、フルオレセイン−4−イソチオシアネート(FITC)、ローダミン、カルセイン、それらの組み合わせなどが挙げられが、これらに限定されない。
【0147】
他の実施形態において、本発明の抗体修飾リポソームは、標識物質として、造影剤(例えば、イオヘキソール、イオパミドール、ウログラフィン等)、金属錯体(例えば、ガドリウム錯体、ユーロピウム錯体、テルビウム錯体等)等を含み得る。
【0148】
1つの実施形態において、本発明の抗体修飾リポソームに含まれるタンパク質量は、約0.05〜1mg/mLの範囲にあり得るが、これらに限定されない。なぜなら、抗体量(タンパク質量)により、ターゲットへの集積性が変動するからである。この範囲は、好ましくは、0.01〜2mg/mL、より好ましくは、0.05〜1mg/mL 抗体の集積性は、抗体が多く結合していればよいというのではなく、適度な親水性度と結合抗体量は存在するからである。
【0149】
(抗体修飾リポソームを製造する方法)
他の局面において、本発明は、抗体修飾リポソームを製造する方法を提供する。この方法は、以下:
A)リポソームを提供する工程;
B)該リポソームと血清アルブミンとを、該リポソームと該血清アルブミンとが結合する条件下で接触させて、血清アルブミン結合リポソームを生成させる工程;および
C)該血清アルブミン結合リポソームと抗体とを、スペーサーの存在下で該血清アルブミンと該抗体とが該スペーサーを介して結合する条件下で接触させて、抗体修飾リポソームを生成させる工程
を包含し得る。
【0150】
1つの実施形態において、前記リポソームは、標識物質を含み得る。好ましくは、この標識物質は、
【0151】
【化23】
【0152】
【化24】
Cy7、Cy3B、Cy3.5、Alexa Fluoro350、Alexa Fluoro488、Alexa Fluoro532、Alexa Fluoro546、Alexa Fluoro594、Alexa Fluoro633、Alexa Fluoro647、Alexa Fluoro680、Alexa Fluoro700、Alexa Fluoro750、フルオレセイン−4−イソチオシアネート(FITC)、ローダミン、カルセイン、それらの組み合わせであり得るが、これらに限定されない。
【0153】
他の実施形態において、本発明の抗体修飾リポソームは、標識物質として、造影剤(例えば、イオヘキソール、イオパミドール、ウログラフィン等)、金属錯体(例えば、ガドリウム錯体、ユーロピウム錯体、テルビウム錯体等)等を含み得る。
【0154】
他の実施形態において、本発明の方法は、前記B)工程が、前記リポソームをトリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカンにより親水性化処理する工程を含み得る。トリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカンとしては、例えば、アミノ基を有するトリス(ヒドロキシアルキル)構造を有するような物質が挙げられるが、これらに限定されない。具体的には、具体的には、トリス(ヒドロキシメチノレ)アミノエタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノエタン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノエタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノプロパン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノプロパン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノプロパン等が挙げられるが、これらに限定されない。なぜなら、架橋剤を介してリポソームに結合することができる物質でありさえすれば、よいからである。
【0155】
他の実施形態において、本発明の方法は、前記B)工程において、前記リポソームと該血清アルブミンとが結合する条件が、該リポソームを含む溶液に、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンと架橋を形成し得る架橋基(例えば、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート)を添加し、タンパク質が分解しない程度の温度(例えば、20〜30℃、好ましくは、20〜25℃)で、反応が完了するのに十分な時間(例えば、2〜24時間、好ましくは、2〜6時間)にわたって攪拌し、親水性化状態にする条件であり得る。
【0156】
好ましい実施形態において、本発明の方法は、前記B)工程が、以下:
(B1)前記リポソームを含む溶液に、炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0、好ましくは、pH8.5)を添加し、タンパク質が分解しない程度の温度(例えば、20〜30℃、好ましくは、20〜25℃)で、反応が完了するのに十分な時間(例えば、2〜24時間、好ましくは、2〜6時間)撹拌して、リポソーム粒子表面を親水性の状態にする工程;
(B2)(B1)工程において、粒子表面が親水性化されたリポソームを含む溶液を、リポソーム膜面に結合しなかった親水性物質を除去可能な分画分子量(例えば、100K〜300K、好ましくは、300K)で限外濾過し、遊離の該架橋基(例えば、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート)を除去し、該炭酸緩衝液をトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0、好ましくは、8.0〜9.0、より好ましくは、8.4)に交換する工程;
(B3)(B2)工程において、該緩衝液が該トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液に交換された溶液に、血清アルブミンを含むトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0、好ましくは、pH8.0〜9.0、より好ましくは、pH8.4)を添加して、タンパク質が分解しない程度の温度(例えば、20〜30℃、好ましくは、20〜25℃)で反応させて反応溶液を生成する工程;および
(B4)該反応溶液に、PBS緩衝液(pH7.0〜9.0、好ましくは、pH8.0)を添加して、タンパク質が分解しない程度の温度(例えば、20〜30℃、好ましくは、20〜25℃)で攪拌し、分画分子量100K〜300K(好ましくは、300K)で限外濾過し、遊離の該血清アルブミンを除去し、該溶液の緩衝液をPBS緩衝液(pH7.0〜9.0、好ましくは、pH8.0)に交換する工程を包含し得る。
【0157】
上記(B1)工程では、pH8.0〜9.0のpH域であれば、上記炭酸緩衝液のかわりに架橋剤を結合させる緩衝液として、分子内にアミノ基を有さない他の緩衝液を使用することができる。なぜなら、緩衝液が架橋剤の官能基と反応しなければよいからである。
【0158】
上記(B2)および(B3)工程は、pH7.0〜9.0のpH域であれば、反応に影響を与えないと考えられるので、上記トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液のかわりにこの範囲で使用される他の緩衝液を使用することもできる。なぜなら、緩衝液組成が、影響を与えない工程であると考えられるからである。
【0159】
上記(B4)工程では、pH7.0〜9.0のpH域であれば、反応に影響を与えないと考えられるので、上記PBSのかわりにpH7.0〜9.0の範囲で緩衝能を有する他の緩衝液を使用することができる。なぜなら、上記pH域で緩衝能を有しさえすれば、どのような組成であってもよいからである。
【0160】
上記(B2)工程において、分画分子量は、リポソーム膜面に結合しなかった親水性物質を除去可能な分画分子量でありさえすればよい。
【0161】
上記(B4)工程において、分画分子量は、遊離の血清アルブミンを除去可能な分画分子量でありさえすればよい。
【0162】
別の実施形態において、本発明の方法は、前記(B)工程が、以下:
(B1−1)前記蛍光色素を内包したかまたは結合したリポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300K(好ましくは、300K)で限外濾過し、該溶液中に含まれる緩衝液を炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0、好ましくは、pH8.5)に交換する工程;
(B1−2)該(B1−1)工程において該緩衝液が該炭酸緩衝液に変換された溶液に、アミノ基と結合可能な架橋剤(例えば、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート)を添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、分画分子量100K〜300K(好ましくは、300K)で限外濾過し、遊離の該架橋基(例えば、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート)を除去する工程;および
(B1−3)該(B1−2)工程において、該遊離の架橋基(例えば、該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート)を除去した溶液に、0.5〜1mM トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0、好ましくは、pH8.5)溶液を添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、さらに冷蔵〜室温(好ましくは、冷蔵)で一晩撹拌し、分画分子量100K〜300K(好ましくは、300K)で限外濾過し、遊離のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを除去し、該炭酸緩衝液をN−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0、好ましくは、pH8.4)に交換して親水性化処理されたリポソームを含む溶液を生成させる工程、をさらに包含し得る。
【0163】
上記(B1−1)工程では、pH8.0〜9.0のpH域であれば、上記炭酸緩衝液のかわりに架橋剤を結合させる緩衝液として、分子内にアミノ基を有さない他の緩衝液を使用することができる。なぜなら、緩衝液が架橋剤の官能基と反応しなければよいからである。
【0164】
上記(B1−3)工程では、上記トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/炭酸緩衝液溶液は親水性を付与するための使用されているので、この溶液のかわりに、分子内にアミノ基を有するような親水性を付与できる化合物を含む溶液を用いることもできる。
【0165】
また、N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液のかわりに、pH7.0〜9.0の範囲で緩衝能を有する他の緩衝液を用いることもできる。なぜなら、緩衝液の組成は、この反応に影響を与えないと考えられるからである。
【0166】
上記(B1−1)〜(B1−3)において、分画分子量は、緩衝液または遊離の架橋基を除去可能な分画分子量でありさえすればよい。
【0167】
別の実施形態において、本発明の方法は、前記C)工程が、以下:
(C1)該リポソームを含む溶液に、架橋剤を添加して、タンパク質が分解しない程度の温度(例えば、20〜30℃、好ましくは、20〜25℃)で攪拌し、分画分子量100K〜300K(好ましくは、300K)で限外濾過し、遊離の該架橋剤を除去する工程;
(C2)(C1)工程において、該遊離の該架橋剤を除去した溶液に、該抗体溶液を添加して、タンパク質が分解しない程度の温度(例えば、20〜30℃、好ましくは、20〜25℃)で反応させ、炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0、好ましくは、pH8.5)、を添加し、タンパク質が分解しない程度の温度(例えば、20〜30℃、好ましくは、20〜25℃)で、反応が完了するのに十分な時間(2〜24時間、好ましくは、2〜6時間)撹拌し、分画分子量150K〜300Kで限外濾過し、遊離の該抗体と該架橋剤を除去する工程;および
(C3)(C2)工程において、遊離の該抗体と該架橋剤を除去した溶液の緩衝液を、炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0、好ましくは、pH8.5)に交換する工程を包含し得る。
【0168】
上記(C1)〜(C3)工程では、pH8.0〜9.0のpH域であれば、上記炭酸緩衝液のかわりに架橋剤を結合させる緩衝液として、分子内にアミノ基を有さない他の緩衝液を使用することができる。なぜなら、緩衝液が架橋剤の官能基と反応しなければよいからである。
【0169】
上記(C1)工程において、分画分子量は、遊離の架橋基を除去可能な分画分子量でありさえすればよい。
【0170】
上記(C2)工程において、分画分子量は、遊離の抗体を除去可能な分画分子量でありさえすればよい。
【0171】
他の実施形態において、本発明の方法は、架橋剤として、例えば、3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート、ジチオビス[スクシンイミジルプロピオネート]、ジスクシンイミジルスベレート等を使用することができる。この架橋剤は、好ましくは、3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)であり得る。
【0172】
他の実施形態において、本発明おいて使用される抗体は、臓器、疾患、免疫細胞等に特異的に発現する抗原に対する抗体が挙げられ得る。好ましくは、例えば、炎症血管内皮に発現するE−セレクチン、p−セレクチンに対する抗体であり得るが、これらに限定されない。1つの実施形態において、本発明において使用され得る抗体は、例えば、抗EGFR抗体、IgGであり得る。
【0173】
好ましい実施形態において、この抗体は、リポソームの脂質1mgに対して0.025〜1mgの比率で含まれ得る。
【0174】
別の局面において、本発明は、抗体修飾リポソームを製造する方法を提供する、この方法は、以下:
a)リポソームを提供する工程;
b)該リポソームとプロテインAとを、該リポソームと該プロテインAとが結合する条件下で接触させる工程;および
c)該プロテインAが結合したリポソームと抗体とを、該プロテインAと該抗体とが直接結合する条件下で接触させる工程
を包含し得る。
【0175】
1つの実施形態において、本方法では、リポソームは、標識物質として、例えば、
【0176】
【化25】
【0177】
【化26】
Cy7、Cy3B、Cy3.5、Alexa Fluoro350、Alexa Fluoro488、Alexa Fluoro532、Alexa Fluoro546、Alexa Fluoro594、Alexa Fluoro633、Alexa Fluoro647、Alexa Fluoro680、Alexa Fluoro700、Alexa Fluoro750、フルオレセイン−4−イソチオシアネート(FITC)、ローダミン、カルセイン、それらの組み合わせが挙げれるが、これらに限定されない。
【0178】
他の実施形態において、本方法において使用され得る標識物質としては、造影剤(例えば、イオヘキソール、イオパミドール、ウログラフィン等)、金属錯体(例えば、ガドリウム錯体、ユーロピウム錯体、テルビウム錯体等)等が挙げられ得る。
【0179】
他の実施形態において、本方法の前記b)工程は、前記リポソームをトリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカンにより親水性化処理する工程を含み得る。トリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカンとしては、例えば、親水性の性質を有し、架橋剤と結合しうるアミノ基をもつ物質、(例えば、アミノ基を有するトリス(ヒドロキシアルキル)構造を有するような物質)が挙げられるが、これらに限定されない。具体的には、トリス(ヒドロキシメチノレ)アミノエタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノエタン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノエタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノプロパン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノプロパン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノプロパン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0180】
他の実施形態において、本方法では、前記b)工程は、以下の工程(b1−1)〜(b5)を包含し得る:
(b1−1)前記リポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300K(好ましくは、300K)で限外濾過し、該溶液中に含まれる緩衝液を炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0、好ましくは、pH8.5)に交換する工程;
(b1−2)該(b1−1)工程において該緩衝液が該炭酸緩衝液に変換された溶液に架橋基(例えば、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート)を添加して、冷蔵〜室温(好ましくは、10〜37℃)(この攪拌時の温度は、低温になりすぎると反応速度が低下しすぎず、かつ、タンパク質の分解が生じない程度の温度であればよい。)で攪拌し、分画分子量100K〜300K(好ましくは、300K)で限外濾過し、遊離の該架橋基(例えば、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート)を除去する工程;および
(b1−3)該(b1−2)工程において、該遊離の該架橋基(例えば、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート)を除去した溶液に、0.2〜1mM トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0、好ましくは、pH8.5)溶液を添加して、20〜30℃(好ましくは、20〜25℃)(この攪拌時の温度は、低温になりすぎると反応速度が低下しすぎず、かつ、タンパク質の分解が生じない程度の温度であればよい。)で攪拌し、さらに冷蔵〜室温、好ましくは、10〜37℃(この反応は、長時間反応の必要な場合には、タンパク質の分解を防ぐために冷蔵で行い、また、短時間で反応を進行させる場合には、室温で反応させ、反応速度をあげることができる)で一晩撹拌し、分画分子量100K〜300K(好ましくは、300K)で限外濾過し、遊離のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを除去し、該炭酸緩衝液をN−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0、好ましくは、pH8.4)に交換して親水性化処理されたリポソームを含む溶液を生成させる工程を包含する、工程;
(b2)該親水性化したリポソームを含む溶液に、メタ過ヨウ素酸ナトリウム/N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0、好ましくは、pH8.4)溶液を添加し、冷蔵〜室温(好ましくは、10〜30℃)で一晩撹拌して、リポソーム粒子表面を酸化する工程;
(b3)(b2)工程において、粒子表面が酸化されたリポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300K(好ましくは、300K)で限外濾過し、遊離の該メタ過ヨウ素酸ナトリウムを除去し、該N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液をPBS緩衝液(pH7.0〜9.0、好ましくは、pH8.0)に交換する工程;
(b4)(b3)工程において、該緩衝液が該PBS緩衝液に交換された溶液に、プロテインA/PBS緩衝液(pH7.0〜9.0、好ましくは、pH8.0)を添加して冷蔵〜室温で反応させて反応溶液を生成する工程;
(b5)さらに、該反応溶液に、シアノホウ素酸ナトリウム/PBS緩衝液(pH7.0〜9.0、好ましくは、pH8.0)を添加して、冷蔵〜室温(好ましくは、10〜30)で攪拌し、分画分子量100K〜300K(好ましくは、300K)で限外濾過し、遊離の該シアノホウ素酸ナトリウムおよび該プロテインAを除去し該溶液の緩衝液を2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(pH6.8〜8.0、好ましくは、pH7.2)に交換する工程を包含する工程。
【0181】
上記(b1−1)工程では、pH8.0〜9.0のpH域であれば、上記炭酸緩衝液のかわりに架橋剤を結合させる緩衝液として、分子内にアミノ基を有さない他の緩衝液を使用することができる。なぜなら、緩衝液が架橋剤の官能基と反応しなければよいからである。
【0182】
上記(b1−3)工程では、上記トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/炭酸緩衝液溶液は親水性を付与するための使用されているので、この溶液のかわりに、分子内にアミノ基を有するような親水性を付与できる化合物を含む溶液を用いることもできる。
【0183】
また、上記(b1−3)および(b2)工程では、N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液のかわりに、pH7.0〜9.0の範囲で緩衝能を有する他の緩衝液を用いることもできる。なぜなら、緩衝液の組成は、この反応に影響を与えないと考えられるからである。
【0184】
上記(b3)工程は、pH7.0〜9.0のpH域であれば、反応に影響を与えないと考えられるので、上記トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液のかわりにこの範囲で使用される他の緩衝液を使用することもできる。なぜなら、緩衝液組成が、影響を与えない工程であると考えられるからである。
【0185】
上記(b4)工程では、pH7.0〜9.0のpH域であれば、反応に影響を与えないと考えられるので、上記PBSのかわりにpH7.0〜9.0の範囲で緩衝能を有する他の緩衝液を使用することができる。なぜなら、上記pH域で緩衝能を有しさえすれば、どのような組成であってもよいからである。
【0186】
上記(b5)工程では、リポソームおよび結合させたプロテインAを安定化させることができる限り、2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液の代わりの他の緩衝液が使用され得る。
【0187】
上記(b1−1)〜(b5)工程において、分画分子量は、除去すべき物質(例えば、リポソーム膜面に結合しなかった親水性物質、遊離の血清アルブミン、メタ過ヨウ素酸、遊離のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン他)を除去可能な分画分子量でありさえすればよい。
【0188】
別の実施形態において、本方法は、前記c)工程が、以下:
(c1)前記リポソームを含む溶液に、抗体溶液を添加して、4〜30℃、好ましくは、20〜25℃(この反応温度は、抗体とプロテインAとの結合に時間がかかるほど低い温度でなく、タンパク質が分解するほど高くない温度であればよい)で反応させ、2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(pH6.8〜8.0、好ましくは、pH7.2)を添加し、4〜30℃(好ましくは、10〜20℃)で2時間〜24時間にわたり撹拌し、分画分子量150K〜300Kで限外濾過し、遊離の該抗体を除去する工程;および
(c2)(c1)工程において、遊離の該抗体を除去した溶液の緩衝液を、2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(pH6.8〜8.0、好ましくは、pH7.2)に交換する工程を包含し得る。
【0189】
上記(c1)工程において、2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液のかわりに、中性域に緩衝能を有し、毒性の低い緩衝液であれば他の緩衝液を使用してもよい。分画分子量は、遊離の抗体を除去可能な分画分子量でありさえすればよい。
【0190】
上記(c2)工程では、リポソームおよび結合させたプロテインAを安定化させることができる限り、2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液の代わりに他の緩衝液が使用され得る。
【0191】
他の実施形態において、本方法において使用される抗体は、臓器、疾患、免疫細胞等に特異的に発現する抗原に対する抗体が挙げられ得る。好ましくは、例えば、炎症血管内皮に発現するE−セレクチン、p−セレクチンに対する抗体であり得るが、これらに限定されない。1つの実施形態において、本方法において使用され得る抗体は、例えば、抗EGFR抗体、IgGであり得る。
【0192】
好ましい実施形態において、この抗体を含む溶液には、前記抗体が0.025〜10mg/mL、の範囲で含まれ得る。
【0193】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【0194】
以下、実施例により、本発明の構成をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において使用した試薬類は、特に言及した場合を除いて、市販されているものを使用した。
【実施例】
【0195】
(実施例1 リポソームの調製)
リポソームは既報の手法(Yamazaki,N.,Kodama,M.and Gabius,H.−J.(1994)Methods Enzymol.242,56−65)により、改良型コール酸透析法を用いて調製した。すなわち、ジパルミトイルホスファチジルコリン、コレステロール、ジセチルホスフェート、ガングリオシドおよびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンをモル比でそれぞれ35:40:5:15:5の割合で合計脂質量45.6mgになるように混合し、コール酸ナトリウム46.9mgを添加し、クロロホルム/メタノール(1:1)溶液3mlに溶解した。この溶液を蒸発させ、沈殿物を真空中で乾燥させることによって脂質膜を得た。得られた脂質膜をN−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH 8.4)3mlに再懸濁し、37℃で1時間攪拌した。次いで、この溶液を窒素置換し、超音波処理して、透明なミセル懸濁液を得た。さらに、ミセル懸濁液をPM10膜(Amicon Co.,USA)とN−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH 8.4)を用いた限外濾過(分画分子量:10,000)にかけ均一リポソーム(平均粒子径100nm)10mlを調製した。
【0196】
(実施例2.リポソーム膜面上への抗E−セレクチン抗体の結合)
実施例1で調製したリポソームを用いる。
【0197】
(モノクローナル抗体の精製方法)
抗E−セレクチン抗体は、抗E−セレクチン抗体産生ハイブリドーマ(CL−3)ATCC No.CRL−2515から精製した。
【0198】
マウスBalb/c(雌性6週齢)に、プリスタン0.5mL/マウスを投与した。ハイブリドーマをRPMI(10%FBS,Pc+St)培地で、5%CO2、37℃で培養した。PBSに細胞を懸濁して、5×106細胞/マウスでマウスの腹腔内に投与した。約2週間後に腹水を採取した。硫酸アンモニウム沈殿し、沈殿物をPBSに溶解させ、PBS緩衝液で透析を行った。プロテインGカラム(HiTrap ProteinG colum 1mL)カラムに透析後の溶液を通した。カラムを洗浄後、プロテインGに結合したモノクローナル抗体を、0.1Mグリシン緩衝液(pH2.7)にて溶出し、溶出液を1MTris溶液(pH9.0)で中和した。
【0199】
(リポソーム膜面上への抗E−セレクチン抗体の結合)
過ヨウ素酸ナトリウムを約0.015gを秤量し、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液(TAPS緩衝液:pH8.4)1mLで溶解する。この過ヨウ素酸ナトリウム溶液をリポソームに添加し、酸化反応をさせ、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS緩衝液:pH8.0)下で限外濾過(300K)する。次いで、HSA溶液(10mg/mL)を添加し、ゆるやかに転倒混和後、室温で2時間攪拌する。
【0200】
NaBH3CNを0.003g秤量し、PBS緩衝液(pH8.5)100μLで溶解したNaBH3CN溶液を添加して、冷蔵下で一晩、還元反応により結合させる。炭酸緩衝液(CBS緩衝液:pH8.5)下で限外濾過(300K)をする。
【0201】
次いで、3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート(DTSSP、PIERCE社製:No.21578)を0.01g秤量し、CBS緩衝液(pH8.5)400μLで溶解したDTSSP溶液を添加し、室温で2時間反応後、冷蔵下で一晩反応させる。その後、CBS緩衝液(pH8.5)下で限外濾過(300K)する。
【0202】
上記方法にて精製した抗E−セレクチン抗体(25μg/mL、50μg/mL、75μg/mL、100μg/mL)をそれぞれ添加する。その後、室温で2時間反応させたのち、トリスヒドロキシアミノメタン(Tris)を(132mg/mL)加え、さらに室温で一晩、反応させる。
