説明

抗原−アジュバント組成物および方法

抗原およびアジュバントのガラス質組成物、および前記組成物の製造方法について開示する。前記ガラス質組成物の薬学的に許容される製剤、前記ガラス質組成物の再構成した液体製剤、ワクチン組成物、前記ガラス質組成物を含むキットについても開示する。前記ガラス質組成物を哺乳動物に投与するための装置、および前記組成物を投与することによって、哺乳動物における免疫応答を発現させる方法についても開示する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、参照することにより本明細書に援用される、2007年6月26日出願の米国仮特許出願第60/952,225号の優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明はワクチン組成物、さらに詳細には、抗原およびアジュバントのガラス質組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ワクチン組成物は、一般に1種類以上の抗原を含むが、1種類以上のアジュバント、ならびにさまざまな他の成分をも含みうる。ワクチン組成物は、液体の状態で、個人に頻繁に投与されるが、保存および輸送の目的では、乾燥ワクチン組成物が好ましいことが多い。乾燥ワクチン組成物の成分の経時的安定性は、液体組成物と比較して良好なことがあり、乾燥組成物は冷蔵を必要としない場合がある。また、乾燥組成物は、個人に投与する前に液体製剤に再構成することができる。しかしながら、乾燥ワクチン組成物の調製方法は、恐らくは組成物を構成する成分の完全性を変化させることによって、組成物の免疫原性に影響を与えうる。例えば、アルミニウム塩のアジュバント(例えば、リン酸アルミニウム・アジュバント、水酸化アルミニウム・アジュバント、ミョウバン)を含む組成物の凍結乾燥またはフリーズ・ドライは、免疫原性活性の喪失を生じうる。
【0004】
個々の成分の総合的な完全性に加えて、ワクチン組成物内の特定の成分間の相互作用もまた、組成物の免疫原性に影響を与えうる。一例を挙げれば、アルミニウム塩・アジュバントへの抗原の吸着は、ワクチン組成物内の抗原の免疫原性を増強すると考えられている。さまざまな要因が、ワクチン組成物における抗原のアジュバントへの吸着能力に影響を与える可能性があり、例えば、抗原およびアジュバントの両方の電子電荷、pH、温度、イオン強度、賦形剤の存在、および他の要因が挙げられる。乾燥組成物の調製方法を含めた、ワクチン組成物の調製方法は、一般に、抗原とアジュバントとの関係にも影響を与えるであろう。
【0005】
抗原および無機塩のアジュバント(例えばアルミニウム塩)を含む、安定した免疫原性の乾燥ワクチン調製物を得ることができないと、ワクチンの世界的分布、特に開発途上国への分布に影響を与えうる。抗原およびアジュバントを含む乾燥調製物がなければ、一般に、安定性が低く、温度に敏感な液体調製物が用いられる。この一例としては、乾燥した抗原成分を再構成するために、アルミニウム塩・アジュバントの液体調製物が一般に用いられる。この再構成の手法における差異は、特に、熟練した医療関係者がいない地域では、ワクチン製品の効能に影響を与えうる。世界保健機関(WHO)は、これを主要な関心事として認定している。対照的に、抗原とアルミニウム塩・アジュバントの両方を含む単一の乾燥調製物の再構成は比較的容易である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
抗原およびアジュバントのガラス質組成物について開示する。一例を挙げれば、ガラス質組成物は、発泡状態で存在する。一例を挙げれば、抗原はタンパク質またはペプチドである。一例を挙げれば、アジュバントはアルミニウム塩・アジュバントである。一例を挙げれば、ガラス質組成物は、ガラスを形成することができる、ポリオールおよび/または合成ポリマーを含む。ガラス質組成物の、薬学的に許容される製剤、ならびに再構成した液体製剤についても開示する。ガラス質組成物の調製方法、ならびに哺乳動物への投与方法および哺乳動物における免疫応答の誘発方法についても開示する。ガラス質組成物、およびガラス質組成物でコーティングされた極微針アレイを含むキットについても開示する。
【0007】
本明細書に取り込まれ、本明細書の一部をなす添付の図面では、ワクチン組成物、およびワクチン組成物の製造方法の実施の形態が図示されており、下記の詳細な説明と共に、実施例を説明する役割をする。図示された実施の形態は、説明の目的で示されるものであって、限定するためのものではないことが認識されよう。図示された実施の形態の変更、変形、および偏差は、下記に開示される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、なされうることも理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本明細書の実施例2に詳細に記載するさまざまな調製物の例についての、アルミニウム・アジュバントの安定性における発泡乾燥の効果の試験研究結果。縦軸はμm単位における平均粒径である。
【図2】本明細書の実施例3に詳細に記載するさまざまな調製物の例についての、アルミニウム・アジュバントの安定性における発泡乾燥の効果の試験研究結果。縦軸はμm単位における平均粒径である。
【図3】本明細書の実施例4に詳細に記載する、透過電子顕微鏡法によるリン酸アルミニウム・アジュバントを含む、再構成した発泡乾燥サンプルの外観の試験研究結果。パネル(A)および(B)における電子顕微鏡写真は、150,000倍に拡大した。パネル(C)における電子顕微鏡写真は、100,000倍に拡大した。
【図4】本明細書の実施例4に詳細に記載する、透過電子顕微鏡法による水酸化アルミニウム・アジュバントを含む、再構成した発泡乾燥サンプルの外観の試験研究結果。電子顕微鏡写真は、100,000倍に拡大した。
【図5】本明細書の実施例5に詳細に記載するさまざまな濃度のショ糖を含む調製物のアルミニウム・アジュバントの安定性における発泡乾燥の効果の試験研究結果。縦軸は%単位における全容積である。横軸はμm単位における平均粒径である。
【図6】本明細書の実施例6に詳細に記載する、アルミニウム・アジュバントへのタンパク質抗原の吸着における発泡乾燥の効果の試験研究結果。アジュバントに吸着されたタンパク質抗原の%をY軸に示す。実験は2回行った(X軸上にサンプル番号1および2として示す)。
【図7】本明細書の実施例7に詳細に記載する、経時における発泡乾燥調製物のアルミニウム・アジュバントへのタンパク質抗原の吸着の試験研究結果。アジュバントに吸着されたタンパク質抗原の%をY軸に示す。X軸上では、さまざまなサンプルについて分析した週単位の時間が示されている。
【図8】本明細書の実施例8に詳細に記載する、経時における発泡乾燥調製物のアルミニウム・アジュバントへのタンパク質抗原の吸着の試験研究結果。アジュバントに吸着されたタンパク質抗原の%をY軸に示す。X軸上では、さまざまなサンプルについて分析した週単位の時間が示されている。
【図9】本明細書の実施例9に記載する、製造した発泡乾燥製剤の実施例のバイアル。
【図10】本明細書の実施例10に詳細に記載する、25℃で再乾を行った乾燥発泡体の、経時におけるさまざまなアジュバントへのタンパク質抗原の吸着の試験研究結果。アジュバントに吸着されたタンパク質抗原の%をY軸に示す。X軸上では、さまざまなサンプルについて分析した週単位の時間が示されている。
【図11】本明細書の実施例10に詳細に記載する、37℃で再乾を行った乾燥発泡体における、経時におけるさまざまなアジュバントへのタンパク質抗原の吸着の試験研究結果。アジュバントに吸着されたタンパク質抗原の%をY軸に示す。X軸上では、さまざまなサンプルについて分析した週単位の時間が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書は、抗原およびアジュバントの固体ガラス質組成物について記載する。一例を挙げれば、ガラス質組成物は機械的に安定な多孔質構造、または発泡体の状態で存在する。一例を挙げれば、ガラス質組成物内の抗原は、アジュバントに吸着されている。ガラス質組成物の製造方法を開示する。ガラス質組成物が発泡体である事例では、組成物の調製方法が開示され、発泡乾燥と呼ばれる。ガラス質組成物の薬学的に許容される製剤、およびこれらの組成物の調製方法についても開示する。抗原およびアジュバントの固体ガラス質組成物の再構成された液体状態についても開示する。抗原およびアジュバントのガラス質組成物の製剤を使用して哺乳動物の免疫応答を誘発する方法、ガラス質組成物を含むキット、および、ガラス質組成物の製剤の哺乳動物への投与に使用するための方法および装置についても開示する。
【0010】
定義
以下は、本開示に用いられうる、選択される用語の定義を包含する。定義は、用語の範囲内に含まれ、実施に用いられうる、構成要素のさまざまな例および/または形態を包含する。例は、限定することを意図していない。単数および複数の形態の用語の両方が本定義の範囲内に含まれる。
【0011】
本明細書では「アジュバント」とは、抗原の免疫原性を調節する薬剤または物質のことをいう。「免疫原性の調節」には、抗原によって刺激される免疫応答の規模、持続時間、および/または特異性を向上させることが含まれる。
【0012】
本明細書では「非晶質固体」とは、結晶質の構造を実質的に欠いている固体のことをいう。
【0013】
本明細書では「抗原」とは、免疫応答を生じさせ、仲介する能力のある物質のことをいう。免疫応答を刺激し、または可能にする抗原は、免疫原性があるといわれ、免疫原と称される。
【0014】
