説明

抗原または免疫原に対する免疫応答を仕立てる方法。

【課題】疾患から動物を保護するために広範な範囲の所望の免疫応答を惹起し得る有効なワクチンを提供すること。
【解決手段】本発明は、HBsAg抗原を含むウイルス抗原のような特異的抗原に対する特異的細胞性および体液性免疫応答を惹起するために動物を免疫化するための方法および試薬に関する。本発明は、新鮮または凍結乾燥リポソーム中に特異的に調製された免疫原、この免疫原の投与の適正な経路、この免疫原の適正な用量、および1つの投与経路におけるDNAプライミング、これに続く異なる経路におけるリポソーム媒介タンパク質抗原追加免疫を含む異種免疫化の特定の組み合わせを用いる方法を提供し、細胞媒介免疫応答、サイトカイン分泌、体液性免疫、免疫保護およびTh1、Th2、または混合もしくはバランスのとれたTh応答であるTヘルパー応答の選択的偏り(skewing)を増大することに関する免疫応答を仕立てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2004年1月7日に出願された米国仮出願番号第60/534,923号の利益を主張し、その明細書は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【0002】
(政府資金調達)
本明細書に記載される本発明は、全部または一部が、疾病対策予防センターからの助成R31/CCR922413−01;R31/CCR924378−01によって支援された。合衆国政府は、本発明に特定の権利を有している。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
種々の病原体(例えば、感染性微生物)に対する有効な予防的および治療的ワクチンの開発は、世界的に疾病対策のための重要な目的である。多くの場合、最も有効なワクチンは、鼻通路、肺、生殖道および消化管を含む、微生物の最も一般的な侵入口、身体の粘膜表面を標的にする。
【0004】
特定の病原体に対する保護免疫は、体液性応答、細胞性応答および粘膜応答によって達成される。体液性応答または抗体応答は、病原体中和で重要であり、そしていくつかの感染性疾患では非常に有効であり得る。抗体は、血液中を循環し、そして全体の体液性免疫応答の尺度を提供する。細胞媒介免疫、特に細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は、多くの細胞内病原体および癌に対する保護免疫のために必要である。鼻通路、肺、生殖道および消化管の粘膜表面における局所免疫はまた、これらの部位を通って身体に接近する病原体に対する有効な免疫応答にとって重要である。有効な粘膜免疫応答の顕著な特徴は、粘膜表面における分泌性IgA抗体の局所的産生である。IgAもまた、血液中を循環し、そしてそこでのそのレベルは、全体の粘膜免疫応答に対する判断基準を提供する。粘膜IgGもまた、特定の病原体を中和することで重要である。繰り返し免疫化は、増大した免疫応答を生じ得、そして増加した保護を与える。免疫化をプライミングすることは、免疫の基礎レベルを確立し、そしてTおよびB細胞記憶の発生に至り得る。後の時間における追加免疫は、これらの記憶細胞を動員し得、そしてより高く、かつより特異的な免疫応答に至る。
【0005】
大部分の免疫応答は、Tリンパ球によって調節され、これは、この応答を開始し、そしてその性質を形作る。免疫応答が成熟するとき、CD4Tリンパ球は、Tヘルパー1型(Th1)免疫応答またはTヘルパー2型(Th2)免疫応答に向かって分極するようになり得る。Th1およびTh2型応答の顕著な特徴は、存在するサイトカインの優勢パターンである。Th1応答は、高レベルのIFN−γおよび低レベルのIL−4およびIL−10によって特徴付けられ、その一方、Th2応答は、低レベルのIFN−γおよび高レベルのIL−4およびIL−10によって特徴付けられる。これらのサイトカインは、T細胞の機能的能力を決定することで重要な役割を演じる。Th2型応答は、IgG1サブクラスの抗体の好ましい産生に至り、CTLの生成はほとんどないか、またはない。Th1型の応答は、IgG2aサブクラスの抗体の好ましい産生、およびウイルスまたはその他の生物で感染された細胞を有効に死滅させ得るCTLの誘導に至る。
【0006】
以下の表Aは、Th1およびTh2分極した免疫応答の免疫学的特徴を要約する。Th1分極応答は、代表的には、ウイルスまたは細菌での感染の間に生成される。対照的に、Th2分極応答は、しばしば、寄生虫感染で、アレルギー応答で、およびヒトで用いられている従来のミョウバンを基礎にした筋肉内に送達されるタンパク質ワクチンによって観察される。遺伝学はまた、生成された免疫応答の型を決定し得る。例えば、Th1応答は、マウスのC57BL/6株で優勢であり、その一方、Th2応答は、マウスのBalb/c株で優勢である。免疫応答はまた、Th1およびTh2構成要素の両方からなり得、免疫応答の体液性アームおよび細胞媒介性アームの両方による保護を与える。サイトカイン産生細胞の頻度の直接決定は、ELISPOT(酵素連結免疫吸収SPOTアッセイ)の使用によるか、または細胞内サイトカイン産生を示す免疫蛍光染色によって達成される。血清IgG1:IgG2a比もまた、Tヘルパー型(表A)を決定するための広く受容され、そして従われる規準である。平衡化Th1およびTh2応答のためのIgG2aに対するIgG1の比は、0.5〜2.0であり得る。
【0007】
【表1】

