説明

抗体産生を改善するための方法

本発明は、huC242変異体などの、抗体変異体またはその断片を製造する工程を含み、ここで、変異体は、親抗体中の1以上のアミノ酸残基を置換することによって製造される。こうした置換(単数または複数)は、好ましくは、重鎖および軽鎖を含む親抗体の可変領域フレームワーク配列中で行われる。こうした置換(単数または複数)の結果、変異体抗体またはその断片は、宿主細胞中に導入した場合、親抗体と比較した際に、増進された抗体合成を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[01]本出願は、2006年10月31日出願の米国仮出願第60/855,361号に優先権を請求し、該出願の全開示は、本明細書に援用される。
【0002】
[02]本発明は、抗体産生を改善する方法に関する。より詳細には、再操作された(reengineered)抗体が、再操作された抗体の親抗体に比較した際に、宿主細胞においてより高収量で産生されるように、抗体を再操作する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[03]モノクローナル抗体は、in vitro診断、実験室試薬、および療法剤を含む、広い範囲の使用を有する。現在、臨床試験を受けている、少なくとも200の抗体または抗体断片がある(Morrow, K.J., Jr., Monoclonal antibody production techniques. Gen. Eng. News, 2002, 20(14):21)。
【0004】
[04]CHO細胞における抗体の高レベル発現には、転写から翻訳および分泌までの最適な効率が必要である。哺乳動物発現プラスミドは、主に、hCMV極初期遺伝子エンハンサーおよびプロモーター配列のような強力なウイルスエンハンサーと一緒に、SV40ポリA部位のような転写物安定化ポリアデニル化シグナルを用いることを通じて、高いmRNAレベルを達成するよう設計されている。抗体コード配列内の隠れたスプライス部位および他の潜在的な有害シス要素を除去することによって、mRNAレベルがさらに増進するように合成cDNA構築物を設計してもよい。さらに、合成構築物は、最適コドン使用を通じて、そしてmRNA二次構造エネルギーを最小限にすることによって、遺伝子翻訳機構を増進しうる(Trinh R, Gurbaxani B, Morrison SL, Seyfzadeh M. Optimization of codon pair use within the (GGGGS)3 linker sequence results in enhanced protein expression. Mol Immunol. 2004 Jan; 40(10):717-22)。しかし、こうした最適化発現系を用いた場合であっても、哺乳動物細胞における発現レベルは、異なる抗体間で有意に多様でありうる。発現プラスミドから抗体分子を合成するのに必要な、異なる細胞工程の分析によって、抗体の可変領域の特性が、所定の抗体の発現レベルに影響を及ぼしうるという概念が導かれた。しかし、転写または翻訳効率に関わりなく、遺伝子発現に影響を及ぼしうる可変領域の配列および構造の特性に関しては、ほとんどわかっていない。
【0005】
[05]可変領域遺伝子の特定のサブクラス由来の多くの抗体は、生物物理学的に、安定性が劣る素因があり、これが低い遺伝子発現につながりうる。ヒト軽鎖および重鎖可変領域は、ヒトscFvファージライブラリーの分析に基づいて、多様な度合いの構造安定性を持つサブグループに分類可能である(Ewert S, Honegger A, Plueckthun A. Structure-based improvement of the biophysical properties of immunoglobulin VH domains with a generalizable approach. Biochemistry. 2003 Feb 18; 42(6):1517-28)。安定性が劣るメンバーを含むサブグループに属する抗体または断片は、凝集する傾向を有する可能性もあり、そしてフォールディングまたはアセンブリーが効率的でないため、発現が困難である可能性もある。
【0006】
[06]さらに、フォールディングおよび分泌のようなプロセスにおいて、重大な役割を果たす残基は、しばしば、生殖系列配列において非常に保存されているが、一次抗体レパートリーの生成および体細胞突然変異を通じたアフィニティー成熟の間に改変されうる。これは、安定性が劣り、そして発現が低い抗体につながりうる。単一残基変化は、シャペロン結合または軽鎖/重鎖アセンブリーを劇的に改変し、そして最終的には分解される、細胞内不対重鎖の増加を生じる可能性もある(Dul JL, Argon Y. A single amino acid substitution in the variable region of the light chain specifically blocks immunoglobulin secretion. Proc Natl Acad Sci U S A. 1990 Oct; 87(20):8135-9; Wiens GD, Lekkerkerker A, Veltman I, Rittenberg MB. Mutation of a single conserved residue in VH complementarity-determining region 2 results in a severe Ig secretion defect. J Immunol. 2001 Aug 15;167(4):2179-86)。他の不安定化させる突然変異には、埋没親水性残基または表面疎水性残基の導入が含まれる。重鎖Glu6/Gln6のような不変コアパッケージング残基はまた、H7およびH10のような隣接位における残基変化に対しても感受性である(Honegger A, Plueckthun A. The influence of the buried glutamine or glutamate residue in position 6 on the structure of immunoglobulin variable domains. J Mol Biol. 2001 Jun 8; 309(3):687-99)。体細胞突然変異が、臨界構造閾値を超えない限り、多くの生物物理学的に望ましくない配列が、天然存在抗体中に見られうる。
【0007】
[07]合理的配列再操作アプローチを用いて、多くの抗体の安定性および発現潜在能力を増進させうる。抗体を再操作する最も単純なアプローチの1つは、何千もの抗体配列のデータベース中に存在する情報を利用することである(例えば、Johnson G, Wu TT. Kabat Database and its applications: future directions. Nucleic Acids Res. 2001 Jan 1; 29(1):205-6を参照されたい)。注意深く分析すると、問題が多い可能性がある残基を同定することも可能である。例えば、所定の位にまれにしか見られない個々の残基を改変して、この位のコンセンサス残基にマッチさせて、安定性(Steipe B, Schiller B, Plueckthun A, Steinbacher S. Sequence statistics reliably predict stabilizing mutations in a protein domain. J Mol Biol. 1994 Jul 15; 240(3): 188-92)および哺乳動物細胞株における発現さえ(Whitcomb EA, Martin TM, Rittenberg MB. Restoration of Ig secretion: mutation of germline-encoded residues in T15L chains leads to secretion of free light chains and assembled antibody complexes bearing secretion-impaired heavy chains. J Immunol. 2003 Feb 15;170(4): 1903-9)改善可能である。疎水性表面残基などの生物物理学的に攻撃的な残基の同定および逆転もまた、発現改善につながりうる(Nieba L, Honegger A, Krebber C, Plueckthun A. Disrupting the hydrophobic patches at the antibody variable/constant domain interface: improved in vivo folding and physical characterization of an engineered scFv fragment. Protein Eng. 1997 Apr; 10(4):435-44)。生物物理学的に安定な抗体の合理的再設計を補助するために現在利用可能なデータの大部分は、細菌で発現されるファージディスプレイ系において、抗体断片を用いて生成されてきている(Ewert S, Honegger A, Plueckthun A. Stability improvement of antibodies for extracellular and intracellular applications: CDR grafting to stable frameworks and structure-based framework engineering. Methods. 2004 Oct; 34(2): 184-99. Review)。
【0008】
[08]CDR移植技術によるヒト化は、可能な場合はいつでも、より安定な生殖系列サブグループの1つから、ヒト・ドナー可変領域フレームワークを単に選択することによって、これらの安定性の問題を修正するかまたは回避するか、いずれかを行うことも可能である(Ewertら、2004、上記)。WO 2004/065417は、抗体の可変ドメインの超可変領域1(HVR1)および/または超可変領域2(HVR2)アミノ酸配列を、ヒト可変ドメインサブグループコンセンサスアミノ酸配列各々の対応するHVR1および/またはHVR2アミノ酸配列に比較し、そして可変ドメインのHVR1および/またはHVR2アミノ酸配列と最大の配列同一性を有するサブグループコンセンサス配列を選択することによって、哺乳動物細胞培養において、より高い収量で、こうした抗体および/または抗原結合性断片を産生するためのさらなる改善法を提供する。WO 2004/065417において、コンセンサス配列は、最大の同一性のHVR1および/またはHVR2を持つ抗体に由来し、そしてすべてのフレームワーク配列が完全にヒト配列である、CDR移植抗体に適用される。
【0009】
[09]げっ歯類抗体の表面再構成(resurfacing)法(米国特許第5,639,641号; Roguska MA, Pedersen JT, Keddy CA, Henry AH, Searle SJ, Lambert JM, Goldmacher VS, Blaettler WA, Rees AR, Guild BC. Humanization of murine monoclonal antibodies through variable domain resurfacing. Proc Natl Acad Sci U S A. 1994 Feb 1 ; 91(3):969-73; Pedersen JT, Henry AH, Searle SJ, Guild BC, Roguska M, Rees AR. Comparison of surface accessible residues in human and murine immunoglobulin Fv domains. Implication for humanization of murine antibodies. J Mol Biol. 1994 Jan 21; 235(3):959-73)、抗体のベニヤリング(veneering)法(米国特許第6,797,492号; Padlan, E.A. 1991, Mol. Immunolgy 28:489-498)、および抗体の脱免疫化法(公報第WO98/52976)などの他のヒト化法は、ネズミ可変領域の疎水性コアを維持する。その結果、生物物理学的特性が劣った、ネズミ生殖系列由来のネズミコア構造を可変領域中に含む、こうしたヒト化抗体は、これらの特性を受け継ぐ可能性が高いであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO 2004/065417
【特許文献2】米国特許第5,639,641号
【特許文献3】米国特許第6,797,492号
【特許文献4】WO98/52976
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Morrow, K.J., Jr., Monoclonal antibody production techniques. Gen. Eng. News, 2002, 20(14):21
【非特許文献2】Trinh R, Gurbaxani B, Morrison SL, Seyfzadeh M. Optimization of codon pair use within the (GGGGS)3 linker sequence results in enhanced protein expression. Mol Immunol. 2004 Jan; 40(10):717-22
【非特許文献3】Ewert S, Honegger A, Plueckthun A. Structure-based improvement of the biophysical properties of immunoglobulin VH domains with a generalizable approach. Biochemistry. 2003 Feb 18; 42(6):1517-28
【非特許文献4】Dul JL, Argon Y. A single amino acid substitution in the variable region of the light chain specifically blocks immunoglobulin secretion. Proc Natl Acad Sci U S A. 1990 Oct; 87(20):8135-9
【非特許文献5】Wiens GD, Lekkerkerker A, Veltman I, Rittenberg MB. Mutation of a single conserved residue in VH complementarity-determining region 2 results in a severe Ig secretion defect. J Immunol. 2001 Aug 15;167(4):2179-86
【非特許文献6】Honegger A, Plueckthun A. The influence of the buried glutamine or glutamate residue in position 6 on the structure of immunoglobulin variable domains. J Mol Biol. 2001 Jun 8; 309(3):687-99
【非特許文献7】Johnson G, Wu TT. Kabat Database and its applications: future directions. Nucleic Acids Res. 2001 Jan 1; 29(1):205-6
【非特許文献8】Steipe B, Schiller B, Plueckthun A, Steinbacher S. Sequence statistics reliably predict stabilizing mutations in a protein domain. J Mol Biol. 1994 Jul 15; 240(3): 188-92
【非特許文献9】Whitcomb EA, Martin TM, Rittenberg MB. Restoration of Ig secretion: mutation of germline-encoded residues in T15L chains leads to secretion of free light chains and assembled antibody complexes bearing secretion-impaired heavy chains. J Immunol. 2003 Feb 15;170(4): 1903-9
【非特許文献10】Nieba L, Honegger A, Krebber C, Plueckthun A. Disrupting the hydrophobic patches at the antibody variable/constant domain interface: improved in vivo folding and physical characterization of an engineered scFv fragment. Protein Eng. 1997 Apr; 10(4):435-44
【非特許文献11】Ewert S, Honegger A, Plueckthun A. Stability improvement of antibodies for extracellular and intracellular applications: CDR grafting to stable frameworks and structure-based framework engineering. Methods. 2004 Oct; 34(2): 184- 99. Review
【非特許文献12】Roguska MA, Pedersen JT, Keddy CA, Henry AH, Searle SJ, Lambert JM, Goldmacher VS, Blaettler WA, Rees AR, Guild BC. Humanization of murine monoclonal antibodies through variable domain resurfacing. Proc Natl Acad Sci U S A. 1994 Feb 1 ; 91(3):969-73
【非特許文献13】Pedersen JT, Henry AH, Searle SJ, Guild BC, Roguska M, Rees AR. Comparison of surface accessible residues in human and murine immunoglobulin Fv domains. Implication for humanization of murine antibodies. J Mol Biol. 1994 Jan 21; 235(3):959-73
【非特許文献14】Padlan, E.A. 1991, Mol. Immunolgy 28:489-498
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、こうしたヒト化抗体の生物物理学的特性を改善しうる方法に対する必要性がある。これらの方法は、哺乳動物細胞からの表面再構成抗体のより高い発現を生じるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[10]本発明は、一般的に、抗体産生増加を生じる、抗体(本明細書において、以後、「親抗体」)の生物物理学的特性を改善する方法を提供する。該方法は、親抗体の可変領域フレームワークにおいて、1以上の非コンセンサスアミノ酸残基を同定し、そして好ましくは、これらを1以上のコンセンサス残基で置換する。場合によって、生物物理学的考慮のために、1以上のアミノ酸を非コンセンサス残基で置換してもよい。