本明細書では「沸騰」とは、液体が揮発するときに生じる相転移のことをいう。「沸点」は、所定の圧力における液体の性質であり、液体の蒸気圧が、液体が晒される外圧と等しい温度として定義される。沸騰は、一般に、液体内の泡立ちとして視覚的に観察される。
【0015】
本明細書では「発泡体」とは、機械的に安定な多孔質構造を有する非晶質固体の種類のことをいう。発泡体は「発泡ガラス」とも称されうる。
【0016】
本明細書では「発泡乾燥」とは、発泡体を形成する過程のことをいう。発泡乾燥はガラス化の方法の一種である。
【0017】
本明細書では「ガラス」とは、実質的に多孔質ではない、非晶質固体の一種のことをいう。
【0018】
本明細書では「ガラス転移温度」とは、ガラス質の固体が形成される温度のことをいう。非晶質固体はガラス転移温度未満のガラス状態にある。ガラス転移温度は「Tg」と略される場合がある。
【0019】
本明細書では「ポリオール」とは多価アルコールのことをいい、さらに一般には、ガラスおよび/または発泡体を形成する能力のある物質のことをいう。
【0020】
本明細書では「ワクチン」とは、少なくとも1種類の抗原の薬学的に許容される製剤のことをいう。抗原のこれらの薬学的に許容される製剤は、製剤の活性、安定性など、または投与を増進する、アジュバント、賦形剤、希釈剤なども含みうる。
【0021】
本明細書では「真空」とは、1atmまたは760Torr未満の圧力のことをいう。
【0022】
本明細書では「粘性」とは液体の「厚さ」、または、流れるためのその内部抵抗のことをいう。本明細書では、粘性と称される液体は、一般に、下記に開示する発泡乾燥方法において行われる、真空下で沸騰することのできる流体である。粘性の液体は、シロップとも称されうる。本明細書では、粘性の液体は、一般に106〜107パスカル秒の範囲の粘度を有する。
【0023】
本明細書では「ガラス質組成物」とは、発泡体およびガラスを含む非晶質固体の一種のことをいう。
【0024】
本明細書では「ガラス化」とは材料をガラス質組成物に転換する過程のことをいう。
【0025】
抗原
抗原は、一般に、免疫応答を刺激する能力のある物質である(すなわち、抗原は免疫原性である可能性がある)。抗原によって刺激される免疫応答は、体液のまたは細胞のものであって差し支えなく、一般に抗原特異的である。したがって、抗原は、抗体分子またはT細胞受容体によって結合されうる物質である。多くの種類の生物学的分子および他の分子は、抗原として作用することができる。例えば抗原は、限定はしないが、タンパク質、ペプチド、炭水化物、多糖類、オリゴ糖、糖類、脂質、リン脂質、代謝産物、ホルモン、核酸、および他の分子、ならびにそれらのフラグメントおよび/または組合せを含む分子が起源でありうる。抗原の任意のこれらの起源および種類、ならびに列記されていない他のものは、本明細書に記載されるガラス質組成物および方法に使用して差し支えない。
【0026】
抗原は、生来的起源(例えば、自己抗原(self antigen)、自己抗原(auto antigen)、腫瘍関連抗原)、もしくは特定の哺乳動物または他の動物に対する外来性の起源(例えば感染体)に由来しうる。抗原は複数の抗原決定基を有し、それによって、哺乳動物の抗原への曝露は、異なる特異性を有する、複数の対応する抗体または細胞の免疫応答を生じうる。抗原は、免疫応答を誘発する目的で、限定はしないが、摂取、吸入、皮膚接触、皮下注射、静脈注射、筋肉注射、皮内注射、粘膜面接触および他の経路など、さまざまな経路によって、哺乳動物内に意図的に取り込まれうる(例えば予防接種)。
【0027】
抗原は、細胞、細菌、ウイルス、および他の微生物のすべてまたは一部、およびこれらの部分または組合せなど、単一分子よりも大きい成分を含むか、または成分の一部でありうる。細菌およびウイルス、特に哺乳動物の疾患に関与するものは、本明細書に記載されるガラス質組成物および方法に有用でありうる抗原の起源である。細菌の抗原としては、細胞の外表面、細胞内部、鞭毛、または他の成分に由来する、タンパク質、多糖類および他の分子が挙げられる。他の抗原は、感染細胞によって分泌されるか、または細胞の死または崩壊の際に放出されるものでありうる。これらの抗原の例としては、ジフテリア、破傷風、およびボツリヌス毒素が挙げられる。
【0028】
本明細書に記載されるガラス質組成物に用いられうる抗原の例としては、限定はしないが、ロタウイルス、口蹄疫用の薬剤、インフルエンザ、パラインフルエンザ、ヘルペスウイルス種(単純ヘルペスウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス、水痘ウイルス、仮性狂犬病、サイトメガロ・ウイルス)、狂犬病ウイルス、ポリオウイルス、A、B、CおよびE型肝炎、ジステンパー、ベネズエラウマ脳脊髄炎、猫白血病ウイルス、レオウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ラッサ熱ウイルス、ポリオーマ・ウイルス、犬パルボウイルス、パピローマ・ウイルス、ダニ媒介脳炎、牛疫ウイルス、ライノウイルス、エンテロウイルス、メンゴウイルス、パラミキソウイルス(流行性耳下腺炎、麻疹、呼吸器合胞体ウイルス)、鳥類伝染性気管支炎ウイルス、HTLV1、HIV−1および−2、インフルエンザウイルスA、BおよびC、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、パルボウイルス、アデノウイルス、トガウイルス(風疹、黄熱病、デング熱(例えば、プレメンブランおよびエンベロープタンパク質))、ウシ呼吸器合胞体ウイルス、コロナウイルス、日本脳炎ウイルス、ポリオウイルス、百日咳菌、ブルセラ菌、大腸菌、サルモネラ属、チフス菌、連鎖球菌、ビブリオ属(コレラ菌、腸炎ビブリオ)、赤痢菌、シュードモナス属、ブルセラ属、クレブシエラ属、マイコバクテリウム属(結核、トリ型結核菌、BCG、ハンセン病)、肺炎球菌、ブドウ球菌、エンテロバクター属、破傷風、炭疽菌、肺炎連鎖球菌、髄膜炎菌A、B、C、Y、W、W−135、ヘリコバクター・ピロリ、ロシャリメア・ヘンセラ菌、パスツレラ属(ヘモリチカ菌、パスツレラ・マルトシダ)、クラミジア属(クラミジア・トラコマチス、オウム病クラミジア、肺炎クラミジア)、梅毒(梅毒トレポネーマ)、ヘモフィルス属、ヘモフィルス・インフルエンザ・タイプb、マイコプラズマ属、ライム病(ボレリア・ブルグドルフェリー)、レジオネラ症、ボツリヌス中毒症(ボツリヌス菌)、コリネバクテリウム・ジフテリエ、エルシニア・エンテロコリティカ、リケッチア感染症、ロッキー山発疹熱、発疹チフス、エーリキア菌;マラリア(熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫)、住血吸虫、トリパノゾーマ、リーシュマニア、糸状線虫類、トリコモナス症、肉胞子虫症、テニア属(無鉤条虫、有鉤条虫)、トキソプラズマ(Toxoplasma gondi)、旋毛虫病(旋毛虫)、コクシジウム症(アイメリア属)を含む寄生生物および原虫;クリプトコックス・ネオフォルマンス、カンジダ・アルビカンス、アスペルギルス・フミガーツス、コクシジオイデス症を含む菌類などに由来する抗原が挙げられる。
【0029】
開示するガラス質組成物および方法に用いられる抗原は、天然起源に由来する、天然の状態の抗原でありうる。天然の抗原は、毒性の少ない形態を含む他の形態に転換されて差し支えなく、フラグメントであって差し支えなく、または他の欠失、付加または変形を含めてもよい。抗原のこれらの転換された形態は、一般に、免疫原性を保持する。ジフテリアおよび破傷風のトキソイドは、化学(例えばホルムアルデヒド)処理によって生産されるこの事例における、天然の抗原の解毒された形態の例である。抗原の毒性を排除する他の手段は周知であり、タンパク質抗原の酵素消化/断片化、変性(通常は加熱または化学処理を経て)、複合化、化学修飾などが挙げられる。
【0030】
単一のワクチン製剤において複数の抗原を投与し、複数の疾患、感染体、種類、抗原型、血液型亜型などに対する保護を誘発することは、当分野において一般的であり、本開示の組成物は、同様に複数の抗原を含みうる。併用されるこのような抗原の特定の例としては、ジフテリア、破傷風、百日咳および他の抗原が挙げられる。抗原は、抗原の免疫原性を仲介する担体タンパク質に関与しうる。このような複合化抗原の例は当技術分野で周知であり、ワクチンとしての医薬製剤において市販されている。これらの抗原、抗原の組合せ、担体と結合した抗原などのすべては、本明細書に記載されるガラス質組成物および方法に取り込まれうる。
【0031】
ガラス質組成物における抗原の濃度は任意の濃度であって差し支えないが、一般に、個人または哺乳動物に投与された場合に免疫系を刺激するのに十分な量である。一例を挙げれば、1種類以上の抗原の濃度は10μg/mlである。他の例では、1種類以上の抗原の濃度は、20、30、40、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、または1000μg/mlでありうる。他の例では、抗原の濃度は、2、3、4、5、6、7、8、9、10mg/mlまたはそれ以上であって差し支えない。1種類以上の抗原の濃度は、上に列記した任意の二つの値の間の範囲であってもよい。
【0032】
アジュバント
アジュバントは、一般に、抗原の免疫原性を増進しうる物質である。アジュバントは、しばしばワクチン組成物に取り込まれ、ワクチン組成物が個人または哺乳動物に投与される間および投与後に機能する。アジュバントは、後天的および先天的(例えばToll様受容体)免疫の両方の役割をし、さまざまな方法で機能しうるが、そのすべてが理解されているわけではない。
【0033】