本明細書で用いられるとき、「Tヘルパー1型応答」および「Th1応答」は交換可能に用いられ、1つ以上、通常すべての上記の表Aの中央カラムに列挙された特徴を含む宿主動物応答の範囲をいう。これらの特徴は、0.5を超えないIgG1:IgG2aの比;Tヘルパー1細胞による増加したIFN−γ(およびその他のTh1サイトカイン)分泌およびTヘルパー2細胞による減少したIL−10およびIL−4(およびその他のTh2サイトカイン)分泌;および高CTL活性を含む。
【0008】
同様に、本明細書で用いられるとき、「Tヘルパー2型応答」および「Th2応答」は交換可能に用いられ、1つ以上、通常すべての上記の表Aの右カラムに列挙された特徴を含む宿主動物応答の範囲をいう。これらの特徴は、2.0以上のIgG1:IgG2aの比;Tヘルパー1細胞による減少したIFN−γ(およびその他のTh1サイトカイン)分泌およびTヘルパー2細胞による増加したIL−10およびIL−4(およびその他のTh2サイトカイン)分泌;およびCTL活性が低いまたはないことを含む。
【0009】
ワクチンは、送達される薬剤および投与の経路に依存して、種々の形態をとる。ワクチン送達システムは、しばしば、ワクチンを身体の特定領域に投与するように設計され得る。胃腸管では、このワクチンが、局所的効果を奏するか、または血流中に追加するか、または局所的環境中のリンパ系組織と相互作用する機会をもつより前に、分解または消失しないことが重要である。鼻咽頭管では、このワクチンが、吸収細胞に近接して残ることが重要であり;抗原が、鼻管を通って洗浄されるか、または飲み込まれる前に、これら抗原がリンパ系細胞と接触して残ることもまた重要である。さらに、抗原、ビヒクル、および免疫刺激剤が、単一の複合体中で同時送達されることが重要である。
【0010】
伝統的には、免疫化は、不活性化全生物もしくは細胞、微生物もしくは細胞の抽出物、またはタンパク質もしくはペプチド抗原のような単離された成分を投与することにより達成されている。免疫化は、弱毒化生存生物の経口、鼻腔内(IN)、または筋肉内(IM)投与によって達成されている。代表的には、ヒトおよび動物は、筋肉内または経皮的経路を経由して保存剤、アジュバト、およびその他の賦形剤の存在下でこのような組成物を注射され、共通使用における通常の小児科ワクチンまたは成人ワクチンで保護免疫を惹起する。非経口免疫化は、稀に、抗体産生、特に、侵入する微生物に対する第1の防御障壁として重要な免疫グロブリンA(IgA)の産生を生じる有効な粘膜免疫応答を惹起し得る。
【0011】
現在、生存弱毒化ウイルスまたは細菌のみが、経口的および/または鼻腔内に投与されるとき、ヒトまたは動物中に保護免疫応答を誘導し得る。現在まで、経口、鼻腔内また膣内経路によって投与され得るワクチンはほとんど開発されておらず、そしてこれらのワクチンは、いつも、経口ポリオワクチン、および共通で用いられる経口サルモネラ腸チフスワクチンのような生存生物である。例えば、冷適応によって調製された生存弱毒化インフルエンザウイルス(FluMistTM)は、鼻腔内投与によってインフルエンザに対してヒトをワンチン化するために用いられ得る。遺伝子変異の自然の素因ならびに効目および安全性問題に起因して、免疫寛容患者に付与されると、生存ウイルスをベクターとするか、またはそれに基づくワクチンの使用にともなう潜在的リスクについての問題がある。
【0012】
代表的には、一般使用におけるワクチンは、細胞抽出物から調製されるか、または組換え産生方法によって産生され;これらのワクチンは、通常、タンパク質、微生物トキソイド、不活性化全ウイルス、または微生物起源の多糖類からなる。これらのタイプの材料は、通常、注射によって投与されるとき、疾患保護免疫応答の誘導で有効である。しかし、たとえ、ヒトおよび大部分の動物の消化管および鼻咽頭管に、非宿主抗原に対する免疫応答を誘導し得る細胞および組織が豊富に与えられたとしても、このような材料は、経口または鼻腔内投与により投与されるとき、免疫原性に乏しいか、または非免疫原性である。経口的または鼻腔内で投与されるワクチンの主な失敗の原因の1つは、抗原が、通過の間に吸収性に乏しく、かつ不安定であるからである。経口的に投与されるタンパク質およびペプチドは、いつも、プロテアーゼおよびその他加水分解酵素の作用、ならびに胃酸によりGI管で分解される。従って、細胞下(subcellular)免疫原からなるワクチンは、経口経路または鼻腔内経路によって投与されるとき有効でない。従って、経口投与または鼻腔内投与後に、有効な免疫応答を誘導し得る、抗原保護ビヒクルおよび有効なアジュバントとして繰り返し用いられ得る組成物は、動物およびヒトをワクチン化するためにより有用かつ便利な手段を提供し得る。
【0013】
粘膜関連リンパ組織(MALT)は、胃腸管(内臓関連リンパ組織、GALT)、乳腺、生殖管および呼吸管(気管支、および鼻関連リンパ組織、BALTおよびNALT)からなるネットワークシステムである。共通の粘膜免疫システムの特有の特徴の1つは、1つの粘膜部位における免疫学的誘導が、しばしば、遠位粘膜部位で免疫応答を生じることである。これは、高内皮細静脈を経由するリンパ球の移動に起因する。しかし、異なる粘膜表面へのワクチンの投与に際して別個の差異が観察されており、そして応答の区画化が生じ得る。さらに、いくつかの粘膜部位は、遠位部位で良好な応答を誘導し、そしてすべての遠位部位が等しく応答するわけではない。
【0014】
鼻腔内免疫化は、種々の病原体、可溶性タンパク質およびマイクロパーティクルで送達される抗原に対する粘膜免疫を刺激するための有効な経路である。鼻腔内免疫化は、局所的、および遠位粘膜免疫応答の両方を誘導するさらなる利点を有する。例えば、鼻腔内ワクチン化は、直接免疫化が、しばしば、上皮細胞代謝回転およびホルモン影響によって妨害される尿生殖器管における免疫を惹起し得る(非特許文献1)。鼻腔内免疫化は、NALTによるか、または深部肺免疫化による、強力な抗原特異的免疫応答を誘導し得る。上部呼吸管のための主要な粘膜誘導部位であるNALTは、鼻腔内免疫化抗原に対し、局所におよび遠位に粘膜免疫を発生するために重要である。ウイルスペプチドに対する粘膜IgAおよびIgG応答、ならびに高められたCTL応答が、NALTの刺激後に観察されている。肺は、局所的にIgA、IgG、IgEおよび細胞媒介性応答を産生し得る免疫応答性器官である(非特許文献2)(非特許文献3)。肺における保護免疫応答は、インフルエンザウイルス感染またはインフルエンザワクチンを用いたワクチン化の後に証明されており、一方、肺免疫化およびチャレンジ(抗原投与)の後の長期間の抗体産生は肺関連組織と関連している(非特許文献4)。
【0015】
粘膜関連リンパ組織(MALT)は、胃腸管(内臓関連リンパ組織、GALT)、乳腺、生殖管および呼吸管(気管支、および鼻関連リンパ組織、BALTおよびNALT)からなるネットワークシステムである。共通の粘膜免疫システムの特有の特徴の1つは、1つの粘膜部位における免疫学的誘導が、しばしば、遠位粘膜部位で免疫応答を生じることである。これは、高内皮細静脈を経由するリンパ球の移動に起因する。しかし、異なる粘膜表面へのワクチンの投与に際して別個の差異が観察されており、そして応答の区画化が生じ得る。さらに、いくつかの粘膜部位は、遠位部位で良好な応答を誘導し、そしてすべての遠位部位が等しく応答するわけではない。
【0016】
鼻腔内免疫化は、種々の病原体、可溶性タンパク質およびマイクロパーティクルで送達される抗原に対する粘膜免疫を刺激するための有効な経路である。鼻腔内免疫化は、局所的、および遠位粘膜免疫応答の両方を誘導するさらなる利点を有する。例えば、鼻腔内ワクチン化は、直接免疫化が、しばしば、上皮細胞代謝回転およびホルモン影響によって妨害される尿生殖器管における免疫を惹起し得る(非特許文献1)。鼻腔内免疫化は、NALTによるか、または深部肺免疫化による、強力な抗原特異的免疫応答を誘導し得る。上部呼吸管のための主要な粘膜誘導部位であるNALTは、鼻腔内免疫化抗原に対し、局所におよび遠位に粘膜免疫を発生するために重要である。ウイルスペプチドに対する粘膜IgAおよびIgG応答、ならびに高められたCTL応答が、NALTの刺激後に観察されている。肺は、局所的にIgA、IgG、IgEおよび細胞媒介性応答を産生し得る免疫応答性器官である(非特許文献2)(非特許文献3)。肺における保護免疫応答は、インフルエンザウイルス感染またはインフルエンザワクチンを用いたワクチン化の後に証明されており、一方、肺免疫化およびチャレンジ(抗原投与)の後の長期間の抗体産生は肺関連組織と関連している(非特許文献4)。最適上部呼吸管免疫は、組み合わせた上部および下部呼吸管接種によって誘導される(非特許文献5)。
【0017】
DNA免疫化は、感染疾患に対する保護的免疫を生成するためのアプローチである(非特許文献6)。タンパク質またはペプチドを基礎にしたサブユニットワクチンとは異なり、DNA免疫化は、宿主細胞による異種タンパク質の発現を通じて保護免疫を提供し、それ故、ウイルスまたは細胞内病原体での感染の間に生じる様式とより類似の様式で免疫系に対する抗原の提示を可能にする(非特許文献7;非特許文献8)。この技法により、相当の影響力が生成されているけれども、成功した免疫の大部分は、ウイルス疾患について、DNA免疫化によって一致して誘導されている(非特許文献9)。非ウイルス病原体では結果はより変動し、これらは、この病原体の性質における差異選択された免疫抗原における差異、および免疫化の経路における差異を反映し得る(非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12)。DNAワクチン化のさらなる開発は、基礎となる免疫学的機構を解明すること、およびワクチン開発の現存する戦略が失敗したその他の感染疾患へのその適用を広げることに依存する。
DNAワクチンは、いくつかの最近の臨床試験に従って、ヒトにおいて良好に寛容性を示したが、より良好な免疫効力を達成する差し迫った必要性がある。それ故、多くの第2世代DNAワクチンが、種々のシステムおよびデバイスを用いて開発中である。さらに、混合様式ワクチン化、またはプライム−ブーストと呼ばれる免疫化の新たなアプローチが評価されている。それは、1つの型のワクチンを用いる初期ワクチン化、次いで、異なる型のワクチンを用いる追加免疫(ブースト)を含む。例えば、有望な前臨床結果は、最初にDNAで免疫化すること、次いで、この抗原をコードするワクシニアまたはアデノウイルスベクターで、またはこのDNAワクチンにコードされるこの抗原の組換えタンパク質で追加免疫することによって得られている。しかし、追加免疫として用いられるワクシニアおよびアデノウイルスについて問題がある。ウイルスベクターに対する既存の抗体は、免疫応答をブロックし得るので、これらの組換えウイルスは、通常、繰り返して用いられることはできず、そして免疫寛容患者にはまた、特に安全性の問題がある。さらに、非経口免疫化経路によってブースターとして用いられる純粋タンパク質は、一般に、粘膜免疫応答を誘導すること、または細胞媒介免疫応答を増大することはできない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Csencsitsら、1999、JI.1382〜1389
【非特許文献2】Liu Mら、1982. J.Immunology.129(6):2653〜2661
【非特許文献3】Bice DEら、1980.Int.Arch Allergy Appl Immunol.63(4):438〜45
【非特許文献4】Bice DEら、1993.Am J Respir Cell Mol Biol.8(6):662〜667
【非特許文献5】Thompson AH.Vaccine 17:1404〜15
【非特許文献6】Liuら、Ann.N.Y.Acad.Sci.772、1995
【非特許文献7】PardollおよびBeckerieg、Immunity 3:165、1995
【非特許文献8】McDonnelおよびAskari、N.Engl.J.Med.334:42、1996
【非特許文献9】Manickanら、J.Immunol.155:259、1995
【非特許文献10】Sedegahら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:9866、1994
【非特許文献11】Barryら、Nature 377:632、1995
【非特許文献12】XuおよびLiew、Vaccine 12:1534、1994
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
保護粘膜免疫応答は、バイオテロリズムで用いられ得る多くの天然に存在する感染性生物および微生物によって引き起こされる疾患を制御することで重要である。CTLを含む細胞媒介免疫応答はまた、全身的および粘膜部位の両方で細胞内病原体を制御することで重要である。ミョウバンをアジュバントとして用いる、筋肉内に送達される伝統的なタンパク質ワクチンは、主にIgG1抗体応答をともなうが、しかし、CTL応答または粘膜部位における局所免疫を刺激しない、代表的なTh2応答を生成する。従って、疾患から動物を保護するために広範な範囲の所望の免疫応答を惹起し得る有効なワクチンに対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
(発明の要旨)
本発明の1つの局面は、動物において所望の免疫応答を惹起することを提供し、方法であって、該動物に、抗原をコードする核酸配列を含むプライミング調製物、およびこの抗原およびリポソームを含む追加免疫調製物(抗原−リポソーム調製物)を投与する工程を包含し(異種免疫化)、それによって該動物において所望の免疫応答を惹起する。
【0021】
1つの実施形態では、上記所望の免疫応答は、病原体に対し、そして上記抗原は病原体特異的抗原である。
【0022】
1つの実施形態では、上記プライミング調製物は:皮下、筋肉内、皮内および経粘膜から選択される経路によって投与され、そして上記追加免疫調製物は:皮下、筋肉内、皮内および経粘膜から選択される経路によって投与される。
【0023】
1つの実施形態では、上記異種免疫化のためのプライミング調製物は、上記動物に筋肉内で投与され、そしてここで、上記追加免疫調製物は、上記動物に鼻腔内に投与される。
【0024】
1つの実施形態では、上記追加免疫調製物は、リポソーム中にカプセル化された病原体特異的タンパク質抗原を含む。
【0025】
1つの実施形態では、上記追加免疫調製物中のリポソームは、約0.5〜5μmの平均サイズである。
【0026】
1つの実施形態では、上記プライミング調製物および上記追加免疫調製物の各々は、動物に単独で投与されるとき、所望のレベルの免疫応答を達成するには不十分である。
【0027】
1つの実施形態では、上記免疫応答は、上記病原体に対する免疫を与える。
【0028】
1つの実施形態では、上記プライミングは、約3〜6週間だけ分離された1つまたは2つの投与を含み、そしてここで、上記追加免疫調製物は、最後のプライミングの後、約3〜10週間で投与される。
【0029】
1つの実施形態では、上記プライミングは、約3日だけ分離された1つまたは2つの投与を含み、そしてここで、上記追加免疫調製物は、最後のプライミングの後、約3週間で投与される。
【0030】
1つの実施形態では、上記抗原−リポソーム調製物中のリポソームは、約0.5〜5μmの平均サイズである。
【0031】
1つの実施形態では、上記追加免疫の用量は、上記動物の鼻腔内にIgA応答を誘導するように投与される。
【0032】
1つの実施形態では、上記IgA応答は、全身および粘膜応答を含む。
【0033】
本発明の別の局面は、動物において、Th2応答に偏向する傾向の免疫応答を惹起するための方法を提供する。この方法は、プライミング調製物および追加免疫調製物を投与する工程を包含し、その各々は、同じ抗原およびリポソームを含む(同種免疫)。
【0034】
1つの実施形態では、上記宿主動物は、ヒトまたは家畜動物(ウシ、ブタ、ウマ、またはヒツジなど)、ペット(イヌまたはネコなど)、または小実験動物(マウス、またはラットなど)のような哺乳類動物である。
【0035】
1つの実施形態では、上記病原体は、B型肝炎ウイルス(HBV)のようなウイルスである。
【0036】
1つの実施形態では、上記病原体は、クラミジアの株の1つである。
【0037】
1つの実施形態では、上記病原体は、Bacillus anthracisのような細菌株である。
【0038】
1つの実施形態では、上記病原体特異的抗原は、Bacillus anthracisのPA抗原のような保護抗原(PA)である。
【0039】
1つの実施形態では、リポソーム中に包括される免疫原は、T細胞を活性化、または全ウイルス粒子を不活性化するペプチドである。
【0040】
1つの実施形態では、上記病原体特異的抗原は、HBsAgのようなウイルス表面抗原である。
【0041】
1つの実施形態では、上記病原体特異的抗原は、ペプチドである。
【0042】
1つの実施形態では、上記病原体特異的抗原は、不活性化ウイルスまたは細菌の種類である。
【0043】
1つの実施形態では、上記病原体特異的抗原(ペプチド、タンパク質または不活性化ウイルス)は、リポソーム中にカプセル化されている。
【0044】
1つの実施形態では、上記病原体特異的抗原(ペプチド、タンパク質または不活性化ウイルス)は、空のリポソームと混合される。
【0045】
1つの実施形態では、上記抗原−リポソーム調製物は、新鮮に調製される。
【0046】
1つの実施形態では、上記抗原−リポソーム調製物は、使用前に凍結乾燥される。
【0047】
1つの実施形態では、上記方法は、同じ上記抗原−リポソーム調製物の1つ以上の追加免疫調製物を投与する工程をさらに包含し、ここで、各投与は、約2〜16週間、好ましくは約3〜6週間だけ分離されている。
【0048】
1つの実施形態では、すべての調製物は、同じ量の上記病原体特異的抗原を有する。
【0049】
1つの実施形態では、異なる量のプライミングおよび追加免疫が、同じ経路を経由して上記動物に投与される。
【0050】
1つの実施形態では、異なる量のプライミングおよび追加免疫が、異なる経路を経由して上記動物に投与される。
【0051】
1つの実施形態では、上記追加免疫調製物および初期プライミングは、上記動物に同じ経路を経由して投与される。
【0052】
1つの実施形態では、上記追加免疫調製物および初期プライミングは、上記動物に別個の経路を経由して投与される。
【0053】
1つの実施形態では、上記方法は、上記病原体特異的抗原に対する体液性および/または細胞性免疫応答を測定する工程をさらに包含する。
【0054】
1つの実施形態では、上記体液性免疫応答は、血清中または粘膜表面における総抗原特異的抗体(Ig)力価;血清中または粘膜表面における抗HBsAg特異的抗体;抗原特異的抗体アイソタイプおよび/またはIgG、IgA、IgG1、およびIgG2aを含むサブタイプの力価;IgG1およびIgG2aの比を含む。
【0055】
1つの実施形態では、上記細胞性免疫応答は、CD8IFN−γ細胞傷害性T細胞(CTL)の出現;増大したCTL殺傷活性;IFN−γを含むTh1応答に特徴的なサイトカインの分泌;IL−10およびIL−4を含むTh2応答に特徴的なサイトカインの分泌;およびTヘルパー細胞プロフィールの分極化(例えば、Th1対Th2応答)を含む。
【0056】
1つの実施形態では、上記体液性および/または細胞性応答は、最後の追加免疫後、約2、4、6または8週間で上記宿主動物から得たサンプルから一般に測定される。しかし、応答は、最後の追加免疫後、数ヶ月について測定され得る。
【0057】
1つの実施形態では、上記免疫応答は、IgA、IgGおよびT細胞応答を含む。
【0058】
1つの実施形態では、上記IgA応答は、全身的および/または粘膜IgA応答を含む。
【0059】
1つの実施形態では、上記IgG応答は、全身的および/または粘膜IgG応答を含む。
【0060】
本発明は、さらに、2つの免疫化成分を含む免疫原組成物を提供し、ここで、第1の免疫化成分は、抗原をコードする核酸を含み、そして第2の免疫化成分は、抗原およびリポソームを含む。1つの実施形態では、所望の免疫応答は病原体に対してであり、そして抗原は病原体特異的抗原である。
【0061】
上記のすべての実施形態は、当初記載されているか否かにかかわらず、本発明の同じまたは異なる局面の下、適切であるときはいつも任意のその他の実施形態と自由に組み合わされ得ることが企図される。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)
動物において所望の免疫応答を惹起する方法であって、該動物に:
a)抗原をコードする核酸を含むプライミング調製物;および
b)該抗原およびリポソームを含む追加免疫調製物、を投与する工程を包含し、それによって該動物において所望の免疫応答を惹起する、方法。
(項目2)
前記所望の免疫応答が病原体に対し、そして前記抗原が病原体特異的抗原である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記プライミング調製物が:皮下、筋肉内、皮内および経粘膜から選択される経路によって投与され、そして前記追加免疫調製物が:皮下、筋肉内、皮内および経粘膜から選択される経路によって投与される、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記追加免疫調製物が、前記動物の鼻腔内に投与される、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記追加免疫調製物が、リポソーム中にカプセル化された病原体特異的タンパク質抗原を含む、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記追加免疫調製物中のリポソームが、約0.5〜5μmの平均サイズである、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記免疫応答が、前記病原体に対する免疫を与える、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記病原体が、ウイルスである、項目2〜7のいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