【0203】
2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)緩衝液(pH7.2)下で限外濾過(300K)を行い、0.45μmフィルターで濾過を行う。
【0204】
(実施例3.蛍光色素を内包するリポソームの調製)
(1.cy5.5内包リポソーム)
ヒト血清アルブミン/N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH8.4)溶液(10mg/ml)、(2ml)に、cy5.5/N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH8.4)溶液(2mg/ml)、(2.5ml)を混合して、37℃で3時間撹拌した。この混合溶液を、分画分子量10,000、N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH8.4)溶液で限外濾過し、遊離のcy5.5を除去し、cy5.5標識ヒト血清アルブミン溶液を調製した。
【0205】
リポソームは既報の手法(Yamazaki,N.,Kodama,M.and Gabius,H.−J.(1994)Methods Enzymol.242,56−65)により、改良型コール酸透析法を用いて調製した。すなわち、ジパルミトイルホスファチジルコリン、コレステロール、ジセチルホスフェート、ガングリオシドおよびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンをモル比でそれぞれ35:40:5:15:5の割合で合計脂質量45.6mgになるように混合し、コール酸ナトリウム46.9mgを添加し、クロロホルム/メタノール(1:1)溶液3mlに溶解した。この溶液を蒸発させ、沈殿物を真空中で乾燥させることによって脂質膜を得た。得られた脂質膜をTAPS緩衝生理食塩液(pH8.4)3mlに再懸濁し、37℃で1時間攪拌した。次いで、この溶液を窒素置換し、超音波処理し、透明なミセル懸濁液3mlを得た。この超音波処理したミセル懸濁液にHSA緩衝液(pH8.4)で0.2mg/1mlになるよう完全に溶解したcy5.5標識HSA溶液を撹拌しながらゆっくりと滴下して均一に混合した後、この蛍光色素入りミセル懸濁液をPM10膜(Amicon Co.,USA)とTAPS緩衝生理食塩液(pH8.4)を用いた限外濾過(分画分子量:10,000)にかけ均一な蛍光色素を内包するリポソーム粒子懸濁液10mlを調製した。
【0206】
得られた生理食塩懸濁液中(37℃)の蛍光色素を内包するリポソーム粒子の粒子径とゼータ電位をゼータ電位・粒子径・分子量測定装置(Model Nano ZS,Malvern Instruments Ltd,,UK)により測定した結果、粒子径は約80nm〜約130nm、ゼータ電位は−40〜−80mVであった。
【0207】
(2.cy3内包リポソームの調製)
cy3内包リポソームについても、上記(cy5.5内包リポソーム)と同様の方法で、cy3内包リポソームを調製した。得られた生理食塩懸濁液中(37℃)の蛍光色素を内包するリポソーム粒子の粒子径とゼータ電位をゼータ電位・粒子径・分子量測定装置(Model Nano ZS,Malvern Instruments Ltd,,UK)により測定した結果、粒子径は約80nm〜約130nm、ゼータ電位は−40〜−80mVであった。
【0208】
(実施例4.リポソーム膜面上への抗EGFRモノクローナル抗体の結合)
(モノクローナル抗体の精製方法)
抗EGFR抗体は、抗EGFR抗体産生ハイブリドーマ(TAKARA Human epidermal carcinoma cell A431 CloneB4G7 Cat.#M059)から精製した。
【0209】
マウスBalb/c(雌性6週齢)に、プリスタン0.5mL/マウスを投与した。ハイブリドーマをRPMI(10%FBS,Pc+St)培地で、5%CO2、37℃で培養した。PBSに細胞を懸濁して、5×106細胞/マウスでマウスの腹腔内に投与した。約2週間後に腹水を採取した。硫酸アンモニウム沈殿し、沈殿物をPBSに溶解させ、PBS緩衝液で透析を行った。プロテインGカラム(HiTrap ProteinG colum 1mL)カラムに透析後の溶液を通した。カラムを洗浄後、プロテインGに結合したモノクローナル抗体を、0.1Mグリシン緩衝液(pH2.7)にて溶出し、溶出液を1MTris溶液(pH9.0)で中和した。
【0210】
実施例2で調製したCy3内包リポソームを用いた。過ヨウ素酸ナトリウムを約0.015gを秤量し、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液(TAPS緩衝液:pH8.4)1mLで溶解した。この過ヨウ素酸ナトリウム溶液をCy3内包リポソームに添加し、酸化反応をさせ、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS緩衝液:pH8.0)下で限外濾過(300K)した。次いで、HSA溶液(10mg/mL)を添加し、ゆるやかに転倒混和後、室温で2時間攪拌した。
【0211】
NaBH3CNを0.003g秤量し、PBS緩衝液(pH8.0)100μLで溶解したNaBH3CN溶液を添加して、冷蔵下で一晩、還元反応により結合させた。炭酸緩衝液(CBS緩衝液:pH8.5)下で限外濾過(300K)をした。
【0212】
次いで、3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート(DTSSP、PIERCE社製:No.21578)を0.01g秤量し、CBS緩衝液(pH8.5)400μLで溶解したDTSSP溶液を添加し、室温で2時間反応後、冷蔵下で一晩反応させた。その後、CBS緩衝液(pH8.5)下で限外濾過(300K)した。
【0213】
上記方法により精製した抗EGFRモノクローナル抗体を、最終濃度0.1mg/mL、0.5mg/mL、1mg/mLになるように添加した。その後、室温で2時間反応させたのち、トリスヒドロキシアミノメタン(Tris)を(132mg/mL)加え、さらに室温で一晩、反応させた。
【0214】
2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)緩衝液(pH7.2)下で限外濾過(300K)を行い、0.45μmフィルターで濾過を行った。
【0215】
実施例1において調製したリポソームについても、実施例2と同様の方法を用いて、抗体修飾リポソームを調製する。
【0216】
(比較例1)
抗体として、抗EGFRモノクローナル抗体を用いる代わりに、IgG(Porcine)(ブタ血清、コスモ・バイオ(NBT)Code.02071)より、常法にて自社でIgG精製を行った。)を用いること以外、実施例4と同様の方法を用いた。
【0217】
(実施例5 抗体修飾リポソームの定量分析)
本実施例では、粒子径、Zeta電位、リポソーム中のタンパク質量、脂質量、吸光度の測定を行った。
【0218】
(I.タンパク質定量)
リポソームに内包されたHSA量とリポソーム表面にカップリングしたHSAの総タンパク質量をBCA法により測定した。
【0219】
タンパク質量の測定は、Micro BCATM Protein Assay Reagentキット(カタログ番号23235BN)(PIERCE Co.LTD)を用いた。標準物質として、キットに添付された2mg/mlアルブミン(BSA)を使用した。
【0220】
スタンダード溶液として、標準物質(2mg/ml:アルブミン)をPBS緩衝液で希釈し、0、0.25、0.5、1、2、3、4、5μg/50μl溶液を調製した。Cy3内包抗体修飾リポソームをPBS緩衝液で20倍希釈し、検体溶液を調製した。スタンダード溶液、検体溶液をそれぞれ試験管に50μl分注した。各試験管に3%ラウリル硫酸ナトリウム溶液(SDS溶液)を100μl添加した。キットに添付された試薬A、B、Cを、試薬A:試薬B:試薬C=48:2:50となるように混合し、各試験管に150μl添加した。この試験管を、60℃で1時間、静置した。室温に戻ってから、吸光度540nmを測定し、スタンダード溶液により検量線を作成して、リポソームのタンパク質量を測定した。
【0221】
(II.脂質定量)
リポソームの構成脂質量を、コレステロール量を定量することにより算出した。脂質の定量にはデタミナーTC555キット(カタログ番号UCC/EAN128)(KYOWA Co.LTD)を用いた。標準物質として、キットに添付されている50mg/ml コレステロールを使用した。
【0222】
スタンダード溶液として、標準物質(50mg/ml:コレステロール)をPBS緩衝液で希釈し、0、0.1、0.25、0.5、0.75、1、5、10μg/20μl溶液を調製した。Cy3内包抗体修飾リポソームをPBS緩衝液で5倍希釈し、検体溶液を調製した。スタンダード溶液、検体溶液をそれぞれ試験管に20μl分注した。各試験管に、TritonX−100(10%溶液)を17μl添加して撹拌し、その後、37℃、40分間、静置した。デタミナーTC555キットの酵素試薬を300μl添加して撹拌し、その後、37℃、20分間、静置した。吸光度540nmを測定し、スタンダード溶液により検量線を作成して、リポソームのコレステロール量を測定し、脂質量を求めた。
コレステロール量から脂質量を求める換算式
脂質量(μg/50μl)=コレステロール量(μg/50μl)×4.51(換算係数)
(III.粒子径分布および粒子径)
リポソーム粒子を精製水で50倍に希釈して、ゼータサイザーナノ(Nan−ZS:MALVERN Co.LTD)を用いて測定した。
【0223】
表1に、粒子径、Zeta電位、リポソーム中のタンパク質量、脂質量、吸光度の測定の結果を示す。その結果、0.1mg/mLの抗体溶液を用いた場合が驚くべきことに予想外にも0.5mg/mLまたは1.0mg/mLのものよりもはるかに最もリポソーム中のタンパク質量が多いことが分かった。つまり、リポソームに結合した抗体量が多いといえる。従って、0.1mg/mLの抗体溶液を用いて、in vitroアッセイを行うこととした。
【0224】
【表1】
Sample:リポソーム作製時に用いた抗体溶液の濃度
(実施例6 in vitroアッセイ)
細胞として、A431(ヒト扁平上皮ガン細胞(ATCC No.CRL−1555))およびHeLaS3(ヒト子宮ガン細胞(ATCC No.CCL−2.2)を用いた(図1Aおよび図1B)。これらの細胞(1×105細胞)を、12Wellプレートに播種し、37℃、5% CO2環境下で2日間、培養した。1Wellあたり500μLのDMEM培地(SIGMA D6046)(血清:ウシ胎児血清(FBS)バイオロジカルCo.LTD,194481:終濃度10%となるように添加、抗生物質:ペニシリンストレプトマイシン SIGMA P0781 10mg/ml:終濃度100μg/mLとなるように添加)に、Cy3を内包した抗EGFRモノクローナル抗体修飾リポソームを10μLずつ添加した。この抗体修飾リポソームは、リポソーム作製時に0.1mg/mLの抗体溶液を用いたものである。この抗体修飾リポソームを、細胞に添加した時の抗体濃度が1μg/mL、2μg/mL、20μg/mLになるように添加して調製した。30分後にPBS(−)で洗浄した。添加の3時間後に、蛍光顕微鏡で細胞を観察した。また、同様に抗体修飾リポソームを添加し、数時間(約3時間)培養後、PBSで洗浄せずに蛍光顕微鏡で細胞を観察した。
【0225】
その結果、EGFRを高発現しているA431細胞(ヒト扁平上皮癌細胞)(Parker PJら、J.Biol.Chem.vol,259, No.15, pp9906−9912,1984;Kawamoto Tら、Proc.Natl.Acid.Sci.USA,vol.80,pp1337−1341,1983;加藤道男ら、日消外会誌25(2)pp195−202,1992)に抗EGFR抗体修飾リポソームが取り込まれたことがわかった(図2Aおよび2Bを参照のこと。)。
【0226】
(比較例2)
比較例1で調製したIgG(Porcine)結合リポソームおよび抗体を結合していないリポソーム(K0)を用いて、実施例7と同様の手法をもちいた。これらのコントロールでは、リポソームはA431細胞にほとんど取り込まれなかった。
【0227】
(まとめ)
非特異的抗体リポソームにくらべ、抗EGFR抗体リポソームは、A431細胞に顕著に取り込まれた。これは、A431細胞表面に発現しているEGF−Rによって、抗EGFR抗体リポソームが特異的に認識されたためであると考えられる。
【0228】
(実施例7.リポソーム膜面上への抗E−セレクチン抗体の結合)
実施例2で調製したCy5,5内包リポソームおよび抗E−セレクチン抗体を用いた。過ヨウ素酸ナトリウムを約0.015gを秤量し、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液(TAPS緩衝液:pH8.4)1mLで溶解した。この過ヨウ素酸ナトリウム溶液をCy5.5内包リポソームに添加し、酸化反応をさせ、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS緩衝液:pH8.0)下で限外濾過(300K)した。次いで、HSA溶液(10mg/mL)を添加し、ゆるやかに転倒混和後、室温で2時間攪拌した。
【0229】
NaBH3CNを0.003g秤量し、PBS緩衝液(pH8.0)100μLで溶解したNaBH3CN溶液を添加して、冷蔵下で一晩、還元反応により結合させた。炭酸緩衝液(CBS緩衝液:pH8.5)下で限外濾過(300K)をした。
【0230】
次いで、3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート(DTSSP、PIERCE社製:No.21578)を0.01g秤量し、CBS緩衝液(pH8.5)400μLで溶解したDTSSP溶液を添加し、室温で2時間反応後、冷蔵下で一晩反応させた。その後、CBS緩衝液(pH8.5)下で限外濾過(300K)した。
【0231】
抗E−セレクチン抗体を、最終濃度が25μg/mL、50μg/mL、75μg/mL、100μg/mLになるようにそれぞれ添加した。その後、室温で2時間反応させたのち、トリスヒドロキシアミノメタン(Tris)を(132mg/mL)加え、さらに室温で一晩、反応させた。
【0232】
2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)緩衝液(pH7.2)下で限外濾過(300K)を行い、0.45μmフィルターで濾過を行った。
【0233】
実施例5(I.タンパク質定量)と同様の方法を用いて、調製した抗体修飾リポソームのタンパク質量を測定し、添加抗体量と抗体結合量の関係を調べた。その結果を図3に示す。
【0234】
(比較例3)
抗体として、抗E−セレクチン抗体を用いる代わりに、IgGを用いること以外、実施例7と同様の方法を用いた。
【0235】
(まとめ)
以上の結果より、添加抗体量100μg/mLで集積性の低い原因を考察する。図3の結果から、添加抗体量100μg/mLの場合には、リポソーム膜面上のスペーサー(DTSSP)は、ほとんどすべて抗体の結合に使われており、後の工程で親水性化物を結合させることのできるDTSSPがリポソーム膜面上に残存していないことが集積性の低い原因と考えられる。
【0236】
添加抗体量が75μg/mlの抗体修飾リポソームで集積性を示すのは、DTSSPが抗体の結合にすべて使われずに残存するため、そのDTSSPに親水性化物質を結合させることができることが理由に一つが考えられる。また、リポソーム膜面上に結合した親水性化物質と抗体の量のバランスがインビボで集積性を示すのに適度であるためと考えられる。
【0237】
さらに、リポソーム膜面に抗体が過度に結合することによって、生体内の免疫系細胞に認識され補食されやすくなり、集積能が低下することなども原因として考えられる。
【0238】
(実施例8 in vivo実験)
実施例7で調製した、Cy5.5を内包させた抗E−セレクチン抗体修飾リポソームを用いた。
【0239】
6週齢マウス(Balb/c:雌)約60匹にEAT細胞(エールリッヒ腹水癌細胞:
ATCC No.1595089)を移植(1×107/50μL)した。細胞移植後、10日目に、抗体結合リポソームを各々100μLずつ尾静脈から投与した。
【0240】
Optixにより継時的観察(0〜120時間)を行い、集積性の評価を行った。その結果を、図4に示す。抗E−セレクチン抗体修飾リポソームは、抗体濃度が75μ/mLのときに最もマウスの担癌部位に集積することが確認された。
【0241】
(比較例4)
コントロールとしてK0(抗体未結合リポソーム)およびIgG(Porcine)抗体結合リポソームを用いること以外、実施例8と同様の方法にて実験を行った。結果を図4に示す。K0(抗体未結合リポソーム)でも、IgG(Porcine)抗体結合リポソームでも、担癌部位にリポソームの集積はほとんど確認されなかった。
【0242】
(実施例9 PAGFP結合リポソームの調製)
(リポソーム脂質膜面上の親水性化処理)
実施例2で調製したCy3内包リポソーム溶液10mlをXM300膜(Amicon Co.,USA)と炭酸緩衝液(pH 8.5)を用いた限外濾過(分画分子量:300,000)にかけ溶液のpHを8.5にした。次に、架橋試薬ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート(BS3;Pierce Co.,USA)10mgを加え、室温で2時間攪拌した。その後、さらに冷蔵下で一晩攪拌してリポソーム膜上の脂質ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミンとBS3との化学結合反応を完結した。そして、このリポソーム液をXM300膜と炭酸緩衝液(pH 8.5)で限外濾過(分画分子量:300,000)にかけた。次に、炭酸緩衝液(pH 8.5)1mlに溶かしたトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン40mgをリポソーム液10mlに加えた。次いで、この溶液を、室温で2時間攪拌後、冷蔵下で一晩攪拌し、分画分子量300,000で限外濾過し、遊離のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを除去し、該炭酸緩衝液をN−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH8.4)に交換し、リポソーム膜上の脂質に結合したBS3とトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとの化学結合反応を完結した。これにより、リポソーム膜の脂質ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン上にトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの水酸基が配位して水和親水性化された。
【0243】
(リポソーム膜面上へのプロテインAの結合)
リポソーム膜面上へのプロテインAの結合は、既報の手法(Yamazaki,N.,Kodama,M.and Gabius,H.−J.(1994)MethodsEnzymol.242,56−65)により、カップリング反応法を用いて行った。すなわち、この反応は2段階化学反応で行い、はじめに、実施例2で得られた10mlのリポソーム膜面上に存在するガングリオシドを1mlのN−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH 8.4)に溶かしたメタ過ヨウ素酸ナトリウム43mgを加え、冷蔵下で一晩攪拌して過ヨウ素酸酸化した。XM300膜とPBS緩衝液(pH 8.0)で限外濾過(分画分子量:300,000)することにより、遊離の過ヨウ素酸ナトリウムを除去し、N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液をPBS緩衝液(pH8.0)に交換して、酸化されたリポソーム10mlを得た。このリポソーム液に、20mgのプロテインA/PBS緩衝液(pH 8.0)を加えて室温で2時間反応させ、次に2M NaBH3CN/PBS緩衝液(pH 8.0)100μlを加えて室温で2時間、さらに冷蔵下で一晩攪拌してリポソーム上のガングリオシドとプロテインAとのカップリング反応でプロテインAを結合した。次いで、限外濾過(分画分子量:300,000)し、遊離のシアノホウ素酸ナトリウムおよびプロテインAを除去し、この溶液の緩衝液を炭酸緩衝液(pH8.5)に交換して、プロテインA結合リポソーム液10mlを得た。
【0244】
実施例1において調製したリポソームについても、実施例9と同様の方法を用いて、抗体修飾リポソームを調製する。
【0245】
(実施例10 リポソーム膜面上への抗EGFR抗体の結合)
抗EGFR抗体は、実施例4と同様の方法により精製した。PAGFP結合リポソーム10μlに対して、抗EGFR抗体を0.5μg、1μg、5μg、15μg各々添加した。これらの各溶液を、HEPES緩衝液で総容量が100μl(10倍希釈溶液となる)になるように調製した。この溶液を4℃で2時間rotateした。これらのリポソームにおいて抗体量を比較した(図5)。添加した抗体量が15μgのものが最もA431細胞に取り込まれた。
【0246】
(比較例5)
コントロールとして、抗EGFR抗体の代わりにIgG(Porcine)を同様に添加した溶液を調製したこと以外、実施例10と同様の方法を用いてIgGリポソームを調製した。
【0247】
(実施例11 細胞アッセイ)
実施例10で調製した抗体修飾リポソームのうち、抗EGFR抗体を15μg添加したものを本実施例に用いた。
【0248】
培養液(DMEM SIGMA D6046(血清:牛胎児血清(FBS)バイオロジカルCo.LTD,194481:終濃度10%となるように添加、抗生物質:ペニシリンストレプトマイシン SIGMA P0781 10mg/ml:終濃度100μg/mLとなるように添加)500μlを含む12wellプレートに、A431細胞(ヒト上皮扁平癌細胞)を播種し(細胞数は1〜2×105個/well)、37℃、5%CO2環境下で、2日間、培養した。
【0249】
抗体修飾リポソーム添加前に、無血清培地(DMEM SIGMA D6046(抗生物質 ペニシリンストレプトマイシン SIGMA P0781 10mg/ml:終濃度100μg/mLとなるように添加))500μlで3回洗浄し、無血清培地に交換した(培養液500μl)。
【0250】
1wellあたり実施例10で調製した抗体修飾リポソーム溶液を10μl添加した。添加後はCO2インキュベータ内で静置しておいた(通常培養)。観察前に無血清培地500μlで3回洗浄し、最後にPBSで洗浄して蛍光顕微鏡で観察した。観察はリポソーム添加1〜4時間後に行なった。その結果を図6に示す。抗体修飾リポソームは、EGFRを過剰発現することが知られているA431細胞に取り込まれた。
【0251】
(比較例6)
コントロールとして、比較例5で調製した、Cy3を内包したブタIgGリポソームを用いて、実施例11と同様の実験を行った。その結果を図6に示す。IgGリポソームは、A431細胞に取り込まれなかった(図6)。
【0252】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0253】
本発明は、バイオテクノロジー、特に分子イメージングにおいて応用し得る診断用の細胞・組織センシングプローブとして利用できる新規なリポソームを提供することができるという有用性を有する。
【0254】
本発明は、低い濃度の抗体溶液を用いて、抗体を効率よくリポソームの表面に結合させることができるという有用性を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0255】
【図1】図1(左)は、A431(ヒト扁平上皮ガン細胞)の写真である。 図1(右)は、HeLaS3(ヒト子宮ガン細胞)の写真である。
【図2A】Cy3内包抗EGFR抗体結合リポソームおよびCy3内包IgG(Porcine)抗体結合リポソームを用いた細胞Assayを行った結果である。抗体修飾リポソーム添加して30分後に洗浄し、さらに3時間後に蛍光顕微鏡にて観察した。添加量(Protein量)は、細胞に対する抗体の最終濃度を示す。
【図2B】Cy3内包抗EGFR抗体結合リポソームおよびCy3内包IgG(Porcine)抗体結合リポソームを用いた細胞Assayを行った結果である。抗体修飾リポソーム添加して3時間培養後、洗浄せずに蛍光顕微鏡にて観察した。添加量(Protein量)は、細胞に対する抗体の最終濃度を示す。
【図3】図3は、添加抗体量と抗体結合量の関係を示す図である。y軸は、抗体結合量:100μg/mL添加抗体量を1したときの相対値である。この添加抗体量とは、スペーサーの結合したリポソームと抗体溶液の反応時の抗体濃度である。表1のグラフから、反応時の抗体濃度100μ/mLでリポソームに結合した抗体量はピークとなることがわかった。従って、この条件で反応させた場合、リポソーム膜面に結合する抗体量が最大量となる。この最大結合量に対して、どの程度の比率で結合したのか相対値を算出し、グラフにした。x軸は、添加抗体量(単位μg/mL)である。
【図4A】Cy5.5内包抗E−セレクチン抗体結合リポソームおよびIgG(Porcine)抗体結合リポソームの胆癌部位への集積性の評価を行った図であり、添加抗体量を25μg/mLの結果である。Death:麻酔時に死亡。
【図4B】Cy5.5内包抗E−セレクチン抗体結合リポソームおよびIgG(Porcine)抗体結合リポソームの胆癌部位への集積性の評価を行った図であり、添加抗体量を50μg/mLの結果である。
【図4C】Cy5.5内包抗E−セレクチン抗体結合リポソームおよびIgG(Porcine)抗体結合リポソームの胆癌部位への集積性の評価を行った図であり、添加抗体量を75μg/mLの結果である。
【図4D】Cy5.5内包抗E−セレクチン抗体結合リポソームおよびIgG(Porcine)抗体結合リポソームの胆癌部位への集積性の評価を行った図であり、添加抗体量を100μg/mLの結果である。
【図4E】Cy5.5内包抗E−セレクチン抗体結合リポソームおよびIgG(Porcine)抗体結合リポソームの胆癌部位への集積性の評価を行った図であり、添加抗体量を75μg/mLの有意差の比較を行った結果である。
【図4F】Cy5.5内包抗E−セレクチン抗体結合リポソームおよびIgG(Porcine)抗体結合リポソームの胆癌部位への集積性の評価を行った図であり、添加抗体量を75μg/mLの個体差の比較を行った結果である。
【図4G】Cy5.5内包抗E−セレクチン抗体結合リポソームおよびIgG(Porcine)抗体結合リポソームの胆癌部位への集積性の評価を行った図であり、添加抗体量を75μg/mLの個体差の比較を行った結果である。
【図4H】Cy5.5内包抗E−セレクチン抗体結合リポソームおよびIgG(Porcine)抗体結合リポソームの胆癌部位への集積性の評価を行った図であり、添加抗体量を75μg/mLの個体差の比較を行った結果である。
【図5】抗EGFR抗体リポソームの添加量の検討をおこなった結果である。添加量が抗体量として15μg/mLで最も細胞への取り込みが認められた。また、抗EGFR抗体なし、0μg/mLのとき、ほとんど細胞への取り込みは認められなかった。
【図6】抗EGFR抗体リポソーム添加後、4時間まで、経時的に細胞内にとりこまれたが、非特異的抗体リポソームの場合、経時的な細胞への取り込みは、認められなかった。
【図7】図7は、抗体修飾リポソームの一例を示す模式図である。
【図8】図8は、抗体修飾リポソームの一例を示す模式図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、リポソームに関する。詳細には、本発明のリポソームは、バイオテクノロジー、特に分子イメージングにおいて応用し得る診断用の細胞・組織センシングプローブとして利用できる。
【背景技術】
【0002】
特定のアミノ酸配列を有するペプチドが種々の物質と相互作用を示すことが知られている。
【0003】
例えばウイルス粒子の外皮には感染時に標的とする細胞に発現する受容体タンパクに親和性をもつペプチドが存在し、ウイルスの感染時に重要な役割を果たしている。良く知られている例にはHBV(B型肝炎ウイルス)のPreS1領域がある(非特許文献1)。PreS1はヒトの肝細胞に存在する受容体タンパクに結合することにより肝臓に感染し肝炎を引き起こす。また、この種のペプチドはファージデイスプレイライブラリー(非特許文献2〜6)よりスクリーニングして得ることができ、多くの例が報告されている(非特許文献7および8)。
【0004】
このようなペプチドのある物質に対する結合活性をリポソームのターゲッテイングに応用することができる。例えば標的とする部位に特異的に発現している物質(タンパク、レクチン、糖鎖など)に対し結合能を有するペプチドをスクリーニングし、リポソームの表面に提示させれば、リポソームを標的部位に集積させることができる。
【0005】
現在、このようなリポソームを用いた技術の開発が進められている(非特許文献9〜14、特許文献1〜4)が、実用的な技術はまだ開発されていない。
【特許文献1】特表2002-508301号
【特許文献2】特公平06-103306号
【特許文献3】特公平05-44626号
【特許文献4】特開昭63-106561号
【非特許文献1】Nir Paran,Arik Cooper and Yosef Shaul. Rev.Med.Virol.2003;13:137−143
【非特許文献2】Methods Enzymol. 1993;217:228−257(1996)
【非特許文献3】Anal. Biochem.238;1−3(1996)
【非特許文献4】Methods Enzymol.245;228−257(1994)
【非特許文献5】Pasqualini,R.,Koivunen,E.,and Ruoslahti,E,(1995)J.Cell.Biol. 130 1189−1196
【非特許文献6】Science 273:458−464(1996)
【非特許文献7】Nature Biotech 21;1040−1046(2003)
【非特許文献8】T.B.C.(1999)274;11593−11598.