天然および合成の多くの物質は、アジュバントとして機能することが示されている。例えば、アジュバントとしては、限定はしないが、無機塩、スクアレン混合物、ムラミールペプチド、サポニン誘導体、マイコバクテリウムの細胞壁調製物、特定のエマルション、モノホスホリル脂質A、ミコール酸誘導体、非イオン性のブロック共重合体界面活性剤、キル−A、コレラ毒素Bサブユニット、ポリホスファゼンおよび誘導体、免疫刺激複合体(ISCOMs)、サイトカインアジュバント、MF59アジュバント、脂質アジュバント、粘膜アジュバント、特定の細菌の外毒素および他の成分、特定のオリゴヌクレオチド、PLGなどが挙げられる。これらのアジュバントは、本明細書に記載されるガラス質組成物および方法に使用して差し支えない。
【0034】
とりわけ、本明細書に記載されるガラス質組成物に有用なアジュバントは、無機塩アジュバント、特にアルミニウム塩およびカルシウム塩のアジュバントである。アルミニウム塩・アジュバントとしては、水酸化アルミニウム・アジュバント(結晶質のアルミニウムオキシ水酸化物、AlOOH)、リン酸アルミニウム・アジュバント(非晶質のヒドロキシリン酸アルミニウム)、およびミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム、AlK(SO42)が挙げられる。極端な温度への曝露は、アルミニウム・アジュバントならびに吸着された抗原の免疫原性活性の両方に影響を与えうることがよく知られているように、組成物に用いられるアジュバントがアルミニウム塩・アジュバントである場合には、組成物は、一般に、極端な温度、すなわち氷点(0℃)未満または極端な加熱(例えば70℃)に、少なくとも長い期間、晒されるべきではない。
【0035】
抗原は、アルミニウム塩・アジュバントに吸着されうることが、当技術分野で知られている。少なくともある程度は、静電気引力が、これらのアジュバントへの抗原の吸着に関与するであろう。抗原とアジュバントの静電相互作用は、抗原の等電点(IEP)およびアルミニウム塩・アジュバントの表面電荷(ゼロ電荷の点、すなわちPZC)を考慮することによって最適化されて差し支えない。一例を挙げれば、タンパク質抗原のIEPが決定され、所望のpHにおいて反対の表面電荷を有するアルミニウム塩・アジュバントが選択される。例えばおよそ中性のpHでは、IEP<7のタンパク質抗原は、リン酸アルミニウム・アジュバント(PZC<7)よりも水酸化アルミニウム・アジュバント(PZC>7)に良好に吸着する。対照的に、中性のpHでは、IEP>7のタンパク質抗原は、水酸化アルミニウム・アジュバントよりもリン酸アルミニウム・アジュバントに良好に吸着するであろう。
【0036】
本明細書に開示されるように、発泡乾燥法は、抗原とアジュバントの間の静電相互作用を、最善ではないが、ある程度克服し、抗原のアジュバントへの吸着を増大しうる。これは、発泡乾燥していない調製物中のアルミニウム塩・アジュバントに対する抗原の吸着と比較して、抗原およびアジュバントの発泡乾燥調製物中のアルミニウム塩・アジュバントに対する抗原の吸着の増大によって示唆される。これらの研究および結果は、本開示の実施例にさらに詳細に記載されている。したがって、発泡乾燥法は、抗原とアジュバントの最適ではない組合せを用いるための手段を提供することができ、抗原とアジュバントの新規な組合せを提供しうる。一例を挙げれば、発泡乾燥法は、リン酸アルミニウム・アジュバントに吸着される、IEP<7のタンパク質抗原の組成物を提供しうる。一例を挙げれば、発泡乾燥法は、水酸化アルミニウム・アジュバントに吸着される、IEP>7のタンパク質抗原の組成物を提供しうる。抗原およびアジュバントの他の組成物も生産されうる。一例を挙げれば、水酸化アルミニウム・アジュバントに吸着される、IEP<7のタンパク質抗原の組成物が生産される。一例を挙げれば、リン酸アルミニウム・アジュバントに吸着されるIEP>7のタンパク質抗原の組成物が生産される。
【0037】
ガラス質組成物におけるアジュバントの濃度は、任意の濃度であって差し支えないが、一般に、個人または哺乳動物に投与する場合、免疫系を刺激する抗原の能力を増進するのに十分である。一例を挙げれば、1種類以上のアジュバントの濃度は0.1mg/mlである。他の例では、1種類以上のアジュバントの濃度は、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、または10.0mg/ml、あるいはそれ以上である。1種類以上のアジュバントの濃度は上に列記した任意の二つの値の間の範囲であってもよい。
【0038】
ガラス形成および発泡形成物質
発泡乾燥などのガラス化工程に供される組成物は、一般に、ガラス質組成物を形成する、または、発泡ガラスなど、ガラス質組成物の形成を促進する能力がある、1種類以上の物質を含むであろう。一般に、これらの物質を含む液体製剤を冷却して、ガラスまたは発泡体のような結晶質構造を実質的に含まない固体を形成することができる。一般に、液体からガラスまたは発泡体への転換または転移は、ガラス転移温度(Tg)またはその近くで生じる。一般に、これらの物質はガラス質組成物内の抗原またはアジュバントの活性に干渉しない。これらの物質はまた、抗原および/またはアジュバントを安定化する場合があり、一般に、生物学的成分の活性に悪影響を与えない。これらの物質はまた、抗原および/またはアジュバントの乾燥工程、およびそれに続く保存に耐える能力を増強または促進しうる。
【0039】
ガラスまたは発泡体を形成する、またはガラスまたは発泡体の形成を促進する能力のあるさまざまな物質が用いられうる。これらの物質の一部には、糖類、炭水化物、ポリオール、ポリマー、タンパク質、ペプチド、アミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、アルギニン、リジン、グルタミン)などが含まれる。これらの物質の組合せを用いてもよい。これらの物質には、さまざまな名称または商標が用いられうる。例えば、これらの物質の一部は、安定剤、ガラス形成剤または発泡形成剤、ガラス質化促進剤、ポリオール、保護剤、ガラスまたは発泡体マトリクス形成材料、ならびに他の名称で呼ばれうる。
【0040】
一例を挙げれば、ポリオールが使用されうる。ポリオールの例としては、単糖類(simple sugars)(例えば、ブドウ糖、麦芽糖、ショ糖、キシルロース、robose、マンノース、果糖、ラフィノース、トレハロースなど)、または糖質(carbohydrate sugars)(例えば、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、イソマルト(siomalt)、ラクチトールなど)が挙げられよう。一部の例では、乳糖、ラフィノース、トレハロース、ショ糖などの物質は、安定化糖(stabilizing sugars)と称されうる。ソルボース、プシコース(piscose)、リブロース、エリトルロースおよびジヒドロキシジメチルケトンなどの物質を使用して構わない。用いられうるメチル化単糖類の例としては、一部のアラビノ−、ガラクト−、グルコ−、マンノ−またはキシロ−ピラノシドが挙げられよう。場合によっては、「ポリオール」という用語は、一般に、ガラスおよび/または発泡体を形成する、または形成を促進する能力のある物質のことを称するのに用いられうる。
【0041】
単糖類、二糖類、三糖類、オリゴ糖およびそれらの対応する糖アルコールを用いて、ガラスまたは発泡体を形成し、または発泡体の形成を促進して差し支えない。糖アルコール配糖体を用いてもよい。炭水化物誘導体および化学修飾した炭水化物などのポリヒドロキシ化合物を使用してもよい。パラチニット(α−D−グルコピラノシル−1→6−ソルビトール(GPS)およびα−D−グルコピラノシル−1→6−マンニトール(GPM)の混合物)または、GPSまたはGPM化合物を個別に使用して差し支えない。一部の例では、ショ糖、メチルα−D−グルコシド、2−HP−β−シクロデキストリンおよびアルギニンは、単独で、またはさまざまな組合せで使用されうる。多糖類もまた用いられうる。
【0042】
一例を挙げれば、ポリマーも、本明細書に記載されるガラス質組成物の形成、または形成の促進または増進に使用されうる。使用されうるポリマーの一部の例として、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチル・デンプン、ポリビニル・ピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミンなどが挙げられる。Ficollおよびデキストランなどの糖共重合体も使用して差し支えない。
【0043】
ポリオール、または他の発泡体形成またはガラス形成物質あるいはそれらを促進する物質、または物質の組合せの濃度は、一般に、粘性の液体組成物を達成するか、または液体の粘度を増加するように設計された工程段階の後に粘性の液体組成物を達成するのに十分な濃度である(下記のこの工程段階の記述を参照)。一例を挙げれば、ポリオール、合成ポリマー、および他のガラス形成物質または発泡形成物質の総濃度は5%である。一例を挙げれば、ポリオール、合成ポリマー、および他のガラス形成物質または発泡形成物質の総濃度は少なくとも5%である。他の例では、これらの物質の総濃度は、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、またはそれ以上である。1種類以上のガラス形成物質または発泡形成物質の濃度は、上に列記した任意の二つの値の間の範囲であってもよい。
【0044】
抗原/アジュバント/ポリオールを含む液体