前記ウイルスがHBVであり、そして前記病原体特異的抗原がHBsAgである、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記動物が、ヒトである、項目9に記載の方法。
(項目11)
宿主動物において、Th1応答に偏向する傾向の所望の免疫応答を惹起する方法であって:
a)該動物の筋肉内に、抗原をコードする核酸を含むプライミング調製物を投与する工程;および
b)引き続き、該動物に、前記抗原およびリポソームを含む追加免疫調製物投与する工程を包含し、それによって、該動物においてTh1応答に偏向する傾向の所望の免疫応答を惹起する、方法。
(項目12)
前記Th1応答に偏向する傾向の所望の免疫応答が、病原体に対し、そして前記抗原が、病原体特異的抗原である、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記追加免疫調製物が、前記動物の鼻腔内に投与される、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記追加免疫調製物が、リポソーム中にカプセル化された病原体特異的タンパク質抗原を含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記追加免疫調製物中のリポソームが、約0.5〜5μmの平均サイズである、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記免疫応答が、前記病原体に対する免疫を与える、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記病原体が、ウイルスである、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記ウイルスがHBVであり、そして前記病原体特異的抗原がHBsAgである、項目11〜17のいずれか1項に記載の方法。
(項目19)
前記動物が、ヒトである、項目18に記載の方法。
(項目20)
宿主動物において免疫応答を惹起するためのキットであって:
a)抗原をコードする核酸を含む第1の免疫化成分;
b)該抗原およびリポソームを含む第2の免疫化成分;および
c)該動物に該第1の免疫化成分を投与し、次いで該第2の免疫化成分を投与し、該動物に免疫応答を惹起するための指示書、を備える、キット。
(項目21)
前記所望の免疫応答が、病原体に対し、そして前記抗原が、病原体特異的抗原である、項目20に記載のキット。
(項目22)
前記第1の免疫化成分の投与が:皮下、筋肉内、皮内および経粘膜から選択される任意の経路により得、そして前記第2の免疫化成分の投与が:皮下、筋肉内、皮内および経粘膜から選択される任意の経路により得る、項目21に記載のキット。
(項目23)
前記第2の免疫化成分が、動物の鼻腔内に投与される、項目22に記載のキット。
(項目24)
前記第2の免疫化成分が、リポソーム中にカプセル化された病原体特異的タンパク質抗原を含む、項目23に記載のキット。
(項目25)
前記追加免疫調製物中のリポソームが、約0.5〜5μmの平均サイズである、項目24に記載のキット。
(項目26)
前記病原体が、ウイルスである、項目20〜25のいずれか1項に記載のキット。
(項目27)
前記ウイルスがHBVであり、そして前記病原体特異的抗原がHBsAgである、項目26に記載のキット。
(項目28)
前記動物が、ヒトである、項目27に記載のキット。
本発明のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、および請求項から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、直径が平均4μmのサイズのリポソームのサイズ分布プロフィールを示す。x軸は、サイズをμmで、そしてy軸は、粒子数を示す。
【図2】図2は、実験内の、個々のCD1マウス(上部パネル)およびBalb/cマウス(下部パネル)間で観察される血清HBsAg特異的Ig力価における変動の程度を表す。1つ(黒塗り円)または2つ(黒塗り三角)の、HBsAg−リポソーム IN、HBsAg−リポソーム IM、またはHBsAg IMに対するGSK市販ワクチンでの同種免疫化を受けたマウスからの応答が示される。終点力価は、2×無刺激マウスについて観察された血清力価値より大きい血清力価として規定される。水平線は、平均応答を示す(n=5マウス/群)。
【図3】図3は、HBsAg−リポソームでの鼻腔内免疫化後、CD1マウスにおけるHBsAg特異的血清Igレベルの動力学を示す。このデータは、一次免疫化後(黒塗りシンボル)および追加免疫後2週間(交差ハッチ+をともなう黒塗りシンボル)の種々の時間での血清サンプルの系列希釈後のHBsAg特異的IgELISAにおける450nmにおけるODとして示される。値は、血清プール(n=5マウス/群)からの平均である。GSK HBsAgワクチンに対する応答が比較のために示される。
【図4】図4は、0週(黒塗りシンボル)または0週および6週(交差ハッチ+をともなう黒塗りシンボル)に鼻腔内に免疫化されたCD1マウスにおけるHBsAg−リポソーム用量応答を示す。GSK HBsAgワクチンに対する応答が比較のために示される。HBsAg特異的血清Igレベルは、最初の免疫化後8週でとられた血清サンプルプールについて測定された(n=5マウス/群)。
【図5】図5は、HBsAg−リポソーム(15μg/用量)を投与されたCD1マウスにおける総HBsAg−特異的血清抗体に対する追加免疫の投与および送達の経路の影響を示す。黒塗りのシンボルは、単一のプライミング免疫化を受けたマウスにおける応答を示す(n=5)。交差ハッチ(+)をもつシンボルは、同種の一次および二次ブースト免疫化を受けたマウスにおける応答を示す(n=5)。GSK HBsAgワクチン対する応答を比較のために示す。
【図6】図6は、HBsAg−リポソーム(15μg/用量)を投与されたBalb/cマウスにおける総HBsAg−特異的血清抗体に対する追加免疫の投与および送達の経路の影響を示す。黒塗りのシンボルは、単一のプライミング免疫化を受けたマウスにおける応答を示す(n=5)。交差ハッチ(+)をもつシンボルは、同じ同種の一次および二次ブースト免疫化を受けたマウスにおける応答を示す(n=5)。GSK HBsAgワクチン対する応答を比較のために示す。
【図7】図7は、鼻腔内に新鮮(矩形)または凍結乾燥(三角)いずれかのHBsAg−リポソームで免疫化されたか、または市販のGSKワクチン(丸)で筋肉内に免疫化されたCD1マウスにおけるHBsAg−特異的血清Ig応答の比較を示す。黒塗りシンボルは、単一のプライミング免疫化を受けたマウスにおける応答を示す(n=5)。交差ハッチ(+)をもつ黒塗りシンボルは、同種の一次および二次ブースト免疫化を受けたマウスにおける応答を示す(n=5)。総HBsAg−特異的血清抗体応答は、一次免疫化後8週の血清で測定された。
【図8】図8は、筋肉内に新鮮(矩形)または凍結乾燥(三角)いずれかのHBsAg−リポソームで免疫化されたか、または市販のGSKワクチン(丸)で筋肉内に免疫化されたCD1マウスにおけるHBsAg−特異的血清Ig応答の比較を示す。黒塗りシンボルは、単一のプライミング免疫化を受けたマウスにおける応答を示す(n=5)。交差ハッチ(+)をもつシンボルは、同種の一次および二次ブースト免疫化を受けたマウスにおける応答を示す(n=5)。総HBsAg−特異的血清抗体応答は、一次免疫化後8週の血清で測定された。
【図9】図9は、Balb/cマウスにおける血清HBsAg−特異的IgG応答に対するリポソームサイズの影響を示す(一次免疫化後6週、および追加免疫後2週)。HBsAGを含むリポソーム(15μm)は、4μm、1μmおよび0.2μmのサイズとされ、そして単一サイズとして、または3つすべてのサイズの等量混合物としてBalb/cマウスの鼻腔内に投与された(n=5)。HBsAg−特異的IgGに対する定量的ELISAを、プールされた血清サンプルにおける血清IgGレベルを決定するために用いた(群あたりn=5マウス)。混合群の垂直の棒は、抗体応答が付加的である場合の推定値を示す。
【図10】図10は、異なるプロトコールで免疫化されたCD1マウスの血清中のHBsAg−特異的抗体のIgG1:IgG2a比を示す。グレーの棒は、0週に1つの免疫化を受けたマウスからのIgG1:IgG2a比である。黒の棒は、0週および6週に2つの同種の免疫化を受けたマウスからのIgG1:IgG2a比である。定量的HBsAg−特異的ELISAアッセイを、一次免疫化後8週に血清プール(群あたり4〜5の個々のマウスからの等量の血清)からの血清中のHBsAg−特異的IgG1およびIgG2aのレベルを決定するために用いた。各パネル中の0.5および2.0における2つの垂直線は、抗体応答の3つの異なるパターンの境界を定める。0.5以下の比は、Th1分極応答を示す。2.0以上の比は、Th2分極応答を示す。0.5〜2.0の比は、混合、または平衡応答を示す。
【図11】図11は、異なるプロトコールで免疫化されたBalb/cマウスの血清中のHBsAg−特異的抗体のIgG1:IgG2a比を示す。グレーの棒は、0週に1つの免疫化を受けたマウスからのIgG1:IgG2a比である。黒の棒は、0週および6週に2つの同種の免疫化を受けたマウスからのIgG1:IgG2a比である。定量的HBsAg−特異的ELISAアッセイを、一次免疫化後8週に血清プール(処置群あたり4〜5の個々のマウスからの等量の血清)からの血清中のHBsAg−特異的IgG1およびIgG2aのレベルを決定するために用いた。各パネル中の0.5および2.0における2つの垂直線は、抗体応答の3つの異なるパターンの境界を定める。0.5以下の比は、Th1分極応答を示す。2.0以上の比は、Th2分極応答を示す。0.5〜2.0の比は、混合、または平衡応答を示す。
【図12】図12は、HBsAg−DNAは、CD1(矩形)およびBalb/cマウス(三角)マウスにおける抗体応答に対する弱い免疫原であることを示す。CD1マウスにおける(交差ハッチ+をもつ黒塗り丸)、およびBalb/cマウスにおける(交差ハッチ+をもつ白抜き丸)GSKワクチンに対する応答が比較のために示される。黒塗りシンボルは、単一のプライミング免疫化を受けたマウスにおける応答(n=5)を示す。交差ハッチ(+)を備えるシンボルは、同種の一次および二次ブースト免疫化を受けたマウスにおける応答(n=5)を示す。総HBsAg−特異的血清抗体応答は、一次免疫化後8週の血清中で測定された。マウスは、100μgのHBsAg−DNAまは3μgのミョウバンを基礎にするタンパク質HBsAgワクチン(GSK)IMのいずれかを受けた。
【図13】図13は、HBsAg−DNAでのBalb/cマウスのIM免疫化が、末梢T細胞区画(脾臓細胞)をTh1に偏るサイトカインプロフィールに分極することを示す。左パネルは、IFN−γELISPOTアッセイからの結果を示し、そして右パネルは、IL−10ELISPOTアッセイからの結果を示す。このグラフは、両アッセイにおけるサイトカイン産生にT細胞を活性化することにおけるHBsAg CTLペプチドとHBsAgタンパク質との間の比較を示す。関係のないペプチドおよびタンパク質をまた、特異性コントロールとして含めた。T細胞分裂促進因子コンカナバリンA(ConA)に対するポリクローナル抗体応答が、IL−10に対する最大応答のために示されている。IFN−γアッセイにおけるConA刺激についての結果は示されない。なぜなら、スポットが多過ぎて、正確に定量できなかったからである。ペプチドおよびタンパク質の両方は、HBsAg−DNA免疫化マウスにおけるIFN−γ産生を刺激し得るが、いずれも有意なIL−10産生を生成せず、DNA免疫化マウスにおける強力なTh1サイトカイン傾向を直接示す。非免疫化マウスは、HBsAgペプチドまたはタンパク質での刺激に対し、いずれのサイトカインに対しても検出可能な数のスポットを生成しなかった(データは示さず)。
【図14】図14は、Balb/cマウスにおける異種免疫化の影響を示す:HBsAg−DNA免疫化マウスは、低用量のHBsAg−リポソームINでの追加免疫後、高レベルのHBsAg−特異的血清Igを生成する。マウスは、HBsAg−DNAで筋肉内に免疫化し(0週および6週に100μg)、そして低用量のHBsAg−リポソーム(12週に3μg/用量、n=8マウス/群)で追加免疫した。黒塗りシンボルは、IN追加免疫の前のHBsAg−特異的血清Ig抗体応答を示す。交差ハッチを有する黒塗りシンボルは、IN追加免疫後4週のHBsAg−特異的総血清Ig応答を示す。
【図15】図15は、Balb/cマウスにおける異種免疫化の影響を示す:HBsAg−DNA免疫化マウスは、低用量のHBsAg−リポソームINでの追加免疫後、高レベルのHBsAg−特異的血清および膣IgAを生成する。マウスは、HBsAg−DNAで筋肉内に免疫化し(0週および6週に100μg)、そして低用量のHBsAg−リポソーム(12週に3μg/用量)で追加免疫した。黒塗りシンボルは、IN追加免疫直前のHBsAg−特異的血清IgA抗体応答を示す。交差ハッチを有する黒塗りシンボルは、IN追加免疫後4〜5週のHBsAg−特異的IgA応答を示す。ポジティブコントロールとして、血清IgA応答が、0週および6週に15μgのHBsAg−リポソームで同種免疫化し、そして2週間後に試験したマウスについて示される(交差ハッチ+をもつ丸)。すべての群は、8匹のマウス含んだ。
【図16】図16は、粘膜IgGがまた、異種免疫化プロトコールで免疫化されたマウウ中で生成されることを示す。Balb/cマウスは、HBsAg−DNAでの2つのIMプライミング免疫化(各々100μg)、次いで、HBsAg−リポソーム(15μg)、空のリポソーム、または処置せずに残す(群あたりn=5)のいずれかでのIN免疫化を受けた。最終の免疫化後4週間に、マウスを屠殺し、そして肺および膣の洗浄液を測定した。HBsAg−特異的IgG力価を、抗原特異的サンドイッチELISAアッセイを用いてサンプルプールについて得た。HBsAg−DNAおよびHBsAg−リポソームINの組み合わせを受けたマウスのみが、未処置マウスで観察されたバックグラウンドレベルを超える抗原特異的粘膜IgG応答を生成した。
【図17】図17は、HBsAg−DNAでのプライミングIM(0週および6週に100μg)、およびHBsAg−リポソームでの追加免疫(6週に3μg)からなる異種免疫化プロトコール後の、個々のBalb/cマウスの血清中のIgG1:IgG2a比を示す。血清サンプルを、上記追加免疫後4週で採取した。すべてのマウスは、Th1に偏った免疫応答を示した(IgG1:IgG2a比<0.5)。これらの結果は、HBsAg−DNA免疫化のみの後に見られるTh1−傾向の応答が、HBsAg−リポソームの送達後でさえ保存され、これが、Blab/cマウスにおけるTh2傾向応答を促進することを示す(図11と比較のこと)。
【図18】図18は、同種免疫化プロトコール(左パネル)または異種免疫化プロトコール(右パネル)によって免疫化されたBalb/cマウスにおけるHBsAg−特異的血清IgG結合活性(アビディティー)指数を示す。マウスは、0週および4週に免疫化され(同種免疫化)、または0週および4週にプライムされ、そして8週に追加免疫した(異種免疫化)。抗体結合活性は、最後の免疫化後2週で得た血清について測定された。点線は、この定量的アッセイで可能である最大結合活性を示す。この異種免疫化プロトコールは、最高の結合活性のHBsAg−特異的血清IgG抗体を生成する。同じ実験からのAg−リポソームINが、比較のために右パネルに示される。
【図19】図19は、インビボCTL殺傷アッセイからの代表的結果を示す。左パネル:無刺激Balb/cマウスからの脾臓細胞。右パネル:異種免疫化レジメン(2×HBsAg−DNA IM+1×HBsAg−リポソームIN)を受けたBalb/cマウスからの脾臓細胞。すべてのマウスは、CFSElow非パルス化同種遺伝子脾臓細胞およびCFSEhighHBsAgペプチドバルス化同種遺伝子脾臓細胞の混合物を受けた。20時間後、レシピエント脾臓を回収し、そしてフローサイトメトリーによってCFSE蛍光(x軸)について分析した。領域1は、非蛍光性(レシピエント)脾臓細胞についてゲート化される。領域2は、CFSElow(非パルス化ドナー)細胞についてゲート化される。領域3は、CFSEhigh(HBsAg−ペプチドパルス化ドナー)細胞についてゲート化される。200,000の生存細胞を分析した。右パネルにおけるCFSEhigh細胞(R3)の消失は、免疫化マウスにおけるCTLによる注入された標的細胞のHBsAgペプチド特異的殺傷を示す。
【図20】図20は、異種免疫化レジメンを受けたマウスの肺からのHBsAg−ワクシニアウイルス(VV−HBsAg)のクリアランスを示す。Balb/cマウスは、4週の間隔で、示されたように免疫化された(処置群:群あたりn=5マウス)。マウスは、100μgのHBsAg−DNA IMおよび15μgのHBsAg−リポソーム INの用量を受けた。マウスを、追加免疫後14日に、鼻腔内に50μl容量で送達された2×10PFUのVV−HBsAgで感染した。マウスは、ウイルスチャレンジ後5日目に屠殺し、そしてウイルス力価を、Vero細胞を用いて肺ホモジネートについて決定した。示された値は、1群あたり4匹のマウスの平均±SDである。
【発明を実施するための形態】
【0063】
(発明の詳細な説明)
(I.概説)
本発明は、少なくとも一部は、異種免疫化プロトコールを、リポソームと混合された抗原または免疫原と組み合わせると、豊富な免疫応答を惹起するという驚くべき発見に基づく。本出願人らは、抗原または免疫原に対する所望の免疫応答を惹起するために新規な方法を考案した。2つの例は、本発明の方法が、動物において惹起し得る頑強な免疫応答を強調する。第1に、本発明の方法は、生存ウイルスのような生存する病原体によるチャレンジから動物を保護する免疫応答を惹起するために用いられ得る。第2に、本発明の方法を用いるワクチン化は、現在利用可能なワクチンに非応答性である個体に免疫を与える。さらに、本明細書で提供される新規な方法は、リポソーム以外の任意のアジュバントの必要性なくして所望の免疫応答を達成し、それ故、多くのアジュバント、特にコレラトキシン(CT)およびE.coli熱分解性エントロトキシン(LT)のような細菌トキシンにともなうリスクおよび合併症を避ける。用いられる特定の免疫化プロトコールに依存して、本明細書に記載される方法は、以下の組み合わせを含む広範な範囲の免疫応答を誘導し得る:頑強な抗体応答、CTL生成のようなT細胞応答、ならびにTh1型サイトカイン産生および粘膜部位における局所免疫。
【0064】
従って、本発明は、動物において所望の免疫応答を惹起するための方法を提供し、抗原をコードする核酸、およびこの抗原およびリポソームを含む追加免疫調製物を含み、この動物において所望の免疫応答を惹起する。この方法は、病原体に対して宿主動物における免疫応答を惹起するために特に有用である。このような文脈では、プライミング調製物は、病原体特異的抗原をコードする核酸を含み、追加免疫調製物はこの病原体特異的抗原およびリポソームを含む。特定の実施形態では、この病原体はB型肝炎ウイルス(HBV)である。本発明の異種免疫化レジメンは、異なる形態のHBsAgワクチン(例えば、HBsAg−DNA IMおよびHBsAg−リポソーム INまたはIM)でのプライミングおよび追加免疫を含み、これは、より頑健な全身免疫応答、そしてまた粘膜部位における局所免疫の誘導を生じる。1つの実施形態では、HBsAg−DNAワクチンでの筋肉内プライミング、およびHBsAg−リポソームでの鼻腔内追加免疫は、可能な相乗的抗体応答を誘導し、CTLおよびTh1型サイトカインプロフィールを活性化し、そして粘膜部位で分泌性IgAおよびIgGの産生を惹起した。別の実施形態では、HBsAg−DNAワクチンでの筋肉内プライミングおよびHBsAg−リポソームでの鼻腔内追加免疫は、HBsAg(VV−HBsAg)を発現する組換えワクシニアウイルスでの鼻腔内抗原投与の後、実質的な抗原特異的肺CTLおよび完全なウイルスクリアランスを生成した。鼻腔内経路による追加免疫の送達は、局所免疫の生成のための重要な決定因子として確立された。
【0065】
本発明はまた、宿主動物において免疫応答を惹起するためのキットを提供する。コノキットは、抗原をコードする核酸を含む第1の免疫化成分、この抗原およびリポソームを含む第2の免疫化成分、および上記動物に上記第1の免疫化成分を投与し、次いで上記第2の免疫化成分を投与し、この動物に免疫応答を惹起するための使用者のための指示書を備える。
【0066】
本発明はさらに、免疫応答を、Th1応答に偏向する傾向にある所望の免疫応答が、宿主動物中で惹起され得るように調整する方法を提供する。この方法は、動物に、抗原をコードする核酸配列を含むプライミング調製物を筋肉内に投与する工程;および、引き続き、この動物に、この抗原およびリポソームを含む追加免疫調製物を投与する工程を包含する。「偏向する傾向にある」は、観察される免疫応答が、免疫化前に比較してTh1またはTh2応答に近づくような状況をいう。特定の実施形態では、免疫化は、Th2応答をTh1応答に完全にスイッチする。その他の実施形態では、免疫化は、Th2応答をTh1応答に完全にスイッチしなくても良いが、それに代わって、混合された応答、またはより弱いTh2応答を生じる。