【非特許文献9】Biochimica et Biophysica Acta, 987 (1989) 15-20
【非特許文献10】CANCER RESEARCH47, 5954-5959, November 15, 1987
【非特許文献11】Proc. Nati.Acad. Sci. USA Vol. 85, pp. 8027-8031, November 1988
【非特許文献12】Cytotechnology(2005) 47:51-57
【非特許文献13】Journal of Biotechnology75 (1999) 23-31
【非特許文献14】EXPERIMENTALCELL RESEARCH 200,333-338 (1992)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、バイオテクノロジー、特に分子イメージングにおいて応用し得る診断用の細胞・組織センシングプローブとして利用できる新規なリポソームを提供することにある。
【0007】
本発明の別の課題は、抗体を効率よくリポソームの表面に結合させるのに有用なリポソームの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明者等は鋭意研究の結果、予想外に従来適切と思われていた濃度よりも低い濃度の抗体溶液を用いて、抗体を効率よくリポソームの表面に結合させることができる方法を見いだし、本発明を完成させるに至ったものである。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、以下の手段を提供する。
(項目1) (A)リポソームと、
(B)該リポソームに結合した血清アルブミンと、
(C)該リポソーム表面の血清アルブミンに結合したスペーサーと、
(D)該スペーサーに結合した抗体と
を含む、抗体修飾リポソーム。
(項目2)前記スペーサーが、以下の式:
−[CRn1Rn2]n−[S−S]r−[CRm1Rm2]m−
で表される構造を有し、
該n、mおよびrは、独立して0以上の整数であり、ただし、n+m+rは1以上であり、
該Rn1および該Rn2は、独立して、水素もしくは置換基であるかまたは隣接する炭素との二重結合を意味するか、または該Rn1とRn2とが一緒になって=Oもしくは隣接する炭素との三重結合を意味するか、あるいは隣接する複数の炭素原子とアリール基を形成し、
該Rm1および該Rm2は、独立して、水素もしくは置換基であるかまたは隣接する炭素との二重結合を意味するか、または該Rm1と該Rm2とが一緒になって=Oであり、そして
は、独立して、水素であるか、またはRm1と一緒になって=Oもしくは隣接する炭素との三重結合を意味するか、あるいは隣接する複数の炭素原子とアリール基を形成し、
該置換基は、それぞれ独立して、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アルコキシ、炭素環基、ヘテロ環基、ハロゲン、ヒドロキシ、チオ−ル、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、アシル、チオカルボキシ、アミド、置換されたアミド、置換されたカルボニル、置換されたチオカルボニル、置換されたスルホニルおよび置換されたスルフィニルからなる群より選択される、
請求項1に記載の抗体修飾リポソーム。
(項目3)前記n+mは1〜20の整数であり、前記置換基は、アリール、カルボニル、アミノ、カルボキシおよびヒドロキシからなる群より選択される、請求項2に記載の抗体修飾リポソーム。
(項目4)前記血清アルブミンが、ヒト由来血清アルブミンである、請求項1に記載の抗体修飾リポソーム。
(項目5)前記抗体は、抗体全体またはその免疫原性フラグメントである、請求項1に記載の抗体修飾リポソーム。
(項目6)さらに標識物質を含む、請求項1に記載の抗体修飾リポソーム。
(項目7)前記抗体修飾リポソームに含まれるタンパク質量が、該抗体修飾リポソーム作製時の添加抗体量換算で約0.025mg/mL〜0.5mg/mLの範囲にある、請求項1に記載の抗体修飾リポソーム。
(項目8)前記抗体修飾リポソームに含まれるタンパク質量が、該抗体修飾リポソーム作製時の添加抗体量換算で約0.050mg/mL〜0.075mg/mLの範囲にある、請求項7に記載の方法。
(項目9)抗体修飾リポソームを製造する方法であって、該方法は、以下:
A)リポソームを提供する工程;
B)該リポソームと血清アルブミンとを、該リポソームと該血清アルブミンとが結合する条件下で接触させて、血清アルブミン結合リポソームを生成させる工程;および
C)該血清アルブミン結合リポソームと抗体とを、スペーサーの存在下で該血清アルブミンと該抗体とが該スペーサーを介して結合する条件下で接触させて、抗体修飾リポソームを生成させる工程
を包含する、方法。
(項目10)前記スペーサーが、以下の式:
−[CRn1Rn2]n−[S−S]r−[CRm1Rm2]m−
で表される構造を有し、
該n、mおよびrは、独立して0以上の整数であり、ただし、n+m+rは1以上であり、
該Rn1および該Rn2は、独立して、水素もしくは置換基であるかまたは隣接する炭素との二重結合を意味するか、または該Rn1とRn2とが一緒になって=Oもしくは隣接する炭素との三重結合を意味するか、あるいは隣接する複数の炭素原子とアリール基を形成し、
該Rm1および該Rm2は、独立して、水素もしくは置換基であるかまたは隣接する炭素との二重結合を意味するか、または該Rm1と該Rm2とが一緒になって=Oであり、そして
は、独立して、水素であるか、またはRm1と一緒になって=Oもしくは隣接する炭素との三重結合を意味するか、あるいは隣接する複数の炭素原子とアリール基を形成し、
該置換基は、それぞれ独立して、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アルコキシ、炭素環基、ヘテロ環基、ハロゲン、ヒドロキシ、チオ−ル、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、アシル、チオカルボキシ、アミド、置換されたアミド、置換されたカルボニル、置換されたチオカルボニル、置換されたスルホニルおよび置換されたスルフィニルからなる群より選択される、
請求項9に記載の方法。
(項目11)前記n+mは1〜20の整数であり、前記置換基は、アリール、カルボニル、アミノ、カルボキシおよびヒドロキシからなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
(項目12)前記リポソームが、標識物質を含む、請求項9に記載の方法。
(項目13)前記標識物質が、
【0010】
【化9】
【0011】
【化10】
Cy7、Cy3B、Cy3.5、Alexa Fluoro350、Alexa Fluoro488、Alexa Fluoro532、Alexa Fluoro546、Alexa Fluoro594、Alexa Fluoro633、Alexa Fluoro647、Alexa Fluoro680、Alexa Fluoro700、Alexa Fluoro750、フルオレセイン−4−イソチオシアネート(FITC)、ローダミンおよびカルセインからなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
(項目14)前記B)工程が、前記リポソームをトリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカンにより親水性化処理する工程を含む、請求項9に記載の方法。
(項目15)前記B)工程において、前記リポソームと該血清アルブミンとが結合する条件が、該リポソームを含む溶液に、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを添加し、20〜30℃で、2〜24時間にわたって攪拌し、親水性化状態にする条件である、請求項9に記載の方法。
(項目16)前記B)工程が、以下:
(B1)前記リポソームを含む溶液に、炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)溶液を添加し、20〜30℃で2〜24時間撹拌して、リポソーム粒子表面を親水性の状態にする工程;
(B2)(B1)工程において、粒子表面が親水性化されたリポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去し、該炭酸緩衝液をトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換する工程;
(B3)(B2)工程において、該緩衝液が該トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液に交換された溶液に、血清アルブミンを含むトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)を添加して20〜30℃で反応させて反応溶液を生成する工程;および
(B4)該反応溶液に、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS緩衝液、pH7.0〜9.0)を添加して、20〜30℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該血清アルブミンを除去し、該溶液の緩衝液をPBS緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換する工程を包含する、請求項9に記載の方法。
(項目17)前記(B)工程が、以下:
(B1−1)前記蛍光色素を内包したかまたは結合したリポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、該溶液中に含まれる緩衝液を炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)に交換する工程;
(B1−2)該(B1−1)工程において該緩衝液が該炭酸緩衝液に変換された溶液にビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去する工程;および
(B1−3)該(B1−2)工程において、該遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去した溶液に、0.5〜1mM トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)溶液を添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、さらに冷蔵〜室温で一晩撹拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを除去し、該炭酸緩衝液をN−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換して親水性化処理されたリポソームを含む溶液を生成させる工程
をさらに包含する、請求項9に記載の方法。
(項目18)前記C)工程が、以下:
(C1)該リポソームを含む溶液に、架橋剤を添加して、20〜30℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該架橋剤を除去する工程であって、該架橋剤は、3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート、ジチオビス[スクシンイミジルプロピオネート]、およびジスクシンイミジルスベレートからなる群より選択される;および
(C2)(C1)工程において、該遊離の該架橋剤を除去した溶液に、該抗体溶液を添加して、20〜30℃で反応させ、炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)を添加し、20〜30℃で2〜4時間撹拌し、分画分子量150K〜300Kで限外濾過し、遊離の該抗体と該架橋剤を除去する工程;および
(C3)(C2)工程において、遊離の該抗体と該架橋剤を除去した溶液の緩衝液を、炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)に交換する工程を包含する、
請求項9に記載の方法。
(項目19)前記架橋剤が、3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)である、請求項9に記載の方法。
(項目20)前記抗体が、抗体全体またはその免疫原性フラグメントである、請求項9に記載の方法。
(項目21)前記抗体修飾リポソームに含まれるタンパク質量が、該抗体修飾リポソーム作製時の添加抗体量換算で約0.025mg/mL〜0.5mg/mLの範囲にある、請求項9に記載の方法。
(項目22)前記抗体修飾リポソームに含まれるタンパク質量が、該抗体修飾リポソーム作製時の添加抗体量換算で約0.050mg/mL〜0.075mg/mLの範囲にある、請求項9に記載の方法。
(項目23)前記A)工程において提供されるリポソームが、標識物質として、
【0012】
【化11】
【0013】
【化12】
Cy7、Cy3B、Cy3.5、Alexa Fluoro350、Alexa Fluoro488、Alexa Fluoro532、Alexa Fluoro546、Alexa Fluoro594、Alexa Fluoro633、Alexa Fluoro647、Alexa Fluoro680、Alexa Fluoro700、Alexa Fluoro750、フルオレセイン−4−イソチオシアネート(FITC)、ローダミンおよびカルセインからなる群より選択される標識物質を含み、
前記リポソームをトリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカンにより親水性化処理する工程をさらに包含し、
前記B)工程が、以下:
(B1−1)前記蛍光色素を内包したかまたは結合したリポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、該溶液中に含まれる緩衝液を炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)に交換する工程;
(B1−2)該(B1−1)工程において該緩衝液が該炭酸緩衝液に変換された溶液にビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去する工程;および
(B1−3)該(B1−2)工程において、該遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去した溶液に、0.5〜1mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)溶液を添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、さらに冷蔵〜室温で一晩撹拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを除去し、該炭酸緩衝液をN−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換して親水性化処理されたリポソームを含む溶液を生成させる工程を包含する、工程;
(B2)(B1)工程において、粒子表面が親水性化されたリポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去し、該炭酸緩衝液をトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換する工程;
(B3)(B2)工程において、該緩衝液が該トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液に交換された溶液に、血清アルブミンを含むトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)を添加して20〜30℃で反応させて反応溶液を生成する工程;および
(B4)該反応溶液に、PBS緩衝液(pH7.0〜9.0)を添加して、20〜30℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該血清アルブミンを除去し、該溶液の緩衝液をPBS緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換する工程を包含する工程であり、そして
前記C)工程が、以下:
(C1)該リポソームを含む溶液に、3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)を添加して、20〜30℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)を除去する工程;および
(C2)(C1)工程において、該遊離の該3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)を除去した溶液に、該抗E−セレクチン抗体溶液を添加して、20〜30℃で反応させ、炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)を添加し、20〜30℃で2〜4時間撹拌し、分画分子量150K〜300Kで限外濾過し、遊離の該抗体と該3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)を除去する工程;および
(C3)(C2)工程において、遊離の該抗体と該3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)を除去した溶液の緩衝液を、炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)に交換する工程を包含する工程であって、
ここで、該抗体は、抗EGFR抗体、IgG、抗E−セレクチン抗体および抗p−セレクチン抗体からなる群より選択され、かつ該抗体を含む溶液には、該抗体が0.05〜1/mLの範囲で含まれる、請求項9に記載の方法。
(項目24)抗体修飾リポソームを製造する方法であって、該方法は、以下:
a)リポソームを提供する工程;
b)該リポソームとプロテインAとを、該リポソームと該プロテインAとが結合する条件下で接触させる工程;および
c)該プロテインAが結合したリポソームと抗体とを、該プロテインAと該抗体とが直接結合する条件下で接触させる工程
を包含する、方法。
(項目25)前記リポソームが、標識物質として、
【0014】
【化13】
【0015】
【化14】
Cy7、Cy3B、Cy3.5、Alexa Fluoro350、Alexa Fluoro488、Alexa Fluoro532、Alexa Fluoro546、Alexa Fluoro594、Alexa Fluoro633、Alexa Fluoro647、Alexa Fluoro680、Alexa Fluoro700、Alexa Fluoro750、フルオレセイン−4−イソチオシアネート(FITC)、ローダミンおよびカルセインからなる群より選択される標識物質を含む、請求項24に記載の方法。
(項目26)前記b)工程が、前記リポソームをトリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカンにより親水性化処理する工程を含む、請求項24に記載の方法。
(項目27)前記b)工程が、以下:
(b1−1)前記リポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、該溶液中に含まれる緩衝液を炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)に交換する工程;
(b1−2)該(b1−1)工程において該緩衝液が該炭酸緩衝液に変換された溶液にビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去する工程;および
(b1−3)該(b1−2)工程において、該遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去した溶液に、0.5〜1mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)溶液を添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、さらに冷蔵〜室温で一晩撹拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを除去し、該炭酸緩衝液をN−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換して親水性化処理されたリポソームを含む溶液を生成させる工程を包含する、工程;
(b2)該親水性化したリポソームを含む溶液に、メタ過ヨウ素酸ナトリウム/N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)溶液を添加し、冷蔵〜室温で一晩撹拌して、リポソーム粒子表面を酸化する工程;
(b3)(b2)工程において、粒子表面が酸化されたリポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該メタ過ヨウ素酸ナトリウムを除去し、該N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液をPBS緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換する工程;
(b4)(b3)工程において、該緩衝液が該PBS緩衝液に交換された溶液に、プロテインA/PBS緩衝液(pH7.0〜9.0)を添加して冷蔵〜室温で反応させて反応溶液を生成する工程;
(b5)さらに、該反応溶液に、シアノホウ素酸ナトリウム/PBS緩衝液(pH7.0〜9.0)を添加して、冷蔵〜室温で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該シアノホウ素酸ナトリウムおよび該プロテインAを除去し該溶液の緩衝液を2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(pH6.8〜8.0)に交換する工程を包含する工程
を包含する、請求項24に記載の方法。
(項目28)前記c)工程が、以下:
(c1)前記リポソームを含む溶液に、抗体溶液を添加して、4〜30℃で反応させ、2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(pH6.8〜8.0)を添加し、4〜30℃で2時間〜一晩にわたり撹拌し、分画分子量150K〜300Kで限外濾過し、遊離の該抗体を除去する工程;および
(c2)(c1)工程において、遊離の該抗体を除去した溶液の緩衝液を、2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(pH6.8〜8.0)に交換する工程を包含する工程である、請求項21に記載の方法。
(項目29)前記抗体は、抗体全体またはその免疫原性フラグメントである、請求項24記載の方法。
(項目30)前記抗体を含む溶液には、前記抗体が0.025〜10mg/mLの範囲で含まれる、請求項24に記載の方法。
(項目31)抗体修飾リポソームを製造する方法であって、該方法は、以下:
a)リポソームを提供する工程;
b)該リポソームとプロテインAとを、該リポソームと該プロテインAとが結合する条件下で接触させる工程;および
c)該プロテインAが結合したリポソームと抗体とを、該プロテインAと該抗体とが直接結合する条件下で接触させる工程
を包含し、ここで
前記a)工程において提供されるリポソームが、標識物質として、
【0016】
【化15】
【0017】
【化16】
Cy7、Cy3B、Cy3.5、Alexa Fluoro350、Alexa Fluoro488、Alexa Fluoro532、Alexa Fluoro546、Alexa Fluoro594、Alexa Fluoro633、Alexa Fluoro647、Alexa Fluoro680、Alexa Fluoro700、Alexa Fluoro750、フルオレセイン−4−イソチオシアネート(FITC)、ローダミンおよびカルセインからなる群より選択される標識物質を含み、
前記b)工程が、以下:
(b1−1)該リポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、該溶液中に含まれる緩衝液を炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)に交換する工程;
(b1−2)該(b1−1)工程において該緩衝液が該炭酸緩衝液に変換された溶液にビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去する工程;および
(b1−3)該(b1−2)工程において、該遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去した溶液に、40mgトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)溶液を添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、さらに冷蔵〜室温で一晩撹拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを除去し、該炭酸緩衝液をN−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換して親水性化処理されたリポソームを含む溶液を生成させる工程を包含する、工程;
(b2)該親水性化したリポソームを含む溶液に、メタ過ヨウ素酸ナトリウム/N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)溶液を添加し、冷蔵〜室温で一晩撹拌して、リポソーム粒子表面を酸化する工程;
(b3)(b2)工程において、粒子表面が酸化されたリポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該メタ過ヨウ素酸ナトリウムを除去し、該N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液をPBS緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換する工程;
(b4)(b3)工程において、該緩衝液が該PBS緩衝液に交換された溶液に、プロテインA/PBS緩衝液(pH7.0〜9.0)を添加して冷蔵〜室温で反応させて反応溶液を生成する工程;
(b5)さらに、該反応溶液に、シアノホウ素酸ナトリウム/PBS緩衝液(pH7.0〜9.0)を添加して、冷蔵〜室温で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該シアノホウ素酸ナトリウムおよび該プロテインAを除去し該溶液の緩衝液を2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(pH6.8〜8.0)に交換する工程を包含する工程であり、そして
前記c)工程が、以下:
(c1)該リポソームを含む溶液に、抗体溶液を添加して、4〜30℃で反応させ、2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(pH6.8〜8.0)を添加し、4〜30℃で2時間〜一晩にわたり撹拌し、分画分子量150K〜300Kで限外濾過し、遊離の該抗体を除去する工程;および
(c2)(c1)工程において、遊離の該抗体を除去した溶液の緩衝液を、2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(pH6.8〜8.0)に交換する工程を包含する工程であって、
ここで、該抗体は、抗体全体またはその免疫原性フラグメントであり、かつ該抗体を含む溶液には、抗体が0.025〜0.5mg/mLの範囲で含まれる、方法。
【0018】
以下に、本発明の好ましい実施形態を示すが、当業者は本発明の説明および当該分野における周知慣用技術からその実施形態なnaga実施することができ、本発明が奏する作用および効果を容易に理解することが認識されるべきである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によって、抗体修飾リポソームならびにその製造法およびその利用法が提供される。本発明の抗体修飾リポソームは、低い濃度の抗体溶液を用いて、抗体を効率よくリポソームの表面に結合させることができるという予想外に顕著な効果を有する。本発明の抗体修飾リポソームは、標識などを含めることにより、診断薬としても利用可能である。このような効果は、本発明によって初めて提供されるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当上記分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0021】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を適宜説明する。
【0022】
本明細書において、用語「抗体」とは、免疫原である抗原によって惹起された特異的なアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子をいう。抗体は、B細胞により生産され、血液、体液中に存在する。抗体は、抗原と特異的に反応するという特徴を有する。抗体は、抗原の呈示による刺激の結果としてではなく自然に存在する場合もあり得る。基本的には、抗体の分子構造は各2本の軽鎖と重鎖とから形成されるが、二量体、三量体、五量体としても存在し得る。これらとしては、例えば、IgA、IgE、IgM、IgG等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の抗体修飾リポソームにおいて使用される抗体は、臓器、疾患、免疫細胞等に特異的に発現する抗原に対する抗体が挙げられ得る。好ましくは、例えば、炎症血管内皮に発現するE−セレクチン、p−セレクチンに対する抗体であり得るが、これらに限定されない。1つの実施形態において、本発明の抗体リポソームにおいて使用され得る抗体は、例えば、抗EGFR抗体、IgGであり得る。本明細書において「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、および抗イディオタイプ抗体、ならびにそれらの断片、例えばF(ab’)2およびFab断片、ならびにその他の組換えにより生産された結合体を含む。さらにこのような抗体を、酵素、例えばアルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、αガラクトシダーゼなど、に共有結合させまたは組換えにより融合させてよい。
【0023】
本明細書において使用される場合「添加抗体量」とは、添加した抗体の最終濃度をいう。例えば、抗体修飾リポソーム作製時では、リポソームと抗体溶液とを反応させるときの抗体の最終濃度をいう。スペーサーを介した抗体修飾リポソームの場合には、この添加抗体量は、スペーサーの結合したリポソームと抗体溶液の反応時の抗体濃度をいう。本明細書において、この「添加抗体量」は「抗体量」とも称され得る。
【0024】
本明細書において使用される場合、タンパク質量の「添加抗体量換算」とは、抗体修飾リポソーム作製時の、抗体溶液の最終濃度で換算した場合のタンパク質量をいう。
【0025】
(リポソーム)
本明細書において「リポソーム」とは、通常、膜状に集合した脂質層および内部の水層から構成される閉鎖小胞を意味する。代表的に使用されるリン脂質のほか、コレステロール、糖脂質などを組み込ませることも可能である。リポソームは内部に水を含んだ閉鎖小胞であるため、水溶性の薬剤などを小胞内に保持させることも可能である。したがって、このようなリポソームによって、細胞膜を通過しえない薬物や遺伝子などを細胞内に送達するのに使われる。また、生体適合性も良いのでDDS用のナノ粒子性キャリア材料としての期待が大きい。本発明において、リポソームは、修飾基を付するために、エステル結合を付与する官能基を有する構成単位(例えば、糖脂質、ガングリオシド、ホスファチジルグリセロールなど)またはペプチド結合を付与する官能基を有する構成単位(例えば、ホスファチジルエタノールアミン)を有し得る。
【0026】
リポソームは、当該分野において公知の任意の手法(例えば、コール酸透析法、薄膜法、逆層蒸発法、エタノール注入法、脱水−再水和法等)により製造することができる。例えば、その中でもコール酸透析法による方法が挙げられる。コール酸透析法では、a)脂質と界面活性剤の混合ミセルの調製、およびb)混合ミセルの透析により製造を実施する。
【0027】
また、超音波照射法、エクストルージョン法、フレンチプレス法、ホモジナイゼーション法等を用いて、リポソームの粒子径を調節することも可能である。本発明のリポソーム自体の製法について、具体的に述べると、例えば、まず、ホスファチジルコリン類、コレステロール、ホスファチジルエタノールアミン類、ホスファチジン酸類、ガングリオシド類、糖脂質類もしくはホスファチジルグリセロール類を配合成分とする脂質と界面活性剤コール酸ナトリウムとの混合ミセルを調製する。とりわけ、ホスファチジン酸類もしくはジセチルホスフェート等の長鎖アルキルリン酸塩類の配合は、リポソームを負に荷電させるために必須であり、ホスファチジルエタノールアミン類の配合は親水性化反応部位として、ガングリオシド類または糖脂質類またはホスファチジルグリセロール類の配合はリンカーの結合部位として必須のものである。ガングリオシド類、糖脂質類、ホスファチジルグリセロール類、スフィンゴミエリン類およびコレステロール類からなる群から選択される少なくとも1種の脂質はリポソーム中で集合し、リンカーを結合させる足場(ラフト)として機能する。本発明のリポソームは、このようなタンパク質を結合させうるラフトが形成されることによりさらに安定化される。すなわち、本発明のリポソームは、リンカーを結合させるためのガングリオシド、糖脂質、ホスファチジルグリセロール類、スフィンゴミエリン類およびコレステロール類からなる群から選択される少なくとも、1種の脂質のラフトが形成されたリポソームを含む。そして、これにより得られる混合ミセルの限外濾過を行うことによりリポソームを作製する。本発明において使用するリポソームは、通常のものでも使用できるが、その表面は親水性化されていることが望ましい。上述のようにしてリポソームを作製した後にリポソーム表面を親水性化する。
【0028】
本発明のリポソームは、例えば、リポソームの構成脂質が、ホスファチジルコリン類(モル比0〜15%)、ホスファチジルエタノールアミン類(モル比0〜10%)、ホスファチジン酸類、および長鎖アルキルリン酸塩からなる群から選択される1種以上の脂質(モル比0〜10%)、糖脂質類、ホスファチジルグリセロール類およびスフィンゴミエリン類からなる群から選択される1種以上の脂質(モル比0〜40%)、ならびにコレステロール類(モル比0〜30%)を含むリポソームである。
【0029】
本明細書において使用される場合、用語「脂質」とは、長鎖の脂肪族炭化水素またはその誘導体をいう。「脂質」は、例えば、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、アルデヒドなどの形態をとることができる。