一般に、抗原、アジュバントおよびガラス/発泡体形成、または形成促進物質(例えばポリオール)を含む液体、および、述べられる他の可能性のある物質を、液体中に混合し、次いでそれを以下に記載する発泡乾燥法に供する。これらの成分は、さまざまな方法で液体中に混合される。一例を挙げれば、抗原およびアジュバントを最初に液体中に混合し、続いてポリオールを加える。抗原およびアジュバントは、ポリオールを加える前に、ある期間(例えば24〜48時間)、液体中に一緒に存在させてもよい。ポリオールを加える前に、抗原およびアジュバントをさまざまな温度(例えば2〜8℃)でインキュベートしてもよい。これにより、抗原とアジュバントの関係が促進されうる。別の例では、抗原、アジュバントおよびポリオールを同時に液体に加える。成分添加の他の組み合わせも可能である。
【0045】
有機物が、用いられる抗原、アジュバントおよびポリオールに相溶する場合は、有機物が少なくともある程度の濃度で存在しうるが、一般的には、抗原、アジュバントおよびポリオールを含む液体は水溶液である。水溶液の場合には、液体は緩衝化されうる。一般に、用いられる緩衝系は用いられる抗原、アジュバントおよびポリオールと相溶する。
【0046】
他の物質
抗原、アジュバントおよびポリオール以外の物質をガラス質組成物に取り込んでもよい。一般に、これらの他の物質は、発泡乾燥法に用いられる、抗原/アジュバント/ポリオールを含む液体に加えられよう。これらの追加物質としては、例えば、発泡乾燥される液体の成分である、抗原、アジュバントまたはポリオールの溶解を補助する物質、ガラスまたは発泡体の形成を増進するか、またはガラスまたは発泡体を安定化する物質、Tgに影響を与える物質、ガラスまたは発泡体の乾燥を増進する物質、ガラスまたは発泡体において抗原および/またはアジュバントを安定化(例えば、分解(メイラード反応)または凝集の防止)する物質、および他の機能を果たす物質が挙げられる。塩も発泡乾燥される液体に加えて差し支えなく、ガラス質組成物内に取り込んでもよい。生物学的製剤、生物学的改質剤、医薬品など、他の物質も加えて構わない。
【0047】
発泡体および発泡乾燥
ガラス質の固体形態の抗原/アジュバント/ポリオール組成物は、ガラス化を経て調製される。ガラス化は、材料を、結晶質の構造を実質的に含まないガラス様の非晶質固体に転換する方法である。ガラス化はまた、材料を発泡体に転換することをいう。ガラス質の固体の固化は、その材料の特性であるガラス転移温度(Tg)において生じ、また材料の冷却の間に生じる。ガラス転移温度は、通常、ガラスおよびプラスティックなど、完全にまたはある程度非晶質の相に適用される。ガラス転移温度以下では、非晶質材料の物理的性質は、ガラス質の非晶質固体に転換される。
【0048】
本明細書に開示されるガラス質の固体形態は、発泡体でありうる。発泡体は、一般に、表面積の大きい安定な多孔質構造をしている。発泡体は、さまざまな粘度(thicknesses)であり、一般には、同様の組成物(例えば、真の(true)ガラス)の発泡化していない形態よりも密度が低い。本明細書に開示される発泡体は、発泡ガラス、発泡ガラスマトリクス、乾燥発泡体、および安定化発泡体とも呼ばれている。方法および手法を実施するための発泡乾燥の手順および装置は開示されている(参照することによりその教示の全体が本明細書に援用される、例えば、米国特許第5,766,520号、同第6,509,146号および同第6,964,771号の各明細書を参照)。発泡乾燥法は、一般に、発泡体の形成によって、ガラス化の手順とは区別される。発泡体は、さまざまな液体、分散液、懸濁液、エマルション、混合物および溶液から調製することができる。一般に、少なくとも液体が抗原を含む例では、調製される液体は、生物学的製剤と相溶性である。
【0049】
発泡乾燥法は、真空圧における液体の沸騰を用いてサンプルから液体の蒸発を生じさせ、発泡体を形成する。サンプルは、液体を大気圧(すなわち真空ではない)で沸騰させるために必要とされる、より高い温度に供されなくて済むように、沸騰は真空下で行なわれる。一例を挙げれば、液体が沸騰する真空圧は、比較的高い真空圧である。一例を挙げれば、圧力は<25Torr(約0.033atm未満)である。他の例では、圧力は<10Torr(約0.013atm未満)、<8Torr(約0.010atm未満)、または<5Torr(約0.007atm未満)である。真空は、発泡体が形成された後もしばらくは維持することができるが、一般には、真空は、発泡体が形成されるまで維持される。真空を継続して適用することにより、形成される発泡体の残留水分含量は低下されうる。例えば、真空はおよそ4時間維持されうるが、真空の継続時間はこれより長くても短くてもよい。他の例では、真空は、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24または48時間、維持されて差し支えない。
【0050】
沸騰工程の間に生じる液体の蒸発は、一般に、サンプル上に冷却効果をもたらし、沸騰の間にサンプルの温度を低下させる。液体の蒸発はまた、一般に、サンプルのガラス転移温度(Tg)を上昇させる効果も有し、サンプルのTgは沸騰の間に上昇する。沸騰工程の間のある時点において、サンプル温度とTgは一致し、同一である。ある時点において、および、サンプル温度が、上昇するTg未満に低下し続けると、ガラス質の固体が形成される。一例を挙げれば、ガラス質の固体は発泡体である。
【0051】
沸騰工程の間、サンプルの温度は不安定でありうるが、一般に、サンプル内の生物学的材料の所望の特性(例えば免疫原性)が保持される範囲内に保たれる。一例を挙げれば、沸騰工程の間の温度は100℃未満で、0℃より高くなりうる。一例を挙げれば、サンプルの温度は70℃未満で0℃より高く保持される。他の温度範囲も可能である。一例を挙げれば、少なくとも一部のサンプルは、少なくとも一時的に0℃未満になりうる。場合によってはスラリーが形成される。発泡体を得るため、この沸騰工程を実施するのに用いられる装置は、一般に、その工程の間、真空およびサンプルの温度の両方を調節することができる。一部の例では、従来のフリーズ・ドライ機械、または変更を加えたフリーズ・ドライ機械を使用して差し支えない。
【0052】
発泡乾燥法の上述の「沸騰」工程の前に、発泡乾燥法の沸騰工程に供される液体、分散液、懸濁液、エマルション、混合物または溶液の粘度を増加させるように設計された工程段階を行なって差し支えない。一部の例では、この工程は任意である。この「粘度増加」工程は、さまざまな方法で行なうことができる。1つの方法では、液体サンプルを比較的低真空(例えば、約0.9〜0.1atmの範囲の圧力)に供することができる。一例を挙げれば、約0.2atmまたは152Torrの圧力が使用されうる。他の圧力を用いることもできる。例えば、圧力は、<1atm、<0.9atm、<0.8atm、<0.7atm、<0.6atm、<0.5atm、<0.4atm、<0.3atm、<0.2atm、または<0.1atmでありうる。比較的低い真空は、室温または他の温度で適用することができる。別の方法では、液体を真空下で沸騰させることによって揮発させて差し支えない。この工程は、すでに説明した発泡乾燥法の沸騰工程とは別に行って差し支えなく、あるいは続けて行ってもよい。この後者の方法は、真空、および真空が適用される時間は異なりうるが、前述の沸騰工程と同様の条件下で行なうことができる。この粘度増加の工程段階の終わりには、一般に、最初の液体の粘度よりも高い粘度の液体が得られる。場合によっては、この粘度の高い液体はシロップと呼ばれる場合がある。粘度の高い液体を、上述の発泡体を得る沸騰工程に供することができる。
【0053】
沸騰工程の後、沸騰工程から得られる発泡体を乾燥する、またはその水分含量を低下させるように設計された工程段階が含まれうる。一部の例では、この工程は随意的である。この工程は、さまざまな方法によって行なうことができる。一例を挙げれば、発泡体は真空(真空乾燥)に供されうる。真空乾燥の1つの例では、圧力は<5Torr(約0.007atm未満)でありうる。別の例では、圧力は<1Torr(約0.0013atm未満)でありうる。他の圧力を真空乾燥工程に用いてもよい。別の例では、発泡体は、DRIERITE(商標)などの乾燥剤の存在下で保存されうる。別の例では、発泡体は乾燥剤の存在下で真空乾燥されうる。発泡体の水分含量を低下させる他の方法を用いてもよい。この「再乾」工程は、さまざまな温度、およびさまざまな持続時間で行なって差し支えない。例えば、再乾は、25、37、40、55℃、または他の温度で行なわれうる。例えば再乾は、数時間、数日、数週間または数ヶ月の期間、行なわれうる。しばしば、再乾の処置は、サンプルの大きさ、最初の水分濃度などに応じて、長期間続行されよう。一例を挙げれば、その処置は、12時間を超える期間、一般には24時間または48時間を超えて行われる。日常的な実験によって、当業者は十分な乾燥を達成するためのさらに正確なパラメータを認定することができよう。あるいは、サンプルが所望の残留水分含量に達したら再乾工程を停止できるように、サンプル中の水分濃度がさまざまなセンサーシステムによって決定されてもよい。
【0054】
一般に、二次的乾燥工程段階の完了時には、サンプルの残留水分含量は、再乾工程に供する前のサンプルの残留水分含量よりも少ない。例えば、二次的乾燥工程を完了したサンプルは、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、またはそれよりも低い残留水分含量を有しうる。水分含量は、さまざまな方法を用いて測定されうる。一例を挙げれば、カール・フィッシャーの技法を用いて、ガラス質の固体の残留水分含量が測定される。この工程で達成される発泡体の水分含量の低下は、発泡体ではないガラス質組成物と比較して、発泡体の表面積が増大することによって促進される。