【0067】
本発明はさらに、微生物にとって最も一般的な侵入口である身体の粘膜表面を特異的に標的するために有効なワクチンおよびワクチン化プロトコールを開発する方法を提供する。本発明は、規定された組成/サイズでリポソーム中にこれらをカプセル化することによって、そしてそれらを粘膜表面に直接送達することによってより効率的にワクチンが作製され得ることを提供する。リポソームカプセル化ワクチンを適切なアジュバントおよび免疫化レジメンと組み合わせることにより、免疫応答は、より有効および特異的ワクチンを提供するように仕立てられる。特定の実施形態では、理想的なワクチンは、平衡化した免疫応答、または、粘膜部位での、頑強な抗体応答、CTL生成およびTh1型サイトカイン産生、ならびに局所免疫を含む局所免疫をまた誘導するTヘルパー1(Th1)に偏る免疫応答を生成し得る。その他の実施形態では、Tヘルパー2(Th2)に偏る免疫応答を生成する免疫応答を仕立てることが可能であり得、これは、移植片宿主における拒絶において、そして特定の寄生虫感染に対して保護することで有益であり得る。
【0068】
本発明は、最も頑強な抗体応答を生成するために(HBsAgのような)種々の抗原のリポソーム中へのカプセル化のための最適条件(例えば、HBsAgの用量、リポソームサイズ、リポソーム:タンパク質比、および新鮮リポソーム対凍結乾燥リポソーム、および再構築リポソーム)を決定するための方法を提供する。血清抗体応答は、送達の鼻腔内(IN)および筋肉内(IM)経路によってリポソーム中にカプセル化されたこのような抗原(HBsAg−リポソーム)を受けたマウス中で比較された。本発明はまた、同じ形態の抗原(同種免疫)の1つの投与(プライム)または2つの投与(プライムおよびブースト)後の血清抗体応答の影響を開示する。リポソームは、鼻腔内または筋肉内経路を経由するHBsAgに対する免疫を誘導するための非常に有効なアジュバントおよび送達ビヒクルであることが見出された。1つの実施形態では、試験抗原HBsAgは、ヒトで現在用いられている市販され利用可能なHBsAgワクチン(GlaxoSmithKline)で処理されたマウスで観察されたレベルを達成したか、または超えた。鼻腔通路の粘膜表面への抗原の標的化送達はまた、サンプルとしたすべての粘膜表面で粘膜分泌物中の分泌性IgAの局所産生を刺激した。
【0069】
従って、本発明は、異なるタイプの免疫応答(抗体産生、T細胞サイトカインプロフィール、CTLによる細胞性免疫、および粘膜表面における局所免疫)を促進するいくつかのワクチン送達プロトコールを提供する。これらの送達プラットホームの合理的な組み合わせは、特定の状況下、例えば、Th1もしくはTh2型免疫応答、または混合/より平衡化された応答を嗜好するために、特定の病原体に対する最良の保護を提供するよう仕立てられるワクチンの開発を可能にする。
【0070】
1つの局面では、本発明は、ウイルス抗原のような特定の抗原に対して、動物、特に哺乳動物において免疫応答を効率的に惹起するための方法および試薬を提供する。本発明の1つの顕著な特徴は、鼻腔内(IN)または筋肉内(IM)で宿主動物に送達されるリポソームにカプセル化されたタンパク質抗原の使用に関する。
【0071】
特定の実施形態では、本発明は、規定された組成およびサイズのリポソーム中に抗原をカプセル化することにより、そして得られる抗原−リポソーム調製物を粘膜免疫系に直接送達することによってより効率的なワクチンを生成するための方法および試薬を提供する。その他の実施形態では、本発明の特定のプラットホーム送達技術の適用は、このようなリポソームカプセル化ワクチンの適切なアジュバントおよび免疫化レジメンとの合理的な組み合わせを提供し、より有効および特異的な(細胞媒介および体液免疫応答を増大し、Th2および混合/平衡Th1/Th2をTh1応答に仕立て、IFN−γ分泌を増加し、高レベルの粘膜IgA、IgGおよびCTLを誘導する)ワクチンを提供するような免疫応答を仕立てる。
【0072】
(II.免疫プロトコル)
本発明の方法およびキットの1つの構成要素は、「プライミング(priming)」免疫の使用であり、これは、1種以上の抗原のその後の投与に備えて、その同じ抗原を動物(特に、ヒト患者)に初期投与することを包含する。具体的には、用語「プライミング」とは、本明細書で使用される場合、望ましい抗原に対する免疫応答を誘導する抗原を用いる最初の免疫をいい、同じかまたは異なる、ワクチン送達系の状況で投与される場合に、その望ましい抗原でその後に再度免疫される際に、その同じ抗原に対するより高いレベルの免疫応答を再現する。
【0073】
本発明の方法およびキットの別の構成要素は、「追加免疫(boosting immunization)」、すなわち「ブースト(boost)」の使用であり、これは、プライミング免疫において情報記憶された(code)されたものと同じ抗原を送達する、組成物の投与を意味する。ブーストは、ときおり、二次免疫応答(anamnestic response)(すなわち、以前にプライミングした動物での免疫応答)といわれる。各ブーストについて、同じかまたは異なる量を利用して、複数回のブーストが投与され得る。プライミングとは異なる抗原送達系を利用する追加免疫(boosting)は、「異種ブースト(heterologous boost)」といわれ得るのに対して、プライミングと同じ抗原送達系を利用する追加免疫は、「同種ブースト(homologous boost)」といわれ得る。
【0074】
上記の一連の投与の代替として、プライミング調製物および追加免疫調製物が、同時に(すなわち、実質的に同時に)投与されうる。本発明の方法は、この方法が動物において惹起し得る免疫応答に関して、プライミング免疫と追加免疫との間で強力な相乗効果をもたらす。結果として、本発明の方法は、プライミング調製物および追加免疫調整物の各々が、単独で動物に投与される場合に、望ましいレベルの免疫応答を達成するに不十分である場合、望ましいレベルの免疫応答を惹起することを可能にする。特定の具体的実施形態において、鼻内ブーストでの異種免疫は、粘膜CTL(CD8IFNγ 表現型およびインビボCTL死滅)を生じ、生の病原体によるチャレンジ(例えば、例示的な実施例において出願人らによって示されるような、生HBVによるチャレンジ)に対する完全な防御を提供する。
【0075】
宿主動物における免疫応答の効果は、種々のアッセイ(体液性免疫応答および細胞性免疫応答が挙げられ得る)によって評価され得る。体液性免疫応答としては、血清または粘膜表面における総抗原特異的抗体(Ig)力価;血清または粘膜表面におけるHBsAg特異的抗体の力価;特異的抗体アイソタイプおよび/またはサブタイプ(IgG、IgA、IgG1、およびIgG2aが挙げられる)の力価;IgG1およびIgG2aの比率が挙げられる。細胞性免疫応答は、細胞傷害性T細胞(CTL)の表現型および活性を含み;細胞性免疫応答はまた、Th1応答に特徴的なサイトカイン(IFN−γが挙げられる)の分泌、およびTh2応答に特徴的なサイトカイン(IL−10およびIL−4が挙げられる)の分泌を含む。そのサイトカインは、サイトカインELISPOTアッセイによって直接検出され(すなわち、IFN−γおよびIL−10)、そしてIgG1:IgG2a比(例えば、Th1 対 Th2 応答)から推測される。
【0076】
プライミング調製物および追加免疫調製物の各々は、以下の経路のうちのいずれか1つによって投与されうる:皮下、筋肉内、皮内、および粘膜。そのプライミング調製物および追加免疫調製物は、同じ経路によって投与されてもよいし、異なる経路によって投与されてもよい。特定の好ましい実施形態において、そのプライミング調製物は、筋肉内に投与され、追加免疫調製物は、筋肉内または鼻内のいずれかに投与され、強力な全身免疫応答を生じるのみならず、粘膜部位における局所免疫の誘導も生じる。1つの特定の実施形態において、HBsAg−DNAワクチンでの筋肉内でのプライミングおよびHBsAg−リポソームでの鼻内での追加免疫は、強力な相乗的抗体応答、活性化されたCTLおよびTh1型サイトカインプロフィール、および粘膜部位での保存された分泌型IgA生成を誘導した。鼻内経路によるブーストの送達は、局所免疫の生成のための重要な決定因子として確立された。
【0077】
プライミング投与と追加免疫投与との間で、異なる間隔が使用されてもよい。ブースト投与は、以前の投与(初回ブーストまたは前のブースト)から、2〜8週間、好ましくは、4〜6週間時間を隔てて行われ得る。代表的には、初回投与から4〜6週間後に1回ブーストを投与することで十分である。本発明は、プライミング調製物または追加免疫調製物のいずれか、またはこれら両方が、動物に1回以上投与されうることを企図する。
【0078】
ブースト投与および初回投与は、同量または異なる量の抗原−リポソーム調製物を利用してもよいし、ブースト投与および初回投与は、同じ経路または異なる経路で投与されてもよい。その初回投与およびブースト投与は、異なる計画に従って送達される異なる量のDNA抗原、および送達される異なる量の抗原−リポソーム調製物を利用してもよい。
【0079】
(III.抗原)
本明細書で使用される場合、用語「抗原」または「免疫原」とは、交換可能に使用され、関心のある動物内で免疫応答を誘導し得る、全てのペプチド配列またはタンパク質配列を包含すると解釈される。この用語「抗原」または「免疫原」は、既知の抗原または野生型抗原のペプチドアナログまたはタンパク質アナログを包含し、これらのアナログは、野生型抗原よりも可溶性でありかつ安定性であり得、そして抗原が、より免疫学的に活性であるかまたは特定の細胞型における発現のためにより最適である(すなわち、ヒト化コドンの利用)ようにする、特定の変異または改変も含みうる。抗原はまた、特定のアミノ酸置換が、天然に存在する抗原に対して行われたペプチドであり得る。この置換は、天然に存在する抗原のタンパク質構造、もしくはその一部(既知の防御性エピトープ(すなわち、CTLエピトープ)、または既知のエピトープ(1つの病原体に限定されていても、されていなくてもよい)の合成由来のつらなり(string)(多価ワクチン)を含む)を変化させる。
【0080】
望ましい抗原のアミノ酸配列と相同な配列を有するさらなるペプチドまたはタンパク質はまた、その相同な抗原が、それぞれの病原体に対する免疫応答を誘導する場合に、有用である。望ましい抗原コード配列に相同な遺伝子は、これらの遺伝子が、望ましい抗原の生物学的活性に実質的に類似である生物学的活性を有するタンパク質またはポリペプチドをコードするのであれば、本発明に包含されると解釈されるべきである。
【0081】
本明細書に記載される抗原のアナログは、保存的アミノ酸、配列差異によって、または配列に影響を及ぼさない改変を介して、あるいはその両方によって天然に存在するタンパク質またはペプチドとは異なり得る。例えば、保存的アミノ酸変化が行われ得、これは、タンパク質またはペプチドの一次配列を変化させるが、通常はその機能を変化させない。改変(通常は一次配列を変化させない)としては、ポリペプチドのインビボまたはインビトロでの化学的誘導体化(例えば、アセチル化、またはカルボキシル化)が挙げられる。また、抗原として含まれるのは、グリコシル化(例えば、その合成およびプロセシングの間にポリペプチドのグリコシル化パターンを改変することによって行われるもの、またはさらなるプロセシング工程において行われるもの;例えば、グリコシル化に影響を及ぼす酵素(例えば、哺乳動物のグリコシル化酵素または脱グリコシル化酵素)にポリペプチドを曝すことによって、改変されるタンパク質である。また本発明に従って抗原として含まれるのは、リン酸化されたアミノ酸残基(例えば、ホスホチロシン、ホスホセリン、またはホスホスレオニン)を有する配列である。また、抗原として含まれるのは、タンパク質分解に対するそれらの耐性を改善するかまたは可溶性特性を最適化する、通常の分子生物学的技術を利用して改変されたポリペプチドである。このようなポリペプチドのアナログとしては、天然に存在するL−アミノ酸以外の残基(例えば、D−アミノ酸または天然に存在しない合成アミノ酸)を含むものが挙げられる。本発明の抗原は、本明細書に列挙される具体的な例示的プロセスのいずれかの生成物に限定されない。
【0082】
抗原は、全長の抗原、その免疫原性フラグメント、またはその抗原由来のエピトープであり得る。特定の実施形態において、その追加免疫調製物中の病原体特異的抗原は、弱毒化病原体または死滅病原体の形態であり得る。有効な抗原はまた、これらの病原体の表面抗原を含む。
【0083】
用語「エピトープ」とは、本明細書で使用される場合、少なくとも約3〜5個のアミノ酸、好ましくは、約5〜10個または15個のアミノ酸、およびわずか約1000個のアミノ酸(またはその間の任意の整数)の配列であって、それ自体またはより大きな配列の一部として、このような配列に応答して生成される抗体に結合するか、または細胞性免疫応答を刺激する配列を規定するものをいう。用語「エピトープ」は、天然の配列と同一の配列、ならびに天然の配列に対する改変(例えば、欠失、付加および置換(一般には、本質的に保存的)を包含する。本発明において使用される抗原は、単一のエピトープ(例えば、単一のCTLエピトープ)のみを含んでいてもよい。
【0084】
プライミング調製物中の核酸によってコードされる抗原および追加免疫調製物中の抗原は、好ましくは、重複するエピトープを有する。特定の実施形態において、その2つの抗原は、互いに同一であり得る。あるいは、その2つの抗原は、重複するが異なるエピトープセットを有しうる。例示によれば、HBVのワクチン接種プロトコルにおいて、HBsAg−DNAは、プライミング調製物において使用され得、追加免疫調製物は、不活性化HBVであり得る。別の例示によれば、そのプライミング調製物は、HBsAgにおいて見出される単一エピトープをコードするミニ遺伝子であり得、その追加免疫調製物は、HBsAg抗原を含み得、その逆もまた同様である。
【0085】
以下は、本発明において使用されうる抗原の例示である。
【0086】
抗原は、以下に由来し得る:HIV−1(例えば、tat、nef、gp120またはgp160、gp40、p24、gag、env、vif、vpr、vpu、rev)、ヒトヘルペスウイルス(例えば、gH、gL、gM、gB、gC、gK、gEまたはgDまたはこれらの誘導体)、あるいはHSV1またはHSV2、サイトメガロウイルスに由来する最初期タンパク質(例えば、ICP27、ICP47、ICP4、ICP36)、特にヒトサイトメガロウイルスに由来するもの(例えば、gBもしくはその誘導体)、エプスタインバーウイルス(例えば、gp350またはその誘導体)、水痘帯状疱疹ウイルス(例えば、gpI、II、IIIおよびIE63)、あるいは肝炎ウイルス(例えば、B型肝炎ウイルス(例えば、B型肝炎表面抗原または肝炎コア抗原もしくはpol)、C型肝炎ウイルス抗原およびE型肝炎ウイルス抗原、もしくは他のウイルス病原体(例えば、パラミクソウイルス):RSウイルス(例えば、Fタンパク質およびGタンパク質またはこれらの誘導体)、またはパラインフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス由来の抗原(例えば、HPV6、11、16、18、egLI、L2、E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7)、フラビウイルス(例えば、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス)またはインフルエンザウイルス細胞(例えば、HA、NP、NA、またはMタンパク質、あるいはこれらの組み合わせ)、または細菌病原体(例えば、Neisseria spp(N.gonorrheaおよびN.meningitidisが挙げられる)に由来する抗原(例えば、トランスフェリン結合タンパク質、ラクトフェリン結合タンパク質、PilC、アドヘシン(adhesin));S.pyogenesに由来してもよいし(例えば、Mタンパク質またはそのフラグメント、C5Aプロテアーゼ)、S.agalactiae、S.mutans;H.ducreyi;Moraxella spp(M catarrhalis(Branhamella catarrhalisとしても知られる)が挙げられる)(例えば、高分子量のアドヘシンおよびインバシン(invasin)および低分子量のアドヘシンおよびインバシン);Bordetella spp(B.pertussis(例えば、ペルタクチン、百日咳毒素またはこれらの誘導体、繊維状血球凝集素、アデニレートシクラーゼ、線毛)、B.parapertussisおよびB.bronchisepticaが挙げられる);Mycobacterium spp.(M.tuberculosis(例えば、ESAT6、Antigen 85A、−Bまたは−C、MPT 44、MPT59、MPT45、HSP10、HSP65、HSP70、HSP75、HSP90、PPD 19kDa[Rv3763]、PPD 38kDa[Rv0934])、M.bovis、M.leprae、M.avium、M.paratuberculosis、M.smegmatis;Legionella spp(L.pneumophilaが挙げられる);Escherichia spp(腸管毒性E.coli(例えば、コロニー形成因子、熱不安定毒素またはその誘導体、熱安定性毒素またはその誘導体)、腸出血性E.coli、腸病原性E.coli(例えば、シガ毒素様毒素またはその誘導体)が挙げられる);Vibrio spp(V.cholera(例えば、コレラ毒素またはその誘導体)が挙げられる);Shigella spp(S.sonnei、S.dysenteriae、S.flexneriiが挙げられる);Yersinia spp(Y.enterocolitica(例えば、Yopタンパク質)、Y.pestis、Y.pseudotuberculosisが挙げられる);Campylobacter spp(C.jejuni(例えば、毒素、アドヘシンおよびインバシン)およびC.coliが挙げられる);Salmonella spp(S.typhi、S.paratyphi、S.choleraesuis、S.enteritidisが挙げられる);Listeria spp.(L.monocytogenesが挙げられる);Helicobacter spp(H.pylori(例えば、ウレアーゼ、カタラーゼ、空砲形成毒素(vacuolating toxin)が挙げられる);Pseudomonas spp.(P.aeruginosaが挙げられる);Staphylococcus spp.(S.aureus、S.epidermidisが挙げられる);Enterococcus spp.(E.faecalis、E.faeciumが挙げられる);Clostridium spp.(C.tetani(例えば、破傷風毒素およびその誘導体)、C.botulinum(例えば、ボツリヌス毒素及びその誘導体)、C.difficile(例えば、クロストリジウム毒素AまたはBおよびこれらの誘導体)が挙げられる);Bacillus spp.(B.anthracis(例えば、ボツリヌス毒素およびその誘導体)が挙げられる);Corynebacterium spp.(C.diphtheriae(例えば、ジフテリア毒素およびその誘導体)が挙げられる);Borrelia spp.(B.burgdorferi(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.garinii(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.afzelii(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.andersonii(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.hermsiiが挙げられる);Ehrlichia spp.(E.equiおよびヒト顆粒球性エールリヒア症の因子が挙げられる);Rickettsia spp.(R.rickettsiiが挙げられる);Chlamydia spp.(C.trachomatis(例えば、MOMP、ヘパリン結合タンパク質)、C.pneumoniae(例えば、MOMP、ヘパリン結合タンパク質)、C.psittaciが挙げられる;Leptospira spp.(L.interrogansが挙げられる);Treponema spp.(T.pallidum(例えば、稀な外膜タンパク質)、T.denticola、T.hyodysenteriaeが挙げられる);あるいは抗原は、以下のような寄生生物に由来しうる:Plasmodium spp.(P.falciparumが挙げられる);Toxoplasma spp.(T.gondii(例えば、SAG2、SAG3、Tg34)が挙げられる);Entamoeba spp.(E.histolyticaが挙げられる);Babesia spp.(B.microtiが挙げられる);Trypanosoma spp.(T.cruziが挙げられる);Giardia spp.(G.lambliaが挙げられる);Leshmania spp.(L.majorが挙げられる);Pneumocystis spp.(P. cariniiが挙げられる);Trichomonas spp.(T.vaginalisが挙げられる);Schisostoma spp.(S.mansoniが挙げられる)。あるいは抗原は、以下の酵母に由来してもよい:Candida spp.(C.albicansが挙げられる);Cryptococcus spp.(C.neoformansが挙げられる)。
【0087】
M.tuberculosisに関する他の好ましい特定の抗原は、例えば、以下である:
【0088】
【化1】