【0030】
本明細書において、リポソームを構成する脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン類、ホスファチジルエタノールアミン類、ホスファチジン酸類、長鎖アルキルリン酸塩類、糖脂質類(ガングリオシド類など)、ホスファチジルグリセロール類、スフィンゴミエリン類、コレステロール類等が挙げられる。
【0031】
ホスファチジルコリン類としては、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン等が挙げられる。
【0032】
ホスファチジルエタノールアミン類としては、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン等が挙げられる。
【0033】
ホスファチジン酸類としては、ジミリストイルホスファチジン酸、ジパルミトイルホスファチジン酸、ジステアロイルホスファチジン酸が挙げられる。長鎖アルキルリン酸塩類としてはジセチルホスフェート等が挙げられる。
【0034】
糖脂質類としては、ガラクトシルセラミド、グルコシルセラミド、ラクトシルセラミド、ホスフナチド、グロボシド、ガングリオシド類等が挙げられる。ガングリオシド類としては、ガングリオシドGM1(Galβ1,3GalNAcβ1,4(NeuAα2,3)Galβ1,4Glcβ1,1’Cer)、ガングリオシドGDla、ガングリオシドGTlb等が挙げられる。
【0035】
ホスファチジルグリセロール類としては、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロ−ル、ジステアロイルホスファチジルグリセロール等が好ましい。
【0036】
このうち、ホスファチジン酸類、長鎖アルキルリン酸塩類、糖脂質類、およびコレステロール類はリポソームの安定性を上昇させる効果を有するので、構成脂質として添加するのが望ましい。例えば、本発明において、リポソームを構成する脂質としては、ホスファチジルコリン類(モル比0〜15%)、ホスファチジルエタノールアミン類(モル比0〜10%)、ホスファチジン酸類、および長鎖アルキルリン酸塩からなる群から選択される1種以上の脂質(モル比0〜10%)、糖脂質類、ホスファチジルグリセロール類およびスフィンゴミエリン類からなる群から選択される1種以上の脂質(モル比0〜40%)、ならびにコレステロール類(モル比0〜30%)を含むものが挙げられる。
【0037】
(抗体修飾リポソーム)
本明細書において「抗体修飾リポソーム」とは、抗体とリポソームとを含む物質をいい、好ましくは、抗体が直接または間接的に結合することによって修飾されたリポソームをいう。
【0038】
本明細書において「スペーサー」とは、抗体とリポソームを架橋できる物質、例えば、血清アルブミン、プロテインA、その他タンパク質、2価の架橋剤などをいう。
【0039】
抗体と血清アルブミンを共役するのに適する広範なスペーサーは、その骨格に−(CH2)1−〜−(CH2)n−(n=20程度)の原子を有するのが好ましい。このようなジラジカル(diradical)スペーサーは、任意に置換されていてもよく、鎖内に、二重結合、ジスルフィド結合、三重結合、アリール基、ヘテロ原子を含有し得る。1つの実施形態では、このスペーサー基は、1またはそれ以上の炭素を任意に有し得、各炭素は、置換されていても置換されていなくてもよく、鎖中の結合は任意に飽和又は不飽和であり、分岐状または直鎖状であってもよい。スペーサー化合物は、その鎖中の炭素原子がN、OまたはSで置換されていてもよい。好ましくは、C1〜C20の鎖であり、好ましくは置換され得る置換基としては、アリール、カルボニル、アミノ、カルボキシ、ヒドロキシなどを挙げることができる。スペーサーとしては非常に広い範囲のものを選択することができ、架橋を目的とする標的によって変動し、当業者は本明細書の記載に基づき、本発明を実施するにおいて適切にスペーサーを選択することができる。
【0040】
本明細書においては、特に言及がない限り、置換は、ある有機化合物または置換基中の1または2以上の水素原子を他の原子または原子団で置き換えるか、または二重結合もしくは三重結合とすることをいう。水素原子を1つ除去して1価の置換基に置換するかまたは単結合と一緒にして二重結合とすることも可能であり、そして水素原子を2つ除去して2価の置換基に置換するか、または単結合と一緒にして三重結合とすることも可能である。
【0041】
本発明における置換基としては、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アルコキシ、炭素環基、ヘテロ環基、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、カルバモイル、アシル、アシルアミノ、チオカルボキシ、アミド、置換されたカルボニル、置換されたチオカルボニル、置換されたスルホニルまたは置換されたスルフィニルが挙げられるがそれらに限定されない。このような置換基は、本発明において、アミノ酸の設計のときに、適宜利用することができる。
【0042】
好ましくは、置換基は、複数存在する場合それぞれ独立して、水素原子またはアルキルであり得るが、複数の置換基全てが水素原子であることはない。より好ましくは、独立して、置換基は、複数存在する場合それぞれ独立して、水素およびC1〜C6アルキルからなる群より選択され得る。置換基は、すべてが水素以外の置換基を有していても良いが、好ましくは、少なくとも1つの水素、より好ましくは、2〜n(ここでnは置換基の個数)の水素を有し得る。置換基のうち水素の数が多いことが好ましくあり得る。大きな置換基または極性のある置換基は本発明の効果(特に、アルデヒド基との相互作用)に障害を有し得るからである。従って、水素以外の置換基としては、好ましくは、C1〜C6アルキル、C1〜C5アルキル、C1〜C4アルキル、C1〜C3アルキル、C1〜C2アルキル、メチルなどであり得る。ただし、本発明の効果を増強し得ることもあることから、大きな置換基を有することもまた好ましくあり得る。
【0043】
本明細書において、C1、C2、、、Cnは、炭素数を表す。従って、C1は炭素数1個の置換基を表すために使用される。
【0044】
本明細書において「アルキル」とは、メタン、エタン、プロパンのような脂肪族炭化水素(アルカン)から水素原子が一つ失われて生ずる1価の基をいい、一般にCnH2n+1−で表される(ここで、nは正の整数である)。アルキルは、直鎖または分枝鎖であり得る。本明細書において「置換されたアルキル」とは、以下に規定する置換基によってアルキルのHが置換されたアルキルをいう。これらの具体例は、C1〜C2アルキル、C1〜C3アルキル、C1〜C4アルキル、C1〜C5アルキル、C1〜C6アルキル、C1〜C7アルキル、C1〜C8アルキル、C1〜C9アルキル、C1〜C10アルキル、C1〜C11アルキルまたはC1〜C12アルキル、C1〜C2置換されたアルキル、C1〜C3置換されたアルキル、C1〜C4置換されたアルキル、C1〜C5置換されたアルキル、C1〜C6置換されたアルキル、C1〜C7置換されたアルキル、C1〜C8置換されたアルキル、C1〜C9置換されたアルキル、C1〜C10置換されたアルキル、C1〜C11置換されたアルキルまたはC1〜C12置換されたアルキルであり得る。ここで、例えばC1〜C10アルキルとは、炭素原子を1〜10個有する直鎖または分枝状のアルキルを意味し、メチル(CH3−)、エチル(C2H5−)、n−プロピル(CH3CH2CH2−)、イソプロピル((CH3)2CH−)、n−ブチル(CH3CH2CH2CH2−)、n−ペンチル(CH3CH2CH2CH2CH2−)、n−ヘキシル(CH3CH2CH2CH2CH2CH2−)、n−ヘプチル(CH3CH2CH2CH2CH2CH2CH2−)、n−オクチル(CH3CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2−)、n−ノニル(CH3CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2−)、n−デシル(CH3CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2−)、−C(CH3)2CH2CH2CH(CH3)2、−CH2CH(CH3)2などが例示される。また、例えば、C1〜C10置換されたアルキルとは、C1〜C10アルキルであって、そのうち1または複数の水素原子が置換基により置換されているものをいう。
【0045】
本明細書において「置換されていてもよいアルキル」とは、上で定義した「アルキル」または「置換されたアルキル」のいずれであってもよいことを意味する。
【0046】
本明細書において「アルキレン」とは、メチレン、エチレン、プロピレンのような脂肪族炭化水素(アルカン)から水素原子が二つ失われて生ずる2価の基をいい、一般に−CnH2n−で表される(ここで、nは正の整数である)。アルキレンは、直鎖または分枝鎖であり得る。本明細書において「置換されたアルキレン」とは、以下に規定する置換基によってアルキレンのHが置換されたアルキレンをいう。これらの具体例は、C1〜C2アルキレン、C1〜C3アルキレン、C1〜C4アルキレン、C1〜C5アルキレン、C1〜C6アルキレン、C1〜C7アルキレン、C1〜C8アルキレン、C1〜C9アルキレン、C1〜C10アルキレン、C1〜C11アルキレンまたはC1〜C12アルキレン、C1〜C2置換されたアルキレン、C1〜C3置換されたアルキレン、C1〜C4置換されたアルキレン、C1〜C5置換されたアルキレン、C1〜C6置換されたアルキレン、C1〜C7置換されたアルキレン、C1〜C8置換されたアルキレン、C1〜C9置換されたアルキレン、C1〜C10置換されたアルキレン、C1〜C11置換されたアルキレンまたはC1〜C12置換されたアルキレンであり得る。ここで、例えばC1〜C10アルキレンとは、炭素原子を1〜10個有する直鎖または分枝状のアルキレンを意味し、メチレン(−CH2−)、エチレン(−C2H4−)、n−プロピレン(−CH2CH2CH2−)、イソプロピレン(−(CH3)2C−)、n−ブチレン(−CH2CH2CH2CH2−)、n−ペンチレン(−CH2CH2CH2CH2CH2−)、n−ヘキシレン(−CH2CH2CH2CH2CH2CH2−)、n−ヘプチレン(−CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2−)、n−オクチレン(−CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2−)、n−ノニレン(−CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2−)、n−デシレン(−CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2−)、−CH2C(CH3)2−などが例示される。また、例えば、C1〜C10置換されたアルキレンとは、C1〜C10アルキレンであって、そのうち1または複数の水素原子が置換基により置換されているものをいう。本明細書において「アルキレン」は、酸素原子および硫黄原子から選択される原子を1またはそれ以上含んでいてもよい。
【0047】
本明細書において「置換されていてもよいアルキレン」とは、上で定義した「アルキレン」または「置換されたアルキレン」のいずれであってもよいことを意味する。
【0048】
本明細書において「シクロアルキル」とは、環式構造を有するアルキルをいう。「置換されたシクロアルキル」とは、以下に規定する置換基によってシクロアルキルのHが置換されたシクロアルキルをいう。具体例としては、C3〜C4シクロアルキル、C3〜C5シクロアルキル、C3〜C6シクロアルキル、C3〜C7シクロアルキル、C3〜C8シクロアルキル、C3〜C9シクロアルキル、C3〜C10シクロアルキル、C3〜C11シクロアルキル、C3〜C12シクロアルキル、C3〜C4置換されたシクロアルキル、C3〜C5置換されたシクロアルキル、C3〜C6置換されたシクロアルキル、C3〜C7置換されたシクロアルキル、C3〜C8置換されたシクロアルキル、C3〜C9置換されたシクロアルキル、C3〜C10置換されたシクロアルキル、C3〜C11置換されたシクロアルキルまたはC3〜C12置換されたシクロアルキルであり得る。例えば、シクロアルキルとしては、シクロプロピル、シクロヘキシルなどが例示される。
【0049】
本明細書において「置換されていてもよいシクロアルキル」とは、上で定義した「シクロアルキル」または「置換されたシクロアルキル」のいずれであってもよいことを意味する。
【0050】
本明細書において「アルケニル」とは、分子内に二重結合を一つ有する脂肪族炭化水素から水素原子が一つ失われて生ずる1価の基をいい、一般にCnH2n−1−で表される(ここで、nは2以上の正の整数である)。「置換されたアルケニル」とは、以下に規定する置換基によってアルケニルのHが置換されたアルケニルをいう。具体例としては、C2〜C3アルケニル、C2〜C4アルケニル、C2〜C5アルケニル、C2〜C6アルケニル、C2〜C7アルケニル、C2〜C8アルケニル、C2〜C9アルケニル、C2〜C10アルケニル、C2〜C11アルケニルまたはC2〜C12アルケニル、C2〜C3置換されたアルケニル、C2〜C4置換されたアルケニル、C2〜C5置換されたアルケニル、C2〜C6置換されたアルケニル、C2〜C7置換されたアルケニル、C2〜C8置換されたアルケニル、C2〜C9置換されたアルケニル、C2〜C10置換されたアルケニル、C2〜C11置換されたアルケニルまたはC2〜C12置換されたアルケニルであり得る。ここで、例えばC2〜C10アルキルとは、炭素原子を2〜10個含む直鎖または分枝状のアルケニルを意味し、ビニル(CH2=CH−)、アリル(CH2=CHCH2−)、CH3CH=CH−などが例示される。また、例えば、C2〜C10置換されたアルケニルとは、C2〜C10アルケニルであって、そのうち1または複数の水素原子が置換基により置換されているものをいう。
【0051】
本明細書において「置換されていてもよいアルケニル」とは、上で定義した「アルケニル」または「置換されたアルケニル」のいずれであってもよいことを意味する。
【0052】
本明細書において「アルケニレン」とは、分子内に二重結合を一つ有する脂肪族炭化水素から水素原子が二つ失われて生ずる2価の基をいい、一般に−CnH2n−2−で表される(ここで、nは2以上の正の整数である)。「置換されたアルケニレン」とは、以下に規定する置換基によってアルケニレンのHが置換されたアルケニレンをいう。具体例としては、C2〜C25アルケニレンまたはC2〜C25置換されたアルケニレンが挙げられ、なかでも特にC2〜C3アルケニレン、C2〜C4アルケニレン、C2〜C5アルケニレン、C2〜C6アルケニレン、C2〜C7アルケニレン、C2〜C8アルケニレン、C2〜C9アルケニレン、C2〜C10アルケニレン、C2〜C11アルケニレンまたはC2〜C12アルケニレン、C2〜C3置換されたアルケニレン、C2〜C4置換されたアルケニレン、C2〜C5置換されたアルケニレン、C2〜C6置換されたアルケニレン、C2〜C7置換されたアルケニレン、C2〜C8置換されたアルケニレン、C2〜C9置換されたアルケニレン、C2〜C10置換されたアルケニレン、C2〜C11置換されたアルケニレンまたはC2〜C12置換されたアルケニレンが好ましい。ここで、例えばC2〜C10アルキルとは、炭素原子を2〜10個含む直鎖または分枝状のアルケニレンを意味し、−CH=CH−、−CH=CHCH2−、−(CH3)C=CH−などが例示される。また、例えば、C2〜C10置換されたアルケニレンとは、C2〜C10アルケニレンであって、そのうち1または複数の水素原子が置換基により置換されているものをいう。本明細書において「アルケニレン」は、酸素原子および硫黄原子から選択される原子を1またはそれ以上含んでいてもよい。
【0053】
本明細書において「置換されていてもよいアルケニレン」とは、上で定義した「アルケニレン」または「置換されたアルケニレン」のいずれであってもよいことを意味する。
【0054】
本明細書において「シクロアルケニル」とは、環式構造を有するアルケニルをいう。「置換されたシクロアルケニル」とは、以下に規定する置換基によってシクロアルケニルのHが置換されたシクロアルケニルをいう。具体例としては、C3〜C4シクロアルケニル、C3〜C5シクロアルケニル、C3〜C6シクロアルケニル、C3〜C7シクロアルケニル、C3〜C8シクロアルケニル、C3〜C9シクロアルケニル、C3〜C10シクロアルケニル、C3〜C11シクロアルケニル、C3〜C12シクロアルケニル、C3〜C4置換されたシクロアルケニル、C3〜C5置換されたシクロアルケニル、C3〜C6置換されたシクロアルケニル、C3〜C7置換されたシクロアルケニル、C3〜C8置換されたシクロアルケニル、C3〜C9置換されたシクロアルケニル、C3〜C10置換されたシクロアルケニル、C3〜C11置換されたシクロアルケニルまたはC3〜C12置換されたシクロアルケニルであり得る。例えば、好ましいシクロアルケニルとしては、1−シクロペンテニル、2−シクロヘキセニルなどが例示される。
【0055】
本明細書において「置換されていてもよいシクロアルケニル」とは、上で定義した「シクロアルケニル」または「置換されたシクロアルケニル」のいずれであってもよいことを意味する。
【0056】
本明細書において「アルキニル」とは、アセチレンのような、分子内に三重結合を一つ有する脂肪族炭化水素から水素原子が一つ失われて生ずる1価の基をいい、一般にCnH2n−3−で表される(ここで、nは2以上の正の整数である)。「置換されたアルキニル」とは、以下に規定する置換基によってアルキニルのHが置換されたアルキニルをいう。具体例としては、C2〜C3アルキニル、C2〜C4アルキニル、C2〜C5アルキニル、C2〜C6アルキニル、C2〜C7アルキニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C9アルキニル、C2〜C10アルキニル、C2〜C11アルキニル、C2〜C12アルキニル、C2〜C3置換されたアルキニル、C2〜C4置換されたアルキニル、C2〜C5置換されたアルキニル、C2〜C6置換されたアルキニル、C2〜C7置換されたアルキニル、C2〜C8置換されたアルキニル、C2〜C9置換されたアルキニル、C2〜C10置換されたアルキニル、C2〜C11置換されたアルキニルまたはC2〜C12置換されたアルキニルであり得る。ここで、例えば、C2〜C10アルキニルとは、例えば炭素原子を2〜10個含む直鎖または分枝状のアルキニルを意味し、エチニル(CH≡C−)、1−プロピニル(CH3C≡C−)などが例示される。また、例えば、C2〜C10置換されたアルキニルとは、C2〜C10アルキニルであって、そのうち1または複数の水素原子が置換基により置換されているものをいう。
【0057】
本明細書において「置換されていてもよいアルキニル」とは、上で定義した「アルキニル」または「置換されたアルキニル」のいずれであってもよいことを意味する。
【0058】
本明細書において「アルコキシ」とは、アルコール類のヒドロキシ基の水素原子が失われて生ずる1価の基をいい、一般にCnH2n+1O−で表される(ここで、nは1以上の整数である)。「置換されたアルコキシ」とは、以下に規定する置換基によってアルコキシのHが置換されたアルコキシをいう。具体例としては、C1〜C2アルコキシ、C1〜C3アルコキシ、C1〜C4アルコキシ、C1〜C5アルコキシ、C1〜C6アルコキシ、C1〜C7アルコキシ、C1〜C8アルコキシ、C1〜C9アルコキシ、C1〜C10アルコキシ、C1〜C11アルコキシ、C1〜C12アルコキシ、C1〜C2置換されたアルコキシ、C1〜C3置換されたアルコキシ、C1〜C4置換されたアルコキシ、C1〜C5置換されたアルコキシ、C1〜C6置換されたアルコキシ、C1〜C7置換されたアルコキシ、C1〜C8置換されたアルコキシ、C1〜C9置換されたアルコキシ、C1〜C10置換されたアルコキシ、C1〜C11置換されたアルコキシまたはC1〜C12置換されたアルコキシであり得る。ここで、例えば、C1〜C10アルコキシとは、炭素原子を1〜10個含む直鎖または分枝状のアルコキシを意味し、メトキシ(CH3O−)、エトキシ(C2H5O−)、n−プロポキシ(CH3CH2CH2O−)などが例示される。
【0059】
本明細書において「置換されていてもよいアルコキシ」とは、上で定義した「アルコキシ」または「置換されたアルコキシ」のいずれであってもよいことを意味する。
【0060】
本明細書において「ヘテロ環(基)」とは、炭素およびヘテロ原子をも含む環状構造を有する基をいう。ここで、ヘテロ原子は、O、SおよびNからなる群より選択され、同一であっても異なっていてもよく、1つ含まれていても2以上含まれていてもよい。ヘテロ環基は、芳香族系または非芳香族系であり得、そして単環式または多環式であり得る。ヘテロ環基は置換されていてもよい。
【0061】
本明細書において「置換されていてもよいヘテロ環(基)」とは、上で定義した「ヘテロ環(基)」または「置換されたヘテロ環(基)」のいずれであってもよいことを意味する。
【0062】
本明細書において「アルコール」とは、脂肪族炭化水素の1または2以上の水素原子をヒドロキシル基で置換した有機化合物をいう。本明細書においては、ROHとも表記される。ここで、Rは、アルキル基である。好ましくは、Rは、C1〜C6アルキルであり得る。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0063】
本明細書において「炭素環基」とは、炭素のみを含む環状構造を含む基であって、前記の「シクロアルキル」、「置換されたシクロアルキル」、「シクロアルケニル」、「置換されたシクロアルケニル」以外の基をいう。炭素環基は芳香族系または非芳香族系であり得、そして単環式または多環式であり得る。「置換された炭素環基」とは、以下に規定する置換基によって炭素環基のHが置換された炭素環基をいう。具体例としては、C3〜C4炭素環基、C3〜C5炭素環基、C3〜C6炭素環基、C3〜C7炭素環基、C3〜C8炭素環基、C3〜C9炭素環基、C3〜C10炭素環基、C3〜C11炭素環基、C3〜C12炭素環基、C3〜C4置換された炭素環基、C3〜C5置換された炭素環基、C3〜C6置換された炭素環基、C3〜C7置換された炭素環基、C3〜C8置換された炭素環基、C3〜C9置換された炭素環基、C3〜C10置換された炭素環基、C3〜C11置換された炭素環基またはC3〜C12置換された炭素環基であり得る。炭素環基はまた、C4〜C7炭素環基またはC4〜C7置換された炭素環基であり得る。炭素環基としては、フェニル基から水素原子が1個欠失したものが例示される。ここで、水素の欠失位置は、化学的に可能な任意の位置であり得、芳香環上であってもよく、非芳香環上であってもよい。
【0064】
本明細書において「置換されていてもよい炭素環基」とは、上で定義した「炭素環基」または「置換された炭素環基」のいずれであってもよいことを意味する。
【0065】
本明細書において「ヘテロ環基」とは、炭素およびヘテロ原子をも含む環状構造を有する基をいう。ここで,ヘテロ原子は、O、SおよびNからなる群より選択され、同一であっても異なっていてもよく、1つ含まれていても2以上含まれていてもよい。ヘテロ環基は、芳香族系または非芳香族系であり得、そして単環式または多環式であり得る。「置換されたヘテロ環基」とは、以下に規定する置換基によってヘテロ環基のHが置換されたヘテロ環基をいう。具体例としては、C3〜C4炭素環基、C3〜C5炭素環基、C3〜C6炭素環基、C3〜C7炭素環基、C3〜C8炭素環基、C3〜C9炭素環基、C3〜C10炭素環基、C3〜C11炭素環基、C3〜C12炭素環基、C3〜C4置換された炭素環基、C3〜C5置換された炭素環基、C3〜C6置換された炭素環基、C3〜C7置換された炭素環基、C3〜C8置換された炭素環基、C3〜C9置換された炭素環基、C3〜C10置換された炭素環基、C3〜C11置換された炭素環基またはC3〜C12置換された炭素環基の1つ以上の炭素原子をヘテロ原子で置換したものであり得る。ヘテロ環基はまた、C4〜C7炭素環基またはC4〜C7置換された炭素環基の炭素原子を1つ以上へテロ原子で置換したものであり得る。ヘテロ環基としては、チエニル基、ピロリル基、フリル基、イミダゾリル基、ピリジル基などが例示される。水素の欠失位置は、化学的に可能な任意の位置であり得、芳香環上であってもよく、非芳香環上であってもよい。
【0066】
本明細書において、炭素環基またはヘテロ環基は、下記に定義されるように1価の置換基で置換され得ることに加えて、2価の置換基で置換され得る。そのような二価の置換は、オキソ置換(=O)またはチオキソ置換(=S)であり得る。
【0067】
本明細書において「ハロゲン」とは、周期表7B族に属するフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)などの元素の1価の基をいう。
【0068】
本明細書において「ヒドロキシ」とは、−OHで表される基をいう。「置換されたヒドロキシ」とは、ヒドロキシのHが下記で定義される置換基で置換されているものをいう。
【0069】
本明細書において「チオール」とは、ヒドロキシ基の酸素原子を硫黄原子で置換した基(メルカプト基)であり、−SHで表される。「置換されたチオール」とは、メルカプトのHが下記で定義される置換基で置換されている基をいう。
【0070】
本明細書において「シアノ」とは、−CNで表される基をいう。「ニトロ」とは、−NO2で表される基をいう。「アミノ」とは、−NH2で表される基をいう。「置換されたアミノ」とは、アミノのHが以下で定義される置換基で置換されたものをいう。
【0071】
本明細書において「カルボキシ」とは、−COOHで表される基をいう。「置換されたカルボキシ」とは、カルボキシのHが以下に定義される置換基で置換されたものをいう。
【0072】
本明細書において「チオカルボキシ」とは、カルボキシ基の酸素原子を硫黄原子で置換した基をいい、−C(=S)OH、−C(=O)SHまたは−CSSHで表され得る。「置換されたチオカルボキシ」とは、チオカルボキシのHが以下に定義される置換基で置換されたものをいう。
【0073】
本明細書において「アシル」とは、カルボン酸からOHを除いてできる1価の基をいう。アシル基の代表例としては、アセチル(CH3CO−)、ベンゾイル(C6H5CO−)などが挙げられる。「置換されたアシル」とは、アシルの水素を以下に定義される置換基で置換したものをいう。
【0074】
本明細書において「アミド」とは、アンモニアの水素を酸基(アシル基)で置換した基であり、好ましくは、−CONH2で表される。「置換されたアミド」とは、アミドが置換されたものをいう。
【0075】
本明細書において「カルボニル」とは、アルデヒドおよびケトンの特性基である−(C=O)−を含むものを総称したものをいう。「置換されたカルボニル」は、下記において選択される置換基で置換されているカルボニル基を意味する。
【0076】
本明細書において「チオカルボニル」とは、カルボニルにおける酸素原子を硫黄原子に置換した基であり、特性基−(C=S)−を含む。チオカルボニルには、チオケトンおよびチオアルデヒドが含まれる。「置換されたチオカルボニル」とは、下記において選択される置換基で置換されたチオカルボニルを意味する。
【0077】
本明細書において「スルホニル」とは、特性基である−SO2−を含むものを総称したものをいう。「置換されたスルホニル」とは、下記において選択される置換基で置換されたスルホニルを意味する。
【0078】
本明細書において「スルフィニル」とは、特性基である−SO−を含むものを総称したものをいう。「置換されたスルフィニル」とは、下記において選択される置換基で置換されているスルフィニルを意味する。
【0079】
本明細書において「アリール」とは、芳香族炭化水素の環に結合する水素原子が1個離脱して生ずる基をいい、本明細書において、炭素環基に包含される。
【0080】
1つの実施形態において、このスペーサーは、以下の式:
−[CRn1Rn2]n−[S−S]r−[CRm1Rm2]m−
で表される構造を有し、
該n、mおよびrは、独立して0以上の整数であり、ただし、n+m+rは1以上であり、
該Rn1および該Rn2は、独立して、水素もしくは置換基であるかまたは隣接する炭素との二重結合を意味するか、または該Rn1とRn2とが一緒になって=Oもしくは隣接する炭素との三重結合を意味するか、あるいは隣接する複数の炭素原子とアリール基を形成し、
該Rm1および該Rm2は、独立して、水素もしくは置換基であるかまたは隣接する炭素との二重結合を意味するか、または該Rm1と該Rm2とが一緒になって=Oであり、そして
は、独立して、水素であるか、またはRm1と一緒になって=Oもしくは隣接する炭素との三重結合を意味するか、あるいは隣接する複数の炭素原子とアリール基を形成し、該置換基は、それぞれ独立して、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アルコキシ、炭素環基、ヘテロ環基、ハロゲン、ヒドロキシ、チオ−ル、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、アシル、チオカルボキシ、アミド、置換されたアミド、置換されたカルボニル、置換されたチオカルボニル、置換されたスルホニル、置換されたスルフィニルなどであり得る。
【0081】
本明細書において使用され得る好ましいスペーサーとしては、例えば、−CO−CH2−CH2−S−S−CH2−CH2−CO−、−CO−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CO−などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
スペーサの構造は、好ましくは、スペーサーの長さが、11〜12Å、両末端にスクシンイミジルプロピオネート構造あるいはスルホスクシンイミジルプロピオネート構造を有する構造であるが、該リポソーム上のHSAあるいは抗体のアミノ基と結合でき得る構造でありさえすればよい。
【0083】
本発明において、抗体とリポソームとを架橋するためには、例えば、ビススルホスクシンイミジルスベラート、ジスクシンイミジルグルタレート、ジチオビススクシンイミジルプロピオネート、ジスクシンイミジルスベラート、3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)、エチレングリコールビススクシンイミジルスクシネート、エチレングリコールビススルホスクシンイミジルスクシネート等の2価試薬などを使用することができる。
【0084】
本明細書において「プロテインA」とは、黄色ブドウ球菌細胞壁に由来する分子量42,000のタンパク質であり、IgGに結合するものをいう。プロテインAは、抗体の定常領域(Fcフラグメント)に結合するので抗原抗体反応を妨害しない。プロテインAは、IgGの動物種やサブクラスにより抗体との親和性に大きな違いを有する。
【0085】
本発明において、蛍光性は、抗体修飾リポソームの構成要素の少なくとも1つが蛍光性を有すること、または抗体修飾リポソームが新たに蛍光性を有する要素(例えば、蛍光色素)をさらに有することによって付与される。
【0086】
本発明において、「蛍光性」とは、例えば、蛍光色素、蛍光タンパク質(例えば、GFP、CFP、YFPなど)、発光酵素(例えば、ルシフェラーゼなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
蛍光性を有する要素としては、例えば、蛍光色素、蛍光タンパク質(例えば、GFP、CFP、YFPなど)、発光酵素(例えば、ルシフェラーゼなど)が挙げられるが、これらに限定されない。蛍光色素としては、例えば、
【0088】
【化17】
【0089】
【化18】
Cy7、Cy3B、Cy3.5、Alexa Fluoro350、Alexa Fluoro488、Alexa Fluoro532、Alexa Fluoro546、Alexa Fluoro594、Alexa Fluoro633、Alexa Fluoro647、Alexa Fluoro680、Alexa Fluoro700、Alexa Fluoro750、フルオレセイン−4−イソチオシアネート(FITC)、ローダミン、カルセイン、それらの組み合わせのような蛍光色素によって付与され得る。
【0090】
このような抗体修飾リポソームは、以下の方法によって製造され得る。具体的には、この方法は、A)リポソームを提供する工程;B)該リポソームと血清アルブミンとを、該リポソームと該血清アルブミンとが結合する条件下で接触させて、血清アルブミン結合リポソームを生成させる工程;およびC)該血清アルブミン結合リポソームと抗体とを、スペーサーの存在下で該血清アルブミンと該抗体とが該スペーサーを介して結合する条件下で接触させて、抗体修飾リポソームを生成させる工程を包含する。
【0091】
他の実施形態において、この方法は、a)リポソームを提供する工程;b)該リポソームとプロテインAとを、該リポソームと該プロテインAとが結合する条件下で接触させる工程;およびc)該プロテインAが結合したリポソームと抗体とを、該プロテインAと該抗体とが直接結合する条件下で接触させる工程を包含する。
【0092】
蛍光色素の結合または封入は、薬物をリポソーム中に結合または封入するために用いられる任意のものが使用される。例えば、蛍光標識されたリポソームを製造する方法は、リポソーム形成と同時に蛍光色素を内包させる工程を包含し得る。該リポソーム形成と同時に蛍光色素を内包させる工程では、超音波処理した溶液と蛍光標識溶液とを混合することにより、リポソームに蛍光性を付与することができる。好ましくは、この蛍光標識溶液は、1−(ε−カルボキシペンチル)−1’−エチル−3,3,3’,3’−テトラメチルインドカルボシアニン−5,5’−ジスルホネートカリウム塩−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(cy3)、1,1’−ビス(ε−カルボキシペンチル)−3,3,3’,3’−テトラメチルインドカルボシアニン−5,5’−ジスルホネートカリウム塩,ジ−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(cy5.5)を含み得る。
【0093】
本発明において使用される場合、「冷蔵(下)」とは、約1℃〜約12℃、好ましくは約2℃〜約8℃の範囲の温度をいう。本発明において使用される場合、「室温」とは、約15℃〜約30℃、好ましくは約20℃〜約25℃の範囲の温度をいう。
【0094】
本明細書において使用される用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされたものを包含し得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。
【0095】
本明細書では、特に言及するときは、「タンパク質」は、比較的大きな分子量を有するアミノ酸のポリマーまたはその改変体を指し、「ペプチド」というときは、比較的小さな分子量を有するアミノ酸のポリマーまたはその改変体を指すことがあることが理解されるべきである。そのような分子量としては、例えば、約30kDa、好ましくは約20kDa、より好ましくは約10kDaなどを挙げることができるがそれらに限定されない。
【0096】