【0014】
[11]推測される天然の関係にしたがって、親抗体が由来した抗体が属するのと同じ種(例えばネズミ)由来、または同じ属(例えばハツカネズミ属(mus)およびクマネズミ属(rattus))由来の種に渡る、あるいは属または他の分類学的分類に渡って由来する抗体由来の、抗体可変領域フレームワーク配列のコレクションを並列させることによって、コンセンサス残基を同定する。
【0015】
[12]より詳細には、本発明は、配列再操作によって、宿主細胞における親抗体またはそのエピトープ結合性断片の産生を増加させるための方法を含む。配列再操作は:
a)推測される天然の関係にしたがって、親抗体が由来した抗体が属するのと同じ種(例えばネズミ)由来、または同じ属(例えばハツカネズミ属およびクマネズミ属)由来の種に渡る、あるいは属または他の分類学的分類に渡って由来する抗体由来の、抗体可変領域フレームワーク配列のコレクションを並列させ、ここでこうした並列は、フレームワーク中の各位で最も頻繁に見られるアミノ酸残基(コンセンサス残基)を同定する;
b)親抗体可変領域フレームワーク配列中の対応する残基と、コンセンサス残基を比較し;
c)親抗体中で、可変領域フレームワーク配列中の1以上の非コンセンサスアミノ酸残基を同定し;そして
d)親抗体またはその断片中で、1以上の非コンセンサスアミノ酸残基を、同等の位のコンセンサス残基で置換して、変異体抗体を産生する、ここで変異体抗体は、親抗体に比較した際、より高い収量で、宿主細胞において産生される
工程を含む。
【0016】
[13]場合によって、生物物理学的考慮のために、1以上のアミノ酸を非コンセンサス残基で置換してもよい。
【0017】
[14]本発明はまた、一般的に、抗体産生増加を生じる、ヒト化抗体の生物物理学的特性を改善する方法も提供する。該方法は、ヒト化抗体の可変領域フレームワークコアにおいて、1以上の非コンセンサスアミノ酸残基を同定し、そしてこれらを1以上のコンセンサス残基で置換する。場合によって、生物物理学的考慮のために、1以上のアミノ酸を非コンセンサス残基で置換してもよい。推測される天然の関係にしたがって、親抗体が由来した抗体が属するのと同じ種由来、または同じ属(例えばハツカネズミ属およびクマネズミ属)由来の種(例えばネズミ)に渡る、あるいは属または他の分類学的分類に渡って由来する抗体由来の、抗体可変領域フレームワーク配列のコレクションを並列させることによって、コンセンサス残基を同定する。
【0018】
[15]したがって、本発明は、配列再操作によって、宿主細胞におけるヒト化抗体またはそのエピトープ結合性断片の産生を増加させるための方法を含む。配列再操作は:
a)推測される天然の関係にしたがって、ヒト化抗体が由来した抗体が属するのと同じ種(例えばネズミ)由来、または同じ属(例えばハツカネズミ属およびクマネズミ属)由来の種に渡る、あるいは属または他の分類学的分類に渡って由来する抗体由来の、抗体可変領域フレームワーク配列のコレクションを並列させ、ここでこうした並列は、フレームワーク中の各位で最も頻繁に見られるアミノ酸残基(コンセンサス残基)を同定する;
b)ヒト化抗体可変領域フレームワーク配列中の対応する残基と、コンセンサス残基を比較し;
c)ヒト化抗体中で、可変領域フレームワーク配列中の1以上の非コンセンサス残基を同定し;そして
d)ヒト化抗体またはその断片中で、前記の1以上の非コンセンサス残基を、同等の位のコンセンサス残基で置換して、変異体抗体を産生し、ここで変異体抗体は、ヒト化抗体に比較した際、より高い収量で、細胞において産生される
工程を含む。
【0019】
[16]場合によって、生物物理学的考慮のために、1以上のアミノ酸を非コンセンサス残基で置換してもよい。
【0020】
[17]別の側面において、本発明は、抗体産生増加を生じる、ヒト化ネズミ抗体の生物物理学的特性を改善する方法を提供する。該方法は、ヒト化抗体の可変領域フレームワークにおいて、1以上の非コンセンサスアミノ酸残基を同定し、そしてこれらを1以上のコンセンサス残基で置換する。場合によって、生物物理学的考慮のために、1以上のアミノ酸を非コンセンサス残基で置換してもよい。ネズミ抗体由来の抗体可変領域フレームワーク配列のコレクションを並列させることによって、コンセンサス残基を同定する。
【0021】
[18]より詳細には、本発明は、配列再操作によって、宿主細胞におけるヒト化ネズミ抗体またはそのエピトープ結合性断片の産生を増加させるための方法を含む。配列再操作は:
a)ネズミ抗体可変領域フレームワーク配列のコレクションを並列させ、ここでこうした並列は、フレームワーク中の各位で最も頻繁に見られるアミノ酸残基(コンセンサス残基)を同定する;
b)ヒト化抗体可変領域フレームワーク配列中の対応する残基と、コンセンサス残基を比較し;
c)ヒト化抗体中で、可変領域フレームワーク配列中の1以上の非コンセンサスアミノ酸残基を同定し;そして
d)ヒト化抗体またはその断片の可変領域フレームワーク配列中で、前記の1以上の非コンセンサス残基を、同等の位のコンセンサス残基で置換して、変異体抗体を産生し、ここで変異体抗体は、ヒト化抗体に比較した際、より高い収量で、細胞において産生される
工程を含む。
【0022】
[19]場合によって、生物物理学的考慮のために、1以上のアミノ酸を非コンセンサス残基で置換してもよい。
【0023】
[20]本発明はまた、変異体抗体をコードする単離核酸も含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】[21]図1は、IgG抗体、ならびに重鎖および軽鎖の可変領域の略図を示す。右側に、重鎖および軽鎖可変領域を漫画で表し、フレームワーク残基をグレーで、そしてCDR残基を黒で示す。可変領域終点ならびに各CDRの境界に関して、Kabat抗体残基配列番号を示す。
【図2】[22]図2は、huC242遺伝子を含有するプラスミドでの一過性トランスフェクション数時間後の、293T細胞によるhuC242産生が低いことを示す。ヒト化抗体A、B、およびhuC242のプラスミドを濃度で標準化し、そして並行して2μg/mlで293T細胞内に導入した。トランスフェクション14時間、22時間および48時間後、分泌された抗体を培地から収集した。抗huIgG1 ELISAを用いて、抗体濃度を決定した。
【図3】[23]図3は、一過性トランスフェクションされた293T細胞におけるhuC242 HCおよびLC mRNAレベルを示す。huC242および他の表面再構成抗体A、B、C、D、E、Fを、並行して293T細胞内に導入した。トランスフェクション72時間後、各トランスフェクション細胞試料から、総mRNAを単離し、そして続いて、試料を逆転写してcDNAにした。
【図4】[24]図4は、huC242または表面再構成Ab Aのいずれかを産生するCHO細胞由来の、H2L2と示される、アセンブリーされた損なわれていない(intact)抗体、およびHと示される重鎖に関するバンドを含むゲルを示す。Ab AおよびhuC242クローン1およびクローン2の発現およびアセンブリーを比較した。Ab Aおよび2つのC242クローンに関するCHO細胞株を並行して培養し、そして細胞を溶解した。全細胞溶解物をプロテインA精製に供した。単離されたIgGを非変性ゲル上で分離し、そしてクーマシーブルーで染色した。
【図5A】[25]図5Aは、Kabatデータベース中のネズミ抗体のそれぞれのコンセンサス配列(配列番号3)と並列させた、huC242(配列番号1)抗体の重鎖可変領域配列を示す。CDRに下線を引き、そして太字で印を付ける。配列間で異なる残基をグレーの背景で強調し、そして本明細書に詳細に論じる好ましい残基を黒い背景で強調する。表面残基の下にアステリスク「」で印を付ける。
【図5B】[26]図5Bは、Kabatデータベース中のネズミ抗体のそれぞれのコンセンサス配列(配列番号4)と並列させた、huC242(配列番号2)抗体の軽鎖可変領域配列を示す。CDRに下線を引き、そして太字で印を付ける。配列間で異なる残基をグレーの背景で強調し、そして本特許に詳細に論じる好ましい残基を黒い背景で強調する。表面残基の下にアステリスク「」で印を付ける。
【図5C】[27]図5Cは、ImmunoGen由来の4つの表面再構成ヒト化ネズミ抗体のそれぞれのコンセンサス配列(huMy96 LC、配列番号6; rB4 LC、配列番号7; huEM 164 LC、配列番号8; huN901 LC、配列番号9;コンセンサス、配列番号10)と並列させた、huC242(配列番号5)抗体の軽鎖可変領域配列の並列を示し、huC242で見られる非コンセンサスQに対して、4つのヒト化抗体においては、アミノ酸Rが保存されたアミノ酸残基であることを示す。ネズミデータベースにおいては、Rは、最も保存されるアミノ酸残基であるKで置換される。この場合、2つのアミノ酸が類似の特性を有するため、KはRで置換可能である。にもかかわらず、QをKで置換することが、本発明の範囲内であるよう含まれる。並列はKabatに基づく。
【図6】[28]図6は、huC242 HCまたはLCフレームワークいずれかにおける、単一アミノ酸置換によって引き起こされるIgG産生の中程度の増加を示す。単一フレームワークアミノ酸置換を持つhuC242変異体の生産性を、親huC242および抗体Bのものと比較する。等量のプラスミドを293T細胞内にトランスフェクションした。72時間後、分泌されたIgGのレベルをELISAで決定した。抗原発現性Colo205細胞への変異体huC242の結合をFACSによって測定した。
【図7】[29]図7は、293T一過性発現実験における2つまたは3つのhuC242 HCおよびLC変異体の組み合わせによるIgG産生の有意な増加を示す。元来のhuC242生産性を1.0と設定する。トランスフェクション72時間後、分泌されたIgGを培地から収集した。
【図8】[30]図8は、huC242 HCおよびLC変異体のmRNAレベルが不変のままであることを示す。qPCRによって、特定の変異体huC242 mRNAレベルを決定し、そしてneo mRNAに対して標準化した。
【図9】[31]図9は、変性ゲル上の全細胞溶解物電気泳動による、HCフレームワーク残基置換の結果としての細胞内LCの集積増加を示す。トランスフェクション72時間後、293T細胞を溶解した。それぞれ、抗huIgG1および抗huK抗体を用いて、HCおよびLCを検出した。
【図10A】[32]図10(a)および10(b)は、huC242変異が、細胞における、HCおよびLC合成の増加、ならびに全抗体(H2L2)アセンブリーの増加を導くことを示す。
【0025】
[33]図10(a):トランスフェクション72時間後、293T細胞を溶解した。ゲル上で溶解物を分離し、そして膜上にトランスファーし、これをアセンブリーしたおよびアセンブリーしていないIgG HCおよびLCに関して探査した(電気泳動は、非変性条件下であった)。ブロットをストリッピングし、そして抗チューブリン抗体で再探査して、試料装填レベルを示した。
【図10B】図10(a)および10(b)は、huC242変異が、細胞における、HCおよびLC合成の増加、ならびに全抗体(H2L2)アセンブリーの増加を導くことを示す。
【0026】
[34]図10(b):プロテインAアフィニティービーズを用いて、図10(a)中に記載するように調製した細胞溶解物から、IgGを単離した。次いで、単離した試料を非変性ゲル上の電気泳動に供して、これを続いて、クーマシーブルーで染色した。
【図11A】[35]図11(a)は、Colo205細胞に対するhuC242およびhuC242変異体の結合の、FACS分析を示す。Ab Bは、非結合性対照抗体である。
【図11B】[36]図11(b)は、Colo205細胞に対するhuC242およびhuC242変異体のDM4コンジュゲートの結合の、FACS分析を示す。Ab Bは、非結合性対照抗体である。
【図11C】[37]図11(c)は、FACS分析を用いた、Colo205細胞上のFITC標識親huC242と、親huC242および変異体huC242抗体の競合的結合の結果を示す。抗体Bは、非結合性非競合性対照として働く。
【図12−1】[38]図12は、重鎖(パネルA;配列番号11および12)および軽鎖(パネルB;配列番号13および14)のhuC242アミノ酸および核酸配列を示す。
【図12−2】図12は、重鎖(パネルA;配列番号11および12)および軽鎖(パネルB;配列番号13および14)のhuC242アミノ酸および核酸配列を示す。
【図12−3】図12は、重鎖(パネルA;配列番号11および12)および軽鎖(パネルB;配列番号13および14)のhuC242アミノ酸および核酸配列を示す。
【図12−4】図12は、重鎖(パネルA;配列番号11および12)および軽鎖(パネルB;配列番号13および14)のhuC242アミノ酸および核酸配列を示す。
【図12−5】また、パネルCにおいて、huC242中に同定されるアミノ酸変化をコードするコドン(単数または複数)を示す、huC242の重鎖可変ドメイン配列(配列番号15)および軽鎖可変ドメイン配列(配列番号16)も示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[39]本発明は、ヒト化ネズミ抗体に言及して記載されるが、当業者は、重鎖および/または軽鎖可変領域(単数または複数)のコンセンサス配列を得る、十分に大きいデータベースがある、任意の抗体に対して、再操作法を適用可能であることを理解するであろう。
【0028】
[40]ヒト抗原に対するモノクローナル抗体を生成する標準的な方法は、該抗原で別の動物種を免疫し、該動物の免疫B細胞を用いてハイブリドーマを生成し、そして該ヒト抗原に結合する抗体を分泌するハイブリドーマクローンを選択することである。最も一般的には、用いられる動物は、マウスまたはラットであり、したがって、生成される抗体は、ネズミ抗体である。ヒト抗原に対するモノクローナル抗体は、ヒトにおいて、診断目的のために、または癌、自己免疫疾患、炎症、および感染などの多様な疾患の治療のために、用いられる。しかし、ネズミモノクローナル抗体が異質の(foreign)タンパク質と認識され、そしてしばしば、HAMA応答(ヒト抗マウス抗体応答)と呼ばれる免疫応答を誘発するため、ヒトにおけるネズミモノクローナル抗体の使用は限定されている。HAMA応答を防止するため、ネズミ抗体をヒト化するための方法が開発されてきている。すべての方法は、ネズミ定常領域ドメイン(IgGのドメイン構造に関しては、図1を参照されたい)をヒト定常領域ドメインで置換するが、抗体の可変領域ドメインに関するヒト化戦略が異なる。CDR移植法は、ヒトCDRドメインを置換することによって、ネズミ可変領域由来の6つのCDRドメインを相同ヒト可変領域に移し、したがって、ネズミ可変ドメインフレームワーク領域は、相同ヒトフレームワーク領域によって完全に置換される。げっ歯類抗体の表面再構成法(米国特許第5,639,641号; Roguskaら 1994, Proc Natl Acad Sci U S A 91:969-73、上記; Pedersenら 1994, J. Mol. Biol. 235:969-73、上記)、抗体のベニヤリング法(米国特許第6,797,492号; Padlan, E.A. 1991, Mol. Immunolgy 28:489-498、上記)、および抗体の脱免疫化法(国際公報第WO98/52976)などの他のヒト化法は、ネズミ可変ドメインフレームワーク領域の疎水性コアを維持し、そしてフレームワーク領域中の表面曝露残基のみをヒト残基で変化させる。例えば、表面再構成技術を用いてヒト化された抗体は、すべての溶媒アクセス可能可変領域フレームワーク位でヒト残基を含有する一方、CDRおよび埋没可変領域フレームワーク位でネズミ残基を保持する。これらのヒト化抗体は、CDR移植などの他のヒト化法において、疎水性コアが置換された場合にしばしば失われる、元来のネズミ抗体の結合アフィニティーを保持する。
【0029】
[41]ヒト化抗体は、典型的には、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞またはT293細胞(ヒト腎臓細胞株)などの哺乳動物宿主細胞において、その遺伝子を発現させることによって、産生される。本発明者らは、表面再構成技術によって調製された異なるヒト化抗体が、同じ哺乳動物宿主細胞において、異なる量で産生される(図2)が、抗体のmRNAは類似の量で産生される(図3)ことを観察した。本発明者らは、可変領域の一次アミノ酸配列が、抗体産生に影響を及ぼすと結論づけた。したがって、本発明者らは、可変ドメイン領域フレームワーク中に埋没ネズミアミノ酸コアを有するヒト化モノクローナル抗体の、哺乳動物宿主細胞における生産性の改善法を開発した。
【0030】
略語および定義
MAb モノクローナル抗体
CH 重鎖定常領域(ドメイン)
CH1、CH2、CH3 重鎖定常領域1、2、および3
CL 軽鎖定常領域
VH 重鎖可変領域(ドメイン)
VL 軽鎖可変領域(ドメイン)
CDR 相補性決定領域
CDRL1、CDRL2、CDRL3 軽鎖相補性決定領域1、2、および3
CDRH1、CDRH2、CDRH3 重鎖相補性決定領域1、2、および3
FR 可変ドメインのフレームワーク領域(ドメイン)
FRL1、FRL2、FRL3、FRL4 軽鎖可変ドメインのフレームワーク領域1、2、3、および4
FRH1、FRH2、FRH3、FRH4 重鎖可変ドメインのフレームワーク領域1、2、3、および4
qPCR 定量的ポリメラーゼ連鎖反応
抗体および定義の説明
[42]図1に示すように、抗体は、典型的には、ジスルフィド結合によって一緒に連結された2つの重鎖、および2つの軽鎖を含む。各軽鎖は、ジスルフィド結合によってそれぞれの重鎖に連結される。各重鎖は、順番に、N末端から始まって、可変ドメイン(領域)、定常ドメイン(領域)1、ヒンジ領域、ならびに定常ドメイン(領域)2および3を含む。各軽鎖は、N末端に可変ドメイン(領域)およびC末端に定常ドメインを有する。軽鎖可変ドメインは、重鎖可変ドメインと並列する。軽鎖定常ドメインは、重鎖定常ドメイン1と並列する。軽鎖および重鎖中の定常ドメインは、抗原結合に直接は関与しない。
【0031】
[43]軽鎖および重鎖の各対の可変ドメインは、抗原結合部位を形成する。軽鎖および重鎖上のドメインは、同じ全体構造を有し、そして各ドメインは、3つの相補性決定領域(CDR)によって連結され、配列が比較的保存された、4つの領域のフレームワークを含む。LCおよびHC各々の4つのフレームワーク領域は、主に、ベータシートコンホメーションを採用し、そしてCDRは、ベータシート構造を連結し、そしていくつかの場合はその一部を形成する、ループを形成する。抗体の可変領域の6つのCDR(LCおよびHCから各々3つ)は、互いに、そしてフレームワーク領域と近接して保持され、そして抗原結合部位を形成する。Kabat(“Sequences of proteins of immunological interest” 米保健社会福祉省, 米政府印刷局, 1987)を参照することによって、抗体のCDRおよびフレームワーク領域を決定してもよい。
【0032】