M.tuberculosisのタンパク質はまた、融合タンパク質およびその改変体を含み、ここで少なくとも2つ、好ましくは3つのM.tuberculosisポリペプチドが、より大きなタンパク質に融合される。好ましい融合物としては、以下が挙げられる:
【0089】
【化2】

Chlamydiaについての最も好ましい抗原としては、例えば、高分子量タンパク質(HWMP)(WO99/17741)、ORF3(EP 366412)および推定膜タンパク質(Pmp)が挙げられる。ワクチン処方物の他のChlamydia抗原は、WO99/28475に記載される群から選択されうる。
【0090】
好ましい細菌ワクチンは、Streptococcus spp.(S.pneumoniae(PsaA、PspA、ストレプトリジン、コリン結合タンパク質)およびタンパク質結合ニューモリジン(pneumolysin)(Biochem.Biophys.Acta.1989,67,1007;Rubinsら、Microbial Pathogenesis,25,337−342)ならびにその変異無毒化誘導体(WO90/06951;WO99/03884)が挙げられる)由来の抗原を含む。他の好ましい細菌ワクチンは、Haemophilus spp.(H.influenzae B型(例えば、PRPおよびその結合体)、非典型H.influenzae(例えば、OMP26、高分子量アドヘシン、P5、P6、タンパク質Dおよびリポタンパク質D)が挙げられる)に由来する抗原、フィンブリンおよびフィンブリン由来ペプチド(US5,843,464)または複数コピー改変体、あるいはこれらの融合タンパク質が挙げられる。
【0091】
本発明において使用されうる抗原は、マラリアを引き起こす寄生生物に由来する抗原をさらに含みうる。例えば、Plasmodia falciparumに由来する好ましい抗原としては、RTS、SおよびTRAPが挙げられる。RTSは、B型肝炎ウイルスの表面(S)抗原に、B型肝炎表面抗原のpreS2部分の4アミノ酸を介して連結されたP.falciparumのスポロゾイト周囲タンパク質(CS)のC末端部分の実質的に全てを含むハイブリッドタンパク質である。その完全構造は、英国特許出願第9124390.7の優先権を主張する国際特許出願番号PCT/EP92/02591(番号WO93/10152の下で公開)に開示される。酵母において発現される場合に、RTSは、リポタンパク質粒子として生成され、HBV由来のS抗原と一緒に発現される場合には、RTS、Sとして既知の混合粒子を生じる。TRAP抗原は、国際特許出願番号PCT/GB89/00895(WO90/01496の下で公開)において記載される。本発明の好ましい実施形態は、マラリアワクチンであり、ここでこの抗原性調製物は、RTS、SおよびTRAP抗原の組み合わせを含む。おそらく多段階のマラリアワクチンの成分でありそうな他のプラスモディウムの抗原は、P.faciparum MSP1、AMA1、MSP3、EBA、GLURP、RAP1、RAP2、Sequestrin、PfEMPl、Pf332、LSA1、LSA3、STARP、SALSA、PfEXP1、Pfs25、Pfs28、PFS27/25、Pfs16、Pfs48/45、Pfs230およびPlasmodium spp.におけるこれらのアナログである。
【0092】
本発明のワクチンは、アレルギーまたは感染性疾患に加えて慢性障害の予防または治療のためにも使用されうる。このような慢性障害は、喘息、アテローム硬化症およびアルツハイマー病および他の自己免疫障害の様な疾患である。避妊薬としての使用のためのワクチンもまた、考えられ得る。
【0093】
アルツハイマー神経変性疾患に罹患しやすいまたはこの疾患に罹患している患者の予防および治療に関連した抗原は、特に、N末端の39〜43アミノ酸フラグメント(AB アミロイド前駆タンパク質およびより小さなフラグメント)である。この抗原は、国際特許出願番号番号WO99/27944(Athena Neurosciences)に開示される。
【0094】
自己免疫障害のためのワクチンまたは避妊用ワクチンとして含まれうる潜在的な自己抗原としては、以下が挙げられる:サイトカイン、ホルモン、増殖因子または細胞外タンパク質、より好ましくは、4−ヘリカル(helical)サイトカイン、最も好ましくは、IL13である。サイトカインとしては、例えば、IL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9,IL10、IL11、IL12、IL13、IL14、IL15、IL16、IL17、IL18、IL20、IL21、TNF、TGF、GMCSF、MCSFおよびOSMが挙げられる。4−ヘリカルサイトカインとしては、IL2、IL3、IL4、IL5、IL13、GMCSFおよびMCSFが挙げられる。ホルモンとしては、include、例えば、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、絨毛性ゴナドトロピン(CG)、VGF、グレリン、agouti、agouti関連タンパク質および神経ペプチドYが挙げられる。増殖因子としては、例えば、VEGFが挙げられる。
【0095】
(IV.プライミング調製物および追加免疫調製物)
プライミング調製物において使用される核酸は、RNAまたはDNA(ゲノムDNA、合成DNAまたはcDNAが挙げられる)であり得る。好ましくは、そのヌクレオチド配列は、DNA配列であり、最も好ましくは、cDNA配列である。哺乳動物内での抗原性ペプチドの発現を得るために、その抗原性ペプチドをコードするヌクレオチド配列が適切なベクター系中に与えられることが必要である。「適切なベクター」とは、本明細書で使用される場合、その抗原性ペプチドが、免疫応答を誘起するに十分な量で哺乳動物内で発現されることを可能にする任意のベクターを意味する。
【0096】
例えば、その選択されるベクターは、プラスミド、ファージミドまたはウイルスベクターであり得る。そのベクターは、その抗原性ペプチドの発現を得るために正しい順序で配置された、プロモーターおよびポリアデニル化/転写終結配列を含み得る。これらの成分および必要に応じて他の成分(例えば、エンハンサー、制限酵素部位および選択遺伝子(例えば、抗生物質耐性遺伝子))を含むベクターの構築は、当業者に周知であり、Maniatisら「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」,Cold Spring Harbour Laboratory,Cold Spring Harbour Press,1−3巻き,第2版,1989に詳細に説明されている。
【0097】
抗原性ペプチドをコードする核酸を有するベクターは、種々の様式で投与され得る。そのベクターを、適切な媒体(例えば、緩衝化生理食塩水溶液(例えば、PBS))に懸濁し、次いで、筋肉内、皮下、皮内または粘膜に注射することで、裸の形態(すなわち、リポソーム処方物とも、ウイルスベクターとも、トランスフェクション促進タンパク質とも会合していない裸のヌクレオチド配列)で投与することが可能である。ベクターを、鼻経路または肺経路を介する投与のために、例えば、リポソームにまたはポリラクチドコ−グリコリド(PLG)粒子内に(25)包むことがさらに可能である。
【0098】
本発明の一実施形態によれば、ベクターの皮内投与、好ましくは、遺伝子銃(特にパーティクルボンバードメント)投与技術の使用を介した投与についても可能である。このような技術は、金ビーズの上にベクターをコーティングし、次いでこれを、例えば、Haynesら、J.Biotechnology 44:37−42(1996)に記載されるように表皮に高圧で投与することを包含し得る。
【0099】
組換えウイルスベクターはまた、DNA抗原を送達するために使用され得る。このアプローチの利点としては、複数の細胞型におけるDNAコードタンパク質の豊富な発現、CTL応答の大きな増強およびウイルスが複数の遺伝子をコードする能力が挙げられる。ワクシニアウイルス(改変ウイルスAnkaraを含む)およびアデノウイルス(非複製性)は、ワクチン開発に利用されている、2つの普及しているウイルスである(Im and Hanke,Expert,Rev.Vaccines 3:S89−S97(2004);Basakら,Viral Immunol.17:182−196(2004))。
【0100】
DNAワクチンの最近の改変は、単一のCTLエピトープをコードするミニ遺伝子の開発、MHC経路によるエピトープのより効率的な提示を可能にする遺伝子にコードされる標的化シグナルの使用およびMHCクラスII経路を標的とする分泌タンパク質の生成が挙げられる(Doria−RoseおよびHaigwood,Methods 31:207−216(2003);Leifertら,Immunol.Rev.199:40−53(2004))。
【0101】
プライミング調製物および追加免疫調製物は、予防的または治療的に有効であるような量で投与される。その正確な量は、免疫される動物の種および体重、投与経路、プライミング調製物および追加免疫調製物の効力および用量、処置または防御される疾患状態の性質、免疫応答を生じる被験体の免疫系の能力ならびに望ましい防御効力または治療効力の程度に依存して、かなり変動し得る。これらの変数に基づいて、医師または獣医師は、適切な投薬レベルを容易に決定し得る。
【0102】
本発明の方法およびキットはまた、当該分野で公知の1種以上のアジュバントを追加して、実施されることが企図される。アジュバントは、免疫細胞の活性を調節することによって、抗原に対する特異的免疫応答を増大する物質または手順である。例示的なアジュバントとしては、塩ベースのアジュバント(例えば、ミョウバン塩)、リポ多糖および細菌毒素のような細菌由来アジュバント、抗原の緩慢な放出を可能にするアジュバントエマルジョン、同時刺激分子に対するアゴニスト抗体、フロイントアジュバント、ムラミルジペプチド、および組換え/合成アジュバントが挙げられる。ミョウバンは、タンパク質ワクチンに対する免疫応答を刺激するために使用される最も一般的な塩ベースのアジュバントであり、米国でヒトでの使用について認可されている唯一のアジュバントである(Alving,Vaccine 20(3):S56−S64(2002);Hunter,Vaccine 20(3):S7−12(2002))。しかし、ミョウバンは、Th2に偏った応答に都合がよく、細胞媒介性免疫を刺激しない。粘膜免疫は、細菌毒素(例えば、コレラ毒素(CT)およびE.coli熱不安定性エンテロトキシン(LT))の使用を介して誘導され、が、これらのアジュバントの安全性には、疑問が残る(Alving,Vaccine 20(3):S56−S64(2002);Hunter,Vaccine 20(3):S7−12(2002))。より新しい、安全なアジュバントの開発は、最近では、特定の免疫応答経路を刺激することに焦点を当てている。サイトカイン(例えば、インターフェロン−γおよび顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF))の同時投与は、細胞性免疫応答を刺激することにおいて有望であることが示された((PetrovskyおよびAguilar,Immunol.Cell Biol.82:488−496(2004)において概説されている)。高レベルのサイトカインは、毒性を引き起こし得るが、投薬レジメンは、注意深く調節されなければならない。サイトカインの投与は、サイトカインおよび抗原をコードする遺伝子両方が、同じベクターによって同時に発現され得るDNAワクチン接種について特に有望である。探査されるさらなるアジュバントとしては、tollシグナル伝達経路を標的とするものが挙げられる。細菌DNAにおいて一般に見出されるCpG DNAモチーフは、細胞性免疫応答の強力なアクチベーターであり、より新たな世代のDNAベースのワクチンは、しばしば、複数のCpGモチーフをコードする((PetrovskyおよびAguilar,Immunol.Cell Biol.82:488−496(2004)において概説される)。
【0103】
(V.病原体)
用語「病原体」とは、本明細書で使用される場合、宿主細胞において感染を引き起こし、、任意のウイルス、細菌および寄生生物をいう。
【0104】
本発明は、広い範囲の病原体に対して宿主動物を効率的に免疫するために使用され得る。本明細書の教示に鑑みれば、当業者は、本発明の方法および組成物が、広い範囲のウイルス(例えば、レトロイドウイルス(retroid virus)、RNAウイルス、DNAウイルスおよびエンベロープウイルスに適用可能であることを理解する。一実施形態において、本発明は、レトロイドウイルスに適用可能である。別の実施形態において、本発明は、レトロウイルス(レトロウイルス科)にさらに適用可能である。なお別の実施形態において、本発明は、レンチウイルス(霊長類レンチウイルス群が挙げられる)に適用可能である。さらなる実施形態において、本発明は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)、B型肝炎ウイルス(HBV)、A型肝炎ウイルス(HAV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、およびヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)に適用可能である。
【0105】
限定されることは意図しないが、関連するレトロウイルスとしては、以下が挙げられる:カワカマスにおいてリンパ肉腫を引き起こすC型レトロウイルス、ミンクに感染するC型レトロウイルス、ヒツジに感染するヤギレンチウイルス、ウマ伝染性貧血ウイルス(Equine Infectious Anemia Virus(EIAV))、ブタに感染するC型レトロウイルス、トリ白血症肉腫ウイルス(ALSV)、ネコ白血病ウイルス(FeLV)、ネコエイズウイルス、ウシ白血病ウイルス(BLV)、サル白血病ウイルス(SLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV−I)、ヒトT細胞白血病II型ウイルス(HTLV−II)、ヒト免疫不全ウイルス2型(HIV−2)およびヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)。
【0106】
本発明の方法および組成物は、RNAウイルス(ssRNA(−)鎖ウイルスおよびssRNA(+)鎖ウイルスが挙げられる)にさらに適用可能である。このssRNA(+)鎖ウイルスとしては、C型肝炎ウイルス(HCV)が挙げられる。好ましい実施形態において、本発明は、モノネガウイルス目(フィロウイルスが挙げられる)に適用可能である。フィロウイルスは、エボラウイルスおよびマルブルグウイルスをさらに含む。他のRNAウイルスとしては、ピコルナウイルス(例えば、エンテロウイルス、ポリオウイルス、コクサッキーウイルスおよびA型肝炎ウイルス)、カリシウイルス(ノーウォーク様ウイルスが挙げられる)、ラブドウイルス(狂犬病ウイルスが挙げられる)、トガウイルス(アルファウイルス、セムリキ森林ウイルスが挙げられる)、デング熱ウイルス、黄熱病ウイルスおよび風疹ウイルス、オルソミクソウイルス(A型、B型、およびC型のインフルエンザウイルス)、ロタウイルス、ブンヤウイルス(リフトバレー熱ウイルスおよびハンタウイルスが挙げられる)、フィロウイルス(例えば、エボラウイルスおよびマルブルグウイルス)、およびパラミクソウイルス(流行性耳下腺炎ウイルスおよび麻疹ウイルスが挙げられる)が挙げられる。本発明の方法で処置され、他のウイルスとしては、単純ヘルペスウイルスI型(HSV1)、単純ヘルペスウイルスII型(HSV2)、炭疽菌、RSウイルス、コロナウイルス(SARSについての病原体)および口蹄疫ウイルス(FMDV)が挙げられる。処置され、さらなる病原体としては、クラミジアおよびマラリアを引き起こす寄生生物(Plasmodium falciparum、Plasmodium vivax、Plasmodium malariae、およびPlasmodium ovaleが挙げられる)が挙げられる。
【0107】
本発明に従う方法およびキットは、全ての動物(例えば、家畜、実験動物、農耕用動物(farm animal)、捕獲された野生動物および最も好ましくは、ヒトが挙げられる)の予防手順または処置手順に関連して使用され得る。
【0108】
本発明の方法およびキットは、治療的ワクチン接種に有用である。この治療的ワクチン接種の目的は、ウイルスに既に感染した細胞を根絶するために、感染した個体における免疫応答を標的とすることである。強い免疫応答を刺激することなく慢性感染を確立するウイルスは、新規な治療的ワクチン接種ストラテジーの作製を必要とする((Berzofskyら,J.Clin.Invest.114:450−462(2004)に概説される)。ヒトパピローマウイルス(HPV)、B型肝炎ウイルスおよびC型肝炎ウイルス(HBV、HCV)、ヘルペスウイルスおよびヒト免疫不全ウイルス(HIV)が、長期間の感染を確立する多くのウイルスである。ウイルスのための治療的ワクチンの開発は、感染細胞を認識かつ破壊するために、CTLの活性化に焦点を当てた。出願人は、本発明の方法が、細胞性免疫応答を増強する際に有効であり、そのことによって、治療的ワクチン接種を提供するために適切にされることを示した。この方法の有効性は、サイトカインアジュバントおよびCpGモチーフ(これは、抗癌ワクチンの開発において特に有望であることが示された(Belardelliら,Cancer Res.64:6827−6830(2004))を含めることによってさらに増強され得る。
【0109】
本発明のワクチンは、疾患(例えば、慢性状態)の免疫治療的処置に特に適しているが、持続性の感染の治療のためにも適している。従って、本発明のワクチンは、感染性疾患(例えば、結核(TB)、HIV感染(例えば、AIDS)およびHBV感染)の免疫療法に特に適している。
【0110】
(VI.リポソーム調製物)
本発明はまた、粘膜部位を介したワクチン適用のためのリポソームベースの抗原送達プラットフォーム技術を提供する。本発明は、よりバランスのとれたTh応答、または混合されたTh応答を達成するために、リポソーム封入技術、粘膜部位への特異的送達、ならびにアジュバントおよび異種免疫プロトコルの使用を組み合わせる。
【0111】
リポソームは、ワクチンのための送達プラットフォームとしてのいくつかの潜在的利点を有する。リポソーム内での抗原の封入は、これらの抗原を隔離し、従って、リポソームは、抗原の持続放出を行い得る抗原デポーとして作用する。さらにリポソームは生体適合性でかつ生分解性であり、毒性および免疫原性が低い。適切なサイズ(例えば、0.2μmより大きく5μmまで)にされた場合、リポソームは、抗原提示細胞によって身体中に選択的に取り込まれ、体液性抗体およびCTL応答の両方を誘導する可能性を有する。リポソームは、抗原キャリア/ビヒクルとして作用し、かつ毒性も免疫原性もなく繰り返し投与され得るアジュバントである。
【0112】
リポソームは、通常は形状が球状の、生物起源または合成起源のリン脂質から構成される膜二重層からなる構造体である。リン脂質または脂質が水と接触したとき、リポソームは自然に形成される。リポソームの構造は、熱、超音波エネルギー、凍結−融解サイクル、または剪断力の形態でのエネルギーの投入を含め、実験室においてこれらを形成する方法によって操作され得る。リポソームは生物学的膜の特徴を有するので、リポソームは、種々の生物学的および治療的に適切な複合分子(タンパク質を含む)を含むように、実験室において操作され得る。リポソームのリン脂質二重層は、内部水性コア中に封入された物質を外側から分離して保護する。水溶性物質および水不溶性物質は両方とも、それぞれ、同じリポソームの異なる区画(水性コアおよび二重層膜)に封入され得る。これらの物質の化学的および物理的な相互作用は、除去され得る。なぜなら、これらの物質は、これらの異なる区画に存在するからである。
【0113】
本発明の方法およびキットとともに用いられるリポソームは、当該分野で公知の任意の方法を用いて調製され得る。これらのリポソームは、約0.5〜5ミクロンの平均直径を有し得るが、0.2〜8ミクロンのリポソームもまた有用であり得る。特定の実施形態では、本発明の方法およびキットにおいて用いられ得るリポソームは、1以上の特化された脂質(リポソームに取り込まれた場合に、このような特化された脂質を欠くリポソームと比較して長期化された循環寿命をもたらす)を含むリポソームである、「長期循環性リポソーム」(「立体的に安定化されたリポソーム」としても公知)である。当該分野で公知の長期循環性リポソームの例としては、(A)リポソームが1以上の糖脂質(例えば、モノシアロガングリオシドGM1)を含むリポソーム、または(B)リポソームが、1以上の親水性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)部分)で誘導体化された1以上の脂質を含むリポソームが挙げられる。何らかの理論によって束縛されることを望まないが、少なくとも、ガングリオシド、スフィンゴミエリンまたはPEG誘導体化脂質を含む長期循環性リポソームについては、これらのリポソームの長期化した循環半減期は、細網内皮系(RES)の細胞への取り込みの減少から得られる(Allenら,FEBS Letters,1987,223,42;Wuら,Cancer Research,1993,53,3765)。
【0114】
A.糖脂質含有リポソーム:1以上の糖脂質を含む種々のリポソームが当該分野で公知である。Papahadjopoulosら(Ann.N.Y.Acad.Sci.,1987,507,64)は、モノシアロガングリオシドGM1、硫酸ガラクトセレブロシドおよびホスファチジルイノシトールがリポソームの血中半減期を改善する能力を報告した。これらの知見は、Gabizonら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1988,85,6949)によって説明された。米国特許第4,837,028号および公開されたPCT出願WO 88/04924(両方とも、Allenらに対するもの)は、(1)スフィンゴミエリンを含むリポソームおよび(2)ガングリオシドGM1または硫酸ガラクトセレブロシドエステルを含むリポソームを開示する。米国特許第5,543,152号(Webbらに対するもの)は、スフィンゴミエリンを含むリポソームを開示する。1,2−sn−ジミリストイルホスファチジルコリンを含むリポソームは、公開されたPCT出願WO 97/13499(Limらに対するもの)において開示される。
【0115】
B.親水性ポリマーで誘導体化されたリポソーム:1以上の親水性ポリマーで誘導体化された脂質を含む多くのリポソーム、およびそれらの調製方法は、当該分野で公知である。Sunamotoら(Bull.Chem.Soc.Jpn.,1980,53,2778)は、PEG部分を含む非イオン性界面活性剤2C1215Gを含むリポソームを記載した。Illumら(FEBS Letters,1984,167,79)は、ポリマーグリコールでのポリスチレン粒子の親水性コーティングが、有意に長期化された血中半減期をもたらすことに注目した。ポリアルキレングリコール(例えば、PEG)のカルボン酸基の結合によって改変された合成リン脂質およびこのようなリン脂質を含むリポソームは、Sears(米国特許第4,426,330号および同第4,534,899号)によって記載される。Klibanovら(FEBS Letts.,1990,268,235)は、PEGまたはPEGステアレートで誘導体化されたホスファチジルエタノールアミン(PE)を含むリポソームが、血中循環半減期の有意な増加を有することを実証する実験を記載した。Blumeら(Biochimica et Biophysica Acta,1990,1029,91)は、このような観察を、他のPEG誘導体化リン脂質(例えば、DSPE(ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン)へのPEGの化学的結合から形成される、DSPE−PEG)に拡大した。
【0116】
PEG部分がその外部表面に共有結合したリポソームは、欧州特許第0 445 131号B1および公開されたPCT出願WO 90/04384(Fisherに対するもの)に記載される。PEGで誘導体化されたPEを1〜20モルパーセント(mol%)含むリポソーム組成物、およびその使用方法は、Woodleら(米国特許第5,013,556号および同第5,356,633号)およびMartinら(米国特許第5,213,804号および欧州特許第EP 0 496 813号B1)によって記載される。多数の他の脂質−ポリマー結合体を含むリポソームは、公開されたPCT出願WO 91/05545および米国特許第5,225,212号(両方とも、Martinらに対するもの)、ならびに公開されたPCT出願WO 94/20073(Zalipskyら)に開示される。PEGで改変されたセラミド脂質を含むリポソームは、公開されたPCT出願WO 96/10391(Choiら)に記載される。米国特許第5,540,935号(Miyazakiら)および同第5,556,948号(Tagawaら)は、官能性部分でその表面がさらに誘導体化され得るPEG含有リポソームを記載する。
【0117】
C.DMPG含有リポソーム:ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)を含む種々のリポソームが記載されている。しかし、一般的に、このようなリポソームは、約10%以上のmol%のDMPGを含む(例えば、Akhtarら(Nucl.Acids Res.,1991,19,5551);Yachiら(Biopharm.Drug Dispos.,1996,17,699);およびFarmerら(Meth.Enz.,1987,149,184)を参照のこと)。3mol%のDMPGを有するリポソームが記載されているが、このようなリポソームは、本発明のリポソーム組成物中に見出されない成分(特に、ホスファチジルコリン誘導体)を含んでいた。このようなホスファチジルコリン誘導体成分としては、例えば、10mol%ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)(Brodtら,Cancer Immunol.Immunother.,1989,28,54)または7mol%ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)(Perez−Solerら,J.Nuclear Med.,1985,26,743;Wasanら,Antimicrobial Agents and Chemotherapy,1993,37,246;およびLiら,Oncology Res.,1995,7,611)が挙げられる。
【0118】
リポソーム調製物は、新たに調製されるかまたは長期保存のために凍結乾燥されるかのいずれかであり得る。両方の調製物は、匹敵する有効性で用いられ得る。本発明の方法において用いられるリポソームは、全く同じ(例えば、同じ組成または同じサイズ)であってもよく、または1種類より多くの種類のリポソームを含んでもよい。
【0119】
特定の実施形態では、市販のリポソームが用いられ得る。例えば、リポソームは、Northern Lipids Inc.(Vancouver,BC)(脂質ベースのリポソーム処方物の開発に特化した契約研究機関)によって契約の下、作製され得る。特定の他の実施形態では、種々のサイズのリポソームは、下記の方法論を用いて調製され得る。得られるリポソームは、特定の調製プロトコルに依存して、代表的に、マイクロフルイダイザーを通して調製物を通すことにより、4μm、1μm、または0.2μmにサイズ合わせされる。手短には、リポソームを、以下の脂質濃度で調製した:ホスファチジルコリン/コレステロール/ジセチルホスフェートが7/3/0.5モル%。抗原(例えば、HBsAg)は、免疫応答を試験するために、いくつかの濃度で多層リポソームに取り込まれる。平均60%のHBsAgが、以下の実施例においてリポソームに取り込まれた。リポソームのサイズをまた、N4 MC Submicron Particle Size Analyzer(Coulter Electronics)を用いて測定した。4μmのサイズのリポソームの代表的プロファイルを図1に示す。1つの実施形態では、リポソーム:タンパク質比は、15μgのHBsAgを封入するために通常用いられる含有量の1/2および1/3に減少した。特定の実施形態では、抗原調製物は、保存のために凍結乾燥され得、次いで使用前に再構成され得る。サイズおよびζ電位(ゼータ、電荷の尺度)の両方が使用前に測定され得る。ζ電位は、Zeta−Puls ζ電位分析器(Brookhaven Instruments)を用いて決定された。脂質:抗原タンパク質比は、特定の抗原(例えば、HBsAg)に対する免疫応答におけるこの比の重要性を決定するために、いくつかの調製物において変動され得る。
【0120】
(A.2〜4μmのサイズ範囲を有するリポソームについての基本的方法)
本発明のリポソームを、以下の脂質濃度で調製した:ホスファチジルコリン/コレステロール/ジセチルホスフェートが7/3/0.5モル%。ジセチルホスフェートを、クロロホルム+5%エタノールに溶解し、超音波処理し、次いでホスファチジルコリンおよびコレステロールを添加した。脂質をLabconcoロータリーエバポレーターにおいて1時間乾燥し、そして痕跡量のクロロホルムを、Freezone 4.5 Freeze Dry Systemを一晩用いた凍結乾燥によって除去した。脂質薄膜を、10mM HEPES−緩衝液、150mM NaCl(pH7.4)(HBS)中の125〜300μg/mlの濃度の抗原(例えば、B型肝炎表面抗原(HBsAg))とともに水和し、そして0.2μmナイロンフィルターで濾過した。この混合物を徹底的にボルテックスし、そして1時間沈降させ、次いで再度ボルテックスして、多層小胞の形成を確実にした。次いで、得られたリポソームを3サイクルの凍結−融解に供した(1サイクル=1時間の凍結および室温での1時間の融解)。リポソームのサイズを、N4 MD Submicron Particle Size Analyzer(Coulter Electronics)を用いて測定した。ζ電位を、Zeta−Puls ζ電位分析器(Brookhaven Instruments)を用いて、5mM HEPES緩衝液、1.0mM NaCl(pH7.4)中で測定した。
【0121】
(B.1.0μmのサイズのリポソーム)
本発明のリポソームを、以下の脂質濃度で調製した:ホスファチジルコリン/コレステロール/ジセチルホスフェートが7/3/0.5モル%。ジセチルホスフェートを、クロロホルム+5%エタノール中に溶解し、超音波処理し、次いでホスファチジルコリンおよびコレステロールを添加した。脂質をLabconcoロータリーエバポレーターにおいて1時間乾燥し、そして痕跡量のクロロホルムを、Freezone 4.5 Freeze Dry Systemを一晩用いた凍結乾燥によって除去した。脂質薄膜を、10mM HEPES−緩衝液、150mM NaCl(pH7.4)中の125〜300μg/mlの濃度の抗原(例えば、HBsAg)とともに水和し、そして0.2μナイロンフィルターで濾過した。この混合物を徹底的にボルテックスし、そして1時間沈降させ、次いで再度ボルテックスして、多層小胞の形成を確実にした。次いで、このリポソームを3サイクルの凍結−融解に供した(1サイクル=1時間の凍結および室温での1時間の融解)。第3サイクルの後、リポソームを水浴中で50℃まで温め、そして携帯型Avanti−マイクロエクストルーダを用いて、1.0μmの孔サイズを有するポリカーボネートフィルターを通して押出した。リポソームのサイズを、上記の通りに測定した。
【0122】
(C.0.2μmのサイズを有するリポソーム)
本発明のリポソームを、以下の脂質濃度で調製した:ホスファチジルコリン/コレステロール/リン酸ジセチル 7/3/0.5モル%。リン酸ジセチルを、クロロホルム+5%のエタノール中に溶解させ、超音波処理し、次いで、ホスファチジルコリンおよびコレステロールを添加した。脂質をLabconcoロータリーエバポレーターで1時間乾燥させ、クロロホルムの痕跡をFreezone 4.5凍結乾燥システムを用いて一晩凍結乾燥することによって除去した。脂質フィルムを、10mM HEPES緩衝液、150mM NaCl(pH7.4)中の125μg/ml〜300μg/mlの濃度で抗原(例えば、HBsAg)を用いて水和し、0.2μmのナイロンフィルターで濾過した。その混合物を徹底的にボルテックスし、1時間静置し、次いで、再度ボルテックスして多重膜の小胞の形成を確実にした。次いで、そのリポソームを3サイクルの凍結−解凍(1サイクル=1時間凍結させ、室温で1時間解凍する)に供した。3回目のサイクルの後、リポソームを水浴中で50度に温め、手持ち式のAvanti押出し成形機を用いて最初に1.0μmの孔径、次いで0.4μmの孔径、最後に0.2μmの孔径を有するポリカーボネートフィルターを通して押し出した。次いで、リポソームのサイズを上記のように測定した。
【0123】
(D.凍結乾燥リポソームの調製)
本発明のリポソームを以下の脂質濃度で調製した:ホスファチジルコリン/コレステロール/リン酸ジセチル 7/3/0.5モル%。リン酸ジセチルを、クロロホルム+5%のエタノール中に溶解させ、超音波処理し、次いで、ホスファチジルコリンおよびコレステロールを添加した。脂質をLabconcoロータリーエバポレーターで1時間乾燥させ、クロロホルムの痕跡をFreezone 4.5凍結乾燥システムを用いて一晩凍結乾燥することによって除去した。脂質フィルムを、100mg/mlのマルトースを含むHBS中の125μg/ml〜300μg/mlの濃度で抗原(例えば、HBsAg)を用いて水和し、0.2μmのナイロンフィルターで濾過した。その混合物を徹底的にボルテックスし、1時間静置し、次いで、再度ボルテックスして多重膜の小胞の形成を確実にした。次いで、そのリポソームを3サイクルの凍結−解凍(1サイクル=1時間凍結させ、室温で1時間解凍する)に供した。リポソームのサイズを測定し、リポソームをFreezone 4.5凍結乾燥システムを用いて一晩凍結乾燥した。凍結乾燥リポソームを、必要な抗原濃度に達するように、対応する量の水とともにボルテックスすることによって再構成した。
【0124】
(VII.アッセイ)
以下のアッセイは、本発明の特定の工程を行うために必要とされ得る。通常、当業者が認識するように、異なるが機能的に等価な多くのアッセイが、同一の目的を達成するために使用され得る。従って、具体的に記載されるアッセイのいずれも、明確に記載されない限り限定するものではない。
【0125】
(A.酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA))
免疫したマウスの収集したサンプルにおける抗HBsAg特異的抗体応答(例えば、Ig、IgG、IgA、IgG1およびIgG2a)を、ELISAによって試験した。3層の(抗原−試験サンプルまたはIg標準物質−HRP結合検出抗体)ELISAを、Ig、IgG、IgG1およびIgG2a抗体を試験するために設計した。10μg/mlの純粋なHBsAg(50μl)(Advanced Immune Chemical)を、96ウェルのELISAプレートにコーティングした。血清または分泌サンプルの連続希釈物を、遮断工程の後に添加した。ヤギ抗マウスIg(H+L)−HRP、ヤギ抗マウスIgG−HRP、ヤギ抗マウスIgG1−HRPおよびヤギ抗マウスIgG2a−HRP(SouthernBiotech)を検出抗体として使用して、サンプル中の抗HBsAg特異的Ig、IgG、IgG1およびIgG2aをそれぞれ試験した。連続希釈したIgG、IgG1およびIgG2a標準物質を使用して、それぞれ、IgG、IgG1およびIgG2a抗体ELISAについての標準曲線を作成した。5層捕捉ELISAを用いて、マウスIgAおよびマウスIgGについて粘膜サンプルを試験した。4mg/mlのラット抗マウスIgA捕捉抗体(50μl)をELISAプレートにコーティングして、血清および粘膜(糞便、膣、肺洗浄物および唾液)部位からIgA抗体を捕捉した。2μg/mlの精製HBsAg(100μl)を添加して、抗HBsAg特異的IgA抗体に結合させる。ヤギ抗HBsAgを使用して、上記工程において捕捉されたHBsAgに特異的に結合させる。ロバ抗ヤギIgA−HRPが、基質−TMBからの発色前の最終的な検出抗体であった。粘膜IgGの検出のために、ラット抗マウスIgG抗体を捕捉抗体として使用し、その後、HBsAg、ヤギ抗HBsAgおよびロバ抗ヤギIgG−HRPを、IgA ELISAで使用したのと同じ濃度で使用した。
【0126】
(B.IgG抗体アビディティの測定)
HBsAg特異的IgG抗体のアビディティを、定量的ELISAアビディティアッセイを用いて評価する。アッセイを、抗原−抗体相互作用を妨げるためにカオトロピック試薬の尿素を追加して、IgG抗体についての最適条件を用いて実施する。一貫した正確な結果を保証するために、試験したサンプル希釈物中のIgGの相対量は、100ng/ml〜150ng/mlであり、これは、標準曲線の直線で定量的な部分の範囲内である。希釈したサンプルを、最初にHBsAgをコーティングしたELISAプレート上で室温にて1時間インキュベートして、抗原−抗体結合を生じさせる。ウェルを洗浄し、続いて標準的なELISA緩衝液(0.05% Tween−20および1%ウシ血清アルブミンを含むPBS)またはELISA緩衝液中の種々の濃度の尿素とともに室温で15分間インキュベートする。さらに洗浄した後、ELISAを従来のとおりに行う。アビディティ指標(AI)を、以下の式に従って計算する:尿素の非存在下でのIgG(ng/ml)/尿素の存在下でのIgG(ng/ml)。
【0127】
(C.ELISPOT(酵素結合免疫SPOT)アッセイによるIFN−γおよびIL−10分泌細胞の検出)
免疫したマウスおよび無刺激マウス由来の脾臓または末梢血液細胞を、ELISPOTアッセイによるIFN−γおよびIL−10分泌細胞の測定のために、インビトロで培養した。ELISPOTアッセイを、市販の抗体ペアおよび試薬(BD Pharmingen)ならびにMultiscreen−IPマルチウェルELISPOTプレート(Millipore、Hopkington、MA)を用いて確立した。インビトロ培養物を、1mlあたり10μg/2.5×10細胞の濃度にてHBsAgペプチドで20〜22時間刺激した。ペプチドを含まない培養物をネガティブコントロールとして使用し、抗CD3またはCon Aで刺激した培養物をポジティブコントロールとして使用した。この研究からのIFN−γおよびIL−10 ELISPOTプレートを、Cellular Technology Ltd.(Cleveland、OH)によって、スポットの頻度およびスポットサイズの両方について、この目的のために設計されたデジタルプレートリーダーおよびソフトウェアを用いて定量的に分析した。
【0128】
(D.インビボCTL細胞毒性アッセイ)
インビボCTLアッセイは、免疫した動物におけるCTL活性を測定することについて最近文献に記載されている(参考文献:Estcourt,M.J.ら、2002、Int.Immunol.14(1):31−37;Barber,D.L.ら、2003、J.Immunol.171:27−31;Kumaraguru,U.ら、2004、J.Immunol.172:33719−3724)。このインビボアッセイは、2ラウンドのHBsAg−DNAワクチンIM、その後、本発明のリポソーム調製物(例えば、HBsAg−リポソーム)INを与えたマウスを使用する。抗体応答の測定のためにサンプル収集を完了した後(INブーストの6週間もしくはそれ以上の期間後)、マウスにDNAブーストを与え、記憶T細胞を活性化エフェクター細胞に動員する。7日〜12日後、動員したエフェクター細胞の活性を、これらの細胞がマウスに静脈内養子移入されるHBsAgペプチドでパルスした標的を特異的に殺傷する能力を決定することによって定量する。マウスに、生体内色素であるCFSE(FITCチャネルにおける蛍光放射)で差次的に標識される無刺激マウス由来の2つの細胞集団(ペプチドでパルスされないCFSElow細胞、およびHBsAg由来のL(d)−限定的免疫優性ペプチド(HBsAgの28〜39)でパルスされるCFSEhigh細胞)を与える。非パルスCFSElow集団と比較したペプチドパルスCFSEhigh集団の消失が、以下に示される式によるペプチド特異的殺傷の指標である。無刺激レシピエントのコホートにおけるこれら2つの集団のパーセンテージが、細胞移入についての内部標準として役立つ。このアッセイの概要を以下に示す。
________________________________________
標的細胞調製:
無刺激脾細胞:CFSElowで標識する。ペプチドでパルスしない。フローサイトメトリーによって標識を確認する。
無刺激脾細胞:CFSEhighで標識する。ペプチドでパルスしない。フローサイトメトリーによって標識を確認する。
同数のCFSElow細胞とCFSEhigh細胞とを混合する(各々、1〜1.5×10細胞)。
【0129】