【0055】
上述の再乾工程によってもたらされるように、サンプルの水分含量がさらに低下すると、サンプルのガラス転移温度(Tg)が上昇すると考えられている。上述のように、ガラス質の状態は、沸騰工程の間に、サンプルがTg未満に冷却される際に、形成される。その後の再乾工程は、一般に、水分含量のさらなる低減、およびサンプルのガラス質のTgの上昇を生じさせる。ガラス質のサンプルを、そのTg以上の温度で加熱または保存すると、ガラス質のサンプルに、サンプルの成分の長期安定性にとって有利ではないであろう変化を生じさせうる。したがって、ガラス質のサンプルは、一般に、それらのTg未満で保存される。水分含量の低減、およびそれによって上昇するTgにより、サンプルは、サンプルまたはその成分の安定性に影響を与えることなく、より高い温度で保存されうる(また、コールドチェーンまたは温度制御チェーンの必要性を低下させる可能性がある)。サンプルが液体として再構成され、個人に投与されるまで、保存の間に安定な形態で保持されることを目的として、一般に、サンプルは、再乾工程の終了時、またはその後にTg未満の温度まで冷却されうる。
【0056】
本明細書に例証される1つの例では、ガラス質の固体形態の抗原/アジュバント/ポリオール組成物は、以下に記載される発泡乾燥法を用いて調製される:
(1)抗原、アジュバント、およびポリオールを含む、粘性の液体の調製;
(2)真空下で沸騰させることによる、機械的に安定な多孔質構造(「発泡体」)の形成;
(3)所望の保存温度よりも高い温度まで混合物のガラス転移温度を上昇させるのに十分に、サンプルから水分を排除するためのさらに高い真空圧への発泡体の曝露;および
(4)その保存温度において長期安定性を有する、ガラス質の固体形態の抗原/アジュバント/ポリオール組成物を達成するため、ガラス転移温度未満にサンプルを冷却。
【0057】
本ガラス質組成物の特性は、組成物の抗原およびアジュバントの両方がそれらの完全性を保持することである(すなわち、それらは顕著に分解または凝集しない)。例えば、ガラス質組成物中の抗原は、顕著に分解しないことが分かっている。抗原の完全性は、抗原を含むガラス質組成物が長期間にわたって保存される場合でさえも、実質的に維持される。一例を挙げれば、発泡乾燥調製物中のタンパク質抗原は、25、37または55℃で52週間保存後にも実質的に分解されず、純度を保持する。アジュバントの完全性もまたガラス質組成物中で維持される。一例を挙げれば、発泡乾燥されたアルミニウム塩・アジュバントは、光散乱によって測定され、透過電子顕微鏡法によって観察されるように、凝集または分解しない。
【0058】
本ガラス質組成物の特性は、抗原がアジュバントに吸着することである。アジュバントへの抗原の吸着は、本明細書では、アジュバントへの抗原の結合、または、抗原とアジュバントの関連性とも称されうる。本ガラスおよび発泡化調製物の特性は、一般に、ガラス化工程に供されていない、抗原およびアジュバントの液体調製物と比較して、さらなる抗原がそれらの調製物内のアジュバントに吸着されることである。一例を挙げれば、発泡乾燥調製物におけるアジュバントへの抗原の吸着は、発泡乾燥調製物を液体形態に再構成した後に、測定する。一例を挙げれば、これらの再構成した調製物中のアジュバントは、遠心分離によって沈降させ、液体から分離することができる。よって、アジュバントに関係する、またはアジュバントに吸着する抗原の量を決定することができる。一例を挙げれば、ガラス質組成物中の抗原の少なくとも10%がアジュバントに吸着する。一例を挙げれば、ガラス質組成物中の抗原の少なくとも20%がアジュバントに吸着する。一例を挙げれば、ガラス質組成物中の抗原の少なくとも30%がアジュバントに吸着する。他の例では、ガラス質組成物中の抗原の少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%が、組成物中のアジュバントに吸着する。この抗原とアジュバントとの関連性は、ガラス質組成物が、さまざまな温度で、数週間、数ヶ月、または数年間、保存される場合にも維持される。一例を挙げれば、抗原は、ガラス質組成物が25、37または55℃で52週間保存された後にも、アジュバントへの吸着を示す。他の保存温度も用いて差し支えない。
【0059】
製剤および投薬
固体ガラス質組成物、および、ガラス質組成物の再構成した液体製剤における抗原は、それらの免疫原性活性または、組成物が投与される個人または哺乳動物における免疫応答を刺激するそれらの能力を保持する。同様に、固体ガラス質組成物、および、ガラス質組成物の再構成した液体製剤中のアジュバントは、組成物の抗原の免疫原性を増進するそれらの能力を保持する。
【0060】
一例を挙げれば、ガラス質の固体形態の抗原/アジュバント/ポリオール組成物はワクチンの調製に有用でありうる。一般に、ワクチンは、抗原/アジュバント/ポリオール・ガラス質組成物の薬学的に許容される製剤である。抗原、アジュバントおよびポリオール成分に加えて、ワクチン組成物には、安定剤、乳化剤、保存料、担体ならびにpHおよび/または等張性に影響を与える物質を含みうる、1種類以上の賦形剤を含めてもよい。他の治療薬を含む他の物質も含めて差し支えない。これらの物質は、ガラス質組成物の一部であるか、またはガラス質組成物の再構成した液体製剤に加えられてもよい。これらの物質は、安定性の増進、薬学的許容性の改善、送達などを含む、さまざまな機能を果たしうる。
【0061】
ワクチン組成物の薬学的に許容される製剤はまた、希釈剤および他の賦形剤を含みうる。希釈剤の例としては、デンプン、セルロース誘導体、フェノール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールまたはグリセリンなど、結合剤、錠剤分解物質、または分散剤を含みうる。さらなる賦形剤としてポリソルベート(Tween)80などが挙げられる。
【0062】
ガラス質の固体形態の抗原/アジュバント/ポリオール組成物は、ガラス質の固体形態の抗原/アジュバント/ポリオール組成物、および、従来のまたは他の装置を使用して哺乳動物に投与するためのガラス質の固体の再構成を促進する、1種類以上の薬学的に許容される希釈剤を含む再構成する溶液を含む、キットの形態で存在していてもよい。このようなキットは、随意的に、液体形態の組成物を投与するための装置(例えば、皮下注射器、極微針アレイ)、および/または使用説明書を含む。
【0063】
本開示は、ガラス質のワクチン組成物、またはそれらの製剤を、個人または他の哺乳動物に投与することによる、哺乳動物における免疫応答を誘発する方法も提供する。これは、抗原/アジュバントを、哺乳動物の免疫系に曝露させるため、哺乳動物に本組成物の薬学的に許容される製剤を投与することによって達成されうる。投与は1回でもよく、または複数回行ってもよい。一例を挙げれば、1種類以上の投与は、いわゆる「プライム・ブースト」法の一環として行ってもよい。他の投与システムとしては、逐次放出、遅延放出または持続放出の送達システムが挙げられる。
【0064】
許容される投与経路は、皮内投与(注射器または極微針アレイシステムによって)、経口投与、直腸投与、局所投与、経鼻投与、粘膜投与、筋肉内、静脈、皮下、または他の非経口の投与経路が挙げられる。本明細書に開示される組成物への哺乳動物の曝露は、哺乳動物における一時的または永続的な免疫応答を確立する結果をもたらしうる。免疫応答は、その後、抗原が由来する感染性病原体へ曝露することによる、その後の抗原への曝露から哺乳動物を保護しうる。治療効果も達成可能でありうる。
【0065】
本明細書に開示される組成物およびワクチンは、さまざまな送達システムに取り込まれうる。一例を挙げれば、組成物は、投与のための「極微針アレイ」または「極微針パッチ」送達システムに適用されうる。これらの極微針アレイまたはパッチは、一般に、基材に取り付けられ、乾燥形態のワクチンでコーティングされた、複数の針状突起を備えている。哺乳動物の皮膚に施用する場合、針状突起は皮膚を貫通し、ワクチンの送達を達成し、対象哺乳動物に免疫付与をもたらす。
【0066】
1つの実施の形態では、抗原/アジュバント/ポリオール組成物を含む溶液は、発泡乾燥工程の前に極微針アレイに施用され、その後、コーティングされたマイクロアレイを発泡乾燥工程に曝露させる。別の実施の形態では、発泡乾燥工程の最初の段階で(すなわち沸騰工程段階の前に)調製される粘性の溶液を極微針アレイの表面にコーティングし、その後、発泡乾燥の残りの工程を、粘性の溶液でコーティングされた極微針アレイに適用する。いずれかの方法で、少なくとも1種類の抗原および少なくとも1種類のアジュバントを含む、ガラス質組成物でコーティングされた極微針アレイが得られる。このようなアレイを用いて、抗原、ならびに抗原およびアジュバントを哺乳動物に投与し、哺乳動物の抗原およびワクチン接種への免疫応答を達成して差し支えない。
【実施例】
【0067】
以下の実施例は本発明の実施の形態を例証する目的のものであって、限定的に解釈されるべきではない。
【0068】
実施例1:抗原およびアジュバントの発泡乾燥