[44]免疫グロブリンの成熟重鎖および軽鎖の可変領域由来のアミノ酸を、それぞれ、HxおよびLxと名付け、ここでxは、Kabatのスキーム(上記)にしたがったアミノ酸位を示す。Kabatは、各サブグループ(例えばネズミ、ヒト、ラットなど)に関する抗体の多くのアミノ酸配列を列挙する。Kabatは、列挙された配列中の各アミノ酸に残基番号を割り当てる方法を用い、そして残基番号を割り当てるこの方法は、該分野における標準となってきている。保存されたアミノ酸を参照することにより、Kabat中のコンセンサス配列の1つと、問題の抗体を並列させることによって、その概要中に含まれない他の抗体に、Kabatのスキームを拡張可能である。Kabat番号付け系の使用は、異なる抗体中の同等の位のアミノ酸を容易に同定する。例えば、ヒト抗体のLn(nは任意の整数であり、例えば5である)位のアミノ酸は、マウス抗体のアミノ酸位L5と同等の位を占める。Kabat(上記)中の番号付けスキームを用いることによって、任意の2つの抗体配列を、一方向で並列させさえすればよい。したがって、抗体に関して、同一性パーセントは、ユニークでそしてよく定義された意味を有する。
【0033】
[45]本明細書において、用語「フレームワーク領域」は、Kabatら、上記によって定義されるような、1以上の種を含む属における、異なる免疫グロブリン間で比較的保存される領域(すなわちCDR以外)である、免疫グロブリン軽鎖および重鎖可変領域の位を指す。
【0034】
[46]本明細書において、「変異体抗体」または「変異体」は、親抗体のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有する抗体を指す。こうした変異体は、必然的に、親抗体と100%未満の配列同一性または類似性を有する。好ましい態様において、変異体は、親抗体の重鎖または軽鎖可変ドメインのいずれかのアミノ酸配列と、約75%〜100%未満のアミノ酸配列同一性または類似性、より好ましくは、約80%〜100%未満、より好ましくは、約85%〜100%未満、より好ましくは、約90%〜100%未満、そして最も好ましくは、約95%〜100%未満のアミノ酸配列同一性または類似性を有する、アミノ酸配列を有するであろう。この配列に関する同一性または類似性は、本明細書において、配列を並列させ、そして必要であればギャップを導入して、最大の配列同一性パーセントを達成した後、親抗体残基と同一である(すなわち同じ残基である)候補配列中のアミノ酸残基の割合として定義される。N末端、C末端、あるいは可変ドメイン外部の抗体配列内の内部伸長、欠失、または挿入はいずれも、配列同一性または類似性に影響を及ぼすと見なされてはならない。抗体変異体は、一般的に、親抗体の対応する可変領域に比較した際の、可変領域中のアミノ酸置換(1以上のアミノ酸残基による;例えば少なくとも1〜約25アミノ酸残基による、そして好ましくは、約1〜約10アミノ酸残基による)を有するものである。
【0035】
[47]本明細書において、「親」抗体は、天然集団中で優位を占める遺伝子によって産生される抗体を含む。これにはまた、天然突然変異体型の抗体も含まれる。抗体のこうした天然集団から、またはその天然突然変異体から産生されたかまたは産生される可能性が高い抗体が、さらに含まれる。こうした抗体には、限定されるわけではないが、ヒト化または表面再構成、完全ヒト、またはキメラ化抗体、あるいは本発明の解説にしたがって生成または操作可能な任意の抗体が含まれる。こうした抗体は、一般的に、元来の抗体の結合特異性を所持するか、または元来の抗体の抗原結合性残基を所持するが、いくつかの場合、こうした抗体はまた、異なる結合特異性を有する可能性もある。例えば、抗体は、元来の抗原に部分的に関連するかまたは関連しない抗原に対する、改善された結合特異性を示しうる。
【0036】
[48]親抗体の限定されない例は、「親C242抗体」であり、これは、ネズミC242抗体(米国特許第5,552,293号)またはその誘導体の、あるいはこれらに由来する、抗原結合性残基を有する抗体を指す。例えば、モノクローナル抗体C242は、ネズミモノクローナル抗体、またはネズミモノクローナル抗体C242の抗原結合性残基を所持する、ヒト化、キメラ化、完全ヒトC242であってもよい。
【0037】
[49]抗体指向性療法などのターゲット指向性療法は、薬剤の経口または静脈内投与を通じた全身療法、あるいは外部放射線療法(XRT)などの全身療法などの、非ターゲティング化療法に勝る利点を提供する。抗体指向性療法、および特にモノクローナル抗体(MAb)を用いた療法の利点は、正常組織への療法剤の影響をより抑えつつ、腫瘍に、療法剤の用量を送達する能力である。この指向性療法は、裸のMAb、あるいは薬剤、細菌または他の毒素、放射性核種、およびホウ素付加物(boron addends)などの中性子捕獲剤などの、細胞結合性剤にコンジュゲート化されたMAbを用いる。
【0038】
[50]用語「エピトープ」には、免疫グロブリンに特異的に結合可能な任意のタンパク質決定基が含まれる。エピトープ決定基は、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的活性表面群からなり、そして通常、特定の3次元構造特性とともに、特定の荷電特性を有する。
【0039】
[51]アミノ酸残基は、フレームワーク領域の配列中の所定の位で、ネズミ抗体の巨大なデータベース中のすべての抗体配列の10%未満で見られる場合、この位で、まれな可変領域フレームワーク残基と呼ばれる。
【0040】
[52]巨大データベースの例は、Kabat抗体データベースである(例えば、Johnson G, Wu TT. Kabat Database and its applications: future directions. Nucleic Acids Res. 2001 Jan l ;29(1):205-6を参照されたい)。巨大抗体データベースは、少なくとも1000の個々の抗体可変領域配列を含有する。
【0041】
[53]上に示す定義を用いて、特定の態様に縛られることなく、本発明の理解を促進するために、以下の考察を提供する。
【0042】
[54]本発明は、1つの限定されない側面において、ネズミ可変領域コア構造を有するヒト化抗体の、哺乳動物細胞における産生を増進する方法を提供する。該方法は、可変領域フレームワークのネズミコアにおいて、非コンセンサスアミノ酸残基を同定し、そしてこれらをネズミコンセンサス配列のアミノ酸残基で置換する。
【0043】
[55]したがって、1つの態様において、本発明は、抗体変異体またはその断片を製造する工程を含み、ここで、変異体は、親抗体中の1以上のアミノ酸残基を、コンセンサス可変領域フレームワーク配列由来の対応する残基で置換することによって製造される。こうした置換(単数または複数)の結果、変異体抗体またはその断片は、宿主細胞中に導入した場合、親抗体と比較した際に、増進された抗体合成を示す。
【0044】
[56]親抗体において、置換は、好ましくは、親抗体の重鎖および軽鎖可変ドメインフレームワーク領域の各々の配列を、対応するコンセンサス配列アミノ酸残基を持つ、重鎖および軽鎖可変ドメインフレームワーク領域のコンセンサス配列と並列させることによって同定される、1以上の非コンセンサスアミノ酸で行われる。
【0045】
[57]好ましい態様において、親抗体中のアミノ酸残基の置換は、重鎖中で行われる。別の好ましい態様において、こうしたアミノ酸置換は、軽鎖中で行われる。親抗体の重鎖または軽鎖中のこうした置換を、独立にまたは同時に実行してもよい。コンセンサス配列は、推測される天然の関係にしたがって、親抗体が由来した抗体が属するのと同じ種(例えばネズミ)に属する、または同じ属(例えばハツカネズミ属およびクマネズミ属)由来の種に渡る、あるいは属または他の分類学的分類に渡って由来する、抗体サブグループの配列に由来する。
【0046】
[58]別の態様において、本発明は、親抗体に比較した際、宿主細胞における変異体抗体またはその断片の産生を増加させるための方法であって:a)親抗体の重鎖および軽鎖抗体可変ドメインフレームワーク領域各々の配列を、重鎖および軽鎖可変ドメインフレームワーク領域のコンセンサス配列と並列させ、ここでコンセンサス重鎖または軽鎖配列は、ネズミ抗体可変ドメインのデータベースに由来する;b)親抗体可変ドメインフレームワーク領域中の1以上の重鎖残基をネズミ重鎖コンセンサス残基で置換するか、あるいは親抗体可変ドメインフレームワーク領域中の1以上の軽鎖残基をネズミコンセンサス軽鎖残基で置換し、ここで置換は、宿主細胞内に導入した場合、親抗体に比較した際に、より高い収量を生じる、変異体抗体またはその断片を生じる;c)親抗体中で、Kabat抗体残基番号付けスキームによって決定されるアミノ酸残基の、軽鎖中のQ45またはA70より選択される1以上のアミノ酸残基、あるいは重鎖中のE16、D26、K46またはT89より選択される1以上のアミノ酸残基を同定し;そしてd)親抗体中の1以上のアミノ酸残基を、軽鎖中、それぞれ、K45(場合によって、生物物理学的考慮のため、Kを非コンセンサス残基Rで置換してもよい)またはD70より選択される1以上のアミノ酸残基、あるいは重鎖中、それぞれ、A16、G26、E46もしくはS46またはV89より選択される1以上のアミノ酸残基で置換する、ここで置換は、宿主細胞内に導入した場合、親抗体に比較した際に、より高い収量を生じる、変異体抗体またはその断片を生じる工程を含む、前記方法を提供する。
【0047】
[59]重鎖または軽鎖中の置換を、独立にまたは同時に実行してもよい。
【0048】
[60]好ましい態様において、変異体抗体軽鎖において、Q45はK45によって置換され(場合によって、生物物理学的考慮のため、Kを非コンセンサス残基Rで置換してもよい)、そしてA70はD70によって置換され、そして変異体抗体重鎖において、E16はA16によって置換され;D26はG26によって置換され;K46はE46またはS46によって置換され;そしてT89はV89によって置換される。こうした置換は、好ましくは、少なくとも約100%または約200%、変異体抗体収量を増加させる。好ましい態様において、収量は、少なくとも約300%以上である。より好ましい態様において、収量は、約400%以上である。最も好ましい態様において、収量は、約500%以上である。変異体タンパク質収量の増加はまた、限定されるわけではないが、培養細胞に対する増殖因子の使用または血清不含培地の使用などの他の要因にも応じる可能性もある。
【0049】
[61]本発明はまた、重鎖可変領域または軽鎖可変領域をコードする配列の領域中のアミノ酸コドンにおいて、少なくとも1つの変異を有する、全長ネズミもしくはヒト、ヒト化またはキメラ化C242コード配列を含む単離核酸も含み、ここで、少なくとも1つの変異は、C242遺伝子によってコードされるタンパク質の収量を増加させ、そして該タンパク質には、該少なくとも1つのコドン変異によってコードされる少なくとも1つのアミノ酸変異が含まれる。
【0050】
[62]軽鎖において、置換はフレームワーク位から選択される(Kabat番号付けスキーム):
Q45をK45に;場合によって、生物物理学的考慮のため、Kを非コンセンサス残基Rで置換してもよい。
【0051】
A70をD70に
[63]重鎖において、置換はフレームワーク位から選択される(Kabat番号付けスキーム):
E16をA16に
D26をG26に
K46をE46に
T89をV89に
[64]こうした配列置換は、変異体抗体である、変異体C242遺伝子産物をコードする。
【0052】
[65]本発明はまた、親抗体において、配列番号1(重鎖)または配列番号2(軽鎖)の1以上のアミノ酸残基を置換することによって、宿主細胞培養からの、親抗体の変異体である抗体の収量を増加させるための方法であって、a)Vector NTI(Invitrogen)などのアミノ酸配列分析ソフトウェアを用いて、重鎖および軽鎖免疫グロブリン可変領域フレームワークを並列させることによって、配列番号1(重鎖)をコンセンサス重鎖配列と、または配列番号2(軽鎖)をコンセンサス軽鎖配列と並列させ、ここで、コンセンサス重鎖または軽鎖配列は、ネズミ抗体配列のデータベースに由来する(例えば、Kabat database−JohnsonおよびWu,2001);b)b)親抗体において、Kabatスキームによって決定されるアミノ酸残基の、配列番号1中のE16、D26、K46またはT89および配列番号2中のQ45またはA70より選択される1以上のアミノ酸残基を同定し、そしてc)1以上のアミノ酸残基;配列番号1中のE16、D26、K46またはT89および配列番号2中のQ45またはA70を、コンセンサス配列由来の、それぞれ、配列番号1中のA16、G26、E46、S46またはV89、およびそれぞれ、配列番号2中のK45(場合によって、生物物理学的考慮のため、Kを非コンセンサス残基Rで置換してもよい)またはD70より選択されるアミノ酸残基で置換する、ここで置換は、変異体抗体の産生を生じ、そして変異体抗体を宿主細胞内に導入した際、変異体収量が親抗体より多い工程を含む、前記方法もまた含む。
【0053】
[66]別の態様において、本発明は、huC242の変異体などの変異体抗体またはそのエピトープ結合性断片を含み、ここで変異体は、配列番号1の重鎖[huC242重鎖]および配列番号2の軽鎖[huC242軽鎖]を含む可変領域を有する、親抗体中の1以上のアミノ酸置換を有し、そして変異体は、単一宿主細胞中に導入した場合、親抗体に比較した際に、重鎖および/または軽鎖の改善された合成、および改善された重鎖/軽鎖アセンブリーを示し、置換は、Kabat番号付けスキームによって決定される位の、配列番号1中の16、26、46、もしくは89より選択される1以上の重鎖可変領域位、または配列番号2中の軽鎖可変領域位45もしくは70、あるいはその両方で実行される。より好ましくは、変異体抗体は、軽鎖残基Q45からK45(場合によって、生物物理学的考慮のため、Kを非コンセンサス残基Rで置換してもよい)またはA70からD70、あるいは重鎖残基E16からA16、D26からG26、K46からE46、またはT89からV89からなる群より選択され、そして重鎖または軽鎖のフレームワーク領域中に位置する、アミノ酸置換を有する。
【0054】
[67]別の態様において、本発明の細胞結合性剤はまた、C242抗原(CD44/CanAg)などのリガンドを特異的に認識し、したがってコンジュゲートが十分な期間、ターゲット細胞と接触して、コンジュゲートの細胞毒性剤部分が、細胞に対して作用するのを可能にし、そして/またはコンジュゲートが細胞によって内在化されるのに十分な期間を可能にするであろう。
【0055】
[68]好ましい態様において、細胞毒性コンジュゲートは、細胞結合性剤として、抗C242抗体の変異体を含み、より好ましくは、細胞毒性コンジュゲートは、A70D;Q45K/R;D26G;K46E;K46E/T89V;K46E/K82S;K46E/E16A/D26G;A70D/K46E/T89V;K46E/D26G;K46E/K82S/D26G;K46E/T89V/D26G;A70D/K46E;Q45K(R)/K46E/T89V;A70D/D26G;Q45K(R)/K46E;A70D/K46E/D26G;Q45K(R)/D26G;Q45K(R)/K46E/D26G抗体またはそのエピトープ結合性断片より選択される変異体を含む。これらの抗体は、C242抗原(CD44/CanAg)を特異的に認識し、そしてターゲティング化様式で、癌細胞などの異常な細胞または組織に、細胞毒性剤を導くことが可能である。
【0056】
[69]本発明の細胞毒性コンジュゲートの第二の構成要素は、細胞毒性剤である。用語「細胞毒性剤」は、本明細書において、細胞の機能または増殖を減少させるかまたは遮断し、そして/または細胞の破壊を引き起こす、物質を指す。
【0057】
[70]好ましい態様において、細胞毒性剤は、タキソール、DM1またはDM4などのメイタンシノイド、CC−1065またはCC−1065類似体である。好ましい態様において、本発明の細胞結合性剤は、直接、あるいは切断可能または切断不能リンカーを介して、細胞毒性剤に共有結合している。
【0058】
[71]別の態様において、ヒト化抗体またはそのエピトープ結合性断片をメイタンシノイドなどの薬剤にコンジュゲート化して、薬剤をC242抗原(CD44/CanAg)などのリガンドにターゲティングすることによって、抗原を発現している細胞に向かう特異的細胞毒性を有するプロドラッグを形成してもよい。こうした抗体および小さい非常に毒性である薬剤(例えばメイタンシノイド、タキサン、およびCC−1065類似体)を含む細胞毒性コンジュゲートを、乳房腫瘍および卵巣腫瘍などの腫瘍治療のための療法剤として用いてもよい。
【0059】
[72]したがって、本発明の解説にしたがって産生される親抗体の抗体変異体を、裸の抗体として、または細胞結合性剤として作用する抗体として、ターゲティング化療法のために用いてもよい。
【0060】
細胞毒性剤
[73]本発明の細胞毒性コンジュゲートで用いる細胞毒性剤は、細胞死を生じるか、または細胞死を誘導するか、または何らかの方式で細胞生存度を減少させる、いかなる化合物であってもよい。好ましい細胞毒性剤には、例えば、以下に定義する、メイタンシノイドおよびメイタンシノイド類似体、タキソイド、CC−1065およびCC−1065類似体、ドラスタチンおよびドラスタチン類似体が含まれる。これらの細胞毒性剤を、本明細書に開示するような抗体、抗体断片、機能的同等物、改善された抗体およびその類似体にコンジュゲート化する。
【0061】
[74]in vitro法によって、細胞毒性コンジュゲートを調製してもよい。抗体に薬剤またはプロドラッグを連結するため、連結基を用いる。適切な連結基が当該技術分野に周知であり、そしてこうした連結基には、ジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定性基、光解離基、ペプチダーゼ不安定性基およびエステラーゼ不安定性基が含まれる。好ましい連結基はジスルフィド基およびチオエーテル基である。例えば、ジスルフィド交換反応を用いて、あるいは抗体および薬剤またはプロドラッグ間にチオエーテル結合を形成することによって、コンジュゲートを構築してもよい。
【0062】
メイタンシノイド
[75]細胞毒性コンジュゲートを形成するため、本発明で使用可能な細胞毒性剤の中に、メイタンシノイドおよびメイタンシノイド類似体がある。適切なメイタンシノイドの例には、メイタンシノールおよびメイタンシノール類似体が含まれる。メイタンシノイドは、微小管形成を阻害し、そして哺乳動物細胞に対して非常に毒性である薬剤である。
【0063】
[76]適切なメイタンシノール類似体の例には、修飾芳香族環を有するものおよび他の位で修飾を有するものが含まれる。こうした適切なメイタンシノイドの例が、米国特許第4,424,219号;第4,256,746号;第4,294,757号;第4,307,016号;第4,313,946号;第4,315,929号;第4,331,598号;第4,361,650号;第4,362,663号;第4,364,866号;第4,450,254号;第4,322,348号;第4,371,533号;第6,333,410号;第5,475,092号;第5,585,499号;および第5,846,545号に開示される。
【0064】
[77]修飾芳香族環を有するメイタンシノールの適切な類似体の具体的な例には:
(1)C−19−デクロロ(米国特許第4,256,746号)(アンサマイトシンP2のLAH還元によって調製);
(2)C−20−ヒドロキシ(またはC−20−デメチル)+/−C−19−デクロロ(米国特許第4,361,650号および第4,307,016号)(ストレプトミセス属(Streptomyces)またはアクチノミセス属(Actinomyces)を用いた脱メチル化、あるいはLAHを用いた脱クロロ化によって調製);および
(3)C−20−デメトキシ、C−20−アシルオキシ(−OCOR)、+/−デクロロ(米国特許第4,294,757号)(塩化アシルを用いたアシル化によって調製)
が含まれる。
【0065】
[78]他の位の修飾を有するメイタンシノールの適切な類似体の具体的な例には:
C−9−SH(米国特許第4,424,219号)(HSまたはPとメイタンシノールの反応によって調製);
C−14−アルコキシメチル(デメトキシ/CHOR)(米国特許第4,331,598号);
C−14−ヒドロキシメチルまたはアシルオキシメチル(CH2OHまたはCH2OAc)(米国特許第4,450,254号)(ノカルジア属(Nocardia)から調製);
C−15−ヒドロキシ/アシルオキシ(米国特許第4,364,866号)(ストレプトミセス属によるメイタンシノールの変換によって調製);
C−15−メトキシ(米国特許第4,313,946号および第4,315,929号)(トレウィア・ヌディフロラ(Trewia nudiflora)から単離);
C−18−N−デメチル(米国特許第4,362,663号および第4,322,348号)(ストレプトミセス属によるメイタンシノールの脱メチル化によって調製);および
4,5−デオキシ(米国特許第4,371,533号)(メイタンシノールの三塩化チタン/LAH還元によって調製)
が含まれる。
【0066】
[79]好ましい態様において、本発明の細胞毒性コンジュゲートは、細胞毒性剤として、以前はN2’−デアセチル−N2’−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−メイタンシンと称された、チオール含有メイタンシノイドDM1を利用する。DM1は、以下の構造式(I):L(I)によって示される。
【0067】
[80]別の好ましい態様において、本発明の細胞毒性コンジュゲートは、細胞毒性剤として、以前はN2’−デアセチル−N2’−(4−メチル−4−メルカプト−1−オキソペンチル)−メイタンシンと称された、チオール含有メイタンシノイドDM4を利用する。DM4は、以下の構造式(II):
【0068】
【化1】

【0069】
によって示される。本発明のさらなる態様において、イオウ原子を所持する炭素原子上に、モノまたはジアルキル置換を所持する、チオールおよびジスルフィド含有メイタンシノイドを含む、他のメイタンシンを用いてもよい。これらには、C−3、C−14ヒドロキシメチル、C−15ヒドロキシ、またはC−20デスメチルに、立体障害を受けた(hindered)スルフヒドリル基を所持するアシル基を含むアシル化アミノ酸側鎖を有するメイタンシノイドが含まれ、ここで、チオール官能性を所持するアシル基の炭素原子は1つまたは2つの置換基を有し、前記置換基は、1〜10の炭素原子を有する直鎖アルキルまたはアルケニル、3〜10の炭素原子を有する分枝鎖または環状アルキルまたはアルケニル、フェニル、置換フェニル、あるいは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり、そしてさらに、置換基の1つはHであってもよく、そしてアシル基は、カルボニル官能性およびイオウ原子間に少なくとも3つの炭素原子の長さの直鎖を有する。
【0070】
[81]こうしたさらなるメイタンシンには、式(III)によって示される化合物:
【0071】
【化2】

【0072】
式中:
Y’は
(CR(CR=CR10(C≡C)(CR(CR11=CR12(C≡C)(CRCRSZ
を示し、
式中:
およびRは、各々独立に、1〜10の炭素原子を有する直鎖アルキルまたはアルケニル、3〜10の炭素原子を有する分枝鎖または環状アルキルまたはアルケニル、フェニル、置換フェニル、あるいは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり、そしてさらに、RはHであってもよく;
A、B、Dは、3〜10の炭素原子を有するシクロアルキルまたはシクロアルケニル、単純または置換アリール、あるいは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり;
、R、R、R、R、R、R、R10、R11、およびR12は、各々独立に、H、1〜10の炭素原子を有する直鎖アルキルまたはアルケニル、3〜10の炭素原子を有する分枝鎖または環状アルキルまたはアルケニル、フェニル、置換フェニル、あるいは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり;
l、m、n、o、p、q、r、s、tおよびuは、各々独立に、0または1〜5の整数であり、但し、どの時点においても、l、m、n、o、p、q、r、s、tおよびuの少なくとも2つはゼロではなく;そして
Zは、H、SRまたは−CORであり、式中、Rは、1〜10の炭素原子を有する直鎖アルキルまたはアルケニル、3〜10の炭素原子を有する分枝鎖または環状アルキルまたはアルケニル、あるいは単純または置換アリール、あるいは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルである
が含まれる。
【0073】
[82]式(III)の好ましい態様には:
がメチルであり、RがHであり、そしてZがHである
およびRがメチルであり、そしてZがHである
がメチルであり、RがHであり、そしてZが−SCHである
およびRがメチルであり、そしてZが−SCHである
式(III)の化合物が含まれる。
【0074】
[83]こうしたさらなるメイタンシンにはまた、式(IV−L)、(IV−D)、または(IV−D,L):
【0075】
【化3】

【0076】
式中:
は、(CR(CR(CRCRSZを示し、
式中:
およびRは、各々独立に、1〜10の炭素原子を有する直鎖アルキルまたはアルケニル、3〜10の炭素原子を有する分枝鎖または環状アルキルまたはアルケニル、フェニル、置換フェニル、あるいは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり、そしてさらに、RはHであってもよく;
、R、R、R、RおよびRは、各々独立に、H、1〜10の炭素原子を有する直鎖アルキルまたはアルケニル、3〜10の炭素原子を有する分枝鎖または環状アルキルまたはアルケニル、フェニル、置換フェニル、あるいは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり;
l、mおよびnは、各々独立に、1〜5の整数であり、そしてさらに、nは0であってもよく;
Zは、H、SRまたは−CORであり、式中、Rは、1〜10の炭素原子を有する直鎖アルキルまたはアルケニル、3〜10の炭素原子を有する分枝鎖または環状アルキルまたはアルケニル、あるいは単純または置換アリール、あるいは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり;そして
Mayは、C−3、C−14ヒドロキシメチル、C−15ヒドロキシまたはC−20デスメチルに側鎖を所持するメイタンシノイドを示す
によって示される化合物も含まれる。
【0077】
[84]式(IV−L)、(IV−D)および(IV−D,L)の好ましい態様には:
がメチルであり、RがHであり、R、R、R、およびRが、各々、Hであり、lおよびmが各々1であり、nがゼロであり、そしてZがHである
およびRがメチルであり、R、R、R、Rが、各々、Hであり、lおよびmが1であり、nが0であり、そしてZがHである
がHであり、Rがメチルであり、R、R、R、およびRが、各々、Hであり、lおよびmが各々1であり、nが0であり、そしてZが−SCHである
およびRがメチルであり、R、R、R、Rが、各々、Hであり、lおよびmが1であり、nが0であり、そしてZが−SCHである
式(IV−L)、(IV−D)および(IV−D,L)の化合物が含まれる。
【0078】
[85]好ましくは、細胞毒性剤は、式(IV−L)によって示される。
【0079】
[86]こうしたさらなるメイタンシンにはまた、式(V):
【0080】
【化4】

【0081】
式中:
Yは、(CR(CR(CRCRSZを示し、
式中:
およびRは、各々独立に、1〜10の炭素原子を有する直鎖アルキルまたはアルケニル、3〜10の炭素原子を有する分枝鎖または環状アルキルまたはアルケニル、フェニル、置換フェニル、あるいは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり、そしてさらに、RはHであってもよく;
、R、R、R、RおよびRは、各々独立に、H、1〜10の炭素原子を有する直鎖アルキルまたはアルケニル、3〜10の炭素原子を有する分枝鎖または環状アルキルまたはアルケニル、フェニル、置換フェニル、あるいは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり;
l、mおよびnは、各々独立に、1〜5の整数であり、そしてさらに、nは0であってもよく;そして
Zは、H、SRまたは−CORであり、式中、Rは、1〜10の炭素原子を有する直鎖アルキルまたはアルケニル、3〜10の炭素原子を有する分枝鎖または環状アルキルまたはアルケニル、あるいは単純または置換アリール、あるいは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルである
によって示される化合物も含まれる。
【0082】
[87]式(V)の好ましい態様には:
がメチルであり、RがHであり、R、R、R、およびRが、各々、Hであり;lおよびmが各々1であり、nが0であり;そしてZがHである
およびRがメチルであり;R、R、R、Rが、各々、Hであり、lおよびmが1であり;nが0であり;そしてZがHである
がメチルであり、RがHであり、R、R、R、およびRが、各々、Hであり、lおよびmが各々1であり、nが0であり、そしてZが−SCHである
およびRがメチルであり、R、R、R、Rが、各々、Hであり、lおよびmが1であり、nが0であり、そしてZが−SCHである
式(V)の化合物が含まれる。
【0083】
[88]こうしたさらなるメイタンシンにはさらに、式(VI−L)、(VI−D)、または(VI−D,L):
【0084】
【化5】

【0085】
式中:
Y’は
(CR(CR=CR10(C≡C)(CR(CR11=CR12(C≡C)(CRCRSZ
を示し、
式中:
およびRは、各々独立に、1〜10の炭素原子を有する直鎖アルキルまたはアルケニル、3〜10の炭素原子を有する分枝鎖または環状アルキルまたはアルケニル、フェニル、置換フェニル、あるいは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり、そしてさらに、RはHであってもよく;
A、B、Dは、3〜10の炭素原子を有するシクロアルキルまたはシクロアルケニル、単純または置換アリール、あるいは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり;
、R、R、R、R、R、R、R10、R11、およびR12は、各々独立に、H、1〜10の炭素原子を有する直鎖アルキルまたはアルケニル、3〜10の炭素原子を有する分枝鎖または環状アルキルまたはアルケニル、フェニル、置換フェニル、あるいは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり;
l、m、n、o、p、q、r、s、tおよびuは、各々独立に、0または1〜5の整数であり、但し、どの時点においても、l、m、n、o、p、q、r、s、tおよびuの少なくとも2つはゼロではなく;
Zは、H、SRまたは−CORであり、式中、Rは、1〜10の炭素原子を有する直鎖アルキルまたはアルケニル、3〜10の炭素原子を有する分枝鎖または環状アルキルまたはアルケニル、あるいは単純または置換アリール、あるいは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルである;そして
Mayはメイタンシノイドである
によって示される化合物が含まれる。
【0086】
[89]式(VI)の好ましい態様には:
がメチルであり、RがHであり、そしてZがHである
およびRがメチルであり、そしてZがHである
がメチルであり、RがHであり、そしてZが−SCHである
およびRがメチルであり、そしてZが−SCHである
式(VI)の化合物が含まれる。
【0087】
[90]上述のメイタンシノイドを、変異体抗C242抗体A70D;Q45K/R;D26G;K46E;K46E/T89V;K46E/K82S;K46E/E16A/D26G;A70D/K46E/T89V;K46E/D26G;K46E/K82S/D26G;K46E/T89V/D26G;A70D/K46E;Q45K(R)/K46E/T89V;A70D/D26G;Q45K(R)/K46E;A70D/K46E/D26G;Q45K(R)/D26G;Q45K(R)/K46E/D26G、あるいはその相同体または断片にコンジュゲート化してもよく、ここで、抗体は、メイタンシノイドのC−3、C−14ヒドロキシメチル、C−15ヒドロキシまたはC−20デスメチルに見られるアシル化アミノ酸側鎖のアシル基上に存在するチオールまたはジスルフィド官能性を用いて、メイタンシノイドに連結され、そしてアシル化アミノ酸側鎖のアシル基が、1つまたは2つの置換基を有する炭素原子に位置する、チオールまたはジスルフィド官能性を有し、前記置換基は、1〜10の炭素原子を有する直鎖アルキルまたはアルケニル、3〜10の炭素原子を有する分枝鎖または環状アルキルまたはアルケニル、フェニル、置換フェニル、あるいは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり、そしてさらに、置換基の1つはHであってもよく、そしてアシル基は、カルボニル官能性およびイオウ原子間に少なくとも3つの炭素原子の長さの直鎖を有する。
【0088】
[91]本発明の好ましいコンジュゲートは、式(VIII):
【0089】
【化6】

【0090】
式中:
’は
(CR(CR=CR10(C≡C)(CR(CR11=CR12(C≡C)(CRCRS−
を示し、
式中:
およびRは、各々独立に、CH、C、1〜10の炭素原子を有する直鎖アルキルまたはアルケニル、3〜10の炭素原子を有する分枝鎖または環状アルキルまたはアルケニル、フェニル、置換フェニル、あるいは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり、そしてさらに、RはHであってもよく;
A、B、およびDは、各々独立に、3〜10の炭素原子を有するシクロアルキルまたはシクロアルケニル、単純または置換アリール、あるいは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり;
、R、R、R、R、R、R、R10、R11、およびR12は、各々独立に、H、1〜10の炭素原子を有する直鎖アルキルまたはアルケニル、3〜10の炭素原子を有する分枝鎖または環状アルキルまたはアルケニル、フェニル、置換フェニル、あるいは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり;そして
l、m、n、o、p、q、r、s、tおよびuは、各々独立に、0または1〜5の整数であり、但し、どの時点においても、l、m、n、o、p、q、r、s、tおよびuの少なくとも2つはゼロではない
のメイタンシノイドにコンジュゲート化された、変異体A70D;Q45K/R;D26G;K46E;K46E/T89V;K46E/K82S;K46E/E16A/D26G;A70D/K46E/T89V;K46E/D26G;K46E/K82S/D26G;K46E/T89V/D26G;A70D/K46E;Q45K(R)/K46E/T89V;A70D/D26G;Q45K(R)/K46E;A70D/K46E/D26G;Q45K(R)/D26G;Q45K(R)/K46E/D26G、あるいはその相同体または断片を含むものである。
【0091】
[92]好ましくは、Rはメチルであり、RはHであるか、またはRおよびRはメチルである。
【0092】
[93]本発明のさらにより好ましいコンジュゲートは、式(IX−L)、(IX−D)、または(IX−D,L):
【0093】
【化7】

【0094】
式中:
は、(CR(CR(CRCRS−を示し、
式中:
およびRは、各々独立に、1〜10の炭素原子を有する直鎖アルキルまたはアルケニル、3〜10の炭素原子を有する分枝鎖または環状アルキルまたはアルケニル、フェニル、置換フェニル、複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり、そしてさらに、RはHであってもよく;
、R、R、R、RおよびRは、各々独立に、H、1〜10の炭素原子を有する直鎖アルキルまたはアルケニル、3〜10の炭素原子を有する分枝鎖または環状アルキルまたはアルケニル、フェニル、置換フェニル、あるいは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり;
l、mおよびnは、各々独立に、1〜5の整数であり、そしてさらに、nは0であってもよく;そして
Mayは、C−3、C−14ヒドロキシメチル、C−15ヒドロキシまたはC−20デスメチルで側鎖を所持するメイタンシノールを示す
のメイタンシノイドにコンジュゲート化された、変異体抗C242抗体A70D;Q45K/R;D26G;K46E;K46E/T89V;K46E/K82S;K46E/E16A/D26G;A70D/K46E/T89V;K46E/D26G;K46E/K82S/D26G;K46E/T89V/D26G;A70D/K46E;Q45K(R)/K46E/T89V;A70D/D26G;Q45K(R)/K46E;A70D/K46E/D26G;Q45K(R)/D26G;Q45K(R)/K46E/D26G、あるいはその相同体または断片を含むものである。
【0095】
[94]式(IX−L)、(IX−D)および(IX−D,L)の好ましい態様には:
がメチルであり、RがHであるか、またはRおよびRがメチルである、
がメチルであり、RがHであり、R、R、R、およびRが、各々、Hであり;lおよびmが各々1であり;nが0である
およびRがメチルであり;R、R、R、およびRが、各々、Hであり;lおよびmが1であり;nが0である
式(IX−L)、(IX−D)および(IX−D,L)の化合物が含まれる。
【0096】
[95]好ましくは、細胞毒性剤は、式(IX−L)によって示される。
【0097】
[96]本発明のさらに好ましいコンジュゲートは、式(X):
【0098】
【化8】

【0099】
式中、置換基は、上記式(IX)に関して定義されるとおりである
のメイタンシノイドにコンジュゲート化された、変異体抗C242抗体A70D;Q45K/R;D26G;K46E;K46E/T89V;K46E/K82S;K46E/E16A/D26G;A70D/K46E/T89V;K46E/D26G;K46E/K82S/D26G;K46E/T89V/D26G;A70D/K46E;Q45K(R)/K46E/T89V;A70D/D26G;Q45K(R)/K46E;A70D/K46E/D26G;Q45K(R)/D26G;Q45K(R)/K46E/D26G、あるいはその相同体または断片を含むものである。
【0100】
[97]本発明のさらに好ましいコンジュゲートは、式(XI):
【0101】
【化9】

【0102】
式中、置換基は、上記式(VIII)に関して定義されるとおりである
のメイタンシノイドにコンジュゲート化された、変異体抗C242抗体A70D;Q45K/R;D26G;K46E;K46E/T89V;K46E/K82S;K46E/E16A/D26G;A70D/K46E/T89V;K46E/D26G;K46E/K82S/D26G;K46E/T89V/D26G;A70D/K46E;Q45K(R)/K46E/T89V;A70D/D26G;Q45K(R)/K46E;A70D/K46E/D26G;Q45K(R)/D26G;Q45K(R)/K46E/D26G、あるいはその相同体または断片を含むものである。