インビボCTLアッセイ:
免疫したマウスおよび無刺激マウスの両方のコホートに細胞を静脈内移入する。
20〜24時間後、脾臓を採取し、フローサイトメトリーおよびELISPOTアッセイのために処理する。
【0130】

割合=CFSElow細胞 : CFSEhigh細胞のパーセンテージ

特異的溶解%=1−(無刺激マウスにおける割合/免疫したマウスにおける割合)×100
________________________________________。
【0131】
(E.HBsAgを発現する組換え生ワクシニアウイルス(VV−HBsAg)による鼻腔内チャレンジ後の保護粘膜免疫の測定)
B型肝炎ウイルスは、高度に種特異的であり、ヒトおよびいくつかの非ヒト霊長類のみに感染する。この問題を回避するために、HBsAgを発現する組換えウイルスを、マウスにおける生ウイルスチャレンジのために使用して、HBVワクチン接種プロトコルの保護効力を試験した。本発明者らは、ベクターHBsAg抗原を発現する遺伝子操作した弱毒化ワクシニアウイルス(VV−HBsAg)(これは、Bernard Moss博士、Laboratory of Viral Diseases、NIAID、NIH(Smith,MackettおよびMoss、1983、Nature 302:490−495)により快く提供された)を使用してマウスをチャレンジした。ウイルスチャレンジのために病原抗原を発現する組換えワクシニアウイルスを使用することの可能性および有用性は、C型肝炎およびHIVを含む数種のウイスル疾患モデルにおいて、マウスで最近実証されている(Pancholi,P.ら、2004、J.Virol.77(1):382−90;Marata,K.ら、2003、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100(11);Belyakov,IMら、1998、Proc.Natl.Acad.Sci USA 95(4):1709−14)。
【0132】
無刺激マウスまたは免疫したマウスを、50μlの容量中の2×10PFUのウイルスで鼻腔内感染させた。マウスを5日後に屠殺し、ウイスル力価を肺ホモジネート中で決定した。肺洗浄物および脾細胞もまた、CD8IFNγ表現型によって規定されるCTLの存在について評価した。
【0133】
(F.生VV−HBsAgを用いる鼻腔内チャレンジ後のCD8IFNγ表現型によるCTLの検出)
CTLは、十分に認識され標準化されたプロトコル(例えば、BD Biosciences、San Diego、CAによって提供される試薬およびキットを参照のこと)に従って、表面CD8細胞内IFNγ表現型によって規定され得る。これらの試薬を使用して、表現型によって規定されるCTLの頻度を、フローサイトメトリー分析によって決定した。この目的のために、肺および脾臓から回収した単核細胞をHBsAg CTLペプチド(HBsAgの28〜39)を用いてインビトロでゴルジインヒビターの存在下で5時間活性化し、蓄積した細胞内サイトカインの分泌を防いだ。次いで、製造業者の指針に従って、細胞をCD8について表面染色し、透過化処理し、そして細胞内IFNγを染色した。
【実施例】
【0134】
本発明は、以下の実施例によってさらに例証される。これらの実施例は、限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書および図面全体を通して引用されるすべての参考文献、特許、および公開特許出願の内容は、本明細書によって参考として援用される。
【0135】
以下の実施例において、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)を、本願リポソームベースワクチンのための例示的抗原として選択した。B型肝炎感染は、深刻な健康上のリスクであり、そして世界中の主要死亡原因のうちの1つである。HBsAgに対する抗体応答は、5%〜10%のヒトにおいて生存ウイルスによる感染に対する保護を付与することが公知である。HBsAgは、充分に特徴付けられた抗原である。この抗原は、多数のT細胞エピトープおよびB細胞エピトープを含む。これらのエピトープによって、この抗原は、マウスにおける免疫応答を実証するための適切なモデル抗原となる。さらに、組換えB型肝炎ウイルスタンパク質および遺伝子発現構築物もまた、市販されている。これによって、高価な試薬を開発する必要性が排除される。しかし、本発明は、このHBsAgワクチンに限定されると解釈されるべきではない。むしろ、本発明は、広範囲の病原体(種々のウイルスおよび細菌を含む)における広範な使用を有する。
【0136】
(実施例1:抗体応答に対するプライムおよびブースト免疫プロトコルの効果)
宿主動物(例えば、CD1マウスまたはBalb/cマウス)を免疫するために、本願HBsAg−リポソーム調製物を使用する一次免疫を、0週目にその動物に投与した。6週目に、HBsAg−リポソーム二次ブースト免疫を、投与した。
【0137】
ワクチン送達プラットフォームを最適にするために、本発明者らは、実施例1〜5において概説されるような、種々の免疫ストラテジーを使用していくつかの実験を実施した。この一連の実験において、リポソームを、4μmの大きさにした。この大きさは、タンパク質抗原に対する免疫応答を刺激する際に有効であると報告されている。最初の実験は、以下のパラメーターを試験した:2回の免疫(0週目および6週目のプライムおよびブースト)に対する1回の免疫(0週目のプライム)の影響(実施例1);抗体応答の速度論(実施例2);HBsAg−リポソーム調製物の用量(実施例3:3μg/マウスまたは15μg/マウス);投与経路(実施例4:鼻内経路または筋肉内経路);ならびにワクチンの物理的形態(実施例5:新鮮なワクチンまたは凍結乾燥ワクチン)。サンプルを、体液性免疫応答および粘膜免疫応答の分析のために、示された時点に収集した。
【0138】
ネガティブコントロールは、未刺激マウス、リポソーム単独、およびHBsAgタンパク質単独を包含した。動物にはまた、ポジティブコントロールとして、3μg GSKワクチン(GSK Biologicalsから得たEngerixTM−B、すなわち「GSK HBsAg」)を筋肉内免疫した。非近交系の遺伝的に不均質なCD1マウス(N=225、5匹/群)および近交系Th2プローン(prone)Balb/cマウス(N=50、5匹/群)の両方に、比較目的のために免疫した。CD1マウスは、非近交系株であり(すなわち、遺伝的に不均質である)、従って、ヒトにおいて見出される多岐にわたる遺伝学を表わす。
【0139】
例えば、一連の実験において、10匹のマウスに対して、0週目に、プライム抗原によって免疫した。6週目に、ブースト投与を、その10匹のマウス中5匹に投与した。サンプルを、ELISAアッセイによる抗体決定のために、2週目、4週目、6週目、8週目、および12週目に、(例えば、血液、糞便、膣洗浄物から)収集した。
【0140】
下記の実施例は、これらの研究から得た代表的データを示し、これらは、本願HBsAg−リポソームによるワクチン接種のための最適条件を実証する。上記の種々のワクチンに対する体液性免疫応答を、本発明者らが開発したELISAアッセイ(上記)を使用してHBsAg特異的全血清抗体応答を決定することによって、測定した。プライミング後の2週間目、4週間目、6週間目、8週間目、および12週間目に採取したサンプルを分析したが、一次免疫後8週間目の応答のみが、ほとんどの実施例について示される。
【0141】
ほとんどのグラフは、ポジティブコントロールとしての市販のGSK HBsAgワクチンに対する応答を含み、本発明者らが試験ワクチンについて達成することを望む基準として役立つ。どの未刺激マウスにおいても、HBsAg特異的応答は、全く検出されなかった(データは、示さない)。黒塗りの記号は、1回の免疫を受けたマウスからの応答を同定し、一方、黒塗りの網目記号(+)は、プライミングおよびブースター免疫の両方を受けたマウスからの応答を示す。結果は、HBsAg特異的全血清抗体についてのELISAアッセイにおける450nmでの光学密度(y軸)に対する、試験したサンプルの希釈度(x軸)として示される。任意単位として表わされるこのELISAの結果は、450nm(OD450)にて読取った。
【0142】
明確にするために、本明細書中に示されるデータのほとんどは、1つの実験について5匹〜10匹のマウスからプールしたサンプル(マウス群から得た等量の個々のサンプル)からの平均である。図2は、ある1つの実験における個々のCD1マウスとBalb/cマウスとの間で観察される変動の程度を示す。
【0143】
図2〜図8において、3μg用量のHBsAg−リポソームを鼻内送達すること(図4)以外は、試験したすべての条件について、ブースター免疫は、HBsAg−リポソームに対するHBsAg特異的血清抗体応答およびGSK HBsAgワクチンコントロールに対するHBsAg特異的血清抗体応答の両方を、実質的に増強したことが、示される。従って、リポソームは、このHBsAg抗原のための非常に有効なアジュバントおよび送達ビヒクルであり、抗体応答は、同じ二次ブースター免疫の後に実質的に増加される。
【0144】
(実施例2:リポソーム中に封入されたHBsAg(HBsAg−リポソーム)で鼻内(IN)免疫した後のCD1マウスにおける抗体応答の速度論)
図3は、15μgのHBsAg−リポソームでCD1マウスを鼻内免疫した後の、HBsAg特異的抗体の血清力価を示す。HBsAg特異的抗体の力価の有意なブーストが、同じAg調製物の二次ブースト投与を使用した場合、観察された。しかし、ブースト投与をしない場合、力価は、一次免疫後約4週間目にそのピークに到達し、8週を通して同様のレベルのままであった。さらに、15μgのHBsAg−リポソームは、3μg投与量の市販のGSKワクチンと少なくとも同程度に有効である。
【0145】
(実施例3:HBsAg−リポソームに対する用量応答)
CD1マウスを、上記リポソーム調製物中に封入した3μgまたは15μgのいずれかのHBsAgで免疫し、二次ブースト投与を行ったか、または二次ブースト投与は行わなかった。図4は、15μgのHBsAg−リポソームは、市販のGSKワクチン(3μg)と少なくとも同程度に有効であったことを示す。しかし、同じリポソーム調製物中にある3μgのHBsAgは、それよりもかなり有効ではなく、二次ブースト投与は、力価の有意な増加をもたらさないようであった。
【0146】
(実施例4:HBsAg−リポソームの投与経路)
投与経路の効果を試験するために、CD1マウスおよびBalb/cマウスを、上記と同じHBsAg−リポソーム調製物を用いて、鼻内(IN)投与または筋肉内(IM)投与を介して免疫した。抗体力価を、(一次)免疫の8週間後に測定した。CD1およびBalb/cの両方において、15μgのHBsAg−リポソームのIN投与およびIM投与の両方(二次ブーストを伴うか、または二次ブーストを伴わない)は、3μgの上記GSKワクチンと少なくとも同程度に有効であった(図5および図6)。
【0147】
(実施例5:抗体応答に対する新鮮なHBsAg−リポソーム調製物または凍結乾燥HBsAg−リポソーム調製物の効果)
上記HBsAg−リポソーム調製物が、新鮮な形態または凍結乾燥形態として使用されなければならないか否かを試験するために、CD1マウスを、新鮮なリポソーム調製物または凍結乾燥リポソーム調製物のいずれかで、鼻内投与経路または筋肉内投与経路のいずれかによって免疫した。すべての血清Ig力価は、一次免疫の8週間後に測定した。
【0148】
HBsAg−リポソームの鼻内投与は、上記リポソーム調製物が新鮮である場合には、3μgのGSKワクチンコントロールと少なくとも同程度に有効であった(図7)。同等レベルの力価が、GSKワクチンと、新鮮なHBsAg−リポソーム調製物(ブースト有またはブースト無しのいずれか)との間で観察された。凍結乾燥HBsAg−リポソームは、この実験において、新鮮な調製物よりもわずかに有効ではなかった。しかし、別の実験においては、凍結乾燥HBsAg−リポソーム調製物は、新鮮な対応物よりもわずかに良好であった(データは示さない)。
【0149】
同様の結果が、IM投与によって得られた(図8)。新鮮なHBsAg−リポソーム調製物および凍結乾燥HBsAg−リポソーム調製物の両方が、互いと比較して、そしてGSKポジティブコントロールと比較して、同様の最終力価を有した。
【0150】
これらの結果は、凍結乾燥HBsAg−リポソームの再構成調製物が、IN経路またはIM経路によって送達される場合に、新鮮な調製物とほぼ同程度に有効であったことを示す。凍結乾燥調製物の効力は、将来のワクチン処方物の分配および保存を簡単にする。
【0151】
(実施例6:HBsAg−リポソームに対する抗体応答に対するリポソームサイズの効果)
リポソームサイズの効果を、サイズが4μm、1μmおよび0.2μmであるリポソーム中にHBsAg(15μg/マウス)を封入することによって評価した。定量的ELISAアッセイを使用して、単一サイズのリポソームによる鼻内免疫後または3種すべてのサイズの等量混合物による鼻内免疫後に、HBsAg特異的血清IgGレベルを測定した。種々のサイズのリポソームの混合物は、単一サイズのリポソームよりも免疫原性であり得ることが可能である。HBsAgの全量および脂質の全量は、4つの群において同じであった。
【0152】
図9は、1μmサイズのリポソームおよび4μmサイズのリポソームが最も有効であった一方で、もっと小さい0.2μmリポソームは、HBsAg特異的血清IgGを生成するためにそれらよりも有効ではなかったことを、示す。3種すべてのサイズの等量混合物は、付加的応答を生じたが、相乗的応答は生じなかった。合わされたリポソームの3種のサイズの効果が付加的である場合の推定応答が、垂直な筋として図9において示される。
【0153】
(実施例7:HBsAg−リポソームに対する抗体応答に対するリポソーム:タンパク質比の効果)
本発明者らは、HBsAg特異的血清IgG抗体を生成する際のリポソーム:タンパク質比の重要性を決定した。この決定は、マウスを、本発明者らの標準的リポソーム含量またはそのリポソーム濃度の1/2および1/3のHBsAg−リポソーム(15μg/マウス、0週目にプライムし、6週目にブーストした)で鼻内免疫することによった。そのリポソーム:HBsAg比を1/2および1/3に減少させると、血清IgG応答が、不釣合いなことに、本発明者らの標準リポソーム調製物から得た応答のそれぞれ35%および2%まで減少した(n=8匹の動物/群;血清IgGを、ブーストの2週間後に各群から得た血清プールに関して測定した)。従って、上記HBsAgを封入するために使用したリポソームの量は、高レベルのHBsAg特異的血清抗体応答を生成するために有意な効果を有する。
【0154】
(実施例8:同種免疫プロトコル後の偏向したTh応答の特徴づけ)
サイトカインは、免疫系(例えば、細胞媒介性免疫およびアレルギー型応答)における生物学的効果のほとんどの原因となる、ホルモン性メッセンジャーである。このサイトカインは、多数であるが、サイトカインは、機能的に2つの群(炎症促進性であるサイトカイン、および本質的に抗炎症性であるがアレルギー応答を促進するサイトカイン)に分割され得る。
【0155】
Tリンパ球は、主要なサイトカイン源である。これらの細胞は、その細胞表面上に抗原特異的レセプターを保有して、異種病原体の認識が可能である。これらの細胞はまた、自己免疫疾患エピソードの間に正常組織を認識し得る。2種類の主要なTリンパ球サブセットが存在し、これらは、CD4およびCD8として公知である細胞表面分子の存在によって区別される。CD4を発現するTリンパ球はまた、ヘルパーT細胞としても公知である。これらは、最も大量のサイトカイン産生体であると考えられる。このサブセットは、Th1およびTh2へとさらに細分され得る。これらの細胞が産生するサイトカインは、Th1型サイトカインおよびTh2型サイトカインとして公知である。
【0156】
Th1型サイトカインは、細胞内寄生生物を死滅することおよび自己免疫応答を永続することを担う、炎症促進性応答を生じる傾向がある。インターフェロンγ(IFN−γ)およびインターロイキン12(IL−12)は、主要なTh1サイトカインである。CTL活性はまた、Th1型免疫応答において高い。対照的に、Th2型サイトカインは、インターロイキン4、インターロイキン5、およびインターロイキン13(これらは、アトピーにおけるIgE応答および好酸球性応答の促進に関連する)ならびにインターロイキン10(IL−10)(これは、より多くの抗炎症応答を有する)を包含する。Th2応答は、B細胞から免疫グロブリン分泌細胞への成熟に補助を提供し、それによって、体液性防御機構を主に活性化する。CTL活性は、一般的には、Th2型免疫応答において低い。過度な場合、Th2応答はまた、Th1媒介性殺菌作用を相殺する。
【0157】
一般的に、最適なシナリオは、ヒトが、免疫チャレンジに適合した、充分にバランスのとれたTh1応答およびTh2応答を生じることであるようである。しかし、実際には、Th1およびTh2のサブセット産生の概念の中核は、これらの応答が偏向する傾向である。従って、Th1サイトカイン産生プロフィールまたはTh2サイトカイン産生プロフィールは、一方のThサブセットを優先的に増幅することおよび対立する応答をダウンレギュレートすることによって、免疫応答の間にしばしば優勢である。この偏向した応答は、多くの病原性生物に対する宿主防御のために重要であるようである。細胞内病原体(例えば、ウイルス)に対する耐性は、しばしば、主にTh1応答を必要とし、一方、Th2応答は、代表的には、細胞外寄生生物と対抗するために必要である。従って、感染性因子に応答して宿主により産生されたT細胞由来サイトカインは、多くの感染性疾患モデルにおいて感染の結果を決定する。
【0158】
炎症促進性Th1応答が、細胞内感染を制御するために通常は必要とされるが、その応答のバランスをとる必要もまた存在する(Taylor−Robinson,Int J Parasitol.28(1):135〜48,1998)。細胞内感染を制御下に維持するために充分に強力な1型応答を生じるとともに、その防御応答が宿主に対して損傷を引き起こすのを防ぐためのちょうど充分な2型応答または免疫抑制応答を同時に生じることが、重要である。利用可能なデータは、IFN−γ、IL−12、およびIL−10が、Th2応答を抑えるように協働することを示唆する。従って、感染後の首尾よい結果のためには、感染型に対して適切な、Th1応答およびTh2応答の正確な決定(titration)が必要である。これは、量に関してだけではなく、これらの応答がどこで、いつ、どの程度長く生じるかにも関する。
【0159】
いくつかの要因が、T細胞応答を主にTh1表現型または主にTh2表現型へと進めるために提唱されており、その要因としては、抗原の特性、抗原の用量、暴露部位および宿主において進行中の免疫応答が挙げられる。抗原に対するTヘルパー細胞応答は、偏向しているとしてか、または混合型であるとして、特徴付けられ得る。偏向したTh細胞応答は、Th1サイトカインプロフィールまたはTh2サイトカインプロフィールに向っての抗原特異的Th細胞集団の歪みから生じる。この偏向したTh細胞応答は、それぞれ、抗原特異的IgG1:IgG2a比 <0.5および>2.0によって反映される。混合型Th応答は、両方のT細胞集団を含み得、これは、0.5と2.0との間の抗原特異的IgG1:IgG2a比によって反映される。下記の表Bを参照のこと。
【0160】
(表B:偏向したTh1応答および偏向したTh2応答の特徴)
【0161】
【表2】