本明細書中で使用される場合、「生体由来タンパク質」とは、生物に由来するタンパク質をいい、どの生物(例えば、任意の種類の多細胞生物(例えば、動物(例えば、脊椎動物、無脊椎動物)、植物(例えば、単子葉植物、双子葉植物など)など))由来のタンパク質でもよい。好ましくは、脊椎動物(例えば、メクラウナギ類、ヤツメウナギ類、軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物など)由来のタンパク質、より好ましくは、哺乳動物(例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目など)由来のタンパク質が用いられる。さらに好ましくは、霊長類(例えば、チンパンジー、ニホンザル、ヒト)由来のタンパク質が用いられる。最も好ましくは投与を目的とする生体由来のタンパク質が用いられる。本明細書において、生体由来タンパク質が別の物質と結合した状態を示す場合、生体由来タンパク質基と称される。
【0097】
本明細書で使用される場合「血清タンパク質」は、血液が自然に凝固したときに残る液体部分に含まれるタンパク質をいう。血清タンパク質としては、任意の動物のものを使用することができるが、ヒト由来のものが好ましい。本明細書において、ヒト由来タンパク質が別の物質と結合した状態を示す場合、ヒト由来タンパク質基と称される。
【0098】
本明細書で使用される場合、「血清アルブミン」は、血清中に含まれるアルブミンをいう。本明細書において、血清アルブミンが別の物質と結合した状態を示す場合、血清アルブミン基と称される。血清アルブミンとしては、たとえば、ウシ由来、ヒト由来のものなどを挙げることができる。好ましくは、ヒト由来のものが好ましい。狂牛病等のリスクを回避することができるからである。
【0099】
本発明における抗体修飾リポソームは、リポソーム膜またはリンカーの少なくとも一方が親水性化合物、好ましくは、トリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカンを結合させることにより親水性化されていてもよい。
【0100】
本明細書中で使用される場合、「親水性化」は、リポソーム表面に親水性化合物を結合させることをいう。親水性化に用いる化合物としては、低分子の親水性化合物、好ましくは少なくとも1つのOH基を有する低分子の親水性化合物、さらに好ましくは、少なくとも2つのOH基を有する低分子の親水性化合物が挙げられる。また、さらに少なくとも1つのアミノ基を有する低分子の親水性化合物、すなわち分子中に少なくとも1つのOH基と少なくとも1つのアミノ基を有する親水性化合物が挙げられる。親水性化合物は、低分子なので、抗体に対する立体障害となりにくく標的細胞膜面上の抗原認識反応の進行を妨げることはない。また、親水性化合物には、本発明の抗体修飾リポソームにおいて、特定の標的を指向するために用いられる抗体が結合し得る物質は含まれない。このような親水性化合物として、例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなどを含むトリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカン等のアミノアルコール類等が挙げられ、さらに具体的には、トリス(ヒドロキシメチノレ)アミノエタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノエタン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノエタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノプロパン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノプロパン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノプロパン等が挙げられる。
【0101】
本発明の物質または上で定義した官能基が置換基Rによって置換されている場合、そのような置換基Rは、単数または複数存在し、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アルコキシ、炭素環基、ヘテロ環基、ハロゲン、ヒドロキシ、チオ−ル、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、アシル、チオカルボキシ、アミド、置換されたアミド、置換されたカルボニル、置換されたチオカルボニル、置換されたスルホニルおよび置換されたスルフィニルからなる群より選択される。
【0102】
リポソームの親水性化は、従来公知の方法、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体等を共有結合により結合させたリン脂質を用いてリポソームを作成する方法(特開2000−302685号(例えば、CNDAC含有リポソーム製剤ジラウロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン;ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルグリセロール;スフィンゴミエリン;コレステロール;ポリエチレングリコール部分の分子量が約2000であるN−モノメトキシポリエチレングリコールサクシニル−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(以下、PEG2000−DSPEとする。);CNDAC塩酸塩、グルコース水溶液およびトレハロース水溶液を使用し、Banghamら(J.Mol.Biol.8、660−668(1964)参照。)の方法により、多重層リポソームの粗分散液を得た。)と記載されている。))等の方法を採用することによっても行うことができる。このうち、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを用いてリポソーム表面を親水性化することが特に好ましい。本発明のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを用いる手法は、ポリエチレングリコールなどを用いる従来の親水性化方法と比較していくつかの点で好ましい。例えば、本発明のように抗体をリポソーム上に結合してその分子認識機能を標的指向性に利用するものでは、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンは低分子量物質であるので従来のポリエチレングリコールなどの高分子量物質を用いる方法に比べて、抗体に対する立体障害となりにくく標的細胞膜面上の抗原による抗体分子認識反応の進行を妨げないので特に好ましい。
【0103】
また、本発明によるリポソームは該親水化処理後においても粒子径分布や成分組成、分散特性が良好であり、長時間の保存性や生体内安定性も優れているのでリポソーム製剤化して利用するために好ましい。トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを用いてリポソーム表面を親水性化するには、例えばジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン等の脂質を用いて、常法により得たリポソーム溶液にビススルホスクシンイミジルスベラート、ジスクシンイミジルグルタレート、ジチオビススクシンイミジルプロピオネート、ジスクシンイミジルスベラート、3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)、エチレングリコールビススクシンイミジルスクシネート、エチレングリコールビススルホスクシンイミジルスクシネート等の2価試薬を加えて反応させることにより、リポソーム膜上のジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン等の脂質に2価試薬を結合させ、次いでトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを、該2価試薬の−方の結合手と反応させることにより、リポソーム表面にトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを結合せしめる。
【0104】
このように、リポソームを親水性化処理したリポソームは、生体内で極めて安定である。本発明は、表面を低分子化合物で親水性化したリポソームをも包含する。
【0105】
本明細書において、リポソーム、抗体修飾リポソームのタンパク質量は、例えば、リポソームに内包されたHSA量とリポソーム表面にカップリングしたHSAの総タンパク質量をBCA法により測定することができる。
【0106】
【化19】
タンパク質量の測定は、例えば、Micro BCATM Protein Assay Reagentキット(カタログ番号23235BN)(PIERCE Co.LTD)などを用いることができる。標準物質として、2mg/mlアルブミン(BSA)を使用し得る。(1)スタンダード溶液として、標準物質(2mg/ml:アルブミン)をPBS緩衝液で希釈し、0、0.25、0.5、1、2、3、4、5μg/50μl溶液を調製する。(2)Cy3を内包した抗体修飾リポソームをPBS緩衝液で20倍希釈し、検体溶液を調製する。(3)スタンダード溶液、検体溶液をそれぞれ試験管に50μl分注する。(4)各試験管に3%ラウリル硫酸ナトリウム溶液(SDS溶液)を100μl添加する。(5)キットに添付された試薬A、B、Cを、試薬A:試薬B:試薬C=48:2:50となるように混合し、各試験管に150μl添加する。(6)この試験管を、60℃で1時間、静置する。(7)室温に戻ってから、吸光度540nmを測定し、スタンダード溶液により検量線を作成して、リポソームのタンパク質量を測定する。検量線の一例を図1に示す。
【0107】
抗体修飾リポソームのタンパク質量は、例えば、0.5〜2.0mg/mlの範囲であり得る。Cy3により標識された抗体修飾リポソームのタンパク質量は、例えば、0.7mg/ml以上であり得る。
【0108】
リポソーム、抗体修飾リポソームの構成脂質量は、例えば、コレステロール量を定量することにより算出することができる。
【0109】
<脂質定量の原理>
【0110】
【化20】
脂質の定量には、例えば、デタミナーTC555キット(カタログ番号UCC/EAN128)(KYOWA Co.LTD)を用いることができる。標準物質として、キットに添付されている50mg/ml コレステロールを使用する。(1)スタンダード溶液として、標準物質(50mg/ml:コレステロール)をPBS緩衝液で希釈し、0、0.1、0.25、0.5、0.75、1、5、10μg/20μl溶液を調製する。(2)Cy3を内包した抗体修飾リポソームをPBS緩衝液で5倍希釈し、検体溶液を調製する。(3)スタンダード溶液、検体溶液をそれぞれ試験管に20μl分注する。(4)各試験管に、TritonX−100(10%溶液)を17μl添加して撹拌し、その後、37℃、40分間、静置する。(5)デタミナーTC555キットの酵素試薬を300μl添加して撹拌し、その後、37℃、20分間、静置する。(6)吸光度540nmを測定し、スタンダード溶液により検量線(検定線の一例を作成して、リポソームのコレステロール量を測定し、脂質量を求める。
【0111】
コレステロール量から脂質量を求める換算式は、例えば、以下のように表される。
脂質量(μg/50μl)=コレステロール量(μg/50μl)×4.51(換算係数)
リポソーム中の脂質に対するタンパク質の割合は、例えば、上述のタンパク質定量および脂質定量の結果から導くことができる。本発明の抗体修飾リポソームは、好ましくは、脂質に対するタンパク質の割合が、約0.2〜0.5である。
【0112】
本発明の抗体修飾リポソームの脂質量は、例えば、3.0〜6.0mg/mlの範囲であり得る。Cy3により標識された抗体修飾リポソームの脂質量は、例えば、3.0mg/ml以上であり得る。
【0113】
リポソーム、抗体修飾リポソームの粒子径分布および粒子径は、例えば、リポソーム粒子を精製水で50倍に希釈して、ゼータサイザーナノ(Nan−ZS:MALVERN Co.LTD)を用いて測定することができる。
【0114】
本明細書において、リポソーム、抗体修飾リポソームは、粒度分布の最大域において、約80〜130nmの粒子径を有することが好ましい。なぜなら、約80〜130nmの粒子径は、マクロファージなどの免疫系細胞の認識を回避でき、そして肝臓や脾臓の内皮細網系(RES)からの取り込みをある程度回避することができるからである。約80〜130nmの粒子径の抗体修飾リポソームは、薬物を内包させ、その薬物を標的臓器、疾患部分に送達させるのに適している。
【0115】
本明細書において、リポソーム、抗体修飾リポソームは、約80〜130nmの平均粒子径を有し、好ましくは、約80〜120nm、より好ましくは、約100nmの粒子径を有する。なぜなら、リポソームの粒子径が小さすぎると、肝臓・脾臓の細胞内皮系に非特異的に入り、粒子径が大きすぎると、マクロファージなどの免疫系細胞に貪食されやすくなるからである。また、本発明のリポソームは、負に荷電していることが望ましい。負に荷電していることにより、生体中の負に荷電している細胞との相互作用を防ぐことができる。本発明のリポソーム表面のゼ−タ電位は、生理食塩水中において、37℃で、−30〜−90mV、好ましくは−40〜−80mV、さらに好ましくは−50〜−80mVである。リポソーム表面のゼータ電位は、25℃で、−30〜−90mVであり得るが、これらに限定されない。好ましくは、25℃で、−30mV未満である。リポソーム表面のゼータ電位は、室温(例えば、25℃)未満であっても、−30mV以上であってもよい。なぜなら、リポソーム間の凝集が生じさえしなければよいからである。
【0116】
本明細書において「処置または診断のための物質」とは、虚血を処置または診断するために用いられる物質をいう。処置または診断のための物質としては、例えば、虚血を処置または診断するのに有用な試薬もしくは薬物等、適切な処方材料または薬学的に受容可能なキャリア等が挙げられる。
【0117】
(組成物)
本発明の組成物は、必要に応じて、適切な処方材料または薬学的に受容可能なキャリアを含み得る。適切な処方材料または薬学的に受容可能なキャリアとしては、抗酸化剤、保存剤、着色料、蛍光色素、風味料、希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクルおよび/または薬学的アジュバントが挙げられるがそれらに限定されない。代表的には、本発明の組成物は、抗体修飾リポソーム、および必要に応じて他の有効成分を、少なくとも1つの生理的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈剤とともに含む組成物の形態で投与される。例えば、適切なビヒクルは、ミセル、注射溶液、生理的溶液、または人工脳脊髄液であり得、これらには、非経口送達のための組成物に一般的に使用される他の物質を補充することが可能である。
【0118】
本明細書で使用される受容可能なキャリア、賦形剤または安定化剤は、好ましくは、レシピエントに対して非毒性であり、そして好ましくは、使用される投薬量および濃度において不活性であり、好ましくは、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、または他の有機酸;アスコルビン酸、α−トコフェロール;低分子量ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン);モノサッカリド、ジサッカリドおよび他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリン);キレート剤(例えば、EDTA);糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール);塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);ならびに/あるいは非イオン性表面活性化剤(例えば、Tween、プルロニック(pluronic)またはポリエチレングリコール(PEG))などが挙げられる。
【0119】
例示の適切なキャリアとしては、中性緩衝化生理食塩水、または血清アルブミンと混合された生理食塩水が挙げられる。好ましくは、その生成物は、適切な賦形剤(例えば、スクロース)を用いて凍結乾燥剤として処方される。他の標準的なキャリア、希釈剤および賦形剤は所望に応じて含まれ得る。他の例示的な組成物は、pH約7.0−8.5のTris緩衝剤またはpH約4.0−5.5の酢酸緩衝剤を含み、これらは、さらに、ソルビトールまたはその適切な代替物を含み得る。
【0120】
以下に本発明の組成物の一般的な調製法を示す。なお、動物薬組成物、医薬部外品、水産薬組成物、食品組成物および化粧品組成物等についても公知の調製法により製造することができることに注意されたい。
【0121】
本発明の組成物などは、薬学的に受容可能なキャリアと必要に応じて配合し、例えば、注射剤、懸濁剤、溶液剤、スプレー剤等の液状製剤として非経口的に投与することができる。薬学的に受容可能なキャリアの例としては、賦形剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤、崩壊阻害剤、吸収促進剤、吸収剤、湿潤剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等が挙げられる。また、必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の製剤添加物を用いることができる。また、本発明の組成物には、シアリルルイスX、脂質など以外の物質を配合することも可能である。非経口の投与経路としては、静脈内、筋肉内、皮下投与、皮内投与、粘膜投与、直腸内投与、膣内投与、局所投与、皮膚投与など等が挙げられるがそれらに限定されない。全身投与されるとき、本発明において使用される医薬は、発熱物質を含まない、薬学的に受容可能な水溶液の形態であり得る。そのような薬学的に受容可能な組成物の調製について、pH、等張性、安定性などを考慮することは、当業者の技術範囲内である。
【0122】
液状製剤における溶剤の好適な例としては、注射溶液、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油およびトウモロコシ油等が挙げられる。
【0123】
液状製剤における溶解補助剤の好適な例としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウムおよびクエン酸ナトリウム等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0124】
液状製剤における懸濁化剤の好適な例としては、例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等が挙げられる。
【0125】
液状製剤における等張化剤の好適な例としては、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトール等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0126】
液状製剤における緩衝剤の好適な例としては、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩およびクエン酸塩等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0127】
液状製剤における無痛化剤の好適な例としては、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウムおよび塩酸プロカイン等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0128】
液状製剤における防腐剤の好適な例としては、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0129】
液状製剤における抗酸化剤の好適な例としては、亜硫酸塩、アスコルビン酸、α−トコフェロールおよびシステイン等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0130】
注射剤として調製する際には、液剤および懸濁剤は殺菌され、かつ血液または他の目的のための注射部位における溶媒と等張であることが好ましい。通常、これらは、細菌保留フィルター等を用いるろ過、殺菌剤の配合または照射などによって無菌化する。さらにこれらの処理後、凍結乾燥等の方法により固形物とし、使用直前に無菌水または無菌の注射用希釈剤(塩酸リドカイン水溶液、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、エタノールまたはこれらの混合溶液等)を添加してもよい。
【0131】
さらに、本発明の組成物は、着色料、保存剤、香料、矯味矯臭剤、甘味料等、ならびに他の薬剤を含んでいてもよい。
【0132】
本発明において使用される物質、組成物等の量は、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、被験体の年齢、体重、性別、既往歴、細胞の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明の方法を被験体に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、被験体の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。頻度としては、例えば、毎日−数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)の投与が挙げられる。1週間−1ヶ月に1回の投与を、経過を見ながら施すことが好ましい。投与する量は、処置されるべき部位が必要とする量を見積もることによって確定することができる。
【0133】
本明細書において「被験体」とは、疾患の処置または診断の対象とされる動物をいう。本発明が対象とする動物は、例えば、鳥類、哺乳動物などであってもよい。好ましくは、そのような動物は、哺乳動物(例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目など)であり得る。例示的な被験体としては、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌなどの動物が挙げられるがそれらに限定されない。さらに好ましくは、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、モルモットなどの小動物が用いられ得る。
【0134】
(好ましい実施形態の説明)
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでない。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。
【0135】
1つの局面において、本発明は抗体修飾リポソームを提供する、この抗体修飾リポソームは、(A)リポソームと、(B)該リポソームに結合した血清アルブミンと、(C)該リポソーム表面の血清アルブミンに結合したスペーサーと、(D)該スペーサーに結合した抗体とを含み得る。
【0136】
1つの実施形態において、このスペーサーは、以下の式:
−[CRn1Rn2]n−[S−S]r−[CRm1Rm2]m−
で表される構造を有し、
該n、mおよびrは、独立して0以上の整数であり、ただし、n+m+rは1以上であり、
該Rn1および該Rn2は、独立して、水素もしくは置換基であるかまたは隣接する炭素との二重結合を意味するか、または該Rn1とRn2とが一緒になって=Oもしくは隣接する炭素との三重結合を意味するか、あるいは隣接する複数の炭素原子とアリール基を形成し、
該Rm1および該Rm2は、独立して、水素もしくは置換基であるかまたは隣接する炭素との二重結合を意味するか、または該Rm1と該Rm2とが一緒になって=Oであり、そして
は、独立して、水素であるか、またはRm1と一緒になって=Oもしくは隣接する炭素との三重結合を意味するか、あるいは隣接する複数の炭素原子とアリール基を形成し、該置換基は、それぞれ独立して、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アルコキシ、炭素環基、ヘテロ環基、ハロゲン、ヒドロキシ、チオ−ル、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、アシル、チオカルボキシ、アミド、置換されたアミド、置換されたカルボニル、置換されたチオカルボニル、置換されたスルホニル、置換されたスルフィニルなどであり得る。
【0137】
本明細書において使用され得る好ましいスペーサーとしては、例えば、−CO−CH2−CH2−S−S−CH2−CH2−CO−、−CO−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CO−などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0138】
1つの実施形態において、本発明の抗体修飾リポソームにおいて使用され得るスペーサーは、−CO−CH2−CH2−S−S−CH2−CH2−CO−、−CO−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CO−、などが挙げられるが、これらに限定されない。スペーサーの構造は、好ましくは、スペーサーの長さが、11〜12Å、両末端にスクシンイミジルプロピオネート構造あるいはスルホスクシンイミジルプロピオネート構造を有する構造であるが、該リポソーム上のHSAあるいは抗体のアミノ基と結合でき得る構造でありさえすればよい。
【0139】
他の実施形態において、本発明において使用され得る血清アルブミンは、様々な生物種に由来の血清アルブミンが使用され得る。好ましくは、血清アルブミンは、ヒト由来血清アルブミンである。
【0140】
他の実施形態において、本発明の抗体修飾リポソームでは、種々な抗体が使用され得る。このような抗体としては、例えば、抗EGFR抗体、抗E−セレクチン抗体、抗p−セレクチン抗体、IgGが挙げらるが、これらに限定されない。
【0141】
本発明の抗体修飾リポソームの一例として、抗E−セレクチン抗体リポソームが挙げられる。この抗E−セレクチン抗体リポソームは、担癌部位の血管内皮、癌組織への局在が、例えば、組織切片により観察・確認され得る。
【0142】
本発明の抗体修飾リポソームの他の例として、抗P−セレクチン抗体リポソームが挙げられる。この抗P−セレクチン抗体リポソームは、炎症部位への集積性が、例えば、組織切片により観察・確認され得る。
【0143】
本発明の抗体修飾リポソームの別の例として、抗EGFR抗体リポソームが挙げられる。この抗EGFR抗体リポソームは、担癌部位への集積性が、例えば、組織切片により観察・確認され得る。
【0144】
好ましい実施形態において、本発明の抗体修飾リポソームは、さらに標識物質を含みうる。この標識物質としては、例えば、
【0145】
【化21】
【0146】
【化22】
Cy7、Cy3B、Cy3.5、Alexa Fluoro350、Alexa Fluoro488、Alexa Fluoro532、Alexa Fluoro546、Alexa Fluoro594、Alexa Fluoro633、Alexa Fluoro647、Alexa Fluoro680、Alexa Fluoro700、Alexa Fluoro750、フルオレセイン−4−イソチオシアネート(FITC)、ローダミン、カルセイン、それらの組み合わせなどが挙げられが、これらに限定されない。
【0147】
他の実施形態において、本発明の抗体修飾リポソームは、標識物質として、造影剤(例えば、イオヘキソール、イオパミドール、ウログラフィン等)、金属錯体(例えば、ガドリウム錯体、ユーロピウム錯体、テルビウム錯体等)等を含み得る。
【0148】
1つの実施形態において、本発明の抗体修飾リポソームに含まれるタンパク質量は、約0.05〜1mg/mLの範囲にあり得るが、これらに限定されない。なぜなら、抗体量(タンパク質量)により、ターゲットへの集積性が変動するからである。この範囲は、好ましくは、0.01〜2mg/mL、より好ましくは、0.05〜1mg/mL 抗体の集積性は、抗体が多く結合していればよいというのではなく、適度な親水性度と結合抗体量は存在するからである。
【0149】
(抗体修飾リポソームを製造する方法)
他の局面において、本発明は、抗体修飾リポソームを製造する方法を提供する。この方法は、以下:
A)リポソームを提供する工程;
B)該リポソームと血清アルブミンとを、該リポソームと該血清アルブミンとが結合する条件下で接触させて、血清アルブミン結合リポソームを生成させる工程;および
C)該血清アルブミン結合リポソームと抗体とを、スペーサーの存在下で該血清アルブミンと該抗体とが該スペーサーを介して結合する条件下で接触させて、抗体修飾リポソームを生成させる工程
を包含し得る。
【0150】
1つの実施形態において、前記リポソームは、標識物質を含み得る。好ましくは、この標識物質は、
【0151】
【化23】
【0152】
【化24】
Cy7、Cy3B、Cy3.5、Alexa Fluoro350、Alexa Fluoro488、Alexa Fluoro532、Alexa Fluoro546、Alexa Fluoro594、Alexa Fluoro633、Alexa Fluoro647、Alexa Fluoro680、Alexa Fluoro700、Alexa Fluoro750、フルオレセイン−4−イソチオシアネート(FITC)、ローダミン、カルセイン、それらの組み合わせであり得るが、これらに限定されない。
【0153】
他の実施形態において、本発明の抗体修飾リポソームは、標識物質として、造影剤(例えば、イオヘキソール、イオパミドール、ウログラフィン等)、金属錯体(例えば、ガドリウム錯体、ユーロピウム錯体、テルビウム錯体等)等を含み得る。
【0154】
他の実施形態において、本発明の方法は、前記B)工程が、前記リポソームをトリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカンにより親水性化処理する工程を含み得る。トリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカンとしては、例えば、アミノ基を有するトリス(ヒドロキシアルキル)構造を有するような物質が挙げられるが、これらに限定されない。具体的には、具体的には、トリス(ヒドロキシメチノレ)アミノエタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノエタン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノエタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノプロパン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノプロパン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノプロパン等が挙げられるが、これらに限定されない。なぜなら、架橋剤を介してリポソームに結合することができる物質でありさえすれば、よいからである。
【0155】
他の実施形態において、本発明の方法は、前記B)工程において、前記リポソームと該血清アルブミンとが結合する条件が、該リポソームを含む溶液に、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンと架橋を形成し得る架橋基(例えば、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート)を添加し、タンパク質が分解しない程度の温度(例えば、20〜30℃、好ましくは、20〜25℃)で、反応が完了するのに十分な時間(例えば、2〜24時間、好ましくは、2〜6時間)にわたって攪拌し、親水性化状態にする条件であり得る。
【0156】
好ましい実施形態において、本発明の方法は、前記B)工程が、以下:
(B1)前記リポソームを含む溶液に、炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0、好ましくは、pH8.5)を添加し、タンパク質が分解しない程度の温度(例えば、20〜30℃、好ましくは、20〜25℃)で、反応が完了するのに十分な時間(例えば、2〜24時間、好ましくは、2〜6時間)撹拌して、リポソーム粒子表面を親水性の状態にする工程;
(B2)(B1)工程において、粒子表面が親水性化されたリポソームを含む溶液を、リポソーム膜面に結合しなかった親水性物質を除去可能な分画分子量(例えば、100K〜300K、好ましくは、300K)で限外濾過し、遊離の該架橋基(例えば、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート)を除去し、該炭酸緩衝液をトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0、好ましくは、8.0〜9.0、より好ましくは、8.4)に交換する工程;
(B3)(B2)工程において、該緩衝液が該トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液に交換された溶液に、血清アルブミンを含むトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0、好ましくは、pH8.0〜9.0、より好ましくは、pH8.4)を添加して、タンパク質が分解しない程度の温度(例えば、20〜30℃、好ましくは、20〜25℃)で反応させて反応溶液を生成する工程;および
(B4)該反応溶液に、PBS緩衝液(pH7.0〜9.0、好ましくは、pH8.0)を添加して、タンパク質が分解しない程度の温度(例えば、20〜30℃、好ましくは、20〜25℃)で攪拌し、分画分子量100K〜300K(好ましくは、300K)で限外濾過し、遊離の該血清アルブミンを除去し、該溶液の緩衝液をPBS緩衝液(pH7.0〜9.0、好ましくは、pH8.0)に交換する工程を包含し得る。
【0157】
上記(B1)工程では、pH8.0〜9.0のpH域であれば、上記炭酸緩衝液のかわりに架橋剤を結合させる緩衝液として、分子内にアミノ基を有さない他の緩衝液を使用することができる。なぜなら、緩衝液が架橋剤の官能基と反応しなければよいからである。
【0158】
上記(B2)および(B3)工程は、pH7.0〜9.0のpH域であれば、反応に影響を与えないと考えられるので、上記トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液のかわりにこの範囲で使用される他の緩衝液を使用することもできる。なぜなら、緩衝液組成が、影響を与えない工程であると考えられるからである。
【0159】