【0103】
[98]特に好ましいのは、RがHであり、Rがメチルであり、R、R、RおよびRが、各々、Hであり、lおよびmが、各々、1であり、そしてnが0である、上記化合物のいずれかである。
【0104】
[99]さらに特に好ましいのは、RおよびRがメチルであり、R、R、R、Rが、各々、Hであり、lおよびmが1であり、そしてnが0である、上記化合物のいずれかである。
【0105】
[100]さらに、L−アミノアシル立体異性体が好ましい。
【0106】
[101]1〜10の炭素原子を有する直鎖アルキルまたはアルケニルの例には、限定されるわけではないが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、プロペニル、ブテニルおよびヘキセニルが含まれる。
【0107】
[102]3〜10の炭素原子を有する分枝アルキルまたはアルケニルの例には、限定されるわけではないが、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、1−エチル−プロピル、イソブテニルおよびイソペンテニルが含まれる。
【0108】
[103]3〜10の炭素原子を有する環状アルキルまたはアルケニルの例には、限定されるわけではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンテニル、およびシクロヘキセニルが含まれる。
【0109】
[104]単純アリールには、6〜10の炭素原子を有するアリールが含まれ、そして置換アリールには、1〜4の炭素原子を含有する少なくとも1つのアルキル置換基、またはメトキシ、エトキシなどのアルコキシ置換基、あるいはハロゲン置換基またはニトロ置換基を所持する、6〜10の炭素原子を有するアリールが含まれる。
【0110】
[105]6〜10の炭素原子を含有する単純アリールの例には、フェニルおよびナフチルが含まれる。
【0111】
[106]置換アリールの例には、ニトロフェニル、ジニトロフェニルが含まれる。
【0112】
[107]複素環芳香族ラジカルには、N、OまたはSより選択される1つまたは2つのヘテロ原子を含有する3〜10員環を有する基が含まれる。
【0113】
[108]ヘテロシクロアルキルラジカルには、N、OまたはSより選択される1つまたは2つのヘテロ原子を含有する3〜10員環系を含む、環状化合物が含まれる。
【0114】
[109]複素環芳香族ラジカルの例には、ピリジル、ニトロピリジル、ピロリル、オキサゾリル、チエニル、チアゾリル、およびフリルが含まれる。
【0115】
[110]ヘテロアルキルラジカルの例には、ジヒドロフリル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピロリル、ピペリジニル、ピペラジニル、およびモルホリノが含まれる。
【0116】
[111]米国特許第7,276,497号に解説される各メイタンシノイドもまた、本発明の細胞毒性コンジュゲートに使用可能である。米国特許第7,276,497号の全開示が、本明細書に援用される。
【0117】
ジスルフィド含有連結基
[112]変異体抗C242抗体A70D;Q45K/R;D26G;K46E;K46E/T89V;K46E/K82S;K46E/E16A/D26G;A70D/K46E/T89V;K46E/D26G;K46E/K82S/D26G;K46E/T89V/D26G;A70D/K46E;Q45K(R)/K46E/T89V;A70D/D26G;Q45K(R)/K46E;A70D/K46E/D26G;Q45K(R)/D26G;Q45K(R)/K46E/D26Gなどの抗体にメイタンシノイドを連結するため、メイタンシノイドは連結部分を含む。連結部分は、完全活性メイタンシノイドの放出を可能にする化学結合を特定の部位に含有する。適切な化学結合は、当該技術分野に周知であり、そしてこれには、ジスルフィド結合、酸不安定性結合、光解離結合、ペプチダーゼ不安定性結合およびエステラーゼ不安定性結合が含まれる。好ましいのはジスルフィド結合である。
【0118】
[113]連結部分はまた、反応性化学基も含む。好ましい態様において、ジスルフィド結合連結部分を介して、反応性化学基を、メイタンシノイドに共有結合させてもよい。
【0119】
[114]特に好ましい反応性化学基は、N−スクシンイミジルエステルおよびN−スルホスクシンイミジルエステルである。
【0120】
[115]反応性化学基を含有する連結部分を含む、特に好ましいメイタンシノイドは、連結部分がジスルフィド結合を含有し、そして化学反応基がN−スクシンイミジルまたはN−スルホスクシンイミジルエステルを含む、メイタンシノールのC−3エステルおよびその類似体である。
【0121】
[116]メイタンシノイド上の多くの位が、連結部分を化学的に連結する位として働きうる。例えば、ヒドロキシル基を有するC−3位、ヒドロキシメチルで修飾されたC−14位、ヒドロキシで修飾されたC−15位、およびヒドロキシ基を有するC−20位がすべて、有用であると期待される。しかし、C−3位が好ましく、そしてメイタンシノールのC−3位が特に好ましい。
【0122】
[117]連結部分を有するメイタンシノールのエステルの合成を、ジスルフィド結合を含有する連結部分の観点で記載する一方、当業者は、他の化学結合(上述のようなもの)を持つ連結部分もまた、本発明で使用可能であり、他のメイタンシノイドも使用可能であることを理解するであろう。他の化学結合の具体的な例には、酸不安定性結合、光解離結合、ペプチダーゼ不安定性結合およびエステラーゼ不安定性結合が含まれる。本明細書に援用される、米国特許第5,208,020号の開示は、こうした結合を所持するメイタンシノイドの産生を解説する。
【0123】
[118]反応性基を所持するジスルフィド部分を有するメイタンシノイドおよびメイタンシノイド誘導体の合成が、各々、本明細書に援用される、米国特許第6,441,163号および第6,333,410号、ならびに米国公報第2003−0055226 A1号に記載される。
【0124】
[119]DM1などの反応性基含有メイタンシノイドを、変異体抗C242抗体A70D;Q45K/R;D26G;K46E;K46E/T89V;K46E/K82S;K46E/E16A/D26G;A70D/K46E/T89V;K46E/D26G;K46E/K82S/D26G;K46E/T89V/D26G;A70D/K46E;Q45K(R)/K46E/T89V;A70D/D26G;Q45K(R)/K46E;A70D/K46E/D26G;Q45K(R)/D26G;Q45K(R)/K46E/D26Gと反応させて、細胞毒性コンジュゲートを産生する。HPLCによって、またはゲルろ過によって、これらのコンジュゲートを精製してもよい。
【0125】
[120]こうした抗体−メイタンシノイド・コンジュゲートを産生するためのいくつかの優れたスキームが、各々、その全体が本明細書に援用される、米国特許第6,333,410号、第6,411,163号および第6,716,821号、ならびに米国特許公報第2003−0055226 A1号に提供される。
【0126】
[121]一般的に、水性緩衝液中の抗体溶液を、反応性基を所持するジスルフィド部分を有する、モル過剰のメイタンシノイドとインキュベーションしてもよい。過剰なアミン(エタノールアミン、タウリンなど)の添加によって、反応混合物の反応を停止してもよい。次いで、ゲルろ過によって、メイタンシノイド−抗体コンジュゲートを精製してもよい。
【0127】
[122]252nmおよび280nmの吸光度の比を、分光光度的に測定することによって、抗体分子あたりに結合するメイタンシノイド分子の数を決定してもよい。平均1〜10のメイタンシノイド分子/抗体分子が好ましい。
【0128】
[123]メイタンシノイド薬剤と抗体のコンジュゲートを、in vitroで、多様な望ましくない細胞株の増殖を抑制する能力に関して、評価してもよい。例えば、ヒト類表皮癌細胞株A−431、ヒト小細胞肺癌細胞株SW2、ヒト乳房腫瘍細胞株SKBR3およびバーキットリンパ腫細胞株Namalwaなどの細胞株は、これらの化合物の細胞毒性の評価のため、容易に使用可能である。評価しようとする細胞を化合物に24時間曝露して、そして既知の方法による直接アッセイにおいて、細胞の生存率を測定してもよい。次いで、アッセイ結果からIC50値を計算してもよい。
【0129】
PEG含有連結基
[124]メイタンシノイドをまた、米国特許第6,716,821号に示されるように、PEG連結基を用いて、抗体に連結してもよい。これらのPEG連結基は、水中および非水性溶媒中の両方で、可溶性であり、そしてこれを用いて、1以上の細胞毒性剤を、細胞結合性剤に連結してもよい。典型的なPEG連結基には、一端の官能性スルフヒドリル基またはジスルフィド基、およびもう一端の活性エステルを通じて、リンカーの反対の端で、細胞毒性剤および細胞結合性剤に結合する、ヘテロ二官能性PEGリンカーが含まれる。
【0130】
[125]PEG連結基を用いた、細胞毒性コンジュゲートの合成の一般的な例として、具体的な詳細に関して、米国特許第6,716,821号に再び言及する。合成は、反応性PEG部分を所持する1以上の細胞毒性剤と抗体の反応で始まり、この反応が、抗体のアミノ酸残基による、各反応性PEG部分の末端活性エステルの置換を生じ、PEG連結基を通じて抗体に共有結合した1以上の細胞毒性剤を含む、細胞毒性コンジュゲートを生じる。
【0131】
他の連結基
[126]切断不能リンカーを含むメイタンシノイド・コンジュゲートは、その全開示が本明細書に援用される、米国特許公報第2005−0169933 A1に記載される。
【0132】
タキサン
[127]本発明記載の細胞毒性コンジュゲートで用いる毒性剤はまた、タキサンまたはその誘導体であってもよい。
【0133】
[128]タキサンは、細胞毒性天然産物であるパクリタキセル(タキソール)、および半合成誘導体であるドセタキセル(タキソテール)を含む化合物ファミリーであり、これらの2つの化合物は、癌の治療に広く用いられている。タキサンは、チューブリンの脱分極を阻害し、細胞死を生じる、紡錘体毒物である。ドセタキセルおよびパクリタキセルは、癌治療に有用な剤であるが、正常細胞に対して非特異的に毒性であるため、その抗腫瘍活性は限定される。さらに、パクリタキセルおよびドセタキセルのような化合物は、それ自体、細胞結合性剤のコンジュゲートにおいて使用するには、十分に強力ではない。
【0134】
[129]細胞毒性コンジュゲートの調製に使用するのに好ましいタキサンは、式(XI)のタキサン:
【0135】
【化10】

【0136】
である。
【0137】
[130]抗体などの細胞結合性剤にタキサンをコンジュゲート化するための方法とともに、本発明の細胞毒性コンジュゲートにおいて使用可能な典型的なタキサンを合成するための方法が、米国特許第5,416,064号、第5,475,092号、第6,340,701号、第6,372,738号、第6,436,931号、第6,596,757号、第6,706,708号および第6,716,821号、ならびに米国特許公報第2004−0024049 A1号に詳細に記載される。
【0138】
CC−1065類似体
[131]本発明記載の細胞毒性コンジュゲートで使用する毒性剤はまた、CC−1065またはその誘導体であってもよい。
【0139】
[132]CC−1065は、ストレプトミセス・ゼレンシス(Streptomyces zelensis)の培養ブロスから単離される、強力な抗腫瘍抗生物質である。CC−1065は、ドキソルビシン、メトトレキセートおよびビンクリスチンなどの、一般的に用いられる抗癌薬剤よりも、in vitroで、約1000倍強力である(B.K. Bhuyanら, Cancer Res., 42, 3532−3537(1982))。本発明で使用するのに適したCC−1065およびその類似体の限定されない例は、米国特許第6,372,738号、第6,340,701号、第5,846,545号および第5,585,499号に開示される。
【0140】
[133]CC−1065の細胞毒性能は、そのアルキル化活性、およびそのDNA結合活性またはDNA挿入(intercalating)活性と相関付けられてきている。これらの2つの活性は、分子の別個の部分に属する。したがって、アルキル化活性は、シクロプロパピロロインドール(CPI)・サブユニット中に含有され、そしてDNA結合活性は、2つのピロロインドール・サブユニット中に属する。
【0141】
[134]CC−1065は、細胞毒性剤として特定の魅力的な特徴を有するが、療法的使用においては限界を有する。マウスにCC−1065を投与すると、遅延型肝毒性が引き起こされ、12.5μg/kgの単回静脈内用量後、第50日での死亡を導く{V. L. Reynoldsら, J. Antibiotics, XXIX, 319−334(1986)}。このことから、遅延型毒性を引き起こさない類似体を開発する努力に拍車がかかり、そしてCC−1065をモデルとするより単純な類似体の合成が記載されてきている{M.A. Warpehoskiら, J. Med. Chem., 31, 590−603(1988)}。
【0142】
[135]本発明で有用な別の一連の類似体において、CPI部分がシクロプロパベンズインドール(CBI)部分によって置換された{D.L. Bogerら, J. Org. Chem., 55, 5823−5833, (1990), D.L. Bogerら, BioOrg. Med. Chem. Lett., 1, 115−120(1991)}。これらの化合物は、マウスにおいて、遅延型毒性を引き起こすことなく、親薬剤の高いin vitro強度を維持する。CC−1065同様、これらの化合物は、共有方式でDNAの副溝に結合して、細胞死を生じる、アルキル化剤である。しかし、最も有望な類似体、アドゼレシンおよびカルゼレシンの臨床的評価は、期待はずれの結果を導いた{B.F. Fosterら, Investigational New Drugs, 13, 321−326(1996); I. Wolffら, Clin. Cancer Res., 2, 1717−1723(1996)}。これらの薬剤は、全身毒性が高いため、劣った療法効果を示す。
【0143】
[136]腫瘍部位へのターゲティング化送達を通じて、in vivo分布を変化させ、ターゲティングされない組織に対する、より低い毒性、そしてしたがって、より低い全身毒性を生じることによって、CC−1065類似体の療法的有効性を非常に改善することも可能である。この目的を達成するため、腫瘍細胞を特異的にターゲティングする、細胞結合性剤とCC−1065の類似体および誘導体のコンジュゲートが記載されてきている{米国特許第5,475,092号;第5,585,499号;第5,846,545号}。これらのコンジュゲートは、典型的には、in vitroで高いターゲット特異的細胞毒性を示し、そしてマウスにおけるヒト腫瘍異種移植片モデルにおいて、ひときわ優れた抗腫瘍活性を示す{R.V.J. Chariら, Cancer Res., 55, 4079−4084(1995)}。
【0144】
[137]抗体などの細胞結合性剤に類似体をコンジュゲート化するための方法とともに、本発明の細胞毒性コンジュゲートで使用可能なCC−1065類似体を合成するための方法が、米国特許第5,475,092号、第5,846,545号、第5,585,499号、第6,534,660号、第6,586,618号、および第6,756,397号に、そして米国特許公報第2003−0195365 A1号に、詳細に記載される。
【0145】
他の薬剤
[138]メトトレキセート、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、カリケアマイシン、チューブリシン(tubulysin)およびチューブリシン類似体、デュオカルマイシンおよびデュオカルマイシン類似体、ドラスタチンおよびドラスタチン類似体、例えばオーリスタチン(auristatin)および類似体などの薬剤もまた、本発明のコンジュゲートの調製に適している。また、血清アルブミンなどの仲介キャリアー分子を通じて、抗体分子に薬剤分子を連結させてもよい。例えば、米国第09/740991号に記載されるように、ドキサルビシン(Doxarubicin)およびダノルビシン(Danorubicin)化合物もまた、有用な細胞毒性剤でありうる。これらの薬剤はまた、以下に論じるような共療法に用いてもよい。
【0146】
共療法
[139]句「併用療法」(または「共療法」)は、huC242抗体の変異体などの変異体抗体、化学療法剤または免疫毒素の使用を意味し、そして薬剤併用の有益な効果を提供するレジメンで、連続した方式での各剤の投与を含むよう意図される。共療法はまた、例えば、これらの活性剤を固定した比で有する単一投薬量を摂取することによって、または各剤に関して多数の別個の薬剤を摂取することによって、実質的に同時の方式で、これらの剤を共投与することを含むよう意図される。「併用療法」にはまた、静脈内、筋内または他の非経口経路による、体内への同時または連続投与も含まれ、副鼻腔経路で見られるような粘膜組織を通じた直接吸収が含まれる。連続投与にはまた、個々の要素を異なる時点で、そして/または異なる経路によって投与してもよいが、組み合わせで作用して、有益な効果を提供する、薬剤併用も含まれる。
【0147】
[140]句「療法的に有効」は、腫瘍、例えば腫瘍の進行を、減少させるかまたは防止する際の改善の目的を達成しつつ、各剤に典型的には関連する副作用を回避するであろう、併用療法において使用するための各剤の量を適格とすることが意図される。
【0148】
[141]好ましい併用療法は、本質的に2以上の活性剤、すなわち、変異体huC242の裸の抗体またはそのコンジュゲート、および免疫毒素、化学療法剤、免疫調節剤または変異体抗体とは異なる抗体から選択される他の剤からなる。剤は、任意の1つの他の剤に対する裸の抗体またはそのコンジュゲートの約0.5対1〜約20対1の重量比範囲の組み合わせで用いられる。最終的には抗体またはコンジュゲートおよび任意の1つの他の剤の選択に応じて、これらの2つの剤の好ましい範囲は、約1対1〜約15対1であり、一方、より好ましい範囲は、約1対1〜約5対1であろう。また、患者の必要性に応じて、抗体またはそのコンジュゲート、および他の剤の比を逆転させてもよい。例えば、最初の治療後、変異体の裸の抗体またはそのコンジュゲートに比較した際、他の剤の1つのより高い用量に、患者がより反応性であることが見出されたならば、こうした薬剤の提供者は、治療がより有効であるように比を切り替えてもよい。免疫毒素の調製は、一般的に、当該技術分野に周知である(例えば、本明細書に援用される、米国特許第4,340,535号を参照されたい)。以下の特許および特許出願は各々、免疫毒素生成、精製および使用に関する本発明の解説をさらに補充する目的のため、本明細書にさらに援用される:米国特許第5,855,866号;第5,776,427号;第5,863,538号;第6,004,554号;第5,965,132号;第6,051,230号;および第5,660,827号;ならびに米国出願第07/846,349号。
【0149】
[142]また、huC242変異体などの変異体抗体を、免疫調節剤に直接または間接的に結合させてもよい。何らかの方式で、本発明の抗体による腫瘍の破壊を増加させうる生物学的反応修飾剤(免疫調節剤など)の中には:腫瘍壊死因子、マクロファージ活性化因子、コロニー刺激因子、インターフェロンなどのリンホカインが含まれる。
【0150】
[143]共療法が注射可能複合体を含む場合、ホルモン、免疫抑制剤、抗生物質、細胞分裂阻害剤、利尿剤、胃腸剤、心臓血管剤、抗炎症剤、鎮痛剤、局所麻酔剤、および神経薬理学的剤からなる群より選択される療法剤をさらに含んでもよく、これらの剤は、いかなる副作用のリスクも低下させるように投与される。