1mlあたり3mgのミョウバンまたはリン酸アルミニウム・アジュバント、1mlあたり200μgのPhtDと称される肺炎連鎖球菌に由来するタンパク質抗原(AdamouらのInfect. Immun. 69:949-958, 2001)、およびリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)中、40%のショ糖を含む、混合物を調製した。これらの研究に用いられるPhtDタンパク質は5.1の予測等電点を有していた。PhtDタンパク質およびショ糖を含むが、アルミニウム・アジュバントを欠いた前述の混合物に従い、対照サンプルを調製した。この混合物を、タンパク質が分解する可能性を最小限に抑え、抗原およびアジュバントの関連性を高めるため、乾燥する前に2〜8℃で保存した(例えば24〜48時間)。あるいは、リン酸アルミニウムおよびPhtDタンパク質のリン酸緩衝液を単独でインキュベートし、その後、乾燥工程の前に、ショ糖を加えた。混合物の一部を、個別の容器に分配し、周囲温度で4時間、低真空(静水圧P=0.2atm)下で乾燥した。次に、サンプルを、高真空(P<0.01atm)下で4時間、沸騰させた。この後者の工程の間に、個別の容器内で安定な乾燥発泡体が形成された。その後、サンプルを、真空下、55℃で8日間、「DRIERITE」(W.A. Hammond Drierite Co, Ltd.社製(米国オハイオ州ジーニア所在))上で保存した(再乾)。次いで、これらのサンプルを、再懸濁して水溶液を形成するまで、さまざまな期間、保存した。その後、再構成したサンプルを、下記の実施例に記載するさまざまな研究に用いた。
【0069】
実施例2:アルミニウム・アジュバントの安定性における発泡乾燥の効果
アルミニウム・アジュバントの完全性における発泡乾燥の効果を評価するため、実施例1の開示に実質的に従って調製された発泡乾燥材料を再構成したサンプルを、粒子分析器(Malvern Zetasizer)を用いて分析し、既知の標準サイズについて較正し、サンプル内に含まれる平均粒径を決定した。発泡乾燥法がアルミニウム・アジュバントの完全性に有害な影響を与える場合、これは、サンプル内の粒子の平均粒径の変化として検出することができよう。例えば発泡乾燥によりアルミニウム・アジュバントの分解が生じた場合、再構成したサンプルにおける粒径は、発泡乾燥していない同等のサンプルの粒径より小さくなるであろう。対照的に、発泡乾燥によりアルミニウム・アジュバントの凝集が生じた場合、再構成したサンプルにおける粒径は、発泡乾燥していない同等のサンプルの粒径より大きくなるであろう。
【0070】
添付図面の図1では、PhtDタンパク質およびショ糖(B)を含む、またはPhtDタンパク質、ミョウバンおよびショ糖(C)を含む、再構成した発泡乾燥サンプルの粒径を、発泡乾燥を受けていない液体サンプルと比較した。発泡乾燥していない液体サンプルには、ミョウバンのみ(A)、PhtDタンパク質、ミョウバンおよびショ糖(D)、ならびに、PhtDタンパク質およびミョウバン(E)を含めた。図示するように、発泡乾燥していないミョウバン(A)が示す平均粒径は、ミョウバンの粒径が分解も凝集もしていないことを示唆した。PhtDタンパク質、ミョウバンおよびショ糖(D)、ならびに、PhtDタンパク質およびミョウバン(E)を含む発泡乾燥していないサンプルの平均粒径は、発泡乾燥していないミョウバンのみ(A)の粒径と同様であった。PhtDタンパク質、ミョウバンおよびショ糖(C)を含む再構成した発泡乾燥サンプルの平均粒径も、発泡乾燥していないサンプル(A)、(D)および(E)の粒径と同様であった。これらのデータは、発泡乾燥が、アルミニウム・アジュバントの顕著な分解または凝集をもたらさないことを示唆した。PhtDタンパク質およびショ糖(B)を含む再構成した発泡乾燥サンプルの平均粒径は、試験される他のサンプルよりも小さく見えた。
【0071】
実施例3:アルミニウム・アジュバントの安定性における発泡乾燥の効果
アジュバントの安定性に関するさらなる研究では、リン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム・アジュバント、PhtDタンパク質および40%ショ糖を、実施例1の開示に実質的に従って調製した。発泡乾燥サンプルを再構成し、粒子分析器(Malvern Mastersizer 2000)を使用して分析し、既知の標準サイズについて較正し、サンプル内に含まれる平均粒径を決定した。
【0072】
添付図面の図2では、リン酸アルミニウム・アジュバント(A)、または水酸化アルミニウム・アジュバント(B)を含む、再構成した発泡乾燥サンプルの平均粒径を、発泡乾燥を受けていない液体サンプルと比較した(それぞれ(C)および(D))。図示するように、発泡乾燥したリン酸アルミニウム(A)が示す平均粒径は、液体のリン酸アルミニウム(C)のものと同様であった。同様に、発泡乾燥した水酸化アルミニウム(B)が示す平均粒径は、液体の水酸化アルミニウム(D)のものと同様であった。これらのデータは、発泡乾燥がアルミニウム・アジュバントの顕著な分解または凝集をもたらさなかったことを示唆した。
【0073】
実施例4:透過電子顕微鏡法(TEM)による、再構成した、発泡乾燥アジュバント調製物の外観
アルミニウム・アジュバントの完全性における、発泡乾燥の効果を評価するため、実施例1の開示に実質的に従って(PhtDタンパク質が含まれないことを除いて)調製した、発泡乾燥材料の再構成サンプルを調製し、次いで透過電子顕微鏡法(TEM)用に準備をした。発泡乾燥していない液体サンプルもまた、TEM用に準備した。対照として、TEM用に直接調製したアルミニウム・アジュバント(ショ糖なし)も使用した。電子顕微鏡写真は、×100,000〜×150,000に拡大して撮影した。
【0074】
添付図面の図3には、発泡乾燥したリン酸アルミニウム・アジュバント(A)、発泡乾燥していないリン酸アルミニウム・アジュバント(B)、およびTEM用に直接調製したリン酸アルミニウム・アジュバント(C)が示されている。添付図面の図4には、発泡乾燥した水酸化アルミニウム・アジュバント(A)、発泡乾燥していない水酸化アルミニウム・アジュバント(B)、およびTEM用に直接調製した水酸化アルミニウム・アジュバント(C)が示されている。これらのデータは、発泡乾燥が、アルミニウム・アジュバントの顕著な凝集をもたらさないことを示唆した。
【0075】
実施例5:発泡乾燥の間のアルミニウム・アジュバントの安定性におけるポリオール濃度の効果
発泡乾燥の間のアルミニウム・アジュバントの完全性におけるポリオールのさまざまな濃度の効果を評価するため、40%、30%または5%の濃度における、発泡乾燥したリン酸アルミニウム・アジュバント(3mg/ml)、PhtDタンパク質(200μg)、およびショ糖を、実施例1の開示に実質的に従って発泡乾燥した。次に、サンプルを再構成し、粒子分析器(Malvern Mastersizer 2000)を用いて分析し、既知の標準サイズについて較正し、サンプル内に含まれる平均粒径を決定した。
【0076】
添付図面の図5では、40%(A)、30%(B)、および5%(C)のショ糖を含む再構成した発泡乾燥サンプルにおける粒径を、リン酸アルミニウム・アジュバント、PhtDタンパク質、および5%のショ糖を含む発泡乾燥していない液体サンプル(D)と比較した。図示するように、40%ショ糖(A)、および30%ショ糖(B)の存在下で発泡乾燥したアルミニウム・アジュバントの平均粒径は互いによく似ており、また、発泡乾燥していない5%のショ糖サンプル(D)とも同様であった。これらのサンプルのサンプルサイズは、図1および2に示したものと同様であった。5%のショ糖(D)の存在下で発泡乾燥した、再構成したサンプルの平均粒径は、他のサンプルのものよりも大きかった。これは、低濃度のポリオール(この例ではショ糖)では、アルミニウム・アジュバント(この例ではリン酸アルミニウム・アジュバント)のある程度の凝集が生じうることが示唆されうる。
【0077】
実施例6:抗原とアルミニウム・アジュバントとの関係における発泡乾燥の効果
発泡乾燥工程に起因する抗原とアジュバントの関係、すなわちタンパク質抗原のアルミニウム・アジュバントへの吸着を評価するため、下記の研究を行った。この研究は、液体中で形成される抗原とアジュバントに形成される関係を乾燥状態で保持するための発泡乾燥の能力、および、乾燥サンプルを再構成したときに、乾燥発泡体中の抗原とアジュバントの関係の維持の程度について調べた。
【0078】
この研究では、40%ショ糖における、PhtDタンパク質およびリン酸アルミニウム・アジュバントを、実施例1の開示に実質的に従って発泡乾燥した。次に、乾燥サンプルを溶液中で再構成した。対照として、発泡乾燥していない、PhtDタンパク質、アルミニウム・アジュバントおよび40%ショ糖の同一溶液を、2〜8℃で3.5時間、回転させながらインキュベートした。次に、発泡乾燥したサンプルおよび発泡乾燥していないサンプルの両方について、サンプル内に含まれるアルミニウム・アジュバントを、アジュバントに結合または吸着された任意のタンパク質アジュバントと共に、遠心分離にかけて沈降させた。遠心分離から得た上清について、Micro BCA Protein Assay Kit(製品番号23235;Thermo Fisher Scientific社製(米国イリノイ州ロックフォード所在))を用いて、上清に存在するタンパク質の量を基準と比較することによりタンパク質含量を分析し、決定した。上清のタンパク質は、アルミニウム・アジュバントに結合しておらず、溶液中に遊離していた。発泡乾燥サンプル中の総タンパク質量が既知であったことから(200μg/ml;実施例1参照)、アジュバントに結合していないタンパク質量を(上清のタンパク質の検査に用いられる比色反応によって決定する)サンプル中の総タンパク質量から差し引くことで、アジュバントに吸着されたタンパク質量を得る。
【0079】
研究結果を添付図面の図6に示す。アジュバントに結合したタンパク質抗原のパーセンテージをY軸上に示す。実験は2回行い、サンプル番号1および2をX軸上に示している。データは、発泡乾燥していないサンプル(B;この研究では約10〜20%の間)と比較して、発泡乾燥サンプル(A)では、タンパク質アジュバントがリン酸アルミニウム・アジュバントに、より吸着された(この研究では約30〜40%の間)ことを示した。これらのデータは、発泡乾燥が、溶液中に形成される抗原とアジュバントとの関係、すなわち吸着を増強することを示唆した。これらのデータはまた、乾燥調製物中における抗原とアジュバントの関係が、サンプルが再構成される場合にも維持されたことを示唆した。