上記(B4)工程では、pH7.0〜9.0のpH域であれば、反応に影響を与えないと考えられるので、上記PBSのかわりにpH7.0〜9.0の範囲で緩衝能を有する他の緩衝液を使用することができる。なぜなら、上記pH域で緩衝能を有しさえすれば、どのような組成であってもよいからである。
【0160】
上記(B2)工程において、分画分子量は、リポソーム膜面に結合しなかった親水性物質を除去可能な分画分子量でありさえすればよい。
【0161】
上記(B4)工程において、分画分子量は、遊離の血清アルブミンを除去可能な分画分子量でありさえすればよい。
【0162】
別の実施形態において、本発明の方法は、前記(B)工程が、以下:
(B1−1)前記蛍光色素を内包したかまたは結合したリポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300K(好ましくは、300K)で限外濾過し、該溶液中に含まれる緩衝液を炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0、好ましくは、pH8.5)に交換する工程;
(B1−2)該(B1−1)工程において該緩衝液が該炭酸緩衝液に変換された溶液に、アミノ基と結合可能な架橋剤(例えば、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート)を添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、分画分子量100K〜300K(好ましくは、300K)で限外濾過し、遊離の該架橋基(例えば、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート)を除去する工程;および
(B1−3)該(B1−2)工程において、該遊離の架橋基(例えば、該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート)を除去した溶液に、0.5〜1mM トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0、好ましくは、pH8.5)溶液を添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、さらに冷蔵〜室温(好ましくは、冷蔵)で一晩撹拌し、分画分子量100K〜300K(好ましくは、300K)で限外濾過し、遊離のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを除去し、該炭酸緩衝液をN−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0、好ましくは、pH8.4)に交換して親水性化処理されたリポソームを含む溶液を生成させる工程、をさらに包含し得る。
【0163】
上記(B1−1)工程では、pH8.0〜9.0のpH域であれば、上記炭酸緩衝液のかわりに架橋剤を結合させる緩衝液として、分子内にアミノ基を有さない他の緩衝液を使用することができる。なぜなら、緩衝液が架橋剤の官能基と反応しなければよいからである。
【0164】
上記(B1−3)工程では、上記トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/炭酸緩衝液溶液は親水性を付与するための使用されているので、この溶液のかわりに、分子内にアミノ基を有するような親水性を付与できる化合物を含む溶液を用いることもできる。
【0165】
また、N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液のかわりに、pH7.0〜9.0の範囲で緩衝能を有する他の緩衝液を用いることもできる。なぜなら、緩衝液の組成は、この反応に影響を与えないと考えられるからである。
【0166】
上記(B1−1)〜(B1−3)において、分画分子量は、緩衝液または遊離の架橋基を除去可能な分画分子量でありさえすればよい。
【0167】
別の実施形態において、本発明の方法は、前記C)工程が、以下:
(C1)該リポソームを含む溶液に、架橋剤を添加して、タンパク質が分解しない程度の温度(例えば、20〜30℃、好ましくは、20〜25℃)で攪拌し、分画分子量100K〜300K(好ましくは、300K)で限外濾過し、遊離の該架橋剤を除去する工程;
(C2)(C1)工程において、該遊離の該架橋剤を除去した溶液に、該抗体溶液を添加して、タンパク質が分解しない程度の温度(例えば、20〜30℃、好ましくは、20〜25℃)で反応させ、炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0、好ましくは、pH8.5)、を添加し、タンパク質が分解しない程度の温度(例えば、20〜30℃、好ましくは、20〜25℃)で、反応が完了するのに十分な時間(2〜24時間、好ましくは、2〜6時間)撹拌し、分画分子量150K〜300Kで限外濾過し、遊離の該抗体と該架橋剤を除去する工程;および
(C3)(C2)工程において、遊離の該抗体と該架橋剤を除去した溶液の緩衝液を、炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0、好ましくは、pH8.5)に交換する工程を包含し得る。
【0168】
上記(C1)〜(C3)工程では、pH8.0〜9.0のpH域であれば、上記炭酸緩衝液のかわりに架橋剤を結合させる緩衝液として、分子内にアミノ基を有さない他の緩衝液を使用することができる。なぜなら、緩衝液が架橋剤の官能基と反応しなければよいからである。
【0169】
上記(C1)工程において、分画分子量は、遊離の架橋基を除去可能な分画分子量でありさえすればよい。
【0170】
上記(C2)工程において、分画分子量は、遊離の抗体を除去可能な分画分子量でありさえすればよい。
【0171】
他の実施形態において、本発明の方法は、架橋剤として、例えば、3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート、ジチオビス[スクシンイミジルプロピオネート]、ジスクシンイミジルスベレート等を使用することができる。この架橋剤は、好ましくは、3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)であり得る。
【0172】
他の実施形態において、本発明おいて使用される抗体は、臓器、疾患、免疫細胞等に特異的に発現する抗原に対する抗体が挙げられ得る。好ましくは、例えば、炎症血管内皮に発現するE−セレクチン、p−セレクチンに対する抗体であり得るが、これらに限定されない。1つの実施形態において、本発明において使用され得る抗体は、例えば、抗EGFR抗体、IgGであり得る。
【0173】
好ましい実施形態において、この抗体は、リポソームの脂質1mgに対して0.025〜1mgの比率で含まれ得る。
【0174】
別の局面において、本発明は、抗体修飾リポソームを製造する方法を提供する、この方法は、以下:
a)リポソームを提供する工程;
b)該リポソームとプロテインAとを、該リポソームと該プロテインAとが結合する条件下で接触させる工程;および
c)該プロテインAが結合したリポソームと抗体とを、該プロテインAと該抗体とが直接結合する条件下で接触させる工程
を包含し得る。
【0175】
1つの実施形態において、本方法では、リポソームは、標識物質として、例えば、
【0176】
【化25】
【0177】
【化26】
Cy7、Cy3B、Cy3.5、Alexa Fluoro350、Alexa Fluoro488、Alexa Fluoro532、Alexa Fluoro546、Alexa Fluoro594、Alexa Fluoro633、Alexa Fluoro647、Alexa Fluoro680、Alexa Fluoro700、Alexa Fluoro750、フルオレセイン−4−イソチオシアネート(FITC)、ローダミン、カルセイン、それらの組み合わせが挙げれるが、これらに限定されない。
【0178】
他の実施形態において、本方法において使用され得る標識物質としては、造影剤(例えば、イオヘキソール、イオパミドール、ウログラフィン等)、金属錯体(例えば、ガドリウム錯体、ユーロピウム錯体、テルビウム錯体等)等が挙げられ得る。
【0179】
他の実施形態において、本方法の前記b)工程は、前記リポソームをトリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカンにより親水性化処理する工程を含み得る。トリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカンとしては、例えば、親水性の性質を有し、架橋剤と結合しうるアミノ基をもつ物質、(例えば、アミノ基を有するトリス(ヒドロキシアルキル)構造を有するような物質)が挙げられるが、これらに限定されない。具体的には、トリス(ヒドロキシメチノレ)アミノエタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノエタン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノエタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノプロパン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノプロパン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノプロパン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0180】
他の実施形態において、本方法では、前記b)工程は、以下の工程(b1−1)〜(b5)を包含し得る:
(b1−1)前記リポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300K(好ましくは、300K)で限外濾過し、該溶液中に含まれる緩衝液を炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0、好ましくは、pH8.5)に交換する工程;
(b1−2)該(b1−1)工程において該緩衝液が該炭酸緩衝液に変換された溶液に架橋基(例えば、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート)を添加して、冷蔵〜室温(好ましくは、10〜37℃)(この攪拌時の温度は、低温になりすぎると反応速度が低下しすぎず、かつ、タンパク質の分解が生じない程度の温度であればよい。)で攪拌し、分画分子量100K〜300K(好ましくは、300K)で限外濾過し、遊離の該架橋基(例えば、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート)を除去する工程;および
(b1−3)該(b1−2)工程において、該遊離の該架橋基(例えば、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート)を除去した溶液に、0.2〜1mM トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0、好ましくは、pH8.5)溶液を添加して、20〜30℃(好ましくは、20〜25℃)(この攪拌時の温度は、低温になりすぎると反応速度が低下しすぎず、かつ、タンパク質の分解が生じない程度の温度であればよい。)で攪拌し、さらに冷蔵〜室温、好ましくは、10〜37℃(この反応は、長時間反応の必要な場合には、タンパク質の分解を防ぐために冷蔵で行い、また、短時間で反応を進行させる場合には、室温で反応させ、反応速度をあげることができる)で一晩撹拌し、分画分子量100K〜300K(好ましくは、300K)で限外濾過し、遊離のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを除去し、該炭酸緩衝液をN−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0、好ましくは、pH8.4)に交換して親水性化処理されたリポソームを含む溶液を生成させる工程を包含する、工程;
(b2)該親水性化したリポソームを含む溶液に、メタ過ヨウ素酸ナトリウム/N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0、好ましくは、pH8.4)溶液を添加し、冷蔵〜室温(好ましくは、10〜30℃)で一晩撹拌して、リポソーム粒子表面を酸化する工程;
(b3)(b2)工程において、粒子表面が酸化されたリポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300K(好ましくは、300K)で限外濾過し、遊離の該メタ過ヨウ素酸ナトリウムを除去し、該N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液をPBS緩衝液(pH7.0〜9.0、好ましくは、pH8.0)に交換する工程;
(b4)(b3)工程において、該緩衝液が該PBS緩衝液に交換された溶液に、プロテインA/PBS緩衝液(pH7.0〜9.0、好ましくは、pH8.0)を添加して冷蔵〜室温で反応させて反応溶液を生成する工程;
(b5)さらに、該反応溶液に、シアノホウ素酸ナトリウム/PBS緩衝液(pH7.0〜9.0、好ましくは、pH8.0)を添加して、冷蔵〜室温(好ましくは、10〜30)で攪拌し、分画分子量100K〜300K(好ましくは、300K)で限外濾過し、遊離の該シアノホウ素酸ナトリウムおよび該プロテインAを除去し該溶液の緩衝液を2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(pH6.8〜8.0、好ましくは、pH7.2)に交換する工程を包含する工程。
【0181】
上記(b1−1)工程では、pH8.0〜9.0のpH域であれば、上記炭酸緩衝液のかわりに架橋剤を結合させる緩衝液として、分子内にアミノ基を有さない他の緩衝液を使用することができる。なぜなら、緩衝液が架橋剤の官能基と反応しなければよいからである。
【0182】
上記(b1−3)工程では、上記トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/炭酸緩衝液溶液は親水性を付与するための使用されているので、この溶液のかわりに、分子内にアミノ基を有するような親水性を付与できる化合物を含む溶液を用いることもできる。
【0183】
また、上記(b1−3)および(b2)工程では、N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液のかわりに、pH7.0〜9.0の範囲で緩衝能を有する他の緩衝液を用いることもできる。なぜなら、緩衝液の組成は、この反応に影響を与えないと考えられるからである。
【0184】
上記(b3)工程は、pH7.0〜9.0のpH域であれば、反応に影響を与えないと考えられるので、上記トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液のかわりにこの範囲で使用される他の緩衝液を使用することもできる。なぜなら、緩衝液組成が、影響を与えない工程であると考えられるからである。
【0185】
上記(b4)工程では、pH7.0〜9.0のpH域であれば、反応に影響を与えないと考えられるので、上記PBSのかわりにpH7.0〜9.0の範囲で緩衝能を有する他の緩衝液を使用することができる。なぜなら、上記pH域で緩衝能を有しさえすれば、どのような組成であってもよいからである。
【0186】
上記(b5)工程では、リポソームおよび結合させたプロテインAを安定化させることができる限り、2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液の代わりの他の緩衝液が使用され得る。
【0187】
上記(b1−1)〜(b5)工程において、分画分子量は、除去すべき物質(例えば、リポソーム膜面に結合しなかった親水性物質、遊離の血清アルブミン、メタ過ヨウ素酸、遊離のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン他)を除去可能な分画分子量でありさえすればよい。
【0188】
別の実施形態において、本方法は、前記c)工程が、以下:
(c1)前記リポソームを含む溶液に、抗体溶液を添加して、4〜30℃、好ましくは、20〜25℃(この反応温度は、抗体とプロテインAとの結合に時間がかかるほど低い温度でなく、タンパク質が分解するほど高くない温度であればよい)で反応させ、2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(pH6.8〜8.0、好ましくは、pH7.2)を添加し、4〜30℃(好ましくは、10〜20℃)で2時間〜24時間にわたり撹拌し、分画分子量150K〜300Kで限外濾過し、遊離の該抗体を除去する工程;および
(c2)(c1)工程において、遊離の該抗体を除去した溶液の緩衝液を、2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(pH6.8〜8.0、好ましくは、pH7.2)に交換する工程を包含し得る。
【0189】
上記(c1)工程において、2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液のかわりに、中性域に緩衝能を有し、毒性の低い緩衝液であれば他の緩衝液を使用してもよい。分画分子量は、遊離の抗体を除去可能な分画分子量でありさえすればよい。
【0190】
上記(c2)工程では、リポソームおよび結合させたプロテインAを安定化させることができる限り、2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液の代わりに他の緩衝液が使用され得る。
【0191】
他の実施形態において、本方法において使用される抗体は、臓器、疾患、免疫細胞等に特異的に発現する抗原に対する抗体が挙げられ得る。好ましくは、例えば、炎症血管内皮に発現するE−セレクチン、p−セレクチンに対する抗体であり得るが、これらに限定されない。1つの実施形態において、本方法において使用され得る抗体は、例えば、抗EGFR抗体、IgGであり得る。
【0192】
好ましい実施形態において、この抗体を含む溶液には、前記抗体が0.025〜10mg/mL、の範囲で含まれ得る。
【0193】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【0194】
以下、実施例により、本発明の構成をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において使用した試薬類は、特に言及した場合を除いて、市販されているものを使用した。
【実施例】
【0195】
(実施例1 リポソームの調製)
リポソームは既報の手法(Yamazaki,N.,Kodama,M.and Gabius,H.−J.(1994)Methods Enzymol.242,56−65)により、改良型コール酸透析法を用いて調製した。すなわち、ジパルミトイルホスファチジルコリン、コレステロール、ジセチルホスフェート、ガングリオシドおよびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンをモル比でそれぞれ35:40:5:15:5の割合で合計脂質量45.6mgになるように混合し、コール酸ナトリウム46.9mgを添加し、クロロホルム/メタノール(1:1)溶液3mlに溶解した。この溶液を蒸発させ、沈殿物を真空中で乾燥させることによって脂質膜を得た。得られた脂質膜をN−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH 8.4)3mlに再懸濁し、37℃で1時間攪拌した。次いで、この溶液を窒素置換し、超音波処理して、透明なミセル懸濁液を得た。さらに、ミセル懸濁液をPM10膜(Amicon Co.,USA)とN−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH 8.4)を用いた限外濾過(分画分子量:10,000)にかけ均一リポソーム(平均粒子径100nm)10mlを調製した。
【0196】
(実施例2.リポソーム膜面上への抗E−セレクチン抗体の結合)
実施例1で調製したリポソームを用いる。
【0197】
(モノクローナル抗体の精製方法)
抗E−セレクチン抗体は、抗E−セレクチン抗体産生ハイブリドーマ(CL−3)ATCC No.CRL−2515から精製した。
【0198】
マウスBalb/c(雌性6週齢)に、プリスタン0.5mL/マウスを投与した。ハイブリドーマをRPMI(10%FBS,Pc+St)培地で、5%CO2、37℃で培養した。PBSに細胞を懸濁して、5×106細胞/マウスでマウスの腹腔内に投与した。約2週間後に腹水を採取した。硫酸アンモニウム沈殿し、沈殿物をPBSに溶解させ、PBS緩衝液で透析を行った。プロテインGカラム(HiTrap ProteinG colum 1mL)カラムに透析後の溶液を通した。カラムを洗浄後、プロテインGに結合したモノクローナル抗体を、0.1Mグリシン緩衝液(pH2.7)にて溶出し、溶出液を1MTris溶液(pH9.0)で中和した。
【0199】
(リポソーム膜面上への抗E−セレクチン抗体の結合)
過ヨウ素酸ナトリウムを約0.015gを秤量し、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液(TAPS緩衝液:pH8.4)1mLで溶解する。この過ヨウ素酸ナトリウム溶液をリポソームに添加し、酸化反応をさせ、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS緩衝液:pH8.0)下で限外濾過(300K)する。次いで、HSA溶液(10mg/mL)を添加し、ゆるやかに転倒混和後、室温で2時間攪拌する。
【0200】
NaBH3CNを0.003g秤量し、PBS緩衝液(pH8.5)100μLで溶解したNaBH3CN溶液を添加して、冷蔵下で一晩、還元反応により結合させる。炭酸緩衝液(CBS緩衝液:pH8.5)下で限外濾過(300K)をする。
【0201】
次いで、3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート(DTSSP、PIERCE社製:No.21578)を0.01g秤量し、CBS緩衝液(pH8.5)400μLで溶解したDTSSP溶液を添加し、室温で2時間反応後、冷蔵下で一晩反応させる。その後、CBS緩衝液(pH8.5)下で限外濾過(300K)する。
【0202】
上記方法にて精製した抗E−セレクチン抗体(25μg/mL、50μg/mL、75μg/mL、100μg/mL)をそれぞれ添加する。その後、室温で2時間反応させたのち、トリスヒドロキシアミノメタン(Tris)を(132mg/mL)加え、さらに室温で一晩、反応させる。
【0203】
2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)緩衝液(pH7.2)下で限外濾過(300K)を行い、0.45μmフィルターで濾過を行う。
【0204】
(実施例3.蛍光色素を内包するリポソームの調製)
(1.cy5.5内包リポソーム)
ヒト血清アルブミン/N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH8.4)溶液(10mg/ml)、(2ml)に、cy5.5/N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH8.4)溶液(2mg/ml)、(2.5ml)を混合して、37℃で3時間撹拌した。この混合溶液を、分画分子量10,000、N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH8.4)溶液で限外濾過し、遊離のcy5.5を除去し、cy5.5標識ヒト血清アルブミン溶液を調製した。
【0205】
リポソームは既報の手法(Yamazaki,N.,Kodama,M.and Gabius,H.−J.(1994)Methods Enzymol.242,56−65)により、改良型コール酸透析法を用いて調製した。すなわち、ジパルミトイルホスファチジルコリン、コレステロール、ジセチルホスフェート、ガングリオシドおよびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンをモル比でそれぞれ35:40:5:15:5の割合で合計脂質量45.6mgになるように混合し、コール酸ナトリウム46.9mgを添加し、クロロホルム/メタノール(1:1)溶液3mlに溶解した。この溶液を蒸発させ、沈殿物を真空中で乾燥させることによって脂質膜を得た。得られた脂質膜をTAPS緩衝生理食塩液(pH8.4)3mlに再懸濁し、37℃で1時間攪拌した。次いで、この溶液を窒素置換し、超音波処理し、透明なミセル懸濁液3mlを得た。この超音波処理したミセル懸濁液にHSA緩衝液(pH8.4)で0.2mg/1mlになるよう完全に溶解したcy5.5標識HSA溶液を撹拌しながらゆっくりと滴下して均一に混合した後、この蛍光色素入りミセル懸濁液をPM10膜(Amicon Co.,USA)とTAPS緩衝生理食塩液(pH8.4)を用いた限外濾過(分画分子量:10,000)にかけ均一な蛍光色素を内包するリポソーム粒子懸濁液10mlを調製した。
【0206】
得られた生理食塩懸濁液中(37℃)の蛍光色素を内包するリポソーム粒子の粒子径とゼータ電位をゼータ電位・粒子径・分子量測定装置(Model Nano ZS,Malvern Instruments Ltd,,UK)により測定した結果、粒子径は約80nm〜約130nm、ゼータ電位は−40〜−80mVであった。
【0207】
(2.cy3内包リポソームの調製)
cy3内包リポソームについても、上記(cy5.5内包リポソーム)と同様の方法で、cy3内包リポソームを調製した。得られた生理食塩懸濁液中(37℃)の蛍光色素を内包するリポソーム粒子の粒子径とゼータ電位をゼータ電位・粒子径・分子量測定装置(Model Nano ZS,Malvern Instruments Ltd,,UK)により測定した結果、粒子径は約80nm〜約130nm、ゼータ電位は−40〜−80mVであった。
【0208】
(実施例4.リポソーム膜面上への抗EGFRモノクローナル抗体の結合)
(モノクローナル抗体の精製方法)
抗EGFR抗体は、抗EGFR抗体産生ハイブリドーマ(TAKARA Human epidermal carcinoma cell A431 CloneB4G7 Cat.#M059)から精製した。
【0209】
マウスBalb/c(雌性6週齢)に、プリスタン0.5mL/マウスを投与した。ハイブリドーマをRPMI(10%FBS,Pc+St)培地で、5%CO2、37℃で培養した。PBSに細胞を懸濁して、5×106細胞/マウスでマウスの腹腔内に投与した。約2週間後に腹水を採取した。硫酸アンモニウム沈殿し、沈殿物をPBSに溶解させ、PBS緩衝液で透析を行った。プロテインGカラム(HiTrap ProteinG colum 1mL)カラムに透析後の溶液を通した。カラムを洗浄後、プロテインGに結合したモノクローナル抗体を、0.1Mグリシン緩衝液(pH2.7)にて溶出し、溶出液を1MTris溶液(pH9.0)で中和した。
【0210】
実施例2で調製したCy3内包リポソームを用いた。過ヨウ素酸ナトリウムを約0.015gを秤量し、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液(TAPS緩衝液:pH8.4)1mLで溶解した。この過ヨウ素酸ナトリウム溶液をCy3内包リポソームに添加し、酸化反応をさせ、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS緩衝液:pH8.0)下で限外濾過(300K)した。次いで、HSA溶液(10mg/mL)を添加し、ゆるやかに転倒混和後、室温で2時間攪拌した。
【0211】
NaBH3CNを0.003g秤量し、PBS緩衝液(pH8.0)100μLで溶解したNaBH3CN溶液を添加して、冷蔵下で一晩、還元反応により結合させた。炭酸緩衝液(CBS緩衝液:pH8.5)下で限外濾過(300K)をした。
【0212】
次いで、3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート(DTSSP、PIERCE社製:No.21578)を0.01g秤量し、CBS緩衝液(pH8.5)400μLで溶解したDTSSP溶液を添加し、室温で2時間反応後、冷蔵下で一晩反応させた。その後、CBS緩衝液(pH8.5)下で限外濾過(300K)した。
【0213】
上記方法により精製した抗EGFRモノクローナル抗体を、最終濃度0.1mg/mL、0.5mg/mL、1mg/mLになるように添加した。その後、室温で2時間反応させたのち、トリスヒドロキシアミノメタン(Tris)を(132mg/mL)加え、さらに室温で一晩、反応させた。
【0214】
2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)緩衝液(pH7.2)下で限外濾過(300K)を行い、0.45μmフィルターで濾過を行った。
【0215】
実施例1において調製したリポソームについても、実施例2と同様の方法を用いて、抗体修飾リポソームを調製する。
【0216】
(比較例1)
抗体として、抗EGFRモノクローナル抗体を用いる代わりに、IgG(Porcine)(ブタ血清、コスモ・バイオ(NBT)Code.02071)より、常法にて自社でIgG精製を行った。)を用いること以外、実施例4と同様の方法を用いた。
【0217】
(実施例5 抗体修飾リポソームの定量分析)
本実施例では、粒子径、Zeta電位、リポソーム中のタンパク質量、脂質量、吸光度の測定を行った。
【0218】
(I.タンパク質定量)
リポソームに内包されたHSA量とリポソーム表面にカップリングしたHSAの総タンパク質量をBCA法により測定した。
【0219】
タンパク質量の測定は、Micro BCATM Protein Assay Reagentキット(カタログ番号23235BN)(PIERCE Co.LTD)を用いた。標準物質として、キットに添付された2mg/mlアルブミン(BSA)を使用した。
【0220】
スタンダード溶液として、標準物質(2mg/ml:アルブミン)をPBS緩衝液で希釈し、0、0.25、0.5、1、2、3、4、5μg/50μl溶液を調製した。Cy3内包抗体修飾リポソームをPBS緩衝液で20倍希釈し、検体溶液を調製した。スタンダード溶液、検体溶液をそれぞれ試験管に50μl分注した。各試験管に3%ラウリル硫酸ナトリウム溶液(SDS溶液)を100μl添加した。キットに添付された試薬A、B、Cを、試薬A:試薬B:試薬C=48:2:50となるように混合し、各試験管に150μl添加した。この試験管を、60℃で1時間、静置した。室温に戻ってから、吸光度540nmを測定し、スタンダード溶液により検量線を作成して、リポソームのタンパク質量を測定した。
【0221】
(II.脂質定量)
リポソームの構成脂質量を、コレステロール量を定量することにより算出した。脂質の定量にはデタミナーTC555キット(カタログ番号UCC/EAN128)(KYOWA Co.LTD)を用いた。標準物質として、キットに添付されている50mg/ml コレステロールを使用した。
【0222】
スタンダード溶液として、標準物質(50mg/ml:コレステロール)をPBS緩衝液で希釈し、0、0.1、0.25、0.5、0.75、1、5、10μg/20μl溶液を調製した。Cy3内包抗体修飾リポソームをPBS緩衝液で5倍希釈し、検体溶液を調製した。スタンダード溶液、検体溶液をそれぞれ試験管に20μl分注した。各試験管に、TritonX−100(10%溶液)を17μl添加して撹拌し、その後、37℃、40分間、静置した。デタミナーTC555キットの酵素試薬を300μl添加して撹拌し、その後、37℃、20分間、静置した。吸光度540nmを測定し、スタンダード溶液により検量線を作成して、リポソームのコレステロール量を測定し、脂質量を求めた。
コレステロール量から脂質量を求める換算式
脂質量(μg/50μl)=コレステロール量(μg/50μl)×4.51(換算係数)
(III.粒子径分布および粒子径)
リポソーム粒子を精製水で50倍に希釈して、ゼータサイザーナノ(Nan−ZS:MALVERN Co.LTD)を用いて測定した。
【0223】
表1に、粒子径、Zeta電位、リポソーム中のタンパク質量、脂質量、吸光度の測定の結果を示す。その結果、0.1mg/mLの抗体溶液を用いた場合が驚くべきことに予想外にも0.5mg/mLまたは1.0mg/mLのものよりもはるかに最もリポソーム中のタンパク質量が多いことが分かった。つまり、リポソームに結合した抗体量が多いといえる。従って、0.1mg/mLの抗体溶液を用いて、in vitroアッセイを行うこととした。
【0224】
【表1】
Sample:リポソーム作製時に用いた抗体溶液の濃度
(実施例6 in vitroアッセイ)
細胞として、A431(ヒト扁平上皮ガン細胞(ATCC No.CRL−1555))およびHeLaS3(ヒト子宮ガン細胞(ATCC No.CCL−2.2)を用いた(図1Aおよび図1B)。これらの細胞(1×105細胞)を、12Wellプレートに播種し、37℃、5% CO2環境下で2日間、培養した。1Wellあたり500μLのDMEM培地(SIGMA D6046)(血清:ウシ胎児血清(FBS)バイオロジカルCo.LTD,194481:終濃度10%となるように添加、抗生物質:ペニシリンストレプトマイシン SIGMA P0781 10mg/ml:終濃度100μg/mLとなるように添加)に、Cy3を内包した抗EGFRモノクローナル抗体修飾リポソームを10μLずつ添加した。この抗体修飾リポソームは、リポソーム作製時に0.1mg/mLの抗体溶液を用いたものである。この抗体修飾リポソームを、細胞に添加した時の抗体濃度が1μg/mL、2μg/mL、20μg/mLになるように添加して調製した。30分後にPBS(−)で洗浄した。添加の3時間後に、蛍光顕微鏡で細胞を観察した。また、同様に抗体修飾リポソームを添加し、数時間(約3時間)培養後、PBSで洗浄せずに蛍光顕微鏡で細胞を観察した。
【0225】
その結果、EGFRを高発現しているA431細胞(ヒト扁平上皮癌細胞)(Parker PJら、J.Biol.Chem.vol,259, No.15, pp9906−9912,1984;Kawamoto Tら、Proc.Natl.Acid.Sci.USA,vol.80,pp1337−1341,1983;加藤道男ら、日消外会誌25(2)pp195−202,1992)に抗EGFR抗体修飾リポソームが取り込まれたことがわかった(図2Aおよび2Bを参照のこと。)。
【0226】
(比較例2)
比較例1で調製したIgG(Porcine)結合リポソームおよび抗体を結合していないリポソーム(K0)を用いて、実施例7と同様の手法をもちいた。これらのコントロールでは、リポソームはA431細胞にほとんど取り込まれなかった。
【0227】
(まとめ)
非特異的抗体リポソームにくらべ、抗EGFR抗体リポソームは、A431細胞に顕著に取り込まれた。これは、A431細胞表面に発現しているEGF−Rによって、抗EGFR抗体リポソームが特異的に認識されたためであると考えられる。
【0228】
(実施例7.リポソーム膜面上への抗E−セレクチン抗体の結合)