【0151】
療法組成物
[144]本発明はまた、療法的有効量の本発明の変異体抗体および薬学的に許容されうるキャリアーを含む、哺乳動物における、過剰増殖障害の治療のための療法組成物にも関する。1つの態様において、薬学的組成物は、肺、乳房、結腸、前立腺、腎臓、膵臓、卵巣、子宮頸部およびリンパ器官の癌、骨肉腫、滑膜癌、CanAgが発現されている肉腫または癌腫、およびCanAgが主に発現されるとこれから決定されるはずの他の癌の治療用である。別の態様において、薬学的組成物は、例えば、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、および多発性硬化症などの自己免疫疾患;腎移植拒絶、肝移植拒絶、肺移植拒絶、心臓移植拒絶、および骨髄移植拒絶などの移植片拒絶;移植片対宿主病;mV感染、HIV感染、AIDS等のウイルス感染;ならびにランブルべん毛虫症、アメーバ症、住血吸虫症などの寄生虫感染および一般の当業者によって決定されるような他のものなどの他の障害の治療に関する。
【0152】
[145]本発明は:
本発明の変異体抗体またはそのエピトープ結合性断片、あるいは細胞毒性剤および変異体抗体またはそのエピトープ結合性断片のコンジュゲートの有効量、ならびに
不活性または生理学的に活性であってもよい、薬学的に許容されうるキャリアー
を含む薬学的組成物を提供する。
【0153】
[146]本明細書において、「薬学的に許容されうるキャリアー」には、生理学的に適合する、あらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌および抗真菌剤等が含まれる。適切なキャリアー、希釈剤および/または賦形剤の例には、1以上の水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等、ならびにその組み合わせが含まれる。多くの場合で、組成物中に、糖、多価アルコール、または塩化ナトリウムなどの等張剤を含むことが好ましいであろう。特に、適切なキャリアーの適切な例には:(1)約1mg/ml〜25mg/mlのヒト血清アルブミンを含有するかまたは含有しない、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水、pH〜7.4、(2)0.9%生理食塩水(0.9%w/v塩化ナトリウム(NaCl))、および(3)5%(w/v)デキストロースが含まれ;そしてまた、こうしたキャリアーは、トリプタミンなどの酸化防止剤、およびTween20などの安定化剤もまた含有してもよい。
【0154】
[147]本明細書記載の組成物はまた、治療中の特定の障害に対して必要とされるように、さらなる療法剤も含有してもよい。好ましくは、本発明の変異体抗体またはそのエピトープ結合性断片、あるいは細胞毒性剤および変異体抗体またはそのエピトープ結合性断片のコンジュゲート、ならびに補助活性化合物は、互いに不都合に影響を及ぼさない、相補的活性を有するであろう。好ましい態様において、さらなる療法剤は、線維芽細胞増殖因子(FGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、組織因子(TF)、プロテインC、プロテインS、血小板由来増殖因子(PDGF)、またはHER2受容体のアンタゴニストである。
【0155】
[148]本発明の組成物は、多様な型であってもよい。これらには、例えば、液体、半固体、および固体投薬型が含まれるが、好ましい型は、意図される投与様式および療法適用に応じる。典型的な好ましい組成物は、注射可能または注入可能溶液の型であってもよい。好ましい投与様式は、非経口(例えば静脈内、筋内、腹腔内、皮下)である。好ましい態様において、本発明の組成物をボーラスとして、または一定の期間に渡る連続注入によって、静脈内投与する。別の好ましい態様において、局所ならびに全身性療法効果を発揮するように、筋内、皮下、関節内、滑膜内、腫瘍内、腫瘍周辺、病巣内、または病巣周辺経路によって、これらを注射する。
【0156】
[149]本発明の変異体抗体またはそのエピトープ結合性断片、あるいは細胞毒性剤および変異体抗体またはそのエピトープ結合性断片のコンジュゲートを、必要な量で、適切な溶媒中に取り込み、その後、精密ろ過によって滅菌することによって、非経口投与のための無菌組成物を調製してもよい。溶媒またはビヒクルとして、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等、ならびにその組み合わせが使用可能である。多くの場合で、組成物中に、糖、多価アルコール、または塩化ナトリウムなどの等張剤を含むことが好ましいであろう。これらの組成物はまた、佐剤、特に、湿潤剤、等張化剤、乳化剤、分散剤および安定化剤も含有してもよい。非経口投与のための無菌組成物はまた、使用時に滅菌水または任意の他の注射可能無菌媒体中に溶解してもよい、無菌固形組成物の形でも調製可能である。
【0157】
[150]本発明の変異体抗体またはそのエピトープ結合性断片、あるいは細胞毒性剤および変異体抗体またはそのエピトープ結合性断片のコンジュゲートはまた、経口投与可能である。経口投与用の固形組成物として、錠剤、丸剤、粉末(ゼラチンカプセル、サシェー剤)または顆粒が使用可能である。これらの組成物において、本発明記載の活性成分を、アルゴン流下で、デンプン、セルロース、スクロース、ラクトースまたはシリカなどの1以上の不活性希釈剤と混合する。これらの組成物はまた、希釈剤以外の物質、例えばステアリン酸マグネシウムもしくはタルク、着色剤、コーティング剤(糖衣錠剤)またはグレーズなどの1以上の潤滑剤も含んでもよい。
【0158】
[151]経口投与用の液体組成物として、水、エタノール、グリセロール、植物油またはパラフィンオイルなどの不活性希釈剤を含有する、薬学的に許容されうる溶液、懸濁物、エマルジョン、シロップおよびエリキシルを用いてもよい。これらの組成物は、希釈剤以外の物質、例えば、湿潤剤、甘味料、増粘剤、フレーバー剤または安定化製品を含んでもよい。
【0159】
[152]用量は、所望の効果、治療期間、および用いる投与経路に応じ;一般的には、成人に関して、1日あたり、経口で5mg〜1000mgであり、単位用量は活性物質1mg〜250mgの範囲である。一般的に、年齢、体重および治療しようとする被験体に特異的な他の任意の要因に応じて、医師が適切な投薬量を決定するであろう。
【0160】
[153]所望の度合いの純度を有する変異体またはそのコンジュゲートを、場合によって生理学的に許容されうるキャリアー、賦形剤または安定化剤と混合することによって、保存用に調製されるアゴニストまたはアンタゴニストとして、水性溶液または凍結乾燥配合物の型で、療法配合物中で、本発明の改善されたまたは変異体抗体またはそのコンジュゲートを用いてもよい[Remington's Pharmaceutical Sciences 第16版, Osol, A.監修(1980);米国特許出願第10/846,129号]。許容されうるキャリアー、賦形剤、または安定化剤は、使用する投薬量および濃度でレシピエントに非毒性であり、そしてリン酸、クエン酸、および他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸およびメチオニンを含む酸化防止剤;保存剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリン類を含む、単糖、二糖、および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えばZn−タンパク質錯体);および/またはTWEENTM、PLURONICSTMまたはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含む。
【0161】
[154]変異体はまた、リポソーム中に配合されてもよい。Epsteinら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:3688(1985); Hwangら, Proc. Natl Acad. Sci. USA 77:4030(1980);ならびに米国特許第4,485,045号および第4,544,545号に記載されるものなど、当該技術分野に知られる方法によって、関心対象の分子を含有するリポソームを調製する。循環時間が増進したリポソームが、米国特許第5,013,556号に開示される。
【0162】
[155]ホスファチジルコリン、コレステロールおよびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物を用いた逆相蒸発法によって、特に有用なイムノリポソームを生成することも可能である。定義される孔サイズのフィルターを通じてリポソームを押し出して、望ましい直径のリポソームを生じる。Martinら, J. Biol. Chem. 257:286−288(1982)に記載されるように、ジスルフィド交換反応を介して、本発明の抗体のFab’断片をリポソームにコンジュゲート化してもよい。化学療法剤(ドキソルビシンなど)が、場合によってリポソーム内に含有される。Gabizonら, J. National Cancer Inst. 81(19):1484(1989)を参照されたい。
【0163】
[156]本明細書記載の配合物はまた、治療される特定の徴候のために、必要であるように、1より多い活性化合物、好ましくは、互いに不都合に影響を及ぼさない、相補的活性を持つものも含有してもよい。こうした分子は、適切に、意図される目的に有効な量で、組み合わせて存在する。例えば、C242変異体またはそのコンジュゲートを、化学療法剤などの共療法剤と組み合わせてもよい。
【0164】
[157]例えばコアセルベーション技術によって、または界面重合によって、調製されたマイクロカプセル、それぞれ例えばヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに、コロイド薬剤送達系に(例えば、リポソーム、アルブミン微小球体、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)、またはマクロエマルジョンに、活性成分を被包することもまた可能である。こうした技術が、Remington's, Pharmaceutical Sciences 第16版 Osol, A.監修(1980)に開示される。
【0165】
[158]in vivo投与に用いようとする配合物は、無菌でなければならない。これは、上に論じるように、滅菌ろ過膜を通じたろ過によって容易に達成される。
【0166】
[159]持続性放出調製物を調製することも可能である。持続性放出調製物の適切な例には、アンタゴニストを含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、このマトリックスは、成型された物品の形、例えばフィルム、またはマイクロカプセルである。持続性放出マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル[例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール)]、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸およびエチル−L−グルタメートのコポリマー、分解不能エチレン−酢酸ビニル、分解可能乳酸−グリコール酸コポリマー、例えばLupron DepotTM(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドで構成される注射可能微小球体)、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が含まれる。エチレン−酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸などのポリマーは、100日以上に渡って分子を放出することが可能であるが、特定のヒドロゲルは、より短い期間でタンパク質を放出する。被包抗体は、長期間体内に留まると、37℃で水分に曝露された結果、変性するかまたは凝集し、生物学的活性の損失を生じ、そして免疫原性の変化を生じうる。関与する機構に応じて、安定化のため、合理的戦略を考案することが可能である。例えば、凝集機構が、チオジスルフィド交換を通じた、分子間S−S結合形成であることが発見されたならば、安定化は、スルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥し、水分含量を調節し、適切な添加剤を用い、そして特定のポリマーマトリックス組成を発展させることによって、達成可能である。
【0167】
療法的使用法
[160]別の態様において、本発明は、抗CD44/CanAg(抗原)の機能をアンタゴナイズする抗体を、必要な患者に投与することによって、C242抗原活性を阻害するための方法を提供する。本発明の変異体抗体またはそのエピトープ結合性断片、あるいは細胞毒性剤および変異体抗体またはそのエピトープ結合性断片のコンジュゲートのいずれかを療法的に用いてもよい。
【0168】
[161]好ましい態様において、本発明の変異体抗体またはそのエピトープ結合性断片、あるいは細胞毒性剤および変異体抗体またはそのエピトープ結合性断片のコンジュゲートを、哺乳動物における過剰増殖障害の治療に用いる。より好ましい態様において、上に開示し、そして本発明の変異体抗体またはそのエピトープ結合性断片、あるいは細胞毒性剤および変異体抗体またはそのエピトープ結合性断片のコンジュゲートを含有する、薬学的組成物の1つを、哺乳動物における過剰増殖障害の治療に用いる。好ましくは、障害は、肺、乳房、結腸、前立腺、腎臓、膵臓、卵巣、子宮頸部およびリンパ器官の癌、骨肉腫、滑膜癌、CanAgが発現されている肉腫または癌腫、およびCanAgが主に発現されるとこれから決定されるはずの他の癌である。別の態様において、前記薬学的組成物は、例えば、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、および多発性硬化症などの自己免疫疾患;腎移植拒絶、肝移植拒絶、肺移植拒絶、心臓移植拒絶、および骨髄移植拒絶などの移植片拒絶;移植片対宿主病;mV感染、HIV感染、AIDS等のウイルス感染;ならびにランブルべん毛虫症、アメーバ症、住血吸虫症などの寄生虫感染および一般の当業者によって決定されるような他のものなどの他の障害に関する。
【0169】
[162]同様に、本発明は、選択された細胞集団の増殖を阻害するための方法であって、CanAgを発現する、ターゲット細胞、またはターゲット細胞を含有する組織を、本発明の変異体抗体もしくはそのエピトープ結合性断片、または細胞毒性剤および変異体抗体もしくはそのエピトープ結合性断片のコンジュゲート、あるいは変異体抗体もしくはそのエピトープ結合性断片、または細胞毒性剤および変異体抗体もしくはそのエピトープ結合性断片のコンジュゲートを含む療法剤の有効量と、単独で、あるいは他の細胞毒性剤または療法剤と組み合わせて接触させる工程を含む、前記方法を提供する。
【0170】
[163]選択した細胞集団の増殖を阻害するための方法を、in vitro、in vivo、またはex vivoで実施してもよい。本明細書において、「増殖の阻害」は、短期間であれ、または長期間であれ、細胞増殖の遅延、細胞生存度の減少、細胞死の誘発、細胞溶解、および細胞死の誘導を意味する。
【0171】
[164]in vitro使用の例には、同じ患者への移植前の、疾患細胞または悪性細胞を殺すための自己骨髄の治療;適格性T細胞を殺し、そして移植片対宿主病(GVHD)を防止するための、移植前の骨髄の治療;ターゲット抗原を発現していない望ましい変異体以外のすべての細胞を殺すか;または望ましくない抗原を発現する変異体を殺すための、細胞培養の治療が含まれる。
【0172】
[165]非臨床的in vitro使用の条件は、一般の当業者によって容易に決定される。
【0173】
[166]臨床的ex vivo使用の例は、癌治療において、または自己免疫疾患治療において、自己移植前に、骨髄から腫瘍細胞またはリンパ球を取り除くこと、あるいは移植片対宿主病(GVHD)を防止するため、移植前に、自己または同種骨髄または組織からT細胞および他のリンパ球を取り除くことである。治療を以下のように行ってもよい。骨髄を患者または他の個体から採取し、そして次いで、本発明の変異体抗体またはそのエピトープ結合性断片、あるいは細胞毒性剤および変異体抗体またはそのエピトープ結合性断片のコンジュゲートを添加した、血清を含有する培地中でインキュベーションする。濃度は、約10μM〜1pMの範囲であり、約37℃で約30分間〜約48時間、インキュベーションする。濃度およびインキュベーション時間、すなわち用量の正確な条件は、一般の当業者によって容易に決定される。インキュベーション後、血清を含有する培地で、骨髄細胞を洗浄し、そして既知の方法にしたがって、i.v.注入によって、患者に戻す。患者が骨髄採取時および処置細胞の再注入の間に切除化学療法または全身照射過程などの他の治療を受ける状況下では、標準的医学装置を用いて、液体窒素中で処置骨髄細胞を凍結保存する。
【0174】
[167]臨床的in vivo使用のため、本発明の変異体抗体またはそのエピトープ結合性断片、あるいは細胞毒性剤および変異体抗体またはそのエピトープ結合性断片のコンジュゲートを溶液として供給して、無菌性および内毒素レベルに関して試験する。細胞毒性コンジュゲート投与の適切なプロトコルの例は、以下のとおりである。コンジュゲートを毎週、4週間、i.v.ボーラスとして投与する。ボーラス用量は、生理食塩水50〜100ml中で投与され、これに5〜10mlのヒト血清アルブミンを添加してもよい。投薬量は、i.v.投与あたり10μg〜1gである(1日あたり、100ng〜10mg/kgの範囲)。より好ましくは、投薬量は、50μg〜30mgの範囲であろう。最も好ましくは、投薬量は、1mg〜20mgの範囲であろう。治療4週後、患者に、毎週、治療を投与し続けてもよい。臨床状況が保証するように、投与経路、賦形剤、希釈剤、投薬量、時間等に関して、具体的な臨床プロトコルを、一般の当業者が決定してもよい。
【0175】
診断
[168]また、本発明の抗体または抗体断片を用いて、in vitroまたはin vivoで、生物学的試料中のC242抗原(抗CD44/CanAg)を検出してもよい。1つの態様において、本発明の変異体C242抗体を用いて、組織中または組織由来の細胞中の抗CD44/CanAgレベルを決定する。好ましい態様において、組織は疾患組織である。該方法の好ましい態様において、組織は腫瘍またはその生検である。該方法の好ましい態様において、組織またはその生検をまず、患者から切り出して、そして次いで、本発明の抗体または抗体断片を用いたイムノアッセイにおいて、組織または生検中の抗CD44/CanAgのレベルを決定してもよい。組織またはその生検を凍結するかまたは固定してもよい。同じ方法を用いて、翻訳後修飾(例えばグリコール化)、細胞表面レベル、または細胞局在など、抗CD44/CanAgの他の特性を決定してもよい。
【0176】
[169]上述の方法を用いて、癌を有することが知られるか、または推測される被験体において、癌を診断することも可能であり、ここで、前記患者において測定されたCanAgのレベルを、正常参照被験体または標準のものと比較する。次いで、前記方法を用いて、腫瘍がCanAgを発現しているかどうかを決定してもよく、これは、腫瘍が、本発明の抗体、抗体断片または抗体コンジュゲートでの治療によく反応するであろうことを示唆しうる。好ましくは、腫瘍は、肺、乳房、結腸、前立腺、腎臓、膵臓、卵巣、子宮頸部およびリンパ器官の癌、骨肉腫、滑膜癌、CanAgが発現されている肉腫または癌腫、およびCanAgが主に発現されるとこれから決定されるはずの他の癌である。