【0080】
実施例7:経時による、抗原とアルミニウム・アジュバントとの関係における発泡乾燥の効果
発泡乾燥に起因する、経時による、抗原とアジュバントの関係を評価するため、次の研究を行った。最初の研究では、PhtDタンパク質およびアルミニウム・アジュバントを、実施例1の開示に実質的に従って発泡乾燥した。発泡乾燥サンプルを、25℃で0〜52週間の間保存し、その後、再構成した。発泡乾燥サンプルを再構成する前の約24時間、発泡乾燥していない液体サンプル(PhtDタンパク質、リン酸アルミニウム・アジュバント、40%ショ糖)を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.2を用いて調製し、2〜8℃で24時間、インキュベートした。これらの後者のサンプルを、発泡乾燥していない調製物用の対照として用いた。各時点において、発泡乾燥したサンプルおよび発泡乾燥していないサンプルの両方について、サンプル中に含まれるアルミニウム・アジュバントを、アジュバントに結合した任意のタンパク質アジュバントと共に遠心分離にかけ、沈降させた。遠心分離から得られた上清を逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)で分析し、上清中に存在するタンパク質の量を、標準との比較を通じて決定した。実施例6に記載するように、上清中のタンパク質の量を用いて、アジュバントに吸着されたタンパク質の量を計算した。
【0081】
研究結果を添付図面の図7に提示する。アジュバントに吸着されたタンパク質抗原の%をY軸上に示す。X軸上には、発泡乾燥サンプルを25℃で保存した週単位の時間が示されている。発泡乾燥サンプルは(B)として示されている。発泡乾燥していないサンプルは(A)として示されている。この研究例における0週の時点では、タンパク質抗原の約60%が、発泡乾燥サンプルのアルミニウム・アジュバントに吸着されていることが判明した。これは、発泡乾燥していない、対照の液体サンプルにおけるアルミニウム・アジュバントに吸着されたタンパク質抗原の約10%に匹敵する。この研究では、アルミニウム・アジュバントに吸着されたタンパク質抗原の量は、発泡乾燥サンプルでは、8週間および26週間の時点で約70%であることが判明したが、一方、発泡乾燥していない液体サンプルでは、アルミニウム・アジュバントに吸着したタンパク質抗原の量は、両時点において、20%未満しか残っていなかった。この研究では、アルミニウム・アジュバントに吸着されたタンパク質抗原の量は、発泡乾燥サンプルでは、52週間の時点で減少していることが判明したが、この時点における、発泡乾燥していない、液体の対照よりは依然として高かった。これらのデータは、抗原とアジュバントの関係が、25℃で保存された発泡乾燥調製物において、経時的に安定であることを示唆した。
【0082】
実施例8:発泡乾燥調製物中の抗原とアルミニウム・アジュバントとの関係における、保存温度の経時的影響
サンプルをさまざまな温度で保存した場合の、経時による発泡乾燥サンプル中の抗原とアジュバントの関係を評価するため、次の研究を行った。ショ糖における抗原およびアジュバントの調製物を、実施例1の教示に実質的に従って発泡乾燥した。次に、乾燥サンプルを、5℃または37℃のいずれかの温度で、8週間または12週間の間、保存した。保存期間の終わりに、乾燥サンプルを水溶液中で再構成した。次に、サンプルを、サンプル中に含まれるアルミニウム・アジュバントを、アジュバントに吸着された任意のタンパク質アジュバントと共に、遠心分離にかけ、沈降させた。遠心分離から得た上清をRP−HPLCで分析し、、実施例7に記載されるように、上清中に存在するタンパク質の量、およびアジュバントに吸着されたタンパク質の量を決定した。各時点で、発泡乾燥サンプル中のアジュバントに吸着されたタンパク質の量を、対照としての、発泡乾燥していない、液体サンプルにおけるアジュバントに吸着されたタンパク質の量と比較した。
【0083】
研究結果を添付図面の図8に示す。アジュバントに結合したタンパク質抗原の%をY軸上に示す。X軸上には、発泡乾燥サンプルが分析前に保存された週単位の時間が示されている。0週間の時点では、サンプル(A)は、2〜8℃における、発泡乾燥していない、リン酸緩衝液中にタンパク質およびアジュバントを含む、液体サンプル中のアジュバントに結合したタンパク質の量が40〜50%であることを示している。0週間の時点におけるサンプル(B)および(C)は、最低限の期間、25℃(B)または37℃(C)で保存し、その後、水溶液中で再構成した発泡乾燥サンプルにおける、アジュバントに吸着したタンパク質の量を示している。これらのデータは、アジュバントに吸着したタンパク質の%が、(B)および(C)の両サンプルにおいて約60%であったことを示した。発泡乾燥サンプルが再構成される前に8週間保存された場合では、25℃(B)および37℃(C)における、アジュバントに吸着するタンパク質の量は、0週間の時点で分析したサンプルに観られる量と同様であった。同様に、再構成および分析前に、発泡乾燥サンプルが12週間保存された場合には、アジュバントに吸着された抗原の量は、25℃(B)および37℃(C)の両温度において、0週間および8週間の時点におけるアジュバントに吸着された抗原の量と同様であるか、場合によってはそれよりも多かった。これらのデータは、タンパク質抗原とアジュバントとの関係が、25℃および37℃の両温度で、発泡乾燥した調製物において経時的に安定であったことを示唆した。
【0084】
実施例9:発泡乾燥調製物中のタンパク質抗原における、さまざまな安定化剤、再乾温度、およびさまざまな保存温度の影響
泡乾燥調製物中のタンパク質アジュバントの安定性における多くの要因(例えば、発泡乾燥調製物の安定剤、再乾温度、保存温度)を評価するため、次の研究を行った。下記表1に示すように混合物を調製し、次に、実施例1の開示に実質的に従って発泡乾燥した。発泡体を形成するための沸騰工程の後、一部のサンプルについては40℃、他のサンプルについては55℃で、再乾を行った。
【表1】

【0085】
再乾工程の完了後、サンプルの外観を記録した(添付図面の図9)。サンプルは、一般に、発泡体のように見えた(F1、F2、F3、F5およびF6)。1つのサンプル(F4)は、濃密なケーキのように見えた。
【0086】
さらには、再乾工程の完了後に、カール・フィッシャーの定量滴定法を用いて、サンプルの残留水分含量を決定した(米国特許番号第4,740,471号明細書参照)。この技法は、乾燥物の総重量に対する水分の重量%を測定する。これらのデータを欠き表2に示す。
【表2】

【0087】
結果は、再乾を55℃で行ったサンプル中の残留水分含量が、一般に、再乾を40℃で行ったサンプルにおける量よりも少ないことを示した。
【0088】
次に、発泡乾燥サンプルを、23〜27℃(25℃と表示)、35〜39℃(37℃と表示)、または53〜57℃(55℃と表示)のいずれかの温度で、12ヶ月の間、保存した。この期間、25℃および37℃で保存したサンプルの外観には、色の多少の変化を除き、実質的に変化は見られなかった。しかしながら、55℃で保存したサンプルでは、発泡体は、一般に、12ヶ月間の後には「融解」して見えた。しかしながら、F6のサンプルは、55℃で12ヶ月間の保存後でも、発泡体のように見えた。
【0089】
12ヶ月の保存期間の間、さまざまな温度で保存された発泡乾燥サンプルにおけるタンパク質抗原の安定性を決定するため、さまざまな時点において、発泡乾燥サンプルを水溶液に再構成し、RP−HPLCで分析した。タンパク質抗原の%純度は、RP−HPLCカラムから得られた主要タンパク質ピークに表されるタンパク質の量を決定し、この値をカラムから得られたすべてのタンパク質ピークに表されるタンパク質の量で割ることにより、計算した。%純度は、経時におけるタンパク質の安定性の指標である。
【0090】
結果は、一般に、試験したすべての製剤について、40℃および55℃の両温度での再乾では、タンパク質の純度は、12ヶ月の保存期間、サンプルを保存したすべての温度について(すなわち、25、37および55℃)、一般に、80〜90%を超えて保持されたことを示した。
【0091】
注入タンパク質のRP−HPLCカラムからの完全回収は、この研究では、一般に、約80%であった。しかしながら、場合によっては、回収はさらに低くなるように思われた。再乾を40℃で行ない、55℃で保存された、アジュバントを含有したF1およびF5の各製剤からのタンパク質の回収は、1週間後には20%未満であることが判明した。また、再乾を55℃で行ない、すべての試験温度(すなわち、25、37および55℃)で保存された、F1の製剤からのタンパク質の回収は、約60〜65%であった。
【0092】
実施例10:さまざまなアルミニウム・アジュバントを用いた発泡乾燥調製物の構造および質
さまざまなアルミニウム・アジュバント(すなわち、リン酸アルミニウム・アジュバントおよび水酸化アルミニウム・アジュバント)を使用して、発泡乾燥調製物の構造および質を評価するため、次の研究を行った。下記表3に示すように、混合物を調製し、次いで実施例1の開示に実質的に従って発泡乾燥した。再乾は55℃で行った。
【表3】

【0093】
発泡乾燥調製物の形成後、カール・フィッシャーの定量滴定法を用いて、サンプルの残留水分含量を決定した。これらのデータを下記表4に示す。
【表4】