HBsAg−ワクチン処方物に対する免疫応答の性質を、一次免疫の後8週目に、CD1マウスの血清およびBalb/cマウスの血清においてIgG1:IgG2a比を決定することによって評価した。本発明者らは、HBsAgに特異的なIgG1抗体およびHBsAgに特異的なIgG2a抗体を測定するための定量的ELISAアッセイを設計した。図10および図11は、市販のGSK HBsAgワクチン、HBsAg−DNAワクチン、およびHBsAg−リポソームワクチンを鼻内送達もしくは筋肉内送達することにより免疫された、CD1マウス(図10)およびBalb/cマウス(図11)の血清におけるIgG1:IgG2a比を示す。各パネルにおける0.5および2.0の位置にある2本の垂直線は、左から右に向う領域において、抗体応答の3つの異なるパターン(Th1型抗体応答、混合型もしくは中性抗体応答、またはTh2型抗体応答)を区別する。
【0162】
公開された結果と一致して、市販のHBsAgワクチンは、非近交系CD1系統マウスおよび近交系Balb/c系統マウスの両方において、Th2型免疫応答を優先的に生じた。予期されたように、上記HBsAg−DNAワクチンは、両方の系統においてTh1型免疫応答を生じた。HBsAg−リポソームの鼻内投与は、CD1マウスにおいて混合型応答を生じ、Balb/cマウスにおいてTh2偏向型応答を生じた。対照的に、HBsAg−リポソームの筋肉内投与は、両方の系統のマウスにおいて、中性免疫応答を生じた。
【0163】
GSKワクチンは、筋肉内送達のために設計されたミョウバンベースのヒト処方物(GSK Biologicalsから得たEngerixTM−B(adwサブタイプ))であった。HBsAg−DNAワクチンは、プラスミドDNA(pRc/CMV−HBs(S)であった。これは、商業的供給源(Aldevron,Fargo,ND)から購入した。このプラスミドは、極初期CMVプロモーターの制御下にて小B型肝炎表面抗原を発現する(参考文献:Davis,H.L.,M.L.MichelおよびR.G.Whalen,DNA−based immunization for Hepatitis B induces continuous secretion of antigen and high levels of circulating antibody.Human Molecular Genetics 2;1847〜1851,1993)。
【0164】
(実施例9:HBsAg−リポソームの鼻内送達後の独特なIgA応答)
1960年代後期において始まって、粘膜免疫は、この免疫がヒトにおける呼吸ウイルスに対する防御と相関することが示されたときに、呼吸ウイルスに対する重要な防御であると認識された。ほぼ同時期に、IgAクラスの抗体は、気道および他の粘膜表面において特に優勢であること、および粘膜免疫の媒介因子であることが、見出された。他の研究は、局所ワクチン接種を介して感染に対する防御を発生させる際に、粘膜免疫が理想的には刺激され得ることをその後に確認した。
【0165】
IgG抗体およびIgA抗体の両方とも、極めて系統特異的であるようである。呼吸ウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)によって自然感染した場合、体液性免疫応答および全身性細胞免疫応答の両方が生じる。その血清中の抗ウイルス抗体レベルもまた、防御に相関する。
【0166】
本発明の一局面は、粘膜部位に対してリポソーム中にあるHBsAgを直接送達することによって、粘膜免疫応答を惹起するための方法を提供する。IgA特異的サンドウィッチELISAアッセイを、血清中のHBsAg特異的IgAおよび粘膜部位からのHBsAgを測定するように設計した。上記で考察した実験群すべてに由来する血清、糞便、および膣洗浄物、ならびにいくつかの唾液サンプルを、IgAについて試験した。終点力価を、試験サンプルの連続希釈によって各サンプルプール(1プール当たりN=4〜5匹のマウス)について確立した。終点力価を、系統が一致する未刺激非免疫マウス由来のサンプルにおいて同じサンプル希釈度にて観察された値の2倍よりも大きい値である、IgA
ELISAアッセイにおける450nmでのODとして規定した。
【0167】
検出可能なIgA応答を示した唯一のサンプルは、鼻内経路によってHBsAg−リポソームワクチンを与えられたマウスに由来した。表Cは、HBsAg特異的IgA ELISAにおいて正のスコアであったサンプルからの結果を要約する。IgA応答が、この血清と、1回だけ投与した後の粘膜部位に由来するほとんどのサンプルとで、検出された。二次免疫でブーストすると、ほとんどのサンプルにおいてIgAレベルがさらに増加した。さらに、鼻内経路による局所免疫は、サンプリングされたすべての遠隔粘膜部位(糞便ペレット、膣洗浄物、および唾液(限定されたサンプル数が理由で唾液についてのデータは示されない)を含む)において、分泌IgA応答を生じた。これらの結果は、1つの経路(鼻内経路)によるHBsAg−リポソームでの免疫が、サンプルリングされた粘膜部位すべてにおいて、HBsAg特異的粘膜IgA免疫を生じたことを示す。このHBsAg−リポソームワクチンは、HBsAgタンパク質単独またはリポソーム単独とは対照的に、血清免疫Ig力価をブーストし、そしてまた鼻内投与された場合には、血清IgA応答および分泌IgA応答の両方を誘導する。
【0168】
他のすべての免疫原は、いかなる検出可能なIgA応答を生じることもできない(結果は、示さない)。
【0169】
(表C.HBsAg−リポソームで免疫したマウスにおけるIgA応答の要約)
【0170】
【表3−1】

血清サンプル、糞便サンプル、および膣洗浄物サンプルを、1群当たり5匹の個別マウスから収集した。サンプルを個別に処理し、サンプルプールを、1匹のマウスについて等体積のサンプルを使用して作製した。終点力価を、各サンプルについて決定し、そして未刺激非免疫CD1マウスまたは未刺激非免疫Balb/cマウスについて観察されるものと2倍よりも大きな血清力価として規定した。相対力価の決定のために使用した力価値の範囲を、下記に示す。
§測定せず。
サンプルを入手不能。
【0171】
【表3−2】

(実施例10:HBsAg−DNA免疫単独に対する抗体応答は、弱い)
DNAワクチン免疫は、宿主(ヒトを含む)において防御免疫応答を生じると最近記載された。米国特許第6,632,663号およびWO 03/075955 A1(本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。
【0172】
免疫原としてのHBsAg−DNAの有効性を試験するために、CD1マウスおよびBalb/cマウスに、HBsAg−DNAで筋肉内免疫し、二次ブーストを行ったか、または二次ブーストは行わなかった。全HBsAg特異的血清Igを、上記のような免疫の8週間後に測定した。GSK HBsAgワクチンを、ポジティブコントロールとして使用した。
【0173】
図12は、アジュバントを伴うHBsAgタンパク質ワクチンとは対照的に、HBsAg−DNAによる筋肉内免疫が、CD1系統マウスおよびBalb/c系統マウスの両方において、HBsAgに対する弱い抗体応答を生じたことを示す。惹起された免疫応答は、ブーストしていないコントロールのGSKワクチンと比較して、ブーストした場合でさえ、せいぜい弱い〜中程度である。
【0174】
(実施例11:同種HBsAg−DNA免疫は、強力なCTL活性およびTh1偏向サイトカインプロフィールを生じる)
HBsAg−DNA免疫は、弱い抗体応答誘導因子である(実施例10)が、T細胞応答の非常に強い誘導因子である。HBsAg−DNAで筋肉内免疫(0週間目および6週間目に100μg、記憶CTLを動員するために11週間目にブースター投与)した後、平均87%±8%のHBsAg特異的死滅が、インビボCTLアッセイを使用して読出し情報として観察された(n=4匹のマウス)。HBsAg−DNA免疫はまた、HBsAg特異的T細胞によるサイトカイン応答を、1型サイトカインプロフィールに向って強く偏向させた。図13は、HBsAg−DNAで免疫したマウスに由来する脾細胞による、IFN−γおよびIL−10についてのELISPOTアッセイからの結果を示す。HBsAgタンパク質(T細胞エピトープを含む)およびHBsAg由来の免疫優性CTLペプチド(Ishikawa,T.ら、1998、J.Immunol.161:5842)の両方ともが、高頻度でIFN−γ分泌細胞を生じたが、非常に少数のIL−10分泌細胞しか生じなかった。従って、HBsAg−DNAによる同種免疫は、代表的な強く偏向したTh1型プロフィールを生じる。このことは、2種の異なるマウス系統において観察されたTh1型IgG1:IgG2a比と一致する(図10および図11)。
【0175】
(実施例12:全身抗体応答および粘膜抗体応答に対する、プライミング投与としてのHBsAg−DNAとブースター投与としてのHBsAg−リポソームでの異種免疫の効果)
HBsAg−リポソームによる筋肉内DNA免疫は、全抗体の生成に対する弱い刺激であった(実施例11)が、これは、Th1偏向型細胞媒介性免疫応答を刺激する際に非常に有効であった(実施例11)。記憶T細胞応答および記憶B細胞応答を生じる際にDNA免疫が有効であったか否かを決定するために、本発明者らは、異種免疫プロトコルを開発した。このプロトコルにおいて、HBsAg−DNA免疫を、プライミング投与として使用し、HBsAg−リポソームを、ブースター投与として使用する。DNAが、T細胞記憶応答およびB細胞記憶応答を生成する際に有効である場合には、これらの応答は、種々の形態の上記抗源(HBsAg−リポソーム)でブーストした後に示され得る。従って、本発明は、異種免疫実験設計を提供する。このプロトコルの変化形は、慣用的に過ぎず、充分に本発明の範囲内にある(上記プロトコルに関する並べ替えについて、実施例16を参照のこと)。
【0176】
代表的プロトコルにおいて、まず、マウスを、HBsAg−DNAワクチンで筋肉内免疫してプライミングし、その後、低用量のHBsAg−リポソームで鼻内チャレンジした。特定の実施形態において、この低用量は、単独で投与した場合には、それ自体では、有意な免疫応答を惹起するのに不十分である。完全規模の免疫応答を惹起するために十分な用量と比較した場合に、この低用量は、高々、50%、40%、30%、20%、10%、5%、またはそれ以下である。
【0177】
Balb/cマウスを、0週間目に100μgのHBsAg−DNAにより筋肉内免疫し、6週間目に再度HBsAg−DNAによって筋肉内免疫した。16週間目に、HBsAg−リポソームでのブーストを、3μgという減少した用量にて粘膜内投与した。血清サンプルを、このブーストの2週間後、4週間後、および6週間後に取得した。ポジティブコントロールとして、CD1マウスを、15μgのHBsAg−リポソームで鼻内免疫し、二次ブーストを行った。ポジティブコントロールの血清を、一次免疫の8週間後に取得した。ネガティブコントロールとして、未刺激CD1マウス由来の血清を、8週間目に取得した。
【0178】
図14は、この異種免疫プロトコルからの結果を示す。2回のIM(筋肉内)HBsAg−DNA免疫または1回のIN(鼻内)HBsAg−リポソーム(低用量)免疫単独は、弱い血清抗体応答を誘導した。しかし、このDNA免疫レジメンにHBsAg−リポソーム(3μg)IN(鼻内)による二次低用量ブーストを付加すると、2回のIN(鼻内)HBsAg−リポソーム(高用量)後のマウスにおいて観察されるよりもさらに高いレベルまで、全HBsAg特異的抗体応答を顕著に増加した。
【0179】
定量的ELISAアッセイを使用して、この実験からの血清におけるHBsAg特異的IgGのmg量を決定した。2回のDNA免疫後のIgGレベルは、平均して43.2μg/mlであり、HBsAg−リポソームによるブースト後には248μg/mlにまで増加した。上記リポソーム調製物を単独で投与すると、0.6μg/mlの血清IgGしか生じなかった。
【0180】
著しいことに、DNA免疫はまた、粘膜IgA応答についての免疫系をプライミングする。この免疫系は、低用量HBsAg−リポソームブーストの鼻内送達後にも動員される。図15は、この異種免疫レジメンのDNA成分およびリポソーム成分単独では、検出可能なIgA応答を刺激しないことを示す。しかし、実質的なIgA応答が、この異種DNAプライミングおよびHBsAg−リポソームブーストのプロトコルを使用して、血清中および膣中にて誘導された。分泌IgAもまた、このプロトコルを使用して糞便サンプルにおいて誘導された(データは、示さない)。図15はまた、より高用量のHBsAg−リポソーム単独(15μg HBsAg)によるプライミングおよびブーストの後の、代表的な血清IgA応答を示す。この応答は、強いIgA応答についての基準である。HBsAg−リポソームによるブーストは、血清IgA応答または粘膜IgA応答を生じるためには、鼻内経路によって送達されなければならない。このブーストがIN(鼻内)投与ではなくIM(筋肉内)投与された場合、低レベルの分泌IgAしか生じないが、循環血清IgG応答は、強い(データは、示さない)。
【0181】
HBsAgに特異的なIgG抗体もまた、上記異種免疫プロトコルを投与したマウス由来の肺洗浄物および膣洗浄物において検出された(図16)。未処理マウスも、HBsAg−DNAをIM(筋肉内)投与された後に空リポソームをIN(鼻内)投与されたマウスも、肺洗浄物または膣洗浄物において、バックグラウンド値を超える検出可能なIgGレベルを生じなかった。しかし、HBsAg−DNA IM(筋肉内)とHBsAg−リポソームIN(鼻内)との組み合わせで免疫したマウスは、肺部位および膣部位の両方において、容易に検出可能な粘膜IgGを生じた。このことは、関連がある。なぜなら、粘膜IgGはまた、特定の病原体(例えば、HSV−2およびインフルエンザ)に対して防御する際に防御的役割を果たすことが示されているからである(HSV−2について、Parr,E.L.ら、1997、J.Virology 71:8109〜8115;Tamura,S.およびT.Kurata,2004,Jpn.J.Infect.Dis.57(6):236〜47;Renegar,K.B.ら、2004,J.Immunol.173(3):1978〜86)。
【0182】
本出願人らは、上記異種免疫プロトコル後のT細胞応答の偏向に対する、HBsAg−リポソームを用いたIN(鼻内)ブーストの効果を評価するために、IgG1:IgG2a比を決定した。図17は、HBsAg−リポソームブーストの後の個々のマウス血清における、IgG1:IgG2aの比を示す。著しいことには、上記DNA免疫プロトコルにこのブーストを追加しても、免疫応答をTh2型プロフィールに向けて移動させなかった。二次DNA免疫の4週間後の抗体応答は、Th1型偏向(IgG1:IgG2a比=0.47)を示した。Th1偏向型応答が、HBsAg−リポソームによる鼻内ブーストの後に、依然として存在した(IgG1:IgG2a比=0.50)。この実験は、DNA免疫が、HBsAg−リポソームを鼻内送達した場合に有効に動員される、Th1型記憶の強力かつ安定な基礎を確立することを示す。
【0183】
本願異種免疫プロトコルは、中性Th応答または1型偏向Th応答ならびに細胞媒介性免疫を促進し、一方で、(上記ブースト用量の抗原−リポソーム調製物が鼻内投与された場合には)粘膜IgA応答および粘膜IgG応答を必要に応じて誘導する。細胞内病原体からの防御免疫のためには、細胞媒介性免疫応答を、特に、増強されたTh1サイトカイン分泌のためおよびCTL生成のために開始することが、しばしば望ましい。このことは、特定の実施形態にとっては特に有用である。この特定の実施形態においては、抗原および/または免疫プロトコルが、Th2応答でも混合型応答でもなく、Th1応答を生じることが望ましいものであり得る。なぜなら、Th2応答は、特に小児においては、アレルギー反応に類似する特定の望ましくない副作用に関連し得るからである。
【0184】
他の実施形態(初回投与が、鼻内投与される本願HBsAg−リポソーム調製物であり、ブースト投与が、筋肉内投与されるHBsAg−DNAである)において、宿主動物において生じる中程度の免疫応答は、Th1型応答ではなく、混合型である傾向がある。このことは、本願異種免疫の順序は、Th1応答を達成するために重要であるという論点を示す。
【0185】
(実施例13:HBsAgに対する血清IgG抗体のアビディティに対する、プライミング投与としてのHBsAg−DNAとブースターとしてのHBsAg−リポソームとの異種免疫の効果)
抗体アビディティ(すなわち、抗原−抗体結合の全体的強さ)は、病原体の制御において重要な役割を果たし得、アビディティが高い抗体は、アビディティが低い抗体よりも一般的に有効である。上記HBsAg抗原についてのHBsAg特異的IgG血清抗体の結合強度を決定するために、定量的IgGアビディティアッセイを、抗原−抗体複合体を破壊するためにカオトロピック試薬である尿素を使用して開発した。アビディティが高い抗体ほど、その抗体に結合した上記抗原を解離させるためには、より高濃度の尿素を必要とする。図18は、同種免疫レジメンにより免疫したマウスにおけるIgGアビディティの代表的結果(左パネル)および異種免疫レジメンにより免疫したマウスにおけるIgGアビディティの代表的結果(右パネル)を示す。結果は、アビディティ指数として示される。このアビディティ指数は、(尿素非存在下での遊離IgGのμg)/(尿素存在下での遊離IgGのμg)である。このアッセイにおいて得られ得る最大比は、1.0である。この最大比は、各グラフの上部に点線として示される。
【0186】
HBsAg−リポソームによる同種免疫は、ヒトにおいて使用される現行のGSK HBsAgミョウバンベースワクチンを用いて得られるアビディティと密接に対応するアビディティを生じる。HBsAg−DNAによる免疫もまた、良好なアビディティ応答を生じる。HBsAg−DNAとその後のHBsAg−リポソームとによる異種免疫は、この抗体アビディティをなおさらに増加させ、上記の市販のヒトワクチンの参照応答を上回る。上記HBsAg−リポソームブーストを鼻内送達すると、アビディティが最高の抗体を生じる。しかし、IM(筋肉内)送達もまた、非常に有効である。アビディティが高い抗体ほど、抗原中和において有効であると推定される。このことは、上記の市販のGSKワクチン(IM(筋肉内))またはHBsAg−リポソーム(IN(鼻内)もしくはIM(筋肉内))を使用する同種免疫レジメンに対する、上記異種免疫プロトコルの優位性を示す。
【0187】
(実施例14:プライミング投与としてのHBsAg−DNAとブースターとしてのHBsAg−リポソームとによる異種免疫は、C57BL/6マウスにおけるHBsAgに対する非応答性を克服する)
C57BL/6マウスは、上記HBsAgタンパク質に対して非応答性である(参考文献:Schirmbeck,R.ら、J.Virol.69(10):5929〜34)。上記のHBsAgについての市販のGSKワクチンを受けるヒトの約5%〜約10%も、同様である。異種免疫が非応答性マウスにおける免疫応答を誘導し得るか否かを決定するために、以下の実験を実施した(表D)。1つの群(A群)のC67BL/6マウスを、HBsAg−リポソームを2回鼻内送達して免疫した。予期したとおり、これらのマウスは、検出可能なレベルの抗HBsAg血清IgGを生じなかった。その後、これらのマウスと、第二群の未刺激マウス(B群)とを、HBsAg−DNAを2回筋肉内送達して免疫した。DNAワクチン接種に応答した両方の群のマウスにおける血清IgGレベルは、同等であった(A群およびB群について、それぞれ12.8μg/mlおよび8.0μg/ml)。その後、各群を、HBsAg−リポソームでさらにブーストし、その後、最終血清IgGレベルを測定した。驚くべきことに、両方の群のC57BL/6マウスは、等しく高レベルの抗HBsAg血清IgGを示した(A群、238μg/ml;B群、310μg/ml)。この実験からの結果は、3つの事項を示す。1)異種免疫は、非応答性マウス系統において高い抗体応答を刺激し得る。2)免疫の順序が、血清IgG応答の誘導のために重要である。3)相乗作用的抗体応答が、異種免疫応答後に観察される。
【0188】
(表D.HBsAg−DNA免疫とその後のHBsAg−リポソームのIN(鼻内)免疫とが、C57BL/6マウスにおけるHBsAgに対する非応答性を克服する)
【0189】
【表4】