【0177】
[170]本発明は、研究または診断適用で使用するためにさらに標識されている、変異体モノクローナル抗体、変異体ヒト化抗体およびそのエピトープ結合性断片をさらに提供する。好ましい態様において、標識は、放射標識、蛍光体、発色団、画像化剤または金属イオンである。
【0178】
[171]前記の標識抗体またはそのエピトープ結合性断片を、癌を有すると推測される被験体に投与し、そして被験体体内の標識分布を測定するかまたは監視する、診断法もまた、提供する。
【0179】
キット
[172]本発明にはまた、例えば記載する細胞毒性コンジュゲート、および特定の細胞種を殺すための細胞毒性コンジュゲートの使用のための説明書を含むキットも含まれる。使用説明書には、in vitro、in vivoまたはex vivoで細胞毒性コンジュゲートを使用するための指示が含まれてもよい。
【0180】
[173]典型的には、キットは、細胞毒性コンジュゲートを含有する区画を有するであろう。細胞毒性コンジュゲートは、凍結乾燥型、液体型、またはキットに含まれるよう受け入れ可能な他の型であってもよい。キットはまた、キット中の使用説明書に記載される方法を実施するのに必要なさらなる要素、例えば凍結乾燥粉末を再構成するための滅菌溶液、患者に投与する前に、細胞毒性コンジュゲートと組み合わせるためのさらなる剤、および患者にコンジュゲートを投与するのに役立つツールも含有してもよい。
【0181】
コンセンサス配列の設計
[174]Kabatネズミ抗体配列データベース中の各位に存在する残基を数え上げることによって、コンセンサス配列を生成した。配列分析およびデータ管理ソフトウェア「Vector NTI」(Invitrogen Corp.製品)中のClustalWモジュールを用いて、数千の軽鎖および重鎖可変領域配列を並列させた。Lu G, Moriyama EN Vector NTI, a balanced all-in-one sequence analysis suite. Brief Bioinform. 2004 Dec;5(4):378-88もまた参照されたい。並列を、Microsoft Excelスプレッドシートに取り込んで、どの残基が、ネズミ軽鎖および重鎖可変領域データベース中の各位で最も頻繁に見られるかを計算し、そして次いで、「コンセンサス」配列として、結果を出力する。ときどき、2つのアミノ酸残基間でコンセンサスが分かれうるが、その場合、2つの保存されたアミノ酸のうち少ない方を選択して、抗体の生物物理学的特性またはヒト化考慮を増進させる。例えば、本発明の場合、軽鎖中のQ45をRで置換し、これは、非コンセンサス残基を、Kであるネズミコンセンサス残基で置換していない。こうした観察は、過度の実験またはこれらの具体的な詳細を必要とせずに、当業者には、明らかであろう。
【0182】
[175]Kabat配列データベースは、ライセンスを購入することによって、商業的に入手可能である。さらに、NCBIウェブサイト上で、数千のネズミ抗体配列が、ダウンロードのために公的に入手可能であり、そしてこれらの配列を用いて、類似のデータを生成可能である。
【0183】
[176]本明細書、および続く実施例に引用されるすべての参考文献は、その全体が本明細書に完全に援用される。
【0184】
[177]本発明の広い範囲は、以下の実施例を参照して最適に理解され、実施例は、本発明を具体的な態様に限定することを意図されない。
【実施例】
【0185】
材料
[178]標準的CsCl精製技術によって、pSynC242および対照プラスミドプレップを調製した。QuikChange部位特異的突然変異誘発系をStratageneから得た(#200518)。RNeasyミニキットをQiagenから注文した(#74104)。逆転写酵素反応用のSuperscript第一鎖合成系をGibcoBRLから得た(#11904−418)。Cyber GreenリアルタイムPCRマスターミックスをApplied Biosystemsから得た(#4309155)。フルオレセイン・コンジュゲート化ストレプトアビジンをJackson Immuno Researchから得た(#016−010−084 1mg/ml)。96ウェルU底プレートをFALCONから得た(#3077)。EZ−Linkスルホ−NHS−LC−ビオチンをPierceから得た(#21335)。
【0186】
方法
部位特異的突然変異誘発による、huC242 HCおよびLCフレームワークに対するアミノ酸置換
プライマー設計
[179]突然変異誘発反応のための相補的PCRプライマー対は、長さ30塩基であり、そしてプライマー中央に所望のヌクレオチド(単数または複数)置換を含有した。プライマーをPAGE精製し、そして150ng/μlで再構成した。
【0187】
PCR突然変異誘発反応
[180]PCR反応を以下のように調製した:薄壁エッペンドルフ(epidorf)試験管中、5μlの10x反応緩衝液(Stratagene)、20ngのdsDNAテンプレート、0.85μl(125ng)の順方向プライマー、0.85μl(125ng)の逆方向プライマー、1μlの400mM dNTP(Stratagene)、およびddH2Oを最終体積50μlまで添加した。最後に、1μlのPfuTurbo DNAポリメラーゼ(2.5U/μl、Stratagene)を反応混合物に添加し、そして試験管をMJ Researchサーマルサイクラーに入れた。反応条件は以下の通りであった:
95℃30秒間を1サイクル
95℃30秒間、その後の55℃1分間、および68℃11分間(11kbテンプレートで1分間/kb)を12サイクル。2塩基を変化させた場合は、サイクル数を14に増加させた。
68℃8分間を1サイクル
4℃で維持
コンピテント細胞の形質転換を以下のように行った
[181]PCRテンプレートDNAを、メチル化依存性制限酵素、Dpn1(Stratagene)での消化によって中和した。1μlのDpn1をPCR反応に直接添加し、そして27℃で1時間インキュベーションして制限消化を行った。次いで反応は、3μlのDpn1消化PCR産物を50μlのXL−1コンピテント細胞(Stratagene)に添加し、氷上で30分間インキュベーションし、その後、42℃で45秒間、熱パルス処理し、氷上に2分間戻し、そして次いで、0.5mlのSOC緩衝液を添加して、225rpmで振盪しながら37℃で1時間、最終インキュベーションすることによって、形質転換した。形質転換細胞をLB/Ampプレート上にプレーティングし(プレートあたり300μl)、そして37℃で一晩インキュベーションした。
【0188】
突然変異誘発の確認
[182]Qiagenミニプレップカラムを用いて、形質転換コロニーからプラスミドDNAを単離し、そしてアガロースゲル電気泳動によってスクリーニングした。予期される突然変異誘発産物を確認するため、VHおよびVL領域を配列決定することによって、テンプレートDNAと同じ電気泳動移動度を維持したプラスミドをさらに解析した。標準的自動化配列決定技術によって、配列決定反応を行った(Sterky F, Lundeberg J Sequence analysis of genes and genomes. J Biotechnol. 2000 Jan 7;76(1): 1-31)。
【0189】
一過性トランスフェクション
[183]QiagenのSuperfection試薬キットを用いて、抗体発現プラスミドでの一過性トランスフェクションを行った。試験プラスミド間のトランスフェクション同等性を確実にするため、OD260によってDNA濃度を測定し、そしてアガロースゲル上での視覚化によって確認した。トランスフェクション前に、6ウェルプレート中、ウェルあたり3x10の293T細胞をプレーティングした。2μgのプラスミドDNA(またはブランク対照のため、TE)を含む、ウェルあたり0.6mlのトランスフェクション混合物を作製し、15μlのSuperfect(Qiagen)と混合し、そしてRTで10分間インキュベーションした。混合物を293T細胞に添加し、次いでこれを37℃、5%CO2インキュベーター中に2時間入れた。次に、細胞を細胞培地で洗浄し、そして最終的に1mlの培地中、37℃、5%CO2インキュベーター中で、0時間、14時間、22時間および48時間インキュベーションして、抗体産生を可能にした。トランスフェクション0時間、14時間、22時間および48時間後に、分泌された抗体を培地から収集した。抗huIgG1定量的ELISA(QE)によって、抗体濃度を測定した。
【0190】
定量的ELISA
[184]ヒツジ抗ヒトIgG抗体(The Biding Site Limited、英国、製品コードAU0006)を用いて室温で1時間コーティングした96ウェルプレート中、定量的ELISAを行った。次いで、PBS中の1%新生ヤギ血清を用いて室温で1時間、プレートをブロッキングした。トランスフェクション上清を連続希釈し、そしてブロッキングしたプレートに適用した後、さらに室温で1時間インキュベーションした。次いで、ELISAプレートをPBS/0.05%Teen−20で4回洗浄し、二次抗体を添加し(ペルオキシダーゼ・コンジュゲート化抗ヒト・カッパ抗体(The Biding Site Limited、英国、製品コードAP015))、そしてプレートを再び室温で1時間インキュベーションした。最後に、プレートをPBS/0.05%Teen−20で4回洗浄し、そしてABTSを添加した(0.1Mクエン酸緩衝液中、0.5mg/ml ABTS、0.03%H2O2)。ELISAプレート吸光度をOD405で読み取って、そして内部標準の吸光度に比較して、ヒトIgG1濃度を計算した。
【0191】
元来のおよび突然変異huC242のmRNAおよび細胞内HC/LCレベルの定量的比較
総RNA単離
[185]キットプロトコルにしたがって、Qiagen RNeasyスピンカラムを用いて、6x10一過性トランスフェクション293T細胞から総RNAを単離した。細胞をトリプシン処理し、PBSで洗浄し、ペレットにし、上清を取り除き、そしてペレットを−80℃で一晩凍結させた。1%(v/v)β−メルカプトエタノールを含有する500μlの緩衝液RLT中で細胞ペレットを破壊し、完全に混合し、そして次いで、20ゲージ針を5回通過させることによってホモジナイズした。各ホモジネートに、500μlの70%エタノールを添加し、試験管を混合し、次いで700μlの試料をRNeasyミニカラムに適用し、そして試験管を10,000rpmで15秒間回転させた。フロースルーを廃棄し、そしてカラムを350μlの緩衝液RW1で洗浄し、その後、10,000rpmで15秒間、もう一度回転させた。80μlのDNase I溶液(70μlの緩衝液RDD中の10μl DNase I)をカラム膜中央に添加し、RT(20〜30℃)で15分間インキュベーションし、次いで、350μlの緩衝液RW1をカラムに添加し、そして試験管を10,000rpmで15秒間回転させて、細胞DNAを取り除いた。フロースルーを廃棄し、そしてカラムを新しい2ml収集試験管に移し、各500μlの緩衝液RPEでさらに2回洗浄し、そして最初の洗浄の際には、10,000rpmで15秒間回転させ、そして2回目の洗浄の際には、2分間回転させた。カラムを新しい2ml収集試験管に入れ、そして1分間、最高速度で回転させて、カラムを完全に乾燥させた。最後に、カラムを新しい1.5ml収集試験管に移し、そして30μlのRNase不含水でRNAを溶出させ、そして10,000rpmで1分間回転させた。OD260によってRNA濃度を測定し、そして次いで、試料を−80℃で保存した。
【0192】
cDNA合成
[186]キットプロトコルにしたがって、Superscript II逆転写酵素(Invitrogen)を用いて、第一鎖cDNA合成反応を行った。3μl総RNA、3μlランダムヘキサマー、1μl 10mM dNTP、そしてDEPC処理水で10μlにして、反応混合物を作製した。混合物を65℃で5分間インキュベーションし、そして次いで、氷上に少なくとも1分間置いた。各反応に、2μl 10xRT緩衝液、4μl 25mM MgCl2、2μl 0.1M DTT、および1μl RNアーゼOUTリボヌクレアーゼ阻害剤を添加し、混合し、そして25℃で2分間インキュベーションした。次に、1μl(50U)Superscript II逆転写酵素を各試験管に添加し、混合し、そして25℃で10分間、42℃で50分間、70℃で15分間インキュベーションし、そして次いで氷上で冷却した。簡単に回転させて反応を収集し、そして定量的PCRに進む前に、RNアーゼH(各試験管に1μl添加し、そして37℃で20分間インキュベーションする)でRNAを除去した。
【0193】
定量的PCRセットアップ
[187]Cyber GreenリアルタイムPCRマスターミックスキット(Applied Biosystems)を用いて、96ウェルプレート中、定量的PCR反応を行った。逆転写酵素反応を1:500に希釈して、そして10μlの各試料を3つ組ウェル中にプレーティングした。各プライマー対に関して、1つのRNA試料の1:100、1:200、1:400、1:800および1:1600希釈の10μlを用いて、標準曲線(4〜5点)を生成した。各プラスミド上に存在するネオマイシン耐性遺伝子に特異的なプライマーを用いて、内部トランスフェクション対照もまた、各試料に関して3つ組で行った。アクチン特異的プライマーを用いて、各試料に関して、別個の細胞数対照もまた行った。各実験および対照ウェルに、15μlの反応混合物(0.05μlの各100μMプライマー、12.5μlの2xCyber Green PCRマスターミックス、および2.4μlのddH2O)を添加した。プレートを封印し、そして回転させて、内容物を収集した後、ABIプリズム7000リアルタイム・サーマルサイクラー中に入れた。95℃で10分間、その後、95℃15秒間および60℃1分間の40サイクルで、反応を行った。ABIプリズム7000ソフトウェアを用いて、反応データを分析した。
【0194】
細胞内重鎖および軽鎖レベルの分析
[188]安定してまたは一過性にIgGを発現している細胞を、RIPA緩衝液中で溶解し、そしてタンパク質濃度を標準化した。細胞溶解物を、変性または非変性条件下のいずれかで電気泳動に供した。必要に応じて、電気泳動前に、プロテインA沈降技術によって、溶解物中のIgGを精製するかまたは濃縮した。それぞれ、重鎖および軽鎖バンドを視覚化するために、抗ヒトIgGおよび抗ヒトLCκ抗体を用いたウェスタンブロッティング技術によって、アクリルアミドゲルを分析した。
【0195】
抗原陽性細胞へのhuC242の結合アフィニティーの測定
非競合的結合
[189]huC242および変異体抗体をFACS緩衝液(RPMI培地中、2.5%NGS)で1〜2μg/mlに標準化した。2つ組50μl試料を96ウェルプレートに適用し、そしてFACS緩衝液中、1:1で連続希釈した。Colo205細胞をFACS緩衝液中、4x10細胞/mlに再懸濁し、そして50μlを各ウェルに添加した。プレートを2時間インキュベーションし、そして次いでウェルあたり200μlのFACS緩衝液で2回洗浄した後、1200rpm、4℃で5分間回転させた。上清を取り除き、そして50μlのFITC標識二次抗体(FACS緩衝液中1:100希釈)を各ウェルに添加して、そしてプレートを4℃で30分間インキュベーションした。最後に、上述のようにプレートを洗浄し、そして200μl/ウェルの、PBS中の1%ホルムアルデヒドで細胞を固定した。BD FACScalliberフローサイトメーター上での蛍光によって、ターゲット細胞への相対的抗体結合を分析した。
【0196】
競合的結合
[190]huC242を1mg/mlのEZ−Linkスルホ−NHS−LC−ビオチン(Pierce #21335)でビオチン化し、室温で1時間インキュベーションした。反応をタウリンで停止し、そして次いで、1xPBSに対して、4℃で一晩透析した。4x10−10Mの最終反応濃度のため、ビオチン化huC242を1.6x10−9Mに希釈した。
【0197】
[191]非標識huC242および変異体抗体を、4x10−8Mから1x10−11Mまで、1:2で連続希釈し、そして各試料50μlをプレートに添加した。次に、3回上下させてピペッティングすることによって、ウェルあたり50μlのビオチン化huC242を混合した。Colo205細胞をFACS緩衝液で2回洗浄し、2x10細胞/mlに再懸濁し、そして抗体混合物を含有する各ウェル中に、100μlを混合した。プレートを氷上で2時間インキュベーションし、FACS緩衝液で2回洗浄し、そして次いで、50μlの1:100希釈フルオレセイン・コンジュゲート化ストレプトアビジンを添加した。次に、プレートを氷上で1時間インキュベーションし、FACS緩衝液で2回洗浄し、そしてウェルあたり200μlの、PBS中の1%ホルムアルデヒドで細胞を固定した。BD FACScalliberフローサイトメーター上で競合的結合を分析した。
【0198】
293T細胞の一過性トランスフェクション後、数時間以内に低いhuC242産生が観察される
[192]293T細胞において一過性トランスフェクションを行って、中程度から高い発現潜在能力を有することが知られる対照抗体と、huC242の発現を比較した。2つの対照ヒト化抗体ならびにhuC242をコードするプラスミドを、並行して293T細胞にトランスフェクションし、そしてトランスフェクション0時間、14時間、22時間および48時間後、分泌された抗体を培地から収集した。早くもトランスフェクション14時間後に、分泌されたhuC242は、両対照抗体よりもはるかに少なく(図2)、そして相違は経時的に増加した。48時間後、集積したhuC242収量は、対照Aのわずか約7%であり、そして対照Bの12%であった。
【0199】
293T一過性トランスフェクション中のhuC242重鎖および軽鎖mRNAレベルは正常なようである
[193]低いhuC242産生が、低いIgGメッセンジャーRNAレベルによるのかどうかを調べるため、huC242の重鎖および軽鎖mRNAを、ImmunoGenのレパートリー中の他のヒト化抗体に比較した。huC242および対照抗体を並行して293T細胞にトランスフェクションして、そして72時間後、細胞からmRNAを単離した。定量的RT−PCR技術によって試料を分析し、そして結果(図3)は、huC242 mRNAレベルが、対照抗体に匹敵することを示す。標準化huC242重鎖mRNAは、大部分の抗体より幾分高かったが、対照Cと類似であった。huC242軽鎖mRNAは、対照Aのものより低かったが、対照AおよびCと類似であった。総合すると、huC242重鎖および軽鎖両方の細胞mRNAレベルは、高生産性が可能ないくつかの他の抗体に匹敵することが見出された。
【0200】
安定CHO細胞株において、HC(H)に対する、アセンブリーしたhuC242(H2L2)の相対比は、huB4比より有意に低い
[194]qPCR結果に基づいて、huC242の低い生産性は、転写後のものである可能性が高い。転写後事象を分析するため、細胞内発現、ならびに重鎖および軽鎖ペプチドのアセンブリーを、対照AおよびhuC242間で比較した。対照Aを発現している安定CHO細胞株を、huC242を発現している2つの安定CHO細胞株と比較した。全細胞溶解物をプロテインA精製に供し、そして単離IgGを非変性ゲル上で分離し、そしてクーマシーブルーで染色した(図4)。対照抗体に比較して、huC242では多数の不完全アセンブリー種が存在したことから、おそらくペプチド間の適合性が劣っているか、または軽鎖供給が不十分であるため、重鎖および軽鎖アセンブリーが非効率的であることが、huC242抗体の低い発現の根源である可能性があると示唆される。