【0094】
次に、発泡乾燥サンプルを、23〜27℃(25℃と表示)、または35〜39℃(37℃と表示)のいずれかの温度で12ヶ月間、保存した。この期間中、サンプルの外観には実質的な差異は見られなかった。実施例9に記載されるように決定されたタンパク質抗原の%純度は、12ヶ月の期間、25℃で保存された製剤では95%を超えて保持され、一般に37℃で保存された製剤では90%を超えて保持された。注入タンパク質の完全回収も実施例9に記載するように決定し、一般に、12ヶ月の期間、所定の製剤について一貫して保持された。
【0095】
経時変化における、アルミニウム・アジュバントへの吸着を評価するため、発泡乾燥した製剤を溶液中で再構成し、アルミニウム・アジュバントに吸着されたタンパク質の%を、実施例7に記載されるように決定した。
【0096】
吸着実験の結果を、発泡乾燥した製剤の25℃における保存について図10に、および、発泡乾燥した製剤の37℃における保存について図11に示す。両図において、週単位の経過時間(X軸)に対するアジュバントに吸着したタンパク質の%(Y軸)を、図示するとおり、F8(*)、F6(●)およびF10(−)について示した。データは、トリス緩衝液中のPhtDタンパク質の水酸化アルミニウムへの吸着(F8)が、PBS中のPhtDタンパク質のリン酸アルミニウムへの吸着(F10)よりも良好な、リン酸ナトリウム緩衝液中のPhtDタンパク質のリン酸アルミニウムへの吸着(F6)よりもさらに良好であったことを示した。
【0097】
例示する組成物、方法などを説明することによって例証してきたが、本願の範囲を制限し、またはいかようにも限定することは、本願の意図するところではない。当然ながら、本明細書に記載される組成物、方法などを説明するための成分または方法の想定されるあらゆる組合せを記載することは不可能である。さらなる利点および変形は、当業者には容易に想起できるであろう。したがって、本発明は、示され、説明された特定の詳細な記述、代表的な装置、および説明に役立つ実例に限定されない。よって、本願は、本願の範囲内に含まれる代替、変更、および変形も包含することが意図されている。さらには、前述の記載は本発明の範囲を限定することを意味するものではない。むしろ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物によって判断されるべきである。詳細な説明または特許請求の範囲で用いられる「または」という語句(例えば、AまたはB)の範囲は、「AまたはBまたは両方」を意味することが意図されている。本出願人が「AまたはBのいずれかであって両方ではない」ことを示すことを意図する場合は、「AまたはBであるが両方ではない」という表現が用いられるであろう。よって、「または」という語句の使用は、本明細書では包括的であって排他的使用ではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類の抗原と、少なくとも1種類のアジュバントとを含むガラス質組成物。
【請求項2】
前記アジュバントがアルミニウム塩・アジュバントを含むことを特徴とする請求項1記載のガラス質組成物。
【請求項3】
前記アルミニウム塩・アジュバントが、水酸化アルミニウム・アジュバント(結晶質のアルミニウムオキシ水酸化物)、リン酸アルミニウム・アジュバント(非晶質のヒドロキシリン酸アルミニウム)、およびミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム)からなる群より選択されることを特徴とする請求項2記載のガラス質組成物。
【請求項4】
前記ガラス質組成物が、結晶質構造を実質的に欠いている発泡体であることを特徴とする請求項1記載のガラス質組成物。
【請求項5】
前記組成物中の前記抗原の少なくとも60%が前記アジュバントに吸着されることを特徴とする請求項1記載のガラス質組成物。
【請求項6】
前記組成物中の前記抗原の少なくとも50%が前記アジュバントに吸着されることを特徴とする請求項1記載のガラス質組成物。
【請求項7】
前記組成物中の前記抗原の少なくとも30%が前記アジュバントに吸着されることを特徴とする請求項1記載のガラス質組成物。
【請求項8】
少なくとも1種類のポリオールまたは合成ポリマーを含むことを特徴とする請求項1記載のガラス質組成物。
【請求項9】
前記ポリオールが、ガラスを形成することができる、単糖、糖質または安定化糖のうちの1種類以上を含むことを特徴とする請求項8記載のガラス質組成物。
【請求項10】
前記ポリオールまたは合成ポリマーが、30%を超える濃度で存在することを特徴とする請求項8記載のガラス質組成物。
【請求項11】
前記抗原がタンパク質またはペプチドを含むことを特徴とする請求項1記載のガラス質組成物。
【請求項12】
前記抗原が、ジフテリア抗原、破傷風抗原、ヘモフィルス・インフルエンザ・タイプb抗原、肺炎球菌抗原、A型肝炎抗原、B型肝炎抗原、ヒト・パピローマ・ウイルス抗原、炭疽菌抗原、大腸菌抗原、狂犬病抗原、インフルエンザ抗原および肺炎連鎖球菌抗原からなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載のガラス質組成物。
【請求項13】
前記ガラス質組成物の残留水分含量が4%以下であることを特徴とする請求項1記載のガラス質組成物。
【請求項14】
前記ガラス質組成物の残留水分含量が3%以下であることを特徴とする請求項1記載のガラス質組成物。
【請求項15】
前記ガラス質組成物の残留水分含量が2%以下であることを特徴とする請求項1記載のガラス質組成物。
【請求項16】
抗原およびアジュバントのガラス質組成物の再構成した製剤を含む、液体組成物。
【請求項17】
前記液体組成物中の前記抗原の少なくとも60%が前記アジュバントに吸着されることを特徴とする請求項16記載の液体組成物。
【請求項18】
a)無機塩のアジュバントと、
b)タンパク質またはペプチド抗原と、
c)1種類以上のポリオールまたは合成ポリマーと、
を含む非晶質の固体組成物であって、
前記非晶質の固体組成物が、発泡体を含むことを特徴とする、
非晶質固体組成物。
【請求項19】
前記固体組成物を液体に再構成した後、前記タンパク質またはペプチド抗原の少なくとも60%が、前記アジュバントに吸着することを特徴とする請求項18記載の非晶質固体組成物。
【請求項20】
前記ポリオールまたは合成ポリマーの総濃度が、少なくとも5%であることを特徴とする請求項18記載の非晶質固体組成物。
【請求項21】
乾燥した、機械的に安定な多孔質の構造体であって、
a)少なくとも1種類のアルミニウム塩・アジュバントと、
b)少なくとも1種類のタンパク質抗原であって、前記タンパク質抗原の少なくとも60%が前記アルミニウム塩・アジュバントに吸着される、タンパク質抗原と、
c)ガラスを形成することができる、単糖、糖質、または安定化糖のうちの少なくとも1種類、もしくは合成ポリマーと、
を含んでなる構造体。
【請求項22】
抗原およびアジュバントの組成物の調製方法であって、
a)前記抗原、前記アジュバント、およびポリオールまたは合成ポリマーの粘性の液体を調製し、
b)前記粘性の液体を真空下で沸騰させて発泡体を形成する、
各工程を有してなる方法。
【請求項23】
ガラス質の固体の調製方法であって、
a)少なくとも1種類の抗原、少なくとも1種類のアジュバント、および少なくとも1種類のポリオールの混合物を形成し、
b)前記混合物を比較的低い真空圧に曝露して前記混合物の粘度を増大させ、
c)前記混合物を高真空圧下で、発泡体が形成されるまで沸騰させ、
d)前記発泡体を乾燥させてガラス転移温度の上昇を生じさせ、
e)前記発泡体を、前記ガラス転移温度未満の温度で保存する、
各工程を有してなる方法。
【請求項24】
請求項22または23記載の方法によって調製される組成物。
【請求項25】
アジュバントに吸着する抗原の固体ガラス質組成物を含んでなる、薬学的に許容される製剤。
【請求項26】
ワクチン製剤を調製し、哺乳動物に投与する方法であって、
a)抗原およびアジュバントのガラス質組成物を水溶液に溶解させて抗原およびアジュバントの溶解組成物を得、
b)前記溶解組成物を哺乳動物に投与する、
各工程を有してなる方法。
【請求項27】
哺乳動物における免疫応答を誘発する方法であって、
抗原およびアジュバントのガラス質組成物の再構成した製剤を、前記哺乳動物に投与する工程を有し、
前記抗原に対する免疫応答が前記哺乳動物において確立されることを特徴とする方法。
【請求項28】
a)抗原およびアジュバントを含むガラス質の固体と、
b)前記ガラス質の固体を再構成するための薬学的に許容される再構成溶液と、
を有してなる、キット。
【請求項29】
抗原およびアジュバントを含むガラス質の固体でコーティングされた極微針アレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−534622(P2010−534622A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517245(P2010−517245)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【国際出願番号】PCT/CA2008/001386
【国際公開番号】WO2009/012601
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(506076695)サノフィ パストゥール リミテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】SANOFI PASTEUR LIMITED
【Fターム(参考)】