実施例2で調製したCy5,5内包リポソームおよび抗E−セレクチン抗体を用いた。過ヨウ素酸ナトリウムを約0.015gを秤量し、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液(TAPS緩衝液:pH8.4)1mLで溶解した。この過ヨウ素酸ナトリウム溶液をCy5.5内包リポソームに添加し、酸化反応をさせ、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS緩衝液:pH8.0)下で限外濾過(300K)した。次いで、HSA溶液(10mg/mL)を添加し、ゆるやかに転倒混和後、室温で2時間攪拌した。
【0229】
NaBH3CNを0.003g秤量し、PBS緩衝液(pH8.0)100μLで溶解したNaBH3CN溶液を添加して、冷蔵下で一晩、還元反応により結合させた。炭酸緩衝液(CBS緩衝液:pH8.5)下で限外濾過(300K)をした。
【0230】
次いで、3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート(DTSSP、PIERCE社製:No.21578)を0.01g秤量し、CBS緩衝液(pH8.5)400μLで溶解したDTSSP溶液を添加し、室温で2時間反応後、冷蔵下で一晩反応させた。その後、CBS緩衝液(pH8.5)下で限外濾過(300K)した。
【0231】
抗E−セレクチン抗体を、最終濃度が25μg/mL、50μg/mL、75μg/mL、100μg/mLになるようにそれぞれ添加した。その後、室温で2時間反応させたのち、トリスヒドロキシアミノメタン(Tris)を(132mg/mL)加え、さらに室温で一晩、反応させた。
【0232】
2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)緩衝液(pH7.2)下で限外濾過(300K)を行い、0.45μmフィルターで濾過を行った。
【0233】
実施例5(I.タンパク質定量)と同様の方法を用いて、調製した抗体修飾リポソームのタンパク質量を測定し、添加抗体量と抗体結合量の関係を調べた。その結果を図3に示す。
【0234】
(比較例3)
抗体として、抗E−セレクチン抗体を用いる代わりに、IgGを用いること以外、実施例7と同様の方法を用いた。
【0235】
(まとめ)
以上の結果より、添加抗体量100μg/mLで集積性の低い原因を考察する。図3の結果から、添加抗体量100μg/mLの場合には、リポソーム膜面上のスペーサー(DTSSP)は、ほとんどすべて抗体の結合に使われており、後の工程で親水性化物を結合させることのできるDTSSPがリポソーム膜面上に残存していないことが集積性の低い原因と考えられる。
【0236】
添加抗体量が75μg/mlの抗体修飾リポソームで集積性を示すのは、DTSSPが抗体の結合にすべて使われずに残存するため、そのDTSSPに親水性化物質を結合させることができることが理由に一つが考えられる。また、リポソーム膜面上に結合した親水性化物質と抗体の量のバランスがインビボで集積性を示すのに適度であるためと考えられる。
【0237】
さらに、リポソーム膜面に抗体が過度に結合することによって、生体内の免疫系細胞に認識され補食されやすくなり、集積能が低下することなども原因として考えられる。
【0238】
(実施例8 in vivo実験)
実施例7で調製した、Cy5.5を内包させた抗E−セレクチン抗体修飾リポソームを用いた。
【0239】
6週齢マウス(Balb/c:雌)約60匹にEAT細胞(エールリッヒ腹水癌細胞:
ATCC No.1595089)を移植(1×107/50μL)した。細胞移植後、10日目に、抗体結合リポソームを各々100μLずつ尾静脈から投与した。
【0240】
Optixにより継時的観察(0〜120時間)を行い、集積性の評価を行った。その結果を、図4に示す。抗E−セレクチン抗体修飾リポソームは、抗体濃度が75μ/mLのときに最もマウスの担癌部位に集積することが確認された。
【0241】
(比較例4)
コントロールとしてK0(抗体未結合リポソーム)およびIgG(Porcine)抗体結合リポソームを用いること以外、実施例8と同様の方法にて実験を行った。結果を図4に示す。K0(抗体未結合リポソーム)でも、IgG(Porcine)抗体結合リポソームでも、担癌部位にリポソームの集積はほとんど確認されなかった。
【0242】
(実施例9 PAGFP結合リポソームの調製)
(リポソーム脂質膜面上の親水性化処理)
実施例2で調製したCy3内包リポソーム溶液10mlをXM300膜(Amicon Co.,USA)と炭酸緩衝液(pH 8.5)を用いた限外濾過(分画分子量:300,000)にかけ溶液のpHを8.5にした。次に、架橋試薬ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート(BS3;Pierce Co.,USA)10mgを加え、室温で2時間攪拌した。その後、さらに冷蔵下で一晩攪拌してリポソーム膜上の脂質ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミンとBS3との化学結合反応を完結した。そして、このリポソーム液をXM300膜と炭酸緩衝液(pH 8.5)で限外濾過(分画分子量:300,000)にかけた。次に、炭酸緩衝液(pH 8.5)1mlに溶かしたトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン40mgをリポソーム液10mlに加えた。次いで、この溶液を、室温で2時間攪拌後、冷蔵下で一晩攪拌し、分画分子量300,000で限外濾過し、遊離のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを除去し、該炭酸緩衝液をN−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH8.4)に交換し、リポソーム膜上の脂質に結合したBS3とトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとの化学結合反応を完結した。これにより、リポソーム膜の脂質ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン上にトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの水酸基が配位して水和親水性化された。
【0243】
(リポソーム膜面上へのプロテインAの結合)
リポソーム膜面上へのプロテインAの結合は、既報の手法(Yamazaki,N.,Kodama,M.and Gabius,H.−J.(1994)MethodsEnzymol.242,56−65)により、カップリング反応法を用いて行った。すなわち、この反応は2段階化学反応で行い、はじめに、実施例2で得られた10mlのリポソーム膜面上に存在するガングリオシドを1mlのN−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH 8.4)に溶かしたメタ過ヨウ素酸ナトリウム43mgを加え、冷蔵下で一晩攪拌して過ヨウ素酸酸化した。XM300膜とPBS緩衝液(pH 8.0)で限外濾過(分画分子量:300,000)することにより、遊離の過ヨウ素酸ナトリウムを除去し、N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液をPBS緩衝液(pH8.0)に交換して、酸化されたリポソーム10mlを得た。このリポソーム液に、20mgのプロテインA/PBS緩衝液(pH 8.0)を加えて室温で2時間反応させ、次に2M NaBH3CN/PBS緩衝液(pH 8.0)100μlを加えて室温で2時間、さらに冷蔵下で一晩攪拌してリポソーム上のガングリオシドとプロテインAとのカップリング反応でプロテインAを結合した。次いで、限外濾過(分画分子量:300,000)し、遊離のシアノホウ素酸ナトリウムおよびプロテインAを除去し、この溶液の緩衝液を炭酸緩衝液(pH8.5)に交換して、プロテインA結合リポソーム液10mlを得た。
【0244】
実施例1において調製したリポソームについても、実施例9と同様の方法を用いて、抗体修飾リポソームを調製する。
【0245】
(実施例10 リポソーム膜面上への抗EGFR抗体の結合)
抗EGFR抗体は、実施例4と同様の方法により精製した。PAGFP結合リポソーム10μlに対して、抗EGFR抗体を0.5μg、1μg、5μg、15μg各々添加した。これらの各溶液を、HEPES緩衝液で総容量が100μl(10倍希釈溶液となる)になるように調製した。この溶液を4℃で2時間rotateした。これらのリポソームにおいて抗体量を比較した(図5)。添加した抗体量が15μgのものが最もA431細胞に取り込まれた。
【0246】
(比較例5)
コントロールとして、抗EGFR抗体の代わりにIgG(Porcine)を同様に添加した溶液を調製したこと以外、実施例10と同様の方法を用いてIgGリポソームを調製した。
【0247】
(実施例11 細胞アッセイ)
実施例10で調製した抗体修飾リポソームのうち、抗EGFR抗体を15μg添加したものを本実施例に用いた。
【0248】
培養液(DMEM SIGMA D6046(血清:牛胎児血清(FBS)バイオロジカルCo.LTD,194481:終濃度10%となるように添加、抗生物質:ペニシリンストレプトマイシン SIGMA P0781 10mg/ml:終濃度100μg/mLとなるように添加)500μlを含む12wellプレートに、A431細胞(ヒト上皮扁平癌細胞)を播種し(細胞数は1〜2×105個/well)、37℃、5%CO2環境下で、2日間、培養した。
【0249】
抗体修飾リポソーム添加前に、無血清培地(DMEM SIGMA D6046(抗生物質 ペニシリンストレプトマイシン SIGMA P0781 10mg/ml:終濃度100μg/mLとなるように添加))500μlで3回洗浄し、無血清培地に交換した(培養液500μl)。
【0250】
1wellあたり実施例10で調製した抗体修飾リポソーム溶液を10μl添加した。添加後はCO2インキュベータ内で静置しておいた(通常培養)。観察前に無血清培地500μlで3回洗浄し、最後にPBSで洗浄して蛍光顕微鏡で観察した。観察はリポソーム添加1〜4時間後に行なった。その結果を図6に示す。抗体修飾リポソームは、EGFRを過剰発現することが知られているA431細胞に取り込まれた。
【0251】
(比較例6)
コントロールとして、比較例5で調製した、Cy3を内包したブタIgGリポソームを用いて、実施例11と同様の実験を行った。その結果を図6に示す。IgGリポソームは、A431細胞に取り込まれなかった(図6)。
【0252】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0253】
本発明は、バイオテクノロジー、特に分子イメージングにおいて応用し得る診断用の細胞・組織センシングプローブとして利用できる新規なリポソームを提供することができるという有用性を有する。
【0254】
本発明は、低い濃度の抗体溶液を用いて、抗体を効率よくリポソームの表面に結合させることができるという有用性を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0255】
【図1】図1(左)は、A431(ヒト扁平上皮ガン細胞)の写真である。 図1(右)は、HeLaS3(ヒト子宮ガン細胞)の写真である。
【図2A】Cy3内包抗EGFR抗体結合リポソームおよびCy3内包IgG(Porcine)抗体結合リポソームを用いた細胞Assayを行った結果である。抗体修飾リポソーム添加して30分後に洗浄し、さらに3時間後に蛍光顕微鏡にて観察した。添加量(Protein量)は、細胞に対する抗体の最終濃度を示す。
【図2B】Cy3内包抗EGFR抗体結合リポソームおよびCy3内包IgG(Porcine)抗体結合リポソームを用いた細胞Assayを行った結果である。抗体修飾リポソーム添加して3時間培養後、洗浄せずに蛍光顕微鏡にて観察した。添加量(Protein量)は、細胞に対する抗体の最終濃度を示す。
【図3】図3は、添加抗体量と抗体結合量の関係を示す図である。y軸は、抗体結合量:100μg/mL添加抗体量を1したときの相対値である。この添加抗体量とは、スペーサーの結合したリポソームと抗体溶液の反応時の抗体濃度である。表1のグラフから、反応時の抗体濃度100μ/mLでリポソームに結合した抗体量はピークとなることがわかった。従って、この条件で反応させた場合、リポソーム膜面に結合する抗体量が最大量となる。この最大結合量に対して、どの程度の比率で結合したのか相対値を算出し、グラフにした。x軸は、添加抗体量(単位μg/mL)である。
【図4A】Cy5.5内包抗E−セレクチン抗体結合リポソームおよびIgG(Porcine)抗体結合リポソームの胆癌部位への集積性の評価を行った図であり、添加抗体量を25μg/mLの結果である。Death:麻酔時に死亡。
【図4B】Cy5.5内包抗E−セレクチン抗体結合リポソームおよびIgG(Porcine)抗体結合リポソームの胆癌部位への集積性の評価を行った図であり、添加抗体量を50μg/mLの結果である。
【図4C】Cy5.5内包抗E−セレクチン抗体結合リポソームおよびIgG(Porcine)抗体結合リポソームの胆癌部位への集積性の評価を行った図であり、添加抗体量を75μg/mLの結果である。
【図4D】Cy5.5内包抗E−セレクチン抗体結合リポソームおよびIgG(Porcine)抗体結合リポソームの胆癌部位への集積性の評価を行った図であり、添加抗体量を100μg/mLの結果である。
【図4E】Cy5.5内包抗E−セレクチン抗体結合リポソームおよびIgG(Porcine)抗体結合リポソームの胆癌部位への集積性の評価を行った図であり、添加抗体量を75μg/mLの有意差の比較を行った結果である。
【図4F】Cy5.5内包抗E−セレクチン抗体結合リポソームおよびIgG(Porcine)抗体結合リポソームの胆癌部位への集積性の評価を行った図であり、添加抗体量を75μg/mLの個体差の比較を行った結果である。
【図4G】Cy5.5内包抗E−セレクチン抗体結合リポソームおよびIgG(Porcine)抗体結合リポソームの胆癌部位への集積性の評価を行った図であり、添加抗体量を75μg/mLの個体差の比較を行った結果である。
【図4H】Cy5.5内包抗E−セレクチン抗体結合リポソームおよびIgG(Porcine)抗体結合リポソームの胆癌部位への集積性の評価を行った図であり、添加抗体量を75μg/mLの個体差の比較を行った結果である。
【図5】抗EGFR抗体リポソームの添加量の検討をおこなった結果である。添加量が抗体量として15μg/mLで最も細胞への取り込みが認められた。また、抗EGFR抗体なし、0μg/mLのとき、ほとんど細胞への取り込みは認められなかった。
【図6】抗EGFR抗体リポソーム添加後、4時間まで、経時的に細胞内にとりこまれたが、非特異的抗体リポソームの場合、経時的な細胞への取り込みは、認められなかった。
【図7】図7は、抗体修飾リポソームの一例を示す模式図である。
【図8】図8は、抗体修飾リポソームの一例を示す模式図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)リポソームと、
(B)該リポソームに結合した血清アルブミンと、
(C)該リポソーム表面の血清アルブミンに結合したスペーサーと、
(D)該スペーサーに結合した抗体と
を含む、抗体修飾リポソーム。
【請求項2】
前記スペーサーが、以下の式:
−[CRn1Rn2]n−[S−S]r−[CRm1Rm2]m−
で表される構造を有し、
該n、mおよびrは、独立して0以上の整数であり、ただし、n+m+rは1以上であり、
該Rn1および該Rn2は、独立して、水素もしくは置換基であるかまたは隣接する炭素との二重結合を意味するか、または該Rn1とRn2とが一緒になって=Oもしくは隣接する炭素との三重結合を意味するか、あるいは隣接する複数の炭素原子とアリール基を形成し、
該Rm1および該Rm2は、独立して、水素もしくは置換基であるかまたは隣接する炭素との二重結合を意味するか、または該Rm1と該Rm2とが一緒になって=Oであり、そして
は、独立して、水素であるか、またはRm1と一緒になって=Oもしくは隣接する炭素との三重結合を意味するか、あるいは隣接する複数の炭素原子とアリール基を形成し、
該置換基は、それぞれ独立して、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アルコキシ、炭素環基、ヘテロ環基、ハロゲン、ヒドロキシ、チオ−ル、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、アシル、チオカルボキシ、アミド、置換されたアミド、置換されたカルボニル、置換されたチオカルボニル、置換されたスルホニルおよび置換されたスルフィニルからなる群より選択される、
請求項1に記載の抗体修飾リポソーム。
【請求項3】
前記n+mは1〜20の整数であり、前記置換基は、アリール、カルボニル、アミノ、カルボキシおよびヒドロキシからなる群より選択される、請求項2に記載の抗体修飾リポソーム。
【請求項4】
前記血清アルブミンが、ヒト由来血清アルブミンである、請求項1に記載の抗体修飾リポソーム。
【請求項5】
前記抗体は、抗体全体またはその免疫原性フラグメントである、請求項1に記載の抗体修飾リポソーム。
【請求項6】
さらに標識物質を含む、請求項1に記載の抗体修飾リポソーム。
【請求項7】
前記抗体修飾リポソームに含まれるタンパク質量が、該抗体修飾リポソーム作製時の添加抗体量換算で約0.025mg/mL〜0.5mg/mLの範囲にある、請求項1に記載の抗体修飾リポソーム。
【請求項8】
前記抗体修飾リポソームに含まれるタンパク質量が、該抗体修飾リポソーム作製時の添加抗体量換算で約0.050mg/mL〜0.075mg/mLの範囲にある、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
抗体修飾リポソームを製造する方法であって、該方法は、以下:
A)リポソームを提供する工程;
B)該リポソームと血清アルブミンとを、該リポソームと該血清アルブミンとが結合する条件下で接触させて、血清アルブミン結合リポソームを生成させる工程;および
C)該血清アルブミン結合リポソームと抗体とを、スペーサーの存在下で該血清アルブミンと該抗体とが該スペーサーを介して結合する条件下で接触させて、抗体修飾リポソームを生成させる工程
を包含する、方法。
【請求項10】
前記スペーサーが、以下の式:
−[CRn1Rn2]n−[S−S]r−[CRm1Rm2]m−
で表される構造を有し、
該n、mおよびrは、独立して0以上の整数であり、ただし、n+m+rは1以上であり、
該Rn1および該Rn2は、独立して、水素もしくは置換基であるかまたは隣接する炭素との二重結合を意味するか、または該Rn1とRn2とが一緒になって=Oもしくは隣接する炭素との三重結合を意味するか、あるいは隣接する複数の炭素原子とアリール基を形成し、
該Rm1および該Rm2は、独立して、水素もしくは置換基であるかまたは隣接する炭素との二重結合を意味するか、または該Rm1と該Rm2とが一緒になって=Oであり、そして
は、独立して、水素であるか、またはRm1と一緒になって=Oもしくは隣接する炭素との三重結合を意味するか、あるいは隣接する複数の炭素原子とアリール基を形成し、
該置換基は、それぞれ独立して、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アルコキシ、炭素環基、ヘテロ環基、ハロゲン、ヒドロキシ、チオ−ル、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、アシル、チオカルボキシ、アミド、置換されたアミド、置換されたカルボニル、置換されたチオカルボニル、置換されたスルホニルおよび置換されたスルフィニルからなる群より選択される、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記n+mは1〜20の整数であり、前記置換基は、アリール、カルボニル、アミノ、カルボキシおよびヒドロキシからなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記リポソームが、標識物質を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記標識物質が、
【化1】
【化2】
Cy7、Cy3B、Cy3.5、Alexa Fluoro350、Alexa Fluoro488、Alexa Fluoro532、Alexa Fluoro546、Alexa Fluoro594、Alexa Fluoro633、Alexa Fluoro647、Alexa Fluoro680、Alexa Fluoro700、Alexa Fluoro750、フルオレセイン−4−イソチオシアネート(FITC)、ローダミンおよびカルセインからなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記B)工程が、前記リポソームをトリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカンにより親水性化処理する工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記B)工程において、前記リポソームと該血清アルブミンとが結合する条件が、該リポソームを含む溶液に、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを添加し、20〜30℃で、2〜24時間にわたって攪拌し、親水性化状態にする条件である、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記B)工程が、以下:
(B1)前記リポソームを含む溶液に、炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)溶液を添加し、20〜30℃で2〜24時間撹拌して、リポソーム粒子表面を親水性の状態にする工程;
(B2)(B1)工程において、粒子表面が親水性化されたリポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去し、該炭酸緩衝液をトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換する工程;
(B3)(B2)工程において、該緩衝液が該トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液に交換された溶液に、血清アルブミンを含むトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)を添加して20〜30℃で反応させて反応溶液を生成する工程;および
(B4)該反応溶液に、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS緩衝液、pH7.0〜9.0)を添加して、20〜30℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該血清アルブミンを除去し、該溶液の緩衝液をPBS緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換する工程を包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記(B)工程が、以下:
(B1−1)前記蛍光色素を内包したかまたは結合したリポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、該溶液中に含まれる緩衝液を炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)に交換する工程;
(B1−2)該(B1−1)工程において該緩衝液が該炭酸緩衝液に変換された溶液にビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去する工程;および
(B1−3)該(B1−2)工程において、該遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去した溶液に、0.5〜1mM トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)溶液を添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、さらに冷蔵〜室温で一晩撹拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを除去し、該炭酸緩衝液をN−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換して親水性化処理されたリポソームを含む溶液を生成させる工程
をさらに包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記C)工程が、以下:
(C1)該リポソームを含む溶液に、架橋剤を添加して、20〜30℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該架橋剤を除去する工程であって、該架橋剤は、3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート、ジチオビス[スクシンイミジルプロピオネート]、およびジスクシンイミジルスベレートからなる群より選択される;および
(C2)(C1)工程において、該遊離の該架橋剤を除去した溶液に、該抗体溶液を添加して、20〜30℃で反応させ、炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)を添加し、20〜30℃で2〜4時間撹拌し、分画分子量150K〜300Kで限外濾過し、遊離の該抗体と該架橋剤を除去する工程;および
(C3)(C2)工程において、遊離の該抗体と該架橋剤を除去した溶液の緩衝液を、炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)に交換する工程を包含する、
請求項9に記載の方法。
【請求項19】
前記架橋剤が、3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)である、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体が、抗体全体またはその免疫原性フラグメントである、請求項9に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体修飾リポソームに含まれるタンパク質量が、該抗体修飾リポソーム作製時の添加抗体量換算で約0.025mg/mL〜0.5mg/mLの範囲にある、請求項9に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体修飾リポソームに含まれるタンパク質量が、該抗体修飾リポソーム作製時の添加抗体量換算で約0.050mg/mL〜0.075mg/mLの範囲にある、請求項9に記載の方法。
【請求項23】
前記A)工程において提供されるリポソームが、標識物質として、
【化3】
【化4】
Cy7、Cy3B、Cy3.5、Alexa Fluoro350、Alexa Fluoro488、Alexa Fluoro532、Alexa Fluoro546、Alexa Fluoro594、Alexa Fluoro633、Alexa Fluoro647、Alexa Fluoro680、Alexa Fluoro700、Alexa Fluoro750、フルオレセイン−4−イソチオシアネート(FITC)、ローダミンおよびカルセインからなる群より選択される標識物質を含み、
前記リポソームをトリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカンにより親水性化処理する工程をさらに包含し、
前記B)工程が、以下:
(B1−1)前記蛍光色素を内包したかまたは結合したリポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、該溶液中に含まれる緩衝液を炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)に交換する工程;
(B1−2)該(B1−1)工程において該緩衝液が該炭酸緩衝液に変換された溶液にビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去する工程;および
(B1−3)該(B1−2)工程において、該遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去した溶液に、0.5〜1mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)溶液を添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、さらに冷蔵〜室温で一晩撹拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを除去し、該炭酸緩衝液をN−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換して親水性化処理されたリポソームを含む溶液を生成させる工程を包含する、工程;
(B2)(B1)工程において、粒子表面が親水性化されたリポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去し、該炭酸緩衝液をトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換する工程;
(B3)(B2)工程において、該緩衝液が該トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液に交換された溶液に、血清アルブミンを含むトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)を添加して20〜30℃で反応させて反応溶液を生成する工程;および
(B4)該反応溶液に、PBS緩衝液(pH7.0〜9.0)を添加して、20〜30℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該血清アルブミンを除去し、該溶液の緩衝液をPBS緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換する工程を包含する工程であり、そして
前記C)工程が、以下:
(C1)該リポソームを含む溶液に、3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)を添加して、20〜30℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)を除去する工程;および
(C2)(C1)工程において、該遊離の該3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)を除去した溶液に、該抗E−セレクチン抗体溶液を添加して、20〜30℃で反応させ、炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)を添加し、20〜30℃で2〜4時間撹拌し、分画分子量150K〜300Kで限外濾過し、遊離の該抗体と該3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)を除去する工程;および
(C3)(C2)工程において、遊離の該抗体と該3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)を除去した溶液の緩衝液を、炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)に交換する工程を包含する工程であって、
ここで、該抗体は、抗EGFR抗体、IgG、抗E−セレクチン抗体および抗p−セレクチン抗体からなる群より選択され、かつ該抗体を含む溶液には、該抗体が0.05〜1/mLの範囲で含まれる、請求項9に記載の方法。
【請求項24】
抗体修飾リポソームを製造する方法であって、該方法は、以下:
a)リポソームを提供する工程;
b)該リポソームとプロテインAとを、該リポソームと該プロテインAとが結合する条件下で接触させる工程;および
c)該プロテインAが結合したリポソームと抗体とを、該プロテインAと該抗体とが直接結合する条件下で接触させる工程
を包含する、方法。
【請求項25】
前記リポソームが、標識物質として、
【化5】
【化6】
Cy7、Cy3B、Cy3.5、Alexa Fluoro350、Alexa Fluoro488、Alexa Fluoro532、Alexa Fluoro546、Alexa Fluoro594、Alexa Fluoro633、Alexa Fluoro647、Alexa Fluoro680、Alexa Fluoro700、Alexa Fluoro750、フルオレセイン−4−イソチオシアネート(FITC)、ローダミンおよびカルセインからなる群より選択される標識物質を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記b)工程が、前記リポソームをトリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカンにより親水性化処理する工程を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記b)工程が、以下:
(b1−1)前記リポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、該溶液中に含まれる緩衝液を炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)に交換する工程;
(b1−2)該(b1−1)工程において該緩衝液が該炭酸緩衝液に変換された溶液にビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去する工程;および
(b1−3)該(b1−2)工程において、該遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去した溶液に、0.5〜1mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)溶液を添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、さらに冷蔵〜室温で一晩撹拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを除去し、該炭酸緩衝液をN−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換して親水性化処理されたリポソームを含む溶液を生成させる工程を包含する、工程;
(b2)該親水性化したリポソームを含む溶液に、メタ過ヨウ素酸ナトリウム/N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)溶液を添加し、冷蔵〜室温で一晩撹拌して、リポソーム粒子表面を酸化する工程;