【0201】
多数のhuC242重鎖および軽鎖フレームワーク残基が、コンセンサス配列と一致しない
[195]huC242重鎖および軽鎖フレームワーク中の非コンセンサス残基の存在は、最初に、安定CHO株において高レベル発現が可能であることが知られる対照表面再構成抗体と、huC242可変領域アミノ酸配列を並列させることによって、認識された。低発現につながる残基は、天然に広く行き渡っている可能性は低いため、それぞれ、全KabatネズミIgG1およびカッパ軽鎖データベースから生成したコンセンサス配列と、huC242重鎖および軽鎖可変領域フレームワークを並列させた(図5)。huC242などの表面再構成抗体中の埋没残基は、元来のネズミ親抗体のネズミ残基すべてを保持し、そしてヒト表面残基は、一般的に、置換に関して考慮されないため、ネズミコンセンサス配列を利用した。図5に示す残基26(D)は、表面上に曝露されているため、例外的に埋没残基でない。この残基(D)からネズミ残基が始まり、そして一般的な規則として、埋没残基の外側に見られるとしても、ネズミ残基は置換可能であるため、この残基をGで置換した。この場合、ネズミコンセンサス由来のG残基は、たまたま、C242ヒト化に用いたヒト配列と一致する。
【0202】
[196]組換え抗体の小規模セットとマッチしない、同じhuC242フレームワーク位は、広いデータベース由来のコンセンサス配列ともまたマッチしなかった。さらに、これらのhuC242残基の多くは、Kabatデータベース中の同じ位で非常にまれであることが見出され、16%のネズミ抗体から、低い場合は0.8%の範囲でしか存在しなかった(以下の表を参照されたい)。これらのまれな埋没フレームワーク残基を、いずれかが、huC242抗体の低発現能に寄与しているかどうかに関するさらなる研究のために選択した。
【0203】
【表1】

【0204】
huC242または軽鎖フレームワークいずれかにおける単一アミノ酸置換によるIgG産生の中程度の増加
[197]huC242重鎖および軽鎖フレームワーク中で同定された一般的でない残基が、抗体産生に負に影響を及ぼしうるかどうかを調べるため、部位特異的突然変異誘発を用いて、対応するコンセンサス残基によってこれらの残基を置換した。一過性トランスフェクションによって、huC242の単一アミノ酸変異体に関する抗体発現を、huC242および対照抗体に比較した。それぞれの発現プラスミドを293T細胞にトランスフェクションして、そして72時間後、定量的ELISAによって、分泌されたIgGレベルを決定した。huC242重鎖または軽鎖フレームワーク領域いずれかにおける単一アミノ酸置換によって、IgG産生の中程度の増加が達成された(図6)。
【0205】
[198]残基置換が、抗体結合活性を改変しないことを確実にするため、抗原陽性Colo 205細胞に対するFACSによって、huC242変異体を評価した。結果は、アミノ酸置換が結合プロフィールを変化させないことを示した(図6)。
【0206】
huC242重鎖および軽鎖フレームワークにおける2〜3残基の変化の組み合わせによって、抗体生産性の有意な増加が達成される
[199]多数のフレームワーク残基変化を含むように、huC242アミノ酸置換を拡大した。また、変異体重鎖および軽鎖構築物を組み合わせて、各々、2以上の残基置換を含有する、一連のhuC242変異体対を構築した。huC242変異体の相対的生産性を、上述のように293T一過性トランスフェクションにおいて比較した。多様な残基置換組み合わせは、異なるレベルの生産性を生じ、huC242重鎖および軽鎖可変領域フレームワーク両方の間で組み合わせた2つまたは3つの変化を含有するもので、最大の増加が見られた(図7)。
【0207】
[200]huC242変異体重鎖および軽鎖のmRNAレベルは、不変のままである。
【0208】
[201]変異体配列で見られるhuC242生産性の増加は、抗体の転写、翻訳または翻訳後特性の改善のためでありうる。huC242発現増加の原因を調べるため、qPCR実験を行って、一過性トランスフェクション293T細胞において発現されたhuC242およびhuC242配列変異体のmRNAレベルを評価した。結果は、huC242と比較した際、huC242変異体が、重鎖および軽鎖両方に関して、類似のレベルのmRNAを産生したことを示す(図8)。これは、huC242変異体の抗体産生増加が、転写またはmRNA安定性の増加によるものではなく、おそらく、転写後特性の改善によることを示唆する。
【0209】
重鎖変異の結果として、細胞内軽鎖ペプチドの増加が観察される
[202]可変領域フレームワーク残基置換によるhuC242生産性の増加に関連する、ありうる機構をさらに研究するため、細胞内重鎖および軽鎖ペプチドレベルを比較した。huC242および配列変異体を293T細胞に一過性にトランスフェクションして、72時間後にこれを溶解し、そして変性条件下のウェスタンブロッティング技術によって、全細胞溶解物を評価した。抗huIgG1および抗huK二次抗体両方を利用して、同じゲル上の重鎖および軽鎖バンド両方を視覚化した。興味深いことに、重鎖可変領域フレームワーク中の残基置換は、重鎖発現に影響を与えず、むしろ残基置換をまったく含有しないhuC242軽鎖の細胞内集積を増加させた(図9)。これらの結果は、おそらく、重鎖軽鎖適合性の増進を通じて、huC242重鎖変異体が、huC242軽鎖の分解を防御し、これが抗体アセンブリー増加および最終的に抗体産生増加につながることを示唆する。これらの結果はまた、huC242変異体の生産性が、細胞内軽鎖に大まかに比例するが、重鎖レベルには比例しないこともまた示した。
【0210】
huC242残基置換が、重鎖および軽鎖アセンブリーの改善につながる
[203]非変性条件下で行うウェスタンブロットは、huC242変異体における翻訳後特性の改善のさらなる証拠を提供する。非変性ウェスタンブロッティング技術によって、huC242および変異体構築物で一過性トランスフェクションした293T細胞由来の全細胞溶解物を評価した(図10)。これらの実験において、変性されていない完全にアセンブリーされた抗体を、アセンブリーされていない重鎖および軽鎖、ならびに中間アセンブリー産物と一緒に視覚化可能であった。中間アセンブリー産物(H2、H2L1など)に対する、完全にアセンブリーされたIgG(H2L2)の細胞内比率は、アミノ酸置換の結果、有意に改善された(図10(a))。さらに、これらの結果は、重鎖および軽鎖変異体を組み合わせて用いた場合、どちらの鎖の細胞内レベルも増加することを示した。これは、重鎖および軽鎖変異体配列の間の相互作用の改善が、分解からの相互鎖内防御を生じることを示唆する。
【0211】
[204]huC242および変異体構築物をクーマシーブルー染色ゲル上で評価して、ウェスタンブロッティング技術と関連する潜在的なアーチファクトを回避した(図10(b))。一過性トランスフェクション293T細胞由来の全細胞溶解物を、プロテインA精製技術に供し、次いで、単離されたIgGを非変性PAGEに適用し、そして続いて、クーマシーブルーで染色した。結果は、ウェスタンブロットによって観察されるものと一致し、huC242レーンにおいて、有意なレベルの部分的アセンブリー抗体が示され、そしてhuC242変異体レーンにおいて、完全にアセンブリーした抗体(H2L2)の比率増加が示される。
【0212】
huC242変異体における残基置換は、抗原結合活性に影響を及ぼさない
[205]FACSによって、抗原陽性Colo205細胞に対する、huC242および変異体構築物の相対的結合活性を評価した。抗体生産性増進が可能なhuC242変異体は、抗原結合活性に有意な変化を示さなかった(図11(a))。これらの結果をさらに確認するため、Colo205細胞に結合したビオチン化huC242を、連続希釈した非標識huC242変異体に曝露することによって、競合的結合アッセイを行った(図11(b))。この実験は、huC242変異体が、濃度依存様式で、抗原陽性Colo205細胞への結合に関して、huC242と競合可能であることを立証した。直接および競合的結合アッセイの結果を合わせると、huC242および変異体構築物が、類似の結合活性を有することを示す。
【0213】
[206]一般の当業者は、過度の実験に訴えることなく、請求されるような本発明を実施する際に、本明細書に具体的に例示されるもの以外の、プロセスを含む再操作条件および技術を使用してもよいことを認識するであろう。一般の当業者は、本明細書に例示する方法、プロセシング条件、および技術の機能的同等物が、当該技術分野に存在することを認識し、そして理解するであろう。すべてのこうした既知の同等物が、本発明に含まれると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列再操作によって、宿主細胞におけるヒト化ネズミ抗体またはその断片の産生を増加させるための方法であって:
a)ネズミ抗体可変領域フレームワーク配列のコレクションを並列させ、ここでこうした並列は、前記フレームワーク中の各位で最も頻繁に見られるアミノ酸残基(コンセンサス残基)を同定する;
b)ヒト化抗体可変領域フレームワーク配列中の対応する残基と、前記コンセンサス残基を比較し;
c)前記ヒト化抗体中で、可変領域フレームワーク配列中の1以上の非コンセンサスアミノ酸残基を同定し;そして
d)前記ヒト化抗体またはその断片中で、1以上の非コンセンサスアミノ酸残基を同等の位のコンセンサス残基で置換して、変異体抗体を産生し、ここで前記変異体抗体は、前記ヒト化抗体に比較した際、より高い収量で、前記宿主細胞において産生される;そして
e)場合によって、生物物理学的考慮のために、1以上のアミノ酸を非コンセンサス残基と置換する
工程を含む、前記方法。
【請求項2】
前記のより高い収量が、少なくとも2倍以上である、請求項1の方法。
【請求項3】
前記置換が前記重鎖中にある、請求項1の方法。
【請求項4】
前記置換が前記軽鎖中にある、請求項1の方法。
【請求項5】
前記置換が、重鎖中および軽鎖中の両方にある、請求項1の方法。
【請求項6】
置換が、可変領域フレームワーク配列のコア中にある、請求項3、4および5のいずれか一項の方法。
【請求項7】
非コンセンサスアミノ酸がまれなアミノ酸である、請求項3、4および5のいずれか一項の方法。
【請求項8】
ヒト化抗体がhuC242であり、そして置換が、Kabat番号付けスキームによって決定される位の、配列番号1中の16、26、46、もしくは89より選択される1以上の重鎖可変領域位、または配列番号2中の軽鎖可変領域位45もしくは70、あるいは両方であり、そして軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号2によって示され、そして重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号1によって示される、請求項1の方法。
【請求項9】
ヒト化抗体がhuC242であり、そして置換が、Kabat抗体残基番号付けスキームによって決定されるアミノ酸残基の、軽鎖中のQ45K/RおよびA70Dからなる群より選択される1以上、ならびに重鎖中のアミノ酸残基E1A、D26G、K46EおよびT89Vからなる群より選択される1以上であり、そして軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号2によって示され、そして重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号1によって示される、請求項1の方法。
【請求項10】
ヒト化抗体がhuC242であり、そして置換が、Kabat抗体残基番号付けスキームによって決定されるアミノ酸残基の、軽鎖中のQ45K/RおよびA70Dからなる群より選択される1以上であり、そして軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号2によって示される、請求項1の方法。
【請求項11】
ヒト化抗体がhuC242であり、そして置換が、Kabat抗体残基番号付けスキームによって決定されるアミノ酸残基の、重鎖中のアミノ酸残基E1A、D26G、K46EおよびT89Vからなる群より選択される1つであり、そして重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号1によって示される、請求項1の方法。
【請求項12】
ヒト化抗体がhuC242であり、そして置換が、Kabat抗体残基番号付けスキームによって決定されるアミノ酸残基の、重鎖中のアミノ酸残基E1A、D26G、K46E、T89V、K46E/D26G、K46E/K82S、K46E/T89V、K46E/E16A/D26G、K46E/K82S/D26GおよびK46E/T89V/D26Gからなる群より選択される1つであり、そして重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号1によって示される、請求項1の方法。
【請求項13】
ヒト化抗体がhuC242であり、そして置換が、Kabat抗体残基番号付けスキームによって決定されるアミノ酸残基の、軽鎖中のA70DまたはQ45K/Rの1つ、および重鎖中のK46E、D26G、K46E/D26GまたはK46E/T89Vの1つであり、そして軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号2によって示され、そして重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号1によって示される、請求項1の方法。
【請求項14】
前記のより高い収量が、少なくとも2倍以上である、請求項8〜13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
請求項1および8〜13のいずれか一項記載の方法によって産生される抗体。
【請求項16】
重鎖可変領域または軽鎖可変領域をコードする前記配列の領域中に、少なくとも1つの変異を有する、完全長ヒトC242コード配列を含む、単離核酸であって、前記の少なくとも1つの変異が前記C242遺伝子によってコードされるタンパク質の収量を増加させ、そして前記タンパク質に前記の少なくとも1つの変異が含まれる、前記単離核酸。
【請求項17】
前記の少なくとも1つの変異が、重鎖可変領域(図12)アミノ酸モチーフまたは軽鎖可変領域(図12)あるいは両方をコードする前記配列の領域中の変異を含む、請求項16の核酸。
【請求項18】
前記モチーフ中の前記の少なくとも1つの変異が、Gln(CAG)をコードするコドンのLys(AAA)またはArg(CGG)への、Ala(GCT)をコードするコドンのAsp(GAT)への、Glu(GAG)をコードするコドンのAla(GCC)への、Asp(GAC)をコードするコドンのGly(GGC)への、Lys(AAA)をコードするコドンのGlu(GAA)への;またはThr(ACC)をコードするコドンのVal(GTC)への置換より選択される、請求項17の核酸。
【請求項19】
前記コドンの前記置換が、軽鎖中または重鎖中で起こる、請求項16の核酸。
【請求項20】
前記軽鎖置換が:
Q45K/R Gln(CAG)からLys(AAA)またはArg(CGG)、あるいは
A70D Ala(GCT)からAsp(GAT)
より選択される、請求項16の核酸。
【請求項21】
前記重鎖置換が:
E16A Glu(GAG)からAla(GCC);
D26G Asp(GAC)からGly(GGC);
K46E Lys(AAA)からGlu(GAA);または
T89V Thr(ACC)からVal(GTC)
より選択される、請求項16の核酸。
【請求項22】
前記配列が変異体C242遺伝子産物をコードする、請求項16の核酸。
【請求項23】
前記遺伝子産物が抗体である、請求項22の核酸。
【請求項24】
配列番号1[huC242]の重鎖および配列番号2[huC242]の軽鎖を含む可変領域を有する、親抗体中の1以上のアミノ酸置換を有し、そして単一宿主細胞中に導入した場合、前記親抗体に比較した際に、改善された合成を示す、変異体抗体またはそのエピトープ結合性断片。
【請求項25】
前記置換が、Kabat番号付けスキームによって決定される位の、前記配列番号2中の45および70、あるいは前記配列番号1中の16、26、46、または89より選択される1以上の位である、請求項24の抗体。
【請求項26】
前記置換が、Kabat番号付けスキームによって決定される位の、重鎖中のQ45K/R、A70D、E16A、D26G、K46E、またはT89Vからなる群より選択される、請求項24の抗体。
【請求項27】
配列再操作によって、宿主細胞におけるヒト化抗体またはそのエピトープ結合性断片の産生を増加させるための方法であって:
a)ヒト化抗体が由来したものが属するのと同じ属または他の近縁の分類学的分類由来の抗体由来の抗体可変領域フレームワーク配列のコレクションを並列させ、ここでこうした並列は、フレームワーク中の各位で最も頻繁に見られるアミノ酸残基(コンセンサス残基)を同定する;
b)ヒト化抗体可変領域フレームワーク配列中の対応する残基と、コンセンサス残基を比較し;
c)ヒト化抗体中で、可変領域フレームワーク配列中の1以上の非コンセンサス残基を同定し;そして
d)ヒト化抗体またはその断片中で、前記の1以上の非コンセンサス残基を同等の位のコンセンサス残基で置換して、変異体抗体を産生し、ここで変異体抗体は、ヒト化抗体に比較した際、より高い収量で細胞において産生される
e)場合によって、生物物理学的考慮のために、1以上のアミノ酸を非コンセンサス残基で置換してもよい
工程を含む、前記方法。
【請求項28】
配列再操作によって、宿主細胞における親抗体またはその抗原結合性断片の産生を増加させるための方法であって:
a)親抗体が由来したものが属するのと同じ属または近縁の分類学的分類由来の抗体由来の抗体可変領域フレームワーク配列のコレクションを並列させ、ここでこうした並列は、フレームワーク中の各位で最も頻繁に見られるアミノ酸残基(コンセンサス残基)を同定する;
b)親抗体可変領域フレームワーク配列中の対応する残基と、コンセンサス残基を比較し;
c)親抗体中で、可変領域フレームワーク配列中の1以上の非コンセンサスアミノ酸残基を同定し;そして
d)親抗体またはその断片中で、1以上の非コンセンサスアミノ酸残基を同等の位のコンセンサス残基で置換して、変異体抗体を産生し、ここで変異体抗体は、親抗体に比較した際、より高い収量で宿主細胞において産生される
e)場合によって、生物物理学的考慮のために1以上のアミノ酸を非コンセンサス残基で置換してもよい
工程を含む、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図12−3】
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【図12−4】
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【図12−5】
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【公表番号】特表2010−508043(P2010−508043A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535424(P2009−535424)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/082994
【国際公開番号】WO2008/073598
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(504039155)イミュノジェン・インコーポレーテッド (36)
【Fターム(参考)】