(実施例15:異種免疫は、インビボCTL活性およびTh1偏向型サイトカイン分泌を生じる)
多くの細胞内病原体からの防御免疫には、しばしば、IFN−γ高産生性であるTh1偏向型免疫応答と、病原体に感染した細胞を死滅させ得る細胞溶解性Tリンパ球(CTL)の生成とが、必要である。本発明者らのワクチン送達プロトコルにより生成される細胞媒介性免疫応答を評価するために、本出願人らは、CTL応答を測定するためのインビボアッセイと、HBsAg特異的IFN−γ分泌細胞およびHBsAg特異的IL−10分泌細胞(それぞれ、Th1応答およびTh2応答)の頻度を数えるためのELISPOTアッセイとを確立した。
【0190】
インビボCTLアッセイは、文献において最近報告されている。従来のインビトロCTLアッセイとは異なり、このインビボCTLアッセイは、CTLがインビボ状況で標的を死滅させる能力の真の尺度を提供する。本出願人らは、2回のHBsAg−DNA IM(筋肉内)を投与された後に低用量IN(鼻内)HBsAg−リポソームブーストを投与されたマウスにおいて、インビボCTL活性を測定した。そのサンプルの収集を抗体応答測定のために(IN(鼻内)ブーストの6週間以上後に)完了した後、マウスに、DNAブーストを与えて、活性化エフェクター細胞中へと記憶T細胞を動員した。7日間後、動員されたCTLエフェクター細胞の活性を、HBsAgペプチドでパルスされた色素標識標的をその細胞が特異的に死滅させる能力を決定することによって定量した。この標的は、「方法」において概説されるように、マウス中に静脈内に養子移入された。非パルス色素標識CFSElow集団に対するペプチドパルスした色素標識CFSEhigh集団の消滅が、ペプチド特異的死滅の尺度である。未刺激レシピエントコホートにおけるこれら2つの集団の割合は、細胞移植についての内部コントロールとして役立った。そのレシピエントの脾臓におけるCFSElowドナー細胞およびCFSEhighドナー細胞の割合を、フローサイトメトリー分析によって決定した。
【0191】
代表的なフローサイトメトリー分析が、ある1つのアッセイについて図19において示される。その左パネルは、CFSE標識標的細胞を注射した22時間後の未刺激マウスの脾臓から回収された、CFSElow(グラフ上のR2)ドナー細胞集団およびCFSEhigh(グラフ上のR3)ドナー細胞集団を示す。CFSE蛍光が、x軸上のFITCチャネルまたはFL1チャネルにおいて示される。FL1蛍光が、この分析から自己蛍光細胞を排除するためにのみ、無関係のFL2蛍光に対して示される。その右パネルは、上記異種免疫プロトコルを受けたマウスからの同じ分析を示す。そのR3領域からのCFSEhigh(特定ペプチドによりパルスした)集団の消滅は、CTLによる特異的死滅を示す。
【0192】
高レベルのHBsAgペプチド特異的CTL死滅活性が、HBsAg−DNAで筋肉内プライミングされHBsAg−リポソームで鼻内ブーストしたBalb/cマウスにおいて、観察された。インビボCTL活性は、4匹のマウスからなる集団において、平均して78%(65%特異的死滅〜91%特異的死滅の範囲)であった。
【0193】
異種免疫レジメンを受けたマウス由来の脾細胞をまた、ELISPOTアッセイによってIFN−γ分泌細胞およびIL−4分泌細胞の測定のためにインビトロで培養した。このELISPOTアッセイは、市販の抗体対および試薬(BD Pharmingen)と、Multiscreen−IPマルチウェルELISPOTプレート(Millipore,Hopkington,MA)とを使用して確立した。インビトロ培養物を、1mlにつき2.5×10細胞につき10μgの濃度のHBsAgペプチドで20時間〜22時間刺激した。ペプチドを含まない培養物を、ネガティブコントロールとして使用した。抗CD3で刺激した培養物またはCon Aで刺激した培養物を、ポジティブコントロールとして使用した。スポットを、CTL Inc.によって定量分析した。
【0194】
本出願人らは、上記異種免疫プロトコルで免疫したマウスにおいて、高頻度のHBsAg特異的IFN−γ分泌細胞を観察したが、非常に低頻度のHBsAg特異的IL−10分泌細胞しか観察しなかった(データは示さない)。これらの結果は、上記異種免疫プロトコルがTh1型サイトカイン偏向型免疫応答を生じるという、血清IgG1:IgG2a比の分析から誘導された本発明者らの結論を直接確認する。
【0195】
(実施例16:上記異種免疫プロトコルのHBsAg−DNA成分およびHBsAg−リポソーム成分についての送達プロトコルにおける変動)
さらなる研究によって、上記異種免疫プロトコルの2つのパラメーター(DNAプライミングおよび抗原−リポソームブースト)が、CTL応答および/または抗体応答について良好な免疫原性を依然として保持しながら変化され得る程度を、決定した。表Eは、DNAプライミング投与が用量および送達速度に関して変化した、マウスにおけるインビボCTL死滅活性および血清IgG応答の結果を示す。示される第一のプロトコル(A)は、0週間目および3週間目のDNA送達(合計用量200μg)と、6週間目のHBsAg−リポソームブーストとからなる。このプロトコルは、前の実施例において示されたように、ほぼ最大の特異的CTL死滅活性および高レベルのHBsAg特異的血清IgGを生じる。合計200μgである2回の投与から合計100μgである1回の投与へとそのDNAを減少させる(B)と、同レベルのCTL応答および抗体応答を生じる。その1回の(1×)DNAプライミング用量を、3日間のタイムスパン内で送達される2つの部分に分割することと、そのリポソームブースト投与を3週間短縮することとからなる、さらなる改変(C)によって、高いCTL死滅活性および抗体応答が維持された。減少したDNAプライミング用量(D)において、CTLレベルおよび抗体レベルの両方が減少し始める徴候が存在する。100分の1のDNA(E)において、CTL活性は、依然として、最大値の約2/3であり、一方、抗体レベルは、ほぼ検出不能である。従って、そのDNAブースター免疫の用量およびタイミングの両方におけるかなりの変動が、高いCTLレベルおよび抗体レベルという望ましい結果を依然として維持しながらも、可能である。
【0196】
(表E.Balb/cマウスにおけるインビボHBsAg特異的CTL死滅活性および血清IgGを生じることにおける、種々のDNAプライミングレジメンの効果)
【0197】
【表5】

表Eに対する説明文。5匹のマウスからなる群を、示されるように免疫した。血清プールを、HBsAg特異的血清IgG決定のために、最後の免疫の2週間後に収集した。インビボCTLアッセイを、DNAプライミングの差を明らかにするのを助けるための刺激として、1回(1×)DNA(100μg) IM(筋肉内)ブースト投与の7日間後に、個々のマウスに対して実施した。上記処理群の下の括弧内の数字は、マウス1匹について投与された全DNA用量を示す。
【0198】
調べた第二の変数は、HBsAg−DNAでプライミングしたマウスに鼻内送達したHBsAg−リポソームの体積であった。これは、HBsAgと空リポソームとを一緒に混合すること、15μg/投与で送達したタンパク質とリポソーム含量との全量を一定に維持することによって、達成した。このプロトコルは、可能であった。なぜなら、HBsAgとリポソームとの混合物は、HBsAgをリポソーム中に封入した場合に観察される応答の約70%である応答を生じることが示されたからであった。血清抗HBsAg特異的IgGレベルは、50μl、40μl、または30μlという接種体積を点滴した後に同様の狭い範囲内にあることが、見出された。
【0199】
(表F.上記異種免疫プロトコルを使用する抗体応答に対するHBsAg−リポソーム体積の効果)
【0200】
【表6】

N=8匹のマウス/群。
【0201】
(実施例17:異種免疫(HBsAg−DNAプライミングおよびHBsAg−リポソームブースト)は、粘膜CTLを生じ、そして生存ウイルス(VV−HBsAg)チャレンジに対する完全防御を提供する)
上記異種免疫レジメンが、そのCD8IFNγ表現型により規定される局所粘膜CTLまたは全身CTLを生じたか否かを決定するために、Balb/cマウスを、2回のHBsAg−DNA IM(筋肉内)とその後の1回のHBsAg−リポソームIN(鼻内)とによって、免疫した。2回のHBsAg−DNAでの免疫後に1回の空リポソームで免疫したBalb/cマウスと、非免疫マウスとが、コントロールとして役立った。これらのマウスに、上記リポソーム免疫の14日間後に、上記HBsAgを発現する組換えワクシニアウイルス(VV−HBsAg)で鼻内チャレンジした。ウイルスチャレンジの5日間後に、肺(局所粘膜区画)単核球および脾臓(全身区画)単核球を、単離し、そしてCTLの存在について試験した。抗原特異的CTLを、フローサイトメトリー分析により決定されるそのCD8IFNγ表現型によって同定した。表Gは、その肺または脾臓のいずれかにおいて、未刺激マウスはほとんどCTLを生じなかったことを示す。かなりの数のCTLが、DNAおよび空リポソームで免疫したマウスの肺において生じた。かなり少ない数のCTLがまた、その脾臓において生じた。しかし、DNAとHBsAg−リポソームとの組み合わせで免疫したマウスは、その肺において局所的にHBsAg特異的CTLの広範囲の増殖を生じ、脾臓区画においてかなりの数のHBsAg特異的CTLを生じた。これらのデータは、この異種免疫プロトコルの両方の要素が、ウイルスによるチャレンジの後に、肺粘膜において多数の抗原特異的局所CTLを生じることを示す。著しいことには、抗原特異的CTLはまた、その脾臓区画においても検出される。このことは、抗原特異的CTLの全身応答を示す。
【0202】
(表G.異種免疫後のCD8IFNγCTLの生成)
【0203】
【表7】

§ Balb/cマウスを、4週間間隔にて、示されるように免疫した(処理群;n=5匹/群)。マウスを、100μgのHBsAg−DNAで筋肉内免疫(4頭筋1つにつき50μl)し、50μlの空リポソームまたはHBsAg−リポソームのいずれかで鼻内免疫した。マウスに、最後の免疫の14日間後に、2×10PFUのVV−HBsAgを合計50μlにて鼻内注射した。
ζ 免疫蛍光分析を、ウイルスチャレンジの5日間後に、肺単核球(n=1/群)および脾細胞(n=5/群)に対して実施した。細胞を、10細胞について10μmのHBsAg CTLペプチドを用いて、インビトロにて5時間刺激した。その後、細胞を、表面のCD8および細胞内IFN−γについて染色した。
【0204】
図20は、3つのマウスコホート(未処理マウス;HBsAg−DNAと空リポソームとをIN(鼻内)投与されたマウス;HBsAg−DNAとHBsAg−リポソームとをIN(鼻内)投与されたマウス)に対して鼻内送達されたVV−HBsAgチャレンジからの結果を示す。肺1つ当たりのLog PFU(ウイルスプラーク形成単位)を、VV−HBsAgによるチャレンジの5日間後に測定した。未処理未刺激マウスは、肺において高いウイルス力価を有し、肺1つ当たり平均3.72 log PFU(11,038 PFU)である。DNAと空リポソームとを投与されたマウスは、未処理マウスよりも2log少ない、肺1つ当たりのPFUを有した(1.86 log PFUまたは156 PFU)。DNAとHBsAg−リポソームとを投与されたマウスは、肺において検出可能なPFUのウイルスを有さなかった。このことは、粘膜チャレンジ部位からのそのウイルスの完全な排除を示す。この構築物中のHBsAgタンパク質は、細胞内でのみ発現されるので、このウイルスの排除は、おそらく、肺区画におけるCTLの活性に起因する。
【0205】
(IX.要約)
表Hは、特定のHBsAgワクチン送達プラットフォームを用いて生じた免疫応答の特徴を要約する。11種の別個の免疫プロトコル(同種免疫プロトコルおよび異種免疫プロトコル)を開発した。これらのプロトコルに対する免疫応答を特徴付けた。免疫スケジュールおよびワクチン成分は、示される通りである。すべての抗体応答は、最後のブースター免疫の2週間後に測定した。プロトコル8およびプロトコル9は、上記異種免疫プラットフォームの短縮バージョンであることが、留意されるべきである。HBsAgをモデル抗原として使用して、本出願人らは、免疫応答が、特定の結果(すなわち、抗体応答レベル、Tヘルパーサイトカインプロフィール(Th1対Th2)、分泌IgA粘膜免疫の発生、および細胞溶解性T細胞の惹起)に向かって方向付けら得ることを示した。これらの研究は、特定の環境下で特定の病原体に対する防御免疫を生じてTh1型免疫応答もしくはTh2型免疫応答または混合型応答/よりバランスのとれた(more balanced)応答を支持するように免疫応答を調節するために使用され得る、合理的基礎を提供する。
【0206】
【表8】

要約すると、上記結果は、特定の用量のHBsAgは、特定の組成およびサイズ(平均4μmサイズ)のリポソーム中に封入された場合に、血清抗体産生のための強力なワクチンであることを示す。強力な応答が、そのワクチンが鼻内投与または筋肉内投与された場合に観察される。対照的に、筋肉内注射されたHBsAg−DNAは、HBsAg特異的血清抗体を誘導する際にそれほど有効ではない。本出願人らは、そのマウスが、すべての処方物中にある上記鼻内ワクチンを困難の証拠も死亡の証拠を伴わずに許容することは、観察しなかった。
【0207】
HBsAg−リポソームによる鼻内免疫のみが、全身性IgA応答および粘膜IgA応答を生じ、一方、他のすべての免疫レジメンは、IgA応答を生じなかった。最後に、IM(筋肉内投与)によるHBsAg−DNAワクチンとIN(鼻内投与)によるHBsAg−リポソームとの異種免疫レジメンは、理想的なワクチン送達プラットフォームである。これは、この異種免疫レジメンが、相乗作用的血清抗体応答、強力な粘膜IgA応答おおび血清IgA応答を生じ、そして抗原特異的T細胞応答およびIFN−γ分泌を、DNAワクチンプライミングにより確立されたTh1型応答を変化させることなく増強する可能性があるという点で、理想的である。
【0208】
HBsAg−リポソームの生体分布は、直接的には測定しなかった。しかし、ワクチン処方物が粘膜表面における局所免疫を刺激する能力を、決定し、その結果を上記に示した。
【0209】
一般的には、本明細書中で使用される命名法および本発明において利用される実験手順は、分子的技術、生化学的技術、微生物学的技術、および組換えDNA技術を包含する。そのような技術は、文献において完全に説明されている。例えば、「Molecular Cloning:A laboratory Manual」Sambrookら(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」第I巻〜第III巻,Ausubel,R.M.編(1994);Ausubelら「Current Protocols in Molecular Biology」John Wiley and Sons,Baltimore,Md.(1989);Perbal「A Practical Guide to Molecular Cloning」John Wiley & Sons,New York(1988);Watsonら「Recombinant DNA」,Scientific American Books,New York;Birrenら編「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」第1巻〜第4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(1998);米国特許第4,666,828号において示される方法論;同第4,683,202号において示される方法論;同第4,801,531号において示される方法論;同第5,192,659号において示される方法論;および同第5,272,057号において示される方法論;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」第I巻〜第III巻、Cellis,J.E.編(1994);「Current Protocols in Immunology」第I巻〜第III巻,Coligan J.E.編(1994);Stitesら編「Basic and Clinical Immunology」(第8版),Appleton & Lange,Norwalk,CT(1994);MishellおよびShiigi編「Selected Methods in Cellular Immunology」W.H.Freeman and Co.,New York(1980)を参照のこと。利用可能な免疫アッセイが、特許文献および科学文献において広範に記載されている。例えば、米国特許第3,791,932号;同第3,839,153号;同第3,850,752号;同第3,850,578号;同第3,853,987号;同第3,867,517号;同第3,879,262号;同第3,901,654号;同第3,935,074号;同第3,984,533号;同第3,996,345号;同第4,034,074号;同第4,098,876号;同第4,879,219号;同第5,011,771号;および同第5,281,521号;「Oligonucleotide Synthesis」Gait,M.J.編(1984);「Nucleic Acid Hybridization」Hames,B.D.およびHiggins S.J.編(1985);「Transcription and Translation」Hames,B.D.およびHiggins S.J.編(1984);「Animal Cell Culture」Freshney,R.I.編(1986);「Immobilized Cells and Enzymes」IRL Press(1986);「A Practical Guide to Molecular Cloning」Perbal,B.(1984)、ならびに「Methods in Enzymology」第1巻〜第317巻、AcademicPress;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」Academic Press,San Diego,Calif.(1990);Marshakら「Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual」CSHL Press(1996)(これらはすべて、本明細書中に完全に示されたがのごとく、参考として援用される)を参照のこと。他の一般的参考文献は、この文書全体を通じて提供されている。それらの参考文献中の手順は、当該分野において周知であると考えられ、読者の便宜のために提供されている。それらの参考文献中に含まれる情報はすべて、本明細書中に参考として援用される。
【0210】
(等価物)
当業者は、本明細書中に記載される発明の具体的な実施形態に対する多くの等価物を、認識するか、または慣用的に過ぎない実験しか使用せずに確認し得る。そのような等価物は、特許請求の範囲によって包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−180253(P2010−180253A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121028(P2010−121028)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【分割の表示】特願2006−549488(P2006−549488)の分割
【原出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(506232693)バイオメディカル リサーチ モデルズ, インコーポレイテッド (2)
【出願人】(506232682)オーラル ワクチン テクノロジーズ, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】