(b3)(b2)工程において、粒子表面が酸化されたリポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該メタ過ヨウ素酸ナトリウムを除去し、該N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液をPBS緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換する工程;
(b4)(b3)工程において、該緩衝液が該PBS緩衝液に交換された溶液に、プロテインA/PBS緩衝液(pH7.0〜9.0)を添加して冷蔵〜室温で反応させて反応溶液を生成する工程;
(b5)さらに、該反応溶液に、シアノホウ素酸ナトリウム/PBS緩衝液(pH7.0〜9.0)を添加して、冷蔵〜室温で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該シアノホウ素酸ナトリウムおよび該プロテインAを除去し該溶液の緩衝液を2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(pH6.8〜8.0)に交換する工程を包含する工程
を包含する、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記c)工程が、以下:
(c1)前記リポソームを含む溶液に、抗体溶液を添加して、4〜30℃で反応させ、2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(pH6.8〜8.0)を添加し、4〜30℃で2時間〜一晩にわたり撹拌し、分画分子量150K〜300Kで限外濾過し、遊離の該抗体を除去する工程;および
(c2)(c1)工程において、遊離の該抗体を除去した溶液の緩衝液を、2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(pH6.8〜8.0)に交換する工程を包含する工程である、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記抗体は、抗体全体またはその免疫原性フラグメントである、請求項24記載の方法。
【請求項30】
前記抗体を含む溶液には、前記抗体が0.025〜10mg/mLの範囲で含まれる、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
抗体修飾リポソームを製造する方法であって、該方法は、以下:
a)リポソームを提供する工程;
b)該リポソームとプロテインAとを、該リポソームと該プロテインAとが結合する条件下で接触させる工程;および
c)該プロテインAが結合したリポソームと抗体とを、該プロテインAと該抗体とが直接結合する条件下で接触させる工程
を包含し、ここで
前記a)工程において提供されるリポソームが、標識物質として、
【化7】
【化8】
Cy7、Cy3B、Cy3.5、Alexa Fluoro350、Alexa Fluoro488、Alexa Fluoro532、Alexa Fluoro546、Alexa Fluoro594、Alexa Fluoro633、Alexa Fluoro647、Alexa Fluoro680、Alexa Fluoro700、Alexa Fluoro750、フルオレセイン−4−イソチオシアネート(FITC)、ローダミンおよびカルセインからなる群より選択される標識物質を含み、
前記b)工程が、以下:
(b1−1)該リポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、該溶液中に含まれる緩衝液を炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)に交換する工程;
(b1−2)該(b1−1)工程において該緩衝液が該炭酸緩衝液に変換された溶液にビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去する工程;および
(b1−3)該(b1−2)工程において、該遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去した溶液に、40mgトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)溶液を添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、さらに冷蔵〜室温で一晩撹拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを除去し、該炭酸緩衝液をN−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換して親水性化処理されたリポソームを含む溶液を生成させる工程を包含する、工程;
(b2)該親水性化したリポソームを含む溶液に、メタ過ヨウ素酸ナトリウム/N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)溶液を添加し、冷蔵〜室温で一晩撹拌して、リポソーム粒子表面を酸化する工程;
(b3)(b2)工程において、粒子表面が酸化されたリポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該メタ過ヨウ素酸ナトリウムを除去し、該N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液をPBS緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換する工程;
(b4)(b3)工程において、該緩衝液が該PBS緩衝液に交換された溶液に、プロテインA/PBS緩衝液(pH7.0〜9.0)を添加して冷蔵〜室温で反応させて反応溶液を生成する工程;
(b5)さらに、該反応溶液に、シアノホウ素酸ナトリウム/PBS緩衝液(pH7.0〜9.0)を添加して、冷蔵〜室温で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該シアノホウ素酸ナトリウムおよび該プロテインAを除去し該溶液の緩衝液を2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(pH6.8〜8.0)に交換する工程を包含する工程であり、そして
前記c)工程が、以下:
(c1)該リポソームを含む溶液に、抗体溶液を添加して、4〜30℃で反応させ、2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(pH6.8〜8.0)を添加し、4〜30℃で2時間〜一晩にわたり撹拌し、分画分子量150K〜300Kで限外濾過し、遊離の該抗体を除去する工程;および
(c2)(c1)工程において、遊離の該抗体を除去した溶液の緩衝液を、2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(pH6.8〜8.0)に交換する工程を包含する工程であって、
ここで、該抗体は、抗体全体またはその免疫原性フラグメントであり、かつ該抗体を含む溶液には、抗体が0.025〜0.5mg/mLの範囲で含まれる、方法。
【請求項1】
(A)リポソームと、
(B)該リポソームに結合した血清アルブミンと、
(C)該リポソーム表面の血清アルブミンに結合したスペーサーと、
(D)該スペーサーに結合した抗体と
を含む、抗体修飾リポソーム。
【請求項2】
前記スペーサーが、以下の式:
−[CRn1Rn2]n−[S−S]r−[CRm1Rm2]m−
で表される構造を有し、
該n、mおよびrは、独立して0以上の整数であり、ただし、n+m+rは1以上であり、
該Rn1および該Rn2は、独立して、水素もしくは置換基であるかまたは隣接する炭素との二重結合を意味するか、または該Rn1とRn2とが一緒になって=Oもしくは隣接する炭素との三重結合を意味するか、あるいは隣接する複数の炭素原子とアリール基を形成し、
該Rm1および該Rm2は、独立して、水素もしくは置換基であるかまたは隣接する炭素との二重結合を意味するか、または該Rm1と該Rm2とが一緒になって=Oであり、そして
は、独立して、水素であるか、またはRm1と一緒になって=Oもしくは隣接する炭素との三重結合を意味するか、あるいは隣接する複数の炭素原子とアリール基を形成し、
該置換基は、それぞれ独立して、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アルコキシ、炭素環基、ヘテロ環基、ハロゲン、ヒドロキシ、チオ−ル、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、アシル、チオカルボキシ、アミド、置換されたアミド、置換されたカルボニル、置換されたチオカルボニル、置換されたスルホニルおよび置換されたスルフィニルからなる群より選択される、
請求項1に記載の抗体修飾リポソーム。
【請求項3】
前記n+mは1〜20の整数であり、前記置換基は、アリール、カルボニル、アミノ、カルボキシおよびヒドロキシからなる群より選択される、請求項2に記載の抗体修飾リポソーム。
【請求項4】
前記血清アルブミンが、ヒト由来血清アルブミンである、請求項1に記載の抗体修飾リポソーム。
【請求項5】
前記抗体は、抗体全体またはその免疫原性フラグメントである、請求項1に記載の抗体修飾リポソーム。
【請求項6】
さらに標識物質を含む、請求項1に記載の抗体修飾リポソーム。
【請求項7】
前記抗体修飾リポソームに含まれるタンパク質量が、該抗体修飾リポソーム作製時の添加抗体量換算で約0.025mg/mL〜0.5mg/mLの範囲にある、請求項1に記載の抗体修飾リポソーム。
【請求項8】
前記抗体修飾リポソームに含まれるタンパク質量が、該抗体修飾リポソーム作製時の添加抗体量換算で約0.050mg/mL〜0.075mg/mLの範囲にある、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
抗体修飾リポソームを製造する方法であって、該方法は、以下:
A)リポソームを提供する工程;
B)該リポソームと血清アルブミンとを、該リポソームと該血清アルブミンとが結合する条件下で接触させて、血清アルブミン結合リポソームを生成させる工程;および
C)該血清アルブミン結合リポソームと抗体とを、スペーサーの存在下で該血清アルブミンと該抗体とが該スペーサーを介して結合する条件下で接触させて、抗体修飾リポソームを生成させる工程
を包含する、方法。
【請求項10】
前記スペーサーが、以下の式:
−[CRn1Rn2]n−[S−S]r−[CRm1Rm2]m−
で表される構造を有し、
該n、mおよびrは、独立して0以上の整数であり、ただし、n+m+rは1以上であり、
該Rn1および該Rn2は、独立して、水素もしくは置換基であるかまたは隣接する炭素との二重結合を意味するか、または該Rn1とRn2とが一緒になって=Oもしくは隣接する炭素との三重結合を意味するか、あるいは隣接する複数の炭素原子とアリール基を形成し、
該Rm1および該Rm2は、独立して、水素もしくは置換基であるかまたは隣接する炭素との二重結合を意味するか、または該Rm1と該Rm2とが一緒になって=Oであり、そして
は、独立して、水素であるか、またはRm1と一緒になって=Oもしくは隣接する炭素との三重結合を意味するか、あるいは隣接する複数の炭素原子とアリール基を形成し、
該置換基は、それぞれ独立して、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アルコキシ、炭素環基、ヘテロ環基、ハロゲン、ヒドロキシ、チオ−ル、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、アシル、チオカルボキシ、アミド、置換されたアミド、置換されたカルボニル、置換されたチオカルボニル、置換されたスルホニルおよび置換されたスルフィニルからなる群より選択される、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記n+mは1〜20の整数であり、前記置換基は、アリール、カルボニル、アミノ、カルボキシおよびヒドロキシからなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記リポソームが、標識物質を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記標識物質が、
【化1】
【化2】
Cy7、Cy3B、Cy3.5、Alexa Fluoro350、Alexa Fluoro488、Alexa Fluoro532、Alexa Fluoro546、Alexa Fluoro594、Alexa Fluoro633、Alexa Fluoro647、Alexa Fluoro680、Alexa Fluoro700、Alexa Fluoro750、フルオレセイン−4−イソチオシアネート(FITC)、ローダミンおよびカルセインからなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記B)工程が、前記リポソームをトリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカンにより親水性化処理する工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記B)工程において、前記リポソームと該血清アルブミンとが結合する条件が、該リポソームを含む溶液に、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを添加し、20〜30℃で、2〜24時間にわたって攪拌し、親水性化状態にする条件である、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記B)工程が、以下:
(B1)前記リポソームを含む溶液に、炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)溶液を添加し、20〜30℃で2〜24時間撹拌して、リポソーム粒子表面を親水性の状態にする工程;
(B2)(B1)工程において、粒子表面が親水性化されたリポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去し、該炭酸緩衝液をトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換する工程;
(B3)(B2)工程において、該緩衝液が該トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液に交換された溶液に、血清アルブミンを含むトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)を添加して20〜30℃で反応させて反応溶液を生成する工程;および
(B4)該反応溶液に、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS緩衝液、pH7.0〜9.0)を添加して、20〜30℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該血清アルブミンを除去し、該溶液の緩衝液をPBS緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換する工程を包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記(B)工程が、以下:
(B1−1)前記蛍光色素を内包したかまたは結合したリポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、該溶液中に含まれる緩衝液を炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)に交換する工程;
(B1−2)該(B1−1)工程において該緩衝液が該炭酸緩衝液に変換された溶液にビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去する工程;および
(B1−3)該(B1−2)工程において、該遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去した溶液に、0.5〜1mM トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)溶液を添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、さらに冷蔵〜室温で一晩撹拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを除去し、該炭酸緩衝液をN−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換して親水性化処理されたリポソームを含む溶液を生成させる工程
をさらに包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記C)工程が、以下:
(C1)該リポソームを含む溶液に、架橋剤を添加して、20〜30℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該架橋剤を除去する工程であって、該架橋剤は、3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート、ジチオビス[スクシンイミジルプロピオネート]、およびジスクシンイミジルスベレートからなる群より選択される;および
(C2)(C1)工程において、該遊離の該架橋剤を除去した溶液に、該抗体溶液を添加して、20〜30℃で反応させ、炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)を添加し、20〜30℃で2〜4時間撹拌し、分画分子量150K〜300Kで限外濾過し、遊離の該抗体と該架橋剤を除去する工程;および
(C3)(C2)工程において、遊離の該抗体と該架橋剤を除去した溶液の緩衝液を、炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)に交換する工程を包含する、
請求項9に記載の方法。
【請求項19】
前記架橋剤が、3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)である、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体が、抗体全体またはその免疫原性フラグメントである、請求項9に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体修飾リポソームに含まれるタンパク質量が、該抗体修飾リポソーム作製時の添加抗体量換算で約0.025mg/mL〜0.5mg/mLの範囲にある、請求項9に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体修飾リポソームに含まれるタンパク質量が、該抗体修飾リポソーム作製時の添加抗体量換算で約0.050mg/mL〜0.075mg/mLの範囲にある、請求項9に記載の方法。
【請求項23】
前記A)工程において提供されるリポソームが、標識物質として、
【化3】
【化4】
Cy7、Cy3B、Cy3.5、Alexa Fluoro350、Alexa Fluoro488、Alexa Fluoro532、Alexa Fluoro546、Alexa Fluoro594、Alexa Fluoro633、Alexa Fluoro647、Alexa Fluoro680、Alexa Fluoro700、Alexa Fluoro750、フルオレセイン−4−イソチオシアネート(FITC)、ローダミンおよびカルセインからなる群より選択される標識物質を含み、
前記リポソームをトリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカンにより親水性化処理する工程をさらに包含し、
前記B)工程が、以下:
(B1−1)前記蛍光色素を内包したかまたは結合したリポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、該溶液中に含まれる緩衝液を炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)に交換する工程;
(B1−2)該(B1−1)工程において該緩衝液が該炭酸緩衝液に変換された溶液にビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去する工程;および
(B1−3)該(B1−2)工程において、該遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去した溶液に、0.5〜1mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)溶液を添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、さらに冷蔵〜室温で一晩撹拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを除去し、該炭酸緩衝液をN−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換して親水性化処理されたリポソームを含む溶液を生成させる工程を包含する、工程;
(B2)(B1)工程において、粒子表面が親水性化されたリポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去し、該炭酸緩衝液をトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換する工程;
(B3)(B2)工程において、該緩衝液が該トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液に交換された溶液に、血清アルブミンを含むトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)を添加して20〜30℃で反応させて反応溶液を生成する工程;および
(B4)該反応溶液に、PBS緩衝液(pH7.0〜9.0)を添加して、20〜30℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該血清アルブミンを除去し、該溶液の緩衝液をPBS緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換する工程を包含する工程であり、そして
前記C)工程が、以下:
(C1)該リポソームを含む溶液に、3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)を添加して、20〜30℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)を除去する工程;および
(C2)(C1)工程において、該遊離の該3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)を除去した溶液に、該抗E−セレクチン抗体溶液を添加して、20〜30℃で反応させ、炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)を添加し、20〜30℃で2〜4時間撹拌し、分画分子量150K〜300Kで限外濾過し、遊離の該抗体と該3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)を除去する工程;および
(C3)(C2)工程において、遊離の該抗体と該3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)を除去した溶液の緩衝液を、炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)に交換する工程を包含する工程であって、
ここで、該抗体は、抗EGFR抗体、IgG、抗E−セレクチン抗体および抗p−セレクチン抗体からなる群より選択され、かつ該抗体を含む溶液には、該抗体が0.05〜1/mLの範囲で含まれる、請求項9に記載の方法。
【請求項24】
抗体修飾リポソームを製造する方法であって、該方法は、以下:
a)リポソームを提供する工程;
b)該リポソームとプロテインAとを、該リポソームと該プロテインAとが結合する条件下で接触させる工程;および
c)該プロテインAが結合したリポソームと抗体とを、該プロテインAと該抗体とが直接結合する条件下で接触させる工程
を包含する、方法。
【請求項25】
前記リポソームが、標識物質として、
【化5】
【化6】
Cy7、Cy3B、Cy3.5、Alexa Fluoro350、Alexa Fluoro488、Alexa Fluoro532、Alexa Fluoro546、Alexa Fluoro594、Alexa Fluoro633、Alexa Fluoro647、Alexa Fluoro680、Alexa Fluoro700、Alexa Fluoro750、フルオレセイン−4−イソチオシアネート(FITC)、ローダミンおよびカルセインからなる群より選択される標識物質を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記b)工程が、前記リポソームをトリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカンにより親水性化処理する工程を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記b)工程が、以下:
(b1−1)前記リポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、該溶液中に含まれる緩衝液を炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)に交換する工程;
(b1−2)該(b1−1)工程において該緩衝液が該炭酸緩衝液に変換された溶液にビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去する工程;および
(b1−3)該(b1−2)工程において、該遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去した溶液に、0.5〜1mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)溶液を添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、さらに冷蔵〜室温で一晩撹拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを除去し、該炭酸緩衝液をN−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換して親水性化処理されたリポソームを含む溶液を生成させる工程を包含する、工程;
(b2)該親水性化したリポソームを含む溶液に、メタ過ヨウ素酸ナトリウム/N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)溶液を添加し、冷蔵〜室温で一晩撹拌して、リポソーム粒子表面を酸化する工程;
(b3)(b2)工程において、粒子表面が酸化されたリポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該メタ過ヨウ素酸ナトリウムを除去し、該N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液をPBS緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換する工程;
(b4)(b3)工程において、該緩衝液が該PBS緩衝液に交換された溶液に、プロテインA/PBS緩衝液(pH7.0〜9.0)を添加して冷蔵〜室温で反応させて反応溶液を生成する工程;
(b5)さらに、該反応溶液に、シアノホウ素酸ナトリウム/PBS緩衝液(pH7.0〜9.0)を添加して、冷蔵〜室温で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該シアノホウ素酸ナトリウムおよび該プロテインAを除去し該溶液の緩衝液を2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(pH6.8〜8.0)に交換する工程を包含する工程
を包含する、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記c)工程が、以下:
(c1)前記リポソームを含む溶液に、抗体溶液を添加して、4〜30℃で反応させ、2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(pH6.8〜8.0)を添加し、4〜30℃で2時間〜一晩にわたり撹拌し、分画分子量150K〜300Kで限外濾過し、遊離の該抗体を除去する工程;および
(c2)(c1)工程において、遊離の該抗体を除去した溶液の緩衝液を、2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(pH6.8〜8.0)に交換する工程を包含する工程である、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記抗体は、抗体全体またはその免疫原性フラグメントである、請求項24記載の方法。
【請求項30】
前記抗体を含む溶液には、前記抗体が0.025〜10mg/mLの範囲で含まれる、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
抗体修飾リポソームを製造する方法であって、該方法は、以下:
a)リポソームを提供する工程;
b)該リポソームとプロテインAとを、該リポソームと該プロテインAとが結合する条件下で接触させる工程;および
c)該プロテインAが結合したリポソームと抗体とを、該プロテインAと該抗体とが直接結合する条件下で接触させる工程
を包含し、ここで
前記a)工程において提供されるリポソームが、標識物質として、
【化7】
【化8】
Cy7、Cy3B、Cy3.5、Alexa Fluoro350、Alexa Fluoro488、Alexa Fluoro532、Alexa Fluoro546、Alexa Fluoro594、Alexa Fluoro633、Alexa Fluoro647、Alexa Fluoro680、Alexa Fluoro700、Alexa Fluoro750、フルオレセイン−4−イソチオシアネート(FITC)、ローダミンおよびカルセインからなる群より選択される標識物質を含み、
前記b)工程が、以下:
(b1−1)該リポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、該溶液中に含まれる緩衝液を炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)に交換する工程;
(b1−2)該(b1−1)工程において該緩衝液が該炭酸緩衝液に変換された溶液にビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去する工程;および
(b1−3)該(b1−2)工程において、該遊離の該ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートを除去した溶液に、40mgトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/炭酸緩衝液(pH8.0〜9.0)溶液を添加して、冷蔵〜約37℃で攪拌し、さらに冷蔵〜室温で一晩撹拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを除去し、該炭酸緩衝液をN−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換して親水性化処理されたリポソームを含む溶液を生成させる工程を包含する、工程;
(b2)該親水性化したリポソームを含む溶液に、メタ過ヨウ素酸ナトリウム/N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液(pH7.0〜9.0)溶液を添加し、冷蔵〜室温で一晩撹拌して、リポソーム粒子表面を酸化する工程;
(b3)(b2)工程において、粒子表面が酸化されたリポソームを含む溶液を、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該メタ過ヨウ素酸ナトリウムを除去し、該N−トリス(ヒドロキシメチル)−3−アミノプロパンスルホン酸緩衝液をPBS緩衝液(pH7.0〜9.0)に交換する工程;
(b4)(b3)工程において、該緩衝液が該PBS緩衝液に交換された溶液に、プロテインA/PBS緩衝液(pH7.0〜9.0)を添加して冷蔵〜室温で反応させて反応溶液を生成する工程;
(b5)さらに、該反応溶液に、シアノホウ素酸ナトリウム/PBS緩衝液(pH7.0〜9.0)を添加して、冷蔵〜室温で攪拌し、分画分子量100K〜300Kで限外濾過し、遊離の該シアノホウ素酸ナトリウムおよび該プロテインAを除去し該溶液の緩衝液を2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(pH6.8〜8.0)に交換する工程を包含する工程であり、そして
前記c)工程が、以下:
(c1)該リポソームを含む溶液に、抗体溶液を添加して、4〜30℃で反応させ、2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(pH6.8〜8.0)を添加し、4〜30℃で2時間〜一晩にわたり撹拌し、分画分子量150K〜300Kで限外濾過し、遊離の該抗体を除去する工程;および
(c2)(c1)工程において、遊離の該抗体を除去した溶液の緩衝液を、2−[4−(2−ヒドロキシルエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(pH6.8〜8.0)に交換する工程を包含する工程であって、
ここで、該抗体は、抗体全体またはその免疫原性フラグメントであり、かつ該抗体を含む溶液には、抗体が0.025〜0.5mg/mLの範囲で含まれる、方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2010−215509(P2010−215509A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181556(P2007−181556)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(390016377)片山化学工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(390016377)片山化学工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
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